本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
[実施の形態1]
図1は、この発明の実施の形態1による結晶成長装置の概略断面図である。図1を参照して、この発明の実施の形態1による結晶成長装置200は、反応容器210と、外部反応容器220,230と、逆流防止装置240と、加熱装置250,260,280と、配管270と、ガス供給管290,300,310と、バルブ320,321,370と、圧力調整器330と、ガスボンベ340と、排気管350と、真空ポンプ390と、圧力センサー400,410とを備える。
反応容器210は、SUS316Lからなり、略円柱形状を有する。そして、反応容器210は、本体部211と蓋部212とからなる。外部反応容器220は、SUS316Lからなり、反応容器210と所定の間隔を隔てて反応容器210の周囲に配置される。外部反応容器230は、SUS316Lからなり、外部反応容器220と所定の間隔を隔てて外部反応容器220の周囲に配置される。
逆流防止装置240は、反応容器210と外部反応容器220との間に設けられ、1対のガイド241と逆流防止弁242とを含む。そして、1対のガイド241および逆流防止弁242は、SUS316Lからなる。
加熱装置250は、外部反応容器220と外部反応容器230との間に外部反応容器220の外周面220Aに対向して配置され、加熱装置260は、外部反応容器220と外部反応容器230との間に外部反応容器220の底面220Bに対向して配置される。
配管270は、一方端が外部反応容器230を介して外部反応容器220に連結され、他方端がガス供給管300に連結される。加熱装置280は、配管270の周囲に設けられる。
ガス供給管290は、一方端がバルブ320を介して反応容器220に連結され、他方端が圧力調整器330を介してガスボンベ340に連結される。ガス供給管300は、一方端がバルブ321を介して配管270に連結され、他方端がガス供給管290に連結される。ガス供給管310は、一方端が外部反応容器230に連結され、他方端がガス供給管290に連結される。
バルブ320は、外部反応容器220の近傍でガス供給管290に装着される。バルブ321は、配管270の近傍でガス供給管300に装着される。圧力調整器330は、ガスボンベ340の近傍でガス供給管290に装着される。ガスボンベ340は、ガス供給管290に連結される。
排気管350は、一方端がバルブ370を介して外部反応容器220に連結され、他方端が真空ポンプ390に連結される。バルブ370は、外部反応容器220の近傍で排気管350に装着される。真空ポンプ390は、排気管350に連結される。
圧力センサー400は、外部反応容器230に取り付けられ、圧力センサー410は、外部反応容器220に取り付けられる。
反応容器210は、金属Naと、金属Gaとの混合融液180を保持する。外部反応容器220は、反応容器210の周囲を覆う。外部反応容器230は、外部反応容器220の周囲を覆う。
逆流防止装置240は、配管270の空間271と外部反応容器220の空間221との間の差圧によって空間271から空間221へ窒素ガスを導入するとともに、空間221と空間271との間の差圧および自重によって金属Na蒸気および窒素ガスを反応容器210および外部反応容器220内に保持する。
加熱装置250は、反応容器210および外部反応容器220を外部反応容器220の外周面220Aから加熱する。加熱装置260は、反応容器210および外部反応容器220を外部反応容器220の底面220Bから加熱する。
配管270は、ガスボンベ340から圧力調整器330およびガス供給管300を介して供給された窒素ガスを逆流防止装置240へ供給する。
ガス供給管290は、ガスボンベ340から圧力調整器330を介して供給された窒素ガスをバルブ320を介して外部反応容器220内へ供給する。ガス供給管300は、ガスボンベ340から圧力調整器330を介して供給された窒素ガスをバルブ321を介して配管270へ供給する。ガス供給管310は、ガスボンベ340から圧力調整器330およびガス供給管290を介して供給された窒素ガスを外部反応容器230内へ供給する。
バルブ320は、ガス供給管290内の窒素ガスを外部反応容器220内へ供給し、または窒素ガスの外部反応容器220内への供給を停止する。バルブ321は、ガス供給管300内の窒素ガスを配管270内へ供給し、または窒素ガスの配管270内への供給を停止する。圧力調整器330は、ガスボンベ340からの窒素ガスを所定の圧力にしてガス供給管290,300,310に供給する。
ガスボンベ340は、窒素ガスを保持する。排気管350は、外部反応容器220内の気体を真空ポンプ390へ通過させる。バルブ370は、外部反応容器220内と排気管350とを空間的に繋げ、または外部反応容器220内と排気管350とを空間的に遮断する。
真空ポンプ390は、排気管350およびバルブ370を介して外部反応容器220内の真空引きを行なう。
圧力センサー400は、外部反応容器230内の圧力を検出し、圧力センサー410は、外部反応容器220内の圧力を検出する。
図2は、図1に示す逆流防止装置240の斜視図である。図2の(a)は、逆流防止装置240の逆流防止弁242が反応容器210側へ移動した状態を示し、図2の(b)は、逆流防止弁242が配管270側へ移動した状態を示す。
図2の(a)を参照して、逆流防止装置240は、1対のガイド241および逆流防止弁242に加え、貫通孔243をさらに含む。貫通孔243は、外部反応容器220と配管270との連結部において外部反応容器220の底面220Bを貫通するように設けられる。
1対のガイド241は、貫通孔243の両側に設けられる。逆流防止弁242は、1対のガイド241に沿って重力方向DR1に摺動する。1対のガイド241の上面241Aは、反応容器210の本体部211の底面211A(図1参照)に接しており、逆流防止弁242の上面242Aが反応容器210の本体部211の底面211Aに接する位置まで逆流防止弁242が1対のガイド241に沿って移動すると、貫通孔243が開いた状態となる。
逆流防止弁242の上面242Aが反応容器210の本体部211の底面211Aに接する位置まで逆流防止弁242が移動するのは、配管270内の圧力が外部反応容器220内の圧力よりも高い場合であるので、貫通孔243が開いた状態では、配管270から外部反応容器220内へ窒素ガス11が拡散する。したがって、外部反応容器220の空間221内の金属Na蒸気は、この窒素ガス11の流れによって阻まれ、外部反応容器220から配管270への拡散が抑制される。
外部反応容器220内の圧力が配管270内の圧力よりも高くなると、逆流防止弁242は、反応容器210の本体部211の底面211Aから配管270の方向へ移動し、貫通孔243が閉じた状態となる。また、外部反応容器220内の圧力が配管270内の圧力とほぼ等しいとき、逆流防止弁242は、自重によって配管270の方向へ移動し、貫通孔243が閉じた状態となる(図2の(b)参照)。
したがって、逆流防止弁242は、外部反応容器220内と配管270内との差圧および自重によって、貫通孔243を塞ぐ位置と貫通孔243を開ける位置との間を重力方向DR1へ移動する。
1対のガイド241は、上述したように、外部反応容器220と同じSUS316Lからなるので、溶接によって外部反応容器220に連結される。そして、1対のガイド241が外部反応容器220に溶接されると、逆流防止弁242を1対のガイド241の間に入れ、さらに、反応容器210を1対のガイド241上に置く。これによって、反応容器210の本体部211の底面211Aが1対のガイド241の上面241Aに接し、逆流防止弁242が1対のガイド241に沿って貫通孔243を塞ぐ位置と貫通孔243を開ける位置との間を移動する機構が完成する。
結晶成長装置200を用いてGaN結晶を成長させる場合、グローブボックスを用いてArガス雰囲気中で金属Naおよび金属Gaを反応容器210内に入れ、反応容器210内の空間213および外部反応容器220内の空間221をArガスで充填した状態で反応容器210および外部反応容器220を結晶成長装置200の外部反応容器230内に設定する。
そして、バルブ370を開け、真空ポンプ390によって排気管350を介して外部反応容器220内を所定の圧力(0.133Pa以下)まで真空引きする。この場合、反応容器210において、蓋部212は、本体部211に載せられているだけであり、本体部211と蓋部212との間には間隙が存在する。その結果、外部反応容器220内の真空引きによって、反応容器210内も真空引きされる。
その後、空間213,221内の圧力が所定の圧力になったことを圧力センサー410によって検出すると、バルブ370を閉じ、バルブ320,321を開け、窒素ガスをガスボンベ340からガス供給管290,300,310を介して反応容器210および外部反応容器220,230内へ供給する。この場合、圧力調整器330によって反応容器210および外部反応容器220,230内の圧力が1気圧程度になるように反応容器210および外部反応容器220,230内へ窒素ガスを供給する。
そして、圧力センサー400,410によって検出した外部反応容器220,230内の圧力が1気圧程度になると、バルブ320,321を閉じ、バルブ370を開けて真空ポンプ390によって反応容器210および外部反応容器220内を所定の圧力(0.133Pa)まで真空引きする。
その後、反応容器210および外部反応容器220内の真空引きと反応容器210および外部反応容器220内への窒素ガスの充填とを数回繰り返し行う。
