本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
[実施の形態1]
次に、本発明の実施の形態1を図1〜図5に基づいて説明する。図1には、本発明の第1の実施形態に係るIII族窒化物結晶の製造装置としてのGaN結晶の製造装置100Aの概略構成が示されている。ここでは、窒素を含む物質として窒素ガス(N2ガス)を用いている。
この図1に示される製造装置100Aは、反応容器103、融液保持容器101、ヒータ109、110、111、窒素ガスの供給源(窒素ガスボンベ)105、ガス供給管104、117、119、バルブ115、118、120、圧力センサ108、ガス排出管114、真空ポンプ116及び圧力調整器106などを含んで構成されている。
前記反応容器103は、ステンレス製の閉じた形状の容器である。この反応容器103の中には、融液保持容器101が収容されている。なお、反応容器103の中に融液保持容器101が収容されたときに、融液保持容器101の下部と反応容器103の内側の底面との間に所定の大きさの隙間が形成されるようになっている。
前記融液保持容器101は、一例として材質がP−BN(パイオリティック ボロンナイトライド)であり、反応容器103から取り出すことができる。融液保持容器101の中には、フラックスとしてのナトリウム(Na)及びIII族金属としての金属ガリウム(Ga)を含む混合融液102が入れられる。
前記ヒータ109は、反応容器103の外に隣接して配置され、反応容器103を側面から加熱する。
前記ヒータ110は、反応容器103の外に隣接して配置され、反応容器103を底面から加熱する。すなわち、反応容器103は、ヒータ109とヒータ110とにより加熱される。そして、融液保持容器101は、反応容器103を介して加熱されることとなる。
前記圧力センサ108は、反応容器103の上部に設けられ、反応容器103内のガスの圧力をモニタするのに用いられる。
前記ガス排出管114は、反応容器103内のガスを排出するための配管である。このガス排出管114の一端は、前記真空ポンプ116に接続され、他端は反応容器103の上部に設けられた開口部に接続されている。
前記バルブ115は、ガス排出管114の途中であって、反応容器103に近いところに設けられている。真空ポンプ116が稼働中で、バルブ115が開状態のときに、反応容器103内のガスが排出されるようになっている。
前記ガス供給管104、117、119は、反応容器103内に窒素ガスを供給するための配管である。ガス供給管119の一端は、前記窒素ガスボンベ105に接続されている。ガス供給管119の他端は2つに分岐され、ガス供給管104の一端及びガス供給管117の一端がそれぞれ接続されている。
前記ガス供給管117の他端は、反応容器103の上部に設けられた開口部に接続されている。
前記ガス供給管104の他端は、反応容器103の底部に設けられた開口部に接続されている。
前記バルブ118は、ガス供給管117の途中であって、反応容器103に近いところに設けられている。バルブ118が開状態のときには、反応容器103内へ窒素ガスが供給され、閉状態のときには、反応容器103内へ窒素ガスの供給が遮断される。
ガス供給管104は、U字部を有する配管である。前記ヒータ111は、複数の加熱部を有し、ガス供給管104における反応容器103から離れているほうの立ち上がり部分及び底部分に隣接して配置され、ガス供給管104のU字部に保持される溶融Na(液体)の実質的な蒸発を抑制するような温度勾配を、U字部に付与する。
前記バルブ120は、ガス供給管104の途中であって、反応容器103に近いところに設けられている。
前記圧力調整器106は、ガス供給管119の途中に設けられ、反応容器103内に供給する窒素ガスの圧力を調整するのに用いられる。
また、反応容器103は、図2に示されるように、各バルブを含んで各配管から切り離し可能となっており、反応容器103を不図示のグローブボックスの中に移動させて作業することが可能である。
次に、上記のように構成される製造装置100AによるGaN結晶の製造方法について説明する。
(1)各バルブをいずれも閉状態とする。
(2)反応容器103を各配管から切り離し、アルゴン(Ar)雰囲気のグローブボックス内に入れる。
(3)反応容器103のふたを開け、反応容器103から融液保持容器101を取り出す。そして、融液保持容器101内に原料のGaとフラックスのNaとを入れる。ここでは、一例としてNaとGaのモル比率を5:5とした。
(4)反応容器103内に、溶融Na(112とする)を入れる。
(5)融液保持容器101を反応容器103内の所定位置に収容する。これにより、一例として図3に示されるように、反応容器103と融液保持容器101との間隙が溶融Na112で満たされることとなる。なお、アルゴン雰囲気でGa及びNaを取り扱うことにより、酸素や水分とGa及びNaとの反応を防止することができる。
(6)反応容器103のふたを閉じる。なお、融液保持容器101内部の混合融液102が占めている以外の空間と反応容器103内部の空間とはつながっており、ほぼ同じ雰囲気及び圧力となっている。以下では、これら2つの空間をまとめて反応容器103内の空間部分107ということとする。ここでは、この反応容器103内の空間部分107はアルゴン雰囲気となっている。
(7)反応容器103をグローブボックスから出し、各配管と接続する。このとき、各ガス供給管内に空気が残留しないように、例えば窒素ガスを流しながら接続する。これにより、各ガス供給管内は窒素ガスで満たされることとなる。
(8)真空ポンプ116を稼動させる。
(9)バルブ115を開状態とする。これにより、反応容器103内の空間部分107に含まれるアルゴンガスが排出される。すなわち、反応容器103内のガスパージを行う。
(10)圧力センサ108を参照し、反応容器103内の空間部分107の圧力が所定の圧力に到達すると、バルブ115を閉状態とする。
(11)バルブ118を開状態とし、反応容器103内に窒素ガスを供給する。このとき、圧力センサ108を参照し、反応容器103内の窒素ガスの圧力がほぼ15気圧となるように圧力調整器106を調整する。反応容器103内の圧力が15気圧になったら、バルブ118を閉状態にする。なお、以上の各工程は、融液保持容器101と反応容器103との間の溶融Naが液体状態を保持する温度で、かつ、Naの実質的蒸気が抑制される温度(たとえば、100℃)で行われる。
(12)バルブ120を開状態とする。これにより、一例として図4に示されるように、反応容器103と融液保持容器101との間隙を満たしている溶融Na112の一部が、ガス供給管104のU字部を満たすようになる。このとき、溶融Na112は、反応容器103内での気液界面Aとガス供給管104内での気液界面Bとの2つを有することとなる。ここでは、反応容器103内の空間部分107の圧力とガス供給管104の空間部分113の圧力は互いにほぼ等しいので、気液界面AのレベルL1と気液界面BのレベルL2とは互いにほぼ一致している。
(13)ヒータ109、110により、反応容器103内の温度を800℃まで昇温する。反応容器103内の空間部分107の温度が800℃になると、反応容器103内の空間部分107の圧力は40気圧となる。この昇温過程の560℃以上の温度では、融液保持容器101内の金属Naと金属Gaは、完全に混合融液となる。
このとき、気液界面Bにおいて、Naが液体状態を維持し、かつNaの実質的蒸発が抑制されるように、ヒータ111を制御する。ここで、「実質的蒸発が抑制される」とは、たとえ気液界面BからNaがガス供給管104の窒素ボンベ側の空間113に拡散しても、その拡散量が、結晶成長中の時間内(数10〜数100時間)では、結晶成長に悪影響を及ぼさない程度であることを意味している。例えば、気液界面Bの温度が150℃に維持されるようにヒータ111を制御すると、当然Naの融点(98℃)以上であるので液体状態が維持され、蒸気圧は7.6×10−9気圧となり、結晶成長中の時間内では溶融Na112の減少はほとんど無い。なお、300℃及び400℃では、Na蒸気圧はそれぞれ1.8×10−5と及び4.7×10−4気圧であり、この程度でも溶融Na112の減少は無視できる。
従って、気液界面Aの温度は、気液界面Bの温度よりも高くなり、気液界面Aと気液界面Bとの間に温度勾配が生じる。
なお、この反応容器103の昇温過程では、反応容器103内の空間107の圧力とガス供給管104の窒素ボンベ側の空間113の圧力とがほぼ同じとなるように、圧力調整器106により圧力制御しながら40気圧まで昇圧する。
(14)反応容器103内の温度を800℃に保持し、反応容器103内の空間107の圧力を40気圧に保持する。これにより、融液保持容器101内の混合融液102中でIII族窒化物であるGaN結晶が成長を始める。
そして、GaN結晶の成長進行に伴い、その窒素原料となる反応容器103内の空間107にある窒素ガスが消費され、空間107の圧力が低下する。反応容器103内の空間107の圧力が低下することにより、一例として図5に示されるように、ガス供給管104内の空間113と反応容器103内の空間107の差圧により、溶融Na112は反応容器103内に移動する。この結果、気液界面Aは上昇し、気液界面Bは反応容器103とガス供給管104との境界付近まで移動する。このとき、窒素ガスは泡状となって溶融Na112内を上昇し、反応容器103内の空間107に到達する。あるいは、ガス供給管104の空間113と反応容器103内の空間107とが連続的につながり、反応容器103内の空間107に窒素ガスが供給される。このようにして、ガス供給管104の空間113の圧力と反応容器103内の空間107の圧力とが互いにほぼ等しくなるまで、窒素ガスボンベ105から反応容器103の空間107に窒素ガスが供給される。ガス供給管104の空間113の圧力と反応容器103内の空間107の圧力とが互いにほぼ等しくなると、気液界面Aのレベルと気液界面Bのレベルとは互いにほぼ等しくなる。結晶成長が進行する過程で、図4に示される状態と図5に示される状態とが繰り返されて、反応容器103内の空間107に窒素ガスが供給されることとなる。
このとき、気液界面Aの温度は反応容器103内の温度と同じ800℃である。この温度でのNa蒸気圧は約0.45気圧と大きいため、反応容器103内の空間107はNa蒸気と窒素ガスの混合雰囲気となっている。一方、気液界面Bの温度は前述したように、Naの実質的蒸発が発生しない温度に維持されているため、Na蒸気圧は小さく、気液界面BからNaが上流(窒素ボンベ105側)に拡散することは無視できる。なお、ガス供給管104内の溶融Na112が反応容器103内に移動して、気液界面Bが反応容器103付近まで移動しても、気液界面Bから拡散するNa蒸気はガス供給管104の温度制御された領域に付着して、そこで液化されるため、反応容器103内の空間107への窒素ガスの導入に影響を与えることはない。
そして、上述した方法によって製造されたGaN結晶は、従来のフラックス法によって製造されたGaN結晶よりも高品質であり、かつ、大きなサイズを有する。
図6は、GaN結晶を成長させる場合の窒素ガス圧と結晶成長温度との関係を示す図である。図6において、横軸は、結晶成長温度を表し、縦軸は、窒素ガス圧を表す。なお、図6の横軸におけるTは、絶対温度を表す。
図6を参照して、領域REG1は、GaN結晶が溶解する領域であり、領域REG2は、混合融液102中における核発生を抑制してGaN結晶が種結晶から結晶成長する領域であり、領域REG3は、混合融液102に接する底面および側面において多くの核が発生し、c軸(<0001>)方向に成長した柱状形状のGaN結晶が製造される領域である。
製造装置100Aにおいては、混合融液102から外部への金属Naの蒸発を溶融Na112によって防止しながら、図6に示す領域REG1,REG2,REG3内の窒素ガス圧および結晶成長温度を用いて各種のGaN結晶の製造が行なわれる。
例えば、領域REG2,REG3内の窒素ガス圧および結晶成長温度を用いて、それぞれ、種結晶成長および自発核成長を行なう。
また、領域REG3における窒素ガス圧および結晶成長温度を用いて多くの自発核を融液保持容器101内で発生させ、その後、領域REG1における窒素ガス圧および結晶成長温度を用いて多くの自発核の一部を溶解し、更に、その後、領域REG2における窒素ガス圧および結晶成長温度を用いて残った自発核を種結晶としてGaN結晶を結晶成長させる。
更に、領域REG3における窒素ガス圧および結晶成長温度を用いて多くの自発核を融液保持容器101内で発生させ、その後、領域REG2における窒素ガス圧および結晶成長温度を用いて自発核を種結晶としてGaN結晶を結晶成長させる。
