本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
[実施の形態1]
図1は、この発明の実施の形態1における結晶成長装置の概略断面図である。図1を参照して、この発明の実施の形態1における結晶成長装置100は、反応容器10と、外部反応容器20と、配管30,40と、抑制/導入栓50と、加熱装置60,70,80と、ガス供給管90,110と、バルブ120,121,160と、圧力調整器130と、ガスボンベ140と、排気管150と、真空ポンプ170と、圧力センサー180と、金属融液190とを備える。
反応容器10は、略円柱形状を有し、ボロンナイトライド(BN)からなる。外部反応容器20は、反応容器10と所定の間隔を隔てて反応容器10の周囲に配置される。そして、外部反応容器20は、本体部21と、蓋部22とからなる。本体部21および蓋部22の各々は、SUS316Lからなり、本体部21と蓋部22との間は、メタルオーリングによってシールされる。したがって、後述する混合融液290が外部へ漏洩することがない。
配管30は、略円柱形状を有し、重力方向DR1において反応容器10の下側で外部反応容器20に連結される。配管40は、略円柱形状を有し、一部が外部反応容器20を介して外部反応容器20の空間23内へ挿入されるように、重力方向DR1において反応容器10の上側で外部反応容器20に固定される。
抑制/導入栓50は、たとえば、金属およびセラミック等からなり、外部反応容器20と配管30との連結部よりも下側の配管30内に保持される。
加熱装置60は、外部反応容器20の外周面20Aを囲むように配置される。加熱装置70は、外部反応容器20の底面20Bに対向して配置される。加熱装置80は、配管40の一部の周囲に配置される。
ガス供給管90は、一方端がバルブ120を介して外部反応容器20に連結され、他方端が圧力調整器130を介してガスボンベ140に連結される。ガス供給管110は、一方端がバルブ121を介して配管30に連結され、他方端がガス供給管90に連結される。
バルブ120は、外部反応容器20の近傍でガス供給管90に装着される。バルブ121は、配管30の近傍でガス供給管110に装着される。圧力調整器130は、ガスボンベ140の近傍でガス供給管90に装着される。ガスボンベ140は、ガス供給管90に連結される。
排気管150は、一方端がバルブ160を介して外部反応容器20に連結され、他方端が真空ポンプ170に連結される。バルブ160は、外部反応容器20の近傍で排気管150に装着される。真空ポンプ170は、排気管150に連結される。
圧力センサー180は、外部反応容器20に取り付けられる。金属融液190は、金属ナトリウム(金属Na)融液からなり、反応容器10と外部反応容器20との間および配管30内に保持される。
反応容器10は、金属Naと、金属ガリウム(金属Ga)とを含む混合融液290を保持する。外部反応容器20は、反応容器10の周囲を覆う。配管30は、ガス供給管90,110を介してガスボンベ140から供給された窒素ガス(N2ガス)を抑制/導入栓50に導く。
配管40は、金属Ga300および金属リチウム(金属Li)310を保持する。抑制/導入栓50は、配管30の内壁との間に数十μmの孔が形成されるように外周面に凹凸構造を有し、配管30内の窒素ガスを金属融液190の方向へ通過させ、窒素ガスを金属融液190を介して空間23内へ供給する。また、抑制/導入栓50は、数十μmの孔の表面張力により金属融液190を反応容器10と外部反応容器20との間および配管30内に保持する。
加熱装置60は、外部反応容器20の外周面20Aから反応容器10および外部反応容器20を結晶成長温度に加熱する。加熱装置70は、外部反応容器20の底面20Bから反応容器10および外部反応容器20を結晶成長温度に加熱する。加熱装置80は、配管40内に保持された金属Ga300を金属Gaの融点である30℃以上に加熱する。
ガス供給管90は、ガスボンベ140から圧力調整器130を介して供給された窒素ガスをバルブ120を介して外部反応容器20内へ供給する。ガス供給管110は、ガスボンベ140から圧力調整器130を介して供給された窒素ガスをバルブ121を介して配管30内へ供給する。
バルブ120は、ガス供給管90内の窒素ガスを外部反応容器20内へ供給し、または窒素ガスの外部反応容器20内への供給を停止する。バルブ121は、ガス供給管110内の窒素ガスを配管30へ供給し、または窒素ガスの配管30への供給を停止する。圧力調整器130は、ガスボンベ140からの窒素ガスを所定の圧力にしてガス供給管90,110に供給する。
ガスボンベ140は、窒素ガスを保持する。排気管150は、外部反応容器20内の気体を真空ポンプ170へ通過させる。バルブ160は、外部反応容器20内と排気管150とを空間的に繋げ、または外部反応容器20内と排気管150とを空間的に遮断する。真空ポンプ170は、排気管150およびバルブ160を介して外部反応容器20内の真空引きを行なう。
圧力センサー180は、外部反応容器20内の圧力を検出する。金属融液190は、抑制/導入栓50を介して導入された窒素ガスを空間23へ供給する。
図2は、図1に示す抑制/導入栓50の斜視図である。図2を参照して、抑制/導入栓50は、栓51と、凸部52とを含む。栓51は、略円柱形状からなる。凸部52は、略半円形の断面形状を有し、栓51の外周面に栓51の長さ方向DR2に沿って形成される。
図3は、抑制/導入栓50の配管30への取付状態を示す平面図である。図3を参照して、凸部52は、栓51の円周方向に複数個形成され、複数の凸部52は、数十μmの間隔dで形成される。また、凸部52は、数十μmの高さHを有する。抑制/導入栓50の複数の凸部52は、配管30の内壁30Aに接する。これにより、抑制/導入栓50は、配管30の内壁30Aに嵌合する。
凸部52が数十μmの高さHを有し、数十μmの間隔dで栓51の外周面に配置される結果、抑制/導入栓50が配管30の内壁30Aに嵌合した状態では、抑制/導入栓50と配管30の内壁30Aとの間に、直径が略数十μmである空隙53が複数個形成される。
この空隙53は、栓51の長さ方向DR2に窒素ガスを通過させるとともに、金属融液190を金属融液190の表面張力によって保持し、金属融液190が栓51の長さ方向DR2に通過するのを阻止する。
図4は、GaN結晶を成長させる場合の窒素ガス圧と結晶成長温度との関係を示す概念図である。図4において、縦軸は、窒素ガス圧を表し、横軸は、結晶成長温度を表す。図4を参照して、領域REG1は、GaN結晶が溶解する領域であり、領域REG2は、反応容器10の混合融液290に接する底面および側面において核が発生するのを抑制してGaN結晶が種結晶から成長する領域であり、領域REG3は、多くの核が発生する領域である。
したがって、この発明においては、新たな核が発生しない領域REG2内においてGaN結晶を成長させる。
図5は、金属Naと金属Gaとのモル比rと、窒素ガス圧との関係を示す図である。図5において、縦軸は、金属Naと金属Gaとのモル比rを表し、横軸は、窒素ガス圧を表す。なお、金属Naと金属Gaとのモル比rは、Na/(Na+Ga)によって表される。また、図5は、775℃の結晶成長温度におけるモル比rと窒素ガス圧との関係を示す。
図5を参照して、破線k1よりも下側の領域は、図4に示す領域REG2内において斜めファセットが形成されるGaN結晶の結晶成長条件を示す領域である。また、破線k1よりも上側の領域は、多くの核が発生する領域である。したがって、斜めファセットが形成されるGaN結晶が得られる結晶成長条件は、モル比rが相対的に大きくなれば、窒素ガス圧は相対的に低くなり、モル比rが相対的に小さくなれば、窒素ガス圧が相対的に高くなる条件からなる。なお、図5に示すモル比rと窒素ガス圧との関係は、775℃の結晶成長温度に限らず、720〜830℃の範囲の結晶成長温度に対して得られる。
破線k1よりも下側の領域に含まれる結晶成長条件に所定量の金属Liを添加した結晶成長条件は、平坦な表面を有し、かつ、c軸(<0001>)方向に成長したGaN結晶が得られる条件である。この場合、平坦な表面を有するGaN結晶が得られる結晶成長条件は、たとえば、表1によって表される。
表1に示す金属Li量の混合融液290中における濃度は、0.5〜0.8mol%に相当する。したがって、混合融液290中におけるLi濃度が0.5〜0.8mol%の範囲である場合、表面が平坦であり、かつ、c軸方向に成長したGaN結晶が得られる。
また、表1に示す結晶成長条件において、混合融液290中におけるLi濃度を0.5〜0.8mol%の範囲から1.0mol%以上に変更すると、多核発生が生じ、混合融液290中におけるLi濃度を0.5〜0.8mol%の範囲から0.5mol%未満に変更すると、表面が凹凸なGaN結晶が得られる。
したがって、この発明においては、金属Gaと金属Naとの混合融液290に0.5〜0.8mol%のLiを添加して表面が平坦なGaN結晶を結晶成長させる。