その後、圧力調整器330によって反応容器210および外部反応容器220,230内の圧力が10〜50気圧になるように反応容器210および外部反応容器220,230内へ窒素ガスを充填する。
そして、圧力センサー400,410によって検出した圧力が10〜50気圧になった時点でバルブ320を閉じる。
反応容器210および外部反応容器220,230への窒素ガスの充填が終了すると、加熱装置250,260によって反応容器210および外部反応容器220を800℃に加熱し、その後、数十時間〜数百時間、反応容器210および外部反応容器220の温度を800℃に保持する。
反応容器210に入れられた金属Naおよび金属Gaは、反応容器210が加熱される過程で融け、反応容器210内で混合融液180が生成される。そして、反応容器210内の温度が800℃に達すると、混合融液180中でGaN結晶が成長し始める。その後、GaN結晶の成長が進行するに伴って、混合融液180から金属Naが蒸発し、金属Na蒸気および窒素ガスが空間213内に混在する。この場合、空間213における金属Na蒸気の圧力は、0.45気圧である。
そして、空間213内の金属Na蒸気は、本体部211と蓋部212との間隙を通って空間221内へ拡散し、空間221内においても金属Na蒸気および窒素ガスが混在する。
空間221内の圧力が配管270の空間271内の圧力よりも高いとき、逆流防止弁242は、閉じているので(図2の(b)参照)、空間221内の金属Na蒸気は配管270の空間271へ拡散しない。
また、GaN結晶の成長が進行するに伴って、空間213内の窒素ガスが消費され、反応容器210内の圧力(=外部反応容器220内の圧力)が配管270内の圧力よりも低くなると、逆流防止弁242は、ガイド241に沿って反応容器210側へ移動し、窒素ガスが、貫通孔243を介して配管270から外部反応容器220および反応容器210内へ導入される。この場合、窒素ガス11の流れが配管270側から外部反応容器220側へ生じているので、空間221内の金属Na蒸気が空間271へ拡散されるのが抑制される(図2の(a)参照)。
図3は、GaN結晶の製造方法を説明するための実施の形態1におけるフローチャートである。図3を参照して、一連の動作が開始されると、Arガスが充填されたグローブボックス内へ反応容器210および外部反応容器220を入れる。そして、Arガス雰囲気中で金属Naおよび金属Gaを反応容器210に入れる(ステップS1)。この場合、金属Naおよび金属Gaを5:5のモル比率で反応容器210に入れる。なお、Arガスは、水分量が10ppm以下であり、かつ、酸素量が10ppm以下であるArガスである(以下、同じ)。
その後、反応容器210および外部反応容器220内にArガスを充填した状態で反応容器210および外部反応容器220を結晶成長装置200の外部反応容器230内に設定する。
引続いて、バルブ370を開け、真空ポンプ390によって反応容器210および外部反応容器220内に充填されたArガスを排気する。真空ポンプ390によって反応容器210および外部反応容器220内を所定の圧力(0.133Pa以下)まで真空引きした後、バルブ370を閉じ、バルブ320,321を開けて窒素ガスをガスボンベ340からガス供給管290,300を介して反応容器210および外部反応容器220内へ充填する。この場合、圧力調整器330によって反応容器210および外部反応容器220内の圧力が1気圧程度になるように反応容器210および外部反応容器220内へ窒素ガスを供給する。
そして、圧力センサー410によって検出した外部反応容器220内の圧力が1気圧程度になると、バルブ320,321を閉じ、バルブ370を開けて真空ポンプ390によって反応容器210および外部反応容器220内に充填された窒素ガスを排気する。この場合も、真空ポンプ390によって反応容器210および外部反応容器220内を所定の圧力(0.133Pa以下)まで真空引きする。
そして、この反応容器210および外部反応容器220内の真空引きと反応容器210および外部反応容器220への窒素ガスの充填とを数回繰り返し行なう。
その後、真空ポンプ390によって反応容器210および外部反応容器220内を所定の圧力まで真空引きした後、バルブ370を閉じ、バルブ320,321を開けて圧力調整器330によって反応容器210および外部反応容器220内の圧力が10〜50気圧の範囲になるように反応容器210および外部反応容器220内へ窒素ガスを充填する(ステップS2)。
この場合、配管270内の圧力が外部反応容器220内の圧力よりも高ければ、逆流防止弁242が反応容器210側へ移動し、窒素ガスが配管270からも外部反応容器220内へ供給される。
また、外部反応容器220内へ供給された窒素ガスは、本体部211と蓋部212との間の間隙を介して反応容器210内へも充填される。そして、圧力センサー400,410によって検出した空間221,231内の圧力が10〜50気圧になった時点でバルブ320が閉じられる。この時点で、空間213,221,231内の圧力は10〜50気圧になっている。
その後、加熱装置250,260によって反応容器210および外部反応容器220を800℃まで加熱する(ステップS3)。この場合、反応容器210内の金属Naおよび金属Gaは、反応容器210および外部反応容器220が加熱される過程で融け、反応容器210内に混合融液180が発生する。そして、空間213内の窒素ガスが混合融液180中へ取り込まれ、Naと反応し、混合融液180中にGaN結晶が成長し始める。
そして、GaN結晶の成長が進行すると、混合融液180から金属Naが蒸発し、空間213,221内に窒素ガスおよび金属Na蒸気が混在する。その後、空間213内の窒素ガスが消費され、空間213内の窒素ガスが減少すると、空間213,221内の圧力P1が配管270の空間271内の圧力P2よりも低くなり(P1<P2)、空間213,221内と空間271内との間に差圧が発生する。その結果、逆流防止弁242が反応容器210側へ移動し、空間271内の窒素ガスは、貫通孔243を介して空間221および空間213内へ順次供給される(ステップS4)。
その後、反応容器210および外部反応容器220,230の温度が、所定の時間(数十時間〜数百時間)、800℃に保持される(ステップS5)。これによって、大きなサイズのGaN結晶が成長する。このGaN結晶は、c軸(<0001>)方向に成長した柱状形状を有し、欠陥フリーの結晶である。
そして、反応容器210および外部反応容器220,230の温度が降温されて(ステップS6)、GaN結晶の製造が終了する。
結晶成長装置200を用いたGaN結晶の製造においては、逆流防止弁242が設けられた領域の温度も800℃程度の高温に昇温されるが、1対のガイド241および逆流防止弁242は、反応容器210および外部反応容器220と同じSUS316Lからなるので、800℃程度の高温に昇温されても、破損することがなく、安定して動作する。
したがって、この発明においては、800℃程度の高温に耐え得る逆流防止弁を用いて反応容器210内の混合融液180から蒸発した金属Na蒸気の配管270への拡散を抑制するとともに、配管270内の窒素ガスを空間271と空間221との間の差圧によって外部反応容器220および反応容器210へ供給することを特徴とする。
この特徴により、金属Na蒸気が空間213,221内に閉じ込められ、混合融液180からの金属Naの蒸発を抑制できる。その結果、混合融液180中における金属Naと金属Gaとのモル比率を安定化でき、大きなサイズのGaN結晶を製造できる。
なお、圧力調整器330およびガスボンベ340は、「ガス供給装置」を構成する。
また、空間271は、「外部空間」を構成する。
[実施の形態2]
図4は、実施の形態2による結晶成長装置の概略断面図である。図4を参照して、実施の形態4による結晶成長装置200Aは、図1に示す結晶成長装置200に金属融液380を追加したものであり、その他は、結晶成長装置200と同じである。
金属融液380は、金属Na融液からなり、反応容器210と外部反応容器220との間に保持される。そして、金属融液380は、GaN結晶の成長中、空間221内へ金属Naを蒸発するとともに、逆流防止装置240を介して配管270から供給された窒素ガスを空間221内へ供給する。
結晶成長装置200Aを用いてGaN結晶を成長させる場合、グローブボックスを用いてArガス雰囲気中で金属Naおよび金属Gaを反応容器210内に入れ、金属Naを反応容器210と外部反応容器220との間に入れる。そして、反応容器210内の空間213および外部反応容器220内の空間221をArガスで充填した状態で反応容器210および外部反応容器220を結晶成長装置200Aの外部反応容器230内に設定する。
そして、バルブ370を開け、真空ポンプ390によって排気管350を介して反応容器210および外部反応容器220内を所定の圧力(0.133Pa以下)まで真空引きした後、バルブ370を閉じ、バルブ320,321を開けて窒素ガスをガスボンベ340からガス供給管290,300を介して反応容器210および外部反応容器220内へ充填する。この場合、圧力調整器330によって反応容器210および外部反応容器220内の圧力が1気圧程度になるように反応容器210および外部反応容器220内へ窒素ガスを供給する。
そして、圧力センサー410によって検出した外部反応容器220内の圧力が1気圧程度になると、バルブ320,321を閉じ、バルブ370を開けて真空ポンプ390によって反応容器210および外部反応容器220内に充填された窒素ガスを排気する。この場合も、真空ポンプ390によって反応容器210および外部反応容器220内を所定の圧力(0.133Pa以下)まで真空引きする。
