JP3813360B2 - 溶接用ワイヤおよびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、送給性に優れた全自動および半自動溶接用フラックス入りワイヤ、ソリッドワイヤ等のアーク溶接用ワイヤおよびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般にCO2 ガスシールドアーク溶接、MIG溶接等には細径(0.8〜1.6mmφ)の溶接用ワイヤが使用される。溶接用ワイヤはスプールに巻かれた、あるいはペールパックに装填された形態で溶接に供せられる。この溶接用ワイヤの使用に際しては、送給機の送給ローラによりスプールあるいはペールパックからワイヤを引き出すとともに後続するコンジットケーブルに内包されたライナ内に押し込み、このライナを経由して、コンジットケーブル先端に取り付けられた溶接トーチ内の給電チップまで送給する方式が採用されている。ワイヤはこの給電チップと被溶接材間で電圧を印可されてアーク溶接が行われる。
【0003】
ここで使用されるコンジットライナは鋼線をスパイラル状にして形成したフレキシブルなガイド管であり、その長さは通常3〜6m程度であるが広域の溶接を行なう場合には10〜20mの長尺なものとなり、溶接個所までの距離に合わせて選択使用される。この方式によれば、造船現場等の溶接個所が狭隘な、あるいは高低差がある場所であっても、コンジットケーブル(ライナ)を沿わすことにより比較的容易に溶接が行なえる利点がある。
【0004】
ところが、使用時に、次のような問題が生じることがあり、その解決を求められている。
安定した溶接を行なうためには、溶接用ワイヤを決められた一定の速度で溶接部に供給すること、つまり送給性が良好であることが必要となる。ワイヤは送給ローラの送給力によってライナ内に押し込まれ、一方ライナ内面からは接触摩擦による送給抵抗を受ける。このとき、ライナが直線状態に近い比較的優しい使用環境下の場合には、送給抵抗はそれ程大きくならず送給性に問題は生じないが屈曲個所が多く、屈曲半径(曲率半径)が小さく、あるいはライナが長尺化した場合等の過酷な使用環境下の場合には、送給抵抗が増加し送給力とのバランスが崩れ、送給性が悪化する。
【0005】
ワイヤの表面状態は、この送給性の良否に大きく影響している。即ち、送給抵抗が増加したとき、ワイヤ表面の潤滑剤が少ないと、送給速度が不安定にバラツクようになり送給性が悪化する。また、ワイヤがライナ内で座屈する、送給ローラの悪化によりワイヤ表面が削れ、この削れ滓がライナ内に進入、蓄積する状態を呈する等により、益々送給抵抗が増加するようになる。逆に、ワイヤ表面の潤滑剤が多いと、送給ローラが過剰にスリップするようになり、ワイヤは所定の送給速度を維持できず送給性が悪化する。その結果、溶接アークの不安定化、ビード形状の不揃い、融合不良、アンダーカットの発生等のトラブルが発生する。
コンジットケーブルが直線状態で使われる溶接現場は殆どなく、複雑に入り組んだ場所でケーブルを屈曲させながらワークの溶接が行われるのが普通であるから、このような状況下においても送給性良好な溶接用ワイヤが強く要求されるようになった。
【0006】
従来、送給性を確保するために、溶接ワイヤ表面にさまざまな潤滑処理が行われている。
例えば特公昭50−3256号公報には、緻密平滑な表面に潤滑油を塗布した溶接用ワイヤが開示されている。ところがワイヤ表面が緻密平滑であると所定量の潤滑油をむらなく安定して塗布することが困難であり、送給性良好なワイヤを得ようとした場合、潤滑油を多く塗布せざるを得ない。しかし表面の潤滑油が多いワイヤは前述のように、送給抵抗の増加により送給ローラがスリップし易くなるからライナの屈曲等に対応でき難いこと、さらには溶接作業性の不良や拡散性水素量増加に起因する溶接金属の材質劣化を伴うという欠点がある。
