JP2007039694A - ハードコート膜を被覆したポリカーボネート製品及びその製法 - Google Patents

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Abstract

【課題】ポリカーボネートに実用的なハードコート膜を付与すること。
【解決手段】SiOを主成分とし且つ窒素を原子百分率で0.005〜5%含有するハードコート膜を被覆したポリカーボネート製品。また、該ハードコート膜が、さらに平均粒径1.0μm以下の紫外線吸収性透明無機フィラーを含有することが好ましい。
【選択図】なし

Description

本発明は、ポリシラザン由来のハードコート膜をポリカーボネート製品に被覆した物及びその製造方法に関する。
ポリカーボネートは、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)に匹敵する透明性を示し、また成形の際の寸法安定性がよく難燃性であることなど、エンジニアリングプラスチックスとしての条件を数多く備えている。このため、機械部品、電気絶縁材料、自動車部品など用途は多岐にわたっている。
プラスチックスを構造材料として使用する場合、耐擦傷性、耐薬品性、等を付与するため表面に保護膜、特にハードコート膜を設けることが普通である。
ポリカーボネート製品には、従来より紫外線硬化型アクリル樹脂や水ガラス系シリカ膜によるハードコート膜が施されている。
しかしながら、上記の紫外線硬化型アクリル樹脂はプラスチックスであるためハードコート膜としての硬度、耐擦傷性は無機材料よりも劣る。また、水ガラス系シリカ膜も、ハードコート材料として十分な硬度、耐擦傷性を有していない。従って、本発明の目的は、より優れたハードコート膜をポリカーボネート製品に付与することにある。
本発明によると、これらの及びその他の目的は、
(1)SiOを主成分とし且つ窒素を原子百分率で0.005〜5%含有するハードコート膜を被覆したポリカーボネート製品、及び
(2)ポリカーボネート製品の表面にポリシラザン含有組成物を塗布し、該ポリシラザンをセラミックス化することを特徴とする、ハードコート膜を被覆したポリカーボネート製品の製造方法
によって達成される。
本発明の好ましい実施態様を以下に列挙する。
(3)前記ポリシラザンが下記一般式(I):
Figure 2007039694
(上式中、R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、またはこれらの基以外でケイ素に直結する基が炭素である基、アルキルシリル基、アルキルアミノ基、アルコキシ基を表わす。ただし、R、R及びRの少なくとも1つは水素原子である)で表わされる単位からなる主骨格を有する数平均分子量が100〜5万のポリシラザンであることを特徴とする、(2)項に記載の方法。
(4)前記ポリシラザンが、有機基を有するポリオルガノシラザンであることを特徴とする、(3)項に記載の方法。
(5)前記ポリオルガノシラザンがさらにフッ素を含むことを特徴とする、(4)項に記載の方法。
(6)前記ポリシラザン含有組成物がさらにアクリル樹脂を含むことを特徴とする、(2)〜(5)項のいずれか一項に記載の方法。
(7)前記ポリシラザン含有組成物がさらに紫外線吸収性の透明無機フィラーを含むことを特徴とする、(2)〜(6)項のいずれか一項に記載の方法。
(8)前記ポリシラザン含有組成物が、溶剤としてシクロヘキサン系溶剤、炭素原子数8以上の飽和炭化水素系溶剤及びテトラアルコキシシラン系溶剤から成る群より選ばれた少なくとも1種の溶剤を含むことを特徴とする、(2)〜(7)項のいずれか一項に記載の方法。
(9)前記ポリシラザン含有組成物が溶剤としてテトラエトキシシランを含むことを特徴とする、(8)項に記載の方法。
本発明によると、ポリシラザンを用い且つポリカーボネートを攻撃しない溶剤を使用することにより、従来よりも優れた耐擦傷性を示すハードコート膜をポリカーボネート製品に付与することができる。
また、本発明のハードコート膜を形成するためのポリシラザン含有組成物においてポリオルガノシラザンを使用すること及び/又はアクリル樹脂を含めることにより、ハードコート膜の膜厚限界を高めること、ひいてはポリカーボネート製品の硬度、耐擦傷性を向上させることができる。
さらに、本発明のポリシラザン含有組成物に紫外線吸収性の透明無機フィラーを含めることによりハードコート膜に紫外線カット性を付与することができる。
以下、本発明について詳しく説明する。
本発明で用いるポリシラザンは、分子内に少なくともSi−H結合又はN−H結合を有するポリシラザンであればよく、ポリシラザン単独は勿論のこと、ポリシラザンと他のポリマーとの共重合体やポリシラザンと他のポリマー化合物との混合物でも利用できる。
