本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
図1は、この発明の実施の形態による結晶製造装置の概略断面図である。図1を参照して、この発明の実施の形態による結晶製造装置100は、坩堝10と、反応容器20と、配管30,200と、ベローズ40と、支持装置50と、融液保持部材60と、加熱装置70,80と、温度センサー71,81と、ガス供給管90,110,250と、バルブ120,121,160と、圧力調整器130と、ガスボンベ140,270と、排気管150と、真空ポンプ170と、圧力センサー180と、金属融液190と、熱電対210と、上下機構220と、振動印加装置230と、振動検出装置240と、流量計260と、温度制御装置280とを備える。
坩堝10は、略円柱形状を有し、ボロンナイトライド(BN)またはSUS316Lからなる。反応容器20は、坩堝10と所定の間隔を隔てて坩堝10の周囲に配置される。すなわち、反応容器20は、坩堝10を内部に含む。そして、反応容器20は、本体部21と、蓋部22とからなる。本体部21および蓋部22の各々は、SUS316Lからなり、本体部21と蓋部22との間は、メタルオーリングによってシールされる。
配管30は、重力方向DR1において、一方端が坩堝10の下側で反応容器20に連結され、他方端がガス供給管110に連結される。
ベローズ40は、重力方向DR1において、坩堝10の上側で反応容器20に連結される。支持装置50は、中空の筒形状からなり、一部がベローズ40を介して反応容器20の空間23内へ挿入される。
融液保持部材60は、たとえば、金属およびセラミック等からなり、反応容器20と配管30との連結部よりも下側の配管30内に設置される。
加熱装置70は、反応容器20の外周面20Aを囲むように配置される。加熱装置80は、反応容器20の底面20Bに対向して配置される。温度センサー71,81は、それぞれ、加熱装置70,80に近接して配置される。
ガス供給管90は、一方端がバルブ120を介して反応容器20に連結され、他方端が圧力調整器130を介してガスボンベ140に連結される。ガス供給管110は、一方端がバルブ121を介して配管30に連結され、他方端がガス供給管90に連結される。
バルブ120は、反応容器20の近傍でガス供給管90に装着される。圧力調整器130は、ガスボンベ140の近傍でガス供給管90に装着される。ガスボンベ140は、ガス供給管90に連結される。
排気管150は、一方端がバルブ160を介して反応容器20に連結され、他方端が真空ポンプ170に連結される。バルブ160は、反応容器20の近傍で排気管150に装着される。真空ポンプ170は、排気管150に連結される。
圧力センサー180は、反応容器20に取り付けられる。金属融液190は、金属ナトリウム(金属Na)融液からなり、融液保持部材60によって配管30内に保持される。
配管200および熱電対210は、支持装置50の内部に挿入される。上下機構220は、ベローズ40の上側において支持装置50に取り付けられる。ガス供給管250は、一方端が配管200に連結され、他方端が流量計260を介してガスボンベ270に連結される。流量計260は、ガスボンベ270の近傍でガス供給管250に装着される。ガスボンベ270は、ガス供給管250に連結される。
坩堝10は、金属Naと、金属ガリウム(金属Ga)とを含む混合融液290を保持する。反応容器20は、坩堝10の周囲を覆う。配管30は、金属融液190を保持する。ベローズ40は、支持装置50を保持するとともに、反応容器20の内部と外部とを遮断する。また、ベローズ40は、支持装置50の重力方向DR1への移動に伴って重力方向DR1に伸縮する。支持装置50は、反応容器20内に挿入された一方端にGaN結晶からなる種結晶5を支持する。
融液保持部材60は、配管30の内壁との間に数十μmの孔が形成されるように外周面に凹凸構造を有し、配管30内の空間31へ供給された窒素ガスを金属融液190の方向へ通過させ、窒素ガスを金属融液190を介して空間23内へ供給する。また、融液保持部材60は、金属融液190の表面張力により金属融液190を配管30内に保持する。
加熱装置70は、ヒーターと、電流源とからなる。そして、加熱装置70は、温度制御装置280からの制御信号CTL1に応じて電流源によってヒーターに電流を流し、反応容器20の外周面20Aから坩堝10および反応容器20を結晶成長温度に加熱する。温度センサー71は、加熱装置70のヒーターの温度T1を検出し、その検出した温度T1を温度制御装置280へ出力する。
加熱装置80も、ヒーターと、電流源とからなる。そして、加熱装置80は、温度制御装置280からの制御信号CTL2に応じて電流源によってヒーターに電流を流し、反応容器20の底面20Bから坩堝10および反応容器20を結晶成長温度に加熱する。温度センサー81は、加熱装置80のヒーターの温度T2を検出し、その検出した温度T2を温度制御装置280へ出力する。
ガス供給管90は、ガスボンベ140から圧力調整器130を介して供給された窒素ガスをバルブ120を介して反応容器20内へ供給する。ガス供給管110は、ガスボンベ140から圧力調整器130を介して供給された窒素ガスをバルブ121を介して配管30内へ供給する。
バルブ120は、ガス供給管90内の窒素ガスを反応容器20内へ供給し、または窒素ガスの反応容器20内への供給を停止する。圧力調整器130は、ガスボンベ140からの窒素ガスを所定の圧力にしてガス供給管90,110に供給する。
ガスボンベ140は、窒素ガスを保持する。排気管150は、反応容器20内の気体を真空ポンプ170へ通過させる。バルブ160は、反応容器20内と排気管150とを空間的に繋げ、または反応容器20内と排気管150とを空間的に遮断する。真空ポンプ170は、排気管150およびバルブ160を介して反応容器20内の真空引きを行なう。
圧力センサー180は、反応容器20内の圧力を検出する。金属融液190は、融液保持部材60を介して導入された窒素ガスを空間23へ供給する。
配管200は、ガス供給管250から供給された窒素ガスを一方端から支持装置50内へ放出して種結晶5を冷却する。熱電対210は、種結晶5の温度T3を検出し、その検出した温度T3を温度制御装置280へ出力する。
