本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
[実施の形態1]
図1は、この発明の実施の形態1による結晶成長装置の概略断面図である。図1を参照して、この発明の実施の形態1による結晶成長装置100は、坩堝10と、反応容器20と、配管30,200と、ベローズ40と、支持装置50と、抑制/導入栓60と、加熱装置70,80と、温度センサー71,81と、ガス供給管90,110,250と、バルブ120,121,160と、圧力調整器130と、ガスボンベ140,270と、排気管150と、真空ポンプ170と、圧力センサー180と、金属融液190と、熱電対210と、上下機構220と、振動印加装置230と、振動検出装置240と、流量計260と、温度制御装置280とを備える。
坩堝10は、略円柱形状を有し、ボロンナイトライド(BN)からなる。反応容器20は、坩堝10と所定の間隔を隔てて坩堝10の周囲に配置される。そして、反応容器20は、本体部21と、蓋部22とからなる。本体部21および蓋部22の各々は、SUS316Lからなり、本体部21と蓋部22との間は、メタルオーリングによってシールされる。したがって、後述する混合融液290が外部へ漏洩することがない。
配管30は、重力方向DR1において、坩堝10の下側で反応容器20に連結される。ベローズ40は、重力方向DR1において、坩堝10の上側で反応容器20に連結される。支持装置50は、中空の円筒形状からなり、一部がベローズ40を介して反応容器20の空間23内へ挿入される。
抑制/導入栓60は、たとえば、金属およびセラミック等からなり、反応容器20と配管30との連結部よりも下側の配管30内に保持される。
加熱装置70は、反応容器20の外周面20Aを囲むように配置される。加熱装置80は、反応容器20の底面20Bに対向して配置される。温度センサー71,81は、それぞれ、加熱装置70,80に近接して配置される。
ガス供給管90は、一方端がバルブ120を介して反応容器20に連結され、他方端が圧力調整器130を介してガスボンベ140に連結される。ガス供給管110は、一方端がバルブ121を介して配管30に連結され、他方端がガス供給管90に連結される。
バルブ120は、反応容器20の近傍でガス供給管90に装着される。バルブ121は、配管30の近傍でガス供給管110に装着される。圧力調整器130は、ガスボンベ140の近傍でガス供給管90に装着される。ガスボンベ140は、ガス供給管90に連結される。
排気管150は、一方端がバルブ160を介して反応容器20に連結され、他方端が真空ポンプ170に連結される。バルブ160は、反応容器20の近傍で排気管150に装着される。真空ポンプ170は、排気管150に連結される。
圧力センサー180は、反応容器20に取り付けられる。金属融液190は、金属ナトリウム(金属Na)融液からなり、坩堝10と反応容器20との間および配管30内に保持される。
配管200および熱電対210は、支持装置50の内部に挿入される。上下機構220は、ベローズ40よりも上側において支持装置50に取り付けられる。ガス供給管250は、一方端が配管200に連結され、他方端が流量計260を介してガスボンベ270に連結される。流量計260は、ガスボンベ270の近傍でガス供給管250に装着される。ガスボンベ270は、ガス供給管250に連結される。
坩堝10は、金属Naと、金属ガリウム(金属Ga)とを含む混合融液290を保持する。反応容器20は、坩堝10の周囲を覆う。配管30は、ガス供給管90,110を介してガスボンベ140から供給された窒素ガス(N2ガス)を抑制/導入栓60に導く。
ベローズ40は、支持装置50を保持するとともに、反応容器20の内部と外部とを遮断する。また、ベローズ40は、支持装置50の重力方向DR1への移動に伴って重力方向DR1に伸縮する。支持装置50は、反応容器20内に挿入された一方端にGaN結晶からなる種結晶5を支持する。
抑制/導入栓60は、配管30の内壁との間に数十μmの孔が形成されるように外周面に凹凸構造を有し、配管30内の窒素ガスを金属融液190の方向へ通過させ、窒素ガスを金属融液190を介して空間23内へ供給する。また、抑制/導入栓60は、数十μmの孔の表面張力により金属融液190を坩堝10と反応容器20との間および配管30内に保持する。
加熱装置70は、ヒーターと、電流源とからなる。そして、加熱装置70は、温度制御装置280からの制御信号CTL1に応じて電流源によってヒーターに電流を流し、反応容器20の外周面20Aから坩堝10および反応容器20を結晶成長温度に加熱する。温度センサー71は、加熱装置70のヒーターの温度T1を検出し、その検出した温度T1を温度制御装置280へ出力する。
加熱装置80も、ヒーターと、電流源とからなる。そして、加熱装置80は、温度制御装置280からの制御信号CTL2に応じて電流源によってヒーターに電流を流し、反応容器20の底面20Bから坩堝10および反応容器20を結晶成長温度に加熱する。温度センサー81は、加熱装置80のヒーターの温度T2を検出し、その検出した温度T2を温度制御装置280へ出力する。
ガス供給管90は、ガスボンベ140から圧力調整器130を介して供給された窒素ガスをバルブ120を介して反応容器20内へ供給する。ガス供給管110は、ガスボンベ140から圧力調整器130を介して供給された窒素ガスをバルブ121を介して配管30内へ供給する。
バルブ120は、ガス供給管90内の窒素ガスを反応容器20内へ供給し、または窒素ガスの反応容器20内への供給を停止する。バルブ121は、ガス供給管110内の窒素ガスを配管30へ供給し、または窒素ガスの配管30への供給を停止する。圧力調整器130は、ガスボンベ140からの窒素ガスを所定の圧力にしてガス供給管90,110に供給する。
ガスボンベ140は、窒素ガスを保持する。排気管150は、反応容器20内の気体を真空ポンプ170へ通過させる。バルブ160は、反応容器20内と排気管150とを空間的に繋げ、または反応容器20内と排気管150とを空間的に遮断する。真空ポンプ170は、排気管150およびバルブ160を介して反応容器20内の真空引きを行なう。
圧力センサー180は、反応容器20内の圧力を検出する。金属融液190は、抑制/導入栓60を介して導入された窒素ガスを空間23へ供給する。
配管200は、ガス供給管250から供給された窒素ガスを一方端から支持装置50内へ放出して種結晶5を冷却する。熱電対210は、種結晶5の温度T3を検出し、その検出した温度T3を温度制御装置280へ出力する。
上下機構220は、振動検出装置240からの振動検出信号BDSに応じて、後述する方法によって、種結晶5が空間23と混合融液290との気液界面3に接するように支持装置50を上下する。
振動印加装置230は、たとえば、圧電素子からなり、所定の周波数を有する振動を支持装置50に印加する。振動検出装置240は、たとえば、加速度ピックアップからなり、支持装置50の振動を検出するとともに、支持装置50の振動を示す振動検出信号BDSを上下機構220へ出力する。
ガス供給管250は、ガスボンベ270から流量計260を介して供給された窒素ガスを配管200へ供給する。流量計260は、温度制御装置280からの制御信号CTL3に応じて、ガスボンベ270から供給された窒素ガスの流量を調整してガス供給管250へ供給する。ガスボンベ270は、窒素ガスを保持する。
図2は、図1に示す抑制/導入栓60の斜視図である。図2を参照して、抑制/導入栓60は、栓61と、凸部62とを含む。栓61は、略円柱形状からなる。凸部62は、略半円形の断面形状を有し、栓61の外周面に栓61の長さ方向DR2に沿って形成される。
図3は、抑制/導入栓60の配管30への取付状態を示す平面図である。図3を参照して、凸部62は、栓61の円周方向に複数個形成され、複数の凸部62は、数十μmの間隔dで形成される。また、凸部62は、数十μmの高さHを有する。抑制/導入栓60の複数の凸部62は、配管30の内壁30Aに接する。これにより、抑制/導入栓60は、配管30の内壁30Aに嵌合する。
凸部62が数十μmの高さHを有し、数十μmの間隔dで栓61の外周面に配置される結果、抑制/導入栓60が配管30の内壁30Aに嵌合した状態では、抑制/導入栓60と配管30の内壁30Aとの間に、直径が略数十μmである空隙63が複数個形成される。
この空隙63は、栓61の長さ方向DR2に窒素ガスを通過させるとともに、金属融液190を金属融液190の表面張力によって保持し、金属融液190が栓61の長さ方向DR2に通過するのを阻止する。
図4は、図1に示す支持装置50、配管200および熱電対210の拡大図である。図4を参照して、支持装置50は、筒状部材51と、固定部材52,53とを含む。筒状部材51は、略円形の断面形状を有する。固定部材52は、略L字形状の断面形状を有し、筒状部材51の一方端511側において筒状部材51の外周面51Aおよび底面51Bに固定される。また、固定部材53は、略L字形状の断面形状を有し、筒状部材51の一方端511側において固定部材52と対称に配置されるように筒状部材51の外周面51Aおよび底面51Bに固定される。その結果、筒状部材51および固定部材52,53によって囲まれた領域には、空間部54が形成される。