このように、製造装置100Aにおいては、混合融液102から外部への金属Naの蒸発を溶融Na112によって防止しながら、各種のGaN結晶の製造が行なわれる。
以上説明したように、実施の形態1によると、ガス供給管104の空間113の圧力と反応容器103内の空間107の圧力とが互いにほぼ等しいときには、両空間は溶融Na112により遮断されており、反応容器103内の窒素圧力が低下したときに、窒素ガスが反応容器103内に導入される。この結果、反応容器103外へのNaの拡散防止及び窒素原料の安定供給を両立させることが可能となり、安定したGaN結晶の成長が継続され、低コストで、高品質、大型、及び均質のGaN結晶を製造することができる。従って、従来のフラックス法より高品質で大型のIII族窒化物結晶を成長させることが可能となる。
また、融液保持容器101の外部にフラックスと同じNaが存在し、気液界面AからもNaの蒸気が発生するため、融液保持容器101内の混合融液102からのNaの蒸発を抑制することが可能となる。この結果、混合融液102内のNa量(比)が安定し、低コストで、GaN結晶の安定した成長を維持することが可能となる。
なお、上記実施の形態1では、ガス排出管114の他端と接続される開口部が反応容器103の上部に設けられる場合について説明したが、これに限定されるものではない。要するに、反応容器103と融液保持容器101との間が溶融Naによって満たされているときに、反応容器103内のガスが排出可能であればよい。
また、上記実施の形態1では、ガス供給管117の他端と接続される開口部が反応容器103の上部に設けられる場合について説明したが、これに限定されるものではない。要するに、反応容器103と融液保持容器101との間が溶融Naによって満たされているときに、反応容器103内に窒素ガスが導入可能であればよい。
また、上記実施の形態1では、ガス供給管104の他端と接続される開口部が反応容器103の下部に設けられる場合について説明したが、これに限定されるものではない。要するに、反応容器103内の圧力が融液保持容器101内でGaNの結晶を成長させるのに適した圧力よりも低くなると、その圧力差によって溶融Naが反応容器103内に移動してガス供給管104の閉塞状態が解除され、反応容器103内の圧力が融液保持容器101内でGaNの結晶を成長させるのに適した圧力になると、反応容器103内の一部の溶融Naがガス供給管104内に移動してガス供給管104を閉塞状態とすることができれば良い。
[実施の形態2]
次に、本発明の実施の形態2を図7〜図9に基づいて説明する。図7には、本発明の実施の形態2に係るIII族窒化物結晶の製造装置としてのGaN結晶の製造装置100Bの概略構成が示されている。なお、以下においては、前述した実施の形態1と同一若しくは同等の構成部分については同一の符号を用い、その説明を簡略化し若しくは省略するものとする。
図7に示される製造装置100Bは、反応容器103、圧力容器301、融液保持容器101、ヒータ109,110,111、窒素ガスの供給源(窒素ガスボンベ)105、ガス供給管104,117,119,303、バルブ115,118,120,305,307、2つの圧力センサ108、304、ガス排出管114,306、真空ポンプ116及び圧力調整器106などを含んで構成されている。すなわち、製造装置100Bは、実施の形態1における前記製造装置100Aに、圧力容器301、圧力センサ304、ガス供給管303、バルブ305,307およびガス排出管306が付加されたものである。
前記圧力容器301は、ステンレス製の密閉可能な容器である。この圧力容器301の中には、前記反応容器103、ヒータ109、110などが収容されている。
前記ガス供給管303は、前記ガス供給管117が分岐したものであり、圧力容器301内に窒素ガスを供給するために設けられている。このガス供給管303の一端は前記ガス供給管117の途中に接続され、他端は圧力容器301の開口部に接続されている。
前記圧力センサ304は、圧力容器301の上部に設けられ、圧力容器301内の圧力をモニタするのに用いられる。
バルブ305は、圧力容器301の近傍でガス供給管303に装着される。そして、バルブ305は、窒素ガス圧力容器301内へ供給し、または窒素ガスの圧力容器301内への供給を停止する。
ガス排出管306は、一方端が圧力容器301に接続され、他方端がガス排出管114に接続される。そして、ガス排出管306は、圧力容器301内の気体を真空ポンプ116へ導く。
バルブ307は、圧力容器301の近傍でガス排出管306に装着される。そして、バルブ307は、圧力容器301内の気体を真空ポンプ116へ導き、または圧力容器301内の気体の真空ポンプ116側への供給を停止する。
次に、上記のように構成される製造装置100BによるGaN結晶の製造方法について説明する。
(1)各バルブをいずれも閉状態とする。
(2)反応容器103を各配管から切り離し、圧力容器301の中から反応容器103を取り出す。
(3)取り出した反応容器103をアルゴン雰囲気のグローブボックス内に入れる。
(4)反応容器103から融液保持容器101を取り出し、融液保持容器101内に原料のGaとフラックスのNaとを入れる。ここでは、一例としてNaとGaのモル比率を5:5とした。
(5)反応容器103内に、溶融Naを入れる。
(6)融液保持容器101を反応容器103内の所定位置に収容する。これにより、一例として図3に示されるように、反応容器103と融液保持容器101との間隙が溶融Naで満たされることとなる。
(7)反応容器103のふたを閉じる。
(8)反応容器103をグローブボックスから出し、圧力容器301内の所定位置に収容する。
(9)反応容器103と各配管とを接続する。このとき、各ガス供給管内に空気が残留しないように、例えば窒素ガスを流しながら接続する。これにより、各ガス供給管内は窒素ガスで満たされることとなる。
(10)圧力容器301のふたを閉じる。
(11)真空ポンプ116を稼動させる。
(12)バルブ115,307を開状態とする。これにより、反応容器103内の空間部分107に含まれるアルゴンガスおよび圧力容器301と反応容器103との間の空間部分302に存在する気体が排出される。
(13)圧力センサ108,304を参照し、反応容器103内の空間部分107の圧力および圧力容器301と反応容器103との間の空間部分302が所定の圧力に到達すると、バルブ115,307を閉状態とする。
(14)バルブ118,305を開状態とし、反応容器103および圧力容器301内に窒素ガスを供給する。このとき、圧力センサ108,304を参照し、反応容器103および圧力容器301内の窒素ガスの圧力がほぼ15気圧となるように圧力調整器106を制御する。反応容器103および圧力容器301内の圧力が15気圧になったら、バルブ305は、開状態のまま、バルブ118を閉状態にする。以上の工程は、融液保持容器101と反応容器103との間の溶融Naが液体状態を保持する温度で、かつ、Naの実質的蒸発が抑制される温度(たとえば、100℃)で行われる。
(15)バルブ120を開状態とする。これにより、一例として図8に示されるように、反応容器103と融液保持容器101との間隙を満たしている溶融Naの一部が、ガス供給管104のU字部を満たすようになる。ここでは、反応容器103内の空間部分107の圧力とガス供給管104の空間部分113の圧力は互いにほぼ等しいので、気液界面Aのレベルと気液界面Bのレベルとは互いにほぼ一致している。
(16)ヒータ109、110により、融液保持容器101及び反応容器103内の温度を800℃まで昇温する。反応容器103内の空間部分107の温度が800℃になると、反応容器103内の空間部分107の圧力は40気圧となる。この昇温過程の560℃以上の温度では、融液保持容器101内の金属Naと金属Gaは、完全に混合融液となる。
このとき、気液界面Bにおいて、Naが液体状態を維持し、かつNaの実質的蒸発が抑制されるように、ヒータ111を制御する。従って、気液界面Aの温度は、気液界面Bの温度よりも高くなり、気液界面Aと気液界面Bとの間に温度勾配が生じる。
なお、この反応容器103の昇温過程では、反応容器103内の空間107の圧力とガス供給管104の窒素ボンベ側の空間113の圧力および圧力容器301内の空間302の圧力とがほぼ同じとなるように、圧力調整器106により圧力制御しながら40気圧まで昇圧する。
(17)反応容器103内の温度を800℃、反応容器103内の空間107の圧力を40気圧に保持する。これにより、融液保持容器101内の混合融液102中にIII族窒化物であるGaN結晶が成長を始める。
そして、GaN結晶の成長進行に伴い、その窒素原料となる反応容器103内の空間107にある窒素ガスが消費され、空間107の圧力が低下する。反応容器103内の空間107の圧力が低下することにより、一例として図9に示されるように、ガス供給管104内の空間113と反応容器103内の空間107の差圧により、溶融Na112は反応容器103内に移動する。この結果、気液界面Aは上昇し、気液界面Bは反応容器103とガス供給管104との境界付近まで移動する。このとき、窒素ガスは泡状となって溶融Na112内を上昇し、反応容器103内の空間107に到達する。あるいは、ガス供給管104の空間113と反応容器103内の空間107とが連続的につながり、反応容器103内の空間107に窒素ガスが供給される。このようにして、ガス供給管104の空間113の圧力と反応容器103内の空間107の圧力とが互いにほぼ等しくなるまで、窒素ガスボンベ105から反応容器103の空間107に窒素ガスが供給される。ガス供給管104の空間113の圧力と反応容器103内の空間107の圧力とが互いにほぼ等しくなると、気液界面Aのレベルと気液界面Bのレベルとは互いにほぼ等しくなる。結晶成長が進行する過程で、図8に示される状態と図9に示される状態とが繰り返されて、反応容器103内の空間107に窒素ガスが供給されることとなる。
このとき、気液界面Aの温度は反応容器103内の温度と同じ800℃である。この温度でのNa蒸気圧は約0.45気圧と大きいため、反応容器103内の空間107はNa蒸気と窒素ガスの混合雰囲気となっている。一方、気液界面Bの温度は前述したように、Naの実質的蒸発が発生しない温度に維持されているため、Na蒸気圧は小さく、気液界面BからNaが上流(窒素ボンベ105側)に拡散することは無視できる。なお、ガス供給管104内の溶融Naが反応容器103内に移動して、気液界面Bが反応容器103付近まで移動しても、気液界面Bから拡散するNa蒸気はガス供給管104の温度制御された領域に付着して、溶融Naとなり反応容器103内の空間107への窒素の導入に影響を与えることはない。
なお、製造装置100Bにおいても、図6に示す領域REG1,REG2,REG3に含まれる窒素ガス圧および結晶成長温度を用いてGaN結晶の製造が行なわれる。
以上説明したように、実施の形態2によると、ガス供給管104の空間113の圧力と反応容器103内の空間107の圧力とが互いにほぼ等しいときには、両空間は溶融Naにより遮断されており、反応容器103内の窒素圧力が低下したときに、窒素ガスが反応容器103内に導入される。この結果、反応容器103外へのNaの拡散防止及び窒素原料の安定供給を両立させることが可能となり、安定したGaN結晶の成長が継続され、低コストで、高品質、大型、及び均質のGaN結晶を製造することができる。
また、圧力容器301内の空間302の圧力と反応容器103内の空間107の圧力とを互いにほぼ等しくすることができる。そこで、前記製造装置100Aの場合には、反応容器103は耐圧性及び耐熱性の両方を満たす必要があったが、本第2の実施形態における製造装置100Bでは、反応容器103に耐圧性は要求されない。これにより、反応容器103の肉厚を薄くすることができることとなり、反応容器103の熱容量が小さくなって、圧力容器301内の温度のより細かい制御が可能となる。この結果、圧力容器301内の温度変動幅を第1の実施形態よりも小さくすることができ、安定したGaN結晶の成長が継続され、低コストで、高品質、大型、及び均質のGaN結晶を製造することができる。
[実施の形態3]
次に、本発明の実施の形態3を図10〜図13に基づいて説明する。図10には、本発明の実施の形態3に係るIII族窒化物結晶の製造装置としてのGaN結晶の製造装置100Cの概略構成が示されている。なお、以下においては、前述した第1の実施形態と同一若しくは同等の構成部分については同一の符号を用い、その説明を簡略化し若しくは省略するものとする。
