本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
[実施の形態1]
図1は、この発明の実施の形態1による結晶成長装置の概略断面図である。図1を参照して、この発明の実施の形態1による結晶成長装置100は、反応容器10と、外部反応容器20と、配管30と、抑制/導入栓40と、加熱装置50,60と、ガス供給管70,80と、バルブ90,91,140と、圧力調整器110と、ガスボンベ120と、排気管130と、真空ポンプ150と、圧力センサー160と、金属融液170とを備える。
反応容器10は、略円柱形状を有し、本体部11と、蓋部12とからなる。外部反応容器20は、反応容器10と所定の間隔を隔てて反応容器10の周囲に配置される。そして、反応容器10は、窒化ホウ素(BN)からなり、外部反応容器20は、SUS316Lからなる。
配管30は、重力方向DR1において、反応容器10の下側で外部反応容器20に連結される。抑制/導入栓40は、たとえば、金属およびセラミック等からなり、外部反応容器20と配管30との連結部よりも下側の配管30内に保持される。
加熱装置50は、外部反応容器20の外周面20Aを囲むように配置される。加熱装置60は、外部反応容器20の底面20Bに対向して配置される。ガス供給管70は、一方端がバルブ90を介して外部反応容器20に連結され、他方端が圧力調整器110を介してガスボンベ120に連結される。ガス供給管80は、一方端がバルブ91を介して配管30に連結され、他方端がガス供給管70に連結される。
バルブ90は、外部反応容器20の近傍でガス供給管70に装着される。バルブ91は、配管30の近傍でガス供給管80に装着される。圧力調整器110は、ガスボンベ120の近傍でガス供給管70に装着される。ガスボンベ120は、ガス供給管70に連結される。
排気管130は、一方端がバルブ140を介して外部反応容器20に連結され、他方端が真空ポンプ150に連結される。バルブ140は、外部反応容器20の近傍で排気管130に装着される。真空ポンプ150は、排気管130に連結される。
圧力センサー160は、外部反応容器20に取り付けられる。金属融液170は、金属ナトリウム(金属Na)融液からなり、反応容器10と外部反応容器20との間に保持される。
反応容器10は、金属Naと、金属ガリウム(金属Ga)との混合融液180を保持する。外部反応容器20は、反応容器10の周囲を覆う。配管30は、ガス供給管70,80を介してガスボンベ120から供給された窒素ガス(N2ガス)を抑制/導入栓40に導く。
抑制/導入栓40は、配管30の内壁との間に数十μmの孔が形成されるように外周面に凹凸構造を有し、配管30内の窒素ガスを金属融液170の方向へ通過させ、窒素ガスを金属融液170を介して空間21内へ供給する。また、金属融液170の表面張力により、数十μmの孔の中には金属融液170は入らず、金属融液170は、抑制/導入栓40上に金属融液170を保持する。この結果、抑制/導入栓40は、金属融液170を反応容器10と外部反応容器20との間に保持する。
加熱装置50は、反応容器10および外部反応容器20を外部反応容器20の外周面20Aから加熱する。加熱装置60は、反応容器10および外部反応容器20を外部反応容器20の底面20Bから加熱する。
ガス供給管70は、ガスボンベ120から圧力調整器110を介して供給された窒素ガスをバルブ90を介して外部反応容器20内へ供給する。ガス供給管80は、ガスボンベ120から圧力調整器110を介して供給された窒素ガスをバルブ91を介して配管30内へ供給する。
バルブ90は、ガス供給管70内の窒素ガスを外部反応容器20内へ供給し、または窒素ガスの外部反応容器20内への供給を停止する。バルブ91は、ガス供給管80内の窒素ガスを配管30内へ供給し、または窒素ガスの配管30内への供給を停止する。圧力調整器110は、ガスボンベ120からの窒素ガスを所定の圧力にしてガス供給管70,80に供給する。
ガスボンベ120は、窒素ガスを保持する。排気管130は、外部反応容器20内の気体を真空ポンプ150へ通過させる。バルブ140は、外部反応容器20内と排気管130とを空間的に繋げ、または外部反応容器20内と排気管130とを空間的に遮断する。真空ポンプ150は、排気管130およびバルブ140を介して外部反応容器20内の真空引きを行なう。
圧力センサー160は、外部反応容器20内の圧力を検出する。金属融液170と抑制/導入栓40とを介して窒素ガスが空間21へ供給される。
図2は、図1に示す抑制/導入栓40の斜視図である。図2を参照して、抑制/導入栓40は、栓41と、凸部42とを含む。栓41は、略円柱形状からなる。凸部42は、略半円形の断面形状を有し、栓41の外周面に栓41の長さ方向DR2に沿って形成される。
図3は、抑制/導入栓40の配管30への取付状態を示す平面図である。図3を参照して、凸部42は、栓41の円周方向に複数個形成され、複数の凸部42は、数十μmの間隔dで形成される。また、凸部42は、数十μmの高さHを有する。抑制/導入栓40の複数の凸部42は、配管30の内壁30Aに接する。これにより、抑制/導入栓40は、配管30の内壁30Aに嵌合する。
凸部42が数十μmの高さHを有し、数十μmの間隔dで栓41の外周面に配置される結果、抑制/導入栓40が配管30の内壁30Aに嵌合した状態では、抑制/導入栓40と配管30の内壁30Aとの間に、直径が略数十μmである空隙43が複数個形成される。
この空隙43は、栓41の長さ方向DR2に窒素ガスを通過させるとともに、この空隙43があっても金属融液170の表面張力によって金属融液170を保持し、金属融液170が栓41の長さ方向DR2に通過するのを阻止する。
図4は、GaN結晶の製造方法を説明するための実施の形態1におけるフローチャートである。図4を参照して、一連の動作が開始されると、Arガスが充填されたグローブボックス内へ反応容器10および外部反応容器20を入れる。そして、Arガス雰囲気中で金属Naおよび金属Gaを反応容器10に入れる(ステップS1)。この場合、金属Naおよび金属Gaを5:5のモル比率で反応容器10に入れる。なお、Arガスは、水分量が10ppm以下であり、かつ、酸素量が10ppm以下であるArガスである(以下、同じ)。
その後、Arガス雰囲気中で金属Naを反応容器10と外部反応容器20との間に入れる(ステップS2)。そして、反応容器10および外部反応容器20内にArガスを充填した状態で反応容器10および外部反応容器20を結晶成長装置100に設定する。
引続いて、バルブ140を開け、真空ポンプ150によって反応容器10および外部反応容器20内に充填されたArガスを排気する。真空ポンプ150によって反応容器10および外部反応容器20内を所定の圧力(0.133Pa以下)まで真空引きした後、バルブ140を閉じ、バルブ90,91を開けて窒素ガスをガスボンベ120からガス供給管70,80を介して反応容器10および外部反応容器20内へ充填する。この場合、圧力調整器110によって反応容器10および外部反応容器20内の圧力が1気圧程度になるように反応容器10および外部反応容器20内へ窒素ガスを供給する。
そして、圧力センサー160によって検出した外部反応容器20内の圧力が1気圧程度になると、バルブ90,91を閉じ、バルブ140を開けて真空ポンプ150によって反応容器10および外部反応容器20内に充填された窒素ガスを排気する。この場合も、真空ポンプ150によって反応容器10および外部反応容器20内を所定の圧力(0.133Pa以下)まで真空引きする。
そして、この反応容器10および外部反応容器20内の真空引きと反応容器10および外部反応容器20への窒素ガスの充填とを数回繰り返し行なう。
その後、真空ポンプ150によって反応容器10および外部反応容器20内を所定の圧力まで真空引きした後、バルブ140を閉じ、バルブ90,91を開けて圧力調整器110によって反応容器10および外部反応容器20内の圧力が10〜50気圧の範囲になるように反応容器10および外部反応容器20内へ窒素ガスを充填する(ステップS3)。
この場合、反応容器10と外部反応容器20との間の金属Naは、固体であるので、窒素ガスは、抑制/導入栓40を介して配管30の空間31から外部反応容器20内の空間21および反応容器10内の空間13へ供給される。蓋部12は、本体部11上に載せられているだけであり、本体部11と蓋部12との間には間隙が有るので、空間21へ供給された窒素ガスは、その間隙を介して反応容器10内の空間13にも充填される。そして、圧力センサー160によって検出した空間21内の圧力が10〜50気圧になった時点でバルブ90が閉じられる。この時点で、空間13,21,31内の圧力は10〜50気圧になっている。
その後、加熱装置50,60によって反応容器10および外部反応容器20を800℃に加熱する(ステップS4)。この場合、反応容器10と外部反応容器20との間に保持された金属Naは、融点が約98℃であるので、反応容器10および外部反応容器20が800℃に加熱される過程で溶融され、金属融液170になる。そして、2つの気液界面1,2が発生する(図1参照)。気液界面1は、金属融液170と外部反応容器20内の空間21との界面に位置し、気液界面2は、金属融液170と抑制/導入栓40との界面に位置する。
また、反応容器10および外部反応容器20の温度が800℃に昇温された時点で、抑制/導入栓40の温度は、150℃である。従って、気液界面2における金属融液170(=金属Na融液)の蒸気圧は、7.6×10−9気圧であり、金属融液170(=金属Na融液)は、抑制/導入栓40の空隙43を介して殆ど蒸発しない。その結果、金属融液170(=金属Na融液)は、殆ど減少しない。
抑制/導入栓40の温度が300℃または400℃に昇温されても、金属融液170(=金属Na融液)の蒸気圧は、それぞれ、1.8×10−5気圧および4.7×10−4気圧であり、この程度の蒸気圧では、金属融液170(=金属Na融液)の減少を殆ど無視できる。