配管200は、略円形の断面形状を有し、筒状部材51の内部に配置される。この場合、配管200の底面200Aは、筒状部材51の底面51Bに対向するように配置される。そして、配管200の底面200Aには、複数の空孔201が形成される。配管200内へ供給された窒素ガスは、複数の空孔201を介して筒状部材51の底面51Bに吹き付けられる。
熱電対210は、一方端210Aが筒状部材51の底面51Bに接するように筒状部材51の内部に配置される(図4の(a)参照)。
そして、種結晶5は、空間部54に嵌合する形状を有し、空間部54に嵌合することにより支持装置50によって支持される。この場合、種結晶5は、筒状部材51の底面51Bに接する(図4の(b)参照)。
したがって、種結晶5と筒状部材51との間の熱伝導率が高くなる。その結果、熱電対210によって種結晶5の温度T3を検出できるとともに、配管200から筒状部材51の底面51Bに吹き付けられた窒素ガスによって種結晶5を容易に冷却できる。
図5は、図1に示す上下機構220の構成を示す概略図である。図5を参照して、上下機構220は、凹凸部材221と、歯車222と、軸部材223と、モータ224と、制御部225とを含む。
凹凸部材221は、略三角形状の断面形状からなり、筒状部材51の外周面51Aに固定される。歯車222は、軸部材223の一方端に固定され、凹凸部材221と噛み合う。軸部材223は、その一方端が歯車222に連結され、他方端がモータ224のシャフト(図示せず)に連結される。
モータ224は、制御部225からの制御に従って歯車222を矢印226または227の方向へ回転させる。制御部225は、振動検出装置240からの振動検出信号BDSに基づいて、歯車222を矢印226または227の方向へ回転させるようにモータ224を制御する。
歯車222が矢印226の方向へ回転すれば、支持装置50は、重力方向DR1において上方向へ移動し、歯車222が矢印227の方向へ回転すれば、支持装置50は、重力方向DR1において下方向へ移動する。
したがって、歯車222を矢印226または227の方向へ回転させることは、支持装置50を重力方向DR1において上下させることに相当する。
図6は、振動検出信号BDSのタイミングチャートである。図6を参照して、振動検出装置240によって検出される振動検出信号BDSは、種結晶5が混合融液290に接していないとき、信号成分SS1からなり、種結晶5が混合融液290に接しているとき、信号成分SS2からなり、種結晶5が混合融液290中に浸漬されているとき、信号成分SS3からなる。
種結晶5が混合融液290に接していないとき、種結晶5は、振動印加装置230により印加された振動によって大きく振動するので、振動検出信号BDSは、振幅が相対的に大きい信号成分SS1からなる。一方、種結晶5が混合融液290に接しているとき、種結晶5は、振動印加装置230から振動が印加されても、混合融液290の粘性によって大きく振動できないので、振動検出信号BDSは、振幅が相対的に小さい信号成分SS2からなる。また、種結晶5が混合融液290中に浸漬されているとき、種結晶5は、混合融液290の粘性によってさらに振動し難くなるので、振動検出信号BDSは、振幅が信号成分SS2よりも小さい信号成分SS3になる。
再び、図5を参照して、制御部225は、振動検出装置240から振動検出信号BDSを受けると、振動検出信号BDSの信号成分を検出する。そして、制御部225は、その検出した信号成分が信号成分SS1からなるとき、振動検出信号BDSの信号成分が信号成分SS2になるまで、支持装置50を重力方向DR1において降下させるようにモータ224を制御する。
より具体的には、制御部225は、歯車222を矢印227の方向へ回転させるようにモータ224を制御し、モータ224は、制御部225からの制御に従って歯車222を軸部材223を介して矢印227の方向へ回転させる。これによって、支持装置50は、重力方向DR1において下方向へ移動する。
そして、制御部225は、振動検出装置240から受ける振動検出信号BDSの信号成分が信号成分SS1から信号成分SS2へ切換わると、歯車222の回転を停止するようにモータ224を制御し、モータ224は、制御部225からの制御に従って歯車222の回転を停止させる。これによって、支持装置50は、移動を停止し、種結晶5を気液界面3に保持する。
一方、制御部225は、信号成分SS2からなる振動検出信号BDSを振動検出装置240から受けたとき、支持装置50の移動を停止するようにモータ224を制御する。この場合は、種結晶5が混合融液290に既に接触しているからである。
このように、上下機構220は、振動検出装置240が検出する振動検出信号BDSに基づいて、種結晶5が混合融液290に接するように支持装置50を重力方向DR1に移動させる。
図7は、坩堝10および反応容器20の温度のタイミングチャートである。また、図8は、図7に示す2つのタイミングt1,t2間における坩堝10および反応容器20内の状態を示す模式図である。さらに、図9は、種結晶5の温度と窒素ガスの流量との関係を示す図である。
なお、図7において、直線k1は、坩堝10および反応容器20の温度を示し、曲線k2および直線k3は、種結晶5の温度を示す。
図7を参照して、加熱装置70,80は、直線k1に従って温度が上昇し、かつ、800℃に保持されるように坩堝10および反応容器20を加熱する。加熱装置70,80が坩堝10および反応容器20を加熱し始めると、坩堝10および反応容器20の温度は、上昇し始め、タイミングt1において98℃に達し、タイミングt2で800℃に達する。
そうすると、坩堝10と反応容器20との間に保持された金属Naは溶け、金属融液190(=金属Na融液)になり、坩堝10内に保持された金属Naおよび金属Gaも溶け、混合融液290になる。そして、坩堝10および反応容器20の温度が上昇するに伴って、金属Naが金属融液190および混合融液290から空間23へ蒸発する。その結果、空間23内には、窒素ガス4および金属Na蒸気7が混在し、この窒素ガス4および金属Na蒸気7は、金属融液190(=金属Na融液)および抑制/導入栓60を介して配管30内の空間31へ拡散することができず、空間23内に閉じ込められる(図8参照)。
また、坩堝10および反応容器20の温度が98℃に達するタイミングt1から800℃に達するタイミングt2までの間に、上下機構220は、振動検出装置240からの振動検出信号BDSに基づいて、上述した方法によって支持装置50を上下し、種結晶5を混合融液290に接触させる。
そして、坩堝10および反応容器20の温度が800℃に達すると、空間23内の窒素ガス4は、金属Naを媒介として混合融液290中に取り込まれる。この場合、混合融液290中の窒素濃度またはGaxNy(x,yは実数)の濃度は、は、空間23と混合融液290との気液界面3付近において最も高いため、GaN結晶が気液界面3に接している種結晶5から成長し始める。なお、以下においては、GaxNyを「III族窒化物」と言い、GaxNyの濃度を「III族窒化物濃度」と言う。そして、この発明においては、「III族」とは、IUPAC(国際純正応用化学連合)方式の元素周期表におけるIIIB族を言う。
窒素ガスを配管200内へ供給しない場合、種結晶5の温度T3は、混合融液290の温度と同じ800℃であるが、この発明においては、種結晶5付近の混合融液290中の窒素の過飽和度を上げるために、配管200内へ窒素ガスを供給して種結晶5を冷却し、種結晶5の温度T3を混合融液290の温度よりも低くする。
より具体的には、種結晶5の温度T3は、タイミングt2以降、曲線k2に従って800℃よりも低い温度Ts1に設定される。この温度Ts1は、例えば、790℃である。種結晶5の温度T3を温度Ts1に設定する方法について説明する。
温度制御装置280は、温度センサー71,81および熱電対210からそれぞれ受けた温度T1,T2,T3が800℃に達すると、種結晶5の温度T3を温度Ts1に設定する流量からなる窒素ガスを流すための制御信号CTL3を生成して流量計260へ出力する。
そうすると、流量計260は、制御信号CTL3に応じて、温度T3を温度Ts1に設定する流量からなる窒素ガスをガスボンベ270からガス供給管250を介して配管200内へ流す。種結晶5の温度は、窒素ガスの流量に略比例して800℃から低下し、窒素ガスの流量が流量fr1(sccm)になると、種結晶5の温度T3は、温度Ts1に設定される(図9参照)。
したがって、流量計260は、流量fr1からなる窒素ガスを配管200内へ流す。そして、配管200内へ供給された窒素ガスは、配管200の複数の空孔201から筒状部材51の底面51Bに吹き付けられる。
これによって、種結晶5は、筒状部材51の底面51Bを介して冷却され、種結晶5の温度T3は、タイミングt3で温度Ts1に低下し、その後、タイミングt4まで温度Ts1に保持される。
加熱装置70,80のヒーターの温度T1,T2は、坩堝10および反応容器20の温度と所定の温度差を有するため、温度制御装置280は、種結晶5の温度T3が800℃から低下し始めると、温度センサー71,81からそれぞれ受けた温度T1,T2が坩堝10および反応容器20の温度を800℃に設定する温度になるように制御信号CTL1,2によってそれぞれ加熱装置70,80を制御する。