図10に示される製造装置100Cは、反応容器103、融液保持容器101、ヒータ109、110、111、窒素ガスの供給源(窒素ガスボンベ)105、ガス供給管104、119、バルブ115、120、圧力センサ108、ガス排出管114、真空ポンプ116及び圧力調整器106などを含んで構成されている。すなわち、製造装置100Cは、第1の実施形態における前記製造装置100Aから、ガス供給管117及びバルブ118を除いたものである。
次に、上記のように構成される製造装置100CによるGaN結晶の製造方法について説明する。
(1)各バルブをいずれも閉状態とする。
(2)反応容器103を各配管から切り離し、アルゴン雰囲気のグローブボックス内に入れる。
(3)反応容器103から融液保持容器101を取り出し、融液保持容器101内に原料のGaとフラックスのNaとを入れる。ここでは、一例としてNaとGaのモル比率を5:5とした。
(4)融液保持容器101を反応容器103内の所定位置に収容する。ここでは、上記実施の形態1及び実施の形態2と異なり、反応容器103と融液保持容器101との間隙には何も入れない。
(5)反応容器103のふたを閉じる。
(6)反応容器103をグローブボックスから出し、一例として図11に示されるように、各配管と接続する。このとき、各ガス供給管内に空気が残留しないように、例えば窒素ガスを流しながら接続する。これにより、ガス供給管内は窒素ガスで満たされることとなる。
(7)真空ポンプ116を稼動させる。
(8)バルブ115を開状態とする。これにより、反応容器103内の空間部分107に含まれるアルゴンガスが排出される。
(9)圧力センサ108を参照し、反応容器103内の空間部分107の圧力が所定の圧力に到達すると、バルブ115を閉状態とする。
(10)バルブ120を開状態とし、反応容器103内に窒素ガスを供給する。このとき、圧力センサ108を参照し、反応容器103内の窒素ガスの圧力がほぼ15気圧となるように圧力調整器106を制御する。
(11)ヒータ109、110に通電し、融液保持容器101及び反応容器103内の温度を800℃まで昇温する。反応容器103内の空間部分107の温度が800℃になると、反応容器103内の空間部分107の圧力は40気圧となる。この昇温過程の560℃以上の温度では、融液保持容器101内の金属Naと金属Gaは、完全に混合融液となる。
反応容器103内の温度が上昇すると、混合融液102中のNaの一部が蒸発し、Na蒸気が空間107に出る。このNa蒸気はガス供給管104内の温度の低い領域に移動する。このときヒータ111により、ガス供給管104の温度をNaの実質的蒸発が発生しない温度に制御することにより、一例として図11に示されるように、溶融Na501がガス供給管104の内部に付着する。ここでは、反応容器103内の空間部分107の圧力とガス供給管104の空間部分113の圧力は互いにほぼ等しいので、気液界面Aのレベルと気液界面Bのレベルとは互いにほぼ一致している。
なお、反応容器103の昇温過程では、反応容器103内の空間107の圧力とガス供給管104の窒素ボンベ側の空間113の圧力とがほぼ同じとなるように、圧力調整器106により圧力制御しながら40気圧まで昇圧する。
(12)反応容器103内の温度を800℃、反応容器103内の空間107の圧力を40気圧に保持する。これにより、融液保持容器101内の混合融液102中でIII族窒化物であるGaN結晶が成長を始める。
そして、GaN結晶の成長進行に伴い、その窒素原料となる反応容器103内の空間107にある窒素ガスが消費され、空間107の圧力が低下する。反応容器103内の空間107の圧力が低下することにより、一例として図13に示されるように、ガス供給管104内の空間113と反応容器103内の空間107の差圧により、溶融Na501は反応容器103内に移動する。この結果、気液界面Aは上昇し、気液界面Bは反応容器103とガス供給管104との境界付近まで移動する。このとき、窒素ガスは泡状となって溶融Na112内を上昇し、反応容器103内の空間107に到達する。あるいは、ガス供給管104の空間113と反応容器103内の空間107とが連続的につながり、反応容器103内の空間107に窒素ガスが供給される。このようにして、ガス供給管104の空間113の圧力と反応容器103内の空間107の圧力とが互いにほぼ等しくなるまで、窒素ガスボンベ105から反応容器103の空間107に窒素ガスが供給される。ガス供給管104の空間113の圧力と反応容器103内の空間107の圧力とが互いにほぼ等しくなると、気液界面Aのレベルと気液界面Bのレベルとは互いにほぼ等しくなる。結晶成長が進行する過程で、図12に示される状態と図13に示される状態とが繰り返されて、反応容器103内の空間107に窒素ガスが供給されることとなる。
このとき、気液界面Aの温度は反応容器103内の温度と同じ800℃である。この温度でのNa蒸気圧は約0.45気圧と大きいため、反応容器103内の空間107はNa蒸気と窒素ガスの混合雰囲気となっている。一方、気液界面Bの温度は前述したように、Naの実質的蒸発が発生しない温度に維持されているため、Na蒸気圧は小さく、気液界面BからNaが上流(窒素ボンベ105側)に拡散することは無視できる。なお、ガス供給管104内の溶融Naが反応容器103内に移動して、気液界面Bが反応容器103付近まで移動しても、気液界面Bから拡散するNa蒸気はガス供給管104の温度制御された領域に付着して、溶融Naとなり反応容器103内の空間107への窒素の導入に影響を与えることはない。
なお、製造装置100Cにおいても、図6に示す領域REG1,REG2,REG3に含まれる窒素ガス圧および結晶成長温度を用いてGaN結晶の製造が行なわれる。
以上説明したように、実施の形態3によると、反応容器103内の温度が上昇すると、混合融液102中のNaの一部が蒸発し、ガス供給管104内で凝縮する。そして、ガス供給管104の空間113と反応容器103内の空間107とが遮断される。その後、GaN結晶の成長工程では、ガス供給管104の空間113の圧力と反応容器103内の空間107の圧力とが互いにほぼ等しいときには、両空間は溶融Naにより遮断されており、反応容器103内の窒素圧力が低下したときに、反応容器103内に窒素ガスが導入される。この結果、安定したGaN結晶の成長が継続され、低コストで、高品質、大型、及び均質のGaN結晶を製造することができる。
また、ガス供給管117及びバルブ118が不要となることから、より簡便な装置とすることができるとともに、窒素圧力の調整が容易となり、圧力制御性が高まり、より安全で効率的な結晶成長が可能となる。
[実施の形態4]
次に、本発明の実施の形態4を図14〜図16に基づいて説明する。図14には、本発明の実施の形態4に係るIII族窒化物結晶の製造装置としてのGaN結晶の製造装置100Dの概略構成が示されている。なお、以下においては、前述した実施の形態1と同一若しくは同等の構成部分については同一の符号を用い、その説明を簡略化し若しくは省略するものとする。
この図14に示される製造装置100Dは、反応容器103、融液保持容器101、ヒータ109、110、111、窒素ガスの供給源(窒素ガスボンベ)105、ガス供給管104、117、119、バルブ115、118、120、圧力センサ108、ガス排出管114、真空ポンプ116、圧力調整器106及びフロート601などを含んで構成されている。すなわち、製造装置100Dは、実施の形態1における前記製造装置100Aに、フロート601が付加されたものである。
このフロート601は、溶融Naよりも比重が小さく、溶融Naに対して不活性な素材で作られている。フロート601は、一例として円柱状の部材であり、その直径はガス供給管104の内径よりも小さく、ガス供給管104内に配置されている。そこで、窒素ガスは、ガス供給管104とフロート601との間隙を通ることができる。
次に、上記のように構成される製造装置100DによるGaN結晶の製造方法について説明する。
(1)各バルブをいずれも閉状態とする。
(2)反応容器103を各配管から切り離し、アルゴン雰囲気のグローブボックス内に入れる。
(3)反応容器103から融液保持容器101を取り出し、融液保持容器101内に原料のGaとフラックスのNaとを入れる。ここでは、一例としてNaとGaのモル比率を5:5とした。
(4)反応容器103内に、溶融Naを入れる。
(5)融液保持容器101を反応容器103内の所定位置に収容する。これにより、反応容器103と融液保持容器101との間隙が溶融Naで満たされることとなる。
(6)反応容器103のふたを閉じる。
(7)反応容器103をグローブボックスから出し、各配管と接続する。このとき、各ガス供給管内に空気が残留しないように、例えば窒素ガスを流しながら接続する。これにより、各ガス供給管内は窒素ガスで満たされることとなる。
(8)真空ポンプ116を稼動させる。
(9)バルブ115を開状態とする。これにより、反応容器103内の空間部分107に含まれるアルゴンガスが排出される。
(10)圧力センサ108を参照し、反応容器103内の空間部分107の圧力が所定の圧力に到達すると、バルブ115を閉状態とする。
(11)バルブ118を開状態とし、反応容器103内に窒素ガスを供給する。このとき、圧力センサ108を参照し、反応容器103内の窒素ガスの圧力がほぼ15気圧となるように圧力調整器106を制御する。反応容器103内の圧力が15気圧になったら、バルブ118を閉状態とする。以上の工程は、融液保持容器101と反応容器103との間の溶融Naが液体状態を保持する温度で、かつ、Naの実質的蒸発が抑制される温度(たとえば、100℃)で行われる。
(12)バルブ120を開状態とする。これにより、一例として図15に示されるように、反応容器103と融液保持容器101との間隙を満たしている溶融Naの一部が、ガス供給管104のU字部を満たすようになる。このとき、フロート601は溶融Naに浮かんだ状態で、ガス供給管104内を上昇する。ここでは、反応容器103内の空間部分107の圧力とガス供給管104の空間部分113の圧力は互いにほぼ等しいので、気液界面Aのレベルと気液界面Bのレベルとは互いにほぼ一致している。
(13)ヒータ109、110により、融液保持容器101及び反応容器103内の温度を800℃まで昇温する。反応容器103内の空間部分107の温度が800℃になると、反応容器103内の空間部分107の圧力は40気圧となる。この昇温過程の560℃以上の温度では、融液保持容器101内の金属Naと金属Gaは、完全に混合融液となる。
このとき、気液界面Bにおいて、Naが液体状態を維持し、かつNaの実質的蒸発が抑制されるように、ヒータ111を制御する。従って、気液界面Aの温度は、気液界面Bの温度よりも高くなり、気液界面Aと気液界面Bとの間に温度勾配が生じる。
なお、反応容器103の昇温過程では、反応容器103内の空間107の圧力とガス供給管104の窒素ボンベ側の空間113の圧力とがほぼ同じとなるように、圧力調整器106により圧力制御しながら40気圧まで昇圧する。
(14)反応容器103内の温度を800℃、反応容器103内の空間107の圧力を40気圧に保持する。これにより、融液保持容器101内の混合融液102中にIII族窒化物であるGaN結晶が成長を始める。
そして、GaN結晶の成長進行に伴い、その窒素原料となる反応容器103内の空間107にある窒素ガスが消費され、空間107の圧力が低下する。反応容器103内の空間107の圧力が低下することにより、一例として図16に示されるように、ガス供給管104内の空間113と反応容器103内の空間107の差圧により、溶融Na112は反応容器103内に移動する。この結果、気液界面Aは上昇し、気液界面Bは反応容器103とガス供給管104との境界付近まで移動する。このとき、窒素ガスは泡状となって溶融Na112内を上昇し、反応容器103内の空間107に到達する。あるいは、ガス供給管104の空間113と反応容器103内の空間107とが連続的につながり、反応容器103内の空間107に窒素ガスが供給される。このようにして、ガス供給管104の空間113の圧力と反応容器103内の空間107の圧力とが互いにほぼ等しくなるまで、窒素ガスボンベ105から反応容器103の空間107に窒素ガスが供給される。ガス供給管104の空間113の圧力と反応容器103内の空間107の圧力とが互いにほぼ等しくなると、気液界面Aのレベルと気液界面Bのレベルとは互いにほぼ等しくなる。結晶成長が進行する過程で、図15に示される状態と図16に示される状態とが繰り返されて、反応容器103内の空間107に窒素ガスが供給されることとなる。