そして、この反応容器210および外部反応容器220内の真空引きと反応容器210および外部反応容器220への窒素ガスの充填とを数回繰り返し行なう。
その後、真空ポンプ390によって反応容器210および外部反応容器220内を所定の圧力まで真空引きした後、バルブ370を閉じ、バルブ320,321を開けて圧力調整器330によって反応容器210および外部反応容器220内の圧力が10〜50気圧の範囲になるように反応容器210および外部反応容器220内へ窒素ガスを充填する。
そして、圧力センサー400,410によって検出した圧力が10〜50気圧になった時点でバルブ320を閉じる。この時点では、反応容器210および外部反応容器220の温度は室温であるので、反応容器210と外部反応容器220との間の金属Naは、固体である。したがって、配管270内の圧力が外部反応容器220内の圧力よりも高い場合、逆流防止弁242が反応容器210側へ移動し、窒素ガスが貫通孔243を介して配管270内からも外部反応容器220内へ充填される。また、空間221内の窒素ガスは、本体部211と蓋部212との間の間隙を介して反応容器210内の空間213へも充填される。その結果、空間213,221,231内の圧力は、容易に一致する。
反応容器210および外部反応容器220,230への窒素ガスの充填が終了すると、加熱装置250,260によって反応容器210および外部反応容器220を800℃に加熱し、その後、数十時間〜数百時間、反応容器210および外部反応容器220の温度を800℃に保持する。
反応容器210に入れられた金属Naおよび金属Gaは、反応容器210が加熱される過程で融け、反応容器210内で混合融液180が生成される。また、反応容器210と外部反応容器220との間の金属Naは、反応容器210および外部反応容器220が加熱される過程で融け、反応容器210と外部反応容器220との間に金属融液380が発生する。そうすると、反応容器210および外部反応容器220内の空間213,221に存在する窒素ガスは、混合融液180および金属融液380に接し、バルブ320,370が閉じているため、空間213,221内に閉じ込められる。
そして、GaN結晶の成長が進行するに伴って、混合融液180および金属融液380から金属Naが蒸発し、金属Na蒸気および窒素ガスが空間213,221内に閉じ込められる。この場合、空間213における金属Na蒸気の圧力は、0.45気圧である。また、GaN結晶の成長が進行するに伴って、空間213内の窒素ガスが消費され、反応容器210内の圧力P3が配管270内の圧力P4よりも低くなると(P3<P4)、逆流防止弁242が配管270内の圧力P4と外部反応容器220内の圧力P3との差圧によって反応容器210側へ移動し、配管270内の窒素ガスが貫通孔243を介して金属融液380へ供給され、金属融液380中を泡となって移動し、外部反応容器220内の空間221へ供給される。これによって、窒素ガスが空間221,213内へ安定的に供給される。
結晶成長装置200Aにおいては、逆流防止弁242が反応容器210側へ移動して貫通孔243が開いても、逆流防止弁242と空間221との間には、金属融液380が存在するので、空間221内の金属Na蒸気が配管270内へ拡散することがなく、混合融液180中における金属Naと金属Gaとのモル比率を安定させることができる。
なお、逆流防止弁242が反応容器210側へ移動した場合、貫通孔243の大きさが数十μm程度であれば、金属融液380は、表面張力によって反応容器210と外部反応容器220との間に保持される。したがって、結晶成長装置200Aにおいては、逆流防止弁242の上面242Aが反応容器210の本体部211の底面211Aに接するまで逆流防止弁242が反応容器210側へ移動した状態で、貫通孔243の大きさが数十μm程度になるように逆流防止弁242を設計する。
図5は、GaN結晶の製造方法を説明するための実施の形態2におけるフローチャートである。図5を参照して、一連の動作が開始されると、Arガスが充填されたグローブボックス内へ反応容器210および外部反応容器220を入れる。そして、Arガス雰囲気中で金属Naおよび金属Gaを反応容器210に入れる(ステップS11)。この場合、金属Naおよび金属Gaを5:5のモル比率で反応容器210に入れる。
その後、Arガス雰囲気中で金属Naを反応容器210と外部反応容器220との間に入れる(ステップS12)。そして、反応容器210および外部反応容器220内にArガスを充填した状態で反応容器210および外部反応容器220を結晶成長装置200Aの外部反応容器230内に設定する。
引続いて、上述した動作によって、反応容器210および外部反応容器220内の真空引きと、反応容器210および外部反応容器220への窒素ガスの充填とを数回繰り返し行なう。その後、バルブ370を開け、真空ポンプ390によって反応容器210および外部反応容器220内に充填された窒素ガスを排気する。真空ポンプ390によって反応容器210および外部反応容器220内を所定の圧力(0.133Pa以下)まで真空引きした後、バルブ370を閉じ、バルブ320,321を開けて窒素ガスをガスボンベ340からガス供給管290,300を介して反応容器210および外部反応容器220内へ供給する。そして、圧力調整器330によって反応容器210および外部反応容器220内の圧力が10〜50気圧になるように反応容器210および外部反応容器220内へ窒素ガスを充填する(ステップS13)。
この場合、反応容器210と外部反応容器220との間の金属Naは、固体であるので、配管270内の圧力が外部反応容器220内の圧力よりも高い場合には、窒素ガスは、逆流防止装置240を介して配管270の空間271から外部反応容器220内の空間221および反応容器210内の空間213へ供給される。蓋部212は、本体部211上に載せられているだけであり、本体部211と蓋部212との間には間隙が有るので、空間221へ供給された窒素ガスは、その間隙を介して反応容器210の空間213にも充填される。そして、圧力センサー400,410によって検出した空間221,231内の圧力が10〜50気圧になった時点でバルブ320が閉じられる。この時点で、空間213,221,231内の圧力は10〜50気圧になっている。
その後、加熱装置250,260によって反応容器210および外部反応容器220を800℃まで加熱する(ステップS14)。この場合、反応容器210と外部反応容器220との間に保持された金属Naは、融点が約98℃であるので、反応容器210および外部反応容器220が800℃に加熱される過程で溶融され、金属融液380になる。そして、2つの気液界面1,2が発生する(図4参照)。気液界面1は、金属融液380と外部反応容器220内の空間221との界面に位置し、気液界面2は、金属融液380と逆流防止弁242との界面に位置する。
また、反応容器210および外部反応容器220の温度が800℃に昇温されると、反応容器210内の金属Naおよび金属Gaも液体になり、金属Naと金属Gaとの混合融液180が発生する。そして、空間213内の窒素ガスが混合融液180中へ取り込まれ、Naと反応し、混合融液180中にGaN結晶が成長し始める。
その後、GaN結晶の成長が進行すると、混合融液180および金属融液380から金属Naが蒸発し、空間213,221内に金属Na蒸気および窒素ガスが混在する。また、GaN結晶の成長が進行すると、空間213内の窒素ガスが消費され、空間213内の窒素ガスが減少する。そうすると、空間213,221内の圧力P3が配管270内の空間271の圧力P4よりも低くなり(P3<P4)、空間213,221内と空間271内との間に差圧が発生し、逆流防止弁242が1対のガイド241に沿って反応容器210側へ移動し、空間271の窒素ガスは、貫通孔243および金属融液380(=金属Na融液)を介して空間221および空間213内へ順次供給される(ステップS15)。
その後、反応容器210および外部反応容器220の温度が、所定の時間(数十時間〜数百時間)、800℃に保持される(ステップS16)。これによって、大きなサイズのGaN結晶が成長する。このGaN結晶は、c軸(<0001>)方向に成長した柱状形状を有し、欠陥フリーの結晶である。
そして、反応容器210および外部反応容器220の温度が降温されて(ステップS17)、GaN結晶の製造が終了する。
なお、結晶成長装置200Aにおいては、反応容器210内の空間213に連通した外部反応容器220内の空間221と金属融液380との気液界面1または気液界面1付近における温度T1は、空間213と混合融液180との気液界面3または気液界面3付近における温度T2に略一致するように、加熱装置250は、反応容器210および外部反応容器220を加熱する。
このように、気液界面1または気液界面1付近における温度T1を気液界面3または気液界面3付近における温度T2に略一致させることによって、金属融液380から蒸発した金属Na蒸気と混合融液180から蒸発した金属Na蒸気とが空間213,221内で平衡状態になり、空間213内の金属Na蒸気が空間221内へ拡散するのを抑制できる。その結果、混合融液180からの金属Naの蒸発を確実に抑制して混合融液180中における金属Naと金属Gaとのモル比率を安定でき、大きなサイズを有するGaN結晶を安定して製造できる。
また、結晶成長装置200Aにおいては、温度T1が温度T2よりも高くなるように反応容器210および外部反応容器220を加熱してもよい。この場合、反応容器210と外部反応容器220との間に加熱装置をさらに設置し、その設置した加熱装置によって反応容器210を加熱して気液界面3または気液界面3付近を温度T2に加熱し、加熱装置250によって気液界面1または気液界面1付近を温度T1に加熱する。