なお、この発明においては、好ましくは、種結晶5の温度T3は、タイミングt2以降、直線k3に従って低下するように制御される。すなわち、種結晶5の温度T3は、タイミングt2からタイミングt4までの間で800℃から温度Ts2(<Ts1)まで低下される。この場合、流量計260は、温度制御装置280からの制御信号CTL3に基づいて、直線k4に従って配管200内へ流す窒素ガスの流量を0から流量fr2まで増加する。窒素ガスの流量が流量fr2になると、種結晶5の温度T3は、温度Ts1よりも低い温度Ts2に設定される。そして、温度Ts2は、たとえば、750℃である。
このように、混合融液290の温度(=800℃)と種結晶5の温度T3との差を徐々に大きくするのは、次の2つの理由による。
1つ目の理由は、GaN結晶の結晶成長の進行とともに、種結晶5には、GaN結晶が付着するので、種結晶5の温度を徐々に低下させないと、種結晶5から結晶成長したGaN結晶の温度を混合融液290の温度よりも低い温度に設定し難くなるからである。
2つ目の理由は、GaN結晶の結晶成長の進行とともに、混合融液290中のGaが消費され、γ=Na/(Na+Ga)が大きくなり、混合融液290中の窒素濃度またはIII族窒化物濃度が過飽和よりも低くなるので、種結晶5の温度を徐々に低下させないと、混合融液290中の窒素濃度またはIII族窒化物濃度を過飽和に保持し難くなるからである。
したがって、GaN結晶の結晶成長の進行とともに、種結晶5の温度を徐々に低下させることによって、種結晶5付近の混合融液290中の窒素またはIII族窒化物の過飽和度を少なくとも保持することができ、GaN結晶の成長速度を継続することが可能となる。その結果、GaN結晶のサイズを拡大できる。
結晶成長装置100においてGaN結晶を結晶成長させる場合、種結晶5は、結晶成長装置100において種結晶5を用いずに結晶成長させたGaN結晶からなる。図10は、GaN結晶を成長させる場合の窒素ガス圧と結晶成長温度との関係を示す図である。図10において、横軸は、結晶成長温度を表し、縦軸は、窒素ガス圧を表す。図10において、領域REGは、坩堝10の混合融液290に接する底面および側面においてc軸(<0001>)方向に成長した柱状形状のGaN結晶が製造される領域である。
したがって、種結晶5を作製する場合、領域REG内における窒素ガス圧および結晶成長温度を用いてGaN結晶を成長させる。この場合、坩堝10内の底面および側壁に多くの核が発生し、c軸方向に成長した柱状形状のGaN結晶が製造される。
そして、結晶成長させた多くのGaN結晶の中から図4に示す形状のGaN結晶を切り出して種結晶5を作製する。したがって、種結晶5の突出部5A(図4の(b)参照)は、c軸(<0001>)方向に成長したGaN結晶からなる。
作製した種結晶5は、上述した方法によって支持装置50の空間部54に嵌合されて支持装置50に固定される。
上述したように、この発明においては、抑制/導入栓60および金属融液190(=金属Na融液)によって窒素ガス4および金属Na蒸気7を坩堝10および反応容器20内の空間23に閉じ込めてGaN結晶を成長させることを特徴とする。
つまり、金属融液190および混合融液290から蒸発した金属Naが外部へ拡散するのを抑制/導入栓60および金属融液190(=金属Na融液)によって防止してGaN結晶を成長させることを特徴とする。
そして、GaN結晶を結晶成長させる期間中、この特徴を維持するためには、坩堝10および反応容器20の温度が金属Naの融点以上に昇温されている期間中、金属融液190(=金属Na融液)が坩堝10と反応容器20との間に保持されている必要がある。
すなわち、坩堝10と反応容器20との間に入れられた金属Naが全て金属Na蒸気7になり、混合融液290から蒸発した金属Na蒸気7が抑制/導入栓60を介して外部へ拡散しないようにする必要がある。
そこで、坩堝10および反応容器20の温度が金属Naの融点以上に昇温されている期間中、金属Naが坩堝10と反応容器20との間に液体として存在するために必要な金属Naの量について説明する。
図11は、図1に示す結晶成長装置100に入れる金属Naの量を計算するための実施の形態1における図である。図11を参照して、反応容器20の容積のうち、気液界面1以下の反応容器20の容積をAとし、坩堝10の容積をBとし、抑制/導入栓60よりも上側の配管30内の容積をCとすると、坩堝10と反応容器20との間および配管30内に保持される金属融液190の容積V1は、次式によって表わされる。
V1=A−B+C・・・(1)
ここで、反応容器20の内径φ1を11.6cmとし、坩堝10の外径φ2を10.0cmとし、配管30の内径φ3を0.94cmとし、坩堝10の高さH1を10.0cmとし、坩堝10の下側に保持される金属融液190の高さH2を0.5cmとし、反応容器20に保持された金属融液190の高さ3を8.5cmとし、配管30内に保持された金属融液190の高さH4を20.0cmとし、坩堝10の高さH1の80%(=8.0cm)まで混合融液290が満たされるとすると、容積Aは、898.3cm3となり、容積Bは、628.3cm3となり、容積Cは、55.5cm3となる。
したがって、金属融液190の容積V1は、式(1)より、V1=898.3−628.3+55.5=325.5cm3となる。
一方、反応容器20内の空間23の容積V2は、坩堝10の上端を基準として考えると、V2=5.8×5.8×π×6.5=686.9cm3となる。
空間23の温度が850℃になったときに、空間23に存在し得る金属Naの最大量を求める。850℃におけるNaの蒸気圧Pは、P=0.744(atm)であり、空間23の体積V2は、V=0.6869(L)である。したがって、P=0.744(atm)、V=0.6869(L)、気体定数R=0.08206atm・L/K・mol、および温度T=850+273.15=1123.15KをPV=nRTに代入し、Naのモル数nを求めると、n=0.0055molとなる。
液体で325.5cm3の容積を占めるNaのモル数を求める。1000Kの温度におけるNaの密度として0.777g/cm3という値を用いると、容積が325.5cm3であるNaの重量は、325.5cm3×0.777g/cm3=252.9gとなる。そうすると、Naの原子量が23であるので、液体で325.5cm3の容積を占めるNaのモル数は、11molとなる。
したがって、外径φ2が10.0cmである坩堝10を用いた場合、反応容器20に入れた金属Naの0.05%(=(0.0055mol/11mol)×100)が蒸気として存在する。
この結果から、325.5cm3の金属融液190が坩堝10と反応容器20との間および配管30内に溜まるように反応容器20内に金属Naを入れた場合、その入れた金属Naの0.05%が金属Na蒸気として空間23へ蒸発する。すなわち、反応容器20に入れた金属Naの殆どが、液体のまま、坩堝10と反応容器20との間および配管30内に留まる。
混合融液290から空間23へ蒸発した金属Na蒸気7は、空間23と抑制/導入栓60との間に金属融液190(=液体Na)が存在する場合、抑制/導入栓60を介して外部へ拡散することができない。
したがって、反応容器20内に入れた金属Naの量をM1とし、金属Naの融点以上のある温度において空間23に蒸気として存在するNaの量をM2とすると、混合融液290から空間23へ蒸発した金属Na蒸気7が外部へ拡散しないようにするには、次の関係が成立すればよい。
M1>M2・・・(2)
式(2)が成立する場合、坩堝10と反応容器20の間および配管30内に金属融液190(=液体Na)が存在するので、混合融液290から空間23へ蒸発した金属Na蒸気7は外部へ拡散できない。
厳密には、金属融液190を構成する液体Naのうち、一部が固化して抑制/導入栓60に付着するので、固化して抑制/導入栓60に付着するNa量をM3とすると、次の関係が成立するときに、混合融液290から空間23へ蒸発した金属Na蒸気7は外部へ拡散できない。
M1−M2>M3・・・(3)
図12は、図1に示す結晶成長装置100に入れる金属Naの量を計算するための実施の形態1における他の図である。図12を参照して、金属Na蒸気7が液体として溜まる低温領域24が空間23に接して存在する場合、空間23の容積V2に加え、低温領域24の容積V3を考慮して反応容器20に入れる金属Naの量を決定する必要がある。
金属融液190から蒸発したNaは、空間23に金属Na蒸気7として存在するNaと、低温領域24に液体として溜まるNaとからなる。したがって、低温領域24に溜まるNaの量をM4とすると、次の関係が成立するときに、混合融液290から空間23へ蒸発した金属Na蒸気7は外部へ拡散できない。
M1−M2>M4・・・(4)
また、低温領域24が存在する場合において、固化して抑制/導入栓60に付着するNa量M3を考慮すると、次の関係が成立するときに、混合融液290から空間23へ蒸発した金属Na蒸気7は外部へ拡散できない。
M1−M2−M4>M3・・・(5)
