JP4020903B2 - 炭酸ガスシールドアーク溶接用銅めっきワイヤ - Google Patents

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本発明は、炭酸ガスシールドアーク溶接用銅めっきワイヤに関し、特に低電流で長時間溶接する場合においても、ワイヤ送給性が良好でスパッタ発生量が少なく、さらにコンタクトチップ(以下、チップという。)の摩耗が少なくアークの安定性が良いなど溶接作業性に優れた炭酸ガスシールドアーク溶接用銅めっきワイヤに関する。
炭酸ガスシールドアーク溶接方法は、全姿勢溶接が可能で、信頼性の高い溶接継手が得られる。したがって、建築、橋梁を主体とする大型構造物や自動車等の輸送機器の薄板鋼構造物製造に幅広く使用されている。
炭酸ガスシールドアーク溶接用ワイヤを用いたアーク溶接作業は、ワイヤ供給装置の送給ローラにより、コンジットケーブルの内部に内包され螺旋状に形成されたコンジットチューブとそれにつながる溶接トーチのチップから連続的にワイヤを送り出しながら炭酸ガスの雰囲気でアーク溶解する方法で使用される。
また、コンジットケーブルは溶接作業を容易にするために6m以上の長尺でかつ軟質の物が用いられ、ワイヤ送給装置から溶接部までの距離の調整や狭隘部の溶接をするために上下あるいは左右に曲げられたり、ループ状に巻きつけて長さを調整して使用されることが多い。このような状況で使用された場合、ワイヤは螺旋状のコンジットチューブ内の表面と接触摩擦部が増えて送給抵抗が増し、ワイヤを円滑に送給することが困難となる。
そのため、従来から溶接用ワイヤの送給性を改善するために種々の工夫がなされている。たとえば、特開平1−15356号公報(特許文献1)にはワイヤ表面を多孔質銅めっき層で被覆し、めっき層に潤滑剤を含ませる溶接用ワイヤが、特開昭61−27198号公報(特許文献2)にはワイヤ表面に微小を凹凸を付けた後にこの凹凸に潤滑剤を付着させることを目的にワイヤ表面に平均粒径50〜750μmのショットを用いて2秒以上のショットブラスト加工を行い、植物油、鉱物油または動物油の単独あるいは混合油等の潤滑剤を塗布する溶接用ワイヤが提案されている。
しかし、これらの技術ではワイヤ表面の多孔質の銅めっきおよび凹凸部の銅めっきがコンジットチューブ内表面の接触摩擦で剥離し、長時間溶接しているとコンジットチューブ内に蓄積されて送給抵抗が大きくなり、ワイヤ送給性が悪くなってアークが不安定になる。また、ワイヤ表面の微小凹凸によってチップが摩耗してさらにアークが不安定になる。
一方、炭酸ガスアーク溶接方法で薄板の溶接を行う場合、溶接電流が高いと溶融金属の溶け落ちが生じるため、低電流、低電圧の溶接条件で溶接され、溶滴の移行は短絡移行となる。
図1に溶滴の短絡移行の説明図を示す。低電流の溶接条件で溶接される炭酸ガスアーク溶接方法において、ワイヤWと母材B間に発生するアークAの放電によって溶融するワイヤW先端の溶融金属Mに働く主な力は、溶融金属Mが移行する方向の重力Fgと、移行を妨げる方向のアーク力Faと表面張力Fsが作用している。この場合、電流による電磁力であるピンチ力は低電流であるので小さい。ワイヤW先端がアークAの熱によって溶融し、成長した溶融金属MはワイヤWから母材Bに移行する。この時、ワイヤWと母材Bとの間に溶融金属Mが架橋して一時的に短絡する。このように低電流域では、ワイヤWが溶融するアーク期間と溶融金属Mが移行する短絡期間が繰り返され、この溶融金属Mの移行形態は短絡移行といわれる。