【0007】
一方、固体潤滑剤を使用する例として特開昭50−146541号公報には、溶接用複合ワイヤの製造方法として二硫化モリブデン粉末、グラファイト粉末の単体あるいは混合体とフラックス成分の一種以上との混合物を主成分とする伸線剤によって伸線することを特徴とする溶接用複合ワイヤの製造方法が開示されている。また、特開昭58−135795号公報には、アーク溶接用ワイヤとしてワイヤ表面にグラファイトあるいは二硫化モリブデンの何れか一種または両者および10〜60重量%のガラス粉末の混合物のみを塗布してなり、該潤滑剤の量がワイヤ重量の5×10-2〜5×10-2%であることを特徴とするアーク溶接用ワイヤが開示されている。
【0008】
しかしながら、上記の技術では潤滑剤付着量のコントロールが困難で、過剰に潤滑剤が付着した箇所が発生したり、伸線後に潤滑剤が不均一に付着するという問題がある。潤滑剤が過剰に付着していると、コンジットケーブル内で詰まりが生じ、送給が困難になることがある。また、不均一に潤滑剤が付着していると、安定した送給が行われ難くなる。
そこで、ワイヤ表面の粗度を大きくしてその凹部に潤滑油を保持させることにより、潤滑油をワイヤ長手方向にむらなく、かつ安定して塗布する技術が提案された。例えば、特公平4−52197号公報,特公昭58−56677には、ワイヤ表面の粗度を大きくするための製造技術が開示されている。
またさらに、冬季,厳寒地等での送給潤滑油の低温粘性劣化による潤滑能低下に起因する送給性悪化の問題も無視できない。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明は、特定の送給潤滑剤(固体潤滑剤+潤滑油)をワイヤ表面に塗布することにより、ライナの屈曲等により送給抵抗が高くなる過酷な使用環境下であっても、さらには低温から高温まで幅広い作業温度環境下であっても良好な送給性を発揮することのできる溶接用ワイヤとその製造方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の要旨とするところは、
(1)送給固体潤滑剤と流動点が5℃以下、ヨウ素価が40以下のネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールから選ばれる1種以上のアルコール部と、炭素数12〜14の飽和脂肪酸を50wt%以上含有する脂肪酸部とからなるネオペンチルポリオールエステル構造の合成エステル油が送給潤滑油の総量に対して50wt%以上である送給潤滑油を付着したことを特徴とする溶接用ワイヤにある。
(2)前記送給固体潤滑剤がMoS2 ,WS2 ,ポリテトラフルオロエチレン,グラファイトの1種または2種以上で構成されることを特徴とする前記(1)記載の溶接用ワイヤにある。
【0011】
(3)送給固体潤滑剤の付着量がワイヤ10kg当り0.01〜2.0gであり、送給潤滑油の付着量がワイヤ10kg当り0.1〜1.5gであることを特徴とする前記(1)または(2)記載の溶接用ワイヤにある。
(4)送給固体潤滑剤による乾式伸線を行い、次いで少なくとも最終ダイスで流動点が5℃以下、ヨウ素価が40以下のネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールから選ばれる1種以上のアルコール部と、炭素数12〜14の飽和脂肪酸を50wt%以上含有する脂肪酸部とからなるネオペンチルポリオールエステル構造の合成エステル油が送給潤滑油の総量に対して50wt%以上である潤滑油を使用する湿式伸線を行なうことにより所定径に仕上げることを特徴とする溶接用ワイヤの製造方法にある。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の内容を詳しく説明する。