図6は、図1に示す下地体5の構成を示す断面図である。図6を参照して、下地体5は、サファイア基板501と、GaN膜502とからなる。GaN膜502は、サファイア基板501の一主面501Aに有機金属化学気相成長法(MOCVD:Metal Organic Chemical Vapour Deposition)によって形成される。そして、GaN膜502は、転位密度が106〜1010cm−2の範囲である貫通転位5021を有する。
この発明においては、図6に示すGaN膜502上に転位密度がGaN膜502よりも低いGaN結晶を結晶成長させるために、上述した斜めファセットが形成される結晶成長条件(図5に示す破線k1よりも下側の領域)で下地体5上にGaN結晶を結晶成長させ、その後、表1に示す結晶成長条件によって表面が平坦なGaN結晶を結晶成長させる。
図7は、転位密度を低減したGaN結晶を結晶成長させる工程を示す工程図である。図7を参照して、サファイア基板501上にMOCVD法によってGaN膜502を形成して下地体5を作製する(図7の(a)参照)。
そして、斜めファセットが形成される条件(図5に示す破線k1よりも下側の領域)でGaN結晶を下地体5のGaN膜502上に結晶成長させる。そうすると、GaN結晶からなる多数のドメイン510がGaN膜502上に形成される(図7の(b)参照)。
その後、斜めファセットが形成される条件(図5に示す破線k1よりも下側の領域)でGaN結晶の結晶成長を継続すると、ドメイン510が大きくなり(図7の(c)参照)、さらに、GaN結晶の結晶成長が進行すると、ドメイン510同士が合体し、斜めファセット521を有する大きなドメイン520が形成される(図7の(d)参照)。
そして、ドメイン520がさらに成長すると、ドメイン520の集合体からなるGaN結晶530が形成され、下地体5のGaN膜502に形成された貫通転位5021は、ドメイン510およびドメイン520中へ伝播し、ドメイン520の斜めファセット521によってサファイア基板501の面内方向へ曲げられ、隣接するドメイン520,520間に集積される(図7の(e)参照)。
その後、表1に示す結晶成長条件によってGaN結晶を結晶成長させる。そうすると、表面が平坦であり、かつ、c軸方向に成長したドメイン540からなるGaN結晶550が得られる。GaN結晶550は、隣接するドメイン540間に形成された貫通転位551を有する。そして、GaN結晶550において、ドメイン540は、転位密度が低く(理想的には無転位)、貫通転位551の密度は、GaN膜502の貫通転位5021の密度よりも低い(図7の(f)参照)。
したがって、斜めファセット521が形成される条件でGaN結晶530を下地体5上に結晶成長させ、その後、表面が平坦になる条件でGaN結晶を結晶成長させることによって、下地体5のGaN膜502が有する貫通転位5021をサファイア基板501の面内方向へ曲げ、GaN膜502の転位密度よりも低い転位密度を有するGaN結晶550を製造できる。
このように、GaN結晶530は、下地体5のGaN膜502が有する貫通転位5021をサファイア基板501の面内方向へ曲げる機能を果たす。そして、GaN結晶530のドメイン520のサイズによってGaN結晶550の貫通転位540の密度が決定される。
より具体的には、GaN結晶550の貫通転位540の密度は、ドメイン520のサイズが相対的に大きくなると、相対的に低くなり、ドメイン520のサイズが相対的に小さくなると、相対的に高くなる。
したがって、貫通転位540の密度を低減させるには、ドメイン520のサイズを大きくすることが重要である。よって、この発明においては、斜めファセットが形成される条件によって大きなサイズを有するドメイン520が形成される時間を予め計測しておき、その計測した時間まで斜めファセットが形成される条件によるGaN結晶の結晶成長を継続した後、表1に示す結晶成長条件によってGaN結晶550を結晶成長させる。
なお、斜めファセット521の面方位は、たとえば、(10−11)である。この面方位(10−11)は、図7の(e)に表示された面方位を表す。
図8は、図1に示す結晶成長装置100における温度のタイミングチャートである。また、図9は、図8に示す2つのタイミングt1,t2間における反応容器10および外部反応容器20内の状態を示す模式図である。さらに、図10は、図8に示す2つのタイミングt4,t5間における配管40内の状態を示す模式図である。
なお、図8において、曲線k2は、反応容器10および外部反応容器20の温度を示し、曲線3は、配管40の温度を示す。
図8を参照して、加熱装置60,70は、曲線k2に従って温度が上昇し、かつ、800℃に保持されるように反応容器10および外部反応容器20を加熱する。加熱装置60,70が反応容器10および外部反応容器20を加熱し始めると、反応容器10および外部反応容器20の温度は、上昇し始め、タイミングt1において98℃に達し、タイミングt2で800℃に達する。
そうすると、反応容器10と外部反応容器20との間に保持された金属Naは溶け、金属融液190(=金属Na融液)になる。そして、空間23内の窒素ガス4は、金属融液190(=金属Na融液)および抑制/導入栓50を介して配管30内の空間31へ拡散することができず、空間23内に閉じ込められる(図9参照)。
また、反応容器10および外部反応容器20の温度が800℃に達すると、反応容器10内の金属Naおよび金属Gaは溶け、反応容器10内で混合融液290が生成される。そして、空間23内の窒素ガス4は、混合融液290中の金属Naを媒介として混合融液290中に取り込まれ、GaN結晶530が下地体5のGaN膜502上に成長し始める。その後、タイミングt2からタイミングt3までの間、GaN結晶530の結晶成長が継続され、タイミングt3になると、加熱装置80は、配管40のうち、金属Ga300を保持する部分を温度Ts1に加熱する。
温度Ts1は、金属Gaの融点(30℃)よりも高く金属Naの融点(98℃)よりも低い温度に設定される。
配管40のうち、金属Ga300を保持する部分が30℃以上に加熱されると、金属Ga300は溶け、Ga融液301になる。そうすると、Ga融液301は、配管40の内壁を伝って混合融液290へ入り、金属Li310は、重力によって配管40内を落下して混合融液290へ入る(図10参照)。
そして、混合融液290中へ入った金属Liは、融点が約180℃であるため、800℃に設定された混合融液290に溶け、タイミングt5からタイミングt6までの間、GaN結晶550が結晶成長する。
したがって、表1に示す2.2〜3.2mgの範囲の重量を有する金属Li310が配管40内に保持される。これによって、タイミングt5からタイミングt6までの間、表面が平坦であり、かつ、c軸方向に結晶成長したGaN結晶550が形成される。
また、タイミングt2からタイミングt3までの間、GaN結晶530が結晶成長されるため、混合融液290中のGaは、減少し、GaとNaとのモル比rは、タイミングt2からタイミングt3に近づくに従って0.4よりも大きくなる。したがって、金属Li310を配管40内に保持する金属Ga300は、タイミングt4以降においてGa融液310が混合融液290へ入った結果、混合融液290中のモル比rが約0.4になる重量に設定される。
図11は、GaN結晶の製造方法を説明するための実施の形態1におけるフローチャートである。図11を参照して、一連の動作が開始されると、Arガスが充填されたグローブボックス内へ反応容器10および外部反応容器20を入れる。そして、Arガス雰囲気中で下地体5を反応容器10に入れ(ステップS1)、Arガス雰囲気中で金属Naおよび金属Gaを反応容器10に入れる(ステップS2)。この場合、モル比率r=0.4になるように金属Naおよび金属Gaを反応容器10に入れる。なお、Arガスは、水分量が10ppm以下であり、かつ、酸素量が10ppm以下であるArガスである(以下、同じ)。
その後、Arガス雰囲気中で金属Naを反応容器10と外部反応容器20との間に入れ(ステップS3)、Arガス雰囲気中で2.2〜3.2mgの範囲の金属Li310を配管40内に入れ、その入れた金属Li310を金属Ga300で蓋をする(ステップS4)。
引続いて、反応容器10および外部反応容器20内にArガスを充填した状態で反応容器10および外部反応容器20を結晶成長装置100に設定する。
そして、バルブ160を開け、真空ポンプ170によって反応容器10および外部反応容器20内に充填されたArガスを排気する。この場合、配管40内の金属Liが保持された空間内のArガスも金属Ga300と配管40との隙間を通して排気される。
真空ポンプ170によって反応容器10および外部反応容器20内を所定の圧力(0.133Pa以下)まで真空引きした後、バルブ160を閉じ、バルブ120,121を開けて窒素ガスをガスボンベ140からガス供給管90,110を介して反応容器10および外部反応容器20内へ充填する。この場合、圧力調整器130によって反応容器10および外部反応容器20内の圧力が約0.1MPaになるように反応容器10および外部反応容器20内へ窒素ガスを供給する。
