JPH05337742A - ワイヤ放電加工用電極線の製造方法 - Google Patents

ワイヤ放電加工用電極線の製造方法

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JPH05337742A
JPH05337742A JP33931392A JP33931392A JPH05337742A JP H05337742 A JPH05337742 A JP H05337742A JP 33931392 A JP33931392 A JP 33931392A JP 33931392 A JP33931392 A JP 33931392A JP H05337742 A JPH05337742 A JP H05337742A
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輝之 高山
Haruo Tominaga
晴夫 冨永
Yoshio Ogura
善夫 小椋
Tetsuo Yamaguchi
哲夫 山口
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 本発明は、高温強度が高く、加工速度を高く
しても断線頻度が少なく、放電加工作業の効率を高くで
きるワイヤ放電加工用電極線を製造する方法の提供を目
的とする。 【構成】 本発明は、鋼線に10〜70%の銅を被覆し
てなる銅被覆鋼線の外周面に亜鉛メッキ処理を施して亜
鉛層を形成した後、不活性ガス雰囲気中で加熱処理して
厚さ1〜15μmであって、亜鉛濃度の最高値が48重
量%で、かつ、20〜48重量%の亜鉛濃度の銅ー亜鉛
合金層を形成するものである。 【効果】 本発明によれば、加工速度を高くすることが
でき、経済性にも優れたワイヤ放電加工用電極線を得る
ことができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、放電による溶融作用に
より、被加工物(加工対象物)を加工するワイヤ放電加
工に用いられるワイヤ放電加工用電極線の製造方法に関
するものである。
【0002】
【従来の技術】図3は、一般的なワイヤ放電加工法の概
略を説明するものである。この加工法は、被加工物1に
予め開けたスタート穴2に電極線3を挿通し、この電極
線3を挿通方向(図3では矢印の方向)に走行させなが
ら、電極線3とスタート穴2の内壁面との間で放電さ
せ、かつ、被加工物1を挿通方向と直交する方向に移動
させることにより、移動軌跡に沿って被加工物1を溶融
させて所定の形状に加工する方法である。この図におい
て、電極線3は例えば供給リール4から連続的に送り出
され、被加工物1の両側のコロ5およびガイドダイス
8,8を通って巻き取りリール6に巻き取られるととも
に、この巻き取りリール6とコロ5との間に配されるテ
ンションローラ7によって張力を調整されるようになっ
ている。また、図示しないが、放電加工部分には加工液
が供されて、電極線3の冷却および加工屑の除去等を行
うようになっている。
【0003】従来、このようなワイヤ放電加工に使用さ
れる電極線3としては、直径0.05〜0.3mm程度の
銅線、黄銅線(銅65%,亜鉛35%合金)、亜鉛メッ
キ黄銅線、あるいは特殊用途としてタングステン線、モ
リブデン線等が用いられている。また、銅被覆鋼線上に
亜鉛メッキを行い、さらに加熱処理を施し亜鉛濃度50
%以上の銅−亜鉛合金層を設けたものも知られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで、これらの電
極線3は、放電加工中、約300℃の高温に熱せられ、
電極素材自体に大きな熱的負担が加わる一方、安定放電
を維持して加工精度、加工速度を上げるために行われる
テンションローラ7の張力調整時の張力も加わることか
ら高温強度(高温時における引張強度)が高いことが要
求されている。しかしながら、銅線は電極線としての細
線への伸線加工性は良いものの、引張強度が小さく、使