このように、結晶成長装置100においては、抑制/導入栓40の温度は、金属融液170(=金属Na融液)が蒸発によって実質的に減少しない温度に設定される。
さらに、反応容器10および外部反応容器20の温度が800℃に昇温されると、反応容器10内の金属Naおよび金属Gaも液体になり、金属Naと金属Gaとの混合融液180が発生する。そして、空間13内の窒素ガスが混合融液180中へ取り込まれ、混合融液180中にGaN結晶が成長し始める。
その後、GaN結晶の成長が進行すると、空間13内の窒素ガスが消費され、空間13内の窒素ガスが減少する。そうすると、空間13,21内の圧力P1が配管30内の空間31の圧力P2よりも低くなり(P1<P2)、空間13,21内と空間31内との間に差圧が発生し、空間31の窒素ガスは、抑制/導入栓40および金属融液170(=金属Na融液)を介して空間21および空間13内へ順次供給される(ステップS5)。
その後、反応容器10および外部反応容器20の温度が、所定の時間(数十時間〜数百時間)、800℃に保持される(ステップS6)。これによって、大きなサイズのGaN結晶が成長する。このGaN結晶は、c軸(<0001>)方向に成長した柱状形状を有し、欠陥フリーの結晶である。
そして、反応容器10および外部反応容器20の温度が降温されて(ステップS7)、GaN結晶の製造が終了する。
図5は、反応容器10および外部反応容器20の温度のタイミングチャートである。また、図6は、図5に示す2つのタイミングt1,t2間における反応容器10および外部反応容器20内の状態を示す模式図である。さらに、図7は、図4に示すステップS5における反応容器10および外部反応容器20内の状態を示す模式図である。
図5を参照して、反応容器10および外部反応容器20が加熱装置50,60によって加熱され始めると、反応容器10および外部反応容器20の温度は、上昇し始め、タイミングt1において98℃に達し、タイミングt2で800℃に達する。
そうすると、反応容器10と外部反応容器20との間に保持された金属Naは溶け、金属融液170(=金属Na融液)になる。そして、空間13,21内の窒素ガス3は、金属融液170(=金属Na融液)および抑制/導入栓40を介して配管30内の空間31へ拡散することができず、空間13,21内に閉じ込められる(図6参照)。
このように、結晶成長装置100においては、抑制/導入栓40および金属融液170(=金属Na融液)によって窒素ガス3を反応容器10および外部反応容器20内の空間13,21に閉じ込めてGaN結晶を成長させることを特徴とする。
タイミングt2以降、反応容器10および外部反応容器20の温度は、800℃に保持され、混合融液180中でGaN結晶の成長が進行する。タイミングt1以降、金属融液170および混合融液180中の金属Naが蒸発し始め、徐々に蒸気圧が高くなる。タイミングt2以降、800℃ではNaは、0.45気圧の蒸気圧を有する。その結果、空間13,21内には、窒素ガス3および金属Na蒸気4が混在する。
そして、窒素ガス3の消費によって、空間13,21内の圧力P1が配管30内の空間31の圧力P2よりも低下する。そうすると、金属融液170は、空間13,21側へ移動し、金属融液170の気液界面1,2は、上昇する。
このような状態において、窒素ガスは、配管30の空間31から抑制/導入栓40を介して金属融液170に供給され、金属融液170中を泡171となって移動し、気液界面1から空間13,21へ供給される。そして、空間13,21内の圧力P1が空間31内の圧力P2とほぼ同じになると、金属融液170が元の位置まで降下し、配管30の空間31から抑制/導入栓40および金属融液170を介した窒素ガスの反応容器10および外部反応容器20への供給が停止される。
このように、抑制/導入栓40が存在することにより、金属融液170(=金属Na融液)の表面張力によって反応容器10と外部反応容器20との間に金属融液170が保持されるとともに、窒素ガスが空間31から反応容器10および外部反応容器20内へ供給される。従って、抑制/導入栓40は、金属融液170の通過を阻止する構造からなる。
また、結晶成長装置100においては、金属Na蒸気4を空間13,21内へ閉じ込めた状態でGaN結晶を成長させることを特徴とする。この特徴によって、混合融液180中からの金属Naの蒸発が抑制され、混合融液180中における金属Naと金属Gaとのモル比率をほぼ一定に保持でき、大きく、かつ、高品質なGaN結晶を成長させることができる。
さらに、結晶成長装置100においては、反応容器10内の空間13に連通した外部反応容器20内の空間21と金属融液170との気液界面1または気液界面1付近における温度T1は、空間13と混合融液180との気液界面5または気液界面5付近における温度T2に略一致するように、加熱装置50は、反応容器10および外部反応容器20を加熱する。
このように、気液界面1または気液界面1付近における温度T1を気液界面5または気液界面5付近における温度T2に略一致させることによって、金属融液170から蒸発した金属Na蒸気と混合融液180から蒸発した金属Na蒸気とが空間13,21内で平衡状態になり、空間13内の金属Na蒸気が空間21内へ拡散するのを抑制できる。その結果、混合融液180からの金属Naの蒸発を確実に抑制して混合融液180中における金属Naと金属Gaとのモル比率を安定化でき、高品質で且つ大きなサイズを有するGaN結晶を安定して製造できる。
さらに、結晶成長装置100においては、温度T1が温度T2よりも高くなるように反応容器10および外部反応容器20を加熱してもよい。この場合、反応容器10と外部反応容器20との間に加熱装置をさらに設置し、その設置した加熱装置によって反応容器10を加熱して気液界面5または気液界面5付近を温度T2に加熱し、加熱装置50によって気液界面1または気液界面1付近を温度T1に加熱する。
このように、温度T1を温度T2よりも高い温度に設定することによって、気液界面1における金属Naの蒸気圧が気液界面5における金属Naの蒸気圧よりも高くなり、金属Na蒸気が空間21から空間13内へ拡散する。そうすると、空間13内において金属Na蒸気の濃度が高くなり、混合融液180からの金属Naの蒸発をさらに抑制できる。その結果、混合融液180中における金属Naと金属Gaとのモル比率を確実に安定化でき、高品質で且つ大きいサイズを有するGaN結晶を安定して製造できる。
したがって、結晶成長装置100においては、温度T1が温度T2以上に設定されてGaN結晶の製造が行なわれる。
上記においては、抑制/導入栓40の凸部42の高さHおよび複数の凸部42の間隔dは、数十μmであると説明したが、凸部42の高さHおよび複数の凸部42の間隔dは、抑制/導入栓40の温度に応じて決定されるようにしてもよい。この場合、抑制/導入栓40の温度が相対的に高い場合、凸部42の高さHは相対的に低くされ、かつ、複数の凸部42の間隔dは、相対的に小さくされる。また、抑制/導入栓40の温度が相対的に低い場合、凸部42の高さHは相対的に高くされ、かつ、複数の凸部42の間隔dは、相対的に大きくされる。つまり、抑制/導入栓40の温度が相対的に高い場合、抑制/導入栓40と配管30との間の空隙43のサイズが相対的に小さくされ、抑制/導入栓40の温度が相対的に低い場合、抑制/導入栓40と配管30との間の空隙43のサイズが相対的に大きくされる。
凸部42の高さHおよび複数の凸部42の間隔dによって空隙43の大きさが決定され、金属融液170の表面張力により金属融液170を保持可能な空隙43の大きさが抑制/導入栓40の温度によって変化する。したがって、凸部42の高さHおよび複数の凸部42の間隔dを抑制/導入栓40の温度に応じて変化させ、金属融液170の表面張力によって金属融液170を確実に保持できるようにしたものである。
そして、抑制/導入栓40の温度制御は、加熱装置60によって行われる。すなわち、抑制/導入栓40の温度を150℃よりも高い温度に昇温する場合には、加熱装置60によって抑制/導入栓40を加熱する。
実施の形態1によれば、GaN結晶の結晶成長時には、金属Na蒸気が金属融液170および抑制/導入器40によって空間13,21内へ閉じ込められるとともに、窒素ガスが配管30から空間13,21内へ安定して供給されるので、混合融液180中の金属Naと金属Gaとのモル比率を安定化できるとともに、窒素ガスを混合融液180中へ安定して供給できる。その結果、高品質で且つサイズの大きいGaN結晶を製造できる。
なお、実施の形態1においては、抑制/導入栓40と加熱装置60との距離によって抑制/導入栓40の温度を制御するようにしてもよい。この場合、抑制/導入栓40の温度を相対的に高くする場合、抑制/導入栓40と加熱装置60との距離を相対的に短く設定し、抑制/導入栓40の温度を相対的に低くする場合、抑制/導入栓40と加熱装置60との距離を相対的に長く設定する。
また、混合融液180からの金属Naの蒸発を抑制する観点から、加熱装置50を重力方向において2つの加熱装置50A,50Bに分離し、加熱装置50Aを金属融液170の上部に対向する位置に配置し、加熱装置50Bを金属融液170の下部に対向する位置に配置する。そして、加熱装置50Aによって金属融液170の上部の温度を相対的に高く設定し、加熱装置50Bによって金属融液170の下部の温度を相対的に低くする。これによって、金属融液170から空間21への金属Naの蒸発を促進でき、空間21内の金属Na蒸気の濃度を空間13内の金属Na蒸気の濃度よりも高くできる。その結果、金属Na蒸気の空間13から空間21への拡散をさらに抑制し、混合融液180からの金属Naの蒸発をさらに抑制できる。
さらに、実施の形態1においては、抑制/導入栓40および金属融液170は、「抑制/導入器」を構成する。
また、抑制/導入栓40は、「抑制/導入部材」を構成する。
