JP2006159304A - ワイヤ放電加工用電極線及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 銅で被覆された鋼線に亜鉛等の比較的低沸点の材料をコートすることで、蒸発潜熱による電極ワイヤの冷却効果とワイヤの断線防止効果を奏し、通常の黄銅線又は黄銅を心線とする亜鉛鍍金黄銅線より低廉な価格でワイヤ放電加工用電極線を提供する。
【解決手段】 心線の鋼線の表面に、銅鍍金層、黄銅層、及び亜鉛等による鍍金層が順次積層、被覆された電極線である。原料のロッドに1次酸洗及び皮膜処理を実施し(401)、皮膜処理済みの前記ロッドを1次伸線し(402)、熱処理し(403)、2次酸洗及び皮膜処理を実施し(404)、2次伸線を実施し(405)、3次酸洗を実施し(406)、銅鍍金し(407)、アニーリングし(408)、4次酸洗を実施し(409)と、亜鉛鍍金を実施し(410)、3次伸線を実施し(411)、不活性ガス雰囲気炉で矯正する(412)ことにより製造される。
【選択図】 図4
【解決手段】 心線の鋼線の表面に、銅鍍金層、黄銅層、及び亜鉛等による鍍金層が順次積層、被覆された電極線である。原料のロッドに1次酸洗及び皮膜処理を実施し(401)、皮膜処理済みの前記ロッドを1次伸線し(402)、熱処理し(403)、2次酸洗及び皮膜処理を実施し(404)、2次伸線を実施し(405)、3次酸洗を実施し(406)、銅鍍金し(407)、アニーリングし(408)、4次酸洗を実施し(409)と、亜鉛鍍金を実施し(410)、3次伸線を実施し(411)、不活性ガス雰囲気炉で矯正する(412)ことにより製造される。
【選択図】 図4
Description
本発明はワイヤ放電加工に使用される電極線に係り、より詳しくは鋼線の外周面に銅鍍金層と亜鉛等による鍍金層を順次被覆させた後、適切な伸線加工により、前記銅鍍金層と亜鉛等による鍍金層間の界面で機械的拡散による黄銅層を形成させることで、放電加工性及び耐久性を向上させるとともに、電極線の製造原価を節減するようにしたワイヤ放電加工用電極線に関するものである。
いろいろの金属加工法のうち、切断加工は機械的方法と電気的方法に大別できる。前記機械的方法は、閉ループをなす帯鋸又はシヤーナイフで金属棒又は板材などを線形に単純切断する方法で、複雑な形状、すなわち曲線形の切断が不可能である。
しかし、前記電気的切断方法は、電源の印加された細径金属線にて金属を複雑な形状に切断する方法で、前記金属線を切断しようとする面に近接させた状態で放電を生じさせて放電熱を発生させ、この放電熱で金属を溶融して切断し、前記金属線は切断しようとする面に沿って移動し続ける。
このように、電気的放熱熱により金属を切断するワイヤ放電加工の原理と過程を図1に基づいて詳細に説明する。同図に示すように、被加工物11に電極線12を最初に通過させるため、加工開始前に形成した開始孔hに、供給リールRから解けて出る電極線12を貫通させた後、電極線12の端部を巻取リールR′に固定することで、放電加工準備が済む。
放電加工は、前記電極線12の供給リールRと巻取リールR′を回転させることで開始される。この際、前記両リールR、R′間で被加工物11に垂直に進行する電極線12には、被加工面との距離を一定に維持させて被加工面の放電加工精度を維持するため、適切な引張応力が印加されており、供給リールRから巻取リールR′に移動する電極線12には“−”電圧が、金属材質の被加工物11には“+”電圧が印加されるとともに、電極線12と被加工物11間に一種の絶縁油である放電加工液が供給されることにより、電極線12と被加工物11間では電気的な火花放電が生じ、この火花放電による瞬間的な放電熱が、電極線に近接した被加工物の所望部位を溶融させて切断加工を行う。
前記放電加工液は放電を引き起こす媒体の役割をし、電極線と被加工物を冷却させるとともに溶融金属を電極線及び被加工物から除去する役割をする。
そして、火花放電が生じて加工が開始されると、被加工物が載せられた作業台を電極線に対して前後左右に動かすことにより、被加工物の動く軌跡に沿って所望の形状に切断加工されるものである。