上下機構220は、振動検出装置240からの振動検出信号BDSに応じて、後述する方法によって、種結晶5が空間23と混合融液290との気液界面3に接するように支持装置50を上下する。
振動印加装置230は、たとえば、圧電素子からなり、所定の周波数を有する振動を支持装置50に印加する。振動検出装置240は、たとえば、加速度ピックアップからなり、支持装置50の振動を検出するとともに、支持装置50の振動を示す振動検出信号BDSを上下機構220へ出力する。
ガス供給管250は、ガスボンベ270から流量計260を介して供給された窒素ガスを配管200へ供給する。流量計260は、温度制御装置280からの制御信号CTL3に応じて、ガスボンベ270から供給された窒素ガスの流量を調整してガス供給管250へ供給する。ガスボンベ270は、窒素ガスを保持する。
温度制御装置280は、温度T1,T2,T3をそれぞれ温度センサー71,81および熱電対210から受け、その受けた温度T1,T2,T3に基づいて制御信号CTL1〜CTL3を生成する。そして、温度制御装置280は、その生成した制御信号CTL1,CTL2をそれぞれ加熱装置70,80へ出力し、制御信号CTL3を流量計260へ出力する。
図2は、図1に示す融液保持部材60の斜視図である。図2を参照して、融液保持部材60は、栓61と、凸部62とを含む。栓61は、略円柱形状からなる。凸部62は、略半円形の断面形状を有し、栓61の外周面に栓61の長さ方向DR2に沿って形成される。
図3は、融液保持部材60の配管30への取付状態を示す平面図である。図3を参照して、凸部62は、栓61の円周方向に複数個形成され、複数の凸部62は、数十μmの間隔dで形成される。また、凸部62は、数十μmの高さHを有する。融液保持部材60の複数の凸部62は、配管30の内壁30Aに接する。これにより、融液保持部材60は、配管30の内壁30Aに嵌合する。
凸部62が数十μmの高さHを有し、数十μmの間隔dで栓61の外周面に配置される結果、融液保持部材60が配管30の内壁30Aに嵌合した状態では、融液保持部材60と配管30の内壁30Aとの間に、直径が略数十μmである空隙63が複数個形成される。
この空隙63は、栓61の長さ方向DR2に窒素ガスを通過させるとともに、金属融液190を金属融液190の表面張力によって保持し、金属融液190が栓61の長さ方向DR2に通過するのを阻止する。
図4は、図1に示す支持装置50、配管200および熱電対210の拡大図である。図4を参照して、支持装置50は、筒状部材51と、固定部材52,53とを含む。筒状部材51は、略円形の断面形状を有する。固定部材52は、略L字形状の断面形状を有し、筒状部材51の一方端511側において筒状部材51の外周面51Aおよび底面51Bに固定される。また、固定部材53は、略L字形状の断面形状を有し、筒状部材51の一方端511側において固定部材52と対称に配置されるように筒状部材51の外周面51Aおよび底面51Bに固定される。その結果、筒状部材51および固定部材52,53によって囲まれた領域には、空間部54が形成される。
配管200は、略円形の断面形状を有し、筒状部材51の内部に配置される。この場合、配管200の底面200Aは、筒状部材51の底面51Bに対向するように配置される。そして、配管200の底面200Aには、複数の空孔201が形成される。配管200内へ供給された窒素ガスは、複数の空孔201を介して筒状部材51の底面51Bに吹き付けられる。
熱電対210は、一方端210Aが筒状部材51の底面51Bに接するように筒状部材51の内部に配置される(図4の(a)参照)。
そして、種結晶5は、空間部54に嵌合する形状を有し、空間部54に嵌合することにより支持装置50によって支持される。この場合、種結晶5は、筒状部材51の底面51Bに接する(図4の(b)参照)。
したがって、種結晶5と筒状部材51との間の熱伝導率が高くなる。その結果、熱電対210によって種結晶5の温度を検出できるとともに、配管200から筒状部材51の底面51Bに吹き付けられた窒素ガスによって種結晶5を容易に冷却できる。
なお、この実施の形態においては、種結晶自体が種結晶5のように支持装置50に嵌合可能な形状であるが、支持装置50と接する構造であれば、種結晶5の形状からなるアダプターを介して六角柱状の種結晶が保持されていてもよい。
図5は、図1に示す上下機構220の構成を示す概略図である。図5を参照して、上下機構220は、凹凸部材221と、歯車222と、軸部材223と、モータ224と、制御部225とを含む。
凹凸部材221は、略三角形状の断面形状からなり、筒状部材51の外周面51Aに固定される。歯車222は、軸部材223の一方端に固定され、凹凸部材221と噛み合う。軸部材223は、その一方端が歯車222に連結され、他方端がモータ224のシャフト(図示せず)に連結される。
モータ224は、制御部225からの制御に従って歯車222を矢印226または227の方向へ回転させる。制御部225は、振動検出装置240からの振動検出信号BDSに基づいて、歯車222を矢印226または227の方向へ回転させるようにモータ224を制御する。
歯車222が矢印226の方向へ回転すれば、支持装置50は、重力方向DR1において上方向へ移動し、歯車222が矢印227の方向へ回転すれば、支持装置50は、重力方向DR1において下方向へ移動する。
したがって、歯車222を矢印226または227の方向へ回転させることは、支持装置50を重力方向DR1において上下させることに相当する。凹凸部材221の重力方向DR1の長さは、支持装置50が種結晶5を上下させる距離に相当する長さである。
図6は、振動検出信号BDSのタイミングチャートである。図6を参照して、振動検出装置240によって検出される振動検出信号BDSは、種結晶5が混合融液290に接していないとき、信号成分SS1からなり、種結晶5が混合融液290に接しているとき、信号成分SS2からなる。