このとき、気液界面Aの温度は反応容器103内の温度と同じ800℃である。この温度でのNa蒸気圧は約0.45気圧と大きいため、反応容器103内の空間107はNa蒸気と窒素ガスの混合雰囲気となっている。一方、気液界面Bの温度は前述したように、Naの実質的蒸発が発生しない温度に維持されているため、Na蒸気圧は小さく、気液界面BからNaが上流(窒素ボンベ105側)に拡散することは無視できる。なお、ガス供給管104内の溶融Naが反応容器103内に移動して、気液界面Bが反応容器103付近まで移動しても、気液界面Bから拡散するNa蒸気はガス供給管104の温度制御された領域に付着して、溶融Naとなり反応容器103内の空間107への窒素の導入に影響を与えることはない。
なお、製造装置100Dにおいても、図6に示す領域REG1,REG2,REG3に含まれる窒素ガス圧および結晶成長温度を用いてGaN結晶の製造が行なわれる。
以上説明したように、実施の形態4によると、ガス供給管104の空間113の圧力と反応容器103内の空間107の圧力とが互いにほぼ等しいときには、両空間は溶融Naにより遮断されており、反応容器103内の窒素圧力が低下したときに、反応容器103内に窒素ガスが導入される。この結果、反応容器103外へのNaの拡散防止及び窒素原料の安定供給を両立させることが可能となり、安定したGaN結晶の成長が継続され、低コストで、高品質、大型、及び均質のGaN結晶を製造することができる。
また、フロート601によって気液界面Bの開口部が狭窄されるので、僅かなNa蒸発量をさらに低減させることが可能となり、その結果、安全性及び結晶成長の安定性を更に向上させることができる。
[実施の形態5]
次に、本発明の実施の形態5を図17〜図20に基づいて説明する。図17には、本発明の実施の形態5に係るIII族窒化物結晶の製造装置としてのGaN結晶の製造装置100Eの概略構成が示されている。なお、以下においては、前述した実施の形態1と同一若しくは同等の構成部分については同一の符号を用い、その説明を簡略化し若しくは省略するものとする。
図17に示される製造装置100Eは、反応容器103、融液保持容器101、ヒータ109,110,111,703、窒素ガスの供給源(窒素ガスボンベ)105、窒素ガスを供給するためのガス供給管104,117,119、窒素ガスの圧力調整器106,アルゴンガスの供給源(アルゴンガスボンベ)705,アルゴンガスを供給するためのガス供給管701、アルゴンガスの圧力調整器706、バルブ115,118,120,708、圧力センサ108、ガス排出管114、及び真空ポンプ116などを含んで構成されている。すなわち、製造装置100Eは、実施の形態1における前記製造装置100Aに、ヒータ703、アルゴンガスボンベ705、ガス供給管701、圧力調整器706、及びバルブ708が付加されたものである。
前記ガス供給管701は、U字部を有し、反応容器103内にアルゴンガスを供給するための配管である。このガス供給管701の一端は、前記圧力調整器706を介して前記アルゴンガスボンベ705に接続され、他端は、反応容器103の底部に設けられた開口部に接続されている。
前記ヒータ703は、複数の加熱部を有し、ガス供給管701における反応容器103から離れているほうの立ち上がり部分及び底部分に隣接して配置され、ガス供給管701のU字部に保持される溶融Na(液体)の実質的な蒸発を抑制するような温度勾配を、U字部に付与する。
前記バルブ708は、ガス供給管701の途中であって、反応容器103に近いところに設けられている。
前記圧力調整器706は、ガス供給管701の途中に設けられ、アルゴンガスの圧力を調整するのに用いられる。
また、反応容器103は、図18に示されるように、各バルブを含んで各配管から切り離し可能となっており、反応容器103をグローブボックスの中に移動させて作業することが可能である。
次に、上記のように構成される製造装置100EによるGaN結晶の製造方法について説明する。
(1)各バルブをいずれも閉状態とする。
(2)反応容器103を各配管から切り離し、アルゴン雰囲気のグローブボックス内に入れる。
(3)反応容器103から融液保持容器101を取り出し、融液保持容器101内に原料のGaとフラックスのNaとを入れる。ここでは、一例としてNaとGaのモル比率を5:5とした。
(4)反応容器103内に、溶融Na112を入れる。
(5)融液保持容器101を反応容器103内の所定位置に収容する。これにより、反応容器103と融液保持容器101との間隙が溶融Naで満たされることとなる。
(6)反応容器103のふたを閉じる。
(7)反応容器103をグローブボックスから出し、各配管と接続する。このとき、窒素ガスのガス供給管内に空気が残留しないように、例えば窒素ガスを流しながら接続する。これにより、窒素ガスのガス供給管内は窒素ガスで満たされることとなる。また、アルゴンガスのガス供給管701内に空気が残留しないように、例えばアルゴンガスを流しながら接続する。これにより、アルゴンガスのガス供給管701内はアルゴンガスで満たされることとなる。
(8)真空ポンプ116を稼動させる。
(9)バルブ115を開状態とする。これにより、反応容器103内の空間部分107に含まれるアルゴンガスが排出される。
(10)圧力センサ108を参照し、反応容器103内の空間部分107の圧力が所定の圧力に到達すると、バルブ115を閉状態とする。
(11)バルブ118を開状態とし、反応容器103内に窒素ガスを供給する。このとき、圧力センサ108を参照し、反応容器103内の窒素ガスの圧力がほぼ15気圧となるように圧力調整器106を制御する。反応容器103内の圧力が15気圧になったら、バルブ118を閉状態にする。以上の工程は、融液保持容器101と反応容器103との間の溶融Naが液体状態を保持する温度で、かつ、Naの実質的蒸発が抑制される温度(たとえば、100℃)で行われる。
(12)バルブ120及びバルブ708を開状態とする。これにより、一例として図19に示されるように、反応容器103と融液保持容器101との間の間隙を満たしている溶融Naの一部が、ガス供給管104のU字部及びガス供給管701のU字部をそれぞれ満たすようになる。このとき、溶融Naは、反応容器103内での気液界面Aとガス供給管104内での気液界面Bとガス供給管701内での気液界面Cの3つの気液界面を有することとなる。ここでは、反応容器103内の空間部分107の圧力とガス供給管104の空間部分113の圧力とガス供給管701の空間部分702の圧力とは互いにほぼ等しいので、気液界面Aのレベルと気液界面Bのレベルと気液界面Cのレベルとは互いにほぼ一致している。
(13)ヒータ109、110により、融液保持容器101及び反応容器103内の温度を800℃まで昇温する。反応容器103内の空間部分107の温度が800℃になると、反応容器103内の空間部分107の圧力は40気圧となる。この昇温過程の560℃以上の温度では、融液保持容器101内の金属Naと金属Gaは、完全に混合融液となる。
このとき、気液界面Bにおいて、Naが液体状態を維持し、かつNaの実質的蒸発が抑制されるように、ヒータ111を制御する。従って、気液界面Aの温度は、気液界面Bの温度よりも高くなり、気液界面Aと気液界面Bとの間に温度勾配が生じる。また、気液界面Cにおいて、Naが液体状態を維持し、かつNaの実質的蒸発が抑制されるように、ヒータ703を制御する。従って、気液界面Aの温度は、気液界面Cの温度よりも高くなり、気液界面Aと気液界面Cとの間に温度勾配が生じる。
なお、反応容器103の昇温過程では、反応容器103内の空間107の圧力とガス供給管104の窒素ボンベ側の空間113の圧力およびガス供給管701のアルゴンボンベ705側の空間702の圧力とがほぼ同じとなるように、圧力調整器106及び圧力調整器706により圧力制御しながら反応容器103内の空間部分107の圧力を40気圧まで昇圧する。
(14)反応容器103内の温度を800℃、反応容器103内の空間107の圧力を40気圧に保持する。これにより、融液保持容器101内の混合融液102中でIII族窒化物であるGaN結晶が成長を始める。
そして、GaN結晶の成長進行に伴い、その窒素原料となる反応容器103内の空間107にある窒素ガスが消費され、空間107の圧力が低下する。反応容器103内の空間107の圧力が低下することにより、一例として図20に示されるように、ガス供給管104内の空間113と反応容器103内の空間107の差圧、及びガス供給管701内の空間702と反応容器103内の空間107の差圧により、溶融Na112は、反応容器103内に移動する。この結果、気液界面Aは上昇し、気液界面Bは反応容器103とガス供給管104との境界付近まで移動し、気液界面Cは反応容器103とガス供給管701との境界付近まで移動する。このとき、窒素ガスは泡状となって溶融Na112内を上昇し、反応容器103内の空間107に到達する。あるいは、ガス供給管104の空間113と反応容器103内の空間107とが連続的につながり、反応容器103内の空間107に窒素ガスが供給される。また、アルゴンガスは泡状となって溶融Na112内を上昇し、反応容器103内の空間107に到達する。あるいは、ガス供給管701の空間702と反応容器103内の空間107とが連続的につながり、反応容器103内の空間107にアルゴンガスが供給される。このようにして、ガス供給管104の空間113の圧力とガス供給管701の空間702の圧力と反応容器103内の空間107の圧力とが互いにほぼ等しくなるまで、窒素ガスボンベ105から反応容器103の空間107に窒素ガスが供給され、アルゴンガスボンベ705から反応容器103の空間107にアルゴンガスが供給される。ガス供給管104の空間113の圧力とガス供給管701の空間702の圧力と反応容器103内の空間107の圧力とが互いにほぼ等しくなると、気液界面Aのレベルと気液界面Bのレベルと気液界面Cのレベルとは互いにほぼ等しくなる。結晶成長が進行する過程で、図19に示される状態と図20に示される状態とが繰り返されて、反応容器103の空間107に窒素ガス及びアルゴンガスが供給されることとなる。
このとき、気液界面Aの温度は反応容器103内の温度と同じ800℃である。この温度でのNa蒸気圧は約0.45気圧と大きいため、反応容器103内の空間107はNa蒸気と窒素ガスの混合雰囲気となっている。一方、気液界面Bの温度は前述したように、Naの実質的蒸発が発生しない温度に維持されているため、Na蒸気圧は小さく、気液界面BからNaが上流(窒素ボンベ105側)に拡散することは無視できる。なお、ガス供給管104内の溶融Naが反応容器103内に移動して、気液界面Bが反応容器103付近まで移動しても、気液界面Bから拡散するNa蒸気はガス供給管104の温度制御された領域に付着して、溶融Naとなり反応容器103内の空間107への窒素の導入に影響を与えることはない。また、気液界面Cの温度は前述したように、Naの実質的蒸発が発生しない温度に維持されているため、Na蒸気圧は小さく、気液界面CからNaが上流(アルゴンガスボンベ705側)に拡散することは無視できる。なお、ガス供給管701内の溶融Naが反応容器103内に移動して、気液界面Cが反応容器103付近まで移動しても、気液界面Cから拡散するNa蒸気はガス供給管701の温度制御された領域に付着して、溶融Naとなり反応容器103内の空間107へのアルゴンガスの導入に影響を与えることはない。
なお、製造装置100Eにおいても、図6に示す領域REG1,REG2,REG3に含まれる窒素ガス圧および結晶成長温度を用いてGaN結晶の製造が行なわれる。
以上説明したように、実施の形態5によると、ガス供給管104の空間113の圧力と反応容器103内の空間107の圧力とが互いにほぼ等しいときには、両空間は溶融Naにより遮断されており、反応容器103内の窒素圧力が低下した場合に、窒素ガスが導入される。この結果、反応容器103外へのNaの拡散防止及び窒素原料の安定供給を両立させることが可能となり、安定したGaN結晶の成長が継続され、低コストで、高品質、大型、及び均質のGaN結晶を製造することができる。
また、複数種類のガスを反応容器103内で混合しているため、反応容器103内における窒素分圧と全圧とを分離して制御することができる。この結果、混合融液102中での窒素溶解量の制御可能な範囲を広くすることが可能となり、結晶成長の制御性を向上させることができる。
[実施の形態6]
図21は、実施の形態6によるGaN結晶の製造装置の構成を示す概略図である。図21を参照して、実施の形態6による製造装置100Fは、図1に示す製造装置100Aのバルブ120をバルブ130に代え、ヒータ140を追加したものであり、その他は、製造装置100Aと同じである。