このように、温度T1を温度T2よりも高い温度に設定することによって、気液界面1における金属Naの蒸気圧が気液界面3における金属Naの蒸気圧よりも高くなり、金属Na蒸気が空間221から空間213内へ拡散する。そうすると、空間213内において金属Na蒸気の濃度が高くなり、混合融液180からの金属Naの蒸発をさらに抑制できる。その結果、混合融液180中における金属Naと金属Gaとのモル比率を確実に安定でき、大きさサイズを有するGaN結晶を安定して製造できる。
したがって、結晶成長装置200Aにおいては、好ましくは、温度T1が温度T2以上に設定されてGaN結晶の製造が行なわれる。
実施の形態2によれば、GaN結晶の結晶成長時には、金属Na蒸気が金属融液380および逆流防止弁242によって空間213,221内へ閉じ込められるとともに、窒素ガスが配管270から空間213,221内へ安定して供給されるので、混合融液180中の金属Naと金属Gaとのモル比率を安定化できるとともに、窒素ガスを混合融液180中へ安定して供給できる。その結果、サイズが大きいGaN結晶を製造できる。
なお、実施の形態2においては、金属融液380は、1対のガイド241、逆流防止弁242および貫通孔243に追加されて逆流防止装置240を構成する。
その他は、実施の形態1と同じである。
[実施の形態3]
図6は、実施の形態3による結晶成長装置の概略断面図である。図6を参照して、実施の形態3による結晶成長装置500は、反応容器510と、配管520,600と、逆流防止装置530と、外部容器540と、外部反応容器550と、金属融液560と、加熱装置570,580,590と、ガス供給管610,620,630と、バルブ640,641,680と、圧力調整器650と、ガスボンベ660と、排気管670と、真空ポンプ690と、圧力センサー700,710とを備える。
反応容器510は、SUS316Lからなり、略円柱形状を有する。配管520は、SUS316Lからなる。そして、配管520は、一方端が反応容器510に連結され、他方端が逆流防止装置530に連結される。逆流防止装置530は、配管520の他方端に連結され、密閉容器531と、逆流防止弁532と、貫通孔533とを含む。外部容器540は、SUS316Lからなり、略円柱形状からなる。そして、外部容器540は、配管520の外周面に設けられた開口部に連結される。
外部反応容器550は、反応容器510、配管520、逆流防止装置530および外部容器540との間で所定の間隔を隔てて配置される。
金属融液560は、外部容器540内に保持される。加熱装置570は、反応容器510の外周面および底面に対向して配置される。加熱装置580は、配管520および外部容器540の周囲に配置される。加熱装置590は、逆流防止装置530の密閉容器531に対向して配置される。配管600は、外部反応容器550を介して逆流防止装置530の貫通孔533に連結される。
ガス供給管610は、一方端がバルブ640を介して反応容器510に連結され、他方端が圧力調整器650を介してガスボンベ660に連結される。ガス供給管620は、一方端が外部反応容器550に連結され、他方端がガス供給管610に連結される。ガス供給管630は、一方端がバルブ641を介して配管600に連結され、他方端が圧力調整器650の出力側においてガス供給管610に連結される。
バルブ640は、反応容器510の近傍でガス供給管610に装着される。バルブ641は、配管600の近傍でガス供給管630に装着される。圧力調整器650は、ガスボンベ660の近傍でガス供給管610に装着される。ガスボンベ660は、ガス供給管610に連結される。
排気管670は、一方端がバルブ680を介して反応容器510に連結され、他方端が真空ポンプ690に連結される。バルブ680は、反応容器510の近傍で排気管670に装着される。真空ポンプ690は、排気管670に連結される。
圧力センサー700は、反応容器510に取り付けられ、圧力センサー710は、外部反応容器550に取り付けられる。
反応容器510は、金属Naと、金属Gaとの混合融液180を保持する。逆流防止装置530は、配管600内の圧力と配管520内の圧力との差圧によって配管600から配管520および反応容器510へ窒素ガスを導入するとともに、配管520内の圧力と配管600内の圧力との差圧および自重によって金属Na蒸気および窒素ガスを配管520および反応容器510内に保持する。外部容器540は、金属融液560を保持する。外部反応容器550は、反応容器510、配管520、逆流防止装置530、外部容器540および加熱装置570,580,590を覆う。
加熱装置570は、反応容器510を加熱する。加熱装置580は、配管520および外部容器540を加熱する。加熱装置590は、逆流防止装置530を加熱する。
配管600は、ガスボンベ660から圧力調整器650およびガス供給管630を介して供給された窒素ガスを逆流防止装置530へ供給する。
ガス供給管610は、ガスボンベ660から圧力調整器650を介して供給された窒素ガスをバルブ640を介して反応容器510内へ供給する。ガス供給管620は、ガスボンベ660から圧力調整器650を介して供給された窒素ガスを外部反応容器550内へ供給する。ガス供給管630は、ガスボンベ660および圧力調整器650を介して供給された窒素ガスをバルブ641を介して配管600へ供給する。
バルブ640は、ガス供給管610内の窒素ガスを反応容器510内へ供給し、または窒素ガスの反応容器510内への供給を停止する。バルブ641は、ガス供給管630内の窒素ガスを配管600内へ供給し、または窒素ガスの配管600内への供給を停止する。圧力調整器650は、ガスボンベ660からの窒素ガスを所定の圧力にしてガス供給管610,620,630に供給する。
ガスボンベ660は、窒素ガスを保持する。排気管670は、反応容器510内の気体を真空ポンプ690へ通過させる。バルブ680は、反応容器510内と排気管670とを空間的に繋げ、または反応容器510内と排気管670とを空間的に遮断する。
真空ポンプ690は、排気管670およびバルブ680を介して反応容器510内の真空引きを行なう。
圧力センサー700は、反応容器510内の圧力を検出し、圧力センサー710は、外部反応容器550内の圧力を検出する。
逆流防止装置530において、逆流防止弁532は、配管600内の圧力が配管520内の圧力よりも高いとき、密閉容器531の側壁に沿って上方向DR2へ移動し、貫通孔533が開いた状態となる。
一方、逆流防止弁532は、配管600内の圧力が配管520内の圧力よりも低いとき、密閉容器531の側壁に沿って下方向DR3へ移動し、貫通孔533が閉じた状態となる。
また、配管600内の圧力が配管520内の圧力とほぼ等しいとき、逆流防止弁532は、自重によって配管600の方向へ移動し、貫通孔533が閉じた状態となる。
したがって、逆流防止弁532は、配管600内の圧力と配管520内の圧力との差圧および自重によって、貫通孔533を塞ぐ位置と貫通孔533を開ける位置との間を重力方向DR2,DR3へ移動する。
そして、逆流防止弁532が貫通孔533を開ける位置まで移動すると、窒素ガスが配管600内から配管520内へ拡散し、配管600内から配管520内へ向かう窒素ガスの流れが発生する。その結果、配管520内に存在する金属Na蒸気が配管520内から貫通孔533を介して配管600内へ拡散するのが抑制される。
また、逆流防止弁532が貫通孔533を塞ぐ位置まで移動すると、配管520内に存在する金属Na蒸気が配管520内から配管600内へ拡散するのが阻止される。
このように、逆流防止弁532は、配管520内の圧力と配管600内の圧力との差圧および自重によって、配管600内の窒素ガスを配管520内へ供給するとともに、配管520内の金属Na蒸気が配管600内へ拡散するのを抑制する。
結晶成長装置500を用いてGaN結晶を成長させる場合、グローブボックスを用いてArガス雰囲気中で金属Naおよび金属Gaを反応容器510内に入れ、金属Naを外部容器540に入れる。そして、外部容器540を配管520の外周面に設けられた開口部に装着し、反応容器510内の空間511、配管520内の空間521および外部容器540内の空間541をArガスで充填した状態で反応容器510、配管520および外部容器540を結晶成長装置500の外部反応容器550内に設定する。
そして、バルブ680を開け、真空ポンプ690によって排気管670を介して反応容器510、配管520および外部容器540内を所定の圧力(0.133Pa以下)まで真空引きした後、バルブ680を閉じ、バルブ640,641を開けて窒素ガスをガスボンベ660からガス供給管610,630を介して反応容器510、配管520および外部容器540内へ充填する。この場合、圧力調整器650によって反応容器510、配管520および外部容器540内の圧力が1気圧程度になるように反応容器510、配管520および外部容器540内へ窒素ガスを供給する。
そして、圧力センサー700によって検出した反応容器510内の圧力が1気圧程度になると、バルブ640,641を閉じ、バルブ680を開けて真空ポンプ690によって反応容器510、配管520および外部容器540内に充填された窒素ガスを排気する。この場合も、真空ポンプ690によって反応容器510、配管520および外部容器540内を所定の圧力(0.133Pa以下)まで真空引きする。
そして、この反応容器510、配管520および外部容器540内の真空引きと反応容器510、配管520および外部容器540への窒素ガスの充填とを数回繰り返し行なう。