さらに、圧力調整器110およびガスボンベ120は、「ガス供給装置」を構成する。
さらに、抑制/導入栓40は、「嵌合部材」を構成する。
[実施の形態2]
図8は、実施の形態2による結晶成長装置の概略断面図である。図8を参照して、実施の形態2による結晶成長装置100Aは、図1に示す結晶成長装置100の抑制/導入栓40を抑制/導入栓400に代えたものであり、その他は、結晶成長装置100と同じである。
抑制/導入栓400は、たとえば、金属およびセラミック等からなり、外部反応容器20と配管30との連結部に固定される。そして、抑制/導入栓400は、金属融液170を介して配管30の空間31から反応容器10および外部反応容器20の空間21,13へ窒素ガスを供給する。また、抑制/導入栓400は、金属融液170の表面張力によって金属融液170を反応容器10と外部反応容器20との間に保持する。
なお、結晶成長装置100Aにおいては、加熱装置60は、反応容器10および外部反応容器20を800℃に加熱するのではなく、抑制/導入栓400の温度を金属融液170が抑制/導入栓400を介して実質的に蒸発しない温度に設定するように、反応容器10および外部反応容器20を加熱する。
図9は、図8に示す抑制/導入栓400の斜視図である。また、図10は、図8に示す抑制/導入栓400の固定方法を説明するための断面図である。図9を参照して、抑制/導入栓400は、栓401と、複数の凸部402とからなる。栓401は、長さ方向DR3へ直径が変化する円柱形状からなる。複数の凸部402の各々は、略半球形状を有し、直径が数十μmである。そして、複数の凸部402は、栓401の外周面401Aにランダムに形成される。ただし、隣接する2つの凸部402の間隔は、数十μmに設定される。
図10を参照して、抑制/導入栓400は、支持部材403,404によって外部反応容器20と配管30との連結部に固定される。より具体的には、抑制/導入栓400は、一方端が外部反応容器20に固定された支持部材403と、一方端が配管30の内壁に固定された支持部材404とによって挟まれることによって固定される。
この場合、抑制/導入栓400の凸部402は、外部反応容器20および配管30に接していてもよく、接していなくてもよい。凸部402が外部反応容器20および配管30に接しないように抑制/導入栓400が固定される場合、凸部402と外部反応容器20および配管30との間隔を金属融液170の表面張力によって金属融液170を保持可能な間隔に設定して抑制/導入栓400を支持部材403,404によって固定する。
反応容器10と外部反応容器20との間に保持された金属Naは、反応容器10および外部反応容器20の加熱が開始される前、固体であるので、ガスボンベ120から供給された窒素ガスは、外部反応容器20の空間21と配管30の空間31との間を抑制/導入栓400を介して拡散可能である。
そして、反応容器10および外部反応容器20の加熱が開始され、反応容器10および外部反応容器20の温度が98℃以上に昇温されると、反応容器10と外部反応容器20との間に保持された金属Naは、溶けて金属融液170になり、窒素ガスを空間13,21に閉じ込める。
また、抑制/導入栓400は、金属融液170が外部反応容器20の内部から配管30の空間31へ流出しないように金属融液170の表面張力によって金属融液170を保持する。
さらに、金属融液170および抑制/導入栓400は、GaN結晶の成長が進行すると、窒素ガスと、金属融液170および混合融液180から蒸発した金属Na蒸気とを空間13,21に閉じ込める。その結果、混合融液180からの金属Naの蒸発を抑制でき、混合融液180中における金属Naと金属Gaとのモル比率を安定させることができる。そして、GaN結晶の成長が進行するに伴って、空間13内の窒素ガスが減少すると、空間13内の圧力P1は、配管30の空間31の圧力P2よりも低くなり、抑制/導入栓400は、空間31の窒素ガスを外部反応容器20の方向へ通過させ、金属融液170を介して空間21,13へ供給する。
このように、抑制/導入栓400は、上述した抑制/導入栓40と同じように作用する。したがって、結晶成長装置100Aを用いたGaN結晶の製造方法は、結晶成長装置100を用いたGaN結晶の製造方法と同じであり、図4に示すフローチャートからなる。
上記においては、抑制/導入栓400は、凸部402を有すると説明したが、抑制/導入栓400は、凸部402を有していなくてもよい。この場合、栓401と外部反応容器20および配管30との間隔が数十μmになるように、抑制/導入栓400は、支持部材によって固定される。
そして、抑制/導入栓400(凸部402を有する場合と凸部402を有さない場合とを含む。以下、同じ)と外部反応容器20および配管30との間隔は、抑制/導入栓400の温度に応じて決定されるようにしてもよい。この場合、抑制/導入栓400の温度が相対的に高い場合、抑制/導入栓400と外部反応容器20および配管30との間隔は、相対的に小さく設定される。また、抑制/導入栓400の温度が相対的に低い場合、抑制/導入栓400と外部反応容器20および配管30との間隔は、相対的に大きく設定される。
金属融液170の表面張力により金属融液170を保持可能な抑制/導入栓400と外部反応容器20および配管30との間隔は、抑制/導入栓400の温度によって変化する。したがって、抑制/導入栓400と外部反応容器20および配管30との間隔を抑制/導入栓400の温度に応じて変化させ、金属融液170の表面張力によって金属融液170を確実に保持できるようにしたものである。
そして、抑制/導入栓400の温度制御は、加熱装置60によって行われる。すなわち、抑制/導入栓400の温度を150℃よりも高い温度に昇温する場合には、加熱装置60によって抑制/導入栓400を加熱する。
実施の形態2によれば、GaN結晶の結晶成長時には、金属Na蒸気が金属融液170および抑制/導入器400によって空間13,21内へ閉じ込められるとともに、窒素ガスが配管30から空間13,21内へ安定して供給されるので、混合融液180中の金属Naと金属Gaとのモル比率を安定化できるとともに、窒素ガスを混合融液180中へ安定して供給できる。その結果、高品質で且つサイズの大きいGaN結晶を製造できる。
なお、抑制/導入栓400および金属融液170は、「抑制/導入器」を構成する。
また、抑制/導入栓400は、「抑制/導入部材」を構成する。
さらに、抑制/導入栓400は、「間隙形成部材」を構成する。
その他は、実施の形態1と同じである。
[実施の形態3]
図11は、実施の形態3による結晶成長装置の概略断面図である。図11を参照して、実施の形態3による結晶成長装置100Bは、図1に示す結晶成長装置100の抑制/導入栓400を貫通孔410に代えたものであり、その他は、結晶成長装置100と同じである。
貫通孔410は、外部反応容器20と配管30との連結部において外部反応容器20に設けられる。そして、貫通孔410は、数十μmの直径を有する。
なお、結晶成長装置100Bにおいては、加熱装置60は、反応容器10および外部反応容器20を800℃に加熱するのではなく、貫通孔410の温度を金属融液170が貫通孔410を介して実質的に蒸発しない温度に設定するように、反応容器10および外部反応容器20を加熱する。
反応容器10と外部反応容器20との間に保持された金属Naは、反応容器10および外部反応容器20の加熱が開始される前、固体であるので、ガスボンベ120から供給された窒素ガスは、外部反応容器20の空間21と配管30の空間31との間を貫通孔410を介して拡散可能である。
そして、反応容器10および外部反応容器20の加熱が開始され、反応容器10および外部反応容器20の温度が98℃以上に昇温されると、反応容器10と外部反応容器20との間に保持された金属Naは、溶けて金属融液170になり、窒素ガスを空間13,21内に閉じ込める。
また、貫通孔410は、金属融液170が外部反応容器20の内部から配管30の空間31へ流出しないように金属融液170を金属融液170の表面張力によって保持する。
さらに、金属融液170および貫通孔410は、GaN結晶の成長が進行すると、窒素ガスと、金属融液170および混合融液180から蒸発した金属Na蒸気とを空間13,21に閉じ込める。その結果、混合融液180からの金属Naの蒸発が抑制され、混合融液180中における金属Naと金属Gaとのモル比率を安定させることができる。そして、GaN結晶の成長が進行するに伴って、空間13内の窒素ガスが減少すると、空間13内の圧力P1は、配管30の空間31の圧力P2よりも低くなり、貫通孔410は、空間31内の窒素ガスを金属融液170の方向へ通過させ、金属融液170を介して窒素ガスを空間21,13へ供給する。
このように、貫通孔410は、上述した抑制/導入栓40と同じように作用する。したがって、結晶成長装置100Bを用いたGaN結晶の製造方法は、結晶成長装置100を用いたGaN結晶の製造方法と同じであり、図4に示すフローチャートからなる。
なお、結晶成長装置100Bにおいては、貫通孔410の径は、貫通孔410が設けられた領域23の温度に応じて決定されるようにしてもよい。この場合、領域23の温度が相対的に高い場合、貫通孔410の径は、相対的に小さく設定される。また、領域23の温度が相対的に低い場合、貫通孔410の径は、相対的に大きく設定される。
金属融液170の表面張力により金属融液170を保持可能な貫通孔410の径は、領域の温度によって変化する。したがって、貫通孔410の径を領域23の温度に応じて変化させ、金属融液170の表面張力によって金属融液170を確実に保持できるようにしたものである。
そして、領域23の温度制御は、加熱装置60によって行われる。
図12は、図11に示す貫通孔410に代わる部材の平面図である。図12の(a)は、多孔部材420を示し、図12の(b)は、メッシュ部材430を示す。多孔部材420は、碁盤目状に配置された複数の孔421からなる。そして、複数の孔421の各々は、直径が数十μmである。