低電流域で安定した溶接を行うには、アーク期間と短絡期間とを周期的に繰り返して溶融金属Mを移行させることが必要である。しかし、ワイヤW先端で形成される溶融金属M先端から発生するアークAの熱で溶融金属Mは、大きく成長しながらアーク力Faで押し上げられるので、溶滴が大きく、また不揃いとなって周期的な短絡移行が困難で、安定した低電流での溶接が困難であった。
この問題を解決する手段として、パルスアーク溶接で周期的に短絡させて溶滴を移行させる方法や、特開昭62−296993号公報(特許文献3)に記載のようにワイヤ成分の特にSiを低くして溶滴の粘性を低下して溶滴を小さくし、移行周期を短くする技術などがある。しかし、これらの方法では、特殊な溶接電源を用い、かつ高価なArガスを主成分とするシールドガスを用いなければならないという問題がある。
また、特開平11−77373号公報(特許文献4)には、銅めっきなしの溶接用ワイヤがある。しかしコンジットチューブに銅めっきの蓄積はないが、ワイヤ表面に銅めっきが施されてないので溶滴をスムーズに移行することができずスパッタ発生量が多くなる。また、長時間溶接しているとチップ摩耗が激しくアークが不安定になるので頻繁にチップを交換する必要がある。
特開平1−15356号公報 特開昭61−27198号公報 特開昭62−296993号公報 特開平11−77373号公報
本発明は、特に低電流で長時間溶接する場合においても、ワイヤ送給性が良好でスパッタ発生量が少なく、さらにチップの摩耗が少なくアークの安定性が良いなど溶接作業性に優れた炭酸ガスシールドアーク溶接用銅めっきワイヤを提供することを目的とする。
本発明の要旨は、炭酸ガスシールドアーク溶接用銅めっきワイヤにおいて、ワイヤ成分としてC:0.04〜0.12質量%、Si:0.45〜1.2質量%、Mn:0.9〜2.1質量%、S:0.010〜0.030%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなり、かつ、ワイヤ表面にワイヤ10kg当たり二硫化モリブデンを0.005〜0.50g、リン脂質を0.008〜0.15g含み残部は常温で液体の潤滑油からなる潤滑剤を合計で0.5〜2.5g有することを特徴とする。
また、ワイヤ表面長手方向に対して30°方向を測定した表面粗さの算術平均粗さが0.04〜0.12μmであることを特徴とする。
さらに、ワイヤ表面潤滑剤にワイヤ10kg当たりKを0.004〜0.25g含有することも特徴とする炭酸ガスシールドアーク溶接用銅めっきワイヤにある。
本発明の炭酸ガスシールドアーク溶接用銅めっきワイヤによれば、特に低電流で長時間溶接する場合においてもワイヤ送給性が良好でスパッタ発生量が少なく、さらにチップの摩耗が少なくアークの安定性が良いなど溶接作業性に優れた溶接が可能となる。
本発明者らは、前記課題を解決するためにワイヤ成分、ワイヤ表面に塗布する送給潤滑剤およびワイヤ表面状態について種々検討した。
まず、低電流の溶接条件におけるアークの安定とスパッタの低減のためには、ワイヤ先端でアーク熱によって成長する溶融金属の周期的な母材への移行を容易とすること、すなわち母材に移行する溶滴を小さく短絡移行回数を多くしてアーク長を短く保つことによってアーク長の変動を少なくして溶接を安定にすることが必要となる。溶滴が大きく成長する原因は、図1に示す溶融金属Mに働く力がFg(重力)<Fa(アーク力)+Fs(表面張力)となり、溶滴が成長して移行できるFg(重力)>Fa(アーク力)+Fs(表面張力)の条件になるまでの時間が長いことにある。したがって、溶滴を小さくするには、Fa(アーク力)やFs(表面張力)を小さくすることが有効である。