バルブ130は、ガス供給管104とガス供給管117との連結部の近傍でガス供給管104に装着される。そして、バルブ130は、ガス供給管117からの窒素ガスを反応容器103側へ供給し、またはガス供給管117からの窒素ガスの反応容器103側への供給を停止する。
ヒータ140は、ガス供給管104の立ち上がり部104Aの周囲に配置される。そして、ヒータ140は、ガス供給管104の一部に溜められた溶融Naから蒸発する金属Naの蒸気圧が融液保持容器101内の混合融液102から蒸発する金属Naの蒸気圧に略一致する特定温度にガス供給管104の立ち上がり部104Aを加熱する。
図22は、融液保持容器101、反応容器103およびガス供給管104の温度のタイミングチャートである。また、図23は、図22に示すタイミングt1およびタイミングt2における融液保持容器101および反応容器103内の状態変化を示す模式図である。
なお、図22において、直線k1は、融液保持容器101および反応容器103の温度を示し、曲線k2および直線k3は、ガス供給管104内の溶融Naの温度を示す。
図22を参照して、ヒータ109,110は、直線k1に従って温度が上昇し、かつ、800℃に保持されるように融液保持容器101および反応容器103を加熱する。また、ヒータ140は、曲線k2に従って温度が上昇し、かつ、特定温度Tsp1に保持されるように、ガス供給管104の立ち上がり部104Aを加熱する。更に、ヒータ111は、曲線k3に従って温度が上昇し、かつ、特定温度Tsp2に保持されるようにガス供給管104の立ち上がり部104Bおよび水平部104Cを加熱する。
ヒータ109,110が融液保持容器101および反応容器103を加熱し始め、かつ、ヒータ111,140がガス供給管104を加熱し始めたとき、ガス供給管104内には、溶融Na122が存在し、融液保持容器101内には、金属Naと金属Gaとを含む混合融液102が存在する(図23の(a)参照)。
そして、融液保持容器101および反応容器103の温度がタイミングt1において98℃に達し、タイミングt2において800℃に達する。そして、また、ガス供給管104の立ち上がり部104Aは、タイミングt2において、特定温度Tsp1に達し、立ち上がり部104Bは、タイミングt2において特定温度Tsp2に達する。なお、特定温度Tsp1は、溶融Na122から蒸発する金属Naの蒸気圧PNa1が混合融液102から蒸発する金属Naの蒸気圧PNa−Gaに略一致する温度である。また、特定温度Tsp2は、実施の形態1〜5において説明したように、ガス供給管104内に溜められた溶融NaからのNaの実質的な蒸発が抑制される温度である。そして、特定温度Tsp1は、800℃よりも低く、特定温度Tsp2は、特定温度Tsp1よりも低い。
従って、ガス供給管104の立ち上がり部104Aは、溶融Na122からの金属Naの蒸発と、混合融液102からの金属Naの蒸発とが略平衡になる特定温度Tsp1にヒータ140によって昇温される(図23の(b)参照)。また、ガス供給管104の立ち上がり部104Bは、溶融Na122からの金属Naの蒸発が実質的に生じない特定温度Tsp2にヒータ111によって加熱される。この場合、ガス供給管104の立ち上がり部104Bにおける金属Naの蒸気圧は、PNa2であり、実施の形態1〜実施の形態5において説明した7.6×10−9気圧、1.8×10−5および4.7×10−4気圧等の低い蒸気圧である。
その結果、溶融Na122から混合融液102への金属Naの気相輸送と、混合融液102から溶融Na122への金属Naの気相輸送とが略平衡になり、見かけ上、溶融Na122と混合融液102との間で金属Naの気相輸送が停止される。そして、溶融Na122および混合融液102からの金属Naの蒸発による混合融液102中の金属Naと金属Gaとの混合比の変動が抑制される。
次に、図24から図26を参照して、製造装置100FによるGaN結晶の製造方法について説明する。なお、製造装置100Fにおいては、反応容器103およびガス供給管104は、図24に示されるように、各バルブを含んで各配管から切り離し可能となっており、反応容器103およびガス供給管104を不図示のグローブボックスの中に移動させて作業することが可能である。
(1)各バルブをいずれも閉状態とする。
(2)反応容器103およびガス供給管104を各配管から切り離し、アルゴン(Ar)雰囲気のグローブボックス内に入れる。
(3)反応容器103のふたを開け、反応容器103から融液保持容器101を取り出す。そして、融液保持容器101内に原料のGaとフラックスのNaとを入れる。ここでは、一例としてNaとGaのモル比率を5:5とした。
(4)溶融Na122をガス供給管104内に入れる。
(5)融液保持容器101を反応容器103内の所定位置に収容する。なお、アルゴン雰囲気でGa及びNaを取り扱うことにより、酸素や水分とGa及びNaとの反応を防止することができる。
(6)反応容器103のふたを閉じる。
(7)反応容器103およびガス供給管104をグローブボックスから出し、各配管と接続する。このとき、各ガス供給管内に空気が残留しないように、例えば窒素ガスを流しながら接続する。これにより、各ガス供給管内は窒素ガスで満たされることとなる。この時点においては、図23の(a)に示すように、混合融液102が融液保持用器101内に保持され、溶融Na122がガス供給管104内に保持されている。
(8)真空ポンプ116を稼動させる。
(9)バルブ115を開状態とする。これにより、反応容器103内の空間部分107に含まれるアルゴンガスが排出される。すなわち、反応容器103内のガスパージを行う。
(10)圧力センサ108を参照し、反応容器103内の空間部分107の圧力が所定の圧力に到達すると、バルブ115を閉状態とする。
(11)バルブ118,130を開状態とし、反応容器103内に窒素ガスを供給する。このとき、圧力センサ108を参照し、反応容器103内の窒素ガスの圧力がほぼ15気圧となるように圧力調整器106を調整する。反応容器103内の圧力が15気圧になったら、バルブ118を閉状態にする。なお、以上の各工程は、ガス供給管104内の溶融Na122が液体状態を保持する温度で行われる。
(12)ヒータ109,110により、反応容器103内の温度を800℃まで昇温する。また、ヒータ111,140に通電し、ガス供給管104の立ち上がり部104Aを特定温度Tsp1に加熱し、ガス供給管104の立ち上がり部104Bを特定温度Tsp2に加熱する。そして、反応容器103内の空間部分107の温度が800℃になると、反応容器103内の空間部分107の圧力は40気圧となる。この昇温過程の560℃以上の温度では、融液保持容器101内の金属Naと金属Gaは、完全に混合融液となる。
この時点においては、図25に示すように、溶融Na122は、ガス供給管104内に2つの気液界面A,Bを有することとなる。ここで、反応容器103内の空間部分107の圧力とガス供給管104内の空間部分113の圧力は互いにほぼ等しいので、気液界面AのレベルL1と気液界面BのレベルL2とは互いにほぼ一致している。
そして、気液界面Aにおける金属Naの蒸気圧PNa1は、混合融液102から蒸発する金属Naの蒸気圧PNa−Gaに略一致している。蒸気圧PNa1が蒸気圧PNa−Gaに略一致していることは、溶融Na122から混合融液102への金属Naの気相輸送が混合融液102から溶融Na122への金属Naの気相輸送と平衡状態に達していることを意味し、混合融液102からの金属Naの減少が防止される。
また、気液界面Bにおける金属Naの蒸気圧PNa2は、金属Naが溶融Na122から実質的に蒸発しない蒸気圧に保持されている。
従って、ガス供給管104内に保持された溶融Na122の気液界面Aは、混合融液102からの金属Naの減少を防止する温度に設定され、溶融Na122の気液界面Bは、溶融Na122からの金属Naの蒸発が実質的に抑制される温度に設定される。
なお、この反応容器103およびガス供給管104の昇温過程では、反応容器103内の空間107の圧力とガス供給管104の窒素ボンベ側の空間113の圧力とがほぼ同じとなるように、圧力調整器106により圧力制御しながら40気圧まで昇圧する。
(13)反応容器103内の温度を800℃に保持し、反応容器103内の空間107の圧力を40気圧に保持する。これにより、融液保持容器101内の混合融液102中でIII族窒化物であるGaN結晶が成長を始める。
そして、GaN結晶の成長進行に伴い、その窒素原料となる反応容器103内の空間107にある窒素ガスが消費され、空間107の圧力が低下する。反応容器103内の空間107の圧力が低下することにより、一例として図26に示されるように、ガス供給管104内の空間113と反応容器103内の空間107との差圧により、溶融Na122は反応容器103内に移動する。この結果、気液界面Aは上昇し、気液界面Bは反応容器103とガス供給管104との境界付近まで移動する。このとき、窒素ガスは泡状となって溶融Na122内を上昇し、反応容器103内の空間107に到達する。あるいは、ガス供給管104の空間113と反応容器103内の空間107とが連続的につながり、反応容器103内の空間107に窒素ガスが供給される。このようにして、ガス供給管104の空間113の圧力と反応容器103内の空間107の圧力とが互いにほぼ等しくなるまで、窒素ガスボンベ105から反応容器103内の空間107に窒素ガスが供給される。ガス供給管104の空間113の圧力と反応容器103内の空間107の圧力とが互いにほぼ等しくなると、気液界面Aのレベルと気液界面Bのレベルとは互いにほぼ等しくなる。結晶成長が進行する過程で、図25に示される状態と図26に示される状態とが繰り返されて、反応容器103内の空間107に窒素ガスが供給されることとなる。
このとき、気液界面Aの温度は、溶融Na122から混合融液102への金属Naの気相輸送が混合融液102から溶融Na122への金属Naの気相輸送と平衡になる特定温度Tsp1に設定されている。従って、反応容器103内の空間107は、Na蒸気と窒素ガスの混合雰囲気となっている。一方、気液界面Bの温度は、前述したように、Naの実質的蒸発が発生しない温度に維持されているため、Na蒸気圧は小さく、気液界面BからNaが上流(窒素ボンベ105側)に拡散することは無視できる。なお、ガス供給管104内の溶融Na122が反応容器103内に移動して、気液界面Bが反応容器103付近まで移動しても、気液界面Bから拡散するNa蒸気はガス供給管104の温度制御された領域に付着して、そこで液化されるため、反応容器103内の空間107への窒素ガスの導入に影響を与えることはない。
そして、製造装置100Fにおいては、図6に示す領域REG1,REG2,REG3に含まれる窒素ガス圧および結晶成長温度を用いて各種のGaN結晶の製造が行なわれる。
以上説明したように、実施の形態6によると、ガス供給管104の空間113の圧力と反応容器103内の空間107の圧力とが互いにほぼ等しいときには、両空間は溶融Na122により遮断されており、反応容器103内の窒素圧力が低下したときに、窒素ガスが反応容器103内に導入される。
また、ガス供給管104内に保持された溶融Na122の反応容器103側の気液界面Aにおける金属Naの蒸気圧PNa1は、混合融液102から蒸発する金属Naの蒸気圧PNa−Gaに略一致する。
この結果、反応容器103外への金属Naの拡散を防止した上で、混合融液102中における金属Naと金属Gaとの混合比を略一定に保持できるとともに、窒素原料の安定供給を両立させることが可能となる。そして、安定したGaN結晶の成長が継続され、低コストで、高品質、大型、及び均質のGaN結晶を製造することができる。従って、従来のフラックス法より高品質で大型のIII族窒化物結晶を成長させることが可能となる。
その他は、実施の形態1と同じである。
[実施の形態7]
図27は、実施の形態7によるGaN結晶の製造装置の構成を示す概略図である。図27を参照して、実施の形態7による製造装置100Gは、図7に示す製造装置100Bのバルブ120をバルブ130に代え、ヒータ140を追加したものであり、その他は、製造装置100Bと同じである。
バルブ130およびヒータ140については、実施の形態6において説明したとおりである。
次に、図28および図29を参照して、製造装置100GによるGaN結晶の製造方法について説明する。
(1)各バルブをいずれも閉状態とする。
(2)反応容器103およびガス供給管104を各配管から切り離し、圧力容器301の中から反応容器103を取り出す。
(3)取り出した反応容器103およびガス供給管104をアルゴン雰囲気のグローブボックス内に入れる。
