JP2001300761A - アーク溶接用ワイヤ - Google Patents

アーク溶接用ワイヤ

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JP2001300761A JP2001103152A JP2001103152A JP2001300761A JP 2001300761 A JP2001300761 A JP 2001300761A JP 2001103152 A JP2001103152 A JP 2001103152A JP 2001103152 A JP2001103152 A JP 2001103152A JP 2001300761 A JP2001300761 A JP 2001300761A
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Hyo Youn Bae
ヒョ ヨウン バエ
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Hyundai Welding Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 送給性及びアーク安定性の優れたアーク溶接
用ワイヤを提供する。 【解決手段】 本発明は、その円周方向での表層部の硬
度偏差(ΔHv)が45以内で、その表面での測定対象領域を
原子間力顕微鏡又はこれに類似する走査型原子顕微鏡を
使用して各々の座標と高さを測定し、測定距離(R)によ
る粗さ相関関数のG(R)値を下記数学式1を用いて計算し
てから、測定距離Rと粗さ相関関数G(R)値をグラフ化す
る際、その勾配が一定に収斂する地点までの臨界測定距
離R(Å)と臨界粗さ相関関数G(R)(Å2)の値が各々1.0x10
4〜2.0x105、5.0x104〜1.0x108を満足する表面状態を有
するアーク溶接用ワイヤに関するものである。 【数3】

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はソリッドワイヤ、フ
ラックス入りワイヤ等を含んだアーク溶接用ワイヤに関
するものとして、より詳細には軟鋼、高張力鋼、ステン
レス鋼等の溶接に適し、アーク安定性及び送給性の優れ
たアーク溶接用ワイヤに関するものである。
【0002】
【従来の技術】溶接用ソリッドワイヤ製造の際、熱間圧
延又は引抜かれた直径5.5〜8.0mmの線材(ワイヤ)表面に
は一般に高温スケールが残留し、時間の経過につれて空
気中の水分と反応し低温スケールが生じる。従ってかか
るスケールを取除く為に曲げ加工やワイヤブラシ仕上げ
(brushing)を施し、またショットブラストないしサンド
ブラスト等を吹き付けて物理的に取除く方法を用いたり
もする。更に、上記スケールが付着したワイヤを塩酸な
いし硫酸に化学的に浸漬したり、物理化学的に超音波酸
洗浄し高温スケールと低温スケールとを取除きもした。
【0003】上述の方法によりスケールを取除いた線材
(ワイヤ)は乾式又は湿式潤滑剤と伸線用ダイスを用いて
所定の線径に伸線されるが、伸線時ワイヤ中央では付加
的な圧縮応力が、そしてその表面からは引張り応力が作
用するので塑性限界を超えると変形が起こり断面が縮小
されると同時に長さ方向に伸びるようになる。この際付
加応力を取除いても作用応力が塑性変形になり消耗され
なくて弾性限界を超えないストレイン状の一部応力は弾
性回復することになる。しかしながらワイヤ内部の格子
欠陥と表面欠陥等により塑性変形する際、弾性限界と塑
性限界がワイヤ表面で平衡を成せず変形応力がせん断応
力により臨界値に達すると表面破壊が起こる。 即ち、
長さ方向に伸びた繊維組織は切断され木皮の如く剥離が
起こり、剥離した組織の痕跡には深い溝が形成される。
これは伸線時摩擦による熱割れ(表面亀裂)と通常呼ばれ
るが、続く伸線作業の際剥離した組織の鉄くずが伸線用
ダイスとワイヤとの間に焼着し、あげくに伸線用ダイス
の著しい摩耗と溶接用ワイヤ表面が傷つき良質のワイヤ
を製造し難かった。従って、冷間伸線性を向上させる為
に溶接用ワイヤと伸線ダイスとの直接的な摩擦を防ぎ潤
滑性を与えようとZn系−りん酸塩(Zn3(PO4)・4H2O)又は
ボラックス(Borax:Na2B4O7・5H2O、Na2B4O 7・10H2O)をワ
イヤ表面に塗布して伸線前に被膜を形成し、また伸線潤
滑剤をもっと吹込ませる為に圧力ダイスと圧着ローラ等
を使用した。次いで、伸線したワイヤの表面に化学反応
ないし電解反応により銅をめっきするのが一般であり、
長時間溶接作業を行う際めっき剥離等の問題の為めっき
されていないソリッドワイヤも広く用いられている。
【0004】しかしながら図1に示したとおり、上記の
如く製造した溶接用ワイヤは伸線作業の際その表面から
作用する付加応力を取除いてもその作用応力が全て塑性
変形として消耗されない為、ストレイン状の一部応力は
残留応力として残存することになる。詳述すると、ワイ
ヤ内部の格子欠陥と表面欠陥等により塑性変形する際弾
性限界と塑性限界が表面で平衡を成せず変形応力が伸線
方向に連続性を有するのと同時に伸線方向と直角方向の
溶接用ワイヤ円周方向での引張り応力(+σ)と圧縮応力
(-σ)とが断続的な挙動を呈することになる。かかる断
続的な残留応力の不均衡が自体の平衡を維持する為に引
張り応力(+σ)と圧縮応力(-σ)とに対応して格子変形を
起こし安定化しようとする傾向が有る為、圧縮応力(-
σ)の作用する方向へ歪んだり反り変形が起こったりす
る。これは溶接作業時送給ケーブル内で溶接用ワイヤが
方向性を呈する点で重大な問題となる。即ち、溶接用ワ
イヤが?σ方向へ送給ケーブルが反っている場合には送
給時送給抵抗の減少により柔軟な特性を有し摩擦力も減
少する。しかしながら、+σの方向へ送給ケーブルが反
っている場合には送給抵抗の増加により摩擦力も増加し
摩擦面も増加する。更に、溶接用ワイヤの反り変形の為
溶接時アークの焦点が動き波形の溶接ビードが形成され
たり、-σ作用方向へ溶接用ワイヤが反る状態で続く送
給により溶接され溶接地点を外れた溶接ビードが形成さ
れたりもした。これは自動又はロボット溶接時深刻な問
題として浮んでくる。
【0005】従って、上述の変形特性を規制する為に米
国溶接協会(AWS A5.18)ではキャスト(CAST)を直径0.8mm
は305mm(12inch)、0.9mm以上は380mm(15inch)以上に、
ヘリックス(HELIX)を25mm(1inch)以下に規制して規格化
している。しかしかかる米国溶接協会(AWS A5.18)の規
定を準用する為一般に歪んだり反り変形した溶接用ワイ
ヤを矯正ローラや直線機等によって強制的に矯正してい
る現状である。更に、日本特開昭57-168722号では溶接
用ワイヤを矯正ローラで強制的に矯正しキャスト径の偏
差を10mm以内にし、スプール(SPOOL)に巻取りした溶接
用ワイヤのキャストの最大値と最小値との偏差を40mm以
下に制御した。しかしながら、かかる強制的な矯正方法
により製造した溶接用ワイヤは表面から断続的に残留す
る残留応力の不均衡が自体の平衡を維持しようと時間の