種結晶5が混合融液290に接していないとき、種結晶5は、振動印加装置230により印加された振動によって大きく振動するので、振動検出信号BDSは、振幅が相対的に大きい信号成分SS1からなる。一方、種結晶5が混合融液290に接しているとき、種結晶5は、振動印加装置230から振動が印加されても、混合融液290の粘性によって大きく振動できないので、信号検出信号BDSは、振幅が相対的に小さい信号成分SS2からなる。
再び、図5を参照して、制御部225は、振動検出装置240から振動検出信号BDSを受けると、振動検出信号BDSの信号成分を検出する。そして、制御部225は、その検出した信号成分が信号成分SS1からなるとき、振動検出信号BDSの信号成分が信号成分SS2になるまで、支持装置50を重力方向DR1において降下させるようにモータ224を制御する。
より具体的には、制御部225は、歯車222を矢印227の方向へ回転させるようにモータ224を制御し、モータ224は、制御部225からの制御に従って歯車222を軸部材223を介して矢印227の方向へ回転させる。これによって、支持装置50は、重力方向DR1において下方向へ移動する。
そして、制御部225は、振動検出装置240から受ける振動検出信号BDSの信号成分が信号成分SS1から信号成分SS2へ切換わると、歯車222の回転を停止するようにモータ224を制御し、モータ224は、制御部225からの制御に従って歯車222の回転を停止させる。これによって、支持装置50は、移動を停止し、種結晶5を気液界面3に保持する。
一方、制御部225は、信号成分SS2からなる振動検出信号BDSを振動検出装置240から受けたとき、支持装置50の移動を停止するようにモータ224を制御する。
このように、上下機構220は、振動検出装置240が検出する振動検出信号BDSに基づいて、種結晶5が混合融液290に接するように支持装置50を重力方向DR1に移動させる。
図7は、坩堝10および反応容器20の温度のタイミングチャートである。また、図8は、図7に示すタイミングt1の前後における坩堝10および反応容器20内の状態変化を示す模式図である。さらに、図9は、図7に示す2つのタイミングt1,t2間における坩堝10および反応容器20内の状態を示す模式図である。さらに、図10は、種結晶5の温度と窒素ガスの流量との関係を示す図である。
なお、図7において、直線k1は、坩堝10および反応容器20の温度を示し、曲線k2および直線k3は、種結晶5の温度を示す。
図7を参照して、加熱装置70,80は、直線k1に従って温度が上昇し、かつ、800℃に保持されるように坩堝10および反応容器20を加熱する。
加熱装置70,80が坩堝10および反応容器20を加熱し始めたとき、配管30内には、金属Na6が存在し、坩堝10内には、金属Na6および金属Ga7が存在する(図8の(a)参照)。
そして、坩堝10および反応容器20の温度がタイミングt1において98℃に達すると、坩堝10中の金属Naは溶け、約30℃で既に溶けている金属Gaと混ざり合う。その結果、混合融液290が坩堝10中で生成される。
その後、坩堝10および反応容器20の温度は、タイミングt2において800℃に達する。そして、坩堝10および反応容器20が800℃まで昇温される過程で、融液保持部材60よりも上側の配管30の温度が98℃以上に上昇される。そうすると、配管30内に保持された金属Na6は溶け、金属融液190が配管30内に生成される。そして、融液保持部材60は、金属融液190の表面張力によって金属融液190を保持する。
この場合、金属融液190に接する配管30の部分は、金属融液190から蒸発する金属Naの蒸気圧PNaが混合融液290から蒸発する金属Naの蒸気圧PNa−Gaに略一致する温度に加熱装置80によって昇温される。すなわち、金属融液190に接する配管30の部分は、金属融液190からの金属Naの蒸発と、混合融液290からの金属Naの蒸発とが略平衡になる温度に加熱装置80によって昇温される(図8の(b)参照)。
したがって、金属融液190から混合融液290への金属Naの移動と、混合融液290から金属融液190への金属Naの移動とが略平衡になり、見かけ上、金属融液190と混合融液290との間で金属Naの移動が停止される。その結果、金属融液190および混合融液290からの金属Naの蒸発による混合融液290中の金属Naと金属Gaとの混合比の変動が抑制される。このとき、融液保持部材60の温度が金属Naの融点以上で、かつ、Naの実質的蒸発が生じない温度であれば、配管30の空間31への金属Naの拡散を無視でき、混合融液290中の金属Naと金属Gaとの混合比の変動を一層抑制できる。ここで言うNaの実質的蒸発が生じない温度とは、たとえば、200〜300℃である。200℃におけるNaの蒸気圧は、約1.8×10−2Paであり、300℃におけるNaの蒸気圧は、約1.8Paであり、これ以上の温度であっても、多少の蒸発による拡散はあるが、混合融液290中の金属Naと金属Gaとの混合比の変動を抑制できる。
坩堝10および反応容器20の温度が、タイミングt1において98℃に達し、タイミングt2で800℃に達すると、空間23内の窒素ガス4は、金属融液190(=金属Na融液)および融液保持部材60を介して配管30の空間31内へ拡散することができず、空間23内に閉じ込められる(図9参照)。
また、坩堝10および反応容器20の温度が800℃に達するタイミングt2で、上下機構220は、振動検出装置240からの振動検出信号BDSに基づいて、上述した方法によって支持装置50を上下し、種結晶5を混合融液290に接触させる。
そして、坩堝10および反応容器20の温度が800℃程度の高温状態では、空間23内の窒素ガス4は、金属Naを媒介として混合融液290中に取り込まれる。この場合、混合融液290中の窒素濃度またはGaxNy(x,yは実数)の濃度は、空間23と混合融液290との気液界面3付近において最も高いため、GaN結晶が気液界面3に接した種結晶5から成長し始める。なお、この発明においては、GaxNyを「III族窒化物」と言い、GaxNyの濃度を「III族窒化物濃度」と言う。
窒素ガスを配管200内へ供給しない場合、種結晶5の温度T3は、混合融液290の温度と同じ800℃であるが、この発明においては、種結晶5付近の混合融液290中の窒素またはIII族窒化物の過飽和度を上げるために、配管200内へ窒素ガスを供給して種結晶5を冷却し、種結晶5の温度T3を混合融液290の温度よりも低くする。