(4)反応容器103から融液保持容器101を取り出し、融液保持容器101内に原料のGaとフラックスのNaとを入れる。ここでは、一例としてNaとGaのモル比率を5:5とした。
(5)溶融Naをガス供給管104内に入れる。
(6)融液保持容器101を反応容器103内の所定位置に収容する。
(7)反応容器103のふたを閉じる。
(8)反応容器103およびガス供給管104をグローブボックスから出し、圧力容器301内の所定位置に収容する。
(9)反応容器103およびガス供給管104と各配管とを接続する。このとき、各ガス供給管内に空気が残留しないように、例えば窒素ガスを流しながら接続する。これにより、各ガス供給管内は窒素ガスで満たされることとなる。
(10)圧力容器301のふたを閉じる。
(11)真空ポンプ116を稼動させる。
(12)バルブ115,307を開状態とする。これにより、反応容器103内の空間部分107に含まれるアルゴンガスおよび圧力容器301と反応容器103との間の空間部分302に存在する気体が排出される。
(13)圧力センサ108,304を参照し、反応容器103内の空間部分107の圧力および圧力容器301と反応容器103との間の空間部分302の圧力が所定の圧力に到達すると、バルブ115,307を閉状態とする。
(14)バルブ118,130,305を開状態とし、反応容器103および圧力容器301内に窒素ガスを供給する。このとき、圧力センサ108,304を参照し、反応容器103および圧力容器301内の窒素ガスの圧力がほぼ15気圧となるように圧力調整器106を制御する。反応容器103および圧力容器301内の圧力が15気圧になったら、バルブ305は、開状態のまま、バルブ118を閉状態にする。以上の工程は、ガス供給管104内の溶融Na122が液体状態を保持する温度で、かつ、Naの実質的蒸発が抑制される温度(たとえば、100℃)で行われる。
(15)ヒータ109,110により、反応容器103内の温度を800℃まで昇温する。また、ヒータ111,140に通電し、ガス供給管104の立ち上がり部104Aを特定温度Tsp1に加熱し、ガス供給管104の立ち上がり部104Bを特定温度Tsp2に加熱する。そして、反応容器103内の空間部分107の温度が800℃になると、反応容器103内の空間部分107の圧力は40気圧となる。この昇温過程の560℃以上の温度では、融液保持容器101内の金属Naと金属Gaは、完全に混合融液となる。
この時点においては、図28に示すように、溶融Na122は、ガス供給管104内に2つの気液界面A,Bを有することとなる。ここで、反応容器103内の空間部分107の圧力とガス供給管104の空間部分113の圧力は互いにほぼ等しいので、気液界面AのレベルL1と気液界面BのレベルL2とは互いにほぼ一致している。
そして、気液界面Aにおける金属Naの蒸気圧PNa1は、混合融液102から蒸発する金属Naの蒸気圧PNa−Gaに略一致している。蒸気圧PNa1が蒸気圧PNa−Gaに略一致していることは、溶融Na122から混合融液102への金属Naの気相輸送が混合融液102から溶融Na122への金属Naの気相輸送と平衡状態に達していることを意味し、混合融液102からの金属Naの減少が防止される。
また、気液界面Bにおける金属Naの蒸気圧PNa2は、金属Naが溶融Na122から実質的に蒸発しない蒸気圧に保持されている。
従って、ガス供給管104内に保持された溶融Na122の気液界面Aは、混合融液102からの金属Naの減少を防止する温度に設定され、溶融Na122の気液界面Bは、溶融Na122からの金属Naの蒸発が実質的に抑制される温度に設定される。
なお、この反応容器103およびガス供給管104の昇温過程では、反応容器103内の空間107の圧力とガス供給管104の窒素ボンベ側の空間113の圧力および圧力容器301内の空間302の圧力とがほぼ同じとなるように、圧力調整器106により圧力制御しながら40気圧まで昇圧する。
(16)反応容器103内の温度を800℃に保持し、反応容器103内の空間107の圧力を40気圧に保持する。これにより、融液保持容器101内の混合融液102中でIII族窒化物であるGaN結晶が成長を始める。
そして、GaN結晶の成長進行に伴い、その窒素原料となる反応容器103内の空間107にある窒素ガスが消費され、空間107の圧力が低下する。反応容器103内の空間107の圧力が低下することにより、一例として図29に示されるように、ガス供給管104内の空間113と反応容器103内の空間107との差圧により、溶融Na122は反応容器103内に移動する。この結果、気液界面Aは上昇し、気液界面Bは反応容器103とガス供給管104との境界付近まで移動する。このとき、窒素ガスは泡状となって溶融Na122内を上昇し、反応容器103内の空間107に到達する。あるいは、ガス供給管104内の空間113と反応容器103内の空間107とが連続的につながり、反応容器103内の空間107に窒素ガスが供給される。このようにして、ガス供給管104内の空間113の圧力と反応容器103内の空間107の圧力とが互いにほぼ等しくなるまで、窒素ガスボンベ105から反応容器103の空間107に窒素ガスが供給される。ガス供給管104内の空間113の圧力と反応容器103内の空間107の圧力とが互いにほぼ等しくなると、気液界面Aのレベルと気液界面Bのレベルとは互いにほぼ等しくなる。結晶成長が進行する過程で、図28に示される状態と図29に示される状態とが繰り返されて、反応容器103内の空間107に窒素ガスが供給されることとなる。
このとき、気液界面Aの温度は、溶融Na122から混合融液102への金属Naの気相輸送が混合融液102から溶融Na122への金属Naの気相輸送と平衡になる特定温度Tsp1に設定されている。従って、反応容器103内の空間107は、Na蒸気と窒素ガスの混合雰囲気となっている。一方、気液界面Bの温度は、前述したように、Naの実質的蒸発が発生しない温度に維持されているため、Na蒸気圧は小さく、気液界面BからNaが上流(窒素ボンベ105側)に拡散することは無視できる。なお、ガス供給管104内の溶融Na122が反応容器103内に移動して、気液界面Bが反応容器103付近まで移動しても、気液界面Bから拡散するNa蒸気はガス供給管104の温度制御された領域に付着して、そこで液化されるため、反応容器103内の空間107への窒素ガスの導入に影響を与えることはない。
そして、製造装置100Gにおいては、図6に示す領域REG1,REG2,REG3に含まれる窒素ガス圧および結晶成長温度を用いて各種のGaN結晶の製造が行なわれる。
以上説明したように、実施の形態7によると、ガス供給管104内の空間113の圧力と反応容器103内の空間107の圧力とが互いにほぼ等しいときには、両空間は溶融Na122により遮断されており、反応容器103内の窒素圧力が低下したときに、窒素ガスが反応容器103内に導入される。
また、ガス供給管104内に保持された溶融Na122の反応容器103側の気液界面Aにおける金属Naの蒸気圧PNa1は、混合融液102から蒸発する金属Naの蒸気圧PNa−Gaに略一致する。
この結果、反応容器103外への金属Naの拡散を防止した上で、混合融液102中における金属Naと金属Gaとの混合比を略一定に保持できるとともに、窒素原料の安定供給を両立させることが可能となる。そして、安定したGaN結晶の成長が継続され、低コストで、高品質、大型、及び均質のGaN結晶を製造することができる。従って、従来のフラックス法より高品質で大型のIII族窒化物結晶を成長させることが可能となる。
その他、実施の形態1,2と同じである。
[実施の形態8]
図30は、実施の形態8によるGaN結晶の製造装置の構成を示す概略図である。図30を参照して、実施の形態8による製造装置100Jは、図10に示す製造装置100Cのバルブ120をバルブ130に代え、ヒータ140を追加したものであり、その他は、製造装置100Cと同じである。
バルブ130およびヒータ140については、実施の形態6において説明したとおりである。
次に、図31から図33を参照して、製造装置100JによるGaN結晶の製造方法について説明する。
(1)各バルブをいずれも閉状態とする。
(2)反応容器103およびガス供給管104を各配管から切り離し、アルゴン雰囲気のグローブボックス内に入れる。
(3)反応容器103から融液保持容器101を取り出し、融液保持容器101内に原料のGaとフラックスのNaとを入れる。ここでは、一例としてNaとGaのモル比率を5:5とした。
(4)融液保持容器101を反応容器103内の所定位置に収容する。この場合、上述した実施の形態6,7と異なり、ガス供給管104内に溶融Naを入れない状態において、融液保持用器101を反応容器103内に収容する。
(5)反応容器103のふたを閉じる。
(6)反応容器103およびガス供給管104をグローブボックスから出し、一例として図31に示されるように、各配管と接続する。このとき、各ガス供給管内に空気が残留しないように、例えば窒素ガスを流しながら接続する。これにより、ガス供給管内は窒素ガスで満たされることとなる。
(7)真空ポンプ116を稼動させる。
(8)バルブ115を開状態とする。これにより、反応容器103内の空間部分107に含まれるアルゴンガスが排出される。
(9)圧力センサ108を参照し、反応容器103内の空間部分107の圧力が所定の圧力に到達すると、バルブ115を閉状態とする。
(10)バルブ130を開状態とし、反応容器103内に窒素ガスを供給する。このとき、金属Naがガス供給管104内に溜まっていないので、窒素ガスは、ガス供給管104を介して反応容器103内の空間部分107へ供給される。また、圧力センサ108を参照し、反応容器103内の窒素ガスの圧力がほぼ15気圧となるように圧力調整器106を制御する。
(11)ヒータ109,110に通電し、反応容器103内の温度を800℃まで昇温する。また、ヒータ111,140に通電し、ガス供給管104の立ち上がり部104Aを特定温度Tsp1に加熱し、ガス供給管104の立ち上がり部104Bを特定温度Tsp2に加熱する。そして、反応容器103内の空間部分107の温度が800℃になると、反応容器103内の空間部分107の圧力は40気圧となる。この昇温過程の560℃以上の温度では、融液保持容器101内の金属Naと金属Gaは、完全に混合融液となる。
ヒータ109,110,111,140に通電を開始した時点では、図31に示すように、混合融液102が融液保持容器101に保持され、ガス供給管104には、溶融Naが溜まっていない状態である。
その後、融液保持容器101および反応容器103の温度が800℃に近づくに従って混合融液102から蒸発する金属Naの量が増加し、混合融液102から蒸発した金属Naは、金属Naが液体状態で存在し得るガス供給管104内に溜まる。そして、この時点においては、図32に示すように、ガス供給管104内に溜まった溶融Na122は、ガス供給管104内に2つの気液界面A,Bを有する。ここで、反応容器103内の空間部分107の圧力とガス供給管104内の空間部分113の圧力は互いにほぼ等しいので、気液界面AのレベルL1と気液界面BのレベルL2とは互いにほぼ一致している。
そして、ガス供給管104の立ち上がり部104Aは、特定温度Tsp1に加熱され、ガス供給管104の立ち上がり部104Bは、特定温度Tsp2に加熱されているので、気液界面Aにおける金属Naの蒸気圧PNa1は、混合融液102から蒸発する金属Naの蒸気圧PNa−Gaに略一致している。蒸気圧PNa1が蒸気圧PNa−Gaに略一致していることは、溶融Na122から混合融液102への金属Naの気相輸送が混合融液102から溶融Na122への金属Naの気相輸送と平衡状態に達していることを意味し、混合融液102からの金属Naの減少が防止される。
また、気液界面Bにおける金属Naの蒸気圧PNa2は、金属Naが溶融Na122から実質的に蒸発しない蒸気圧に保持されている。
従って、ガス供給管104内に保持された溶融Na122の気液界面Aは、混合融液102からの金属Naの減少を防止する温度に設定され、溶融Na122の気液界面Bは、溶融Na122からの金属Naの蒸発が実質的に抑制される温度に設定される。
なお、この反応容器103およびガス供給管104の昇温過程では、反応容器103内の空間107の圧力とガス供給管104の窒素ボンベ側の空間113の圧力とがほぼ同じとなるように、圧力調整器106により圧力制御しながら40気圧まで昇圧する。
(12)反応容器103内の温度が800℃になると、反応容器103内の温度を800℃に保持し、反応容器103内の空間107の圧力を40気圧に保持する。これにより、融液保持容器101内の混合融液102中でIII族窒化物であるGaN結晶が成長を始める。