経過につれて回復する。即ち、強制的な矯正に因る一部
の塑性変形により引張り応力(+σ)と圧縮応力(-σ)とが
多少相殺する現象も否定できないが、塑性限界を超えな
い殆どの残留応力はそのまま残るので時間の経過につれ
て本来の変形したワイヤに徐々に回復する為、問題の解
決にはならなかった。
【0006】一方、上記残留応力を取除く為に約680℃
前後で応力取除熱処理する方法も用いられている。しか
しながらワイヤが大容量ボビンに巻き取られているの
で、ワイヤの始めに巻き取られた内側部位と後で巻き取
られた外側部位との熱伝達時間と温度差の為に応力取除
熱処理の度合いが大変異なってくる問題を抱えていた。
更に、高温スケールの問題により窒素雰囲気炉を用いる
方法、熱処理度合いを一定にする為、中・高炭素線材
(ワイヤ)の熱処理用鉛浴炉を用いて連続熱処理する方法
等も既に広く用いられているが、これらの方法も同様に
使用上限界が有った。
【0007】更に、日本特開昭55-54296号ではワイヤ平
均抗張力を120〜170kg/mm2にしワイヤ平均表面硬度をマ
イクロビッカース硬度計で測定し250≦Hv≦450にし、日
本特公昭53-34569号では700℃-4hrで熱処理しワイヤ長3
m当りの引張り強度の差を 2kg/mm2以下に調整して送給
性能の向上を図った。かかる方法はワイヤの表面硬度を
特定範囲に管理したり引張り強度の偏差を減少し剛性を
一定にするのに多少効果を奏するが、溶接用ワイヤ自体
の剛性平衡を制御することができず応力不均衡が未だ残
存する問題を抱えていた。更に、上記方法は伸線作業の
中間工程に用いられているが、最終的に得られる溶接用
ワイヤの表面状態を維持する為には熱処理後更に伸線作
業を続けなければならず、その為残留応力を更に断続的
に有することになる問題を抱えていた。しかも、熱処理
により応力を取除く方法は充分な熱処理時間を要し、そ
の為表層部の脱炭ないし微量の脱マンガン現象をもたら
して溶接作業の際溶接作業の性能が低減したり銅めっき
の際粒界に集積した炭化物等によりめっきが剥げる原因
になる等の問題を抱えていた。
【0008】フラックス入りワイヤを製造する一般の工
程をみると、図2に示したとおり、その厚さが0.2mmな
いし1.0mmで幅が10mm内外の薄い冷軟鋼板をU形加工ロ
ールの間に通過させその断面をU形状に中間成形してか
ら、次いでU形状の凹部にフラックス供給機からフラッ
クス(1)を供給し充填する。続いて、成形ロールに通過
させ断面をチューブ形溶接ワイヤに成形してから最終的
に伸線することにより所定の直径に溶接用ワイヤを製造
する。
【0009】こうして製造したフラックス入りワイヤは
約300〜400℃において長時間酸化熱処理しフラックス入
りワイヤ外皮(2)の表面に残存する潤滑剤を炭化した
り、硬く黒い表皮層から形成した低温鉄酸化物層又は窒
化物層等を保護被膜にして外部との接触により生じる錆
を防ぐことにより摩擦抵抗を低減させ送給性能を向上さ
せるのが一般であった。しかしながら、かかる酸化熱処
理によるフラックス入りワイヤは酸化熱処理前の伸線過
程で潤滑剤がばらついて分布されることに因り外皮表面
の表皮層を成す炭化物と低温鉄酸化物又は窒化物等が均
一に分布され難かった。更に、フラックス入りワイヤが
酸化熱処理中大容量ボビンに巻き取られていることに因
り、始めに巻き取られた内側部位と後で巻き取られた外
側部位との熱伝達時間と温度差の影響で酸化熱処理の度
合いが大変異なった。更にその外皮表面は不安定で不規
則な表皮層から覆われる為、溶接作業の際不規則な送給
抵抗によりアークが不安定だったり溶接用チップとフラ
ックス入りワイヤ外皮の表面との通電性が一定でなく溶
接用チップにフラックス入りワイヤ電極が溶け付いたり
溶接作業が中断される問題が常に指摘されていた。
【0010】前記問題を解決する為に、日本特開平3-28
5794号ではフラックス入りワイヤ外皮内にフラックスを
真空状態で充填し酸化熱処理せず伸線加工する製造方法
を提示しており、日本特開平4-262894号では外皮の縫合
部位を高周波溶接し溶接部と非溶接部との硬度差を減少
させ中間熱処理を省く製造方法を提案している。しかし
ながら上記方法は単に酸化熱処理工程を省いて製造費用
を縮減する目的には多少効果を奏するが、問題の根本的
な解決策は提示していない。
【0011】更に、アンモニア雰囲気において無酸化熱
処理する方法も周知の程であるが、酸化熱処理での問題
と同様フラックス入りワイヤは大容量ボビンにあまねく
巻き取られている為、始めに巻き取られた内側部位と後
で巻き取られた外側部位の熱伝達時間と温度差の影響に
より無酸化熱処理の度合いが大変異なり、ガスと温度伝
達の度合いにより外皮表面にしみが生じて商品性がかな
り劣り、溶接性能にも著しい違いが生じた。こうして製
造したフラックス入りワイヤは、更に図1のように、フ
ラックス入りワイヤの断面形状に係わらず断続的な残留
応力の存在により溶接作業時不規則な送給抵抗を呈す
る。殊に、外皮継手(シーム)部での応力集中により継手
部方向へ反ったり、図3のように反り変形が起こったり
もする。
【0012】日本特開昭57-1597号では反り変形を制御
し送給性能を向上させる為に溶接用ワイヤ抗張力を40〜
100kg/mm2にし、ワイヤ長さ方向への1m当りの反り角を6
0°以下に制御すると提示している。しかしながら前記
方法により反り変形を制御するのには限界が有り、しか
も時間の経過における復元現象の為、根本的な問題解決
が不可能であった。もちろん300〜400℃において酸化又
は無酸化熱処理を施し多少緩和することができるが、残
存応力は 300〜400℃の温度範囲内においては完全に取
除くことができなかった。 一方、約700℃付近まで昇温
し応力取除熱処理を行う場合には、外皮内に充填したフ
ラックスの焼損又は変質等により実際適用することがで
きなかった。更に、送給時送給ケーブル内のライナース
プリングで多少微少な送給抵抗を受けるが、この際応力
取除熱処理によりひどく軟化したフラックス入りワイヤ
がでこぼこになったり、曲がることにより送給性が悪化
する等の問題が深刻に浮かび上がった。
【0013】前記日本特開平4-262894号に開示の外皮の
縫合部位を高周波溶接し溶接部と非溶接部の硬度差を縮
減し中間熱処理を省いたフラックス入りワイヤにおいて
も、継手部の縫合面で外皮内・外部に縫合突起部が形成
されており外皮外部の縫合突起部は取除き易いが、外皮
内の縫合突起部は取除くことができず応力不均衡をその
まま残している。もし、外皮内・外部の縫合突起部を完
全に取除く方法が提示されたとしてもフラックス入りワ
イヤ円周方向での断続的な残留応力は残存するしかない
のでフラックス入りワイヤの変形も亦そのまま残ること
になる。
【0014】一方、日本特開昭55-158897号では直径1.2
〜1.6mmのフラックス入りワイヤ外皮材のビッカース硬
さを160〜240Hvに制御し、日本特開昭63-252694号では
直径0.6〜1.0mm外皮軟鋼材の炭素材の炭素当量を0.030
〜0.110%にし、その硬さをマイクロビッカース硬度計で