メッシュ部材430は、複数のワイヤー431と複数のワイヤー432とを網目状に編んだ構造からなる。そして、網目433は、1辺の長さが数十μmの略正方形からなる。
多孔部材420およびメッシュ部材430の各々は、外部反応容器20と配管30との連結部23に貫通孔410に代えて配設される。
多孔部材420またはメッシュ部材430を貫通孔410に代えて用いた場合、多孔部材420またはメッシュ部材430は、貫通孔410と同じ機能を果たす。したがって、多孔部材420またはメッシュ部材430を用いたGaN結晶の製造方法は、貫通孔410を用いたGaN結晶の製造方法と同じであり、図4に示すフローチャートからなる。
実施の形態3によれば、GaN結晶の結晶成長時には、金属Na蒸気が金属融液170および貫通孔410によって空間13,21内へ閉じ込められるとともに、窒素ガスが配管30から空間13,21内へ安定して供給されるので、混合融液180中の金属Naと金属Gaとのモル比率を安定化できるとともに、窒素ガスを混合融液180中へ安定して供給できる。その結果、高品質で且つサイズの大きいGaN結晶を製造できる。
なお、多孔部材420においては、複数の孔421は、ランダムに配置されていてもよい。
また、金属融液170および貫通孔410は、「抑制/導入器」を構成する。
さらに、金属融液170および多孔部材420は、「抑制/導入器」を構成する。
さらに、金属融液170およびメッシュ部材430は、「抑制/導入器」を構成する。
さらに、貫通孔410は、「抑制/導入部材」を構成する。
さらに、多孔部材420は、「抑制/導入部材」を構成する。
さらに、メッシュ部材430は、「抑制/導入部材」を構成する。
その他は、実施の形態1と同じである。
[実施の形態4]
図13は、実施の形態4による結晶成長装置の概略断面図である。図13を参照して、実施の形態4による結晶成長装置200は、反応容器210と、外部反応容器220と、貫通孔230と、加熱装置240,250と、ガス供給管260,270と、バルブ280,290,340,350と、圧力調整器300と、ガスボンベ310と、排気管320,330と、真空ポンプ360と、圧力センサー370,380とを備える。
反応容器210は、SUS316Lからなり、略円柱形状を有する。外部反応容器220は、SUS316Lからなり、反応容器210と所定の間隔を隔てて反応容器210の周囲に配置される。貫通孔230は、外部反応容器220の底面210Aに設けられ、数十μmの直径を有する。
加熱装置240は、反応容器210と外部反応容器220との間に反応容器210の外周面210Bに対向して配置され、加熱装置250は、反応容器210と外部反応容器220との間に反応容器210の底面210Aに対向して配置される。
ガス供給管260は、一方端がバルブ280を介して反応容器210に連結され、他方端が圧力調整器300を介してガスボンベ310に連結される。ガス供給管270は、一方端がバルブ290を介して外部反応容器220に連結され、他方端がガス供給管260に連結される。
バルブ280は、反応容器210の近傍でガス供給管260に装着される。バルブ290は、外部反応容器220の近傍でガス供給管270に装着される。圧力調整器300は、ガスボンベ310の近傍でガス供給管260に装着される。ガスボンベ310は、ガス供給管260に連結される。
排気管320は、一方端がバルブ340を介して反応容器210に連結され、他方端が真空ポンプ360に連結される。排気管330は、一方端がバルブ350を介して外部反応容器220に連結され、他方端が排気管320に連結される。バルブ340は、反応容器210の近傍で排気管320に装着される。バルブ350は、外部反応容器220の近傍で排気管330に装着される。真空ポンプ360は、排気管320に連結される。
圧力センサー370は、反応容器210に取り付けられ、圧力センサー380は、外部反応容器220に取り付けられる。
反応容器210は、金属Naと、金属Gaとの混合融液180を保持する。そして、貫通孔230は、外部反応容器220内の空間221から反応容器210内の空間213へ混合融液180を介して窒素ガスを導入するとともに、混合融液180の表面張力により混合融液180を反応容器210内に保持する。
外部反応容器220は、反応容器210の周囲を覆う。加熱装置240は、反応容器210を反応容器210の外周面210Bから加熱する。加熱装置250は、反応容器210を反応容器210の底面210Aから加熱する。
ガス供給管260は、ガスボンベ310から圧力調整器300を介して供給された窒素ガスをバルブ280を介して反応容器210内へ供給する。ガス供給管270は、ガスボンベ310から圧力調整器300を介して供給された窒素ガスをバルブ290を介して外部反応容器220へ供給する。
バルブ280は、ガス供給管260内の窒素ガスを反応容器210内へ供給し、または窒素ガスの反応容器210内への供給を停止する。バルブ290は、ガス供給管270内の窒素ガスを外部反応容器220内へ供給し、または窒素ガスの外部反応容器220内への供給を停止する。圧力調整器300は、ガスボンベ310からの窒素ガスを所定の圧力にしてガス供給管260,270に供給する。
ガスボンベ310は、窒素ガスを保持する。排気管320は、反応容器210内の気体を真空ポンプ360へ通過させる。バルブ340は、反応容器210内と排気管320とを空間的に繋げ、または反応容器210内と排気管320とを空間的に遮断する。
排気管330は、外部反応容器220内の気体を真空ポンプ360へ通過させる。バルブ350は、外部反応容器220内と排気管330とを空間的に繋げ、または外部反応容器220内と排気管330とを空間的に遮断する。
真空ポンプ360は、排気管320およびバルブ340を介して反応容器210内の真空引きを行なうとともに、排気管330およびバルブ350を介して外部反応容器220内の真空引きを行なう。
圧力センサー370は、反応容器210内の圧力を検出し、圧力センサー380は、外部反応容器220内の圧力を検出する。
結晶成長装置200を用いてGaN結晶を成長させる場合、グローブボックスを用いてArガス雰囲気中で金属Naおよび金属Gaを反応容器210内に入れ、反応容器210内の空間213および外部反応容器220内の空間221をArガスで充填した状態で反応容器210および外部反応容器220を結晶成長装置200に設定する。
そして、バルブ340,350を開け、真空ポンプ360によって排気管320,330を介して反応容器210および外部反応容器220内を所定の圧力(0.133Pa以下)まで真空引きした後、バルブ340,350を閉じ、バルブ280,290を開けて窒素ガスをガスボンベ310からガス供給管260,270を介して反応容器210および外部反応容器220内へ充填する。この場合、圧力調整器300によって反応容器210および外部反応容器220内の圧力が1気圧程度になるように反応容器210および外部反応容器220内へ窒素ガスを供給する。
そして、圧力センサー370,380によって検出した反応容器210および外部反応容器120内の圧力が1気圧程度になると、バルブ280,290を閉じ、バルブ340,350を開けて真空ポンプ360によって反応容器210および外部反応容器220内に充填された窒素ガスを排気する。この場合も、真空ポンプ360によって反応容器210および外部反応容器220内を所定の圧力(0.133Pa以下)まで真空引きする。
そして、この反応容器210および外部反応容器220内の真空引きと反応容器210および外部反応容器220への窒素ガスの充填とを数回繰り返し行なう。
その後、真空ポンプ360によって反応容器210および外部反応容器220内を所定の圧力まで真空引きした後、バルブ340,350を閉じ、バルブ280,290を開けて圧力調整器300によって反応容器210および外部反応容器220内の圧力が10〜50気圧の範囲になるように反応容器210および外部反応容器220内へ窒素ガスを充填する。
そして、圧力センサー370,380によって検出した圧力が10〜50気圧になった時点でバルブ280を閉じる。この時点では、反応容器210および外部反応容器220の温度は室温であるので、反応容器210内の金属Naおよび金属Gaは、固体である。したがって、バルブ290を介して外部反応容器220内へ充填された窒素ガスは、貫通孔230を介して反応容器210内にも拡散し、反応容器210内の圧力は、外部反応容器220内の圧力と容易に一致する。
反応容器210および外部反応容器220への窒素ガスの充填が終了すると、加熱装置240,250によって反応容器210を800℃に加熱し、その後、数十時間〜数百時間、反応容器210の温度を800℃に保持する。
反応容器210に入れられた金属Naおよび金属Gaは、反応容器210が加熱される過程で融け、反応容器210内で混合融液180が生成される。そうすると、反応容器210内の空間213に存在する窒素ガスは、混合融液180に接し、バルブ280が閉じているため、空間213内に閉じ込められる。
そして、GaN結晶の成長が進行するに伴って、混合融液180から金属Naが蒸発し、金属Na蒸気および窒素ガスが空間213内に閉じ込められる。この場合、空間213における金属Na蒸気の圧力は、0.45気圧である。また、GaN結晶の成長が進行するに伴って、空間213内の窒素ガスが消費され、反応容器210内の圧力P3が外部反応容器220内の圧力P4よりも低くなると(P3<P4)、外部反応容器220内の空間221に存在する窒素ガスは、貫通孔230を介して反応容器210内へ導入される。
図14は、図13に示す結晶成長装置200におけるGaN結晶の成長の1つの過程を示す模式図である。空間221から貫通孔230を介して反応容器210内へ導入された窒素ガスは、混合融液180を泡181となって移動し、空間213内へ導入される。これによって、窒素ガスが空間213内へ安定的に供給される。