より具体的には、種結晶5の温度T3は、タイミングt2以降、曲線k2に従って800℃よりも低い温度Ts1に設定される。この温度Ts1は、例えば、790℃である。種結晶5の温度T3を温度Ts1に設定する方法について説明する。
温度制御装置280は、温度センサー71,81からそれぞれ受けた温度T1,T2が800+α℃(=坩堝10および反応容器20を800℃に設定したときの加熱装置70,80に含まれるヒーターの温度)に達すると、種結晶5の温度T3を温度Ts1に設定する流量からなる窒素ガスを流すための制御信号CTL3を生成して流量計260へ出力する。
そうすると、流量計260は、制御信号CTL3に応じて、温度T3を温度Ts1に設定する流量からなる窒素ガスをガスボンベ270からガス供給管250を介して配管200内へ流す。種結晶5の温度は、窒素ガスの流量に略比例して800℃から低下し、窒素ガスの流量が流量fr1(sccm)になると、種結晶5の温度T3は、温度Ts1に設定される(図10参照)。
したがって、流量計260は、流量fr1からなる窒素ガスを配管200内へ流す。そして、配管200内へ供給された窒素ガスは、配管200の複数の空孔201から筒状部材51の底面51Bに吹き付けられる。
これによって、種結晶5は、筒状部材51の底面51Bを介して冷却され、種結晶5の温度T3は、タイミングt3で温度Ts1に低下し、その後、タイミングt4まで温度Ts1に保持される。
加熱装置70,80のヒーターの温度T1,T2は、混合融液290の温度と所定の温度差αを有するため、温度制御装置280は、種結晶5の温度T3が800℃から低下し始めると、温度センサー71,81からそれぞれ受けた温度T1,T2が800+α℃に設定されるように制御信号CTL1,2によってそれぞれ加熱装置70,80を制御する。
なお、この発明においては、好ましくは、種結晶5の温度T3は、タイミングt2以降、直線k3に従って低下するように制御される。すなわち、種結晶5の温度T3は、タイミングt2からタイミングt4までの間で800℃から温度Ts2(<Ts1)まで低下される。この場合、流量計260は、温度制御装置280からの制御信号CTL3に基づいて、直線k4に従って配管200内へ流す窒素ガスの流量を0から流量fr2(>fr1)まで増加する。窒素ガスの流量が流量fr2になると、種結晶5の温度T3は、温度Ts1よりも低い温度Ts2に設定される。そして、温度Ts2は、たとえば、750℃である。
このように、混合融液290の温度(=800℃)と種結晶5の温度T3との差を徐々に大きくすることによって、種結晶5付近の混合融液290中の窒素またはIII族窒化物の過飽和度が徐々に大きくなり、GaN結晶の結晶成長を少なくとも継続できる。
結晶製造装置100においてGaN結晶を結晶成長させる場合、種結晶5は、結晶製造装置100において種結晶5を用いずに結晶成長させたGaN結晶からなる。図11は、GaN結晶を成長させる場合の窒素ガス圧と結晶成長温度との関係を示す図である。図11において、横軸は、結晶成長温度を表し、縦軸は、窒素ガス圧を表す。図11において、領域REG2は、坩堝10中の混合融液290に接する底面および側面において多くの核が発生し、c軸(<0001>)方向に成長した柱状形状のGaN結晶が製造される領域である。
したがって、種結晶5を作製する場合、領域REG2内における窒素ガス圧および結晶成長温度を用いてGaN結晶を成長させる。この場合、坩堝10内の底面および側壁に多くの核が発生し、c軸方向に成長した柱状形状のGaN結晶が製造される。
そして、結晶成長させた多くのGaN結晶の中から図4に示す形状のGaN結晶を切り出して種結晶5を作製する。したがって、種結晶5の突出部5A(図4の(b)参照)は、c軸(<0001>)方向に成長したGaN結晶からなる。
作製した種結晶5は、上述した方法によって支持装置50の空間部54に嵌合され、支持装置50に固定される。
図12は、GaN結晶の製造方法を説明するためのフローチャートである。図12を参照して、一連の動作が開始されると、Arガスが充填されたグローブボックス内へ坩堝10、反応容器20および配管30を入れる。そして、Arガス雰囲気中で金属Naを配管30内に入れる(ステップS1)。なお、Arガスは、水分量が1ppm以下であり、かつ、酸素量が1ppm以下であるArガスである(以下、同じ)。
その後、Arガス雰囲気中で金属Naおよび金属Gaを坩堝10に入れる(ステップS2)。この場合、金属Naおよび金属Gaを5:5の混合比で坩堝10に入れる。そして、金属Naおよび金属Gaを入れた坩堝10を反応容器20内に設置する。
その後、Arガス雰囲気中で種結晶5を坩堝10内の金属Naおよび金属Gaの上側に設置する(ステップS3)。より具体的には、種結晶5を支持装置50の一方端511側に形成された空間部54へ嵌合することによって(図4の(b)参照)、種結晶5を坩堝10内の金属Naおよび金属Gaの上側に設置する。
引続いて、グローブボックス300から坩堝10と反応容器20とを取り出し、坩堝10および反応容器20内にArガスを充填した状態で坩堝10および反応容器20を結晶製造装置100に設定する。
そして、バルブ160を開け、真空ポンプ170によって坩堝10および反応容器20内に充填されたArガスを排気する。真空ポンプ170によって坩堝10および反応容器20内を所定の圧力(0.133Pa以下)まで真空引きした後、バルブ160を閉じ、バルブ120,121を開けて窒素ガスをガスボンベ140からガス供給管90,110を介して坩堝10および反応容器20内へ充填する。この場合、圧力調整器130によって坩堝10および反応容器20内の圧力が0.1MPa程度になるように坩堝10および反応容器20内へ窒素ガスを供給する。
そして、圧力センサー180によって検出した反応容器20内の圧力が0.1MPa程度になると、バルブ120,121を閉じ、バルブ160を開けて真空ポンプ170によって坩堝10および反応容器20内に充填された窒素ガスを排気する。この場合も、真空ポンプ170によって坩堝10および反応容器20内を所定の圧力(0.133Pa以下)まで真空引きする。