本発明では、溶接用ワイヤ表面に送給固体潤滑剤を付着する。ここで送給固体潤滑剤とはMoS2 ,WS2 ,ポリテトラフルオロエチレン(以下、PTFEという)、グラファイトの1種または2種以上をいう。これらの送給固体潤滑剤はワイヤ表面に付着してコンジットライナ内壁とワイヤとの摩擦係数を低減し、送給抵抗の増加を抑制する作用があり、溶接ワイヤの良好な送給性を確保する。
【0013】
送給固体潤滑剤の付着量は、上記効果を発揮するためにワイヤ10kg当り0.01〜2.0g(g/10kgW)とするのが良い。0.01g/10kgW未満では送給抵抗の増加抑制効果が認められず送給性改善は望めない。逆に2.0g/10kgWを超えるとワイヤ表面に過剰付着することになり、送給ローラが大きくスリップし安定送給が困難になる。またコンジットライナ内を汚し潤滑剤詰まりによる送給不良が発生するようになる。
【0014】
送給固体潤滑剤は、製造工程中、乾式ダイス伸線で使用する乾式潤滑剤中に含有させることによりワイヤ表面に付着させることができる。乾式潤滑剤は一般に伸線加工に用いられるものと同様のもので良く、粉末状の金属石けん類や無機物あるいはワックス等から構成される。金属石けんとしては、ステアリン酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミなどを用いることができる。無機物としてはタルク、酸化チタン、石灰、硼砂などが用いられる。これら乾式潤滑剤の一部は、送給固体潤滑剤とともに製品ワイヤの表面に付着する。
【0015】
乾式潤滑剤の各構成成分の機能について言及するならば、金属石けんは伸線加工時の摩擦係数を低減する機能を有し、無機物は同様に伸線加工時に金属石けんをダイスに引き込むためのキャリアの機能を有し、さらにワックスは送給固体潤滑剤をワイヤ表面に強固に付着させる機能を有する。また本発明の特徴である添加剤成分の送給固体潤滑剤は、上記した製品の送給性改善効果の他、伸線加工時における摩擦係数低減効果を有する等伸線潤滑剤としても有効に作用する。
【0016】
なお、乾式潤滑中の送給固体潤滑剤の含有量は、5〜60%とするのが望ましい。5%未満で付着量確保が困難になり、60%を超える量としてもその効果は同様であり、経済的に不利である。
また、本発明では溶接用ワイヤ表面に送給潤滑油を付着する。送給潤滑油はワイヤ表面全体に付着することにより、送給固体潤滑剤の潤滑作用を補完する役目を持つ。
【0017】
本発明の送給潤滑油は流動点が5℃以下、ヨウ素価が40以下である。送給潤滑油は、伸線加工時の摩擦係数低減作用を有すると共に、溶接ワイヤ表面に固体潤滑剤とともに付着し、溶接ワイヤの送給性を向上させる効果を有する。潤滑油の流動点が5℃以下の範囲にあれば、化学構造には全く影響を受けることなく良好な送給性が得られる。10〜30℃程度の常温域での使用はもちろんのこと、低温流動性が良いことから特に0℃以下の低温域での送給性に優れている。
【0018】
さらに本発明の潤滑油は伸線加工の際に余剰に付着した固体潤滑剤を洗浄することにより適正な付着量とし、さらに均一な付着量とする効果も有している。送給潤滑油のヨウ素価は、40以下であることが望ましい。ヨウ素価は送給潤滑油の耐酸化安定度の指標となるもので、40を超える場合は熱と経時の影響により脂肪酸の酸化重合・高分子化が進み易くなる。酸化重合・高分子化が進む結果、送給潤滑油の流動点が上昇し、安定した送給が行われなくなる。
【0019】
本発明で用いる送給潤滑油は、ネオペンチルポリオールエステル構造からなり、アルコール部がネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールから選ばれる1種以上であり、かつ脂肪酸部が炭素数12〜14の飽和脂肪酸を50wt%以上含有する合成エステル油が送給潤滑油の総量に対して50wt%以上であることが望ましい。