GaN結晶の成長時には、貫通孔230の温度は800℃である。しかし、貫通孔230は、上述したように、数十μmの直径を有するので、混合融液180が反応容器210から流出しないように混合融液180の表面張力によって混合融液180を反応容器210内に保持する。
このように、反応容器210の底面に貫通孔230を形成し、混合融液180の表面張力によって混合融液180を反応容器210内に保持することにより、混合融液180に接する空間213内に窒素ガスおよび金属Na蒸気を閉じ込めることができる。
その結果、図1に示す結晶成長装置100と同じように、高品質、大型、および均一なGaN結晶を実現できる。
図15は、GaN結晶の製造方法を説明するための実施の形態4におけるフローチャートである。図15を参照して、一連の動作が開始されると、Arガスが充填されたグローブボックス内へ反応容器210および外部反応容器220を入れる。そして、Arガス雰囲気中で金属Naおよび金属Gaを反応容器210に入れる(ステップS11)。この場合、金属Naおよび金属Gaを5:5のモル比率で反応容器210に入れる。
そして、反応容器210および外部反応容器220内にArガスを充填した状態で反応容器210および外部反応容器220を結晶成長装置200に設定する。
その後、上述した動作によって、反応容器210および外部反応容器220内の真空引きと、反応容器210および外部反応容器220内への窒素ガスの充填とを数回繰り返し行なう。そして、真空ポンプ360によって反応容器210および外部反応容器220内を所定の圧力(0.133Pa以下)まで真空引きした後、バルブ340,350を閉じ、バルブ280,290を開けて窒素ガスをガスボンベ310からガス供給管260,270を介して反応容器210および外部反応容器220内へ供給する。そして、圧力調整器300によって反応容器210および外部反応容器220内の圧力が10〜50気圧になるように反応容器210および外部反応容器220内へ窒素ガスを充填する(ステップS12)。
この場合、反応容器210内へ入れられた金属Naおよび金属Gaは、固体であるので、窒素ガスは、反応容器210の貫通孔230を介して外部反応容器220の空間221からも反応容器210内の空間213へ供給される。そして、圧力センサー370,380によって検出した空間213,221内の圧力が10〜50気圧になった時点でバルブ280が閉じられる。
その後、加熱装置240,250によって反応容器210を800℃まで加熱する(ステップS13)。これにより、反応容器210内の金属Naおよび金属Gaが溶け、混合融液180が反応容器210内に生成される。そして、混合融液180の温度が800℃になると、混合融液中でGaN結晶が成長し始める。
なお、反応容器210が800℃に昇温されると、貫通孔230も800℃に昇温されるが、貫通孔230は、数十μmの直径を有するので、混合融液180の表面張力によって混合融液180を反応容器210内に保持する。
また、GaN結晶の成長が進行すると、混合融液180から金属Naが蒸発し、金属Na蒸気が空間213内に生成される。この場合、金属Na蒸気の圧力は、800℃において、約0.45気圧である。金属Na蒸気が空間213内に生成されても、金属Na蒸気は、混合融液180および反応容器210にのみ、接するので、空間213から反応容器210外へ流出することがない。その結果、混合融液180中の金属Naと金属Gaとのモル比率は、安定する。
さらに、GaN結晶の成長が進行すると、空間213内の窒素ガスが消費され、空間213内の窒素ガスが減少する。そうすると、空間213内の圧力P3が空間221の圧力P4よりも低くなり(P3<P4)、空間213内と空間221内との間に差圧が発生し、空間221の窒素ガスは、貫通孔230および混合融液180を介して空間213内へ供給される(ステップS14)。
その後、反応容器210の温度が、所定の時間(数十時間〜数百時間)、800℃に保持される(ステップS15)。これによって、大きなサイズのGaN結晶が成長する。このGaN結晶は、c軸(<0001>)方向に成長した柱状形状を有し、欠陥フリーの結晶である。
そして、反応容器210の温度が降温されて(ステップS16)、GaN結晶の製造が終了する。
実施の形態4によれば、GaN結晶の結晶成長時には、金属Na蒸気が混合融液180および貫通孔230によって空間213内へ閉じ込められるとともに、窒素ガスが外部反応容器220の空間221から空間213内へ安定して供給されるので、混合融液180中の金属Naと金属Gaとのモル比率を安定化できるとともに、窒素ガスを混合融液180中へ安定して供給できる。その結果、高品質で且つサイズの大きいGaN結晶を製造できる。
また、結晶成長装置200を用いた場合には、結晶成長装置100の配管30を設ける必要がないので、結晶成長装置200を単純な構造にできる。
さらに、結晶成長装置200においては、混合融液180をGaN結晶の原料とするとともに、窒素ガスおよび金属Na蒸気を反応容器210の空間213内に閉じ込めるために用いるので、結晶成長装置100のように混合融液180の他に金属融液170を必要とせず、結晶成長装置100に比べ金属Naの量を少なくできる。その結果、低コストなGaN結晶を製造できる。
なお、実施の形態4においては、図12に示す多孔部材420またはメッシュ部材430を貫通孔230の代わりに用いてもよい。
また、混合融液180および貫通孔230は、「抑制/導入器」を構成する。
さらに、混合融液180および多孔部材420は、「抑制/導入器」を構成する。
さらに、混合融液180およびメッシュ部材430は、「抑制/導入器」を構成する。
さらに、圧力調整器300およびガスボンベ310は、「ガス供給装置」を構成する。
その他は、実施の形態1および実施の形態3と同じである。
[実施の形態5]
図16は、実施の形態5による結晶成長装置の概略断面図である。図16を参照して、実施の形態5による結晶成長装置100Cは、図1に示す結晶成長装置100の配管30を配管301に代え、金属融液170を金属融液190に代え、加熱装置61を追加したものであり、その他は、結晶成長装置100と同じである。
結晶成長装置100Cにおいては、抑制/導入栓40は、配管301内に設置され、ガス供給管80は、配管301の空間302に連結される。
配管301は、略L字形状からなり、反応容器10の蓋部12の近傍で外部反応容器20に連結される。金属融液190は、金属Na融液からなり、外部反応容器20内の空間21に連通する配管301内の空間303に抑制/導入栓40によって保持される。
加熱装置61は、配管301に対向して配置され、金属融液190と空間303との気液界面6を800℃に加熱する。この場合、抑制/導入栓40の温度は、金属融液190が実質的に蒸発しない温度に設定される。
結晶成長装置100Cを用いてGaN結晶を成長させる場合、グローブボックスを用いてArガス雰囲気中で金属Naおよび金属Gaを反応容器10内に入れ、Arガス雰囲気中で金属Naを配管301の空間303に入れる。そして、反応容器10内の空間13、外部反応容器20内の空間21および配管301内の空間302,303をArガスで充填した状態で反応容器10、外部反応容器20および配管301を結晶成長装置100Cに設定する。
そして、実施の形態1において説明した方法によって、反応容器10、外部反応容器20および配管301内の真空引きと、反応容器10、外部反応容器20および配管301内への窒素ガスの充填とを数回繰り返す。
その後、真空ポンプ150によって反応容器10、外部反応容器20および配管301内を所定の圧力まで真空引きした後、バルブ140を閉じ、バルブ90,91を開けて圧力調整器110によって反応容器10、外部反応容器20および配管301内の圧力が10〜50気圧の範囲になるように反応容器10、外部反応容器20および配管301へ窒素ガスを充填する。
そして、圧力センサー160によって検出した圧力が10〜50気圧になった時点でバルブ90を閉じる。この時点では、反応容器10、外部反応容器20および配管301の温度は室温であるので、配管301内の金属Naは、固体である。したがって、配管301の空間302へ供給された窒素ガスは、抑制/導入栓40と配管301の内壁30Aとの空隙43を介して(30を301として図3参照)外部反応容器20および反応容器10内にも拡散し、空間13,21,302,303の圧力は、容易に一致する。
反応容器10、外部反応容器20および配管301への窒素ガスの充填が終了すると、加熱装置50,60によって反応容器10および外部反応容器20を800℃に加熱するとともに、加熱装置61によって気液界面6を800℃に加熱し、その後、数十時間〜数百時間、反応容器10、外部反応容器20および気液界面6の温度を800℃に保持する。
反応容器10に入れられた金属Naおよび金属Gaは、反応容器10が加熱される過程で融け、反応容器10内で混合融液180が生成される。また、配管301内の金属Naは、配管301が加熱される過程で融け、金属融液190が配管301内で生成される。そうすると、反応容器10、外部反応容器20および配管301内の窒素ガスは、バルブ90,140が閉じており、金属融液190を通過できないため、空間13,21,303内に閉じ込められる。
そして、GaN結晶の成長が進行するに伴って、混合融液180および金属融液190から金属Naが蒸発し、金属Na蒸気および窒素ガスが空間13,21,303内に閉じ込められる。この場合、空間13,21,303における金属Na蒸気の圧力は、0.45気圧である。また、GaN結晶の成長が進行するに伴って、空間13内の窒素ガスが消費され、反応容器10内の圧力P1が配管301の空間302内の圧力P5よりも低くなると(P1<P5)、配管301の空間302内に存在する窒素ガスは、抑制/導入栓40および金属融液190を介して空間13,21,303内へ導入される。