そして、圧力センサー180によって検出した外部反応容器20内の圧力が0.1MPa程度になると、バルブ120,121を閉じ、バルブ160を開けて真空ポンプ170によって反応容器10および外部反応容器20内に充填された窒素ガスを排気する。この場合も、真空ポンプ170によって反応容器10および外部反応容器20内を所定の圧力(0.133Pa以下)まで真空引きする。
そして、この反応容器10および外部反応容器20内の真空引きと反応容器10および外部反応容器20への窒素ガスの充填とを数回繰り返し行なう。
その後、真空ポンプ170によって反応容器10および外部反応容器20内を所定の圧力まで真空引きした後、バルブ160を閉じ、バルブ120,121を開けて圧力調整器130によって反応容器10および外部反応容器20内の圧力が1.01〜5.05MPaの範囲になるように反応容器10および外部反応容器20内へ窒素ガスを充填する(ステップS5)。
この場合、反応容器10と外部反応容器20との間の金属Naは、固体であるので、窒素ガスは、配管30の空間31からも抑制/導入栓50を介して外部反応容器20内の空間23へ供給される。そして、圧力センサー180によって検出した空間23内の圧力が1.01〜5.05MPaになった時点でバルブ120が閉じられる。
その後、加熱装置60,70によって反応容器10および外部反応容器20を800℃に加熱する(ステップS6)。この場合、反応容器10と外部反応容器20との間に保持された金属Naは、融点が約98℃であるので、反応容器10および外部反応容器20が800℃に加熱される過程で溶融され、金属融液190になる。そして、2つの気液界面1,2が発生する(図1参照)。気液界面1は、金属融液190と外部反応容器20内の空間23との界面に位置し、気液界面2は、金属融液190と抑制/導入栓50との界面に位置する。
また、反応容器10および外部反応容器20の温度が800℃に昇温された時点で、抑制/導入栓50の温度は、150℃である。従って、気液界面2における金属融液190(=金属Na融液)の蒸気圧は、7.6×10−4Paであり、金属融液190(=金属Na融液)は、抑制/導入栓50の空隙53を介して殆ど蒸発しない。その結果、金属融液190(=金属Na融液)は、殆ど減少しない。
抑制/導入栓50の温度が300℃または400℃に昇温されても、金属融液190(=金属Na融液)の蒸気圧は、それぞれ、1.8Paおよび47.5Paであり、この程度の蒸気圧では、金属融液190(=金属Na融液)の減少を殆ど無視できる。
このように、結晶成長装置100においては、抑制/導入栓50の温度は、金属融液190(=金属Na融液)が蒸発によって実質的に減少しない温度に設定される。
さらに、反応容器10および外部反応容器20が800℃に加熱される過程で、反応容器10内の金属Naおよび金属Gaも液体になり、金属Naと金属Gaとの混合融液290が反応容器10内に発生する。
さらに、反応容器10および外部反応容器20の温度が800℃に昇温されると、空間23内の窒素ガスが金属Naを媒介として混合融液290中へ取り込まれ、斜めファセットが形成される条件でGaN結晶530が下地体5のGaN膜502上に成長し始める。
その後、反応容器10および外部反応容器20の温度が、所定の時間(タイミングt2からタイミングt3までの間)、800℃に保持され、斜めファセットが形成される条件でGaN結晶530の結晶成長が進行する。そして、GaN結晶530の成長が進行すると、空間23内の窒素ガスが消費され、空間23内の窒素ガスが減少する。そうすると、空間23内の圧力P1が配管30内の空間31の圧力P2よりも低くなり(P1<P2)、空間23内と空間31内との間に差圧が発生し、空間31の窒素ガスは、抑制/導入栓50および金属融液190(=金属Na融液)を介して空間23内へ順次供給される。
すなわち、所定の時間、窒素ガスを反応容器10および外部反応容器20の空間23へ供給しながら、反応容器10および外部反応容器20の温度が800℃に保持される(ステップS7)。これによって、斜めファセットが形成される条件でGaN結晶530が結晶成長する。
そして、タイミングt3になると、加熱装置80は、配管40のうち、金属Ga300が保持された部分を温度Ts1に加熱し、Ga融液301および金属Li310を混合融液290に入れる(ステップS8)。
その後、所定の時間(タイミングt5〜タイミングt6までの間)、窒素ガスを反応容器10および外部反応容器20の空間23へ供給しながら、反応容器10および外部反応容器20の温度が800℃に保持される(ステップS9)。これによって、表面が平坦なGaN結晶550が結晶成長する。
その後、反応容器10、外部反応容器20および配管40の温度が降温されて(ステップS10)、GaN結晶の製造が終了する。
上述したように、この発明によるGaN結晶の製造方法においては、斜めファセットが形成される条件でGaN結晶530を下地体5上に結晶成長させ(ステップS7参照)、その後、表面が平坦になる条件でGaN結晶550を下地体5上に結晶成長させる(ステップS9参照)ことを特徴とする。
この特徴によって、下地体5のGaN膜502中の貫通転位5021から成長した貫通転位は、GaN結晶530の斜めファセット521によってサファイア基板501の面内方向へ曲げられ、貫通転位の密度が減少したGaN結晶550を製造できる。この場合、GaN結晶550の貫通転位の密度を104cm−2程度まで低減できる。
そして、図11に示すフローチャートに従って結晶成長したGaN結晶530,550は、Naを含み、GaN結晶550は、1015〜1021cm−3のLiを含む。
また、この発明によるGaN結晶の製造方法においては、金属Na蒸気7を空間23内へ閉じ込めた状態(図9参照)でGaN結晶を成長させることを特徴とする。この特徴によって、混合融液290中からの金属Naの蒸発が抑制され、空間23内の窒素ガス4を混合融液290中へ取り込んでGaN結晶の結晶成長速度を保持できる。
なお、図11に示すステップS7,S9においては、タイミングt2からタイミングt6までの間、反応容器10および外部反応容器20の温度は、800℃に保持され、下地体5上でGaN結晶530の結晶成長が進行する。そして、GaN結晶530の結晶成長が進行するに伴って、金属融液190および混合融液290中から金属Naが蒸発し、空間23内には、窒素ガス4および金属Na蒸気7が混在する(図9参照)。
そして、窒素ガス4の消費によって、空間23内の圧力P1が配管30内の空間31の圧力P2よりも低下する。そうすると、窒素ガスは、配管30の空間31から抑制/導入栓50を介して金属融液190に供給され、金属融液190中を泡191となって移動し、気液界面1から空間23へ供給される(図9参照)。
そして、空間23内の圧力P1が空間31内の圧力P2とほぼ同じになると、配管30の空間31から抑制/導入栓50および金属融液190を介した窒素ガスの反応容器10および外部反応容器20への供給が停止される。
このように、抑制/導入栓50は、金属融液190(=金属Na融液)を金属融液190の表面張力によって反応容器10と外部反応容器20との間および配管30内に保持するとともに、窒素ガスを空間31から反応容器10および外部反応容器20内へ供給する。従って、抑制/導入栓50は、金属融液190の通過を阻止する構造からなる。
上記においては、サファイア基板501と、サファイア基板501上にMOCVD法によって形成されたGaN膜502とからなる下地体5上に貫通転位を低減したGaN結晶550を製造すると説明したが、この発明においては、これに限らず、下地体5は、GaN結晶からなる種結晶によって構成されていてもよい。
図12は、下地体5の他の例を示す模式図である。下地体5は、図12の(a)に示す下地体5A、または図12の(b)に示す下地体5Bからなっていてもよい。
図12の(a)を参照して、下地体5Aは、柱状形状を有する種結晶560からなる。そして、種結晶560は、貫通転位561を有する。
図4に示す領域REG3においては、反応容器10の混合融液290に接する側面および底面に多くの核が発生する。そして、発生した核は、c軸方向に結晶成長した柱状形状からなる。したがって、結晶成長装置100において、図4に示す領域REG3の結晶成長条件によって多くのGaN結晶を結晶成長させる。そして、結晶成長させた多くのGaN結晶から1つのGaN結晶を選択して種結晶560として用いる。
図4に示す領域REG3でGaN結晶を結晶成長させる場合、金属Naと金属Gaとのモル比rは、たとえば、5:5に設定される。
図12の(b)を参照して、下地体5Bは、種結晶570と、GaN結晶580,590とからなる。種結晶570は、図4に示す領域REG3の結晶成長条件によって製造され、無転位のGaN結晶からなる。GaN結晶580は、図4に示す領域REG2の結晶成長条件によって種結晶570から結晶成長し、無転位である。GaN結晶590は、図4に示す領域REG2の結晶成長条件によってGaN結晶580に連続して結晶成長し、転位591を有する。