このように行われる放電加工のうち、供給リールから巻取リールに巻き取られる電極線には一定大きさの引張応力が作用するだけでなく、およそ300℃以上の放電熱により電極線の引張強度が低下するため、放電加工中に電極線が頻繁に断線する。
したがって、前記のような電極線の断線を防止するため、電極線は高い高温強度を有しなければならず、加工精度を向上させるため、できるだけ小さい直径のものが要求される。また、電極線は使い捨て用消耗品であるため、適切な価格の維持も重要な事項として考慮しなければならないが、従来の電極線は被加工物への付着量が多く、高速放電加工時に断線の発生が多い欠点がある。
すなわち、加工速度を向上させるためには、ワイヤ電極に多い電流を流す必要があり、電極の抵抗値が高いと、発熱によりワイヤ電極が断線するため、加工速度又は加工精度を向上させ得るワイヤ電極は高い機械強度と導電性が要求される。しかし、一般に機械強度の高い金属材料は導電性が低く、反対に導電性の高い金属材料は機械強度が低い問題がある。
したがって、このような相反の特性を両立させるため、機械的強度の高い心線に導電率の高い材料で被覆する方法が開発された。従来の電極線を説明すると次のようである。
一般に、前記のようなワイヤ放電加工に使用される電極線としては、直径0.03〜0.40mmの銅線、黄銅線、亜鉛鍍金黄銅線などがあり、特に直径0.1mm以下の細線としては、タングステン又はモリブデンワイヤなどが使用されている。
しかし、前記銅線は、放電加工中に発生する熱により高温での引張強度が急に低下するため、電極線に印加される張力を減らさなければならないが、被加工物の加工切断面の精度が低下するだけでなく、電極線が切損し易く、放電加工速度が低下する問題がある。
そして、延伸加工性及び強度に優れ、65%Cu−35%Znの成分組成と0.07〜0.3mm範囲の線径を有し、そのうち、線径0.2〜0.3mmのものが全体電極線市場の80%以上を占めている黄銅線は、室温での引張強度は銅線より2倍程度高いが、放電加工時の高温特性は銅線に似ており、亜鉛鍍金黄銅線の場合、表面の亜鉛鍍金層により放電安定性は向上するが、亜鉛鍍金被膜の存在により高温強度が低下するため、加工速度を増加させると、断線される傾向が増加することになる。
また、タングステン及びモリブデンワイヤは高温強度に優れて前記諸般問題点を解決することができるが、価格が高く、伸線加工性が低下して製造費用が上昇する問題がある。
したがって、前記のような高温での問題点を解決するとともに、経済性の面も考慮する方案としては、鋼線の表面に伝導性に優れた銅又は黄銅を鍍金して被覆させる方法が提案された。このように鋼線を心線にし、その表面に被覆層が形成された構造の従来の電極線を図2A及び図2Bに基づいて説明するとつぎのようである。
まず、図2(a)は特許文献1に開示された、鋼線21を心線とし、黄銅22が被覆された放電加工用ワイヤの断面構図を示すものであり、図2(b)は特許文献2に開示された、心線(鋼線21)に銅23を被覆し、その表面に亜鉛含量40〜50%の黄銅22を被覆してなる放電加工用ワイヤの断面構造を示す。
図2(a)および(b)に示す従来電極線のうち、図2(a)の電極線は被加工物の加工面に溶融された銅粒子が融着される問題点があり、図2(b)の電極線は黄銅層の亜鉛含量が40〜50%程度で、その組織の加工性がよくないβ相合金となって伸線加工性が低い欠点がある。
特開昭53−80899号公報
大韓民国特許公告第92−7689号明細書
したがって、本発明の主目的は、銅で被覆された鋼線に亜鉛などの比較的低沸点の材料をコートすることで、蒸発潜熱による電極ワイヤの冷却効果を奏し、表面亜鉛などの酸化物がワイヤの断線発生を防止し得るワイヤ放電加工用電極線を、通常の黄銅線又は黄銅を心線とする亜鉛鍍金黄銅線より低廉な価格で提供することにある。
本発明の他の目的は、導電性と放電安定性に適した2種の材料を心線の表面に積層、被覆し、2種の材料の境界面に合金層が形成されるようにすることにより、両被覆層間の接合力と被覆層自体の剛性を補強して、均一で安定した放電加工とともに弾性の発生を最小化するワイヤ放電加工用電極線を提供することにある。