そこで、ワイヤ成分中C、Si、MnおよびSの含有量を限定して溶融金属Mの表面張力Fsを小さくすることにより、溶滴が小さく移行が周期的になりアークが安定してスパッタ発生量が少なくなる。さらに、潤滑剤中にKを適量含有することによって、溶滴が微粒になり極めてアークが安定することを見出した。
また、ワイヤ送給性および耐チップ磨耗性は、ワイヤ表面に銅めっきを施し、二硫化モリブデン、リン脂質および常温で液体である潤滑油を適量塗布するとともにワイヤ表面粗さを限定することによって確保する。その結果、軟質で長尺のコンジットケーブルを使用して低電流の溶接条件で長時間溶接する場合においてもワイヤ送給性が良好で、スパッタ発生量およびチップ摩耗も極めて少なくなり安定したアークが得られることを見出した。
ワイヤ成分中のCは、溶融金属Mの表面張力Fsを小さくして溶滴を小さくし、アークの安定とスパッタ発生量抑制のために添加する。Cが0.04質量%(以下、%という。)未満であると表面張力Fsが大きくなり溶滴が大きくなって大粒のスパッタが発生する。0.12%を超えるとアーク力Faが大きくなってスパッタ発生量が多くなる。
Siは、溶融金属Mの表面張力Fsを小さくして溶滴を小さくし、アークの安定とスパッタ発生量抑制のために添加する。Siが0.45%未満であると表面張力Fsが大きくなり溶滴が大きくなって溶滴移行時のアーク長が変動してアークが不安定となる。1.2%を超えるとスパッタ発生量が多くなる。
MnもSiと同様に溶融金属Mの表面張力Fsを小さくして溶滴を小さくし、アークの安定とスパッタ発生量抑制のために添加する。Mnが0.9%未満であると表面張力Fsが大きくなり溶滴が大きくなってアークが不安定となる。2.1%を超えるとスパッタ発生量が多くなる。
Sは、溶融金属Mの表面張力Fsを小さくして溶滴を小さくして移行を周期的にしてアークを安定にする。Sが0.010未満であるとワイヤ先端部の溶融金属の表面張力Fsが大きく、溶滴が大きく不揃いとなって周期的な母材への短絡移行が困難で、短絡回数が少なくなりアークが不安定となる。0.030%を超えると溶接金属に割れが生じるおそれがある。
また、ワイヤ表面潤滑剤にKを0.004〜0.25g/10kgW含むことのよって、アーク力Faを小さくして溶滴が微粒になり極めてアークが安定する。ワイヤ表面潤滑剤のKが0.004g/10kgW未満では効果が発揮できず、0.25g/10kgWを超えると、スパッタ発生量が多くなる。
ワイヤ表面の銅めっきは、コンジットチューブ内での摩擦抵抗を低減するとともにチップ先端での通電性を良好にしアークを安定させる。さらに、長時間溶接してもチップ摩耗が極めて少なく安定したアークを持続させることができる。しかし、JIS B0601−1994で規定されるワイヤ表面長手方向に対して30°方向を測定した表面粗さの算出平均粗さRaが0.12μmを超えると、コンジットチューブ内の摩擦によってワイヤ表面の銅めっきが剥がれ、長時間溶接しているとコンジットチューブ内に銅くずが蓄積され送給抵抗が大きくなり、ワイヤ送給性が悪くなってアークが不安定になる。また、長時間溶接でチップの摩耗量が多くなってアークが不安定となる。銅めっきは通電性、潤滑性およびチップの耐摩耗性を向上させるとともに防錆性向上の効果も有する。めっき厚は0.3〜1.2μm程度が好ましい。
なお、ワイヤ表面長手方向に対して30°方向を測定した表面粗さの算出平均粗さRaが0.04μm未満であると、銅めっきの剥離は生じないがワイヤ送給装置の送給ローラ部でワイヤがスリップしてアークが不安定になる。