結晶成長装置100において、空間23に接する低温領域24になるのは、ベローズ40または反応容器20の圧力を低くするためのリリースバルブを取り付けるための配管(図示せず)である。ベローズ40を2.8cmの外径と10cmの高さとを有する円筒と仮定すると、ベローズ40の容積は、60cm3である。また、リリースバルブを取り付けるための配管の容積は、内径を0.4cmとし、長さを5cmとして0.6cm3である。
したがって、低温領域24の容積は、60+0.6=60.6cm3となり、結晶成長装置100において、低温領域24が存在しても、325.5cm3−60.6cm3=260cm3のNaが液体として坩堝10と反応容器20との間および配管30内に存在する。
この発明においては、上述した式(2)〜式(5)のいずれかによって示される関係を有する量M1の金属Naを反応容器20に入れてGaN結晶を結晶成長する。
図13は、GaN結晶の製造方法を説明するための実施の形態1におけるフローチャートである。図13を参照して、一連の動作が開始されると、Arガスが充填されたグローブボックス内へ坩堝10および反応容器20を入れる。そして、Arガス雰囲気中で金属Naおよび金属Gaを坩堝10に入れる(ステップS1)。この場合、金属Naおよび金属Gaを5:5のモル比率で坩堝10に入れる。なお、Arガスは、水分量が10ppm以下であり、かつ、酸素量が10ppm以下であるArガスである(以下、同じ)。
その後、金属Naの融点以上の温度において金属Naが液体として空間23と外部との間に存在し得る量だけ金属NaをArガス雰囲気中で坩堝10と反応容器20との間に入れる(ステップS2)。
より具体的には、上述した式(2)が成立するときは、金属Naの融点以上の温度において空間23に蒸気として存在するNa量M2よりも多い量M1の金属Naを坩堝10と反応容器20との間に入れる。
また、上述した式(3)が成立するときは、金属Naの融点以上の温度において空間23に蒸気として存在するNa量M2と、固化して抑制/導入栓60に付着するNa量M3との合計よりも多い量M1の金属Naを坩堝10と反応容器20との間に入れる。
さらに、上述した式(4)が成立するときは、金属Naの融点以上の温度において空間23に蒸気として存在するNa量M2と、低温領域24に液体として溜まるNa量M4との合計よりも多い量M1の金属Naを坩堝10と反応容器20との間に入れる。
さらに、上述した式(5)が成立するときは、金属Naの融点以上の温度において空間23に蒸気として存在するNa量M2と、固化して抑制/導入栓60に付着するNa量M3と、低温領域24に液体として溜まるNa量M4との合計よりも多い量M1の金属Naを坩堝10と反応容器20との間に入れる。
金属Naを坩堝10と反応容器20との間に入れると、Arガス雰囲気中で種結晶5を坩堝10内の金属Naおよび金属Gaの上側に設定する(ステップS3)。より具体的には、種結晶5を支持装置50の一方端511側に形成された空間54へ嵌合することによって(図4の(b)参照)、種結晶5を坩堝10内の金属Naおよび金属Gaの上側に設定する。
引続いて、坩堝10および反応容器20内にArガスを充填した状態で坩堝10および反応容器20を結晶成長装置100に設定する。
そして、バルブ160を開け、真空ポンプ170によって坩堝10および反応容器20内に充填されたArガスを排気する。真空ポンプ170によって坩堝10および反応容器20内を所定の圧力(0.133Pa以下)まで真空引きした後、バルブ160を閉じ、バルブ120,121を開けて窒素ガスをガスボンベ140からガス供給管90,110を介して坩堝10および反応容器20内へ充填する。この場合、圧力調整器130によって坩堝10および反応容器20内の圧力が約0.1MPaになるように坩堝10および反応容器20内へ窒素ガスを供給する。
そして、圧力センサー180によって検出した反応容器20内の圧力が0.1MPa程度になると、バルブ120,121を閉じ、バルブ160を開けて真空ポンプ170によって坩堝10および反応容器20内に充填された窒素ガスを排気する。この場合も、真空ポンプ170によって坩堝10および反応容器20内を所定の圧力(0.133Pa以下)まで真空引きする。
そして、この坩堝10および反応容器20内の真空引きと坩堝10および反応容器20への窒素ガスの充填とを数回繰り返し行なう。
その後、真空ポンプ170によって坩堝10および反応容器20内を所定の圧力まで真空引きした後、バルブ160を閉じ、バルブ120,121を開けて圧力調整器130によって坩堝10および反応容器20内の圧力が1.01〜5.05MPaの範囲になるように坩堝10および反応容器20内へ窒素ガスを充填する(ステップS4)。
この場合、坩堝10と反応容器20との間の金属Naは、固体であるので、窒素ガスは、配管30の空間31からも抑制/導入栓60を介して反応容器20内の空間23へ供給される。そして、圧力センサー180によって検出した空間23内の圧力が1.01〜5.05MPaになった時点でバルブ120が閉じられる。
その後、加熱装置70,80によって坩堝10および反応容器20を800℃に加熱する(ステップS5)。この場合、坩堝10と反応容器20との間に保持された金属Naは、融点が約98℃であるので、坩堝10および反応容器20が800℃に加熱される過程で溶融され、金属融液190になる。そして、2つの気液界面1,2が発生する(図1参照)。気液界面1は、金属融液190と反応容器20内の空間23との界面に位置し、気液界面2は、金属融液190と抑制/導入栓60との界面に位置する。
また、坩堝10および反応容器20の温度が800℃に昇温された時点で、抑制/導入栓60の温度は、150℃である。従って、気液界面2における金属融液190(=金属Na融液)の蒸気圧は、7.6×10−4Paであり、金属融液190(=金属Na融液)は、抑制/導入栓60の空隙63を介して殆ど蒸発しない。その結果、金属融液190(=金属Na融液)は、殆ど減少しない。
抑制/導入栓60の温度が300℃または400℃に昇温されても、金属融液190(=金属Na融液)の蒸気圧は、それぞれ、1.8Paおよび47.5Paであり、この程度の蒸気圧では、金属融液190(=金属Na融液)の減少を殆ど無視できる。
このように、結晶成長装置100においては、抑制/導入栓60の温度は、金属融液190(=金属Na融液)が蒸発によって実質的に減少しない温度に設定される。
さらに、坩堝10および反応容器20が800℃に加熱される過程で、坩堝10内の金属Naおよび金属Gaも液体になり、金属Naと金属Gaとの混合融液290が坩堝10内に発生する。そして、上下機構220は、上述した方法によって、種結晶5を混合融液290に接触させる(ステップS6)。
さらに、坩堝10および反応容器20の温度が800℃に昇温されると、空間23内の窒素ガスが混合融液290中の金属Naを媒介として混合融液290中へ取り込まれ、種結晶5からGaN結晶が成長し始める。
その後、坩堝10および反応容器20の温度が、所定の時間(数十時間〜数百時間)、800℃に保持され(ステップS7)、種結晶5の温度T3が上述した方法によって混合融液290の温度(=800℃)よりも低い温度Ts1(または温度Ts2)に設定される(ステップS8)。
そして、GaN結晶の結晶成長が進行すると、空間23内の窒素ガスが消費され、空間23内の窒素ガスが減少する。そうすると、空間23内の圧力P1が配管30内の空間31の圧力P2よりも低くなり(P1<P2)、空間23内と空間31内との間に差圧が発生し、空間31の窒素ガスは、抑制/導入栓60および金属融液190(=金属Na融液)を介して空間23内へ順次供給される(ステップS9)。
その後、種結晶5が混合融液290に接触するように、上述した方法によって種結晶5を降下させる(ステップS10)。これによって、大きなサイズのGaN結晶が成長する。
そして、所定の時間が経過した後、坩堝10および反応容器20の温度が降温されて(ステップS11)、GaN結晶の製造が終了する。
図14は、図13に示すステップS9における坩堝10および反応容器20内の状態を示す模式図である。図14を参照して、タイミングt2からタイミングt4までの間、坩堝10および反応容器20の温度は、800℃に保持され、混合融液290中でGaN結晶の成長が進行する。そして、GaN結晶の結晶成長が進行するに伴って、金属融液190および混合融液290中から金属Naが蒸発し、空間23内には、窒素ガス4および金属Na蒸気7が混在する。
そして、窒素ガス4の消費によって、空間23内の圧力P1が配管30内の空間31の圧力P2よりも低下する。そうすると、窒素ガスは、配管30の空間31から抑制/導入栓60を介して金属融液190に供給され、金属融液190中を泡191となって移動し、気液界面1から空間23へ供給される。そして、空間23内の圧力P1が空間31内の圧力P2とほぼ同じになると、配管30の空間31から抑制/導入栓60および金属融液190を介した窒素ガスの坩堝10および反応容器20への供給が停止される。
このように、抑制/導入栓60は、金属融液190(=金属Na融液)を金属融液190の表面張力によって坩堝10と反応容器20との間および配管30内に保持するとともに、窒素ガスを空間31から坩堝10および反応容器20内へ供給する。従って、抑制/導入栓60は、金属融液190の通過を阻止する構造からなる。
