JP3057372B2 - 耐蝕性と耐疲労性に優れたZn―Al合金めっき鋼線の製造方法 - Google Patents

耐蝕性と耐疲労性に優れたZn―Al合金めっき鋼線の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、Zn−Al合金めっき鋼線の製造方法に関する
もので、さらに詳しくは、耐蝕性のほかに耐疲労性の要
求されるロープ類,鋼撚線,斜張橋用ケーブル,ばね等
の製造に供される高強度合金めっき鋼線の製造方法に関
するものである。
〔従来の技術〕
鉄鋼材料の耐蝕性の向上を目的として、多くのZnをベ
ースとする合金めっき技術が開発されている。たとえ
ば、特公昭55−26702号公報にはZn−Al,特公昭54−3322
3号公報にはZn−Al−Mg,特公平01−24211号公報にはZn
−Al−ミッシュメタル,特開昭56−112452号公報にはZn
−Al−Naなどが公表されている。
鋼板類の合金めっきは、いずれも鋼板を酸化還元法で
前処理したのち、合金めっき浴中に連続的に浸漬するこ
とにより、鋼板表面に浴組成と同じ合金めっき層を付着
せしめる方法で行なわれている。これに対して鋼線の合
金めっきは、一般に一次めっきとして通常の溶融亜鉛め
っき、あるいは電気亜鉛めっきを行ない、次いでこの亜
鉛めっき鋼線を目的とする合金浴に連続的に浸漬する方
法、すなわち2浴法で行なわれている。
〔発明が解決しようとする課題〕
Zn−Al系合金めっき鋼線は優れた耐蝕性を示すが、高
炭素鋼を素材とする引張強さ100kg f/mm2以上の高強度
鋼線の場合には、疲労強度が通常の亜鉛めっき鋼線に比
べて低いという欠点があった。
これに対して本発明者らはすでに多くの研究を実施
し、特願平01−81262号ならびに特願平01−93037号とし
て出願している。前者は、二次めっき後300〜150℃の範
囲の冷却速度を15〜4℃/secの範囲に制御することを特
徴とし、これによりめっき層の割れ発生が防止され、疲
労特性が向上する。後者は、二次めっき後の冷却過程
で、鋼線温度が高く合金が十分な塑性変形能を有してい
る間に共析変態を完了させ、共析変態に付随する収縮ひ
ずみを吸収させ、引っ張り残留応力を低減させることを
狙ったもので、具体的には、二次めっき後の鋼線を250
〜100℃の温度領域で所定の時間保持する方法である。
しかし上述の方法においても、冷却条件に変動が生じ
た場合には、必ずしも満足できる疲労特性が得られると
は限らない。特に一次めっきが溶融亜鉛めっきである場
合や鋼線が細い場合、あるいは厚めっきを行なうために
通線速度を上げる場合には、安定した高い疲労強度が得
にくい。
本発明の目的は、上記従来法の問題点を解決し、良好
な耐蝕性と安定した高い疲労強度を有するZn−Al系合金
めっき鋼線の製造方法を提供することにある。
〔課題を解決するための手段〕
本発明は、鋼線に一次めっきとして溶融亜鉛めっきを
施した後、該鋼線に二次めっきとしてAlを2〜12%含有
し残余が実質的にZnからなる合金浴に浸漬することによ
りZn−Al系合金めっき鋼線を製造する方法において、二
次めっき後の鋼線の合金層厚みを0.5μm以上、2μm
未満とすることを特徴とする耐蝕性と耐疲労性に優れた
Zn−Al合金めっき鋼線の製造方法である。
〔作 用〕
以下、作用とともに、本発明を詳細に説明する。
本発明者らの研究によれば、2浴法によるZn−Al合金
めっき鋼線の製造において、一次めっきを溶融亜鉛めっ
きとすることは耐蝕性向上に有利である。これは本発明
者らが「鉄と鋼 第75年第2号」(日本鉄鋼協会 平成
1年 2月1日発行)第298ページに報告し、また特開
昭63−134653号公報に開示しているように、Zn−Al合金
浴に溶融亜鉛めっき鋼線を浸漬した場合、溶融亜鉛めっ
き鋼線のZn−Fe合金層(例えばζ相やδ相)に浴中の
Alが高速で拡散浸透する結果、Alを約30%含むZn−Fe−
Al系新合金層(金属間化合物層)が形成され、表層(合
金浴と同一組成の部分)と新合金層との間の電気化学的
作用により腐食の進行が抑制されるためである。
しかし上記の新合金層は、硬質の金属間化合物である
Fe4Al13を含んで硬く、またその成長方向に強い優先方
位を有するため、新合金層内に疲労破壊の起点が形成さ
れた場合破壊は容易に伝播拡大し、合金層厚みに相当す
る大きさのクラックを形成する。したがって、合金めっ