その後、真空ポンプ690によって反応容器510、配管520および外部容器540内を所定の圧力まで真空引きした後、バルブ680を閉じ、バルブ640,641を開けて圧力調整器650によって反応容器510、配管520および外部容器540内の圧力が10〜50気圧の範囲になるように反応容器510、配管520、外部容器540および外部反応容器550内へ窒素ガスを充填する。
そして、圧力センサー700,710によって検出した圧力が10〜50気圧になった時点でバルブ640を閉じる。この時点では、反応容器510および外部容器540の温度は室温であるので、反応容器510内の金属Naおよび金属Gaと外部容器540内の金属Naとは、固体である。したがって、配管600内の圧力が配管520および外部容器540内の圧力よりも高い場合、逆流防止弁532が上方向DR2へ移動し、窒素ガスが貫通孔533を介して配管600内からも配管520、外部容器540および反応容器510内へ充填される。その結果、空間511,521,541内の圧力は、容易に一致する。
反応容器510、配管520,600、外部容器540および外部反応容器550内への窒素ガスの充填が終了すると、加熱装置570によって反応容器510を800℃に加熱し、加熱装置580によって配管520および外部容器540を800℃に加熱する。また、加熱装置590によって逆流防止装置530を800℃に加熱する。その後、数十時間〜数百時間、反応容器510、配管520、外部容器540および逆流防止装置530の温度を800℃に保持する。
反応容器510に入れられた金属Naおよび金属Gaは、反応容器510が加熱される過程で融け、反応容器510内で混合融液180が生成される。また、外部容器540内の金属Naは、外部容器540が加熱される過程で融け、外部容器540内に金属融液560が発生する。
この場合、逆流防止弁532は、自重によって貫通孔533を塞いでいる。そうすると、反応容器510、配管520および外部容器540内の窒素ガスは、バルブ640,680が閉じているため、空間511,521,541内に閉じ込められる。
そして、混合融液180中でGaN結晶が成長し始め、GaN結晶の成長が進行するに伴って、混合融液180および金属融液560から金属Naが蒸発し、金属Na蒸気および窒素ガスが空間511,521,541内に閉じ込められる。この場合、空間511における金属Na蒸気の圧力は、0.45気圧である。
また、GaN結晶の成長が進行するに伴って、空間511内の窒素ガスが消費され、空間511,521,541内の圧力P5が配管600内の圧力P6よりも低くなると(P5<P6)、逆流防止弁532が配管600内の圧力P6と空間511,521,541内の圧力P5との差圧によって上方向DR2へ移動し、配管600内の窒素ガスが貫通孔533を介して空間511,521,541内へ供給される。これによって、窒素ガスが空間511内へ安定的に供給される。
結晶成長装置500においては、逆流防止弁532が上方向DR2へ移動して貫通孔533が開いても、配管600から配管520への窒素ガスの流れが存在するので、空間511,521,541内の金属Na蒸気が配管600内へ拡散することがなく、混合融液180中における金属Naと金属Gaとのモル比率を安定させることができる。
図7は、GaN結晶の製造方法を説明するための実施の形態3におけるフローチャートである。図7を参照して、一連の動作が開始されると、Arガスが充填されたグローブボックス内へ反応容器510、配管520および外部容器540を入れる。そして、Arガス雰囲気中で金属Naおよび金属Gaを反応容器510に入れる(ステップS21)。この場合、金属Naおよび金属Gaを5:5のモル比率で反応容器510に入れる。
その後、Arガス雰囲気中で金属Naを外部容器540に入れる(ステップS22)。そして、反応容器510、配管520および外部容器540内にArガスを充填した状態で反応容器510、配管520および外部容器540を結晶成長装置500の外部反応容器550内に設定する。
引続いて、上述した動作によって、反応容器510、配管520および外部容器540内の真空引きと、反応容器510、配管520および外部容器540への窒素ガスの充填とを数回繰り返し行なう。その後、バルブ680を開け、真空ポンプ690によって反応容器510、配管520および外部容器540内に充填された窒素ガスを排気する。真空ポンプ690によって反応容器510、配管520および外部容器540内を所定の圧力(0.133Pa以下)まで真空引きした後、バルブ680を閉じ、バルブ640,641を開けて窒素ガスをガスボンベ660からガス供給管610を介して反応容器510、配管520および外部容器540内へ供給する。そして、圧力調整器650によって反応容器510、配管520、外部容器540および外部反応容器550内の圧力が10〜50気圧になるように反応容器510、配管520、外部容器540および外部反応容器550内へ窒素ガスを充填する(ステップS23)。
この場合、反応容器510内の金属Naおよび金属Gaと外部容器540内の金属Naとは、固体であるので、配管600内の圧力が配管520および外部容器540内の圧力よりも高い場合には、窒素ガスは、貫通孔533を介して配管600から配管520および外部容器540へ供給される。
そして、圧力センサー700,710によって検出した反応容器510、配管520、外部容器540および外部反応容器550内の圧力が10〜50気圧になった時点でバルブ640が閉じられる。この時点で、空間511,521,541内の圧力は10〜50気圧になっている。
その後、加熱装置570によって反応容器510を800℃まで加熱し、加熱装置580によって配管520および外部容器540を800℃まで加熱し、加熱装置590によって逆流防止装置530を800℃まで加熱する(ステップS24)。この場合、外部容器540に保持された金属Naは、融点が約98℃であるので、配管520および外部容器540が800℃に加熱される過程で溶融され、金属融液560になる。
また、反応容器510の温度が800℃に昇温されると、反応容器510内の金属Naおよび金属Gaも液体になり、金属Naと金属Gaとの混合融液180が発生する。そして、空間511内の窒素ガスが混合融液180中へ取り込まれ、Naと反応し、混合融液180中にGaN結晶が成長し始める。
その後、GaN結晶の成長が進行すると、混合融液180および金属融液560から金属Naが蒸発し、空間511,521,541内に金属Na蒸気および窒素ガスが混在する。また、GaN結晶の成長が進行すると、空間511内の窒素ガスが消費され、空間511内の窒素ガスが減少する。そうすると、空間511,521,541内の圧力P5が配管600内の圧力P6よりも低くなり(P5<P6)、反応容器510、配管520および外部容器540内と配管600内との間に差圧が発生し、逆流防止弁532が密閉容器531の側壁に沿って上方向DR2へ移動し、配管600内の窒素ガスは、貫通孔533を介して空間521,541,511へ順次供給される(ステップS25)。
その後、反応容器510、配管520、外部容器540および逆流防止装置530の温度が、所定の時間(数十時間〜数百時間)、800℃に保持される(ステップS26)。これによって、大きなサイズのGaN結晶が成長する。このGaN結晶は、c軸(<0001>)方向に成長した柱状形状を有し、欠陥フリーの結晶である。
そして、反応容器510、配管520、外部容器540および逆流防止装置530の温度が降温されて(ステップS27)、GaN結晶の製造が終了する。
なお、実施の形態3においては、外部容器540および金属融液560を削除して結晶成長装置を構成してもよい。この場合、加熱装置580は、配管520を加熱する。そして、外部容器540および金属融液560を削除しても、配管520内の金属Na蒸気が貫通孔533を介して配管600内へ拡散するのを抑制できる。逆流防止弁532が上方向DR2へ移動するのは、空間511,521内の圧力P5が配管600内の圧力P6よりも低い場合であり、逆流防止弁532が上方向DR2へ移動したとき、配管600から配管520への窒素ガスの流れが発生しているので、配管520内の金属Na蒸気は、この窒素ガスの流れによって配管520から配管600への拡散を抑制されるからである。
実施の形態3によれば、GaN結晶の結晶成長時には、金属Na蒸気が逆流防止装置530(または逆流防止装置530および金属融液560)によって空間511,521内へ閉じ込められるとともに、窒素ガスが配管600から空間511,521内へ安定して供給されるので、混合融液180中の金属Naと金属Gaとのモル比率を安定化できるとともに、窒素ガスを混合融液180中へ安定して供給できる。その結果、サイズが大きいGaN結晶を製造できる。
実施の形態3においては、外部容器540および金属融液560は、密閉容器531 、逆流防止弁532および貫通孔533に追加されて「逆流防止装置」を構成する。
また、圧力調整器650およびガスボンベ660は、「ガス供給装置」を構成する。
さらに、配管600内の空間は、「外部空間」を構成する。
[実施の形態4]
図8は、実施の形態4による結晶成長装置の概略断面図である。図8を参照して、実施の形態4による結晶成長装置200Bは、図1に示す結晶成長装置200に容器244および金属融液245を追加したものであり、その他は、結晶成長装置200と同じである。
容器244は、SUS316Lからなり、反応容器210の本体部211と蓋部212との間隙の近傍において本体部211の外周面に沿って配置される。そして、容器244は、金属融液245を保持する。