ワイヤ表面に塗布する潤滑剤は、ワイヤ10kg当たり二硫化モリブデンを0.005〜0.50g、リン脂質を0.008〜0.15g含み残部は常温で液体である潤滑油からなる潤滑剤を合計で0.5〜2.5g(以下、g/10kgWという。)とする。
二硫化モリブデンは、コンジットチューブ内で送給抵抗を抑制してワイヤ送給性を良好にする。二硫化モリブデンが0.005g/10kgW未満であると、コンジットチューブ内で送給抵抗が大きくなりワイヤ送給性が不良となる。逆に、二硫化モリブデンが0.50g/10kgWを超えると、アークが不安定になってスパッタ発生量が多くなる。なお、二硫化モリブデンの粒径は1.0μm以下であることが送給抵抗を低減してワイヤ送給性を良好にするので好ましい。
リン脂質は、後述する常温で液体である潤滑油と共存することによりワイヤ表面の二硫化モリブデンを均一に分散させる作用を有する。リン脂質が0.008g/10kgW未満であるとワイヤ表面の二硫化モリブデンが均一に付着せず、コンジットチューブ内で送給抵抗が大きくなる部分があり、ワイヤ送給性が不良になる。逆に、リン脂質が0.15g/10kgWを超えると、スパッタ発生量が多くなる。
本発明にいうリン脂質とは、レシチン(フォスファチジルコリン)、フォスファチジルエタノールアミン、フォスファチジルイノシトールなどのリン脂質を主成分とするものを意味し、例えば、大豆や卵黄などから得られるリン脂質を95%程度含有する粉末状のもの、リン脂質を約65%および大豆油などの植物油を35%程度含有するペースト状のものなどあり、いずれも使用することができ、中でも大豆油から得られるレシチンが好ましい。
潤滑剤中の常温で液体である潤滑油は、ワイヤ表面に皮膜を有し、ワイヤ送給時に二硫化モリブデンの潤滑作用を補完しワイヤ送給性を向上させる。潤滑油は、動植物油、鉱物油あるいは合成油の何れでもよい。動植物油としてはパーム油、菜種油、ひまし油、豚油、牛油、魚油等を、鉱物油としてはマシン油、タービン油、スピンドル油等を用いることができる。合成油としては炭化水素系、エステル系、ポリグリコール系、ポリフェノール系、シリコーン系、フロロカーボン系を用いることができる。潤滑油中にはさらに潤滑性能を向上させるため、各種の脂肪酸をはじめとする油性剤やリン系、ハロゲン系、イオウ系の極圧添加剤を加えても良く、また、潤滑油の酸化を防ぐための添加剤(酸化防止剤)を加えてもよい。
ワイヤ表面に含む潤滑剤は、前記二硫化モリブデン、リン脂質および常温で液体である潤滑油の合計で0.5〜2.5g/10kgWとする。潤滑剤の合計量が0.5g/10kgW未満であると、コンジットチューブ内で送給抵抗が大きくなりワイヤ送給性が不良となる。逆に、2.5g/10kgWを超えると、送給ローラ部でワイヤがスリップしてアークが不安定になる。
本発明の炭酸ガスシールドアーク溶接用銅めっきワイヤは、ワイヤ原線を一次伸線したワイヤ素線のワイヤ表面にめっきを施し、湿式伸線で縮径して縮径率をコントロールして目的のワイヤ表面粗さとし、仕上げ伸線または仕上げ伸線後に前記送給潤滑剤をワイヤ表面に塗布して製造する。
以下、本発明の効果を実施例により具体的に説明する。
表1および表2に示すように、ワイヤ径1.2mmの溶接用ワイヤの成分、ワイヤ表面状態および潤滑剤塗布量を変えたものを試作してスプール巻きワイヤとした。
Figure 0004020903
Figure 0004020903