下地体5Bは、図4に示す領域REG2の結晶成長条件によって種結晶570からGaN結晶を結晶成長させた場合に、最初、無転位のGaN結晶580が成長し、その後、転位591を有するGaN結晶590が成長することにより作製される。
このように、図12の(a)は、図4に示す領域REG3の結晶成長条件によって製造した種結晶560自体が貫通転位561を有する場合を示し、図12の(b)は、図4に示す領域REG3の結晶成長条件を用いて製造された種結晶570から結晶成長したGaN結晶が転位591を有する場合を示す。
そして、下地体5Aおよび5Bのいずれの下地体が用いられる場合も、図11に示すフローチャートに従って貫通転位を低減したGaN結晶550が結晶成長される。この場合、下地体5Aまたは5Bは、ステップS1において、反応容器10の底面に設置される。
したがって、GaN結晶からなる下地体5Aまたは5Bを用いた場合も、貫通転位を低減したGaN結晶550を製造できる。
図13は、下地体5のさらに他の例を示す模式図である。下地体5は、図13に示す下地体5Cから構成されていてもよい。図13を参照して、下地体5Cは、サファイア基板501と、複数のGaN膜503とからなる。複数のGaN膜503は、MOCVD法によって形成されたGaN膜502(図6参照)を所定の幅Wおよび所定の間隔Lでエッチングすることにより作製される。したがって、各GaN膜503は、幅Wを有するストライプ形状の結晶である。そして、複数のGaN膜503の各々は、貫通転位5031を有する。なお、所定の幅Wは、たとえば、100μmに設定され、所定の間隔Lは、たとえば、300μmに設定される。
図14は、図13に示す下地体5C上に、貫通転位を低減したGaN結晶を結晶成長させる工程を示す工程図である。図14を参照して、斜めファセットが形成される条件(図5に示す破線k1よりも下側の領域)でGaN結晶を下地体5C上に結晶成長させる。そうすると、GaN結晶からなる多数のドメイン600が、下地体5Cのうち、複数のGaN膜503上に形成される(図14の(a)参照)。
その後、斜めファセットが形成される条件(図5に示す破線k1よりも下側の領域)でGaN結晶の結晶成長を継続すると、ドメイン600が大きくなり、さらに、GaN結晶の結晶成長が進行すると、ドメイン600同士が合体し、斜めファセット611を有する大きなドメイン610が形成される(図14の(b)参照)。
そして、ドメイン610がさらに成長すると、ドメイン620の集合体からなるGaN結晶630が形成され、下地体5CのGaN膜503に形成された貫通転位5031は、ドメイン600およびドメイン610中へ成長し、ドメイン610の斜めファセット611によってサファイア基板501の面内方向へ曲げられ、隣接するドメイン620,620間に集積される(図14の(c)参照)。
その後、表1に示す結晶成長条件によってGaN結晶を結晶成長させる。そうすると、図7の(e)に示すGaN結晶550と同じように、表面が平坦であり、かつ、c軸方向に成長したドメインからなるGaN結晶が得られる。
その結果、上述したように、貫通転位を低減したGaN結晶を製造できる。
下地体5Cを用いた場合、ドメイン600は、下地体5Cのうち、サファイア基板501上には形成されないので、ドメイン620のサイズを下地体5を用いた場合よりも大きくできる。
したがって、ドメイン620上に結晶成長したGaN結晶の貫通転位を下地体5を用いた場合よりもさらに低減できる。また、ドメイン620上に結晶成長したGaN結晶のサイズを下地体5を用いた場合よりもさらに大きくでき、無転位のGaN結晶を用いてデバイスを作製できる。
下地体5Cを用いる場合、貫通転位5031を有するGaN膜503の間隔Lは、表面が平坦なGaN結晶550を用いて作製される半導体デバイスのサイズに応じて決定される。GaN結晶550を用いて半導体デバイスを作製する場合、貫通転位が形成されていないドメイン540内に半導体デバイスを作製する。そして、ドメイン620の集合体からなるGaN結晶630上に結晶成長させたGaN結晶550において、貫通転位が形成されていないドメイン540のサイズは、間隔Lに応じて決定される。したがって、間隔Lは、GaN結晶550を用いて作製される半導体デバイスのサイズに応じて決定されることとしたものである。
さらに、この発明においては、下地体5からGaN結晶502を削除したサファイア基板501を下地体として用いてもよい。
さらに、この発明においては、下地体5のサファイア基板501に代えてScAlMgOを用い、下地体5を作製してもよい。
さらに、下地体5に代えてSiC結晶を下地体として用いてもよい。
なお、結晶成長装置100を用いて貫通転位を低減したGaN結晶を結晶成長させる場合、次のようにして貫通転位を低減したGaN結晶を結晶成長させてもよい。
すなわち、結晶成長装置100においては、外部反応容器20内の空間23と金属融液190との気液界面1または気液界面1付近における温度T1と、空間23と混合融液290との気液界面3または気液界面3付近における温度T2とは、金属融液190から蒸発した金属Naの蒸気圧が混合融液290から蒸発した金属Naの蒸気圧と略同一になる温度に設定される。
同じ温度においては、金属融液190から蒸発した金属Naの蒸気圧は、混合融液290から蒸発した金属Naの蒸気圧よりも高いので、温度T1は、金属融液190から蒸発した金属Naの蒸気圧が混合融液290から蒸発した金属Naの蒸気圧に略同一になるように温度T2よりも低い温度に設定される。
その結果、空間23内において、金属融液190から混合融液290への金属Naの移動と混合融液290から金属融液190への金属Naの移動とが平衡状態になり、金属融液190から混合融液290への金属Naの移動および混合融液290から金属融液190への金属Naの移動による混合融液290中の金属Naと金属Gaとのモル比率の変動を抑制でき、大きなサイズを有するGaN結晶を安定して製造できる。
また、上記においては、抑制/導入栓50の凸部52の高さHおよび複数の凸部52の間隔dは、数十μmであると説明したが、凸部52の高さHおよび複数の凸部52の間隔dは、抑制/導入栓50の温度に応じて決定されるようにしてもよい。この場合、抑制/導入栓50の温度が相対的に高い場合、凸部52の高さHは相対的に高くされ、かつ、複数の凸部52の間隔dは、相対的に小さくされる。また、抑制/導入栓50の温度が相対的に低い場合、凸部52の高さHは相対的に低くされ、かつ、複数の凸部52の間隔dは、相対的に大きくされる。つまり、抑制/導入栓50の温度が相対的に高い場合、抑制/導入栓50と配管30との間の空隙53のサイズが相対的に小さくされ、抑制/導入栓50の温度が相対的に低い場合、抑制/導入栓50と配管30との間の空隙53のサイズが相対的に大きくされる。
凸部52の高さHおよび複数の凸部52の間隔dによって空隙53の大きさが決定され、表面張力により金属融液190を保持可能な空隙53の大きさが抑制/導入栓50の温度によって変化する。したがって、凸部52の高さHおよび複数の凸部52の間隔dを抑制/導入栓50の温度に応じて変化させ、表面張力によって金属融液190を確実に保持できるようにしたものである。
そして、抑制/導入栓50の温度制御は、加熱装置70によって行われる。すなわち、抑制/導入栓50の温度を150℃よりも高い温度に昇温する場合には、加熱装置70によって抑制/導入栓50を加熱する。
上記においては、GaN結晶530は、GaN膜502の貫通転位5021をサファイア基板501の面内方向へ曲げると説明したが、この発明においては、これに限らず、GaN結晶530は、一般的には、下地体5からの結晶成長方向と異なる方向へGaN膜502の貫通転位5021を曲げるものであればよい。
また、GaN結晶530は、(10−11)面を有すると説明したが、この発明においては、これに限らず、GaN結晶530は、一般的には、c面およびc軸に平行な面以外の結晶成長表面を有していればよい。
さらに、GaN結晶550は、c軸方向に結晶成長したGaN結晶からなると説明したが、この発明においては、これに限らず、GaN結晶550は、一般的には、GaN結晶530の結晶成長方向と略垂直な結晶成長表面を有していればよい。
さらに、GaN結晶530は、少なくとも一部が下地体5,5A,5B,5Cに接していればよい。GaN結晶530は、少なくとも一部が下地体5,5A,5B,5Cに接していれば、下地体5,5A,5B,5Cからの貫通転位の方向を曲げることができるからである。
さらに、下地体5Cは、サファイア基板501上に形成された複数のストライプ形状のGaN結晶503を含むと説明したが、この発明においては、これに限らず、下地体5Cは、サファイア基板501上に形成された複数の島状のGaN結晶を含んでいてもよい。この場合、複数の島状のGaN結晶は、所定の間隔でサファイア基板501上に形成され、所定の間隔は、GaN結晶550を用いて作製されるデバイスのサイズに応じて決定される。
さらに、配管40は、金属Li310を保持すると説明したが、この発明においては、これに限らず、配管40は、金属Li310に代えてLiNを保持するようにしてもよい。