結晶成長装置200Bを用いてGaN結晶を成長させる場合、グローブボックスを用いてArガス雰囲気中で金属Naおよび金属Gaを反応容器210内に入れ、金属Naを容器244に入れる。そして、反応容器210内の空間213および外部反応容器220内の空間221をArガスで充填した状態で反応容器210および外部反応容器220を結晶成長装置200Bの外部反応容器230内に設定する。
そして、バルブ370を開け、真空ポンプ390によって排気管350を介して反応容器210および外部反応容器220内を所定の圧力(0.133Pa以下)まで真空引きした後、バルブ370を閉じ、バルブ320,321を開けて窒素ガスをガスボンベ340からガス供給管290を介して反応容器210および外部反応容器220内へ充填する。この場合、圧力調整器330によって反応容器210および外部反応容器220内の圧力が1気圧程度になるように反応容器210および外部反応容器220内へ窒素ガスを供給する。
そして、圧力センサー410によって検出した外部反応容器220内の圧力が1気圧程度になると、バルブ320,321を閉じ、バルブ370を開けて真空ポンプ390によって反応容器210および外部反応容器220内に充填された窒素ガスを排気する。この場合も、真空ポンプ390によって反応容器210および外部反応容器220内を所定の圧力(0.133Pa以下)まで真空引きする。
そして、この反応容器210および外部反応容器220内の真空引きと反応容器210および外部反応容器220への窒素ガスの充填とを数回繰り返し行なう。
その後、真空ポンプ390によって反応容器210および外部反応容器220内を所定の圧力まで真空引きした後、バルブ370を閉じ、バルブ320,321を開けて圧力調整器330によって反応容器210および外部反応容器220,230内の圧力が10〜50気圧の範囲になるように反応容器210および外部反応容器220,230内へ窒素ガスを充填する。
そして、圧力センサー400,410によって検出した圧力が10〜50気圧になった時点でバルブ320を閉じる。この時点では、反応容器210および外部反応容器220の温度は室温であるので、容器244内の金属Naは、固体である。したがって、配管270内の圧力が外部反応容器220内の圧力よりも高い場合、逆流防止弁242が反応容器210側へ移動し、窒素ガスが貫通孔243を介して配管270内からも外部反応容器220の空間221へ充填される。また、空間221内の窒素ガスは、本体部211と蓋部212との間の間隙を介して反応容器210内の空間213へも充填される。その結果、空間213,221,231内の圧力は、容易に一致する。
反応容器210および外部反応容器220,230への窒素ガスの充填が終了すると、加熱装置250,260によって反応容器210および外部反応容器220を800℃に加熱し、その後、数十時間〜数百時間、反応容器210および外部反応容器220の温度を800℃に保持する。
反応容器210に入れられた金属Naおよび金属Gaは、反応容器210が加熱される過程で融け、反応容器210内で混合融液180が生成される。また、容器244に入れられた金属Naは、反応容器210および外部反応容器220が加熱される過程で融け、容器244に金属融液245が発生する。
そして、GaN結晶が成長し始め、GaN結晶の成長が進行するに伴って、混合融液180および金属融液245から金属Naが蒸発し、金属Na蒸気および窒素ガスが空間213,221内に閉じ込められる。
この場合、空間213における金属Na蒸気の圧力は、0.45気圧である。また、金属融液245は、反応容器210の本体部211と蓋部212との間の間隙の近傍で金属Na蒸気を発生させるので、空間213内に存在する金属Na蒸気は、本体部211と蓋部212との間の間隙を介して空間221内へ拡散し難くなる。その結果、混合融液180からの金属Naの蒸発が抑制され、混合融液180中における金属Naおよび金属Gaのモル比率を安定化できる。
また、GaN結晶の成長が進行するに伴って、空間213内の窒素ガスが消費されると、上述したように、配管270内から貫通孔243を介して空間221,213内へ窒素ガスが供給される。これによって、窒素ガスが空間221,213内へ安定的に供給される。
結晶成長装置200Bを用いたGaN結晶の製造方法は、図4に示す結晶成長装置200Aを用いたGaN結晶の製造方法と同じであり、図5に示すフローチャートに従って行なわれる。この場合、図5に示すステップS12において、Arガス雰囲気中で金属Naが容器244へ入れられる。
なお、結晶成長装置200Bにおいては、反応容器210内の空間213に連通した外部反応容器220内の空間221と金属融液245との気液界面4または気液界面4付近における温度T3は、空間213と混合融液180との気液界面3または気液界面3付近における温度T2に略一致するように、加熱装置250は、反応容器210および外部反応容器220を加熱する。
このように、気液界面4または気液界面4付近における温度T3を気液界面3または気液界面3付近における温度T2に略一致させることによって、金属融液245から蒸発した金属Na蒸気と混合融液180から蒸発した金属Na蒸気とが空間213,221内で平衡状態になり、空間213内の金属Na蒸気が空間221内へ拡散するのを抑制できる。その結果、混合融液180からの金属Naの蒸発を確実に抑制して混合融液180中における金属Naと金属Gaとのモル比率を安定でき、大きなサイズを有するGaN結晶を安定して製造できる。
また、結晶成長装置200Bにおいては、温度T3が温度T2よりも高くなるように反応容器210および外部反応容器220を加熱してもよい。この場合、反応容器210と外部反応容器220との間に加熱装置をさらに設置し、その設置した加熱装置によって反応容器210を加熱して気液界面3または気液界面3付近を温度T2に加熱し、加熱装置250によって気液界面4または気液界面4付近を温度T3に加熱する。
このように、温度T3を温度T2よりも高い温度に設定することによって、気液界面4における金属Naの蒸気圧が気液界面3における金属Naの蒸気圧よりも高くなり、金属Na蒸気が空間221から空間213内へ拡散する。そうすると、空間213内において金属Na蒸気の濃度が高くなり、混合融液180からの金属Naの蒸発をさらに抑制できる。その結果、混合融液180中における金属Naと金属Gaとのモル比率を確実に安定でき、大きさサイズを有するGaN結晶を安定して製造できる。
したがって、結晶成長装置Bおいては、好ましくは、温度T3が温度T2以上に設定されてGaN結晶の製造が行なわれる。
実施の形態4によれば、GaN結晶の結晶成長時には、空間213,221内の金属Na蒸気は、逆流防止装置240によって配管270内への拡散を抑制され、混合融液180に接する空間213内の金属Na蒸気は、金属融液245から蒸発した金属Na蒸気によって空間221への拡散を抑制され、窒素ガスが配管270から空間221,213へ供給されるので、混合融液180中の金属Naと金属Gaとのモル比率を安定化できるとともに、窒素ガスを混合融液180中へ安定して供給できる。その結果、サイズが大きいGaN結晶を製造できる。
なお、実施の形態4においては、容器244および金属融液245は、1対のガイド241、逆流防止弁242および貫通孔243に追加されて逆流防止装置240を構成する。
その他は、実施の形態1,2と同じである。
[実施の形態5]
図9は、実施の形態5による結晶成長装置の概略断面図である。図9を参照して、実施の形態5による結晶成長装置200Cは、図1に示す結晶成長装置200に容器246および金属融液247を追加したものであり、その他は、結晶成長装置200と同じである。
容器246は、SUS316Lからなり、反応容器210内に配置される。そして、容器246は、金属融液247を保持する。
結晶成長装置200Cを用いてGaN結晶を成長させる場合、グローブボックスを用いてArガス雰囲気中で金属Naおよび金属Gaを反応容器210内に入れ、金属Naを容器246に入れる。そして、反応容器210内の空間213,214および外部反応容器220内の空間221をArガスで充填した状態で反応容器210および外部反応容器220を結晶成長装置200Cの外部反応容器230内に設定する。
そして、上述した動作によって、反応容器210および外部反応容器220内の真空引きと反応容器210および外部反応容器220への窒素ガスの充填とを数回繰返し行なう。
その後、バルブ370を閉じ、バルブ320,321を開け、窒素ガスをガスボンベ340からガス供給管290,300,310を介して反応容器210および外部反応容器220,230内へ供給する。そして、圧力調整器330によって反応容器210および外部反応容器220,230内の圧力が10〜50気圧になるように反応容器210および外部反応容器220,230内へ窒素ガスを充填する。
そして、圧力センサー400,410によって検出した圧力が10〜50気圧になった時点でバルブ320を閉じる。この時点では、反応容器210および外部反応容器220の温度は室温であるので、容器246内の金属Naは、固体である。したがって、配管270内の圧力が外部反応容器220内の圧力よりも高い場合、逆流防止弁242が反応容器210側へ移動し、窒素ガスが貫通孔243を介して配管270内からも外部反応容器220の空間221へ充填される。また、空間221内の窒素ガスは、本体部211と蓋部212との間の間隙を介して反応容器210内の空間214,213へも順次充填される。その結果、空間213,214,221,231内の圧力は、容易に一致する。
反応容器210および外部反応容器220,230への窒素ガスの充填が終了すると、加熱装置250,260によって反応容器210および外部反応容器220を800℃に加熱し、その後、数十時間〜数百時間、反応容器210および外部反応容器220の温度を800℃に保持する。