その結果、図1に示す結晶成長装置100と同じように、高品質、大型、および均一なGaN結晶を実現できる。
なお、結晶成長装置100Cを用いてGaN結晶を製造する製造方法は、図4に示すフローチャートと同じフローチャートからなる。この場合、ステップS2において、金属Naは、Arガス雰囲気中で配管301の空間303内に入れられる。また、ステップS3において、反応容器10、外部反応容器20および配管301内へ窒素ガスが所定の圧力(10〜50気圧)まで充填される。さらに、ステップS4において、反応容器10、外部反応容器20および気液界面6が800℃に加熱され、ステップS6において、反応容器10、外部反応容器20および気液界面6の温度が800℃に保持され、ステップS7において、反応容器10、外部反応容器20および配管301の温度が降温される。
また、結晶成長装置100Cにおいては、空間303と金属融液190との気液界面6または気液界面6付近における温度T6が気液界面5または気液界面5付近における温度T2以上に設定されてGaN結晶の製造が行なわれる。温度T6が温度T2以上に設定されるのは、実施の形態1において温度T1が温度T2以上に設定される理由と同じである。
さらに、結晶成長装置100Cにおいては、加熱装置61は、配管301内の金属Naが液体になり、気液界面6が800℃よりも低い温度になるように配管301を加熱するようにしてもよい。
さらに、結晶成長装置100Cにおいては、抑制/導入栓40に代えて抑制/導入栓400を用いてもよい。
図17は、実施の形態5による結晶成長装置の他の概略断面図である。実施の形態5による結晶成長装置は、図17に示す結晶成長装置100Dであってもよい。図17を参照して、結晶成長装置100Dは、図16に示す結晶成長装置100Cの配管301を配管304に代え、加熱装置61を加熱装置62に代えたものであり、その他は、結晶成長装置100Cと同じである。
結晶成長装置100Dにおいては、抑制/導入栓40は、配管304内に設置され、ガス供給管80は、配管304の空間305に連結される。
配管304は、直線形状からなり、反応容器10の蓋部12の近傍で外部反応容器20に連結される。金属融液191は、金属Na融液からなり、外部反応容器20内の空間21に連通する配管304内の空間306に抑制/導入栓40によって保持される。
加熱装置62は、配管304に対向して配置され、金属融液191と空間306との気液界面7を800℃に加熱する。この場合、抑制/導入栓40の温度は、金属融液191が実質的に蒸発しない温度に設定される。
結晶成長装置100Dを用いてGaN結晶を成長させる場合、グローブボックスを用いてArガス雰囲気中で金属Naおよび金属Gaを反応容器10内に入れ、Arガス雰囲気中で金属Naを配管304の空間306に入れる。そして、反応容器10内の空間13、外部反応容器20内の空間21および配管304内の空間305,306をArガスで充填した状態で反応容器10、外部反応容器20および配管304を結晶成長装置100Dに設定する。
そして、実施の形態1において説明した方法によって、反応容器10、外部反応容器20および配管304内の真空引きと、反応容器10、外部反応容器20および配管304内への窒素ガスの充填とを数回繰り返す。
その後、真空ポンプ150によって反応容器10、外部反応容器20および配管304内を所定の圧力まで真空引きした後、バルブ140を閉じ、バルブ90,91を開けて圧力調整器110によって反応容器10、外部反応容器20および配管304内の圧力が10〜50気圧の範囲になるように反応容器10、外部反応容器20および配管304へ窒素ガスを充填する。
そして、圧力センサー160によって検出した圧力が10〜50気圧になった時点でバルブ90を閉じる。この時点では、反応容器10、外部反応容器20および配管304の温度は室温であるので、配管304内の金属Naは、固体である。したがって、配管304の空間305へ供給された窒素ガスは、抑制/導入栓40と配管304の内壁との空隙を介して外部反応容器20および反応容器10内にも拡散し、空間13,21,305,306の圧力は、容易に一致する。
反応容器10、外部反応容器20および配管304への窒素ガスの充填が終了すると、加熱装置50,60によって反応容器10および外部反応容器20を800℃に加熱するとともに、加熱装置62によって気液界面7を800℃に加熱し、その後、数十時間〜数百時間、反応容器10、外部反応容器20および気液界面7の温度を800℃に保持する。
反応容器10に入れられた金属Naおよび金属Gaは、反応容器10が加熱される過程で融け、反応容器10内で混合融液180が生成される。また、配管304内の金属Naは、配管304が加熱される過程で融け、金属融液191が配管304内で生成される。そうすると、反応容器10、外部反応容器20および配管304内の窒素ガスは、バルブ90,140が閉じており、金属融液191を通過できないため、空間13,21,306内に閉じ込められる。
そして、GaN結晶の成長が進行するに伴って、混合融液180および金属融液191から金属Naが蒸発し、金属Na蒸気および窒素ガスが空間13,21,306内に閉じ込められる。この場合、空間13,21,306における金属Na蒸気の圧力は、0.45気圧である。また、GaN結晶の成長が進行するに伴って、空間13内の窒素ガスが消費され、反応容器10内の圧力P1が配管304の空間305内の圧力P6よりも低くなると(P1<P6)、配管304の空間305内に存在する窒素ガスは、抑制/導入栓40および金属融液191を介して空間13,21,306内へ導入される。
その結果、図1に示す結晶成長装置100と同じように、高品質、大型、および均一なGaN結晶を実現できる。
なお、結晶成長装置100Dを用いてGaN結晶を製造する製造方法は、図4に示すフローチャートと同じフローチャートからなる。この場合、ステップS2において、金属Naは、Arガス雰囲気中で配管304の空間306内に入れられる。また、ステップS3において、反応容器10、外部反応容器20および配管304内へ窒素ガスが所定の圧力(10〜50気圧)まで充填される。さらに、ステップS4において、反応容器10、外部反応容器20および気液界面7が800℃に加熱され、ステップS6において、反応容器10、外部反応容器20および気液界面7の温度が800℃に保持され、ステップS7において、反応容器10、外部反応容器20および配管304の温度が降温される。
また、結晶成長装置100Dにおいては、空間306と金属融液191との気液界面7または気液界面7付近における温度T7が気液界面5または気液界面5付近における温度T2以上に設定されてGaN結晶の製造が行なわれる。温度T7が温度T2以上に設定されるのは、実施の形態1において温度T1が温度T2以上に設定される理由と同じである。
さらに、結晶成長装置100Dにおいては、加熱装置62は、配管304内の金属Naが液体になり、気液界面7が800℃よりも低い温度になるように配管304を加熱するようにしてもよい。
さらに、結晶成長装置100Dにおいては、抑制/導入栓40に代えて抑制/導入栓400を用いてもよい。
さらに、結晶成長装置100Dにおいては、金属融液191が抑制/導入栓40,400の空間306側の端面の全面に接するように、抑制/導入栓40,400が設置される配管304の一部分を配管304の他の部分よりも細くしてもよい。
図18は、実施の形態5による結晶成長装置のさらに他の概略断面図である。実施の形態5による結晶成長装置は、図18に示す結晶成長装置100Eであってもよい。図18を参照して、結晶成長装置100Eは、図16に示す結晶成長装置100Cから金属融液190を削除したものであり、その他は、結晶成長装置100Cと同じである。
結晶成長装置100Eにおいては、加熱装置61は、加熱装置50,60によって反応容器10および外部反応容器20が800℃に加熱された後に配管301内の一部の領域307を800℃に加熱する。
図19は、図18に示す反応容器10、外部反応容器20および配管301の一部の領域307の温度変化を示す図である。図19において、曲線k1は、反応容器10および外部反応容器20の温度変化を示し、図5に示す温度変化と同じである。また、曲線k2は、配管301の一部の領域307の温度変化を示す。
図19を参照して、加熱装置61は、加熱装置50,60によって反応容器10および外部反応容器20が800℃に加熱されるタイミングt2になると、配管301の一部の領域307を加熱し始め、タイミングt3で配管301の一部の領域307を800℃に加熱する。そして、加熱装置61は、タイミングt3以降、配管301の一部の領域307を800℃に保持する(曲線k2参照)。
反応容器10および外部反応容器20が800℃に加熱され、混合融液180の温度が800℃になると、タイミングt2以降、混合融液180中でGaN結晶の成長が開始されるとともに、金属Naが混合融液180から蒸発し始める。そうすると、反応容器10内における金属Na蒸気が増加し、空間13内の金属Na蒸気は、本体部11と蓋部12との空隙を介して空間21,303へ拡散する。
この場合、加熱装置61は、配管301を加熱していないため、抑制/導入栓40の温度は室温である。したがって、空間303内へ拡散した金属Na蒸気は、配管301内で冷却され、図16に示す金属融液190のように金属融液もしくは固体となって抑制/導入栓40上に溜まる。そして、空間13から空間303への金属Na蒸気の拡散は、空間13,21,303において金属Na蒸気が平衡状態になるまで継続される。つまり、空間13から空間303への金属Na蒸気の拡散は、気液界面5における温度T2と気液界面6における温度T6とが略一致するまで、すなわち、気液界面6における温度T6が気液界面5における温度T2に一致するタイミングt3まで継続される。