用中に断線して放電加工作業の効率を著しく低下させる
おそれがある。また、黄銅線は、室温での引張強度が銅
線の2倍程度の強さであるが、300℃前後の高温強度
は銅よりわずかに高い程度であり、加工速度を上げよう
とすると、やはり断線する傾向がある。
【0005】さらに、亜鉛メッキ黄銅線の場合、亜鉛に
よる放電安全性は、増加されるものの、亜鉛メッキ皮膜
が存在する分だけ高温強度が低下し、加工速度を上げよ
うとすると、やはり断線する傾向がある。また、タング
ステン線、モリブデン線は高温強度は高いが、伸線加工
性が悪く、かつ消耗品として使用される電極線としては
高価である等の問題点があった。さらに、亜鉛濃度50
%以上の銅−亜鉛合金層を有する銅被覆鋼線では、放電
加工時において電極線がガイドダイス8,8を通過する
際に擦れ、表面が軟質のために摩耗し、亜鉛粉が大量に
発生し、これがガイドダイス8,8に詰って目詰りを起
し、断線しやすくなる不都合があった。
【0006】本発明は前記の問題点に鑑みてなされたも
ので、高温強度が高く、加工速度を高くしても断線頻度
が少なく、放電加工作業の効率を高くすることができる
とともに、放電加工時に使用するガイドダイスに目詰ま
りを生じさせることがなく、経済性にも優れているワイ
ヤ放電加工用電極線を製造する方法を提供することを目
的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】請求項1記載の発明は前
記事情に鑑みてなされたもので、鋼線に10〜70%の
銅を被覆してなる銅被覆鋼線の外周面に亜鉛メッキ処理
を施して亜鉛層を形成した後、不活性ガス雰囲気中で加
熱処理して厚さ1〜15μmであって、亜鉛濃度の最高
値が48重量%で、かつ、20〜48重量%の亜鉛濃度
の銅ー亜鉛合金層を形成するものである。
【0008】請求項2記載の発明は前記事情に鑑みてな
されたもので、前記熱処理の前工程、あるいは、後工程
として伸線加工を施すものである。
【0009】
【作用】本発明方法により得られるワイヤ放電加工用電
極線(以下、ワイヤ電極線と言う。)において銅被覆鋼
線の銅の被覆率が10%未満であると、導電率が低くな
るため、放電性能が低下して加工速度が上がらず、70
%より大きいと高温強度が低くなるため、張力を上げた
場合に断線しやすくなる。また、銅−亜鉛合金層が存在
しないと放電性能が安定せず、また銅地が露出している
ため放電性能、すなわち、加工速度が著しく低下し、か
つ被加工物への銅の付着が生ずる。
【0010】さらに、銅−亜鉛合金層の厚さが1μm未
満であると、十分な放電性能が得られず、加工速度の増
大効果が得られないかもしくは、被加工物(主として、
鋼鉄材料の場合)の鉄分と電極線の銅分とが溶融反応を
起こして、加工面に付着する傾向が大となり、加工精度
が悪くなる。銅−亜鉛合金層の厚さが15μmより厚い
と強度低下が生じて断線しやすくなり、また熱処理時間
が長くなったり設備費が高くつくなど経済的に不利にな
る。
【0011】また、銅−亜鉛合金層の亜鉛濃度を最高値
で48重量%以下とし、かつ20〜48重量%とした理
由は、48重量%を越えると、合金層が相対的に軟らか
くなり、放電加工中に電極線がガイドダイスを通過する
ときの擦れにより摩耗し、亜鉛粉が多量に発生し、この
亜鉛粉がガイドダイスに付着し目詰りを起し、断線事故
が頻発する。また、20%未満ではガイドダイスの目詰
りは生じないものの放電安定性が低下し、加工速度の増
大効果が少ない。
【0012】更に、前記の銅ー亜鉛合金層を形成する場
合、不活性ガス雰囲気中で熱処理して亜鉛を拡散させる
ならば、得られる銅ー亜鉛合金層の外表面側に酸化物を
生じることがなく、その外表面側がポーラスになること
もないので、銅ー亜鉛合金層の表面が平滑な面に仕上が
る。このため、使用時にスムースに走行し、ガイドダイ
スなどに目詰まりして断線するなどの事故が生じにく
い。
【0013】
【実施例】以下、本発明の一実施例を説明すると、図1