そして、この坩堝10および反応容器20内の真空引きと坩堝10および反応容器20内への窒素ガスの充填とを数回繰り返し行なう。
その後、真空ポンプ170によって坩堝10および反応容器20内を所定の圧力まで真空引きした後、バルブ160を閉じ、バルブ120,121を開けて圧力調整器130によって坩堝10および反応容器20内の圧力が1.01〜5.05MPaの範囲になるように坩堝10および反応容器20内へ窒素ガスを充填する(ステップS4)。
この場合、配管30内の金属Naは、固体であるので、窒素ガスは、融液保持部材60を介して配管30の空間31から反応容器20内の空間23へ供給される。そして、圧力センサー180によって検出した空間23内の圧力が1.01〜5.05MPaになった時点でバルブ120が閉じられる。
その後、加熱装置70,80によって坩堝10および反応容器20を800℃に加熱し(ステップS5)、金属融液190から蒸発する金属Naの蒸気圧PNaが混合融液290から蒸発する金属Naの蒸気圧PNa−Gaに略一致する特定温度に金属融液190を加熱する(ステップS6)。
この場合、配管30内に保持された金属Naは、融点が約98℃であるので、坩堝10および反応容器20が800℃に加熱される過程で溶融され、金属融液190になる。そして、2つの気液界面1,2が発生する(図1参照)。気液界面1は、金属融液190と反応容器20内の空間23との界面に位置し、気液界面2は、金属融液190と融液保持部材60との界面に位置する。
また、坩堝10および反応容器20が800℃に加熱される過程で、坩堝10内の金属Naおよび金属Gaも液体になり、金属Naと金属Gaとの混合融液290が坩堝10内に発生する。そして、蒸気圧PNaが蒸気圧PNa−Gaに略一致する。
その後、上下機構220は、上述した方法によって、種結晶5を混合融液290に接触させる(ステップS7)。そして、坩堝10および反応容器20の温度が800℃程度の高温状態では、空間23内の窒素ガスが金属Naを媒介として混合融液290中へ取り込まれていることから、種結晶5からGaN結晶が成長し始める。このときの坩堝10および反応容器20の温度および反応容器20内の窒素ガス圧力は、図11に示す領域REG3の領域である。この領域REG3は、GaN結晶が種結晶に優先的に結晶成長する領域である。
その後、坩堝10および反応容器20の温度が、所定の時間(数十時間〜数百時間)、800℃に保持され(ステップS8)、種結晶5の温度T3が上述した方法によって混合融液290の温度(=800℃)よりも低い温度Ts1またはTs2に設定される(ステップS9)。
そして、GaN結晶の成長が進行すると、空間23内の窒素ガスが消費され、空間23内の窒素ガスが減少する。そうすると、空間23内の圧力P1が空間31内の圧力P2よりも低くなり(P1<P2)、空間23内と空間31内との間に差圧が発生し、空間31内の窒素ガスは、融液保持部材60および金属融液190(=金属Na融液)を介して空間23内へ順次供給される。すなわち、窒素ガスが坩堝10および反応容器20の空間23へ補給される(ステップS10)。
その後、種結晶5が混合融液290に接触するように、上述した方法によって種結晶5を移動させる(ステップS11)。これによって、大きなサイズのGaN結晶が成長する。
そして、所定の時間が経過すると、坩堝10および反応容器20の温度が降温されて(ステップS12)、GaN結晶の製造が終了する。
上述したように、この発明においては、金属融液190から蒸発する金属Naの蒸気圧PNaを混合融液290から蒸発する金属Naの蒸気圧PNa−Gaに略一致させてGaN結晶を結晶成長させる。
したがって、上述したように、金属融液190と混合融液290との間における金属Naの移動が、見かけ上、なくなり、混合融液290中における金属Naと金属Gaとの混合比の変動が抑制される。その結果、金属Naと金属Gaとの混合比を略一定にしてGaN結晶を結晶成長できる。
反応容器20の底面20Bは、加熱装置80によって加熱されているが、図12に示すステップS1において、配管30内へ入れられる金属Naの量は、配管30内の金属Naが金属融液190になった時点で金属融液190が反応容器20内へ入らない量に設定される。
これによって、坩堝10および反応容器20が800℃に昇温された時点で金属融液190は、混合融液290よりも低温となり、蒸気圧PNaを蒸気圧PNa−Gaに容易に一致させることができ、結晶成長の開始時点から混合融液290中における金属Naと金属Gaとの混合比を安定させてGaN結晶を製造できる。
図13は、金属Naの量を説明するための概念図である。金属融液190が反応容器20内にも存在する量の金属Naを配管30内へ仕込んだ場合について説明する。金属融液190と空間23との気液界面1Aは、混合融液290と空間23との気液界面3とほぼ同じ位置に存在するものとする(図13の(a)参照)。
そうすると、金属融液190は、反応容器20を介して加熱装置70,80によって加熱され、金属融液190の温度は、混合融液290の温度とほぼ等しくなる。その結果、金属融液190から蒸発する金属Naの蒸気圧PNaは、混合融液290から蒸発する金属Naの蒸気圧PNa−Gaよりも高くなる。
蒸気圧PNaが蒸気圧PNa−Gaよりも高くなると、金属Naが金属融液190から混合融液290へ移動し、蒸気圧PNaが蒸気圧PNa−Gaに略等しくなった時点で金属Naの金属融液190から混合融液290への移動が停止される。すなわち、金属融液190と空間23との気液界面1Aが配管30内の気液界面1Bまで低下した時点で金属Naの金属融液190から混合融液290への移動が停止される(図13の(b)参照)。ここで言うNaの移動とは、気相輸送のことである。
このように、金属融液190が反応容器20内に入る量の金属Naを配管30内へ仕込んだ場合でも、金属融液190から蒸発する金属Naの蒸気圧PNaが混合融液290から蒸発する金属Naの蒸気圧PNa−Gaに略一致するように、金属Naが金属融液190から混合融液290へ移動する。
したがって、この発明においては、図12に示すフローチャートのステップS1において、金属融液190が坩堝10と反応容器20との間および配管30内に存在する量の金属Naを配管30内へ仕込んでもよく、一般的には、金属融液190が少なくとも配管30内に存在する量の金属Naを配管30内で仕込めばよい。