なお、斜めファセットが形成される条件で結晶成長されるGaN結晶530は、「第1のIII族窒化物結晶」を構成し、表面が平坦であるGaN結晶550は、「第2のIII族窒化物結晶」を構成する。
また、斜めファセットが形成される条件で結晶成長されるGaN結晶630は、「第1のIII族窒化物結晶」を構成する。
さらに、GaN膜502,503は、「第3のIII族窒化物結晶」を構成する。
さらに、複数のGaN膜503は、「複数のストライプ結晶」を構成する。
さらに、種結晶560またはGaN結晶590は、「低品位種結晶」を構成する。
[実施の形態2]
図15は、実施の形態2における結晶成長装置の概略断面図である。図15を参照して、実施の形態2における結晶成長装置100Aは、図1に示す結晶成長装置100にベローズ200、支持装置210、上下機構220、振動印加装置230および振動検出装置240を追加したものであり、その他は、結晶成長装置100と同じである。
ベローズ200は、重力方向DR1において、反応容器10の上側で外部反応容器20に連結される。支持装置210は、円柱形状からなり、一部がベローズ200を介して外部反応容器20の空間23内へ挿入される。上下機構220は、ベローズ200よりも上側において支持装置210に取り付けられる。
ベローズ200は、支持装置210を保持するとともに、外部反応容器20の内部と外部とを遮断する。また、ベローズ200は、支持装置210の重力方向DR1への移動に伴って重力方向DR1に伸縮する。支持装置210は、外部反応容器20内に挿入された一方端にGaN結晶からなる下地体5Aを支持する。
上下機構220は、振動検出装置240からの振動検出信号BDSに応じて、後述する方法によって、下地体5Aが空間23と混合融液290との気液界面3に接するように支持装置210を上下する。
振動印加装置230は、たとえば、圧電素子からなり、所定の周波数を有する振動を支持装置210に印加する。振動検出装置240は、たとえば、加速度ピックアップからなり、支持装置210の振動を検出するとともに、支持装置210の振動を示す振動検出信号BDSを上下機構220へ出力する。
図16は、図15に示す支持装置210の拡大図である。図16を参照して、支持装置210は、円柱部材211と、固定部材212,213とを含む。円柱部材211は、略円形の断面形状を有する。固定部材212は、略L字形状の断面形状を有し、円柱部材211の一方端2111側において円柱部材211の外周面211Aおよび底面211Bに固定される。また、固定部材213は、略L字形状の断面形状を有し、円柱部材211の一方端2111側において固定部材212と対称に配置されるように円柱部材211の外周面211Aおよび底面211Bに固定される。その結果、円柱部材211および固定部材212,213によって囲まれた領域には、空間部214が形成される(図16の(a)参照)。
下地体5Aは、貫通転位561を有する種結晶560からなり、種結晶560は、空間部214に嵌合する形状を有する。そして、下地体5Aは、空間部214に嵌合されることにより支持装置210によって支持される。この場合、下地体5Aは、円柱部材211の底面211Bに接する(図16の(b)参照)。
図17は、図15に示す上下機構220の構成を示す概略図である。図17を参照して、上下機構220は、凹凸部材221と、歯車222と、軸部材223と、モータ224と、制御部225とを含む。
凹凸部材221は、略三角形状の断面形状からなり、円柱部材211の外周面211Aに固定される。歯車222は、軸部材223の一方端に固定され、凹凸部材221と噛み合う。軸部材223は、その一方端が歯車222に連結され、他方端がモータ224のシャフト(図示せず)に連結される。
モータ224は、制御部225からの制御に従って歯車222を矢印226または227の方向へ回転させる。制御部225は、振動検出装置240からの振動検出信号BDSに基づいて、歯車222を矢印226または227の方向へ回転させるようにモータ224を制御する。
歯車222が矢印226の方向へ回転すれば、支持装置210は、重力方向DR1において上方向へ移動し、歯車222が矢印227の方向へ回転すれば、支持装置210は、重力方向DR1において下方向へ移動する。
したがって、歯車222を矢印226または227の方向へ回転させることは、支持装置210を重力方向DR1において上下させることに相当する。
図18は、振動検出信号BDSのタイミングチャートである。図18を参照して、振動検出装置240によって検出される振動検出信号BDSは、下地体5Aが混合融液290に接していないとき、信号成分SS1からなり、下地体5Aが混合融液290に接しているとき、信号成分SS2からなり、下地体5Aが混合融液290に浸漬されているとき、信号成分SS3からなる。
下地体5Aが混合融液290に接していないとき、下地体5Aは、振動印加装置230により印加された振動によって大きく振動するので、振動検出信号BDSは、振幅が相対的に大きい信号成分SS1からなる。一方、下地体5Aが混合融液290に接しているとき、下地体5Aは、振動印加装置230から振動が印加されても、混合融液290の粘性によって大きく振動できないので、振動検出信号BDSは、振幅が相対的に小さい信号成分SS2からなる。また、下地体5Aが混合融液290に浸漬されているとき、下地体5Aは、混合融液290の粘性によってさらに振動し難くなるので、振動検出信号BDSは、振幅が信号成分SS2よりも小さい信号成分SS3からなる。
再び、図17を参照して、制御部225は、振動検出装置240から振動検出信号BDSを受けると、振動検出信号BDSの信号成分を検出する。そして、制御部225は、その検出した信号成分が信号成分SS1からなるとき、振動検出信号BDSの信号成分が信号成分SS2になるまで、支持装置210を重力方向DR1において降下させるようにモータ224を制御する。
より具体的には、制御部225は、歯車222を矢印227の方向へ回転させるようにモータ224を制御し、モータ224は、制御部225からの制御に従って歯車222を軸部材223を介して矢印227の方向へ回転させる。これによって、支持装置210は、重力方向DR1において下方向へ移動する。
そして、制御部225は、振動検出装置240から受ける振動検出信号BDSの信号成分が信号成分SS1から信号成分SS2へ切換わると、歯車222の回転を停止するようにモータ224を制御し、モータ224は、制御部225からの制御に従って歯車222の回転を停止させる。これによって、支持装置210は、移動を停止し、下地体5Aを気液界面3に保持する。
一方、制御部225は、信号成分SS2からなる振動検出信号BDSを振動検出装置240から受けたとき、支持装置210の移動を停止するようにモータ224を制御する。この場合は、下地体5Aが混合融液290に既に接触しているからである。
このように、上下機構220は、振動検出装置240が検出する振動検出信号BDSに基づいて、下地体5Aが混合融液290に接するように支持装置210を重力方向DR1に移動させる。
図19は、図8に示す2つのタイミングt1,t2間における反応容器10および外部反応容器20内の状態を示す実施の形態2における模式図である。加熱装置60,70が反応容器10および外部反応容器20を加熱し始めると、反応容器10および外部反応容器20の温度は、上昇し始め、タイミングt1において98℃に達し、タイミングt2で800℃に達する。
そうすると、反応容器10と外部反応容器20との間に保持された金属Naは溶け、金属融液190(=金属Na融液)になる。そして、空間23内の窒素ガス4は、金属融液190(=金属Na融液)および抑制/導入栓50を介して配管30内の空間31へ拡散することができず、空間23内に閉じ込められる(図19参照)。
また、反応容器10および外部反応容器20の温度が98℃に達するタイミングt1から800℃に達するタイミングt2までの間に、上下機構220は、振動検出装置240からの振動検出信号BDSに基づいて、上述した方法によって支持装置210を上下し、下地体5Aを混合融液290に接触させる。
そして、反応容器10および外部反応容器20の温度が800℃に達すると、空間23内の窒素ガス4は、混合融液290中の金属Naを媒介として混合融液290中に取り込まれる。この場合、混合融液290中の窒素濃度は、空間23と混合融液290との気液界面3付近において最も高いため、GaN結晶が気液界面3に接している下地体5Aから成長し始める。
その後、図8において説明したように、タイミングt2からタイミングt3までの間、斜めファセットが形成される条件(図5に示す破線k1よりも下側の領域)でGaN結晶が下地体5Aから結晶成長され、その後、タイミングt5からタイミングt6までの間、表面が平坦であるGaN結晶が結晶成長される。
図20は、GaN結晶の製造方法を説明するための実施の形態2におけるフローチャートである。図20に示すフローチャートは、図11に示すフローチャートのステップS1をステップS1Aに代え、ステップS6A,S9Aを追加したものであり、その他は、図11に示すフローチャートと同じである。