に示すように、このワイヤ電極線は、銅被覆鋼線11が
芯材とされ、その外周面に1〜15μmの範囲のほぼ一
定の厚さで亜鉛濃度が最高値で48重量%以下でかつ2
0〜48重量%の銅−亜鉛合金層12が設けられ、全体
の直径が約0.2mmに形成されたものである。前記銅
被覆鋼線11は、いわゆる鋼線あるいは鉄線、合金鋼線
等の鋼線に10〜70%の被覆率で銅を被覆してなるも
のである。ただし、被覆率とは、全体の断面積に対する
銅部分の断面積の割合を意味している。
【0014】このようなワイヤ電極線の銅−亜鉛合金層
12をエレクトロンプローブマイクロアナライザー(E
PMA)で分析すると、例えば図2に示すような亜鉛お
よび銅濃度を有している。図2において、実線が銅の濃
度分布を破線が亜鉛の濃度分布をそれぞれ示す。図2か
ら明らかなように、この例のものは、亜鉛濃度42%前
後の銅ー亜鉛層が形成されていることが明らかになっ
た。
【0015】このようなワイヤ電極線は例えば次のよう
な方法で製造される。例えば、0.49mmの直径を有
する銅被覆鋼線を塩化亜鉛浴(1リットル中に塩化亜鉛
42g,塩化アンモニウム210gを含有する水溶液)
中に浸漬し、電気亜鉛メッキ処理を施すことにより、銅
被覆鋼線の外周面に所定の厚さの亜鉛層を形成する。次
いで、これら亜鉛層で被覆された銅被覆鋼線に伸線加工
を施して全体の直径が0.2mmとしたあと、電気炉内
で窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気下で加熱し、亜鉛層
を完全に銅−亜鉛合金層12に変化させる。銅−亜鉛合
金層12の亜鉛濃度を目的とする20〜48重量%とす
るための熱処理条件は、例えば電気炉では380℃で1
〜2時間程度の加熱で十分である。なお、亜鉛メッキ処
理後、上記熱処理を施し、ついで伸線加工を行う順序で
製造してもよい。また亜鉛メッキ処理は、溶融亜鉛メッ
キでもよいことは勿論である。
【0016】このようにして形成されたワイヤ電極線
は、銅被覆鋼線11を芯材としているため、優れた高温
強度および導電率を備え、また銅−亜鉛合金層12の存
在により優れた放電性能を発揮する。さらに銅−亜鉛合
金層12よって放電時における被加工物への銅の付着が
防止される。また、合金層12の亜鉛濃度が最高値で4
8重量%以下でかつ20〜48重量%であるので、合金
層12が十分な硬さを持ち、摩耗がわずかであるので、
ガイドダイス8,8において、金属粉による目詰りが防
止される。更に、前記の銅ー亜鉛合金層を形成する場
合、不活性ガス雰囲気中で熱処理して亜鉛を拡散させる
ならば、得られる銅ー亜鉛合金層12の外表面側に酸化
物を生じることがなく、その外表面側がポーラスになる
こともないので、銅ー亜鉛合金層12の表面が平滑な面
に仕上がる。このため、使用時にスムースに走行し、ガ
イドダイスなどに目詰まりして断線するなどの事故が生
じにくい。
【0017】次いで、実験例を示して、これらワイヤ電
極線の作用効果を明確にする。本実施例では、銅被覆鋼
線11の銅の被覆率、銅−亜鉛合金層12の厚さおよび
その亜鉛濃度を種々の値に設定した直径0.2mmのワ
イヤ電極と、同じく直径0.2mmの通常の銅線、黄銅
線(銅65%,亜鉛35%)について、加工中における
加工速度、断線の有無、ガイドダイスの目詰り発生の有
無および経済性を評価する比較試験を行なった。この比
較試験の結果を表1に示す。ただし、放電加工として
は、厚さ20mmの被加工物(SKD−11)から30
mm角の板材を切り取る加工を行なった。このときの加
工条件は次のとおりである。 印加電圧 :110V パルス時間 :ON→5μs OFF→5μs ピーク電流 :10A コンデンサ容量:0.8μF 加工液 :純水 電極線張力 :750gf また、加工速度は、銅線の加工速度(0.8mm/分)
を基準として、これを1としたときの比率で表わした。
【0018】
【表1】
【0019】表1から明らかなように、ワイヤ放電加工
用電極線のうち銅被覆率が10〜70%、かつ、銅−亜