図15は、図13に示すステップS10における坩堝10および反応容器20内の状態を示す模式図である。図15を参照して、GaN結晶の結晶成長が進行し、混合融液290中の金属Gaが減少すると、気液界面3が下がり、種結晶5から成長したGaN結晶6が混合融液290から離れる。
そうすると、振動検出信号BDSは、成分SS1(図6参照)からなるため、上下機構220は、振動検出信号BDSに基づいて、上述した方法によって、GaN結晶6が混合融液290に接触するように支持装置50を降下させる。これによって、GaN結晶6は、再び、混合融液290に接触し、GaN結晶6が優先的に成長する。
このように、この実施の形態1においては、GaN結晶の結晶成長中、種結晶5または種結晶5から結晶成長したGaN結晶6を常に混合融液290に接触させる。
これによって、大きなサイズのGaN結晶を成長できる。
上述したように、この発明によれば、金属Naの融点以上の温度において液体の金属Naが坩堝10と反応容器20との間および配管30内に存在し得る量M1の金属Naを反応容器20に入れて(ステップS2参照)GaN結晶を結晶成長させるので、金属Na蒸気7を空間23内に閉じ込めることができる。その結果、混合融液290からの金属Naの蒸発を抑制でき、大きなサイズを有するGaN結晶を製造できる。このGaN結晶は、c軸(<0001>)方向に成長した柱状形状を有し、欠陥フリーの結晶である。
そして、好ましくは、図1に示す重量方向DR1と垂直な方向において、坩堝10と反応容器20との間に金属融液190(=液体Na)が保持され得る量M1の金属Naを坩堝10と反応容器20との間に入れてGaN結晶を結晶成長する。これにより、加熱装置70,80によって坩堝10を加熱する場合、反応容器20の熱が金属融液190(=液体Na)を介して坩堝10に伝達され易くなり、坩堝10の温度を容易に昇温できる。
さらに、好ましくは、気液界面1の位置が気液界面3の位置に略一致し得る量M1の金属Naを坩堝10と反応容器20との間に入れてGaN結晶を結晶成長する。これにより、加熱装置70,80によって坩堝10を加熱する場合、反応容器20の熱が金属融液190(=液体Na)を介して坩堝10にさらに伝達され易くなり、坩堝10の温度をさらに容易に昇温できる。
また、この発明によるGaN結晶の製造方法は、種結晶5の温度T3を結晶成長温度(=800℃)よりも低くしてGaN結晶を結晶成長させるので、種結晶5付近の混合融液290中における窒素の過飽和度を高くでき、GaN結晶を種結晶5からさらに優先的に結晶成長させることができるとともに、GaN結晶の成長速度を向上できる。
さらに、GaN結晶の成長とともに、種結晶5が混合融液290に接触するように上下機構220によって種結晶5を降下させるので、GaN結晶が種結晶5から優先的に成長する状態を保持できる。その結果、大きなサイズのGaN結晶を成長できる。
さらに、結晶成長装置100においては、反応容器20内の空間23と金属融液190との気液界面1または気液界面1付近における温度T4と、空間23と混合融液290との気液界面3または気液界面3付近における温度T5とは、金属融液190から蒸発した金属Naの蒸気圧が混合融液290から蒸発した金属Naの蒸気圧と略同一になる温度に設定される。
同じ温度においては、金属融液190から蒸発した金属Naの蒸気圧は、混合融液290から蒸発した金属Naの蒸気圧よりも高いので、温度T4は、金属融液190から蒸発した金属Naの蒸気圧が混合融液290から蒸発した金属Naの蒸気圧に略同一になるように温度T5よりも低い温度に設定される。
その結果、空間23内において、金属融液190から混合融液290への金属Naの移動と混合融液290から金属融液190への金属Naの移動とが平衡状態になり、金属融液190から混合融液290への金属Naの移動および混合融液290から金属融液190への金属Naの移動による混合融液290中の金属Naと金属Gaとのモル比率の変動を抑制でき、大きなサイズを有するGaN結晶を安定して製造できる。
なお、図13に示すフローチャートにおいては、坩堝10および反応容器20が800℃に加熱されると、種結晶5を金属Naおよび金属Gaとの混合融液290に接触させると説明したが(ステップS5,S6参照)、この発明においては、これに限らず、坩堝10および反応容器20が800℃に加熱されると(ステップS5参照)、ステップS6において、種結晶5を金属Naおよび金属Gaとを含む混合融液290中に保持するようにしてもよい。つまり、坩堝10および反応容器20が800℃に加熱されると、種結晶5を混合融液290に浸漬して種結晶5からGaN結晶を結晶成長させるようにしてもよい。
そして、種結晶5を混合融液290に接触させる動作は、振動印加装置230によって支持装置50に振動を印加し、支持装置50の振動を示す振動検出信号BDSを検出するステップAと、検出された振動検出信号BDSが、種結晶5が混合融液290に接したときの振動検出信号(振動検出信号BDSの成分SS2)になるように支持装置50を上下機構220によって移動させるステップBとからなる。
また、種結晶5を混合融液290中に保持する動作は、振動印加装置230によって支持装置50に振動を印加し、支持装置50の振動を示す振動検出信号BDSを検出するステップAと、検出された振動検出信号BDSが、種結晶5が混合融液290中に浸漬されたときの振動検出信号(振動検出信号BDSの成分SS3)になるように支持装置50を上下機構220によって移動させるステップCとからなる。
ステップBおよびステップCにおいて、支持装置50を上下機構220によって移動させるとしているのは、坩堝10の容積と、坩堝10に入れられた金属Naおよび金属Gaの全体量との関係によって、坩堝10内で生成された混合融液290の液面(=界面3)の位置が変動し、坩堝10内で混合融液290が生成された時点で、種結晶5が混合融液290に浸漬されていることもあれば、種結晶5が空間23に保持されていることもあるので、種結晶5を混合融液290に接触または種結晶5を混合融液290に浸漬するには、種結晶5を重力方向DR1において上下動させる必要があるからである。
また、図13に示すフローチャートのステップS10においては、種結晶5が混合融液290に接触するように種結晶5を降下させると説明したが、この発明においては、図13に示すフローチャートのステップS10は、一般的には、GaN結晶の結晶成長中、種結晶5から結晶成長したGaN結晶が混合融液290に接するように支持装置50を上下機構220によって移動させるステップDからなる。
GaN結晶の結晶成長とともに、混合融液290中のGaが消費されて混合融液290の液面(=界面3)が低下するが、この液面(=界面3)が低下する速度と、GaN結晶の結晶成長速度との関係によって種結晶5から結晶成長したGaN結晶を上方向へ移動させる場合もあれば、種結晶5から結晶成長したGaN結晶を下方向へ移動させる場合もあるからである。
すなわち、液面(=界面3)の低下速度がGaN結晶の結晶成長速度よりも速い場合、種結晶5から結晶成長したGaN結晶を下方向へ移動させてGaN結晶を混合融液290の液面(=界面3)に接触させる。一方、液面(=界面3)の低下速度がGaN結晶の結晶成長速度よりも遅い場合、種結晶5から結晶成長したGaN結晶を上方向へ移動させてGaN結晶を混合融液290の液面(=界面3)に接触させる。
このように、液面(=界面3)の低下速度とGaN結晶の結晶成長速度との関係によって、種結晶5から結晶成長したGaN結晶を重力方向DR1において上下動させる必要があるので、ステップDにおいては、「上下機構220によって支持装置50を移動させる」としたものである。
そして、ステップDにおいて、種結晶5から結晶成長したGaN結晶を混合融液290に接触させる動作は、上述したステップAおよびステップBからなる。
さらに、上記においては、抑制/導入栓60の凸部62の高さHおよび複数の凸部62の間隔dは、数十μmであると説明したが、凸部62の高さHおよび複数の凸部62の間隔dは、抑制/導入栓60の温度に応じて決定されるようにしてもよい。この場合、抑制/導入栓60の温度が相対的に高い場合、凸部62の高さHは相対的に高くされ、かつ、複数の凸部62の間隔dは、相対的に小さくされる。また、抑制/導入栓60の温度が相対的に低い場合、凸部62の高さHは相対的に低くされ、かつ、複数の凸部62の間隔dは、相対的に大きくされる。つまり、抑制/導入栓60の温度が相対的に高い場合、抑制/導入栓60と配管30との間の空隙63のサイズが相対的に小さくされ、抑制/導入栓60の温度が相対的に低い場合、抑制/導入栓60と配管30との間の空隙63のサイズが相対的に大きくされる。
凸部62の高さHおよび複数の凸部62の間隔dによって空隙63の大きさが決定され、表面張力により金属融液190を保持可能な空隙63の大きさが抑制/導入栓60の温度によって変化する。したがって、凸部62の高さHおよび複数の凸部62の間隔dを抑制/導入栓60の温度に応じて変化させ、表面張力によって金属融液190を確実に保持できるようにしたものである。
そして、抑制/導入栓60の温度制御は、加熱装置80によって行われる。すなわち、抑制/導入栓60の温度を150℃よりも高い温度に昇温する場合には、加熱装置80によって抑制/導入栓60を加熱する。