き鋼線に耐疲労性が要求されるような場合には、耐蝕性
に支障をきたさない範囲で新合金層は薄い方が良い。本
発明者らは実験を重ねた結果、新合金層の厚みを2μm
未満に抑制することにより、従来の亜鉛めっき鋼線と同
等の疲労強度が得られることを見いだした。一方0.5μ
m未満では耐蝕性が低下し、赤錆が発生しやすくなるた
め、下限は0.5μmとする。
合金めっき浴のAl濃度は2〜12%とする。2%未満で
はAlの拡散浸透に長時間を要するために新合金層が形成
されにくく、このために目標とする耐蝕性が得られな
い。Al濃度の増加は耐蝕性を向上させるが、一方ではめ
っき温度の上昇による鋼線強度の低下を招くため、12%
を上限とする。
なお以上においては、Zn−Al二次元系合金について説
明したが、本発明はこれに限定するものではなく、前記
従来技術に示したところのZn−Alをベースとする各種合
金を使用した場合においても、同様な作用を呈すること
ができる。
〔実施例〕
以下に本発明を適用したZn−Al合金めっき鋼線の製造
方法について述べる。目標とする鋼線特性は、引張強さ
は150kg f/mm2以上、疲労強度は50kg f/mm2以上、耐蝕
性は通常の溶融亜鉛めっき鋼線の3倍以上である。
JIS規格のSWRH72A線材より直径2.3mmの鋼線を製造
し、脱脂および酸洗後、一次めっきとして溶融亜鉛めっ
きを施した。一次めっき後の鋼線をZn−Al合金浴に浸漬
し、垂直に引き上げた。新合金層厚みの調整は、一次め
っきにおけるZn−Fe合金層厚みの制御、すなわち浴温度
と浸漬時間を変える方法により行なった。合金めっき後
は、疲労特性を向上させるため、すべての試料を前記特
願平1−81262号に記載した方法で徐冷した。
疲労試験には中村式回転曲げ疲労試験機を使用し、10
7回の繰り返しで破断しない応力を疲労強度とした。
耐蝕性の評価は、塩水噴霧試験(JISZ 2371)を実施
し、赤錆発生時間を溶融亜鉛めっき鋼線と比較した。結
果を下記の(1)式で定義する耐蝕性倍率として定量化
した。
第1表に合金めっき鋼線の製造条件と鋼線特性を示
す。
No.1、2は、めっき浴のAl濃度と合金めっき鋼線の特
性関係を示したものである。Al濃度が2%未満では耐蝕
性が目標に到達しない。一方Al濃度の増加にともない耐
蝕性は向上するが、めっき温度を高める必要がある。そ
の結果鋼線の引張強さは低下し、Al濃度13.0%のNo.2で
は、目標とする引張強さが得られない。以上の結果よ
り、合金浴のAl濃度は2〜12%とするのが適当である。
No.3〜6は、合金層厚みの鋼線特性に及ぼす影響を示
したものである。No.3は合金層厚みが0.3μmと薄いた
め、疲労強度は溶融亜鉛めっき鋼線と同じレベルだが、
耐蝕性は目標を満足できない。No.5およびNo.6は従来法
による製造で、この場合合金層の厚みはそれぞれ8.0お
よび10.2μmと厚い。これらはいずれも耐蝕性は良好で
あるが、疲労強度が目標とする50kgf/mm2に満たない。N
o.7は従来法のNo.5とほぼ同じ方法であるが、合金めっ
き後特に徐冷を行なっていないため、疲労強度は最も低
い。No.8は比較とする溶融亜鉛めっき鋼線である。
以上述べたように、本発明法によれば、目標とする引
張強さと耐蝕性を満足し、かつ、従来法では達成できな
かった高い疲労強度を有するZn−Al合金めっき鋼線を製
造することが可能である。
〔発明の効果〕
以上に説明したように本発明による製造方法によれ
ば、通常の溶融亜鉛めっき鋼線の3倍以上という優れた
耐蝕性を示すのみならず、亜鉛めっき鋼線と同等の疲労
強度を有する高強度Zn−Al合金めっき鋼線を製造するこ
とが可能である。

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】鋼線に一次めっきとして溶融亜鉛めっきを
    施した後、該鋼線に二次めっきとしてAlを2〜12%含有
    し残余が実質的にZnからなる合金浴に浸漬することによ
    りZn−Al系合金めっき鋼線を製造する方法において、二
    次めっき後の鋼線の合金層厚みを0.5μm以上、2μm
    未満とすることを特徴とする耐蝕性と耐疲労性に優れた
    Zn−Al合金めっき鋼線の製造方法。
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