測定して120〜230Hvに限定した。 更に日本特開平9-389
71号ではフラックス入りワイヤの鋼材外皮内にフラック
スを充填し、充填したワイヤのせん断面積に対する外皮
部分の面積率 Rh(%)を50≦Rh≦95にして、Hv≦300、25
≦Hv−13500/Rh≦65に制御しアーク安定性と送給性能を
確保しようとした。しかしながら上記方法はマイクロビ
ッカースで表面硬度を特定範囲に管理することにより溶
接用ワイヤの剛性を一定に維持するのに多少効果を奏す
るが、ワイヤ自体の剛性平衡を制御することができない
ので応力不均衡が未だ残存し応力不均衡による送給不安
問題を解決できなかった。
【0015】一方、日本特開平9-38971号では特開昭55-
158897号と同様外皮とフラックスとの比率を調整するこ
とと共に表面硬度を適正範囲内に制御し、更に溶接用ワ
イヤ表面を平滑化(特開平1-202391号)する為に表面粗度
を一定に維持することにより送給時多少安定的な特性を
得ることができた。しかしながら長時間溶接する際送給
不安定は未だ続き、しかもワイヤ表面粗度も全表面に対
する制御が及ばなく溶接時チップ内で接点不安及びショ
ート発生による溶接中断問題を亦も解決し難かった。
【0016】触針式粗さ測定装置で測定し表面粗度を制
御する技術の一例として日本特開昭57-56170号及び特開
平3-66495号が有るが、一般の触針式粗さ測定方法では
正確な表面情報を得ることができないのでその表面粗度
の制御に限界が有った。かかる問題の為日本特開平7-32
187号では3次元表面粗度解析装置を用いて凸凹部の実
表面積と見かけ上の表面積との比を比表面積に制限して
通電点を向上させ優れたアーク安定性を得ようとした
が、これもまた一般の表面粗さと同様巨視的な次元で表
面状態の粗さ度合いの傾向を推定するのみで正確な表面
情報の確保がし難いとの問題を抱えていた。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】従って、本発明は上述
した従来技術の問題を解決する為のものであり、アーク
溶接用ワイヤ表層部の応力偏差及びその表面状態を制御
することにより送給性及びアーク安定性の優れた溶接用
ワイヤを提供することをその目的とする。
【0018】
【課題を解決するための手段】以下、本発明を説明す
る。本発明者は溶接用ワイヤの円周方向でのその表層部
の応力分布が均一で応力偏差が最小になる時優れた送給
性及びアーク安定性を確保するワイヤを得られることを
見出した。更に、本発明者は溶接用ワイヤの表面凸凹の
形状と寸法を一定に制御することにより優れた送給性及
びアーク安定性を確保するワイヤを得られることを見出
した。即ち、本発明は溶接用ワイヤの硬度偏差ばかりで
なく表面状態を制御することにより優れた送給性及びア
ーク安定性を有する溶接用ワイヤを提供することにその
特徴がある。
【0019】本発明においてワイヤ表面状態(表面凸凹
の形状及び寸法)の情報は大韓民国公開特許公報(KR)10-
1997-048672号(97.7.29)の原子間力顕微鏡とフラクタル
(fractal)理論を適用した平均結晶粒子の大きさを決定
する方法を用いて算定した。ここで、原子間力顕微鏡と
は最近開発された走査型原子顕微鏡の一種として先が尖
った探針と材料表面との間の原子間力を測定し、これを
データで示して表面の形状を表わしたり表面の高低を測
定することのできる装置として、得たデータは水平方向
の距離情報と各位置での材料の高低情報を含んでおりこ
れを3次元で表わせば材料の表面形状を得られるように
なる。
【0020】前記公開特許公報10-1997-048672号は材料
表面の粗さが結晶粒子の大きさ以下ではフラクタル蓄積
挙動(fractal scaling behavior)を呈しそれ以上の大き
さになるとフラクタル性質が無くなる性質を利用して材
料の表面粗さをフラクタルで分析し、共に間の境界値を
求めれば結晶粒子の大きさを求められるとのことに着眼
している。 詳細に説明すると、材料の表面を原子間力
顕微鏡を用いて各々の座標と高さを測定し下記数学式1
を用いて距離(R)によるG(R)値を計算してから距離RとG
(R)の値をグラフ化した後その勾配が水平になる点まで
の距離を結晶粒子の大きさに定めるのである。
【0021】従って、本発明のアーク溶接用ワイヤは、
上記ワイヤ円周方向での表層部の硬度偏差(ΔHv)が45以
内で、上記ワイヤ表面の測定対象領域を原子間力顕微鏡
又はこれに類似する走査型原子顕微鏡を用いて各々の座
標と高さを測定し、測定距離(R)による粗さ相関関数の
G(R)値を下記数学式1を用いて計算してから、測定距離R
と粗さ相関関数G(R)値をグラフ化する際、その勾配が一
定に収斂する地点までの臨界測定距離R(Å)と臨界粗さ
相関関数G(R)(Å2)の値が各々1.0x104〜2.0x105、5.0x1
04〜1.0x108を満足する表面状態を有するアーク溶接用
ワイヤに関するものである。
【0022】
【数2】
【0023】但し、ここで(x,y)は溶接用ワイヤ表面の
測定対象領域で任意の位置を、 z(x,y)はその 位置での
高さと定義される関数を示し、〈[z(x,y)−z(x,y)]2
の表記は測定距離Rから座標上に対する平均を示す。そ
して測定距離(R)はグラフのx軸を、粗さ相関関数のG(R)
はy軸を示す(請求項1)。
【0024】先ず、本発明のアーク溶接用ワイヤはその
円周方向での硬度の偏差(ΔHv)が 45以内に制御される
ことを特徴とするが、望ましくはワイヤの表面から20μ
m深さの表層部での硬度を測定する際得られる硬度偏差
を45以内に制御するのである。
【0025】本発明において、もし上記硬度の偏差(ΔH
v)値が 45より高ければ溶接用ワイヤ表面から断続的な
残留応力が存在し、この残留応力により溶接用ワイヤが
反り又はねじり変形することになる。更に溶接作業の
際、送給ケーブル内のライナースプリングから送給負荷
が増加することにより送給性能がかなり劣悪するのと同
時にアーク性も不安定になりうる。
【0026】詳細に説明すると、一般の自動又は半自動
溶接においては溶接作業条件により送給ケーブルが様々
な形態で反っており、こうした反った送給ケーブル内で
送給される溶接用ワイヤは直線状の送給ケーブルから断
然として高い送給抵抗を受けるようになる。殊に、溶接
用ワイヤの−σ方向へ送給ケーブルが反っている場合に
は多少柔軟な送給特性を呈すが、+σ方向へ送給ケーブ
ルが反っている場合にはかなり高い送給負荷の為に送給
性能が大変悪化するのである。しかしかかる現象は溶接
用ワイヤの円周方向での応力偏差が大きくなる程露にな
る為、本発明では溶接用ワイヤの円周方向での硬度差
(ΔHv)を45以内に制限することにより上記応力偏差によ
る諸問題を解消できるのである。
【0027】優れた送給性及びアーク安定性確保の為よ
り望ましくは、上記硬度偏差(ΔHv)を35以内に制御する
ことが良い(請求項2)。
【0028】一方、上記応力偏差の特性はX線回折(X-Ra
y Diffraction)試験を通して示すことができるし、SEM
等これに類似する電子顕微鏡で観察し組織の分布と大き