さらに、上記においては、支持装置50に振動を与え、支持装置50の振動を検出して種結晶5またはGaN結晶6が混合融液290に接触するように制御したが、この発明においては、これに限らず、気液界面3の位置を検出して種結晶5またはGaN結晶6が混合融液290に接触するようにしてもよい。この場合、導線の一方端を外部から反応容器20に接続し、他方端を混合融液290中に浸漬させた状態で導線に電流を流し、電流がオフからオンに切換わるときの反応容器20内に入れられた導線の長さによって気液界面3の位置を検出する。
導線の他方端が混合融液290に浸漬されていれば、混合融液290、坩堝10、金属融液190および反応容器20を介して導線に電流が流れ、導線の他方端が混合融液290に浸漬されていなければ、導線に電流が流れない。
したがって、電流がオフからオンに切換わるときの反応容器20内に入れられた導線の長さによって気液界面3の位置を検出できる。そして、気液界面3の位置を検出すると、上下機構220によって、検出した気液界面3の位置まで種結晶5またはGaN結晶6を降下させる。
また、音波を気液界面3に向けて発し、音波が気液界面3との間で往復する時間を測定して気液界面3の位置を検出するようにしてもよい。
さらに、熱電対を反応容器20から坩堝10内に挿入し、熱電対によって検出した温度が変化するときの反応容器20内に挿入された熱電対の長さから気液界面3の位置を検出するようにしてもよい。
この発明においては、金属融液190は、「アルカリ金属融液」を構成する。
また、ガスボンベ140、圧力調整器130、ガス供給管90,110、配管30および抑制/導入栓60は、「ガス供給装置」を構成する。
[実施の形態2]
図16は、実施の形態2による結晶成長装置の概略断面図である。図16を参照して、実施の形態2による結晶成長装置100Aは、図1に示す結晶成長装置100の配管30を配管300,310に代え、金属融液190を金属融液330に代え、加熱装置320,340を追加したものであり、その他は、結晶成長装置100と同じである。
配管300は、一方端が反応容器20に連結される。配管310は、一方端が配管300の他方端に連結され、他方端がガス供給管110に連結される。結晶成長装置100Aにおいては、抑制/導入栓60は、配管310内に設置される。そして、金属融液330は、抑制/導入栓60によって配管310内に保持される。
加熱装置320は、配管310に対向して設けられ、加熱装置340は、配管300に対向して設けられる。
結晶成長装置100Aにおいては、抑制/導入栓60は、ガス供給管110から配管310の空間311へ供給された窒素ガスを金属融液330および配管300の空間301を介して反応容器20の空間23へ供給するとともに、金属融液330の表面張力によって金属融液330を配管310内に保持する。
加熱装置320は、配管310を結晶成長温度に加熱する。金属融液330は、抑制/導入栓60を介して空間311から供給された窒素ガスを空間312,301を介して反応容器20の空間23へ供給するとともに、窒素ガスおよび金属Na蒸気を空間23,301,312に閉じ込める。加熱装置340は、配管300の空間301を結晶成長温度に加熱する。
図17は、図16に示す結晶成長装置100Aに入れる金属Naの量を計算するための実施の形態2における図である。図17を参照して、配管310の内径をφ4とし、金属融液330の高さをH5とすると、配管310内に保持される金属融液330の容積V4は、次式によって表わされる。
V4=((φ4)/2)2π(H5)・・・(6)
ここで、配管310の内径φ4を4.0cmとし、金属融液330の高さH5を5cmとすると、式(6)より、容積V4は、62.8cm3となる。1000Kの温度におけるNaの密度として0.777g/cm3という値を用いると、容積が3.5cm3であるNaの重量は、62.8cm3×0.777g/cm3=48.8gとなる。そうすると、Naの原子量が23であるので、液体で62.8cm3の容積を占めるNaのモル数は、2.1molとなる。
一方、反応容器20内の空間23の容積V5は、反応容器20の容積をV6とし、上述した坩堝10の容積Bを用いると、次式により表される。
V5=V6−B・・・(7)
反応容器20の容積V6は、反応容器20の内径φ1を11.6cmとし、反応容器20の高さを21.5cmとすると、V6=(11.6/2)2π×21.5=2272.2cm3となる。また、容積Bは、上述したように628.3cm3である。
したがって、結晶成長装置100Aにおける空間23の容積V5は、式(7)より、V5=2272.2−628.3=1643.9cm3となる。
また、配管300の空間301の容積Dは、配管300の内径φ4を0.94cmとし、配管300の長さLを10cmとして、D=(0.94/2)2π×10=6.9cm3となる。
さらに、配管310の空間312の容積Eは、空間312の高さH6を6cmとして、E=(4/2)2π×6=75.4cm3となる。
そうすると、結晶成長装置100Aにおいて、混合融液290と金属融液330との間の空間(空間23+空間301+空間312からなる)の容積V7は、V7=V5+D+E=1643.9+6.9+75.4=1726.2cm3となる。
そうすると、空間23,301,312の温度が850℃になったときに、空間23,301,312に存在し得る金属Naの最大量は、850℃におけるNaの蒸気圧PがP=0.744(atm)であり、空間23,301,312の体積V7は、V=1.726(L)であるので、P=0.744(atm)、V=1.726(L)、気体定数R=0.08206atm・L/K・mol、および温度T=850+273.15=1123.15KをPV=nRTに代入し、Naのモル数nを求めると、n=0.014molとなる。
したがって、外径φ2が10.0cmである坩堝10を用いた場合、配管310に入れた金属Naの0.67%(=(0.014mol/2.1mol)×100)が蒸気として存在する。
この結果から、62.8cm3の金属融液330が配管310内に溜まるように配管310内に金属Naを入れた場合、その入れた金属Naの0.67%が金属Na蒸気として空間23,301,312へ蒸発する。すなわち、配管310に入れた金属Naの殆どが、液体のまま、配管310内に留まる。
混合融液290から空間23,301,312へ蒸発した金属Na蒸気7は、空間23,301,312と抑制/導入栓60との間に金属融液330(=液体Na)が存在する場合、抑制/導入栓60を介して外部へ拡散することができない。
したがって、配管310内に入れた金属Naの量をM5とし、金属Naの融点以上のある温度において空間23,301,312に蒸気として存在するNaの量をM6とすると、混合融液290から空間23,301,312へ蒸発した金属Na蒸気7が外部へ拡散しないようにするには、次の関係が成立すればよい。
M5>M6・・・(8)
式(8)が成立する場合、配管310内に金属融液330(=液体Na)が存在するので、混合融液290から空間23へ蒸発した金属Na蒸気7は外部へ拡散できない。
結晶成長装置100Aにおいても、厳密には、金属融液330を構成する液体Naのうち、一部が固化して抑制/導入栓60に付着するので、固化して抑制/導入栓60に付着するNa量をM3とすると、次の関係が成立するときに、混合融液290から空間23,301,312へ蒸発した金属Na蒸気7は外部へ拡散できない。
M5−M6>M3・・・(9)
図18は、図16に示す結晶成長装置100Aに入れる金属Naの量を計算するための実施の形態2における他の図である。図18を参照して、金属Na蒸気7が液体として溜まる低温領域24が空間23に接して存在する場合、空間23,301,312の容積V7に加え、低温領域24の容積V3を考慮して配管310に入れる金属Naの量を決定する必要がある。
金属融液330から蒸発したNaは、空間23,301,312に金属Na蒸気7として存在するNaと、低温領域24に液体として溜まるNaとからなる。したがって、低温領域24に溜まるNaの量をM4とすると、次の関係が成立するときに、混合融液290から空間23へ蒸発した金属Na蒸気7は外部へ拡散できない。
M5−M6>M4・・・(10)
また、低温領域24が存在する場合において、固化して抑制/導入栓60に付着するNa量M3を考慮すると、次の関係が成立するときに、混合融液290から空間23へ蒸発した金属Na蒸気7は外部へ拡散できない。
M5−M6−M4>M3・・・(11)
空間23に接する低温領域24の容積は、上述したように、60.6cm3である。したがって、結晶成長装置100Aにおいて、低温領域24が存在しても、62.8cm3−60.6cm3=2.2cm3のNaが液体として配管310内に存在する。
この実施の形態2においては、上述した式(8)〜式(11)のいずれかによって示される関係を有する量M1の金属Naを配管310に入れてGaN結晶を結晶成長する。
結晶成長装置100AにおいてGaN結晶の製造は、図13に示すフローチャートに従って行なわれる。この場合、ステップS2において、上述した式(8)〜式(11)のいずれかによって示される関係を有する量M1の金属Naを配管310に入れる。また、ステップS5において、坩堝10および反応容器20を800℃に加熱するとともに、加熱装置320,340によって、それぞれ、配管310,300を800℃に加熱する。さらに、ステップS11において、坩堝10、反応容器20および配管300,310を降温する。その他は、図13において説明したとおりである。