【0020】
ネオペンチルポリオールエステルが送給潤滑油として好適に用いられるのは、油の性質を支配しているアルコールがネオ骨格を有するヒンダート型であるため、化学的に安定で、ライナの屈曲度合いが大きい等過酷な環境下での潤滑特性に優れるからである。脂肪酸部は炭素数12〜14の飽和脂肪酸を50wt%以上含有する合成エステルとすることで、潤滑能を維持したうえで送給潤滑油の流動点を5℃以下に保つことが可能となり、低温下でも良好な送給性を発揮し得る。炭素数14を超える飽和脂肪酸を50wt%以上含有する場合は、流動点を5℃以下に保つことは困難であり、また炭素数12未満の飽和脂肪酸を50wt%以上含有する場合は、潤滑能が不十分なために安定した送給性が得られない。下記にネオペンチルポリオールエステルの一例としてネオペンチルグリコールエステルの構造式を示す。
【0021】
【化1】
【0022】
合成エステル油は送給潤滑油の総量に対して50wt%以上とし、その他の潤滑油(以下、添加潤滑油という。)と併用しても良い。添加潤滑油には鉱物油,動植物油,合成油を用いることができる。鉱物油としてはマシン油,タービン油,スピンドル油等を、動植物油としてはパーム油,菜種油,やし油,ひまし油,豚油,牛油,魚油等を用いることができる。合成油としては炭化水素系,エステル系,ポリグリコール系,ポリフェノール系,シリコーン系,フロロカーボン系等を用いることができる。
【0023】
送給潤滑油中にはさらに潤滑性能を向上させるため、各種の脂肪酸をはじめとする油性剤やりん系、塩素系、イオウ系の極圧添加剤を加えても良く、また、潤滑油の酸化を防ぐための添加剤(酸化防止剤)を加えても良い。これらの添加量は0.1〜5.0wt%にすると良好な結果が得られる。
溶接用ワイヤ表面の送給潤滑油の付着量は、ワイヤ10kg当り、0.1〜1.5g(g/10kgW)であることが望ましい。0.1g/10kgW未満では送給固体潤滑剤の潤滑作用を補完作用は少なく送給性改善は望めない。逆に1.5g/10kgWを超えるとワイヤ表面に過剰付着することになり、送給ローラがスリップし易くなる。さらに潤滑油が溶接熱で分解し多量の水素を発生するので拡散性水素量増加に起因する溶接金属の材質劣化を招き易い。
【0024】
本発明は中実状のソリッドワイヤ、ワイヤ中にフラックス材料を内包したフラックス入りワイヤ(合わせ目有りタイプ,無しタイプ)の何れの溶接用ワイヤも対象とする。まためっき有りワイヤ,めっき無しの何れの溶接用ワイヤも対象とする。
本発明の溶接用ワイヤは例えば次のようにして製造される。
▲1▼所定の工程により製造された溶接ワイヤに対し、本発明の固体潤滑剤を擦り付けて付着させ、その後に湿式ダイス伸線を行う。湿式ダイス数が複数の場合は、少なくとも最終ダイスで送給潤滑油を使用する。
▲2▼本発明の固体潤滑剤を含む乾式潤滑剤により乾式ダイス伸線を行い、次いで湿式ダイス伸線を行ない、所定の製品サイズに仕上げる。湿式ダイス数が複数の場合は、少なくとも最終ダイスで送給潤滑油を使用する。
【0025】
▲3▼ ▲2▼において湿式ダイス伸線のリダクションが例えば70%以上と大きい場合には、乾式ダイス伸線と湿式ダイス伸線の間にカセット型ローラダイス(CRD)伸線を介在させ、湿式ダイス伸線でのリダクションを小さくする。これにより湿式ダイス伸線での粗度の低下と送給潤滑剤の付着量低下を防ぐ。
なお何れの場合でも、製品サイズに伸線後のワイヤを走行させながら静電塗油する、含油フェルトで挟む等により送給潤滑油を付着するようにしても良い。
【0026】