さとの比を通して応力分布を推定することもできる。更
に、アーク溶接用ワイヤ円周方向で微小元素を定量化す
る方法と、マルテンサイト(Martensite)とフェライト(F
errite)との量及び比を定量化する等の様々な方法を用
いることができるが、溶接用ワイヤ表面から約20μm深
さの表層部での硬度分布をマイクロビッカース硬度計を
用いて測定することにより、その偏差(ΔHv)を示す方法
が正確性及び簡便性両面から最も望ましい。
【0029】次に、本発明のアーク溶接用ワイヤは上述
のとおりその表層部の硬度値の差(ΔHv)が所定値以下に
制御すると共にそのワイヤ表面状態も一定水準に制御す
ることが要される。
【0030】本発明者の研究結果によると、溶接用ワイ
ヤの送給性及びアーク安定性に影響を及ぼすワイヤの表
面状態は該ワイヤの円周方向での表層部の応力偏差によ
り異なることが見出され、これを詳細に説明すれば次の
とおりである。その円周方向での硬度値の差(ΔHv)を示
す溶接用ワイヤの該当測定領域を原子間力顕微鏡又はこ
れに類似する走査型原子顕微鏡(SPM: Scanning probing
microscope、STM: Scanning tunneling microscope)を
用いて測定し、上記数学式1により距離(R)によるG(R)値
を計算してから距離RとG(R)値とをグラフ化するとG(R)
値は小さなスケール領域において蓄積によりその値が増
加する現象を呈しては比較的大きなスケール領域におい
て一定な値に収斂するのが見られた。この時の測定距離
R値は本発明では溶接用ワイヤの表面凸凹の大きさに限
定することができる。
【0031】しかし、ここで重要な点は測定距離R値が
硬度値の高い層ではその値が減少する傾向を呈するのに
反して、硬度値が低い層ではその値が増加する傾向を示
したことに置かれるが、これは同一組成の溶接用ワイヤ
表層部において著しい現象である。かかる現象は同一素
材において結晶粒子の大きさが相異する場合結晶粒子の
大きさは結晶粒界の面積率と逆比例する理論に基づく。
即ち、結晶粒子数が相対的に増加する場合、結晶粒子数
が増加するほど粒界の面積率も増加する為粒子間の相互
引力も増加し塑性変形しにくくなる。従って、粒子の大
きさが小さかったり粒界の面積率が大きい場合は、その
逆の場合より収縮力が高く粒子の大きさが小さい方へ変
形を起こすことになり、塑性変形に対する抵抗も高く相
対的に硬度値も増加するのである。
【0032】かかる粒子の大きさは、更に、溶接用ワイ
ヤ表面の凸凹部の大きさを決定する主な要因の一つであ
る。要するに、粒子の大きさが小さくなると表面凸凹部
の大きさも小さくなり硬度値も増加すると共に相対的な
-σ特性を示し、同時に収縮変形に及ぶのである。そし
て収縮変形時に生じる収縮応力は溶接用ワイヤの引抜き
製造時摩擦熱と塑性変形に起因するものとして、数多い
格子欠陥と格子変形による応力集積により結晶粒内の硬
度値も増加する筈である。
【0033】上述したとおり、溶接用ワイヤの円周方向
での硬度偏差が大きくなるほど-σ特性と+σ特性に相対
的な度合いの応力偏差が大きく現われるので測定対象領
域で測定距離R値も異なってくる。更にかかるR値の変化
はまた粗さ相関関数のG(R)値の変化に寄与することもで
きる。
【0034】これに係わり、重要な点は上記測定距離R
と粗さ関数G(R)が溶接用ワイヤの送給性等を評価せしめ
る表面情報を示す状態関数ことである。すなわち、上記
測定距離R値は送給ケーブル内で凸凹部の摩擦面積に係
わり、上記G(R)値は溶接時送給ケーブル内で摩擦抵抗に
起因する主な要因になるという点にある。
【0035】従って、本発明ではその測定対象領域でR
(Å)値は1.0x104ないし2.0x105で、G(R)(Å2)値は5.0x1
04ないし1.0x108の範囲を満足するようワイヤの表面状
態を制御することが優れた送給性及びアーク安定性の確
保の面から望ましい。なぜならば、G(R)(Å2)値が1.0x1
08を超えると摩擦抵抗も増加するばかりでなく溶接用チ
ップ内の接点不安を引き起こしアーク性が劣悪し、5.0x
104未満なら送給ローラと溶接用ワイヤとの間のスリッ
プ現象が増加して送給不安定をもたらすからである。
【0036】更に、R(Å)値が2.0x105を超えると摩擦面
積が増加して送給負荷電流(A)が増加する問題が有る反
面、その値が1.0x104未満なら硬度値が増加し柔軟性も
低減し劣悪な送給特性を呈するためである。
【0037】殊に、R(Å)値が2.0x105を超えG(R)(Å2)
値が5.0x104未満の場合は、送給時送給ローラとのスリ
ップにより溶接用ワイヤの表面が引掻かれたり送給不安
が生じ、R(Å)値が1.0x104未満で G(R)(Å2)値が 1.0x1
08を超える場合は、溶接用ワイヤの剛性が大変高く送給
負荷が急激に上昇するとの問題を抱えている。
【0038】上述した本発明は溶接用ワイヤの種類に制
限されない。すなわち、溶接用ソリッドワイヤばかりで
なくフラックス入りワイヤでもその円周方向での硬度偏
差及びその表面状態が本発明の範囲に属するならば全て
本発明の範囲に属するものである。
【0039】
【発明の実施の形態】以下、本発明のアーク溶接用ワイ
ヤの製造法の一例を説明する。先ずソリッドワイヤの製
造においては、熱間圧延又は引抜により製造した直径5.
5mmないし8.0mmの線材(ワイヤ)を化学又は物理化学的に
酸洗浄して表面のスケールを完全に取除いてからぬるい
温水できれいに洗い流すことを幾度か繰り返す。 この
際、長時間に渡る酸洗浄で酸浸食が起こらないように注
意すべきで、水素ガスの発生に因る水素脆性等は殊に要
注意である。更に、スマット(smut)等の汚染物質の発生
と付着から引き起こされる伸線時の潤滑剤運搬及び吹込
みの困難が伸線性を阻害する要因にならないよう適切な
酸洗浄を行うことが望ましい。
【0040】更に、伸線時潤滑剤運搬及び吹込み性を向
上させる為に潤滑被膜を形成するが、従来の石灰被膜や
ボラックス(Na2B4O7・10H2O又は Na2B4O7・5H2O)被膜等は
吸湿性が大変高く気温及び湿度の変化により伸線作業性
に著しい差異が伴うので充分な乾燥と湿度管理が要され
る。殊に、ボラックス(Na2B4O7・10H2O又は Na2B4O7・5H2
O)は被膜の形成後表面粗さが0.1〜0.2μm(濃度150〜30
0g/l)とかなり緩やかな為潤滑剤運搬及び吹込みが多
少不足な方である。更に吸湿率が約15〜25%(10〜25日)
の為、常に水分を含むのと同時に時間の経過につれて吸
湿率が高くなり、伸線作業の際被膜が剥がれたり無水物
の生成により伸線作業性を顕著に低減せしめたりする。
従って、伸線作業の際伸線ダイスと溶接用ワイヤとの間
の直接的な摩擦に近づくことになり表面応力も顕著に増
加するのと共にその応力偏差も増加されることができ、
前記ボラックスにNa2B4O7・2H2Oを用いるのがより効果的
である。 なぜならば、Na2B4O7・2H2OがNa2B4O7・10H2O又
はNa2B4O7・5H2Oに比して吸湿率が大変低いばかりでなく
表面粗さも高く伸線作業時効果的な溶接用ワイヤを得ら
れるからである。