このように、混合融液290に接する空間23に窒素ガスを反応容器20の横方向から導入する結晶成長装置100Aにおいても、混合融液290と外部(=配管310の空間311)との間に金属融液330(=液体のNa)を存在させることができる。その結果、結晶成長装置100Aにおいても、混合融液290から蒸発した金属Na蒸気7を空間23,301,312内に閉じ込めることができる。
結晶成長装置100Aにおいては、加熱装置340によって加熱される配管300の温度が低下し、配管300内に金属融液(=液体のNa)が溜まっても、混合融液290から空間23へ蒸発した金属Na蒸気7を空間23へ閉じ込めることができる。したがって、配管310内のみならず、配管300内にも金属融液(=液体のNa)が溜まった結晶成長装置も、実施の形態2による結晶成長装置100Aに含まれる。そして、実施の形態2による結晶成長装置100Aは、配管300,310内に金属融液(=液体のNa)が溜まったものであればよい。
その他は、実施の形態1と同じである。
上述した実施の形態1による結晶成長装置100においては、252.9gの金属Na、すなわち、11molの金属Naを反応容器20内に入れる。そして、高さが1cmの金属融液190(=液体のNa)が配管30内の抑制/導入栓60に接して配管30内に残ると仮定すると、配管30内に残る液体Naの量は、0.54g(=0.023mol)である。
したがって、11−0.023=10.977molのNaが空間23内へ金属Na蒸気7として蒸発することになる。この10.977molのNaが占める空間の容積は、P=0.744atm、n=10.977mol、R=0.08206atm・L/K・mol、および温度T=850+273.15=1123.15KをPV=nRTに代入すると、1360000cm3となる。
ここで、直径が75cmであり、高さが100cmである坩堝10を仮定すると、坩堝10の容積は、441786cm3となる。高さが1cmである金属融液190(=液体のNa)が抑制/導入栓60上に存在する場合、反応容器20の容積から坩堝10の容積を差し引いた容積が空間23の容積となり、空間23の容積は、1360000cm3であるので、反応容器20の容積は、1360000+441786=1801786cm3となる。
坩堝10の高さを100cmと仮定したので、反応容器20の高さを150cmとすると、1801786cm3の容積を有する反応容器20の直径は、124cmとなる。
したがって、252.9g(=11mol)の金属Naを坩堝10と反応容器20との間に入れておけば、直径が60cm程度であり、長さが80cm程度であるGaN結晶のインゴットを坩堝10内で製造できる。
上述した計算は、結晶成長装置100Aにおいても当てはまる。
よって、坩堝10の直径が4インチである場合に限らず、直径が30インチである坩堝10を用いた結晶成長装置も、この発明による結晶成長装置100,100Aに含まれる。
なお、この発明による結晶成長装置は、上述した結晶成長装置100,100Aから、配管200、熱電対210、ガス供給管250、流量計260およびガスボンベ270を削除したものであってもよい。すなわち、この発明による結晶成長装置は、結晶成長装置100,100Aから種結晶5の温度を混合融液290の温度よりも低く設定する機能を削除したものであってもよい。
また、この発明による結晶成長装置は、上述した結晶成長装置100,100Aから、上下機構220、振動印加装置230および振動検出装置240を削除したものであってもよい。すなわち、この発明による結晶成長装置は、結晶成長装置100,100Aから種結晶5を上下させる機能を削除したものであってもよい。
さらに、この発明による結晶成長装置は、上述した結晶成長装置100,100Aから、配管200、熱電対210、上下機構220、振動印加装置230、振動検出装置240、ガス供給管250、流量計260およびガスボンベ270を削除したものであってもよい。すなわち、この発明による結晶成長装置は、結晶成長装置100,100Aから種結晶5の温度を混合融液290の温度よりも低く設定する機能と、種結晶5を上下させる機能とを削除したものであってもよい。
さらに、この発明による結晶成長装置は、上述した結晶成長装置100,100Aから、支持装置50、配管200、熱電対210、上下機構220、振動印加装置230、振動検出装置240、ガス供給管250、流量計260およびガスボンベ270を削除したものであってもよい。すなわち、この発明による結晶成長装置は、結晶成長装置100,100Aから種結晶5を坩堝10の上側から支持する機能と、種結晶5の温度を混合融液290の温度よりも低く設定する機能と、種結晶5を上下させる機能とを削除したものであってもよい。この場合、種結晶5は、坩堝10の底部に設置される。
このように、この発明による結晶成長装置は、各種の結晶成長装置からなるが、一般的には、混合融液290に接する空間23(または空間23,301,312)と外部との間に液体として存在する金属融液190(または金属融液330)と、金属融液190(または金属融液330)を介して窒素ガスを供給するガス供給装置とを備える結晶成長成長であればよい。
また、この発明による製造方法は、金属Naの融点以上の温度において金属Naが液体として空間23(または空間23,301,312)と外部との間に存在し得る量だけ金属NaをArガス雰囲気中で空間23(または空間23,301,312)と外部との間に入れる工程を備えてGaN結晶を製造する製造方法であればよい。
図19は、この発明による抑制/導入栓の他の斜視図である。また、図20は、図19に示す抑制/導入栓400の固定方法を説明するための断面図である。図19を参照して、抑制/導入栓400は、栓401と、複数の凸部402とからなる。栓401は、長さ方向DR3へ直径が変化する円柱形状からなる。複数の凸部402の各々は、略半球形状を有し、直径が数十μmである。そして、複数の凸部402は、栓401の外周面401Aにランダムに形成される。ただし、隣接する2つの凸部402の間隔は、数十μmに設定される。
図20を参照して、抑制/導入栓400は、支持部材403,404によって反応容器20と配管30との連結部に固定される。より具体的には、抑制/導入栓400は、一方端が反応容器20に固定された支持部材403と、一方端が配管30の内壁に固定された支持部材404とによって挟まれることによって固定される。
この場合、抑制/導入栓400の凸部402は、反応容器20および配管30に接していてもよく、接していなくてもよい。凸部402が反応容器20および配管30に接しないように抑制/導入栓400が固定される場合、凸部402と反応容器20および配管30との間隔を表面張力によって金属融液190を保持可能な間隔に設定して抑制/導入栓400を支持部材403,404によって固定する。
坩堝10と反応容器20との間に保持された金属Naは、坩堝10および反応容器20の加熱が開始される前、固体であるので、ガスボンベ140から供給された窒素ガスは、反応容器20内の空間23と配管30内の空間31との間を抑制/導入栓400を介して拡散可能である。
そして、坩堝10および反応容器20の加熱が開始され、坩堝10および反応容器20の温度が98℃以上に昇温されると、坩堝10と反応容器20との間に保持された金属Naは、溶けて金属融液190になり、窒素ガスを空間23に閉じ込める。
また、抑制/導入栓400は、金属融液190が反応容器20の内部から配管30の空間31へ流出しないように金属融液190の表面張力によって金属融液190を保持する。
さらに、金属融液190および抑制/導入栓400は、GaN結晶の成長が進行すると、窒素ガスと、金属融液190および混合融液290から蒸発した金属Na蒸気とを空間23に閉じ込める。その結果、混合融液290からの金属Naの蒸発を抑制でき、混合融液290中における金属Naと金属Gaとのモル比率を安定させることができる。そして、GaN結晶の結晶成長が進行するに伴って、空間23内の窒素ガスが減少すると、空間23内の圧力P1は、配管30の空間31の圧力P2よりも低くなり、抑制/導入栓400は、空間31の窒素ガスを反応容器20の方向へ通過させ、金属融液190を介して空間23へ供給する。
このように、抑制/導入栓400は、上述した抑制/導入栓60と同じように作用する。したがって、抑制/導入栓400は、抑制/導入栓60に代えて結晶成長装置100,100Aに用いられる。
上記においては、抑制/導入栓400は、凸部402を有すると説明したが、抑制/導入栓400は、凸部402を有していなくてもよい。この場合、栓401と反応容器20および配管30との間隔が数十μmになるように、抑制/導入栓400は、支持部材によって固定される。
そして、抑制/導入栓400(凸部402を有する場合と凸部402を有さない場合とを含む。以下、同じ)と反応容器20および配管30との間隔は、抑制/導入栓400の温度に応じて決定されるようにしてもよい。この場合、抑制/導入栓400の温度が相対的に高い場合、抑制/導入栓400と反応容器20および配管30との間隔は、相対的に小さく設定される。また、抑制/導入栓400の温度が相対的に低い場合、抑制/導入栓400と反応容器20および配管30との間隔は、相対的に大きく設定される。