そして、GaN結晶の成長進行に伴い、その窒素原料となる反応容器103内の空間107にある窒素ガスが消費され、空間107の圧力が低下する。反応容器103内の空間107の圧力が低下することにより、一例として図33に示されるように、ガス供給管104内の空間113と反応容器103内の空間107との差圧により、溶融Na122は反応容器103内に移動する。この結果、気液界面Aは上昇し、気液界面Bは反応容器103とガス供給管104との境界付近まで移動する。このとき、窒素ガスは泡状となって溶融Na122内を上昇し、反応容器103内の空間107に到達する。あるいは、ガス供給管104内の空間113と反応容器103内の空間107とが連続的につながり、反応容器103内の空間107に窒素ガスが供給される。このようにして、ガス供給管104内の空間113の圧力と反応容器103内の空間107の圧力とが互いにほぼ等しくなるまで、窒素ガスボンベ105から反応容器103内の空間107に窒素ガスが供給される。ガス供給管104内の空間113の圧力と反応容器103内の空間107の圧力とが互いにほぼ等しくなると、気液界面Aのレベルと気液界面Bのレベルとは互いにほぼ等しくなる。結晶成長が進行する過程で、図32に示される状態と図33に示される状態とが繰り返されて、反応容器103内の空間107に窒素ガスが供給されることとなる。
このとき、気液界面Aの温度は、溶融Na122から混合融液102への金属Naの気相輸送が混合融液102から溶融Na122への金属Naの気相輸送と平衡になる特定温度Tsp1に設定されている。従って、反応容器103内の空間107は、Na蒸気と窒素ガスの混合雰囲気となっている。一方、気液界面Bの温度は、前述したように、Naの実質的蒸発が発生しない温度に維持されているため、Na蒸気圧は小さく、気液界面BからNaが上流(窒素ボンベ105側)に拡散することは無視できる。なお、ガス供給管104内の溶融Na122が反応容器103内に移動して、気液界面Bが反応容器103付近まで移動しても、気液界面Bから拡散するNa蒸気はガス供給管104の温度制御された領域に付着して、そこで液化されるため、反応容器103内の空間107への窒素ガスの導入に影響を与えることはない。
そして、製造装置100Jにおいては、図6に示す領域REG1,REG2,REG3に含まれる窒素ガス圧および結晶成長温度を用いて各種のGaN結晶の製造が行なわれる。
以上説明したように、実施の形態8によると、反応容器103内の温度が上昇すると、混合融液102中のNaの一部が蒸発し、ガス供給管104内で凝縮する。そして、ガス供給管104内の空間113と反応容器103内の空間107とが溶融Na122によって遮断される。その後、GaN結晶の成長工程では、ガス供給管104内の空間113の圧力と反応容器103内の空間107の圧力とが互いにほぼ等しいときには、両空間は溶融Na122により遮断されており、反応容器103内の窒素圧力が低下したときに、反応容器103内に窒素ガスが導入される。
また、ガス供給管104内に保持された溶融Na122の反応容器103側の気液界面Aにおける金属Naの蒸気圧PNa1は、混合融液102から蒸発する金属Naの蒸気圧PNa−Gaに略一致する。
この結果、反応容器103外への金属Naの拡散を防止した上で、混合融液102中における金属Naと金属Gaとの混合比を略一定に保持できるとともに、窒素原料の安定供給を両立させることが可能となる。そして、安定したGaN結晶の成長が継続され、低コストで、高品質、大型、及び均質のGaN結晶を製造することができる。従って、従来のフラックス法より高品質で大型のIII族窒化物結晶を成長させることが可能となる。
その他、実施の形態1,3と同じである。
[実施の形態9]
図34は、実施の形態9によるGaN結晶の製造装置の構成を示す概略図である。図34を参照して、実施の形態9による製造装置100Kは、図14に示す製造装置100Dのバルブ120をバルブ130に代え、ヒータ140を追加したものであり、その他は、製造装置100Dと同じである。
バルブ130およびヒータ140については、実施の形態6において説明したとおりである。
次に、図35および図36を参照して、製造装置100KによるGaN結晶の製造方法について説明する。
(1)各バルブをいずれも閉状態とする。
(2)反応容器103およびガス供給管104を各配管から切り離し、アルゴン雰囲気のグローブボックス内に入れる。
(3)反応容器103から融液保持容器101を取り出し、融液保持容器101内に原料のGaとフラックスのNaとを入れる。ここでは、一例としてNaとGaのモル比率を5:5とした。
(4)溶融Naをガス供給管104内に入れる。
(5)融液保持容器101を反応容器103内の所定位置に収容する。
(6)反応容器103のふたを閉じる。
(7)反応容器103およびガス供給管104をグローブボックスから出し、各配管と接続する。このとき、各ガス供給管内に空気が残留しないように、例えば窒素ガスを流しながら接続する。これにより、各ガス供給管内は窒素ガスで満たされることとなる。
(8)真空ポンプ116を稼動させる。
(9)バルブ115を開状態とする。これにより、反応容器103内の空間部分107に含まれるアルゴンガスが排出される。
(10)圧力センサ108を参照し、反応容器103内の空間部分107の圧力が所定の圧力に到達すると、バルブ115を閉状態とする。
(11)バルブ118,130を開状態とし、反応容器103内に窒素ガスを供給する。このとき、圧力センサ108を参照し、反応容器103内の窒素ガスの圧力がほぼ15気圧となるように圧力調整器106を制御する。反応容器103内の圧力が15気圧になったら、バルブ118を閉状態にする。以上の工程は、ガス供給管104内の溶融Na122が液体状態を保持する温度で、かつ、Naの実質的蒸発が抑制される温度(たとえば、100℃)で行われる。
(12)ヒータ109,110により、反応容器103内の温度を800℃まで昇温する。また、ヒータ111,140に通電し、ガス供給管104の立ち上がり部104Aを特定温度Tsp1に加熱し、ガス供給管104の立ち上がり部104Bを特定温度Tsp2に加熱する。そして、反応容器103内の空間部分107の温度が800℃になると、反応容器103内の空間部分107の圧力は40気圧となる。この昇温過程の560℃以上の温度では、融液保持容器101内の金属Naと金属Gaは、完全に混合融液となる。
この時点においては、図35に示すように、溶融Na122は、ガス供給管104内に2つの気液界面A,Bを有することとなる。そして、フロート601は、溶融Na122の気液界面B上に浮かんでいる。ここで、反応容器103内の空間部分107の圧力とガス供給管104内の空間部分113の圧力は互いにほぼ等しいので、気液界面AのレベルL1と気液界面BのレベルL2とは互いにほぼ一致している。
そして、気液界面Aにおける金属Naの蒸気圧PNa1は、混合融液102から蒸発する金属Naの蒸気圧PNa−Gaに略一致している。蒸気圧PNa1が蒸気圧PNa−Gaに略一致していることは、溶融Na122から混合融液102への金属Naの気相輸送が混合融液102から溶融Na122への金属Naの気相輸送と平衡状態に達していることを意味し、混合融液102からの金属Naの減少が防止される。
また、気液界面Bにおける金属Naの蒸気圧PNa2は、金属Naが溶融Na122から実質的に蒸発しない蒸気圧に保持されている。
従って、ガス供給管104内に保持された溶融Na122の気液界面Aは、混合融液102からの金属Naの減少を防止する温度に設定され、溶融Na122の気液界面Bは、溶融Na122からの金属Naの蒸発が実質的に抑制される温度に設定される。
なお、この反応容器103およびガス供給管104の昇温過程では、反応容器103内の空間107の圧力とガス供給管104の窒素ボンベ側の空間113の圧力とがほぼ同じとなるように、圧力調整器106により圧力制御しながら40気圧まで昇圧する。
(13)反応容器103内の温度を800℃に保持し、反応容器103内の空間107の圧力を40気圧に保持する。これにより、融液保持容器101内の混合融液102中でIII族窒化物であるGaN結晶が成長を始める。
そして、GaN結晶の成長進行に伴い、その窒素原料となる反応容器103内の空間107にある窒素ガスが消費され、空間107の圧力が低下する。反応容器103内の空間107の圧力が低下することにより、一例として図36に示されるように、ガス供給管104内の空間113と反応容器103内の空間107との差圧により、溶融Na122は反応容器103内に移動する。この結果、気液界面Aは上昇し、気液界面Bは反応容器103とガス供給管104との境界付近まで移動する。このとき、窒素ガスは泡状となって溶融Na122内を上昇し、反応容器103内の空間107に到達する。あるいは、ガス供給管104内の空間113と反応容器103内の空間107とが連続的につながり、反応容器103内の空間107に窒素ガスが供給される。このようにして、ガス供給管104内の空間113の圧力と反応容器103内の空間107の圧力とが互いにほぼ等しくなるまで、窒素ガスボンベ105から反応容器103内の空間107に窒素ガスが供給される。ガス供給管104内の空間113の圧力と反応容器103内の空間107の圧力とが互いにほぼ等しくなると、気液界面Aのレベルと気液界面Bのレベルとは互いにほぼ等しくなる。結晶成長が進行する過程で、図35に示される状態と図36に示される状態とが繰り返されて、反応容器103内の空間107に窒素ガスが供給されることとなる。
このとき、気液界面Aの温度は、溶融Na122から混合融液102への金属Naの気相輸送が混合融液102から溶融Na122への金属Naの気相輸送と平衡になる特定温度Tsp1に設定されている。従って、反応容器103内の空間107は、Na蒸気と窒素ガスの混合雰囲気となっている。一方、気液界面Bの温度は、前述したように、Naの実質的蒸発が発生しない温度に維持されているため、Na蒸気圧は小さく、気液界面BからNaが上流(窒素ボンベ105側)に拡散することは無視できる。なお、ガス供給管104内の溶融Na122が反応容器103内に移動して、気液界面Bが反応容器103付近まで移動しても、気液界面Bから拡散するNa蒸気はガス供給管104の温度制御された領域に付着して、そこで液化されるため、反応容器103内の空間107への窒素ガスの導入に影響を与えることはない。
そして、製造装置100Kにおいては、図6に示す領域REG1,REG2,REG3に含まれる窒素ガス圧および結晶成長温度を用いて各種のGaN結晶の製造が行なわれる。
以上説明したように、実施の形態9によると、ガス供給管104内の空間113の圧力と反応容器103内の空間107の圧力とが互いにほぼ等しいときには、両空間は溶融Na122により遮断されており、反応容器103内の窒素圧力が低下したときに、窒素ガスが反応容器103内に導入される。
また、ガス供給管104内に保持された溶融Na122の反応容器103側の気液界面Aにおける金属Naの蒸気圧PNa1は、混合融液102から蒸発する金属Naの蒸気圧PNa−Gaに略一致する。
この結果、反応容器103外への金属Naの拡散を防止した上で、混合融液102中における金属Naと金属Gaとの混合比を略一定に保持できるとともに、窒素原料の安定供給を両立させることが可能となる。そして、安定したGaN結晶の成長が継続され、低コストで、高品質、大型、及び均質のGaN結晶を製造することができる。従って、従来のフラックス法より高品質で大型のIII族窒化物結晶を成長させることが可能となる。
その他は、実施の形態1,4と同じである。
[実施の形態10]
図37は、実施の形態10によるGaN結晶の製造装置の構成を示す概略図である。図37を参照して、実施の形態10による製造装置100Lは、図17に示す製造装置100Eのバルブ120,708をそれぞれバルブ130,710に代え、ヒータ141〜143を追加したものであり、その他は、製造装置100Eと同じである。
バルブ130については、実施の形態6において説明したとおりである。バルブ710は、圧力調整器706の近傍でガス供給管701に装着される。そして、バルブ710は、ガスボンベ705からのアルゴンガスを反応容器103側へ供給し、またはガスボンベ705からのアルゴンガスの反応容器103側への供給を停止する。
ヒータ141は、ガス供給管104の立ち上がり部104Aに対向して配置され、ヒータ142は、ガス供給管104の立ち上がり部104Aおよびガス供給管701の立ち上がり部701Aに対向して配置され、ヒータ143は、ガス供給管701の立ち上がり部701Aに対向して配置される。