鉛合金層の厚さが1〜15μm、亜鉛濃度20〜48重
量%という本発明の条件を満たすものは、銅線、黄銅線
を含む他の電極線に比べて加工速度、断線の有無、ガイ
ドダイスの目詰り発生の有無、経済性という点ですぐれ
ていることがわかる。なお、直径0.196mm、被覆
率60%の銅被覆鋼線を芯材とし、硫酸亜鉛浴(1リッ
トル中に硫酸0.14モル,硫酸亜鉛0.23モルを含有
する水溶液)で電気亜鉛メッキを施して厚さ2μmの亜
鉛層を形成し、しかる後に、窒素雰囲気中で加熱炉内で
1時間加熱することによって得られた電極線と、500
℃に加熱された不活性ガスが満たされた管状炉内を通過
させる熱処理を行なうことによって得られたワイヤ電極
線とについて、それぞれ前記比較試験と同様の試験を行
ったところ、比較試験における本発明の条件を満たす電
極線の試験結果と同様に優れた結果を得ることができ
た。
【0020】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば次
のような優れた効果を得ることができる。 10〜70%の被覆率で銅を被覆した銅被覆鋼線を
芯材として用いたので、高い導電率を維持しながら、高
温強度を高めたワイヤ放電加工用電極線を製造すること
ができる。 導電率の良好な銅被覆鋼線の外周面に、1〜15μ
mの銅−亜鉛合金層を形成するので、放電性能を向上さ
せることができ、銅層の表面露出による被加工物への銅
の付着を防止できて、加工速度の向上をなしたワイヤ放
電加工用電極線を得ることができる。 銅−亜鉛合金層の亜鉛濃度を最高値で48重量%以
下で、かつ20〜48%としたので、ガイドダイスの目
詰りの発生を防止できる。また、不活性ガス雰囲気中で
熱処理して亜鉛を拡散させるならば、得られる銅ー亜鉛
合金層の表面に酸化物を生じさせることもなく、その外
表面側をポーラスにすることもないので、銅ー亜鉛合金
層の表面を平滑な面に仕上げることができる。よって使
用時にスムースに走行し、ガイドダイスなどに目詰まり
して断線するなどの事故を防止できる。 素材的に伸線加工性が良好で、かつ安価に製造する
ことができる。 銅被覆鋼線の外周面に亜鉛層を設け、これらを熱処
理することにより、銅被覆鋼線と亜鉛層との間に、銅−
亜鉛合金層を設け、亜鉛層を完全に亜鉛濃度20〜48
重量%の銅−亜鉛合金層に変化させるようにしたので、
厚さの均一な銅−亜鉛合金層が得られ、これによって放
電性能の安定したワイヤ放電加工用電極線を得ることが
できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のワイヤ放電加工用電極線の実施例を示
す横断面図である。
【図2】本発明のワイヤ放電加工用電極線の銅−亜鉛合
金層の銅、亜鉛の濃度分布を示すグラフである。
【図3】一般的なワイヤ放電加工法の概略を説明する概
略斜視図である。
【符号の説明】
8…ガイドダイス、 11…銅被覆鋼線、 12…銅−亜鉛合金層、
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 山口 哲夫 東京都江東区木場1丁目5番1号 株式会 社フジクラ内

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 鋼線に10〜70%の銅を被覆してなる
    銅被覆鋼線の外周面に亜鉛メッキ処理を施して亜鉛層を
    形成した後、不活性ガス雰囲気中で加熱処理して厚さ1
    〜15μmであって、亜鉛濃度の最高値が48重量%
    で、かつ、20〜48重量%の亜鉛濃度の銅ー亜鉛合金
    層を形成することを特徴とするワイヤ放電加工用電極線
    の製造方法。
  2. 【請求項2】 前記熱処理の前工程、あるいは、後工程
    として伸線加工を施すことを特徴とする特許請求の範囲
    第2項記載のワイヤ放電加工用電極線の製造方法。
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