JP4429890B2 - ガスシールドアーク溶接用銅めっきフラックス入りワイヤ - Google Patents
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Description
その結果、鋼製外皮のC、MnおよびAl量を限定することにより、ワイヤ送給性を損なうことなくヒュームおよびスパッタ発生量を抑制でき、ワイヤ表面に銅めっきを施すとともに均一に、微粒の二硫化モリブデンおよび潤滑油を適量塗布することによって、長尺のコンジットケーブルを使用して溶接する場合においてもワイヤ送給性が良好で、チップ摩耗も極めて少なくなることを見出した。この詳細を以下に説明する。
Mnは、ヒューム発生量を抑制するためにC量を低くしたことに起因する鋼製外皮の軟化を抑えてワイヤの剛性を大きくし、ワイヤ送給性を良好にする。Mnが0.15%未満であるとワイヤの剛性が小さく、溶接時にコンジットチューブ内での送給抵抗が大きくなりワイヤ送給性が悪くなる。また、Mnが0.60%を超えるとワイヤの剛性が大きくなりすぎてチップ摩耗量が多くなる。
その他の鋼製外皮成分はFeおよび不可避的不純物であるが、Siは0.05%以下、Pは0.025%以下、Sは0.015%以下およびNは0.008%以下の範囲で添加できる。
二硫化モリブデンは、コンジットチューブ内で送給抵抗を抑制してワイヤ送給性を良好にする。また、チップとの摩擦抵抗を低減してチップ摩耗を抑制する。潤滑剤中の二硫化モリブデンが0.003g/10kgW未満であると、コンジットチューブ内で送給抵抗が大きくなりワイヤ送給性が不良となる。また、チップとの摩擦抵抗が大きくなってチップの摩耗が激しくなる。逆に、潤滑剤中の二硫化モリブデンが0.55g/10kgWを超えると、アークが不安定になってスパッタ発生量が多くなる。なお、二硫化モリブデンの粒径は1.0μm以下であることがワイヤ送給性および耐チップ摩耗性から好ましい。
なお、ワイヤ表面長手方向に対して30°方向を測定した表面粗さの算出平均粗さRaが0.04μm未満であると、銅めっきの剥離は生じないがワイヤ送給装置の送給ローラ部でワイヤがスリップしてアークが不安定になる。
表1に示す鋼製外皮を用いて、表2に示すフラックスを充填率13%として銅めっきを施し、1.2mm径まで伸線して、ワイヤ表面に表3に示す潤滑剤を塗布した各種フラックス入りワイヤを試作してスプール巻きワイヤとした。なお、ワイヤの断面構造は、全て図1(a)に示すシームレスタイプとした。
スパッタ発生量は、銅製の捕集箱を用いて、ビードオンプレート溶接により表4の溶接条件で5回溶接(1回の溶接時間1.5min)して捕集したスパッタ発生量を1分間の発生量に換算した。スパッタ発生量は1g/min以下でアークが安定して作業性が良好である。それらの結果を表5にまとめて示す。
本発明例であるワイヤNo.1〜7は、使用した鋼製外皮W1〜W5のC、Mn、Alが適正で、ワイヤ表面に銅めっきが施され、塗布された潤滑剤中の二硫化モリブデン、レシチン及び/又はフォスファチジルエタノールアミンおよび潤滑油を含む潤滑剤合計量が適正であるので、スリップ率SLおよび送給抵抗Rが低くワイヤ送給性が良好でアークが安定し、チップ摩耗量が少なく、さらに、ヒュームおよびスパッタ発生量も少なく作業性が良好であるなど極めて満足な結果であった。
ワイヤNo.9は、使用した鋼製外皮W7のMnが高いので、ワイヤの剛性が大きくチップ摩耗量が多くなった。また、ワイヤ表面長手方向に対して30°方向を測定した表面粗さの算出平均粗さRaが小さいので、スリップ率SLが高くアークが不安定になった。
ワイヤNo.11は、使用した鋼製外皮W9のAlが高いので、大粒のスパッタ発生量が多くなった。また、ワイヤ表面に塗布した潤滑剤合計量が少ないので、送給抵抗Rが大きくワイヤ送給性が不良でアークもやや不安定であった。
ワイヤNo.14は、ワイヤ表面にめっきが施されていないので、ワイヤ送給抵抗Rが大きく、チップ摩耗量も多くなってアークが不安定であった。
[図面の簡単な説明]
2 フラックス
3 鋼製外皮部の合わせ目
4 送給機
5 スプール巻きワイヤ
6 送給ローラ
7 コンジットケーブル
8 トーチ
9 チップ
10 鋼板
11 コンジットケーブルの屈曲部
12 ワイヤの実速度検出器
13 ロードセル
特許出願人 日鐵住金溶接工業株式会社
代理人 弁理士 椎 名 彊 他1
Claims (1)
- 鋼製外皮にフラックスを充填してなるガスシールドアーク溶接用銅めっきフラックス入りワイヤにおいて、該鋼製外皮は質量%で、C:0.03%以下、Mn:0.15〜0.60%、Al:0.02〜0.06%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、かつ、ワイヤ表面にワイヤ10kg当たり二硫化モリブデンを0.003〜0.55g、レシチン及び/又はフォスファチジルエタノールアミンを0.008〜0.13g含み残部は潤滑油からなる潤滑剤を合計で0.5〜2.5g有し、ワイヤ表面長手方向に対して30°方向を測定した表面粗さの算術平均粗さRaが0.04〜0.12μmであることを特徴とするガスシールドアーク溶接用銅めっきフラックス入りワイヤ。
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