前記のような本発明の目的は、銅鍍金層と、亜鉛、カドミウム、すず、および、アルミニウムからなる群から選ばれるいずれか一つの金属の鍍金層と、これらの鍍金層の間に形成された黄銅層により達成される。前記黄銅層は、最終伸線時に減面率を制御することにより、好適に形成し得る。
本発明によるワイヤ放電加工用電極線は、鋼線を心線とし、その表面に、(1)銅鍍金層、(2)黄銅層、及び、(3)亜鉛、カドミウム、すず、および、アルミニウムからなる群から選ばれるいずれか一つの金属の鍍金層、を積層、被覆させたことに技術的特徴がある。前記黄銅層は、鍍金された心線を適切な減面率で最終に伸線し、伸線時に発生する熱と圧着力により両鍍金層の境界面で拡散を引き起こして形成することが好ましい。
前記のように、本発明のワイヤ放電加工用電極線は、心線を中心に、その表面に、(1)銅、(2)黄銅、及び、(3)亜鉛、カドミウム、すず、および、アルミニウムからなる群から選ばれるいずれか一つの金属、の3種被覆層が順次積層、被覆された構造を有し、各被覆層はそれぞれの機能を有する。各被覆層の役割を説明すると、銅鍍金層は電流を効果的に通電させ、亜鉛、カドミウム、すず、および、アルミニウムからなる群から選ばれるいずれか一つの金属の鍍金層は、放電安定性を向上させ、拡散層である黄銅層は銅と亜鉛の結合力を増大させて、外側の鍍金層が剥離されることを防止することにより、放電安定性の低下を防止するとともに、全被覆層の剛性を向上させる役割をする。
特に、亜鉛、カドミウム、すず、および、アルミニウムからなる群から選ばれるいずれか一つの金属の鍍金層は、放電加工速度を向上させるとともにサーボ電圧を低めてワイヤの断線を抑制させる。すなわち、亜鉛、カドミウム、すず、アルミニウムがかなり低い気化エネルギーを有し、この気化エネルギーが被加工物の金属粒子除去に大きな影響を及ぼすため、放電加工速度が向上する。また、これらの金属の蒸発潜熱により電極線が冷却されるので、電極線の断線が抑制される。
電流は周波数が高くなると導体の表面に沿って流れるという現象が、「表皮効果」として知られている。心線として使用される鋼線が電極線に印加される引張応力に耐える役割を果たし、かつ、前記銅鍍金層が導体の役割を果たすためには、前記銅鍍金層における表皮効果を極大化させるために、銅鍍金層の厚さを適切に設定することが好ましい。
また、前記表皮効果のため、銅鍍金層表面上に被覆される黄銅層の厚さと、亜鉛、カドミウム、すず、および、アルミニウムからなる群から選ばれるいずれか一つの金属の鍍金層(以下、「外側鍍金層」と称することもある)の厚さも、適正範囲に制御することが好ましい。その厚さが必要以上に大きくなると、銅鍍金層に比べて抵抗が大きい黄銅層及び外側鍍金層を通して流れる電流が増加して電流効率が低下し、電極線自体の抵抗熱による断線が発生することがある。一方、電流効率のみを考慮して黄銅層及び外側鍍金層の厚さをあまり小さくすると、放電加工性が低下することがある。
したがって、本発明のワイヤ放電加工用電極線は、心線の表面に銅鍍金層及び外側鍍金層をそれぞれ20〜50μm及び20〜45μmの範囲で鍍金した後、最終伸線により、前記銅鍍金層の断面積を電極線の全断面積の7〜15%にするとともに、黄銅層及び外側鍍金層の厚さをそれぞれ0.1〜1μm及び2〜15μmにすることが好ましい。
このように各被覆層の厚さを限定する理由は、次のとおりである。つまり、銅鍍金層の断面積が電極線の全断面積の7%以上の場合に、心線である鋼線を通して流れる電流量が抑制され、銅鍍金層を通して流れる電流量が増加して、電流効率及び放電加工性が向上するからである。また、その断面積を電極線の全断面積の15%以下とすれば、電極線の製造生産性を高くできるので、製造原価の上昇を抑制することができ、かつ、電極線の引張強度を保ち、弾性破損の可能性を抑制できるからである。