そして、タイミングt3以降、空間13,21,303内における金属Na蒸気が平衡状態に達すると、混合融液180からの金属Naの蒸発が抑制され、混合融液180中で大きなGaN結晶が成長する。
結晶成長装置100Eを用いてGaN結晶を成長させる場合、グローブボックスを用いてArガス雰囲気中で金属Naおよび金属Gaを反応容器10内に入れる。そして、反応容器10内の空間13、外部反応容器20内の空間21および配管301内の空間302,303をArガスで充填した状態で反応容器10、外部反応容器20および配管301を結晶成長装置100Eに設定する。
そして、実施の形態1において説明した方法によって、反応容器10、外部反応容器20および配管301内の真空引きと、反応容器10、外部反応容器20および配管301内への窒素ガスの充填とを数回繰り返す。
その後、真空ポンプ150によって反応容器10、外部反応容器20および配管301内を所定の圧力まで真空引きした後、バルブ140を閉じ、バルブ90,91を開けて圧力調整器110によって反応容器10、外部反応容器20および配管301内の圧力が10〜50気圧の範囲になるように反応容器10、外部反応容器20および配管301へ窒素ガスを充填する。
反応容器10、外部反応容器20および配管301への窒素ガスの充填が終了すると、加熱装置50,60によって反応容器10および外部反応容器20を800℃に加熱し、反応容器10および外部反応容器20が800℃に加熱されると、加熱装置61によって配管301の一部の領域307を800℃に加熱し、その後、数十時間〜数百時間、反応容器10、外部反応容器20および一部の領域307の温度を800℃に保持する。
反応容器10に入れられた金属Naおよび金属Gaは、反応容器10が加熱される過程で融け、反応容器10内で混合融液180が生成される。そして、混合融液180から金属Naが蒸発し、金属Na蒸気が空間13、空間21および空間303へ拡散する。
そうすると、空間303内へ拡散した金属Na蒸気は、上述したように、金属融液190となって抑制/導入栓40上に溜まる。その後、配管301内の気液界面6が800℃になると、空間13,21,303における金属Na蒸気が平衡状態になり、金属Na蒸気の空間13から空間303への拡散が停止される。
そうすると、反応容器10、外部反応容器20および配管301内の窒素ガスは、バルブ90,140が閉じており、金属融液190を通過できないため、空間13,21,303内に閉じ込められる。
そして、GaN結晶の成長が進行するに伴って、混合融液180および金属融液190から金属Naが蒸発し、金属Na蒸気および窒素ガスが空間13,21,303内に閉じ込められる。この場合、空間13,21,303における金属Na蒸気の圧力は、0.45気圧である。また、GaN結晶の成長が進行するに伴って、空間13内の窒素ガスが消費され、反応容器10内の圧力P1が配管301の空間303内の圧力P5よりも低くなると(P1<P5)、配管301の空間302内に存在する窒素ガスは、抑制/導入栓40および金属融液190を介して空間13,21,303内へ導入される。
その結果、図1に示す結晶成長装置100と同じように、高品質、大型、および均一なGaN結晶を実現できる。
なお、結晶成長装置100Eを用いてGaN結晶を製造する製造方法は、図4に示すフローチャートからステップS2を削除したフローチャートからなる。この場合、ステップS3において、反応容器10、外部反応容器20および配管301内へ窒素ガスが所定の圧力(10〜50気圧)まで充填される。また、ステップS4において、反応容器10、外部反応容器20および気液界面6が800℃に加熱され、ステップS6において、反応容器10、外部反応容器20および気液界面6の温度が800℃に保持され、ステップS7において、反応容器10、外部反応容器20および配管301の温度が降温される。
その他は、結晶成長装置100Cと同じである。
図20は、実施の形態5による結晶成長装置のさらに他の概略断面図である。実施の形態5による結晶成長装置は、図20に示す結晶成長装置100Fであってもよい。図20を参照して、結晶成長装置100Fは、図17に示す結晶成長装置100Dから金属融液191を削除したものであり、その他は、結晶成長装置100Dと同じである。
結晶成長装置100Fにおいては、加熱装置62は、加熱装置50,60によって反応容器10および外部反応容器20が800℃に加熱された後に配管304内の一部の領域308を800℃に加熱する。この場合、加熱装置62は、図19に示す曲線k2に従って一部の領域308を800℃に加熱する。
結晶成長装置100Fを用いてGaN結晶を成長させる場合、グローブボックスを用いてArガス雰囲気中で金属Naおよび金属Gaを反応容器10内に入れる。そして、反応容器10内の空間13、外部反応容器20内の空間21および配管304内の空間305,306をArガスで充填した状態で反応容器10、外部反応容器20および配管304を結晶成長装置100Fに設定する。
そして、実施の形態1において説明した方法によって、反応容器10、外部反応容器20および配管304内の真空引きと、反応容器10、外部反応容器20および配管304内への窒素ガスの充填とを数回繰り返す。
その後、真空ポンプ150によって反応容器10、外部反応容器20および配管304内を所定の圧力まで真空引きした後、バルブ140を閉じ、バルブ90,91を開けて圧力調整器110によって反応容器10、外部反応容器20および配管304内の圧力が10〜50気圧の範囲になるように反応容器10、外部反応容器20および配管304へ窒素ガスを充填する。
反応容器10、外部反応容器20および配管304への窒素ガスの充填が終了すると、加熱装置50,60によって反応容器10および外部反応容器20を800℃に加熱し、反応容器10および外部反応容器20が800℃に加熱されると、加熱装置62によって配管304の一部の領域308を800℃に加熱し、その後、数十時間〜数百時間、反応容器10、外部反応容器20および一部の領域308の温度を800℃に保持する。
反応容器10に入れられた金属Naおよび金属Gaは、反応容器10が加熱される過程で融け、反応容器10内で混合融液180が生成される。そして、混合融液180から金属Naが蒸発し、金属Na蒸気が空間13、空間21および空間306へ拡散する。
そうすると、空間306内へ拡散した金属Na蒸気は、上述したように、金属融液191となって、図17に示すように抑制/導入栓40に接して空間306内に溜まる。その後、配管304内の気液界面7が800℃になると、空間13,21,306における金属Na蒸気が平衡状態になり、金属Na蒸気の空間13から空間306への拡散が停止される。
そうすると、反応容器10、外部反応容器20および配管304内の窒素ガスは、バルブ90,140が閉じており、金属融液191を通過できないため、空間13,21,306内に閉じ込められる。
そして、GaN結晶の成長が進行するに伴って、混合融液180および金属融液191から金属Naが蒸発し、金属Na蒸気および窒素ガスが空間13,21,306内に閉じ込められる。この場合、空間13,21,306における金属Na蒸気の圧力は、0.45気圧である。また、GaN結晶の成長が進行するに伴って、空間13内の窒素ガスが消費され、反応容器10内の圧力P1が配管304の空間306内の圧力P6よりも低くなると(P1<P6)、配管304の空間305内に存在する窒素ガスは、抑制/導入栓40および金属融液191を介して空間13,21,306内へ導入される。
その結果、図1に示す結晶成長装置100と同じように、高品質、大型、および均一なGaN結晶を実現できる。
なお、結晶成長装置100Fを用いてGaN結晶を製造する製造方法は、図4に示すフローチャートからステップS2を削除したフローチャートからなる。この場合、ステップS3において、反応容器10、外部反応容器20および配管304内へ窒素ガスが所定の圧力(10〜50気圧)まで充填される。また、ステップS4において、反応容器10、外部反応容器20および気液界面7が800℃に加熱され、ステップS6において、反応容器10、外部反応容器20および気液界面7の温度が800℃に保持され、ステップS7において、反応容器10、外部反応容器20および配管304の温度が降温される。
その他は、結晶成長装置100Dと同じである。
図21は、抑制/導入栓の他の斜視図である。図21を参照して、抑制/導入栓440は、複数の貫通孔442が形成された栓441からなる。複数の貫通孔442は、栓441の長さ方向DR2に沿って形成される。そして、複数の貫通孔442の各々は、数十μmの直径を有する(図21の(a)参照)。
なお、抑制/導入栓440においては、貫通孔442は、少なくとも1個形成されていればよい。
また、抑制/導入栓450は、複数の貫通孔452が形成された栓451からなる。複数の貫通孔452は、栓451の長さ方向DR2に沿って形成される。そして、複数の貫通孔452の各々は、長さ方向DR2へ複数段に変化された直径r1,r2,r3を有する。直径r1,r2,r3の各々は、金属融液170を表面張力により保持可能な範囲で決定され、たとえば、数μm〜数十μmの範囲で決定される(図21の(a)参照)。
なお、抑制/導入栓450においては、貫通孔452は、少なくとも1個形成されていればよい。また、貫通孔452の直径は、少なくとも2個に変化されればよい。さらに、貫通孔452の直径は、長さ方向DR2へ連続的に変えられてもよい。
抑制/導入栓440または450は、結晶成長装置100,100C,100D,100E,100Fの抑制/導入栓40または結晶成長装置100Aの抑制/導入栓400に代えて用いられる。