反応容器210に入れられた金属Naおよび金属Gaは、反応容器210が加熱される過程で融け、反応容器210内で混合融液180が生成される。また、容器246に入れられた金属Naは、反応容器210が加熱される過程で融け、容器246内に金属融液247が発生する。
そして、GaN結晶が成長し始め、GaN結晶の成長が進行するに伴って、混合融液180および金属融液247から金属Naが蒸発し、金属Na蒸気および窒素ガスが空間213,214内に混在する。
この場合、空間213における金属Na蒸気の圧力は、0.45気圧である。また、金属融液247は、反応容器210内の空間214へ金属Na蒸気を発生させるので、空間213内に存在する金属Na蒸気は、本体部211と蓋部212との間の間隙を介して空間221内へ拡散し難くなる。その結果、混合融液180からの金属Naの蒸発が抑制され、混合融液180中における金属Naおよび金属Gaのモル比率を安定化できる。
また、GaN結晶の成長が進行するに伴って、空間213内の窒素ガスが消費されると、上述したように、配管270内から貫通孔243を介して空間221内へ窒素ガスが供給され、空間221内へ供給された窒素ガスは、本体部211と蓋部212との間の間隙を介して反応容器210内の空間214,213へさらに拡散する。これによって、窒素ガスが空間214,213内へ安定的に供給される。
結晶成長装置200Cを用いたGaN結晶の製造方法は、図4に示す結晶成長装置200Aを用いたGaN結晶の製造方法と同じであり、図5に示すフローチャートに従って行なわれる。この場合、図5に示すステップS12において、Arガス雰囲気中で金属Naが容器246へ入れられる。
なお、結晶成長装置200Cにおいては、反応容器210内の空間213に連通した反応容器210内の空間214と金属融液247との気液界面5または気液界面5付近における温度T4は、空間213と混合融液180との気液界面3または気液界面3付近における温度T2に略一致するように、加熱装置250は、反応容器210および外部反応容器220を加熱する。
このように、気液界面5または気液界面5付近における温度T4を気液界面3または気液界面3付近における温度T2に略一致させることによって、金属融液247から蒸発した金属Na蒸気と混合融液180から蒸発した金属Na蒸気とが空間213,214内で平衡状態になり、空間213内の金属Na蒸気が空間214内へ拡散するのを抑制できる。その結果、混合融液180からの金属Naの蒸発を確実に抑制して混合融液180中における金属Naと金属Gaとのモル比率を安定でき、大きなサイズを有するGaN結晶を安定して製造できる。
また、結晶成長装置200Cにおいては、温度T4が温度T2よりも高くなるように反応容器210および外部反応容器220を加熱してもよい。この場合、容器246に対向して加熱装置をさらに設置し、その設置した加熱装置によって容器246を加熱して気液界面5または気液界面5付近を温度T4に加熱し、加熱装置250によって気液界面3または気液界面3付近を温度T2に加熱する。
このように、温度T4を温度T2よりも高い温度に設定することによって、気液界面5における金属Naの蒸気圧が気液界面3における金属Naの蒸気圧よりも高くなり、金属Na蒸気が空間214から空間213内へ拡散する。そうすると、空間213内において金属Na蒸気の濃度が高くなり、混合融液180からの金属Naの蒸発をさらに抑制できる。その結果、混合融液180中における金属Naと金属Gaとのモル比率を確実に安定でき、大きさサイズを有するGaN結晶を安定して製造できる。
したがって、結晶成長装置Cおいては、好ましくは、温度T4が温度T2以上に設定されてGaN結晶の製造が行なわれる。
実施の形態5によれば、GaN結晶の結晶成長時には、空間213,214,221内の金属Na蒸気は、逆流防止装置240によって配管270内への拡散を抑制され、混合融液180に接する空間213内の金属Na蒸気は、金属融液247から蒸発した金属Na蒸気によって空間221への拡散を抑制され、窒素ガスが配管270から空間221,214,213へ供給されるので、混合融液180中の金属Naと金属Gaとのモル比率を安定化できるとともに、窒素ガスを混合融液180中へ安定して供給できる。その結果、サイズが大きいGaN結晶を製造できる。
なお、実施の形態5においては、容器246および金属融液247は、1対のガイド241、逆流防止弁242および貫通孔243に追加されて逆流防止装置240を構成する。
その他は、実施の形態1,2と同じである。
[実施の形態6]
図10は、実施の形態6による結晶成長装置の概略断面図である。図10を参照して、実施の形態6による結晶成長装置200Dは、図1に示す結晶成長装置200に容器248および金属融液249を追加したものであり、その他は、結晶成長装置200と同じである。
容器248は、SUS316Lからなり、反応容器210の内壁に沿って配置される。そして、容器248は、金属融液249を保持する。
結晶成長装置200Dを用いてGaN結晶を成長させる場合、グローブボックスを用いてArガス雰囲気中で金属Naおよび金属Gaを反応容器210内に入れ、金属Naを容器248に入れる。そして、反応容器210内の空間213および外部反応容器220内の空間221をArガスで充填した状態で反応容器210および外部反応容器220を結晶成長装置200Dの外部反応容器230内に設定する。
そして、上述した動作によって、反応容器210および外部反応容器220内の真空引きと反応容器210および外部反応容器220への窒素ガスの充填とを数回繰返し行なう。
その後、バルブ370を閉じ、バルブ320,321を開け、窒素ガスをガスボンベ340からガス供給管290,300,310を介して反応容器210および外部反応容器220,230内へ供給する。そして、圧力調整器330によって反応容器210および外部反応容器220,230内の圧力が10〜50気圧になるように反応容器210および外部反応容器220,230内へ窒素ガスを充填する。
そして、圧力センサー400,410によって検出した圧力が10〜50気圧になった時点でバルブ320を閉じる。この時点では、反応容器210および外部反応容器220の温度は室温であるので、容器248内の金属Naは、固体である。したがって、配管270内の圧力が外部反応容器220内の圧力よりも高い場合、逆流防止弁242が反応容器210側へ移動し、窒素ガスが貫通孔243を介して配管270内からも外部反応容器220の空間221へ充填される。また、空間221内の窒素ガスは、本体部211と蓋部212との間の間隙を介して反応容器210内の空間213へも充填される。その結果、空間213,221,231内の圧力は、容易に一致する。
反応容器210および外部反応容器220,230への窒素ガスの充填が終了すると、加熱装置250,260によって反応容器210および外部反応容器220を800℃に加熱し、その後、数十時間〜数百時間、反応容器210および外部反応容器220の温度を800℃に保持する。
反応容器210に入れられた金属Naおよび金属Gaは、反応容器210が加熱される過程で融け、反応容器210内で混合融液180が生成される。また、容器248に入れられた金属Naは、反応容器210が加熱される過程で融け、容器248内に金属融液249が発生する。
そして、GaN結晶が成長し始め、GaN結晶の成長が進行するに伴って、混合融液180および金属融液249から金属Naが蒸発し、金属Na蒸気および窒素ガスが空間213内に混在する。
この場合、空間213における金属Na蒸気の圧力は、0.45気圧である。また、金属融液249は、反応容器210内において、本体部211と蓋部212との間の間隙の近傍で空間213へ金属Na蒸気を発生させるので、混合融液180から蒸発した金属Na蒸気は、本体部211と蓋部212との間の間隙を介して空間221内へ拡散し難くなる。その結果、混合融液180からの金属Naの蒸発が抑制され、混合融液180中における金属Naおよび金属Gaのモル比率を安定化できる。
また、GaN結晶の成長が進行するに伴って、空間213内の窒素ガスが消費されると、上述したように、配管270内から貫通孔243を介して空間221内へ窒素ガスが供給され、空間221内へ供給された窒素ガスは、本体部211と蓋部212との間の間隙を介して反応容器210内の空間213へさらに拡散する。これによって、窒素ガスが空間213内へ安定的に供給される。
結晶成長装置200Dを用いたGaN結晶の製造方法は、図4に示す結晶成長装置200Aを用いたGaN結晶の製造方法と同じであり、図5に示すフローチャートに従って行なわれる。この場合、図5に示すステップS12において、Arガス雰囲気中で金属Naが容器248へ入れられる。
なお、結晶成長装置200Dにおいては、反応容器210内の空間213と金属融液249との気液界面6または気液界面6付近における温度T5は、空間213と混合融液180との気液界面3または気液界面3付近における温度T2に略一致するように、加熱装置250は、反応容器210および外部反応容器220を加熱する。
このように、気液界面6または気液界面6付近における温度T5を気液界面3または気液界面3付近における温度T2に略一致させることによって、金属融液249から蒸発した金属Na蒸気と混合融液180から蒸発した金属Na蒸気とが空間213内で平衡状態になり、空間213内の金属Na蒸気が空間221内へ拡散するのを抑制できる。その結果、混合融液180からの金属Naの蒸発を確実に抑制して混合融液180中における金属Naと金属Gaとのモル比率を安定でき、大きなサイズを有するGaN結晶を安定して製造できる。