図20を参照して、一連の動作が開始されると、Arガスが充填されたグローブボックス内へ反応容器10および外部反応容器20を入れる。そして、Arガス雰囲気中で下地体5Aを反応容器10内の上側に設定する(ステップS1A)。より具体的には、下地体5Aを支持装置210の一方端2111側に形成された空間214へ嵌合することによって(図16の(b)参照)、下地体5Aを反応容器10内の上側に設定する。
その後、上述したステップS2〜ステップS6が実行され、反応容器10および外部反応容器20が800℃に加熱される過程で、反応容器10内の金属Naおよび金属Gaも液体になり、金属Naと金属Gaとの混合融液290が反応容器10内に発生する。そして、上下機構220は、上述した方法によって、下地体5Aを混合融液290に接触させる(ステップS6A)。
その後、上述したステップS7〜ステップS9が実行される。そして、ステップS7,S9でGaN結晶が結晶成長されている間、上下機構220は、上述した方法によって下地体5Aが混合融液290に接触するように下地体5Aを降下させる(ステップS9A)。その後、上述したステップS10が実行され、貫通転位を低減したGaN結晶の製造が終了する。
このように、下地体5Aを混合融液290の表面(=界面3)に接触させて、斜めファセットが形成されるGaN結晶530および表面が平坦であるGaN結晶550を下地体5Aから、順次、結晶成長させた場合も、実施の形態1において説明したように、GaN結晶550の貫通転位を低減できる。
なお、図20に示すフローチャートにおいては、反応容器10および外部反応容器20が800℃に加熱されると、下地体5Aを金属Naおよび金属Gaとの混合融液290に接触させると説明したが(ステップS6,S6A参照)、この発明においては、これに限らず、反応容器10および外部反応容器20が800℃に加熱されると(ステップS6参照)、ステップS6Aにおいて、下地体5Aを金属Naおよび金属Gaとの混合融液290中に保持するようにしてもよい。つまり、反応容器10および外部反応容器20が800℃に加熱されると、下地体5Aを混合融液290に浸漬して下地体5AからGaN結晶を結晶成長させるようにしてもよい。
そして、下地体5Aを混合融液290に接触させる動作は、振動印加装置230によって支持装置210に振動を印加し、支持装置210の振動を示す振動検出信号BDSを検出するステップAと、検出された振動検出信号BDSが、下地体5Aが混合融液290に接したときの振動検出信号(振動検出信号BDSの成分SS2)になるように支持装置50を上下機構220によって移動させるステップBとからなる。
また、下地体5Aを混合融液290中に保持する動作は、振動印加装置230によって支持装置210に振動を印加し、支持装置210の振動を示す振動検出信号BDSを検出するステップAと、検出された振動検出信号BDSが、下地体5Aが混合融液290中に浸漬されたときの振動検出信号(振動検出信号BDSの成分SS3)になるように支持装置210を上下機構220によって移動させるステップCとからなる。
ステップBおよびステップCにおいて、支持装置210を上下機構220によって移動させるとしているのは、反応容器10の容積と、反応容器10に入れられた金属Naおよび金属Gaの全体量との関係によって、反応容器10内で生成された混合融液290の液面(=界面3)の位置が変動し、反応容器10内で混合融液290が生成された時点で、下地体5Aが混合融液290に浸漬されていることもあれば、下地体5Aが空間23に保持されていることもあるので、下地体5Aを混合融液290に接触または下地体5Aを混合融液290に浸漬するには、下地体5Aを重力方向DR1において上下動させる必要があるからである。
また、図20に示すフローチャートのステップS9Aにおいては、下地体5Aが混合融液290に接触するように下地体5Aを降下させると説明したが、この発明においては、図20に示すフローチャートのステップS9Aは、一般的には、GaN結晶の結晶成長中、下地体5Aから結晶成長したGaN結晶が混合融液290に接するように支持装置210を上下機構220によって移動させるステップDからなる。
GaN結晶の結晶成長とともに、混合融液290中のGaが消費されて混合融液290の液面(=界面3)が低下するが、この液面(=界面3)が低下する速度と、GaN結晶の結晶成長速度との関係によって下地体5Aから結晶成長したGaN結晶を上方向へ移動させる場合もあれば、下地体5Aから結晶成長したGaN結晶を下方向へ移動させる場合もあるからである。
すなわち、液面(=界面3)の低下速度がGaN結晶の結晶成長速度よりも速い場合、下地体5Aから結晶成長したGaN結晶を下方向へ移動させてGaN結晶を混合融液290の液面(=界面3)に接触させる。一方、液面(=界面3)の低下速度がGaN結晶の結晶成長速度よりも遅い場合、下地体5Aから結晶成長したGaN結晶を上方向へ移動させてGaN結晶を混合融液290の液面(=界面3)に接触させる。
このように、液面(=界面3)の低下速度とGaN結晶の結晶成長速度との関係によって、下地体5Aから結晶成長したGaN結晶を重力方向DR1において上下動させる必要があるので、ステップDにおいては、「上下機構220によって支持装置210を移動させる」としたものである。
そして、ステップDにおいて、下地体5Aから結晶成長したGaN結晶を混合融液290に接触させる動作は、上述したステップAおよびステップBからなる。
図21は、図20に示すステップS7,S9における反応容器10および外部反応容器20内の状態を示す模式図である。図21を参照して、タイミングt2からタイミングt6までの間、反応容器10および外部反応容器20の温度は、800℃に保持され、混合融液290中でGaN結晶の成長が進行する。そして、GaN結晶の成長が進行するに伴って、金属融液190および混合融液290中から金属Naが蒸発し、空間23内には、窒素ガス4および金属Na蒸気7が混在する。
そして、窒素ガス4の消費によって、空間23内の圧力P1が配管30内の空間31の圧力P2よりも低下する。
そうすると、窒素ガスは、配管30の空間31から抑制/導入栓50を介して金属融液190に供給され、金属融液190中を泡191となって移動し、気液界面1から空間23へ供給される。そして、空間23内の圧力P1が空間31内の圧力P2とほぼ同じになると、配管30の空間31から抑制/導入栓50および金属融液190を介した窒素ガスの反応容器10および外部反応容器20への供給が停止される。
また、結晶成長装置100においては、金属Na蒸気7を空間23内へ閉じ込めた状態でGaN結晶を成長させることを特徴とする。金属Na蒸気7が空間23内に閉じ込められた状態では、金属融液190から蒸発した金属Naの蒸気圧は、混合融液290から蒸発した金属Naの蒸気圧と略同一になる。したがって、上記の特徴によって、金属融液190から混合融液290への金属Naの移動または混合融液290から金属融液190への金属Naの移動による混合融液290中における金属Naと金属Gaとのモル比率の変動を抑制でき、大きく、かつ、高品質なGaN結晶を成長させることができる。
図22は、図20に示すステップS9Aにおける反応容器10および外部反応容器20内の状態を示す模式図である。GaN結晶の結晶成長が進行し、混合融液290が減少すると、気液界面3が下がり、下地体5Aから成長したGaN結晶6が混合融液290から離れる。
そうすると、振動検出信号BDSは、成分SS1(図18参照)からなるため、上下機構220は、振動検出信号BDSに基づいて、上述した方法によって、GaN結晶6が混合融液290に接触するように支持装置210を降下させる。これによって、GaN結晶6は、再び、混合融液290に接触し、GaN結晶6が優先的に成長する。
このように、この実施の形態2においては、GaN結晶の結晶成長中、下地体5Aまたは下地体5Aから結晶成長したGaN結晶6を常に混合融液290に接触させる。
これによって、大きなサイズのGaN結晶を成長できる。
上記においては、支持装置210に振動を与え、支持装置210の振動を検出して下地体5AまたはGaN結晶6が混合融液290に接触するように制御したが、この発明においては、これに限らず、気液界面3の位置を検出して下地体5AまたはGaN結晶6が混合融液290に接触するようにしてもよい。この場合、導線の一方端を外部から外部反応容器20に接続し、他方端を混合融液290中に浸漬させた状態で導線に電流を流し、電流がオフからオンに切換わるときの外部反応容器20内に入れられた導線の長さによって気液界面3の位置を検出する。
導線の他方端が混合融液290に浸漬されていれば、混合融液290、反応容器10、金属融液190および外部反応容器20を介して導線に電流が流れ、導線の他方端が混合融液290に浸漬されていなければ、導線に電流が流れない。
したがって、電流がオフからオンに切換わるときの外部反応容器20内に入れられた導線の長さによって気液界面3の位置を検出できる。そして、気液界面3の位置を検出すると、上下機構220によって、検出した気液界面3の位置まで下地体5AまたはGaN結晶6を降下させる。