各試作ワイヤにつきワイヤ送給性、チップ摩耗量、アーク状態、スパッタ発生量および短絡移行回数を調査した。ワイヤ送給性、チップ摩耗量およびアーク状態の評価は、図1に示す装置を用いて行った。図1において送給機1にセットされたスプール巻きワイヤ2は、送給ローラ3により引き出され、コンジットケーブル4に内包されたコンジットチューブを経てその先端のトーチ5からチップ6まで送給される。そしてチップ6と鋼板7との間でビードオンプレート溶接を行う。コンジットケーブル4は6m長さで、送給抵抗を与えるために150mm径のループを2つ形成した屈曲部8を設けた。送給機1には送給ローラの周速度Vr(設定ワイヤ速度)の検知器(図示せず)およびワイヤの実速度Vw検出器9を備えている。
ワイヤ送給性評価指標のスリップ率SL(%)は、SL=(Vr−Vw)/Vr×100で表される。また、送給ローラ部分に設けられたロードセル10によりワイヤ送給時にワイヤがコンジットチューブから受ける反力を送給抵抗Rとして検出した。溶接は試作ワイヤ毎に新しいコンジットチューブを用いて表3に示す条件No.1の溶接条件で45分溶接し、溶接開始後15分から溶接終了までの30分間スリップ率SLと送給抵抗Rを測定して平均値を求めた。スリップ率SLが10%以下で送給抵抗Rが6kgf以下の場合にワイヤ送給性良好と判定した。また、チップの摩耗量は、試作ワイヤ毎に新しいチップ(内径1.4mm)を用いて溶接終了後最も摩耗の大きい箇所の内径を測定した。チップ摩耗量の評価は、摩耗量が0.05mm以下を良好として評価した。
Figure 0004020903
スパッタ発生量は、上記ワイヤ送給性およびチップ摩耗性の試験終了後、コンジットチューブおよびチップを交換せずに銅製の捕集箱を用いて、ビードオンプレート溶接により表3に示す条件No.1の溶接条件で5回溶接(1回の溶接時間1.5min)して捕集したスパッタを1分間の発生量に換算した。スパッタ発生量は1g/min以下でアークが安定して作業性が良好である。
短絡移行回数の測定は、板厚3.2mmの鋼板を重ね継手として表2の条件No.2の溶接条件で500mm長さ溶接し、溶接電圧波形をA/Dコンバーターを介してパソコンで記録、解析して、電圧が5V以下を短絡のしきい値とし、短絡移行の回数を測定した。なお、短絡移行回数が80回/min以上でアークが安定して作業性が良好である。それらの結果を表4にまとめて示す。表1、表2および表4中、ワイヤNo.1〜8が本発明例、ワイヤNo.9〜17が比較例である。
Figure 0004020903
本発明例である試験No.1〜8は、ワイヤ成分範囲が適正で銅めっきを有し、ワイヤ表面の潤滑剤である二硫化モリブデン、レシチン、Kの付着量および潤滑油を含む潤滑剤の合計量とワイヤ表面長手方向に対して30°方向を測定した算術平均粗さRaが適正である。したがってスリップ率SLおよび送給抵抗Rが低くワイヤ送給性が良好で、チップ摩耗量およびスパッタ発生量も少なくアークが安定して溶接作業性が良好で、重ね継手試験においても短絡移行回数が多くアークが安定するなど極めて満足な結果であった。
比較例中ワイヤNo.9は、ワイヤ成分のCが高いのでスパッタ発生量が多くなった。また、重ね継手試験での短絡移行回数が少なく送給性試験および重ね継手試験のいずれにおいてもアークが不安定であった。さらに、ワイヤ表面長手方向に対して30°方向を測定した算術平均粗さRaが高いのでコンジットチューブ内の摩擦によってワイヤ表面の銅めっきが剥がれてコンジットチューブ内に銅くずが蓄積されて送給抵抗Rが大きくワイヤ送給性が不良となり、チップ摩耗量も多くなった。