そして、黄銅層の場合、その厚さを0.1μm以上とすることにより、銅鍍金層及び外側鍍金層間の結合力の向上と被覆層全体の強化効果が得られる。また、黄銅層の厚さを1μm以下とすることにより、銅鍍金層及び外側鍍金層の厚さを確保することができ、電流効率及び放電安定性を向上させることができる。また、外側鍍金層の厚さを2μm以上とすることにより、電流を安定させて十分な放電性能を得ることができ、15μm以下とすることにより、電流効率および放電加工性を高くすることができる。また、高温強度が向上するので、断線し難く、製造原価を抑制できるとともに、伸線加工性が向上する。
以上のような本発明のワイヤ放電加工用電極線は、心線として鋼線を使用することにより、機械的強度と弾性係数が高くなるので、高温での断線発生頻度が減少し、加工精度が向上する。また、銅鍍金層と、亜鉛、カドミウム、すず、および、アルミニウムからなる群から選ばれるいずれか一つの金属の鍍金層との間の黄銅層により、全体被覆層が安定化して、放電加工性及び安定性が向上する利点がある。
以下、本発明を添付図面に基づいて詳細に説明する。
図3は本発明の一実施形態によるワイヤ放電加工用電極線の断面図である。図3に基づいて本発明のワイヤ放電加工用電極線構造及び特性を説明すると次のようである。
同図に示すように、ワイヤ放電加工用電極線3は、高温での引張強度を維持するため、鋼線31を心線とし、その表面に電気伝導性に優れた銅鍍金層32、黄銅層33及び亜鉛鍍金層34が順次積層、被覆された構造を有する。
この際、前記黄銅層33は鍍金でない拡散により形成されたものである。ワイヤ放電加工用電極線3の断面において、その組成が銅55〜80wt%、亜鉛20〜45wt%となる部位を黄銅層33と区分し、前記含量を外れる部位は銅鍍金層32又は亜鉛鍍金層34と見なした。
このように心線の表面に3種の被覆層を形成するワイヤ放電加工用電極線の製造方法の一例を、図4に示すフローチャートに基づいて詳細に説明する。
ワイヤ放電加工用電極線3は、原料のロッドの表面酸化スケールを除去し、伸線性を向上させるための1次酸洗及び皮膜処理を実施する段階(401)と、皮膜処理済みの前記ロッドを1次伸線する段階(402)と、1次伸線済みの線材の機械的性質を調節するため、熱処理(アニーリングとパテンチング)を実施する段階(403)と、熱処理された線材表面の酸化物を除去し、伸線性を向上させるため、2次酸洗及び皮膜処理を実施する段階(404)と、2次伸線を実施する段階(405)と、2次伸線時に発生する線材の表面残留物を除去し、鍍金効率を高めるために3次酸洗を実施する段階(406)と、硫酸銅溶液中で電気鍍金法で線材の表面に銅鍍金を実施する段階(407)と、2次伸線により硬化した線材の機械的性質を調節するためにアニーリングを実施する段階(408)と、アニーリング時に発生した線材表面の酸化物の除去と鍍金性の向上のために4次酸洗を実施する段階(409)と、4次酸洗済みの線材を硫酸亜鉛鍍金浴で亜鉛鍍金を実施する段階(410)と、亜鉛鍍金された線材に3次伸線を行って黄銅層33を形成し、線径を合わせる段階(411)と、不活性ガス雰囲気でテンションを付与するとともに、3次伸線済みの線材の機械的性質と直線度を矯正する段階(412)とからなる方法により製造される。
このように構成されるワイヤ放電加工用電極線の製造方法の各熱処理、酸洗及び鍍金工程は金属加工分野で一般に行われる技術であるので、その具体的な作業条件の記載は省略したが、前記3次伸線工程は拡散により黄銅層33を形成させる段階である。このときの伸線減面率を適切に制御することが好ましい。
すなわち、前記3次伸線は減面率90〜98%の範囲で行われることが好ましい。このときの減面率を90%以上とすることにより、黄銅層33を確実に形成することができる。また、減面率を98%以下とすることにより、黄銅層33の形成厚さを適切に制御することができ、伸線負荷の上昇を抑え、伸線作業性を向上させることができる。また、亜鉛鍍金層34の脱落も防止できる。
前記3次伸線による黄銅層33は、伸線過程で発生する線材の変形により線材組織の内部に格子欠陥が導入されるとともに、伸線ダイスと素材間で摩擦熱が発生し、圧縮応力下の剪断変形により支配される強制的な塑性流れが発生することにより、銅鍍金層32と亜鉛鍍金層34との界面での拡散により形成される。