そして、ヒータ141,142は、ガス供給管104の一部に溜められた溶融Naから蒸発する金属Naの蒸気圧が融液保持容器101内の混合融液102から蒸発する金属Naの蒸気圧に略一致する特定温度Tsp1にガス供給管104の立ち上がり部104Aを加熱する。また、ヒータ142,143は、ガス供給管701の一部に溜められた溶融Naから蒸発する金属Naの蒸気圧が融液保持容器101内の混合融液102から蒸発する金属Naの蒸気圧に略一致する特定温度Tsp1にガス供給管701の立ち上がり部701Aを加熱する。
次に、図38から図40を参照して、製造装置100LによるGaN結晶の製造方法について説明する。なお、製造装置100Lにおいては、反応容器103およびガス供給管104,701は、図38に示されるように、各バルブを含んで各配管から切り離し可能となっており、反応容器103およびガス供給管104,701を不図示のグローブボックスの中に移動させて作業することが可能である。
(1)各バルブをいずれも閉状態とする。
(2)反応容器103およびガス供給管104,701を各配管から切り離し、アルゴン雰囲気のグローブボックス内に入れる。
(3)反応容器103から融液保持容器101を取り出し、融液保持容器101内に原料のGaとフラックスのNaとを入れる。ここでは、一例としてNaとGaのモル比率を5:5とした。
(4)溶融Na122,712をガス供給管104,701内に入れる。
(5)融液保持容器101を反応容器103内の所定位置に収容する。
(6)反応容器103のふたを閉じる。
(7)反応容器103およびガス供給管104,701をグローブボックスから出し、各配管と接続する。このとき、窒素ガスのガス供給管104内に空気が残留しないように、例えば窒素ガスを流しながら接続する。これにより、窒素ガスのガス供給管104内は窒素ガスで満たされることとなる。また、アルゴンガスのガス供給管701内に空気が残留しないように、例えばアルゴンガスを流しながら接続する。これにより、アルゴンガスのガス供給管701内はアルゴンガスで満たされることとなる。
(8)真空ポンプ116を稼動させる。
(9)バルブ115を開状態とする。これにより、反応容器103内の空間部分107に含まれるアルゴンガスが排出される。
(10)圧力センサ108を参照し、反応容器103内の空間部分107の圧力が所定の圧力に到達すると、バルブ115を閉状態とする。
(11)バルブ118,130を開状態とし、反応容器103内に窒素ガスを供給する。このとき、圧力センサ108を参照し、反応容器103内の窒素ガスの圧力がほぼ15気圧となるように圧力調整器106を制御する。反応容器103内の圧力が15気圧になったら、バルブ118を閉状態にする。以上の工程は、ガス供給管104内の溶融Na122およびガス供給管701内の溶融Na712が液体状態を保持する温度で、かつ、Naの実質的蒸発が抑制される温度(たとえば、100℃)で行われる。
(12)ヒータ109,110により、反応容器103内の温度を800℃まで昇温する。また、ヒータ111,141〜143,703に通電し、ガス供給管104の立ち上がり部104Aおよびガス供給管701の立ち上がり部701Aを特定温度Tsp1に加熱し、ガス供給管104の立ち上がり部104Bを特定温度Tsp2に加熱し、ガス供給管701の立ち上がり部701Bを特定温度Tsp2に加熱する。そして、反応容器103内の空間部分107の温度が800℃になると、反応容器103内の空間部分107の圧力は40気圧となる。この昇温過程の560℃以上の温度では、融液保持容器101内の金属Naと金属Gaは、完全に混合融液となる。
この時点においては、図39に示すように、溶融Na122は、ガス供給管104内に2つの気液界面A,Bを有し、溶融Na712は、ガス供給管701内に2つの気液界面C,Dを有する。ここで、反応容器103内の空間部分107の圧力とガス供給管104内の空間部分113の圧力は互いにほぼ等しいので、気液界面AのレベルL1と気液界面BのレベルL2とは互いにほぼ一致している。また、反応容器103内の空間部分107の圧力とガス供給管701内の空間部分702の圧力は互いにほぼ等しいので、気液界面CのレベルL3と気液界面DのレベルL4とは互いにほぼ一致している。
そして、気液界面Aにおける金属Naの蒸気圧PNa1は、混合融液102から蒸発する金属Naの蒸気圧PNa−Gaに略一致し、気液界面Cにおける金属Naの蒸気圧PNa3は、混合融液102から蒸発する金属Naの蒸気圧PNa−Gaに略一致している。蒸気圧PNa1,PNa3が蒸気圧PNa−Gaに略一致していることは、溶融Na122から混合融液102への金属Naの気相輸送が混合融液102から溶融Na122への金属Naの気相輸送と平衡状態に達しているとともに、溶融Na712から混合融液102への金属Naの気相輸送が混合融液102から溶融Na712への金属Naの気相輸送と平衡状態に達していることを意味し、混合融液102からの金属Naの減少が防止される。
また、気液界面Bにおける金属Naの蒸気圧PNa2および気液界面Dにおける金属Naの蒸気圧PNa4は、金属Naがそれぞれ溶融Na122,712から実質的に蒸発しない蒸気圧に保持されている。
従って、ガス供給管104内に保持された溶融Na122の気液界面Aおよびガス供給管701内に保持された溶融Na712の気液界面Cは、混合融液102からの金属Naの減少を防止する温度に設定され、溶融Na122の気液界面Bは、溶融Na122からの金属Naの蒸発が実質的に抑制される温度に設定され、溶融Na712の気液界面Dは、溶融Na712からの金属Naの蒸発が実質的に抑制される温度に設定される。
なお、この反応容器103およびガス供給管104,701の昇温過程では、反応容器103内の空間107の圧力とガス供給管104の窒素ボンベ側の空間113の圧力およびガス供給管701のアルゴンボンベ705側の空間702の圧力とがほぼ同じとなるように、圧力調整器106及び圧力調整器706により圧力制御しながら反応容器103内の空間部分107の圧力を40気圧まで昇圧する。
(13)反応容器103内の温度を800℃に保持し、反応容器103内の空間107の圧力を40気圧に保持する。これにより、融液保持容器101内の混合融液102中でIII族窒化物であるGaN結晶が成長を始める。
そして、GaN結晶の成長進行に伴い、その窒素原料となる反応容器103内の空間107にある窒素ガスが消費され、空間107の圧力が低下する。反応容器103内の空間107の圧力が低下することにより、一例として図40に示されるように、ガス供給管104内の空間113と反応容器103内の空間107との差圧、及びガス供給管701内の空間702と反応容器103内の空間107との差圧により、溶融Na122,712は、反応容器103内に移動する。この結果、気液界面A,Cは上昇し、気液界面Bは反応容器103とガス供給管104との境界付近まで移動し、気液界面Dは反応容器103とガス供給管701との境界付近まで移動する。このとき、窒素ガスは泡状となって溶融Na122内を上昇し、反応容器103内の空間107に到達する。あるいは、ガス供給管104内の空間113と反応容器103内の空間107とが連続的につながり、反応容器103内の空間107に窒素ガスが供給される。また、アルゴンガスは泡状となって溶融Na712内を上昇し、反応容器103内の空間107に到達する。あるいは、ガス供給管701内の空間702と反応容器103内の空間107とが連続的につながり、反応容器103内の空間107にアルゴンガスが供給される。このようにして、ガス供給管104内の空間113の圧力とガス供給管701内の空間702の圧力と反応容器103内の空間107の圧力とが互いにほぼ等しくなるまで、窒素ガスボンベ105から反応容器103の空間107に窒素ガスが供給され、アルゴンガスボンベ705から反応容器103の空間107にアルゴンガスが供給される。ガス供給管104内の空間113の圧力とガス供給管701内の空間702の圧力と反応容器103内の空間107の圧力とが互いにほぼ等しくなると、気液界面Aのレベルと気液界面Bのレベルと気液界面Cのレベルと気液界面Dのレベルとは互いにほぼ等しくなる。結晶成長が進行する過程で、図39に示される状態と図40に示される状態とが繰り返されて、反応容器103内の空間107に窒素ガス及びアルゴンガスが供給されることとなる。
このとき、気液界面Aの温度は、溶融Na122から混合融液102への金属Naの気相輸送が混合融液102から溶融Na122への金属Naの気相輸送と平衡になる特定温度Tsp1に設定されており、気液界面Cの温度は、溶融Na712から混合融液102への金属Naの気相輸送が混合融液102から溶融Na712への金属Naの気相輸送と平衡になる特定温度Tsp1に設定されている。従って、反応容器103内の空間107は、Na蒸気と窒素ガスの混合雰囲気となっている。一方、気液界面Bの温度は、前述したように、Naの実質的蒸発が発生しない温度に維持されているため、Na蒸気圧は小さく、気液界面BからNaが上流(窒素ボンベ105側)に拡散することは無視できる。また、気液界面Dの温度も、前述したように、Naの実質的蒸発が発生しない温度に維持されているため、Na蒸気圧は小さく、気液界面DからNaが上流(アルゴンボンベ705側)に拡散することは無視できる。なお、ガス供給管104内の溶融Na122が反応容器103内に移動して、気液界面Bが反応容器103付近まで移動しても、気液界面Bから拡散するNa蒸気はガス供給管104の温度制御された領域に付着して、そこで液化されるため、反応容器103内の空間107への窒素ガスの導入に影響を与えることはない。
そして、製造装置100Lにおいては、図6に示す領域REG1,REG2,REG3に含まれる窒素ガス圧および結晶成長温度を用いて各種のGaN結晶の製造が行なわれる。
以上説明したように、実施の形態10によると、ガス供給管104内の空間113の圧力と反応容器103内の空間107の圧力とが互いにほぼ等しいときには、両空間は溶融Na122により遮断されており、反応容器103内の窒素圧力が低下したときに、窒素ガスが反応容器103内に導入される。
また、ガス供給管104内に保持された溶融Na122の反応容器103側の気液界面Aにおける金属Naの蒸気圧PNa1は、混合融液102から蒸発する金属Naの蒸気圧PNa−Gaに略一致するとともに、ガス供給管701内に保持された溶融Na712の反応容器103側の気液界面Cにおける金属Naの蒸気圧PNa3は、混合融液102から蒸発する金属Naの蒸気圧PNa−Gaに略一致する。
この結果、反応容器103外への金属Naの拡散を防止した上で、混合融液102中における金属Naと金属Gaとの混合比を略一定に保持できるとともに、窒素原料の安定供給を両立させることが可能となる。そして、安定したGaN結晶の成長が継続され、低コストで、高品質、大型、及び均質のGaN結晶を製造することができる。従って、従来のフラックス法より高品質で大型のIII族窒化物結晶を成長させることが可能となる。
その他は、実施の形態1,5と同じである。
上述した各実施の形態によると、従来実現できなかった高性能かつ低コストなIII族窒化物半導体デバイス、例えば発光ダイオード、半導体レーザ、フォトダイオード等の光デバイス、トランジスタ等の電子デバイスが実現可能となる。
なお、上述した各実施の形態では、フラックスとしてNaを用いる場合について説明したが、これに限らず、例えば、アルカリ金属のLi、Na、K等や、アルカリ土類金属のMg、Ca、Sr等を用いても良い。
また、上記各実施形態では、窒素を含む物質として、窒素ガスを用いる場合について説明したが、これに限らず、例えば、アジ化ナトリウム、アンモニアなどの窒素を構成元素に含む化合物を用いても良い。
また、上記各実施形態では、III族金属としてGaを用いる場合について説明したが、これに限らず、例えば、B、Al、In等を用いても良い。なお、硼素(B)は金属ではないが、III族窒化物としてBNを構成するIII族物質として、本発明においては適応可能である。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
100A,100B,100C,100D,100E,100F,100G,100H,100J,100K,100L 製造装置、101 融液保持容器(保持容器)、102 混合融液(融液)、103 反応容器、104,306 ガス供給管(配管の一部)、109 ヒータ(加熱手段の一部)、110 ヒータ(加熱手段の一部)、111 ヒータ(温度勾配付与手段)、112,122,712 溶融Na(液体)、301 圧力容器。