ワイヤNo.10は、ワイヤ成分のCが低いので重ね継手試験での短絡移行回数が少なくアークが不安定で大粒のスパッタが発生した。また、ワイヤ表面長手方向に対して30°方向を測定した算術平均粗さRaが低いのでスリップ率SLが高くワイヤ送給性が不良となった。
ワイヤNo.11は、ワイヤ成分のSiが高いのでスパッタ発生量が多くなった。また、ワイヤ表面潤滑剤のレシチンが少ないので送給抵抗Rが大きくワイヤ送給性が不良となった。さらに、ワイヤ表面潤滑剤中のKが少ないのでアークがやや不安定となった。
ワイヤNo.12は、ワイヤ成分のMnが高いのでスパッタ発生量が多くなった。また、Siが低いので重ね継手試験での短絡移行回数が少なく送給性試験および重ね継手試験のいずれにおいてもアークが不安定であった。さらに、ワイヤ表面潤滑剤の合計量が多いのでスリップ率SLが高くワイヤ送給性が不良となった。
ワイヤNo.13は、Mnが低いので重ね継手試験での短絡移行回数が少なく送給性試験および重ね継手試験のいずれにおいてもアークが不安定であった。また、ワイヤ表面潤滑剤のレシチンが多いのでスパッタ発生量が多くなった。さらに、ワイヤ表面潤滑剤の合計量が少ないので送給抵抗Rが大きくワイヤ送給性が不良となった。
ワイヤNo.14は、ワイヤ成分のSが高いので重ね継手試験のクレータ部に割れが生じた。また、ワイヤ表面潤滑剤の二硫化モリブデンが少ないので送給抵抗Rが大きくワイヤ送給性が不良となった。
ワイヤNo.15は、ワイヤ成分のSが低いので重ね継手試験での短絡移行回数が少なく送給性試験および重ね継手試験のいずれにおいてもアークが不安定であった。また、ワイヤ表面潤滑剤中のKが多いのでスパッタ発生量が多くなった。
ワイヤNo.16は、ワイヤ表面潤滑剤の二硫化モリブデンが多いのでアークが不安定でスパッタ発生量も多くなった。
ワイヤNo.17は、ワイヤ表面に銅めっきが施されていないのでワイヤ送給抵抗Rが大きく、チップ摩耗量も多くアークが不安定であった。
溶滴の短絡移行の説明図である。 本発明の実施例におけるワイヤ送給性試験の装置を示す図面である。
符号の説明
W ワイヤ
M 溶融金属
A アーク
B 母材
Fa アーク力
Fs 表面張力
Fg 重力
1 送給機
2 スプール巻きワイヤ
3 送給ローラ
4 コンジットケーブル
5 トーチ
6 チップ
7 鋼板
8 コンジットケーブルの屈曲部
9 ワイヤの実速度検出器
10 ロードセル

Claims (3)

  1. 炭酸ガスシールドアーク溶接用銅めっきワイヤにおいて、ワイヤ成分としてC:0.04〜0.12質量%、Si:0.45〜1.2質量%、Mn:0.9〜2.1質量%、S:0.010〜0.030%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなり、かつ、ワイヤ表面にワイヤ10kg当たり二硫化モリブデンを0.005〜0.50g、リン脂質を0.008〜0.15g含み残部は常温で液体の潤滑油からなる潤滑剤を合計で0.5〜2.5g有することを特徴とする炭酸ガスシールドアーク溶接用銅めっきワイヤ。
  2. ワイヤ表面長手方向に対して30°方向を測定した表面粗さの算術平均粗さが0.04〜0.12μmであることを特徴とする請求項1記載の炭酸ガスシールドアーク溶接用銅めっきワイヤ。
  3. ワイヤ表面潤滑剤にワイヤ10kg当たりKを0.004〜0.25g含有することを特徴とする請求項1または2記載の炭酸ガスシールドアーク溶接用銅めっきワイヤ。
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