また、音波を気液界面3に向けて発し、音波が気液界面3との間で往復する時間を測定して気液界面3の位置を検出するようにしてもよい。
さらに、熱電対を外部反応容器20から反応容器10内に挿入し、熱電対によって検出した温度が変化するときの外部反応容器20内に挿入された熱電対の長さから気液界面3の位置を検出するようにしてもよい。
上記においては、支持装置210によって下地体5Aを混合融液290の表面(=界面3)に接触させて貫通転位を低減したGaN結晶550を結晶成長させると説明したが、この発明においては、これに限らず、下地体5Aに代えて下地体5,5B,5Cを支持装置210によって混合融液290の表面(=界面3)に接触させて貫通転位を低減したGaN結晶550を結晶成長させるようにしてもよい。
下地体5,5Cを用いる場合、支持装置210を中空の円筒部材から構成し、その中空の円筒部材の先端部に複数の小孔を開け、中空の円筒部材の内部を真空引きして真空チャックによって下地体5,5Cを支持する。
また、上記においては、GaN結晶の結晶成長速度と界面3の低下速度との関係によって下地体5Aを上方向または下方向へ移動させ、下地体5Aを界面3に接触させると説明したが、下地体5Aから結晶成長したGaN結晶6が混合融液290に浸漬されることによる界面3の上昇およびGaN結晶6を混合融液290中から上方向へ移動させることによる界面3の低下を考慮して、GaN結晶6が界面3に接触するように上下機構220によって支持装置210を上下動させてもよい。
金属融液190の温度と混合融液290の温度とが同じである場合、金属融液190から蒸発した金属Naの蒸気圧は、混合融液290から蒸発した金属Naの蒸気圧よりも高くなる。そうすると、金属Naが金属融液190から混合融液290へ移動し、界面3の位置が上昇する。したがって、金属融液190の温度と混合融液290の温度とを同一に設定した場合、金属Naの金属融液190から混合融液290への移動による界面3の上昇を考慮して、GaN結晶6が界面3に接触するように上下機構220によって支持装置210を上下動させてもよい。
さらに、GaN結晶6の結晶成長とともに混合融液290中の金属Gaが消費され、この金属Gaの消費により界面3が低下するので、金属Gaの消費量を考慮して、GaN結晶6が界面3に接触するように上下機構220によって支持装置210を上下動させてもよい。
その他は、実施の形態1と同じである。
[実施の形態3]
図23は、実施の形態3における結晶成長装置の概略断面図である。図23を参照して、実施の形態3における結晶成長装置100Bは、図1に示す結晶成長装置100の配管40および加熱装置80を削除したものであり、その他は、結晶成長装置100と同じである。
結晶成長装置100Bにおいては、反応容器10は、混合融液290に代えて混合融液320を保持する。混合融液320は、金属Naと金属Gaと金属Liとの混合融液からなる。
図24は、反応容器10および外部反応容器20の温度および混合融液320中におけるLi濃度のタイミングチャートである。図24を参照して、結晶成長装置100Bにおいて、反応容器10および外部反応容器20は、結晶成長装置100と同じように曲線k2に従って昇温され、800℃に保持される。
曲線k4は、混合融液320中のLi濃度を示す。Li濃度は、混合融液320の温度がLiの融点である180℃に到達するタイミングt7から混合融液320の温度が800℃に昇温されるタイミングt2までの間、0.5モル%よりも低い0.4モル%に設定される。
そして、Li濃度は、タイミングt2からタイミングt6までの間、一定の割合で上昇する。この場合、Li濃度は、タイミングt3で0.5モル%になり、タイミングt6で0.8モル%になる。
実施の形態1において説明したように、混合融液320中のLi濃度が0.5〜0.8モル%の範囲よりも低い場合、表面が凹凸であるGaN結晶、すなわち、斜めファセットを有するGaN結晶530が結晶成長する。また、混合融液320中のLi濃度が0.5〜0.8モル%の範囲である場合、表面が略平坦であるGaN結晶が結晶成長する。
したがって、タイミングt2からタイミングt3までの間、斜めファセットを有するGaN結晶530を下地体5上に形成し、タイミングt3からタイミングt6までの間、表面が略平坦であるGaN結晶550をGaN結晶530上に形成する。
GaN結晶530,550の結晶成長の進行とともに、混合融液320中の金属Gaは、減少するので、混合融液320中のLi濃度は、タイミングt2からタイミングt6までの間、曲線k4によって示すように一定の割合で上昇する。
下地体5上へのGaN結晶530の結晶成長が開始するタイミングt2におけるLi濃度を0.5モル%よりも低い濃度に設定するためには、表1に示す2.2mgのLi量よりも少ない量の金属Liを金属Naおよび金属Gaとともにグローブボックス中で反応容器10中に入れておけばよい。
図25は、GaN結晶の製造方法を説明するための実施の形態3におけるフローチャートである。図25に示すフローチャートは、図11に示すフローチャートのステップS2をステップS2Aに代え、ステップS4,S8を削除したものであり、その他は、図11に示すフローチャートと同じである。
図25を参照して、上述したステップS1の後、金属Na、金属Gaおよび金属LiをArガス雰囲気中で反応容器10に入れる(ステップS2A)。その後、上述したステップS3,S5〜S7,S9,S10が順次実行され、GaN530,550が下地体5上に順次形成される。
この場合、図24に示すタイミングt2からタイミングt3までの間、ステップS7が実行され、図24に示すタイミングt3からタイミングt6までの間、ステップS9が実行される。
図26は、実施の形態3における結晶成長装置の他の概略断面図である。実施の形態3における結晶成長装置は、図26に示す結晶成長装置100Cであってもよい。図26を参照して、結晶成長装置100Cは、図15に示す結晶成長装置100Aの配管40および加熱装置80を削除したものであり、その他は、結晶成長装置100Aと同じである。
結晶成長装置100Cにおいては、反応容器10は、結晶成長装置100Bと同じように混合融液290に代えて混合融液320を保持する。
したがって、結晶成長装置100Cは、図24に示すタイミングt2からタイミングt6までの間、混合融液320中のLi濃度を曲線k4に従って変化させ、種結晶5AからGaN結晶530,550を順次成長させる。
図27は、GaN結晶の製造方法を説明するための実施の形態3における他のフローチャートである。図27に示すフローチャートは、図20に示すフローチャートのステップS2をステップS2Aに代え、ステップS4,S8を削除したものであり、その他は、図20に示すフローチャートと同じである。
図27を参照して、上述したステップS1の後、金属Na、金属Gaおよび金属LiをArガス雰囲気中で反応容器10に入れる(ステップS2A)。その後、上述したステップS3,S5,S6,S6A,S7,S9,S9A,S10が順次実行され、GaN530,550が下地体5上に順次形成される。
この場合も、図24に示すタイミングt2からタイミングt3までの間、ステップS7が実行され、図24に示すタイミングt3からタイミングt6までの間、ステップS9が実行される。
このように、反応容器10中に金属Na、金属Gaおよび金属Liをグローブボックス中で仕込んでおく方法によっても、貫通転位を下地体5からの結晶成長方向と異なる方向に曲げて転位密度を低減したGaN結晶を製造できる。
その他は、実施の形態1または実施の形態2と同じである。
図28は、抑制/導入栓の他の斜視図である。また、図29は、図28に示す抑制/導入栓400の固定方法を説明するための断面図である。図28を参照して、抑制/導入栓400は、栓401と、複数の凸部402とからなる。栓401は、長さ方向DR3へ直径が変化する円柱形状からなる。複数の凸部402の各々は、略半球形状を有し、直径が数十μmである。そして、複数の凸部402は、栓401の外周面401Aにランダムに形成される。ただし、隣接する2つの凸部402の間隔は、数十μmに設定される。
図29を参照して、抑制/導入栓400は、支持部材403,404によって外部反応容器20と配管30との連結部に固定される。より具体的には、抑制/導入栓400は、一方端が外部反応容器20に固定された支持部材403と、一方端が配管30の内壁に固定された支持部材404とによって挟まれることによって固定される。
この場合、抑制/導入栓400の凸部402は、外部反応容器20および配管30に接していてもよく、接していなくてもよい。凸部402が外部反応容器20および配管30に接しないように抑制/導入栓400が固定される場合、凸部402と外部反応容器20および配管30との間隔を表面張力によって金属融液190を保持可能な間隔に設定して抑制/導入栓400を支持部材403,404によって固定する。
反応容器10と外部反応容器20との間に保持された金属Naは、反応容器10および外部反応容器20の加熱が開始される前、固体であるので、ガスボンベ140から供給された窒素ガスは、外部反応容器20内の空間23と配管30内の空間31との間を抑制/導入栓400を介して拡散可能である。