表面張力により金属融液190を保持可能な抑制/導入栓400と反応容器20および配管30との間隔は、抑制/導入栓400の温度によって変化する。したがって、抑制/導入栓400と反応容器20および配管30との間隔を抑制/導入栓400の温度に応じて変化させ、表面張力によって金属融液190を確実に保持できるようにしたものである。
そして、抑制/導入栓400の温度制御は、加熱装置80によって行われる。すなわち、抑制/導入栓400の温度を150℃よりも高い温度に昇温する場合には、加熱装置80によって抑制/導入栓400を加熱する。
抑制/導入栓400が用いられる場合、ガスボンベ140、圧力調整器130、ガス供給管90,110、配管30および抑制/導入栓400は、「ガス供給装置」を構成する。
図21は、この発明による抑制/導入栓のさらに他の斜視図である。図21を参照して、抑制/導入栓410は、複数の貫通孔412が形成された栓411からなる。複数の貫通孔412は、栓411の長さ方向DR2に沿って形成される。そして、複数の貫通孔412の各々は、数十μmの直径を有する(図21の(a)参照)。
なお、抑制/導入栓410においては、貫通孔412は、少なくとも1個形成されていればよい。
また、抑制/導入栓420は、複数の貫通孔422が形成された栓421からなる。複数の貫通孔422は、栓421の長さ方向DR2に沿って形成される。そして、複数の貫通孔422の各々は、長さ方向DR2へ複数段に変化された直径r1,r2,r3を有する。直径r1,r2,r3の各々は、金属融液190を表面張力により保持可能な範囲で決定され、たとえば、数μm〜数十μmの範囲で決定される(図21の(b)参照)。
なお、抑制/導入栓420においては、貫通孔422は、少なくとも1個形成されていればよい。また、貫通孔422の直径は、少なくとも2個に変化されればよい。さらに、貫通孔422の直径は、長さ方向DR2へ連続的に変えられてもよい。
抑制/導入栓410または420は、結晶成長装置100,100Aの抑制/導入栓60に代えて用いられる。
特に、抑制/導入栓420が抑制/導入栓60に代えて用いられた場合、結晶成長装置100,100Aにおいて、抑制/導入栓420の温度制御を精密に行なわなくても、複数段に変えられた直径のいずれかによって金属融液190を金属融液190の表面張力により保持できるので、抑制/導入栓420の温度制御を精密に行なわなくても、大きなサイズを有するGaN結晶を製造できる。
なお、直径r3の部位で金属融液190を金属融液190の表面張力によって保持する場合、直径r1,r2の部位まで入り込む液体Naの量を考慮して反応容器20に入れる金属Naの量M1を決定する。
抑制/導入栓410または420が用いられる場合、ガスボンベ140、圧力調整器130、ガス供給管90,110、配管30および抑制/導入栓410または420は、「ガス供給装置」を構成する。
さらに、この発明においては、抑制/導入栓60に代えてポーラスプラグまたは逆流防止弁を用いてもよい。ポーラスプラグは、ステンレスの粉末を焼結した焼結体からなり、数十μmの空孔が多数形成された構造を有する。したがって、ポーラスプラグは、上述した抑制/導入栓60と同じように金属融液190の表面張力によって金属融液190を保持可能である。
また、この発明における逆流防止弁は、低温部分に用いられるバネ式の逆流防止弁と、高温部分に用いられるピストン式の逆流防止弁との両方を含む。このピストン式の逆流防止弁とは、空間31内の圧力P2が空間23内の圧力P1よりも高いとき、圧力P2と圧力P1との差圧によってピストンが1対のガイドに沿って上方向へ移動して空間31の窒素ガスを金属融液190を介して空間23へ供給し、P1≧P2であるとき、自重によってピストンが反応容器20と配管30との連結部を塞ぐ形式の逆流防止弁である。したがって、この逆流防止弁は、高温部分においても使用できる。
上述した実施の形態1,2においては、GaN結晶の結晶成長速度と界面3の低下速度との関係によって種結晶5を上方向または下方向へ移動させ、種結晶5を界面3に接触させると説明したが、種結晶5から結晶成長したGaN結晶6が混合融液290に浸漬されることによる界面3の上昇およびGaN結晶6を混合融液290中から上方向へ移動させることによる界面3の低下を考慮して、GaN結晶6が界面3に接触するように上下機構220によって支持装置210を上下動させてもよい。
また、金属融液190の温度と混合融液290の温度とが同じである場合、金属融液190から蒸発した金属Naの蒸気圧は、混合融液290から蒸発した金属Naの蒸気圧よりも高くなる。そうすると、金属Naが金属融液190から混合融液290へ移動し、界面3の位置が上昇する。したがって、金属融液190の温度と混合融液290の温度とを同一に設定した場合、金属Naの金属融液190から混合融液290への移動による界面3の上昇を考慮して、種結晶5から結晶成長したGaN結晶が界面3に接触するように上下機構220によって支持装置210を上下動させてもよい。
さらに、GaN結晶6の結晶成長とともに混合融液290中の金属Gaが消費され、この金属Gaの消費により界面3が低下するので、金属Gaの消費量を考慮して、種結晶5から結晶成長したGaN結晶が界面3に接触するように上下機構220によって支持装置210を上下動させてもよい。
また、上述した実施の形態1,2においては、結晶成長温度は、800℃であると説明したが、この発明においては、これに限らず、結晶成長温度は、600℃以上であればよい。また、窒素ガス圧力も0.4MPa以上の加圧状態の本結晶成長方法で成長可能な圧力であればよい。すなわち、上限も本実施の形態の5.05MPaに限定されるものではなく、5.05MPa以上の圧力であってもよい。
さらに、上記においては、Arガス雰囲気中で金属Naおよび金属Gaを坩堝10に入れ、Arガス雰囲気中で金属Naを坩堝10および反応容器20間に入れると説明したが、この発明においては、これに限らず、He、NeおよびKr等のArガス以外のガスまたは窒素ガス雰囲気中で金属Naおよび金属Gaを坩堝10に入れ、金属Naを坩堝10および反応容器20間に入れてもよく、一般的には、不活性ガスまたは窒素ガス雰囲気中で金属Naおよび金属Gaを坩堝10に入れ、金属Naを坩堝10および反応容器20間に入れればよい。そして、この場合、不活性ガスまたは窒素ガスは、水分量が10ppm以下であり、かつ、酸素量が10ppm以下である。
さらに、金属Gaと混合する金属は、Naであると説明したが、この発明においては、これに限らず、リチウム(Li)およびカリウム(K)等のアルカリ金属、またはマグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)およびストロンチウム(Sr)等のアルカリ土類金属を金属Gaと混合して混合融液290を生成してもよい。そして、これらのアルカリ金属が溶けたものは、アルカリ金属融液を構成し、これらのアルカリ土類金属が溶けたものは、アルカリ土類金属融液を構成する。
さらに、窒素ガスに代えて、アジ化ナトリウムおよびアンモニア等の窒素を構成元素に含む化合物を用いてもよい。そして、これらの化合物は、窒素原料ガスを構成する。
さらに、Gaに代えて、ボロン(B)、アルミニウム(Al)およびインジウム(In)等のIII族金属を用いてもよい。
したがって、この発明による結晶成長装置または製造方法は、一般的には、アルカリ金属またはアルカリ土類金属とIII族金属(ボロンを含む)との混合融液を用いてIII族窒化物結晶を製造するものであればよい。
そして、この発明による結晶成長装置または製造方法を用いて製造したIII族窒化物結晶は、発光ダイオード、半導体レーザ、フォトダイオードおよびトランジスタ等のIII族窒化物半導体デバイスの作製に用いられる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1〜3 気液界面、4 窒素ガス、5 種結晶、6 GaN結晶、7 金属Na蒸気、10 反応容器、20 反応容器20A 外周面、20B 底面、21 本体部、22 蓋部、23,301,311,312 空間、24 低温領域、30,200,300,310 配管、30A 内壁、40 ベローズ、50 支持装置、51 筒状部材、54 空間部、60,400,410,420 抑制/導入栓、61,401,411,421 栓、62,402 凸部、63 空隙、70,80,320,340 加熱装置、71,81 温度センサー、90,110,250 ガス供給管、100,100A 結晶成長装置、120,121,160 バルブ、130 圧力調整器、140,270 ガスボンベ、150 排気管、170 真空ポンプ、180 圧力センサー、190,330 金属融液、191 泡、201 空孔、210 熱電対、220 上下機構、221 凹凸部材、222 歯車、223 軸部材、224 モータ、225 制御部、226,227 矢印、230 振動印加装置、240 振動検出装置、280 温度制御装置、290 混合融液。