この場合、金属融液190から蒸発する金属Naの蒸気圧PNaが混合融液290から蒸発する金属Naの蒸気圧PNa−Gaに略一致した時点での混合融液290中の金属Naと金属Gaとの混合比でGaN結晶を結晶成長させることになる。
上述したように、坩堝10および反応容器20が800℃に昇温された時点で、金属融液190から蒸発する金属Naの蒸気圧PNaが混合融液290から蒸発する金属Naの蒸気圧PNa−Gaに略一致する量の金属Naを配管30内へ仕込むことが好ましいが、坩堝10および反応容器20が800℃に昇温された時点で、金属融液190と空間23との気液界面1Aが混合融液290と空間23との気液界面3とほぼ同じ位置に存在する場合(図13の(a)参照)でも、金属Naの金属融液190から混合融液290への移動が生じ、最終的には、金属融液190から蒸発する金属Naの蒸気圧PNaが混合融液290から蒸発する金属Naの蒸気圧PNa−Gaに略一致する。逆にPNa<PNa−Gaの場合、即ち、金属Na量が少ない場合でも、混合融液290から金属融液190へNa蒸気の移動が生じ、最終的には、2つの蒸気圧PNa,PNa−Gaは略一致する。
したがって、坩堝10および反応容器20が800℃に昇温された時点で、金属融液190が反応容器20内に存在する量の金属Naを仕込んでGaN結晶を結晶成長させる場合も本発明に含まれ、一般的には、空間23と融液保持部材60との間に金属融液190が存在し得る量の金属Naを仕込んでGaN結晶を結晶成長させる場合も本発明に含まれる。
空間23と融液保持部材60との間に金属融液190が存在することは、金属融液190から蒸発する金属Naの蒸気圧PNaが混合融液290から蒸発する金属Naの蒸気圧PNa−Gaに略一致していることに相当するからである。
したがって、窒素ガスを金属融液190を介して混合融液290に接する空間23へ供給してGaN結晶を結晶成長する結晶製造装置において、GaN結晶の結晶成長が終了した後に、窒素ガスを空間23へ供給する経路上に金属Na(固体)が存在していれば、本発明を使用してGaN結晶を結晶成長したことになる。
また、結晶成長中に混合融液290内のGaが消費され、混合融液290中のNa量の割合が増加すると、蒸気圧PNa−Gaが上昇する。この結果、金属融液190へのNaの移動が起こり、常に、混合融液290と金属融液190との間でNa蒸気圧が略一定となるようにバランスされる。その結果、安定したGaN結晶の結晶成長を継続することが可能となり、GaN結晶の高品質化および結晶サイズの大型化を実現できる。
この発明の実施の形態による結晶製造装置は、図14に示す結晶製造装置100Aであってもよい。図14は、この発明の実施の形態による結晶製造装置の他の概略断面図である。
図14を参照して、結晶製造装置100Aは、図1に示す結晶製造装置100の温度制御装置280を温度制御装置280Aに代え、加熱/冷却器300および温度センサー301を追加したものであり、その他は、結晶製造装置100と同じである。
加熱/冷却器300は、配管30のうち、融液保持部材60が配置された部分および融液保持部材60よりも上側の部分の周囲に配置される。温度センサー301は、加熱/冷却器300の近傍に配置される。
温度制御装置280Aは、温度センサー301から温度T4を受け、その受けた温度T4に基づいて、金属融液190から蒸発する金属Naの蒸気圧PNaが混合融液290から蒸発する金属Naの蒸気圧PNa−Gaに略一致する特定温度に金属融液190を加熱するための制御信号CTL4を生成し、その生成した制御信号CTL4を加熱/冷却器300へ出力する。温度制御装置280Aは、その他、温度制御装置280と同じ機能を果たす。
加熱/冷却器300は、温度制御装置280Aからの制御信号CTL4に応じて、金属融液190を特定温度に加熱または冷却する。即ち、加熱/冷却器300は、金属融液190の温度が特定温度よりも低いとき、金属融液190の温度が特定温度になるように金属融液190を加熱し、金属融液190の温度が特定温度よりも高いとき、金属融液190の温度が特定温度になるように金属融液190を冷却する。
温度センサー301は、加熱/冷却器300の温度T4を検出し、その検出した温度T4を温度制御装置280Aへ出力する。
結晶製造装置100Aにおいては、金属融液190と空間23との間の気液界面1の位置が加熱装置80よりも低い位置になるように、配管30内にセットされる金属Naの量が制御される。
結晶製造装置100Aにおいては、図15に示すフローチャートに従ってGaN結晶が製造される。図15は、GaN結晶の製造方法を説明するための他のフローチャートである。図15に示すフローチャートは、図12に示すフローチャートのステップS6をステップS6Aに代えたものであり、その他は、図12に示すフローチャートと同じである。
上述したステップS5において、坩堝10および反応容器20が加熱装置70,80によって800℃に加熱されると、金属融液190から蒸発する金属Naの蒸気圧PNaが混合融液290から蒸発する金属Naの蒸気圧PNa−Gaに略一致する特定温度に金属融液190の温度が加熱/冷却器300によって独立に制御される(ステップS6A)。
その後、上述したステップS7〜ステップS12が順次実行され、一連の動作が終了する。
上述したように、金属融液190の温度を混合融液290の温度(=坩堝10および反応容器20の温度)と独立に制御することにより、金属融液190から蒸発する金属Naの蒸気圧PNaを混合融液290から蒸発する金属Naの蒸気圧PNa−Gaに略一致させることが更に容易になる。
なお、ガスボンベ140、圧力調整器130、ガス供給管90,110、バルブ121、配管30、融液保持部材60および金属融液190は、「ガス供給装置」を構成する。
図16は、この発明による融液保持部材の他の斜視図である。また、図17は、図16に示す融液保持部材400の固定方法を説明するための断面図である。図16を参照して、融液保持部材400は、栓401と、複数の凸部402とからなる。栓401は、長さ方向DR3へ直径が変化する円柱形状からなる。複数の凸部402の各々は、略半球形状を有し、直径が数十μmである。そして、複数の凸部402は、栓401の外周面401Aにランダムに形成される。ただし、隣接する2つの凸部402の間隔は、数十μmに設定される。