ここでは、製造例▲3▼を図1に示す製造ライン全体の概略図により説明する。(A)は、ワイヤ素線1の供給部で、ワイヤ素線1としてめっき処理を施された、あるいはめっき無しのソリッドワイヤ、またはフラックス入りワイヤを使用する。素線径は2.0〜5.0mmφ程度で、また表面粗度としてJIS B0601−1994で規定される粗度Raでワイヤ長手方向の測定値(以下、Ra〔L〕という。)が0.3μm以上のものが望ましい。これは、素線1の表面に送給固体潤滑剤が付着し易いようにするためである。
【0027】
供給部(A)から引き出された素線1は、乾式伸線工程(B)に入り送給固体潤滑剤を含む乾式潤滑剤による乾式ダイス伸線を行う。孔ダイス2により素線表面の凹凸の凹部に乾式潤滑剤が押し込まれ、保持される。
引き続いてワイヤはCRD伸線工程(C)に入る。CRDは複数の小径ローラ対を回転軸を互いに90度毎に変えて接近させて組み立てたカセット型のローラユニット(孔ダイス1個に相当)3(3−1,3−2,3−3,3−4)であり、設定リダクションに合わせ1個または2個以上のユニットを使用してワイヤを所定サイズまで縮径する。4は引取キャプスタンを示す。このCRDの圧延加工による伸線では、ワイヤ表面の凹部内に閉じ込められた乾式潤滑剤により粗度の減衰は無いか、有っても極めて少ない。つまりワイヤ表面の凹部内に送給潤滑剤は充分保持される。
【0028】
CRD伸線により所定サイズまで縮径されたワイヤは、湿式ダイス伸線工程(D)に入る。ワイヤは、多段式スリップ型湿式伸線機5で伸線され、最後に本発明の送給潤滑油を使用した最終の仕上ダイス6により製品サイズ7まで伸線されて巻き取られる(E)。孔ダイスの引抜加工による湿式伸線工程では、ワイヤ表面の凹部内の乾式潤滑剤は減少し、それに伴い粗度も減衰するので溶接用ワイヤとして送給性に必要な送給固体潤滑剤の付着量を確保し得るサイズで伸線を終えるようにCRDと湿式伸線のリダクション配分を予め調整しておく。湿式ダイス伸線工程は、ワイヤ表面に付着している余分な乾式潤滑剤や汚れを落とす洗浄作用もある。
【0029】
製品サイズは1.0〜2.0mm程度である。このようにして製造された溶接用ワイヤの表面粗度は、Ra[L]=0.07〜0.20μm程度とするのが望ましい。粗度が0.07μm未満では送給性に必要な送給潤滑剤(固体潤滑剤+潤滑油)の付着を確保することが困難で、逆に0.20μmを超えると送給潤滑剤の過剰付着となって僅かな送給抵抗でもワイヤは大きくスリップし所定の送給速度を得られ難くなる。
【0030】
【実施例】
以下、本発明の効果を実施例により具体的に説明する。図1に示す工程に従って、仕上径(製品径)1.4φのフラックス入りワイヤ(JIS Z3313)YFW−C50DR、フラックス充填率15%)とソリッドワイヤ(JIS Z3312 YGW11)を試作し、試作品(スプール巻きワイヤ)の表面性状と送給性能を調査した。表面性状のうち粗度は触針式粗度計(針先5μmR)でRa[L]を測定し、油量,固体潤滑剤の付着量は化学分析(トルエン・エーテル抽出法)により測定した。試作条件を表1に示す。
【0031】
【表1】
【0032】
送給性評価試験は、図2に示す装置を用いて行なった。図2において送給機8にセットされたスプール巻き溶接用ワイヤ9は、送給ローラ10により引き出され、コンジットケーブル11に内包したコンジットライナを経てその先端のトーチ12まで送給される。そして通電チップと鋼板14の間でビードオンプレート溶接を行う。コンジットケーブル11は6m長で、ワイヤに送給抵抗を与えるために100mmφの輪を2つ形成した屈曲部13を設けた。送給機には送給ローラの周速度Vr(=設定ワイヤ速度)の検出器、ワイヤの実速度(Vw)検出器15を備えている。送給性評価指標のスリップ率S1はS1=(Vr−Vw)/Vr×100%で表される。また、送給ローラ部分に設けられたロードセル16により送給時にワイヤがライナから受ける反力を送給抵抗Rとして検出した。送給抵抗Rが6kgf以下でスリップ率S1が10%以下の場合に送給性良好と判定する。
【0033】