【0041】もし、ボラックスにNa2B4O7・5H2Oを採用す
る場合は、被膜形成後、間を置かずに乾燥させ伸線する
連続工程がより効率的である。なぜならば、水分吸湿率
の高いNa2B4O7.5H2O被膜は停滞時間を最少化することで
吸湿量を減らすことができ、浸漬式よりは連続工程を選
択することで溶接用ワイヤ表面にまんべんなく被膜を形
成できるからである。
【0042】更に、ボラックスにNa2B4O7・H2O又はNa2B4
O7を用いることもできるが、高温(400〜600℃)において
溶解される為浸漬時溶接用ワイヤ表面に高温酸化物(ス
ケール)が形成され、それを取除き難く、同時に高温酸
化物により伸線性に悪影響を与えるという問題を抱えて
いる。
【0043】更に、Zn系-りん酸塩(Zn3(PO4)・4H2O)を被
膜する方法は低吸湿率と高表面粗さ等により伸線性をよ
り向上させる効果は有るが、伸線後残存するZn系-りん
酸塩(Zn3(PO4)・4H2O)を取除くのが大変困難である。も
ちろんこの場合、NaOH又はアルカリ界面活性剤等で取除
く方法が用いられてはいるが、粒界に着色したZn系-り
ん酸塩(Zn3(PO4)・4H2O)はなかなか取除くことができな
い。更にこうした残存Zn系-りん酸塩(Zn3(PO4)・4H2O)は
伸線時粒界の間で繊維組織が伸びるのを妨害したり、鉄
とりん酸化合物を形成し特定粒界で応力を集積するので
応力偏差をもたらすこともあり、また銅めっき時不安定
なめっき層を形成してめっき剥離等の原因になりもす
る。 従ってこうした問題の為、前処理被膜を選択的に
選びながら、吸湿性が低く被膜性の優れた塩(salt)を用
いるのが望ましい。上記塩(salt)の種類はその使用用途
により様々なものが有るが、一般に吸湿率が5〜10%(10
〜25日)である。更に、被膜形成後表面粗さは1.0〜3.5
μm(濃度 150〜300g/l)なので伸線作業時大量の潤滑
剤を運搬及び吹込みするのに大変効果的である。
【0044】伸線方法においては乾式伸線がより効果的
であるが、ソリッドワイヤ断面を段階的に縮小させるい
くつかの伸線用ダイスを回転させ、回転方向をソリッド
ワイヤ伸線方向の直角にいくつかの伸線用ダイスを時計
方向と時計逆方向とに交互に回転させるのがソリッドワ
イヤの表層部応力特性を均一にするのにより効果的であ
る。こうすることにより溶接用ワイヤの円周方向での断
続的な応力分布を連続的に分散させるのがとても効果的
なばかりでなく、応力偏差を相殺する作用として働くか
らである。 もちろんこれにより全体的に微少な硬度分
布増加をもたらすことがあるが、これはあまり問題にな
らない。 但し、脆弱で柔軟性が無い程硬度が高くては
困難であり、逆に軟化する程硬度が低すぎても困難であ
る。 従って、適当な柔軟性を有するよう制御するのが
重要であり、その為応力の平衡を維持するのがより効果
的である。
【0045】乾式伸線用潤滑剤はソリッドワイヤの剛性
により軟化点の高いNa系、Mo系、W系、Li系又はCa-Mo
系、Ca-W系、Ca-Li系等を選択的に用いるが、伸線潤滑
剤の効果的な吹込みの為潤滑剤の粒度と比重を十分に考
慮すると共に伸線潤滑剤の停滞により炭化が起こること
がないように渦流装置を取入れ伸線潤滑剤の充分な渦流
が行われるようにする。更に、伸線時摩擦温度の増加に
より伸線用ダイスの急速な摩耗と乾式潤滑剤の炭化を防
ぎソリッドワイヤ表面に表面亀裂等の表面欠陥が生じな
いように伸線用ダイスの直冷方式を採用するのが望まし
い。上述した前処理と伸線方法はソリッドワイヤ表層部
の応力偏差を減少するのに大変効果的である共に伸線速
度も従来の10〜20m/secから25〜35m/secへと高速化でき
る。
【0046】一方、湿式伸線により伸線したソリッドワ
イヤは段階的な伸線が進むのにつれて漸進的に応力偏差
が深化する。これは湿式伸線での摩擦係数が乾式伸線よ
り 10倍以上に作用する他に、湿式潤滑剤中に分散する
鉄分と炭化物のかすがソリッドワイヤ表面を傷つけたり
焼着する問題の為、ソリッドワイヤの繊維組織を均一に
得ることができないことに起因する。もちろん、伸線速
度を遅くし、湿式潤滑剤中に分散する鉄分と炭化物のか
すをフィルター等で瀘すことで清浄し、伸線用ダイスを
回転させる方法もあるが、湿式潤滑剤の急速な老化と摩
擦係数の増加等により産業上有用に適用し難く、同時に
複雑な製造工法を要する点で好ましくない。
【0047】ソリッドワイヤ表層部の応力偏差を減少さ
せる為に応力取除熱処理を施す方法も考慮できるが、一
般の応力取除熱処理はソリッドワイヤ全体を軟化させ溶
接作業の際送給ケーブル内において微少な摩擦抵抗によ
りソリッドワイヤがでこぼこになったり曲がる現象の
為、優れた送給特性を得ることができない。殊に、曲が
った送給ケーブル内ではこうした現象がより悪化される
ことがある。
【0048】そうして本発明者はソリッドワイヤ表層部
のみの応力を取除こうと研究を重ねた結果、高周波熱処
理を行ってソリッドワイヤ表層部の応力を効果的に取除
けることを見出した。 即ち、ソリッドワイヤの伸線
後、銅めっきを施す為表面の油脂分と異物質を取除く脱
脂前に高周波誘導式加熱炉を設け、連続的な脱脂及びめ
っき作業を進めるのと同時に伸線により不均一に形成さ
れた応力を解消できるのである。
【0049】前記方法はソリッドワイヤの剛性をそのま
ま維持しながらも表層部の応力を解消すると同時に応力
偏差を減少させるのに大変効果的であり、また高周波熱
処理によりソリッドワイヤ表面に残存する潤滑剤を焼き
払い、簡単に取除くことができる。更に、熱処理による
高温スケールも殆ど形成されず、たとえ形成されたとし
ても脱脂-酸洗工程を経ながら完全に取除くことができ
る。更に、昇温したソリッドワイヤ表面は脱脂-酸洗-め
っき工程の各工程ごとに効果的な作用を働き、めっきさ
れないソリッドワイヤも同一工程に脱脂-酸洗-脱脂工程
を追加することで応力偏差を減少することができる。も
ちろん、従来にも脱脂工程前に火炎を吹付けて溶接用ワ
イヤの油脂分を取除く方法が一部用いられてきたが、溶
接用ワイヤ表層部の応力偏差を減少できる程の役目は果
たせなかった。
【0050】上述したとおり、本発明ではその前処理と
伸線工程を制御することによりソリッドワイヤ表層部の
残留応力の偏差を減少することができると共に高周波誘
導式加熱炉による高周波熱処理方法の制御もワイヤ表層
部の残留応力の偏差を減少するのに大変効果的であるこ
とが判る。しかも、上記方法を全て選択して制御する場
合、その表層部の残留応力偏差をより小さく減少するこ
とができ、かなり一定した水準を維持する表面状態のソ
リッドワイヤ(溶接用ワイヤ)を得ることができるのであ
る。
【0051】次に、本発明によるフラックス入りワイヤ
の製造について説明する。先ず、表面に傷等の表面欠陥
が無く厚さが0.2mmないし1.0mmで幅が10mm内外の薄い冷
軟鋼板を選択するが、厚さと幅との誤差が小さい冷軟鋼
板を選択することが好ましい。もし、冷軟鋼板の厚さと
幅が不規則である場合、成形後伸線する際応力偏差が顕
著に増加するとの問題が有る。更に、成形前に成形ロー