図17を参照して、融液保持部材400は、支持部材403,404によって配管30内に固定される。より具体的には、融液保持部材400は、一方端が配管30の内壁に固定された支持部材403と、一方端が配管30の内壁に固定された支持部材404とによって挟まれることによって固定される。
この場合、融液保持部材400の凸部402は、配管30に接していてもよく、接していなくてもよい。凸部402が配管30に接しないように融液保持部材400が固定される場合、凸部402と配管30との間隔を金属融液190の表面張力によって金属融液190を保持可能な間隔に設定して融液保持部材400を支持部材403,404によって固定する。
配管30内に入れられた金属Naは、坩堝10および反応容器20の加熱が開始される前、固体であるので、ガスボンベ140から供給された窒素ガスは、反応容器20内の空間23と配管30との間を融液保持部材400を介して拡散可能である。
そして、坩堝10および反応容器20の加熱が開始され、配管30の温度が98℃以上に昇温されると、配管30内に入れられた金属Naは、溶けて金属融液190になり、窒素ガスを空間23に閉じ込める。
また、融液保持部材400は、金属融液190が空間31へ流出しないように金属融液190の表面張力によって金属融液190を保持する。
さらに、金属融液190および融液保持部材400は、GaN結晶の成長が進行すると、窒素ガスと、金属融液190および混合融液290から蒸発した金属Na蒸気とを空間23に閉じ込める。その結果、混合融液290からの金属Naの更なる蒸発を抑制でき、混合融液290中における金属Naの蒸発による金属Naと金属Gaとの量比の変動を抑制できる。そして、GaN結晶の成長が進行するに伴って、空間23内の窒素ガスが減少すると、空間23内の圧力P1は、空間31の圧力P2よりも低くなり、融液保持部材400は、空間31の窒素ガスを反応容器20の方向へ通過させ、金属融液190を介して空間23へ供給する。
このように、融液保持部材400は、上述した融液保持部材60と同じように作用する。したがって、融液保持部材400は、融液保持部材60に代えて結晶製造装置100に用いられる。
上記においては、融液保持部材400は、凸部402を有すると説明したが、融液保持部材400は、凸部402を有していなくてもよい。この場合、栓401と反応容器20および配管30との間隔が数十μmになるように、融液保持部材400は、支持部材403,404によって配管30の内壁に固定される。
そして、融液保持部材400(凸部402を有する場合と凸部402を有さない場合とを含む。以下、同じ)と配管30との間隔は、融液保持部材400の温度に応じて決定されるようにしてもよい。この場合、融液保持部材400の温度が相対的に高い場合、融液保持部材400と配管30との間隔は、相対的に小さく設定される。また、融液保持部材400の温度が相対的に低い場合、融液保持部材400と配管30との間隔は、相対的に大きく設定される。
表面張力により金属融液190を保持可能な融液保持部材400と配管30との間隔は、融液保持部材400の温度によって変化する。したがって、融液保持部材400と配管30との間隔を融液保持部材400の温度に応じて変化させ、表面張力によって金属融液190を確実に保持できるようにしたものである。
そして、融液保持部材400の温度制御は、加熱装置80によって行われる。すなわち、融液保持部材400の温度を150℃よりも高い温度に昇温する場合には、加熱装置80によって融液保持部材400を加熱する。
融液保持部材400が用いられる場合、ガスボンベ140、圧力調整器130、ガス供給管90,110、バルブ121、配管30、融液保持部材400および金属融液190は、「ガス供給装置」を構成する。
図18は、この発明による融液保持部材のさらに他の斜視図である。図18を参照して、融液保持部材410は、複数の貫通孔412が形成された栓411からなる。複数の貫通孔412は、栓411の長さ方向DR2に沿って形成される。そして、複数の貫通孔412の各々は、数十μmの直径を有する(図18の(a)参照)。
なお、融液保持部材410においては、貫通孔412は、少なくとも1個形成されていればよい。
また、融液保持部材420は、複数の貫通孔422が形成された栓421からなる。複数の貫通孔422は、栓421の長さ方向DR2に沿って形成される。そして、複数の貫通孔422の各々は、長さ方向DR2へ複数段に変化された直径r1,r2,r3を有する。直径r1,r2,r3の各々は、金属融液190を表面張力により保持可能な範囲で決定され、たとえば、数μm〜数十μmの範囲で決定される(図18の(b)参照)。
なお、融液保持部材420においては、貫通孔422は、少なくとも1個形成されていればよい。また、貫通孔422の直径は、少なくとも2個に変化されればよい。さらに、貫通孔422の直径は、長さ方向DR2へ連続的に変えられてもよい。
融液保持部材410または420は、結晶製造装置100の融液保持部材60に代えて用いられる。
特に、融液保持部材420が融液保持部材60に代えて用いられた場合、結晶製造装置100において、融液保持部材420の温度制御を精密に行なわなくても、複数段に変えられた直径のいずれかによって金属融液190を金属融液190の表面張力により保持できるので、融液保持部材420の温度制御を精密に行なわなくても、大きなサイズを有するGaN結晶を製造できる。
融液保持部材410または420が用いられる場合、ガスボンベ140、圧力調整器130、ガス供給管90,110、バルブ121、配管30、融液保持部材410または420および金属融液190は、「ガス供給装置」を構成する。
さらに、この発明においては、融液保持部材60に代えてポーラスプラグまたは逆流防止弁を用いてもよい。ポーラスプラグは、ステンレスの粉末を焼結した焼結体からなり、数十μmの空孔が多数形成された構造を有する。したがって、ポーラスプラグは、上述した融液保持部材60と同じように金属融液190の表面張力によって金属融液190を保持可能である。