送給性試験は、溶接時間=3分間/1条件で行い送給抵抗Rとスリップ率S1を測定し平均値を求めた。送給性試験は供試ワイヤを気温50℃の室内に3ヶ月間放置し、引き続き気温5℃以下の室内に12時間放置した後に気温5℃以下の同室内にて試験を実施した(比較例の試験温度は全て5℃)。溶接条件を表2に示す。
調査結果を表3に示す。実施例1から10は本発明の実施例で、実施例11〜19は比較例を示す。
【0034】
【表2】
【0035】
本発明実施例1〜10は、送給潤滑油の流動点が≦5℃、且つヨウ素価が≦40と適正範囲にあることから、低温流動性,熱安定性,酸化安定性に優れ、過酷な温度域に長時間放置した後であっても、送給抵抗,スリップ率ともに低く良好な送給性を示し、アークは安定していた。
実施例11,12,14は、送給潤滑油の流動点が>5℃であることから、送給性は劣っていた。
実施例13は、ヨウ素価が>40であることから、高温域(50℃)放置で潤滑油の酸化が進み流動点が引き上げられた結果、送給性は劣っていた。
【0036】
実施例15は、送給潤滑油中に含まれる合成エステル油の含有%が50%未満と少なく、その結果送給性は劣っていた。
実施例16〜19は、送給潤滑剤(固体潤滑剤+潤滑油)の種類は適性であるが付着量が過少または過多の場合であり、過少の例、(実施例16,18)では送給抵抗は高く、過多の例(実施例17,19)ではスリップ率が高く送給性は劣っていた。
【0037】
【表3】
【0038】
【発明の効果】
本発明では、特定の送給潤滑剤(固体潤滑剤+潤滑油)をワイヤ表面に塗布することにより、ライナの屈曲等により送給抵抗が高くなる過酷な使用環境下であっても、さらには低温から高温まで幅広い温度環境下であっても良好な送給性を発揮することのできる溶接用ワイヤとその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係わる製造ラインの概略図である。
【図2】送給性試験の実施要領図である。
【符号の説明】
1 供試ワイヤ素線
2 乾式孔ダイス
3 CRDローラユニット
5 湿式伸線機
6 仕上ダイス
7 製品ワイヤ
8 送給機
10 送給ローラ
11 コンジットケーブル
12 トーチ
13 コンジットケーブルの屈曲部
Claims (4)
- 送給固体潤滑剤と流動点が5℃以下、ヨウ素価が40以下のネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールから選ばれる1種以上のアルコール部と、炭素数12〜14の飽和脂肪酸を50wt%以上含有する脂肪酸部とからなるネオペンチルポリオールエステル構造の合成エステル油が送給潤滑油の総量に対して50wt%以上である送給潤滑油を付着したことを特徴とする溶接用ワイヤ。
- 送給固体潤滑剤がMoS 2 ,WS 2 ,ポリテトラフルオロエチレン,グラファイトの1種または2種以上で構成される請求項1記載の溶接用ワイヤ。
- 送給固体潤滑剤の付着量がワイヤ10kg当り0.01〜2.0gであり、送給潤滑油の付着量がワイヤ10kg当り0.1〜1.5gである請求項1または2記載の溶接用ワイヤ。
- 送給固体潤滑剤による乾式伸線を行い、次いで少なくとも最終ダイスで流動点が5℃以下、ヨウ素価が40以下のネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールから選ばれる1種以上のアルコール部と、炭素数12〜14の飽和脂肪酸を50wt%以上含有する脂肪酸部とからなるネオペンチルポリオールエステル構造の合成エステル油が送給潤滑油の総量に対して50wt%以上である潤滑油を使用する湿式伸線を行なうことにより所定径に仕上げることを特徴とする溶接用ワイヤの製造方法。
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