すなわち、3次伸線の際、熱及び圧縮応力下の塑性流れによる界面拡散が、銅と亜鉛の拡散層形成に重要な役割を担当し、3次伸線過程で圧縮応力を上昇させるためには、十分な減面率のほかに、伸線ダイスの角度及びダイスと被加工線材の接触長さと関数関係にあるつぎの式1の形状係数(shape factor、Δ)の管理が好ましい。
ここで、γは減面率、αはダイス角度(radian)である。
本実施形態のワイヤ放電加工用電極線の製造方法における3次伸線においては、ダイス角度を8〜11°に調節し、前記形状係数を1.6〜2.8に維持したが、一般的な伸線工程における形状係数は2.5〜3.0であり、ダイス角度が小さくて減面率が大きいほど、静水圧応力が作用して、変形部の全ての部分で圧縮応力が作用する。
そして、本発明のワイヤ放電加工用電極線の最外層をなす外側鍍金層は、必ずしも本実施形態のような亜鉛鍍金層に限定されない。亜鉛とほぼ同等な放電加工性を表し、銅−亜鉛のような黄銅型合金状態を有するカドミウム、あるいは、銅との合金時に青銅型状態を有するすずまたはアルミニウムを、前記亜鉛の代わりに鍍金することもできる。この場合、銅鍍金層と外側鍍金層との界面には、黄銅層33ではなく、銅−カドミウム合金層、銅−すず合金層、または、銅−アルミニウム合金層が形成される。
前記のような過程により製造される本実施形態のワイヤ放電加工用電極線の特性を、つぎの実施例に基づいて説明する。
5.5mmの硬鋼線ロッドを原料とし、2次伸線の後、線径1.2mmの多数の線材を製造し、線材の表面に銅鍍金層及び亜鉛鍍金層を相違した厚さに形成した後、3次伸線(減面率95.7%)と矯正過程により、最終線径0.25mmのワイヤ放電加工用電極線を多数製造した(後述の表2に示す実施例1〜8)。その詳細な製造方法は次のようである。
原料である5.5mmロッドの表面に形成された鉄酸化スケールを除去するため、23%(10〜30%範囲内)の塩酸濃度を有するバッチ型塩酸槽で60秒間塩酸洗を実施した後、10分間燐酸塩皮膜処理を行い、生石灰で5分間中和処理を行った後、ワイヤ減面率84%(80〜90%範囲内)を有する伸線機によりダイス角度13°(11〜15°範囲内)で形状係数を2.5〜3.0の範囲に維持しながら伸線速度300〜700m/分で1.2mmまで1次伸線を行った。
1次伸線済みの線材に、細線にまで伸線できるように加工性を付与するとともに機械的性質を調節するため、インライン上で1000℃(920〜1100℃範囲内)の温度でアニーリングした後、520℃(490〜570℃範囲内)の温度で50秒間(30〜100秒範囲内)パテンチングを行い、熱処理された線材表面の酸化物を除去し、伸線性を向上させるため、塩酸濃度24%(20〜30%範囲内)、温度34℃(30〜40℃範囲内)のインライン酸洗装置で酸化スケールを除去した。そして、これにボラックス処理を行った後、ワイヤ減面率70%(67〜75%範囲内)の伸線機により、ダイス角度13°(11〜15°範囲内)で形状係数を2.5〜3.0の範囲に維持しながら伸線速度300〜700m/分で1.2mmまで2次伸線を行った。
2次伸線時に発生した線材の表面残留物を除去し、鍍金効率を高めるため、電流密度23A/dm2(15〜30A/dm2範囲内)の条件で電解硫酸洗を行い、超音波水洗を行った。さらに、鍍金前処理であるピロ燐酸銅鍍金でストライク処理を行った後、硫酸銅鍍金を行った。この際、鍍金厚さを20〜50μmに調整するため、電流密度を30〜80A/dm2範囲内に調節した。
銅鍍金及び水洗の後、硫酸亜鉛鍍金層の鍍金厚さを20〜45μmに調整するため、電流密度25〜60A/dm2の条件で亜鉛鍍金を行い、銅と亜鉛が順次鍍金された線材に3次伸線を行って、黄銅層を形成しながら最終線径を合わせた後、不活性雰囲気炉でテンションを付与しながら、3次伸線済みの線材の機械的性質及び直進度を矯正した。
(比較例)
前記実施例と同様な方法で製造するが、本発明のワイヤ放電加工用電極線における特に好ましい被覆層厚さ(黄銅層の厚さが0.1〜1μm、亜鉛鍍金層の厚さが2〜15μm)の範囲を外れる多数の比較電極線(後述の表2に示す比較例1〜5)を製造した。
(比較例)