ルと冷軟鋼板との直接的な摩擦を最小化する為、冷軟鋼
板の裏面に油脂分に富む金属石鹸から成る緩衝剤を塗布
する。そうしてから、U形加工ロールの間を通過させそ
の断面をU形状に中間成形し、次いでU形状の凹部にフ
ラックスをフラックス供給機から充填する。それに続い
て成形ロールの間を通過させ断面をチューブ型溶接ワイ
ヤで成形してから最終的な伸線により所定の直径を有す
る幾種類のフラックス入りワイヤを得ることができる。
【0052】この際、ソリッドワイヤの製造と同一な方
法でフラックス入りワイヤ断面を段階的に縮小するいく
つかの伸線用ダイスを回転させると共に回転方向を溶接
用ワイヤ伸線方向の直角にいくつかの伸線用ダイスを時
計方向と時計逆方向とに交互に回転させることにより、
溶接用ワイヤの表層部応力特性を均一にすることができ
る。
【0053】一方、酸化熱処理フラックス入りワイヤの
製造における潤滑剤として、成形時にはCa系潤滑剤にMo
S2又はWS2を混合して用いるのが効果的で、伸線時にはC
a系潤滑剤にMoS2又はWS2を混合して用いて、金属石鹸系
に界面活性剤を添加した潤滑剤を水に希釈して用いるの
が望ましい。
【0054】殊に、伸線時には乾式伸線潤滑剤の効果的
な吹込みと潤滑剤が均一に塗布されるよう潤滑剤の粒度
と比重を充分考慮し、伸線潤滑剤の停滞により炭化が起
こることがないように渦流装置を取入れ伸線潤滑剤の充
分な渦流が起こるようにした。 更に、伸線時摩擦温度
の増加により伸線用ダイスの急速な摩耗と乾式潤滑剤の
炭化を防ぎ溶接用ワイヤ表面に表面亀裂等の表面欠陥が
生じないよう伸線用ダイスの直冷方式を採用した。
【0055】前記のとおり製造したフラックス入りワイ
ヤは酸化熱処理の程合いが不均一にならないよう小容量
ボビンにあまねく巻取ると共に、熱伝達がまんべんなく
行われるように約300〜400℃において長時間酸化熱処理
する。この際、フラックス入りワイヤ外皮表面に残存す
る潤滑剤を炭化させたり、堅く黒い表皮層から形成され
た低温鉄酸化物層又は窒化物層等の保護被膜を形成して
いる。
【0056】これに比して、無酸化熱処理フラックス入
りワイヤの製造における潤滑剤として、成形時にはCa系
潤滑剤にMoS2又はWS2を混合して用いて、伸線時にはCa
系潤滑剤にMoS2又はWS2を混合して用いるのと同時にNa
系潤滑剤又はNa-Si系潤滑剤を水に希釈して用いるのが
望ましい。
【0057】更に無熱処理フラックス入りワイヤの製造
における潤滑剤として成形時にはCa系潤滑剤にMoS2又は
WS2を混合し用いて、伸線時にはCa系潤滑剤にMoS2又は
WS2を混合し用いるのと同時に、Na系潤滑剤又はNa-Si系
潤滑剤を水に希釈し用いるのが望ましく、その上伸線後
フラックス入りワイヤ表面を高速でつやだしするのが表
面の応力偏差を相殺するのに効果的に作用する。
【0058】更に、上記つや出し後送給時摩擦抵抗を減
少する為にフラックス入りワイヤ表面にフレオン溶媒と
石油系潤滑油とを希釈しスプレー又は静電塗布してか
ら、Ca-Mo-Zn系の潤滑剤を用いて再び分散塗布する。
【0059】更に、U形加工ロールと成形ロールとを用
いてフラックスが充填されたフラックス入りワイヤを製
造し、外皮の継手部を高周波溶接しその突起部を取除い
た後Ca系潤滑剤にMoS2又はWS2を混合し用いると同時にN
a系潤滑剤又はNa-Si系潤滑剤を水に希釈して伸線する。
上記伸線後フラックス入りワイヤ表面を高速でつやだし
し、次いで高周波誘導式加熱炉を通過させ瞬間の誘導熱
で外皮表層部のみを応力取除熱処理した後連続的な脱脂
及び銅めっき作業を行う。但し、高周波誘導式加熱炉に
より表層部の応力取除時外皮内のフラックスに熱の影響
が及ばないよう瞬間の誘導熱を用いて表層部の応力偏差
を減少させるべきである。
【0060】
【実施例】以下、実施例に基づいて本発明をより詳細に
説明する。スプール及びパックに巻き取られたり収納さ
れた溶接用ワイヤ又はこれと類似して巻き取られたたり
収納された溶接用ワイヤからサンプリングされその長さ
が小銭大になるよういくつか切り取るが、巻き取られた
り収納された溶接用ワイヤを10kg間隙で数回サンプリン
グした。切り取られたいくつかのサンプルは肉眼で傷の
無いことを確認したサンプルを選択し、アセトンとアル
コールにおいてそれぞれ5分間超音波洗浄後乾燥させ
た。但し、めっきしたサンプルの下地表面は NH 4OH溶液
と蒸留水とを1:1で混合した溶液でめっき層を剥がして
から超音波洗浄し乾燥した。そして、小銭大のジグにサ
ンプリングされた溶接用ワイヤ太さの溝を作り溶接用ワ
イヤが動かないように接着剤で固定した。こうした方法
でフラックス入りワイヤとソリッドワイヤの試料を作製
し、めっきされた試料とめっきされない試料、そしてめ
っきを剥がした試料に区分して備えた。
【0061】前記試料は外部振動を遮断する為の防振装
置を用いた台の上で原子間力顕微鏡で測定し、その測定
領域は80μm×80μmであった。この際、測定は同一測
定領域において6回測定し、得られた値の中で最小値と
最大値は捨てて、残り4回に対する平均値を取った。更
に、溶接用ワイヤの円周方向での測定領域を移しながら
数回以上測定し、上記数学式1によりRに伴うG(R)値を測
定し、x軸はRにしy軸はG(R)にしグラフ化してから、そ
の勾配が水平になり出す最初の地点におけるR値とG(R)
値と求め、下記表1に示した。
【0062】更に、スプール及びパックに巻き取られた
り収納されたソリッドワイヤとフラックス入りワイヤ又
はこれに類似して巻き取られたり収納された溶接用ワイ
ヤからサンプリングし長さが約15mmになるよういくつ
か切り取った。そして上記切り取った各試料が直立する
ようマウンティングして硬度が上昇されないよう少しず
つ試料断面を研磨して分類した。
【0063】そして上記の方法で製造したフラックス入
りワイヤとソリッドワイヤの試料に対してマイクロビッ
カース硬度計を用いて試験荷重200gを加えその円周方向
で約90°ずつ回転しながら測定部位を移して硬度を測定
した。この際、試験誤差を減少させる為に測定領域一個
所当り6回ずつ測定し、測定値の最大値と最小値とを捨
て残りの測定値の平均値を取った。こうして測定した硬
度値は一試料に4個の硬度平均値が得られるが、この4個
中最大硬度平均値と最小硬度平均値との偏差をΔHvで示
し下記表1に示した。
【0064】一方、上記の如く備えた溶接用ワイヤを用
いて溶接を行い、この際溶接は通常の条件において行っ
た。即ち、試験誤差を減少する為フラックス入りワイヤ
は自動往復台を、そしてソリッドワイヤはロボットを用
いて自動溶接を行い、溶接機はトランジスタインバータ
ー制御方式のCO2/MAG溶接機で定格出力はDC 350A-36Vの
ものを使用し送給装置の送給ローラはセラミック材を用
いた。
【0065】そして溶接時送給性能を評価する為に送給
ローラを通過した溶接用ワイヤの送給長さと溶接トーチ
部での溶接用ワイヤの送給長さとを測定した偏差を下記
表1に示した。この際送給長さの正確な値を求めその偏
差を確認する為に送給ローラと送給ケーブル入口部との
間と、溶接トーチ部と送給ケーブル連結部を改造し、そ