特に、抑制/導入栓450が抑制/導入栓40,400に代えて用いられた場合、結晶成長装置100,100A,100C,100D,100E,100Fにおいて、抑制/導入栓450の温度制御を精密に行なわなくても、複数段に変えられた直径のいずれかによって金属融液170,190,191を表面張力により保持できるので、抑制/導入栓450の温度制御を精密に行なわなくても、大きさサイズを有するGaN結晶を製造できる。
抑制/導入栓440または450が用いられる場合、抑制/導入栓440および金属融液170,190,191は、「抑制/導入器」を構成し、抑制/導入栓450および金属融液170,190,191は、「抑制/導入器」を構成する。また、抑制/導入栓440,450の各々は、「抑制/導入部材」を構成する。
図22は、抑制/導入栓のさらに他の斜視図である。図22を参照して、抑制/導入栓460は、栓461と、複数の凸部462とを含む。栓461は、球形状からなる。複数の凸部462は、栓461の表面461Aにランダムに形成される。
複数の凸部462は、数十μmの間隔で形成される。また、凸部462は、数十μmの高さを有する。抑制/導入栓460の複数の凸部462は、配管30の内壁30Aに接する。これにより、抑制/導入栓460は、抑制/導入栓40と同じように配管30の内壁30Aに嵌合する。
凸部462が数十μmの高さを有し、数十μmの間隔で栓461の表面461Aに配置される結果、抑制/導入栓460が配管30の内壁30Aに嵌合した状態では、抑制/導入栓460と配管30の内壁30Aとの間に、直径が略数十μmである空隙が複数個形成される。
この空隙は、配管30の空間31から外部反応容器20の空間21へ窒素ガスを通過させるとともに、金属融液170を金属融液170の表面張力によって保持し、金属融液170が配管30の空間31へ通過するのを阻止する。
なお、抑制/導入栓460は、結晶成長装置100,100A,100C,100D,100E,100Fの抑制/導入栓40,400に代えて用いられる。
また、抑制/導入栓460においては、凸部462は設けられていなくてもよい。この場合、栓461の表面461Aと配管30,301,403の内壁との間の間隙が数十μmになるように抑制/導入栓460が配置される。
抑制/導入栓460が用いられる場合、抑制/導入栓460および金属融液170,190,191は、「抑制/導入器」を構成し、抑制/導入栓460は、「抑制/導入部材」を構成する。
図23は、抑制/導入栓のさらに他の斜視図である。図23を参照して、抑制/導入栓470は、本体部471と、溝472とからなる。本体部471は、略直方体からなる。溝472は、本体部471の一主面471Aに直線状に設けられる。そして、溝472は、半円形の断面形状を有する。この場合、溝472の直径は、たとえば、数十μmであり、一般的には、金属融液170の表面張力によって金属融液170を保持可能な値からなる。
図24および図25は、それぞれ、図23に示す抑制/導入栓470の配置状態を示す第1および第2の概略断面図である。図24は、抑制/導入栓470の溝472が延びる方向から見た概略断面図を示し、図25は、抑制/導入栓470の溝472が延びる方向と直交する方向から見た概略断面図を示す。
図24および図25を参照して、図23に示す抑制/導入栓470は、抑制/導入栓40に代えて結晶成長装置100に用いられる。この場合、外部反応容器20は、配管30との連結部に貫通孔480を有する。そして、貫通孔480は、溝472の直径よりも大きく、金属融液170を表面張力によって保持できない直径を有する。
抑制/導入栓470は、外部反応容器20の貫通孔480を覆い、かつ、溝472が貫通孔480上に位置するように外部反応容器20の内面に設置される。
そうすると、金属融液170が反応容器10と外部反応容器20との間に保持された場合、溝472の端面472A,472Bは、金属融液170に接し、抑制/導入栓470は、金属融液170の表面張力によって金属融液170を保持する。その結果、金属融液170が溝472および貫通孔480を介して配管30の空間31内へ流入することがない。
一方、反応容器10内の空間13の圧力が配管30の空間31内の圧力よりも低くなると、空間31内の窒素ガスは、貫通孔480および溝472を介して金属融液170中へ導入され、金属融液170中を泡171となって移動し(図7参照)、空間21,13へ導入される。
このように、抑制/導入栓470は、金属融液170を表面張力によって保持するとともに、配管30内の窒素ガスを金属融液170を介して空間21,13へ導入する。
図26は、図23に示す抑制/導入栓470の変形例を示す斜視図である。図26を参照して、抑制/導入栓490は、図23に示す抑制/導入栓470に溝473を追加したものであり、その他は、抑制/導入栓470と同じである。
溝473は、溝472に直交するように一主面471Aに直線状に設けられる。そして、溝473は、半円形の断面形状を有する。この場合、溝473の直径は、たとえば、数十μmであり、一般的には、表面張力によって金属融液170を保持可能な値からなる。
抑制/導入栓490は、抑制/導入栓470と同じ方法によって結晶成長装置100の外部反応容器20と配管30との連結部に配置される。
なお、抑制/導入栓490においては、溝472,473は、相互に異なる直径を有していてもよく、90度以外の角度で相互に交わっていてもよい。また、溝472,473は、三角形、四角形、および五角形等の多角形の断面形状を有していてもよい。また、溝472,473は、直線状でなく曲線であってもよい。
抑制/導入栓470,490は、抑制/導入栓400に代えて結晶成長装置100Aに用いられてもよい。
抑制/導入栓470,490が結晶成長装置100,100Aに用いられる場合、抑制/導入栓470および金属融液170は、「抑制/導入器」を構成し、抑制/導入栓490および金属融液170は、「抑制/導入器」を構成し、抑制/導入栓470または490は、「抑制/導入部材」を構成する。
なお、上述した実施の形態1から実施の形態5においては、結晶成長温度は、800℃であると説明したが、この発明においては、これに限らず、結晶成長温度は、600℃以上であればよい。また、窒素ガス圧力も数気圧以上の加圧状態の本結晶成長方法で成長可能な圧力であればよい。すなわち、上限も本実施の形態の50気圧に限定されるものではなく、50気圧以上の圧力であってもよい。
また、上記においては、Arガス雰囲気中で金属Naおよび金属Gaを反応容器10,210に入れ、Arガス雰囲気中で金属Naを反応容器10,210および外部反応容器20,220間または配管301,304内に入れると説明したが、この発明においては、これに限らず、He、NeおよびKr等のArガス以外のガスまたは窒素ガス雰囲気中で金属Naおよび金属Gaを反応容器10,210に入れ、金属Naを反応容器10,210および外部反応容器20,220間または配管301,304内に入れてもよく、一般的には、不活性ガスまたは窒素ガス雰囲気中で金属Naおよび金属Gaを反応容器10,210に入れ、金属Naを反応容器10,210および外部反応容器20,220間または配管301,304内に入れればよい。そして、この場合、不活性ガスまたは窒素ガスは、水分量が10ppm以下であり、かつ、酸素量が10ppm以下である。
さらに、金属Gaと混合する金属は、Naであると説明したが、この発明においては、これに限らず、リチウム(Li)およびカリウム(K)等のアルカリ金属、またはマグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)およびストロンチウム(Sr)等のアルカリ土類金属を金属Gaと混合して混合融液180を生成してもよい。そして、これらのアルカリ金属が溶けたものは、アルカリ金属融液を構成し、これらのアルカリ土類金属が溶けたものは、アルカリ土類金属融液を構成する。
さらに、窒素ガスに代えて、アジ化ナトリウムおよびアンモニア等の窒素を構成元素に含む化合物を用いてもよい。そして、これらの化合物は、窒素原料ガスを構成する。
さらに、Gaに代えて、ボロン(B)、アルミニウム(Al)およびインジウム(In)等のIII族金属を用いてもよい。
したがって、この発明による結晶成長装置または製造方法は、一般的には、アルカリ金属またはアルカリ土類金属とIII族金属(ボロンを含む)との混合融液を用いてIII族窒化物結晶を製造するものであればよい。
そして、この発明による結晶成長装置または製造方法を用いて製造したIII族窒化物結晶は、発光ダイオード、半導体レーザ、フォトダイオードおよびトランジスタ等のIII族窒化物半導体デバイスの作製に用いられる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1,2 気液界面、3 窒素ガス、4 金属Na蒸気、10,210 反応容器、11,471 本体部、12 蓋部、13,21,213,221 空間、20,220 外部反応容器、20A 外周面、20B,210A 底面、30 配管、30A 内壁、40,400,310,420,440,450,460,470,490 抑制/導入栓、41,401,411,421,441,451,461 栓、42,402,462 凸部、43 空隙、50,60,230,240 加熱装置、70,80,260,270 ガス供給管、90,91,140,280,290,340,350 バルブ、100,100A,100B,200 結晶成長装置、110,300 圧力調整器、120,310 ガスボンベ、130,320,330 排気管、150,360 真空ポンプ、160,370,380 圧力センサー、170 金属融液、180 混合融液、171,181 泡、210B,401A 外周面、230,412,422,442,452,480 貫通孔、403,404 支持部材、420 多孔部材、421 孔、430 メッシュ部材、431,432 ワイヤー、433 網目、461A 表面、471A 一主面、472,473 溝。