そして、反応容器10および外部反応容器20の加熱が開始され、反応容器10および外部反応容器20の温度が98℃以上に昇温されると、反応容器10と外部反応容器20との間に保持された金属Naは、溶けて金属融液190になり、窒素ガスを空間23に閉じ込める。
また、抑制/導入栓400は、金属融液190が外部反応容器20の内部から配管30の空間31へ流出しないように金属融液190の表面張力によって金属融液190を保持する。
さらに、金属融液190および抑制/導入栓400は、GaN結晶の成長が進行すると、窒素ガスと、金属融液190および混合融液290から蒸発した金属Na蒸気とを空間23に閉じ込める。その結果、金属融液190から混合融液290への金属Naの移動および混合融液290から金属融液190への金属Naの移動による混合融液290中の金属Naと金属Gaとのモル比率の変動を抑制できる。そして、GaN結晶の成長が進行するに伴って、空間23内の窒素ガスが減少すると、空間23内の圧力P1は、配管30の空間31の圧力P2よりも低くなり、抑制/導入栓400は、空間31の窒素ガスを外部反応容器20の方向へ通過させ、金属融液190を介して空間23へ供給する。
このように、抑制/導入栓400は、上述した抑制/導入栓50と同じように作用する。したがって、抑制/導入栓400は、抑制/導入栓50に代えて結晶成長装置100,100A,100B,100Cに用いられる。
上記においては、抑制/導入栓400は、凸部402を有すると説明したが、抑制/導入栓400は、凸部402を有していなくてもよい。この場合、栓401と外部反応容器20および配管30との間隔が数十μmになるように、抑制/導入栓400は、支持部材によって固定される。
そして、抑制/導入栓400(凸部402を有する場合と凸部402を有さない場合とを含む。以下、同じ)と外部反応容器20および配管30との間隔は、抑制/導入栓400の温度に応じて決定されるようにしてもよい。この場合、抑制/導入栓400の温度が相対的に高い場合、抑制/導入栓400と外部反応容器20および配管30との間隔は、相対的に小さく設定される。また、抑制/導入栓400の温度が相対的に低い場合、抑制/導入栓400と外部反応容器20および配管30との間隔は、相対的に大きく設定される。
表面張力により金属融液190を保持可能な抑制/導入栓400と外部反応容器20および配管30との間隔は、抑制/導入栓400の温度によって変化する。したがって、抑制/導入栓400と外部反応容器20および配管30との間隔を抑制/導入栓400の温度に応じて変化させ、表面張力によって金属融液190を確実に保持できるようにしたものである。
そして、抑制/導入栓400の温度制御は、加熱装置70によって行われる。すなわち、抑制/導入栓400の温度を150℃よりも高い温度に昇温する場合には、加熱装置70によって抑制/導入栓400を加熱する。
図30は、抑制/導入栓のさらに他の斜視図である。図30を参照して、抑制/導入栓410は、複数の貫通孔412が形成された栓411からなる。複数の貫通孔412は、栓411の長さ方向DR2に沿って形成される。そして、複数の貫通孔412の各々は、数十μmの直径を有する(図30の(a)参照)。
なお、抑制/導入栓410においては、貫通孔412は、少なくとも1個形成されていればよい。
また、抑制/導入栓420は、複数の貫通孔422が形成された栓421からなる。複数の貫通孔422は、栓421の長さ方向DR2に沿って形成される。そして、複数の貫通孔422の各々は、長さ方向DR2へ複数段に変化された直径r1,r2,r3を有する。直径r1,r2,r3の各々は、金属融液190を表面張力により保持可能な範囲で決定され、たとえば、数μm〜数十μmの範囲で決定される(図30の(b)参照)。
なお、抑制/導入栓420においては、貫通孔422は、少なくとも1個形成されていればよい。また、貫通孔422の直径は、少なくとも2個に変化されればよい。さらに、貫通孔422の直径は、長さ方向DR2へ連続的に変えられてもよい。
抑制/導入栓410または420は、結晶成長装置100,100A,100B,100Cの抑制/導入栓50に代えて用いられる。
特に、抑制/導入栓420が抑制/導入栓50に代えて用いられた場合、結晶成長装置100,100A,100B,100Cにおいて、抑制/導入栓420の温度制御を精密に行なわなくても、複数段に変えられた直径のいずれかによって金属融液190を金属融液190の表面張力により保持できるので、抑制/導入栓420の温度制御を精密に行なわなくても、大きさサイズを有するGaN結晶を製造できる。
さらに、この発明においては、抑制/導入栓50に代えてポーラスプラグまたは逆流防止弁を用いてもよい。ポーラスプラグは、ステンレスの粉末を焼結した焼結体からなり、数十μmの空孔が多数形成された構造を有する。したがって、ポーラスプラグは、上述した抑制/導入栓60と同じように金属融液190の表面張力によって金属融液190を保持可能である。
また、この発明における逆流防止弁は、低温部分に用いられるバネ式の逆流防止弁と、高温部分に用いられるピストン式の逆流防止弁との両方を含む。このピストン式の逆流防止弁とは、空間31内の圧力P2が空間23内の圧力P1よりも高いとき、圧力P2と圧力P1との差圧によってピストンが1対のガイドに沿って上方向へ移動して空間31の窒素ガスを金属融液190を介して空間23へ供給し、P1≧P2であるとき、自重によってピストンが外部反応容器20と配管30との連結部を塞ぐ形式の逆流防止弁である。したがって、この逆流防止弁は、高温部分においても使用できる。
上述した実施の形態1〜実施の形態3においては、斜めファセットが形成される条件および表面が平坦になる条件でGaN結晶を、順次、下地体5,5A,5B,5C上に結晶成長させることによって、貫通転位を低減したGaN結晶550を製造すると説明したが、この発明においては、これに限らず、一般的には、貫通転位の方向を下地体からの結晶成長方向と異なる方向に曲げる条件および表面が下地体からの結晶成長方向に略垂直な面になる条件でGaN結晶を、順次、下地体5,5A,5B,5C上に結晶成長させることによって、貫通転位を低減したGaN結晶を製造するものであればよい。
また、上述した実施の形態1〜実施の形態3においては、結晶成長温度は、800℃であると説明したが、この発明においては、これに限らず、結晶成長温度は、600℃以上であればよい。また、窒素ガス圧力も0.4MPa以上の加圧状態の本結晶成長方法で成長可能な圧力であればよい。すなわち、上限も本実施の形態の5.05MPaに限定されるものではなく、5.05MPa以上の圧力であってもよい。
さらに、上記においては、Arガス雰囲気中で金属Naおよび金属Gaを反応容器10に入れ、Arガス雰囲気中で金属Naを反応容器10および外部反応容器20間に入れると説明したが、この発明においては、これに限らず、He、NeおよびKr等のArガス以外のガスまたは窒素ガス雰囲気中で金属Naおよび金属Gaを反応容器10に入れ、金属Naを反応容器10および外部反応容器20間に入れ、金属Liおよび金属Gaを配管40に入れてもよく、一般的には、不活性ガスまたは窒素ガス雰囲気中で金属Naおよび金属Gaを反応容器10に入れ、金属Naを反応容器10および外部反応容器20間に入れ、金属Liおよび金属Gaを配管40に入れればよい。そして、この場合、不活性ガスまたは窒素ガスは、水分量が10ppm以下であり、かつ、酸素量が10ppm以下である。
さらに、金属Gaと混合する金属は、Naであると説明したが、この発明においては、これに限らず、カリウム(K)等のアルカリ金属、またはマグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)およびストロンチウム(Sr)等のアルカリ土類金属を金属Gaと混合して混合融液290を生成してもよい。そして、これらのアルカリ金属が溶けたものは、アルカリ金属融液を構成し、これらのアルカリ土類金属が溶けたものは、アルカリ土類金属融液を構成する。
さらに、窒素ガスに代えて、アジ化ナトリウムおよびアンモニア等の窒素を構成元素に含む化合物を用いてもよい。そして、これらの化合物は、窒素原料ガスを構成する。
さらに、Gaに代えて、ボロン(B)、アルミニウム(Al)およびインジウム(In)等のIII族金属を用いてもよい。
したがって、この発明による製造方法は、一般的には、アルカリ金属またはアルカリ土類金属とIII族金属(ボロンを含む)との混合融液を用いてIII族窒化物結晶を製造するものであればよい。
そして、この発明による製造方法を用いて製造したIII族窒化物結晶は、発光ダイオード、半導体レーザ、フォトダイオードおよびトランジスタ等のIII族窒化物半導体デバイスの作製に用いられる。
なお、この発明においては、「III族」とは、IUPAC(国際純正応用化学連合)方式の元素周期表におけるIIIB族を言う。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。