の両側にロータリーエンコーダ(Rotary encoder)を装着
するが、溶接作業時ロータリーエンコーダに付着した二
個のローラの間に溶接用ワイヤが通過できるようにし
た。上記ロータリーエンコーダは溶接用ワイヤの線速度
を回転速度に転換させ、これを測定する角速度測定装置
として1回転当り1000個のパルスを発し、200kHZの最大
周波数応答を有する。ここで発されるパルスの周波数は
F/Vコンバータ(Frequency to Voltage converter)素子
を用いて構成された回路を用いてこれに比例する直流電
圧に転換する。この直流電圧を増幅しデジタルに出力
し、出力されたデータを読み取って溶接時5分間送給さ
れた溶接用ワイヤの長さに換算した。
【0066】前記溶接作業方法で溶接し、送給部とトー
チ部とから出力されたデータを溶接時間の間送給された
溶接用ワイヤの長さに換算し、その偏差を溶接用ワイヤ
長さ偏差のΔlとして同じく下記表1に示した。
【0067】更に、図4と図5に溶接装置を示す。これら
の図面に示したように、送給装置(5)に装着した溶接用
ワイヤ(3)は送給ローラ(4)により送給ケーブル(8)へ溶
接用ワイヤが移送されながら溶接用トーチ(6)のチップ
を通過することにより被溶接材(7)に溶接されるのであ
る。
【0068】この際、上記送給ケーブル(8)は、フラッ
クス入りワイヤにおいては図4のとおり「M」字状に配置
し、6mの送給ケーブル(8)に直径(11)300mmで3回折り、
折られた送給ケーブル(8)の山の幅(10)が750mm、高さ
(9)が600mmになるよう設け、ソリッドワイヤにおいては
図5のとおり「O」字状に配置し、5mの送給ケーブル(8)に
直径(11)500mmで1回転巻かれているので溶接用ワイヤ送
給時送給ローラ(4)を回転させる送給モータの負荷電流
(A)が増加する。
【0069】図4と図5の如き方法で連続溶接し、各々の
溶接電圧(×1V)(CH1)及び溶接電流(×1kA)(CH3)の変動
と送給モータの負荷電流(×10A)(CH5)をデジタルオシロ
グラフィックレコーダ(Digital Oscillographic Record
er)で測定し、得られた送給モータの負荷電流偏差(A)の
送給抵抗偏差ΔA {ΔA=溶接時送給モータの負荷電流
(A)−溶接前ワイヤ送給時送給モータの負荷電流(A)}
と、図6に示した例の如く送給モータの負荷電流の変動
値(A)のΔA(m)、送給モータの負荷電流(A)のA(m)、溶接
電流の変動値(A)のΔA(a)を計算してその結果を同じく
下記表1に示した。
【0070】殊に、下記表1の発明例1におけるオシログ
ラフィックレコーダの結果値を図 7に示し、発明例4は
図8に、発明例11は図6に、比較例4は図10に、従来例1は
図11に、比較例6は図12に、比較例8は図13に、従来例4
は図14に、従来例5は図15に示した。更に、長時間連続
溶接した発明例4におけるオシログラフィックレコーダ
の結果値を図9に示した。
【0071】更に、連続溶接して送給性とアーク安定性
を評価し良好な順番に◎、O、△、Xで下記表1に示
し、同時にその総合評価値も同様良好な順番に◎、O、
△、Xで下記表1に示した。
【0072】一方、下記表1において「CS」は銅めっきさ
れたソリッドワイヤ、「US」はめっき無ソリッドワイヤ、
「BS」は熱処理されたソリッドワイヤ、「BF」は熱処理され
たフラックス入りワイヤ、「NF」は無熱処理フラックス入
りワイヤ、「NBF」は無酸化熱処理されたフラックス入り
ワイヤ、「CF」は継目無しで銅めっきされたフラックス入
りワイヤを示している。
【0073】更に、下記表1からΔAによりΔlが変化す
ることを図16に示し、更にΔHvにより変化するΔAとΔ
lとの関係を図17に示した。図17から判るように、「I」
の表記は本発明で応力偏差を最小にして得た硬度差(ΔH
v)が45以内の区間で優れた送給性能を得ることのできる
ΔlとΔAの上限区間を示している。そして「II」の表記
は本発明で応力偏差をより最小化し優れた送給性ばかり
でなく安定的なアーク性を確保できる最も望ましい区間
として硬度差(ΔHv)が35以内の区間を示している。
【0074】更に、下記表1においてΔHvにより変化す
るΔA(a)、A(m)、ΔA(m)の関係を図18に示し、図19は原
子間力顕微鏡で測定し、上記数学式1によりG(R)(Å2)値
を計算し、x軸は測定距離(R)にし、y軸は粗さ相関関数
のG(R)にして示したグラフが測定距離(R)によりG(R)が
増加しては一定状態に及ぶまで最初地点での測定距離R
(Å)値と粗さ相関関数のG(R)(Å2)値を示す一例として
発明例3の場合を示している。更に、ΔHvによりR(Å)と
G(R)(Å2)が変化する傾向を図20に図示し、R(Å)による
Δl(mm)とΔA(m)の傾向は図21に、G(R)(Å2)によるΔ
l(mm)とΔA(m)の変化傾向は図22に示した。
【0075】更に光学顕微鏡(×400)により、本発明の
酸化熱処理したフラックス入りワイヤ(BF)において応力
偏差により断面と継手部が相異な傾向を示す断面組織写
真の写しと継手部・断面組織写真の写しの一例を各々図
23と図24に示した。更に無熱処理フラックス入りワイヤ
(NF)において、応力偏差により断面と継手部が相異な傾
向を示す断面組織写真の写しと継手部の断面組織写真の
写しの一例を各々図25と図26に示した。更に、ソリッド
ワイヤ(CS)である従来例1と発明例4において、応力偏差
により相異な傾向を示す断面組織写真の写しの一例も各
々図27と図28に示した。
【0076】
【表1】
【0077】上記表1から判るように、溶接用ワイヤ表
層部をマイクロビッカース硬度計で測定し、測定結果の
硬度偏差(ΔHv)が45以内でR(Å)とG(R)(Å2)が特定範囲
内に入る発明例(1-16)は良好な送給特性を呈する反面、
硬度偏差(ΔHv)が一部領域で45を超える特性を示したり
R(Å)とG(R)(Å2)が特定範囲を外れる比較例(1-13)と従
来例(1-6)の場合には送給特性がかなり不安定であるこ
とが判る。しかも硬度偏差(ΔHv)が50を超える比較例(2
-3、5-7、10-13)と従来例(1-6)は溶接途中不安定な送給
特性とアーク短絡が部分的又は数回見られた。
【0078】殊に、比較例6は図12から判る如く溶接時
間が経過しながらアークが不安定になり、送給モータの
負荷電流(A)のA(m)が漸次に増加したあげくアークが絶
えて溶接が中断された。比較例(12)の場合にも送給と送
給ローラの空回転が繰り返されアークが切れたり付いた
りを繰り返すと、あげくにはアークの短絡が起こった。
更に、硬度偏差(ΔHv)が65を超える比較例(10、12、1
3)と従来例(4-6)は溶接始めから送給モータの負荷電流
(A)のA(m)が大変高かったばかりでなく、送給ローラの
空回転と共に溶接用ワイヤ表面が傷つく等の問題が生
じ、しかも溶接後溶接したビード表面がでこぼこでとて
も劣悪なビード特性を示した。しかしながら、硬度偏差
(ΔHv)が35以内の発明例(1-10、15-16)は長時間の溶接
作業でも優れた送給性能はもちろんのこと、かなり安定