前記実施例と同様な方法で製造するが、本発明のワイヤ放電加工用電極線における特に好ましい被覆層厚さ(黄銅層の厚さが0.1〜1μm、亜鉛鍍金層の厚さが2〜15μm)の範囲を外れる多数の比較電極線(後述の表2に示す比較例1〜5)を製造した。
前記実施例及び比較例のワイヤ放電加工用電極線と従来の黄銅線を使用して、厚さ50mmの被加工物(ダイス鋼SKD11)を切断加工して、30mm×40mmの長方形板材を切り取った。放電加工の条件とその結果を、下記の表1及び2に示す。
表1において、Sb指数は、放電加工機で安定回路を用いて放電周期を1〜16段階に分けた数値である。
表2において、加工精度は、切り取った板材の寸法誤差の範囲を判別基準として、A(0.01mm未満)、B(0.01〜0.04mm未満)、C(0.04mm以上)と表示する。また、断線頻度は、被加工物の加工速度範囲内で加速にかかわらず断線がない場合を“A”、2.3mm/分で断線が発生する場合を“B”、2.0mm/分で断線が発生する場合を“C”と表示する。
前記表2に示すように、被覆層の厚さが、本発明における特に好ましい範囲(黄銅層の厚さが0.1〜1μm、亜鉛鍍金層の厚さが2〜15μm)の上限値および下限値にそれぞれ近接した実施例1と8の場合、他の実施例と比べて加工精度がやや劣り、あるいは、加工速度の増大により断線されることが分かる。特に実施例8の場合、加工精度は良好であるが、鍍金層の過多被覆により電極線の引張強度の低下が生じて、前記断線を促進すると思われる。
そして、比較例1〜5は、全体として加工精度が低下し、加工速度の上昇に従い断線される傾向が増加することが表れた。
結論として、同一銅鍍金率において、亜鉛鍍金層の厚さが減少すると、加工精度と被加工面の表面粗度が低下し、亜鉛鍍金層の厚さが増加すると、加工速度の増加とともに切削性能が向上する傾向を有するが、亜鉛鍍金層の厚さが過度になると、引張強度の低下により断線されることがあり、厚さ増加分だけの切削性能の向上が得られないため、電極線の製造原価のみが増加することになる。
3 ワイヤ放電加工用電極線
31 鋼線
32 銅鍍金層
33 黄銅層
34 亜鉛鍍金層
11 被加工物
31 鋼線
32 銅鍍金層
33 黄銅層
34 亜鉛鍍金層
11 被加工物
Claims (4)
- 鋼線を心線とし、その表面に鍍金層が被覆されたワイヤ放電加工用電極線において、
前記心線の表面に、銅鍍金層と、黄銅層と、亜鉛、カドミウム、すず、および、アルミニウムからなる群から選ばれるいずれか一つの金属の鍍金層とが順次設けられたことを特徴とするワイヤ放電加工用電極線。 - 前記銅鍍金層の断面積が電極線全断面積の7〜15%であり、前記黄銅層の厚さが0.1〜1μmであり、前記亜鉛、カドミウム、すず、および、アルミニウムからなる群から選ばれるいずれか一つの金属の鍍金層の厚さが2〜15μmである、請求項1に記載のワイヤ放電加工用電極線。
- 鋼線を心線とするワイヤ放電加工用電極線の製造方法において、
前記鋼線の表面に、銅を鍍金することにより銅鍍金層を形成する段階と、
前記銅鍍金層の表面に、亜鉛、カドミウム、すず、および、アルミニウムからなる群から選ばれるいずれか一つの金属を鍍金することにより外側鍍金層を形成する段階と、
鍍金された線材に伸線を実施することにより、前記銅鍍金層と外側鍍金層との間に拡散による合金層を形成する段階とを含むことを特徴とするワイヤ放電加工用電極線の製造方法。 - 前記伸線を実施することにより前記合金層を形成する段階が、減面率90〜98%の範囲で実施される、請求項3に記載のワイヤ放電加工用電極線の製造方法。
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Cited By (7)
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- 2004-12-02 JP JP2004349900A patent/JP2006159304A/ja active Pending
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