また、この発明における逆流防止弁は、低温部分に用いられるバネ式の逆流防止弁と、高温部分に用いられるピストン式の逆流防止弁との両方を含む。このピストン式の逆流防止弁とは、空間31内の圧力P2が空間23内の圧力P1よりも高いとき、圧力P2と圧力P1との差圧によってピストンが1対のガイドに沿って上方向へ移動して空間31の窒素ガスを金属融液190を介して空間23へ供給し、P1≧P2であるとき、自重によってピストンが反応容器20と配管30との連結部を塞ぐ形式の逆流防止弁である。したがって、この逆流防止弁は、高温部分においても使用できる。
上述した実施の形態においては、結晶成長温度は、800℃であると説明したが、この発明においては、これに限らず、結晶成長温度は、600℃以上であればよい。また、窒素ガス圧力も0.4MPa以上の加圧状態の本結晶成長方法で成長可能な圧力であればよい。すなわち、上限も本実施の形態の5.05MPaに限定されるものではなく、5.05MPa以上の圧力であってもよい。
また、この発明による結晶製造装置は、結晶製造装置100から上下機構220、振動印加装置230および振動検出装置240を削除したものであってもよい。この場合、種結晶5は、上下方向へ移動されないが、坩堝10内に入れられた金属Naおよび金属Gaが融けた状態で混合融液290に接触するように支持装置50によって支持される。したがって、GaN結晶は、種結晶5から成長する。その結果、大きいサイズのGaN結晶を製造できる。
さらに、この発明による結晶製造装置は、結晶製造装置100から熱電対210、配管200、ガス供給管250、流量計260およびガスボンベ270を削除したものであってもよい。この場合、種結晶5の温度T3は、GaN結晶の結晶成長中、混合融液290の温度よりも低温に制御されないが、種結晶5は、支持装置50によって混合融液290に接触されるので、GaN結晶は、種結晶5から成長する。その結果、大きなサイズのGaN結晶を製造できる。
さらに、この発明による結晶製造装置は、結晶製造装置100から熱電対210、配管200、上下機構220、振動印加装置230、振動検出装置240、ガス供給管250、流量計260およびガスボンベ270を削除したものであってもよい。この場合、種結晶5は、上下方向へ移動されず、種結晶5の温度T3は、混合融液290の温度よりも低い温度に制御されないが、坩堝10内に入れられた金属Naおよび金属Gaが融けた状態で混合融液290に接触するように支持装置50によって支持される。したがって、GaN結晶は、種結晶5から成長する。その結果、大きいサイズのGaN結晶を製造できる。
さらに、この発明においては、結晶製造装置100から熱電対210、配管200、上下機構220、振動印加装置230、振動検出装置240、ガス供給管250、流量計260およびガスボンベ270を削除した結晶製造装置を用いて、種結晶5を用いずにGaN結晶を結晶成長させてもよい。この場合、GaN結晶は、坩堝10の底面および側面から成長するが、上述したように、金属融液190から蒸発する金属Naの蒸気圧PNaが混合融液290から蒸発する金属Naの蒸気圧PNa−Gaに略一致するので、混合融液290中の金属Naと金属Gaとの混合比を略一定にしてGaN結晶を結晶成長できる。
さらに、上記においては、Arガス雰囲気中で金属Naおよび金属Gaを坩堝10に入れ、Arガス雰囲気中で金属Naを配管30内に入れると説明したが、この発明においては、これに限らず、He、NeおよびKr等のArガス以外のガスまたは窒素ガス雰囲気中で金属Naおよび金属Gaを坩堝10に入れ、金属Naを配管30内に入れてもよく、一般的には、不活性ガスまたは窒素ガス雰囲気中で金属Naおよび金属Gaを坩堝10に入れ、金属Naを配管30内に入れればよい。そして、この場合、不活性ガスまたは窒素ガスは、水分量が1ppm以下であり、かつ、酸素量が1ppm以下である。
さらに、金属Gaと混合する金属は、Naであると説明したが、この発明においては、これに限らず、リチウム(Li)およびカリウム(K)等のアルカリ金属、またはマグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)およびストロンチウム(Sr)等のアルカリ土類金属を金属Gaと混合して混合融液290を生成してもよい。そして、これらのアルカリ金属が溶けたものは、アルカリ金属融液を構成し、これらのアルカリ土類金属が溶けたものは、アルカリ土類金属融液を構成する。
さらに、窒素ガスに代えて、アジ化ナトリウムおよびアンモニア等の窒素を構成元素に含む化合物を用いてもよい。そして、これらの化合物は、窒素原料ガスを構成する。
さらに、Gaに代えて、ボロン(B)、アルミニウム(Al)およびインジウム(In)等のIII族金属を用いてもよい。
したがって、この発明による結晶製造装置または製造方法は、一般的には、アルカリ金属またはアルカリ土類金属とIII族金属(ボロンを含む)との混合融液を用いてIII族窒化物結晶を製造するものであればよい。
そして、この発明による結晶製造装置または製造方法を用いて製造したIII族窒化物結晶は、発光ダイオード、半導体レーザ、フォトダイオードおよびトランジスタ等のIII族窒化物半導体デバイスの作製に用いられる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1〜3 気液界面、4 窒素ガス、5 種結晶、10 坩堝、20 反応容器、20A 外周面、20B 底面、21 本体部、22 蓋部、23 空間、30,200 配管、30A 内壁、40 ベローズ、50 支持装置、60,400,410,420 融液保持部材、61,401,411,421 栓、62,402 凸部、63 空隙、70,80 加熱装置、71,81,301 温度センサー、90,110,250 ガス供給管、100 結晶製造装置、120,121,160 バルブ、130 圧力調整器、140,270 ガスボンベ、150 排気管、170 真空ポンプ、180 圧力センサー、190 金属融液、201 空孔、210 熱電対、220 上下機構、230 振動印加装置、240 振動検出装置、280,280A 温度制御装置、290 混合融液、403,404 支持部材、300 加熱/冷却器。