したアーク特性を示した。その一例が図9によく表われ
ている。
【0079】更に、ΔAが減少するにつれてΔlが減少
する傾向が表われるのは図16におけるように明白である
為、ΔHvを45以内に制御することにより図17に示したと
おりΔAとΔlを大変低く一定に維持し、優れた送給特
性を得ることができた。更に、ΔHvを45以内に制御する
ことにより、図18に示したとおりΔA(m)、A(m)、ΔA(a)
等を大変低く一定に制御でき、かなり優れた送給性ばか
りでなく安定したアーク性を有するアーク溶接用ワイヤ
を得られることが判る。
【0080】更に、図23、24、25、26に示したとおり、
本発明の溶接用ワイヤはその断面組織の大きさも同様一
定に表われることが判る。即ち、ΔHvが45以内の微少な
硬度偏差に因り図23、25の写真の写しの上部と図24、26
とに、図23と図25の写真の写しの下部組織より多少その
組織が一定でなくばらついた状態が見られるが全般的に
一定であることが判る。更に、図27の写真の写しは従来
例 1の場合として写真の写しの左中央部は右中央部に比
して組織が相当ばらつくのが見られ、全体的にHvが高く
表われながらΔHvも同様に51を示した。しかし、図28は
本発明例4の場合として、その組織が一定に分布してい
る共に全体的にHvが低く表われΔHvも同様に12を示し
た。
【0081】一方、光学顕微鏡(×400)でも応力の定量
化は困難であるがその分布傾向は見極めることができ
た。そればかりか、ΔHvが約45以内の場合に図20に示し
たとおりR(Å)とG(R)(Å2)が均一な特定範囲内に入るこ
とが判り、ΔHvが約45以上と偏差が大きい場合R(Å)とG
(R)(Å2)が広範囲に分布していることがわかる。更に、
図21と図22に示したとおりR(Å)とG(R)(Å2)が特定領域
内においてΔl(mm)とΔA(m)の低い位置に分布する傾向
を示すことが判る。
【0082】上述したとおり、本発明の条件を満足する
発明例は比較例または従来例より低い硬度偏差を有する
故、大変優れた送給特性を示すことが判り、更に送給特
性のΔl、ΔA、ΔA(m)、A(m)、ΔA(a)も大変低く一定
となることがわかる。即ち、本発明では溶接用ワイヤの
応力偏差とその表面特性を制御することにより作業性能
である送給性及びアーク安定性の優れたアーク溶接用ワ
イヤを得ることができる。
【0083】
【発明の効果】上述したとおり、本発明はその円周方向
での硬度値の差(ΔHv)を一定値以下に制限すると共にそ
の表面状態が制御された送給性及びアーク安定性の優れ
たアーク溶接用ワイヤを提供することにその有用な効果
を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】アーク溶接用ワイヤの表層部応力偏差を示した
模式図である。
【図2】フラックス入りワイヤ中一部の断面を示した模
式図である。
【図3】フラックス入りワイヤのねじり変形を示した模
式図である。
【図4】フラックス入りワイヤの溶接性能を評価する為
の溶接試験装置を示した模式図である。
【図5】ソリッドワイヤの溶接性能を評価する為の溶接
試験装置を示した模式図である。
【図6】発明例11(NF)の送給性能を評価したデータのグ
ラフである。
【図7】発明例1(NF)の送給性能を評価したデータのグ
ラフである。
【図8】発明例4(CS)の送給性能を評価したデータのグ
ラフである。
【図9】発明例4(CS)を長時間溶接し、送給性能を評価
したデータのグラフである。
【図10】比較例4(BF)の送給性能を評価したデータの
グラフである。
【図11】従来例1(CS)の送給性能を評価したデータの
グラフである。
【図12】比較例6(NF)の送給性能を評価したデータの
グラフである。
【図13】比較例8(CS)の送給性能を評価したデータの
グラフである。
【図14】従来例4(BF)の送給性能を評価したデータの
グラフである。
【図15】従来例5(NBF)の送給性能を評価したデータの
グラフである。
【図16】ΔAによりΔlが変化するのを示したグラフ
である。
【図17】ΔHvにより変化するΔAとΔlとの関係を示
したグラフである。
【図18】ΔHvにより変化するΔA(a)とA(m)とΔA(m)と
の関係を示したグラフである。
【図19】原子間力顕微鏡を用いて測定値をグラフ化
し、R値とG(R)値を示したグラフである。
【図20】ΔHvとR、G(R)の傾向を示したグラフであ
る。
【図21】RとΔl、ΔA(m)の傾向を示したグラフであ
る。
【図22】G(R)とΔl、ΔA(m)の傾向を示したグラフで
ある。
【図23】本発明のフラックス入りワイヤ(BF)の断面組
織を示した写真の写しである。
【図24】本発明のフラックス入りワイヤ(BF)継手部の
断面組織を示した写真の写しである。
【図25】本発明のフラックス入りワイヤ(NF)の断面組
織を示した写真の写しである。
【図26】本発明のフラックス入りワイヤ(NF)継手部の
断面組織を示した写真の写しである。
【図27】従来のソリッドワイヤ(CS)の断面組織を示し
た写真の写しである。
【図28】本発明のソリッドワイヤ(CS)の断面組織を示
した写真の写しである。
【符号の説明】
1…フラックス、2…フラックス入りワイヤ外皮、3…
溶接用ワイヤ、4…送給ローラ(セラミック材)、5…送
給装置、6…溶接用トーチ(水冷式)、7…被溶接材、8
…送給ケーブル(コンジットケーブル)、9…高さ、10
…幅、11…直径、12…溶接用ロボット、CH1…溶
接電圧(×1V)、CH3…溶接電流(×1kA)、CH5…送
給モータの負荷電流(×10A)。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 溶接用ワイヤにおいて、 前記ワイヤの円周方向での表層部の硬度偏差(ΔHv)が45
    以内で、上記ワイヤ表面の測定対象領域を原子間力顕微
    鏡又はこれに類似する走査型原子顕微鏡を用いて各々の
    座標と高さを測定し、測定距離(R)による粗さ相関関数
    のG(R)値を下記数学式1を用いて計算してから、測定距
    離Rと粗さ相関関数G(R)値をグラフ化した時その勾配が
    一定に収斂する地点までの臨界測定距離R(Å)と臨界粗
    さ相関関数G(R)(Å2)の値が各々1.0x104〜2.0x105、5.0
    x104〜1.0x108を満足する表面状態を有するよう制御し
    たアーク溶接用ワイヤ。 【数1】 但し、ここで (x,y)は溶接用ワイヤ表面の測定対象領域
    において任意の位置を、z(x,y)はその位置での高さで定
    義される関数を示し、〈[z(x,y)−z(x,y)]2〉の表記は
    測定距離Rから座標に対する平均を示している。そして
    グラフにおいて測定距離(R)はx軸を、粗さ相関関数のG
    (R)はy軸を示している。
  2. 【請求項2】 上記硬度偏差が35以内であることを特徴
    とする請求項1に記載のアーク溶接用ワイヤ。
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