また、結晶成長装置200Dにおいては、温度T5が温度T2よりも高くなるように反応容器210および外部反応容器220を加熱してもよい。この場合、容器248に対向して加熱装置をさらに設置し、その設置した加熱装置によって容器248を加熱して気液界面6または気液界面6付近を温度T5に加熱し、加熱装置250によって気液界面3または気液界面3付近を温度T2に加熱する。
このように、温度T5を温度T2よりも高い温度に設定することによって、気液界面6における金属Naの蒸気圧が気液界面3における金属Naの蒸気圧よりも高くなり、金属Na蒸気が気液界面3の方向へ拡散する。そうすると、気液界面3において金属Na蒸気の濃度が高くなり、混合融液180からの金属Naの蒸発をさらに抑制できる。その結果、混合融液180中における金属Naと金属Gaとのモル比率を確実に安定でき、大きさサイズを有するGaN結晶を安定して製造できる。
したがって、結晶成長装置Cおいては、好ましくは、温度T5が温度T2以上に設定されてGaN結晶の製造が行なわれる。
実施の形態6によれば、GaN結晶の結晶成長時には、空間213,221内の金属Na蒸気は、逆流防止装置240によって配管270内への拡散を抑制され、混合融液180に接する空間213内の金属Na蒸気は、金属融液249から蒸発した金属Na蒸気によって空間221への拡散を抑制され、窒素ガスが配管270から空間221,213へ供給されるので、混合融液180中の金属Naと金属Gaとのモル比率を安定化できるとともに、窒素ガスを混合融液180中へ安定して供給できる。その結果、サイズが大きいGaN結晶を製造できる。
なお、実施の形態6においては、容器248および金属融液249は、1対のガイド241、逆流防止弁242および貫通孔243に追加されて逆流防止装置240を構成する。
その他は、実施の形態1,2と同じである。
図11は、他の逆流防止装置の概略断面図である。図11の(a)を参照して、逆流防止装置140は、本体部141と、ボール部材142とを備える。本体部141は、貫通孔1411,1413と、空洞部1412とを含む。
空洞部1412は、角形部1412Aと、球状部1412Bとからなる。角形部1412Aは、断面形状が略四角形であり、球状部1412Bは、断面形状が略半円形である。
貫通孔1411は、本体部141の一方端と空洞部1412の角形部1412Aとの間に設けられ、貫通孔1413は、空洞部1412の球状部1412Bと本体部141の他方端との間に設けられる。
ボール部材142は、角形部1412Aよりも小さい直径を有する球形状からなり、空洞部1412内に配置される。そして、ボール部材142は、貫通孔1411内の圧力と貫通孔1413内の圧力との差圧または自重によって空洞部1412内を上下し、下方へ移動した場合、球状部1412Bに嵌合する。
ボール部材142は、貫通孔1413内の圧力が貫通孔1411内の圧力よりも高いとき、貫通孔1411内の圧力と貫通孔1413内の圧力との差圧によって上方向へ移動する。この場合、逆流防止装置140は、貫通孔1413から流入した窒素ガスを空洞部1412を介して貫通孔1411へ通過させる。
また、ボール部材142は、貫通孔1411内の圧力が貫通孔1413内の圧力よりも高いとき、貫通孔1411内の圧力と貫通孔1413内の圧力との差圧によって下方向へ移動して球状部1412Bに嵌合し、貫通孔1413内の圧力が貫通孔1411内の圧力に略等しいとき、自重によって下方向へ移動して球状部1412Bに嵌合する。この場合、空洞部1412と貫通孔1413との間は、ボール部材142によって塞がれ、逆流防止装置140は、金属Na蒸気または金属融液が貫通孔1411から空洞部1412を介して貫通孔1413へ通過するのを阻止する。
図11の(b)を参照して、逆流防止装置150は、本体部151と、ロッド部材152とを備える。本体部151は、貫通孔1511,1513と、空洞部1512とを含む。
空洞部1512は、角形部1512A,1512Bからなる。角形部1512Aは、断面形状が略四角形であり、角形部1512Bは、断面形状が略三角形である。
貫通孔1511は、本体部151の一方端と空洞部1512の角形部1512Aとの間に設けられ、貫通孔1513は、空洞部1512の角形部1512Bと本体部151の他方端との間に設けられる。
ロッド部材152は、角形部1512Aよりも小さいサイズを有する五角形状からなり、空洞部1512内に配置される。そして、ロッド部材152は、貫通孔1511内の圧力と貫通孔1513内の圧力との差圧または自重によって空洞部1512内を上下し、下方へ移動した場合、角形部1512Bに嵌合する。
ロッド部材152は、貫通孔1513内の圧力が貫通孔1511内の圧力よりも高いとき、貫通孔1511内の圧力と貫通孔1513内の圧力との差圧によって上方向へ移動する。この場合、逆流防止装置150は、貫通孔1513から流入した窒素ガスを空洞部1512を介して貫通孔1511へ通過させる。
また、ロッド部材152は、貫通孔1511内の圧力が貫通孔1513内の圧力よりも高いとき、貫通孔1511内の圧力と貫通孔1513内の圧力との差圧によって下方向へ移動して角形部1512Bに嵌合し、貫通孔1513内の圧力が貫通孔1511内の圧力に略等しいとき、自重によって下方向へ移動して角形部1512Bに嵌合する。この場合、空洞部1512と貫通孔1513との間は、角形部1512Bによって塞がれ、逆流防止装置150は、金属Na蒸気または金属融液が貫通孔1511から空洞部1512を介して貫通孔1513へ通過するのを阻止する。
逆流防止装置140,150は、バネ機構を用いていないので、結晶成長温度程度の高温においても破損することがなく、信頼性が高い。
図11に示す逆流防止装置140,150の各々は、上述した逆流防止装置240,530に代えて結晶成長装置200,200A,200B,200C,200D,500に用いられる。そして、逆流防止装置140,150は、晶成長装置200,200A,200B,200C,200D,500に用いられた場合、好ましくは、結晶成長温度に加熱された状態で使用される。
なお、上述した実施の形態1から実施の形態6においては、結晶成長温度は、800℃であると説明したが、この発明においては、これに限らず、結晶成長温度は、600℃〜900℃の範囲であればよい。
また、上記においては、Arガス雰囲気中で金属Naおよび金属Gaを反応容器210,510に入れ、Arガス雰囲気中で金属Naを反応容器210および外部反応容器220間または外部容器540に入れると説明したが、この発明においては、これに限らず、He、NeおよびKr等のArガス以外のガスまたは窒素ガス雰囲気中で金属Naおよび金属Gaを反応容器210,510に入れ、金属Naを反応容器210および外部反応容器220間または外部容器540に入れてもよく、一般的には、不活性ガスまたは窒素ガス雰囲気中で金属Naおよび金属Gaを反応容器210,510に入れ、金属Naを反応容器210および外部反応容器220間または外部容器540に入れればよい。そして、この場合、不活性ガスまたは窒素ガスは、水分量が10ppm以下であり、かつ、酸素量が10ppm以下である。
さらに、金属Gaと混合する金属は、Naであると説明したが、この発明においては、これに限らず、リチウム(Li)およびカリウム(K)等のアルカリ金属、またはマグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)およびストロンチウム(Sr)等のアルカリ土類金属を金属Gaと混合して混合融液180を生成してもよい。そして、これらのアルカリ金属が溶けたものは、アルカリ金属融液を構成し、これらのアルカリ土類金属が溶けたものは、アルカリ土類金属融液を構成する。
さらに、窒素ガスに代えて、アジ化ナトリウムおよびアンモニア等の窒素を構成元素に含む化合物を用いてもよい。そして、これらの化合物は、窒素原料ガスを構成する。
さらに、Gaに代えて、ボロン(B)、アルミニウム(Al)およびインジウム(In)等のIII族金属を用いてもよい。
したがって、この発明による結晶成長装置または製造方法は、一般的には、アルカリ金属またはアルカリ土類金属とIII族金属(ボロンを含む)との混合融液を用いてIII族窒化物結晶を製造するものであればよい。
そして、この発明による結晶成長装置または製造方法を用いて製造したIII族窒化物結晶は、発光ダイオード、半導体レーザ、フォトダイオードおよびトランジスタ等のIII族窒化物半導体デバイスの作製に用いられる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1〜6 気液界面、11 窒素ガス、180 混合融液、200,200A,200B,200C,200D,500 結晶成長装置、210 反応容器、211 本体部、211A,220B 底面、212 蓋部、213,221,231,271,511,521,541 空間、220,230 外部反応容器、220A 外周面、240,530 逆流防止装置、241 1対のガイド、241A,242A 上面、242,532 逆流防止弁、243,533 貫通孔、244,246,248 容器、245,247,249,380,560 金属融液、250,260,280,570,580,590 加熱装置、270,520,600 配管、290,300,310,610,620,630 ガス供給管、320,321,370,640,641,680 バルブ、330,650 圧力調整器、340,660 ガスボンベ、350,670 排気管、390,690 真空ポンプ、400,410,700,710 圧力センサー、531 密閉容器、540 外部容器。