用いるポリシラザンには、鎖状、環状又は架橋構造を有するもの、あるいは分子内にこれら複数の構造を同時に有するものがあり、これら単独でもあるいは混合物でも利用できる。
用いるポリシラザンの代表例としては下記のようなものがあるが、これらに限定されるものではない。
上記一般式(I)でR、R及びRに水素原子を有するものは、ペルヒドロポリシラザンであり、その製造法は、例えば特公昭63−16325号公報、D. Seyferth らCommunication of Am. Cer. Soc., C-13, January 1983. に報告されている。これらの方法で得られるものは、種々の構造を有するポリマーの混合物であるが、基本的には分子内に鎖状部分と環状部分を含み、
Figure 2007039694
の化学式で表わすことができる。ペルヒドロポリシラザンの構造の一例を以下に示す。
Figure 2007039694
一般式(I)でR及びRに水素原子、Rにメチル基を有するポリシラザンの製造方法は、D. Seyferth らPolym. Prepr., Am. Chem. Soc., Div. Polym. Chem., 25, 10(1984)に報告されている。この方法により得られるポリシラザンは、繰り返し単位が−(SiHNCH)−の鎖状ポリマーと環状ポリマーであり、いずれも架橋構造をもたない。
一般式(I)でR及びRに水素原子、Rに有機基を有するポリオルガノ(ヒドロ)シラザンの製造法は、D. Seyferth らPolym. Prepr., Am. Chem. Soc., Div. Polym. Chem., 25, 10(1984)、特開昭61−89230号公報、同62−156135号公報に報告されている。これらの方法により得られるポリシラザンには、−(RSiHNH)−を繰り返し単位として、主として重合度が3〜5の環状構造を有するものや
(RSiHNH)〔(RSiH)1.5N〕1−X(0.4<x<1)の化学式で示される分子内に鎖状構造と環状構造を同時に有するものがある。
一般式(I)でRに水素原子、R及びRに有機基を有するポリシラザン、またR及びRに有機基、Rに水素原子を有するものは、−(RSiNR)−を繰り返し単位として、主に重合度が3〜5の環状構造を有している。
用いるポリシラザンは、上記一般式(I)で表わされる単位からなる主骨格を有するが、一般式(I)で表わされる単位は、上記にも明らかなように環状化することがあり、その場合にはその環状部分が末端基となり、このような環状化がされない場合には、主骨格の末端はR、R、Rと同様の基又は水素であることができる。
ポリオルガノ(ヒドロ)シラザンの中には、D. Seyferth らCommunication of Am. Cer. Soc., C-132, July 1984. に報告されている様な分子内に架橋構造を有するものもある。一例を下記に示す。
Figure 2007039694
また、特開昭49−69717号公報に報告されている様なRSiX(X:ハロゲン)のアンモニア分解によって得られる架橋構造を有するポリシラザン(RSi(NH))、あるいはRSiX及びR SiXの共アンモニア分解によって得られる下記の構造を有するポリシラザンも出発材料として用いることができる。
Figure 2007039694
また、ポリシラザン変性物として、例えば下記の構造(式中、側鎖の金属原子であるMは架橋をなしていてもよい)のように金属原子を含むポリメタロシラザンも出発材料として用いることができる。
Figure 2007039694
その他、特開昭62−195024号公報に報告されているような繰り返し単位が〔(SiH(NH)〕及び〔(SiHO〕(これら式中、n、m、rはそれぞれ1、2又は3である)で表されるポリシロキサザン、特開平2−84437号公報に報告されているようなポリシラザンにボロン化合物を反応させて製造する耐熱性に優れたポリボロシラザン、特開昭63−81122号、同63−191832号、特開平2−77427号公報に報告されているようなポリシラザンとメタルアルコキシドとを反応させて製造するポリメタロシラザン、特開平1−138108号、同1−138107号、同1−203429号、同1−203430号、同4−63833号、同3−320167号公報に報告されているような分子量を増加させたり(上記公報の前4者)、耐加水分解性を向上させた(後2者)、無機シラザン高重合体や改質ポリシラザン、特開平2−175726号、同5−86200号、同5−331293号、同3−31326号公報に報告されているようなポリシラザンに有機成分を導入した厚膜化に有利な共重合ポリシラザン、なども同様に使用できる。
本発明では、さらに以下のような低温セラミックス化ポリシラザンを使用することができる。例えば、本願出願人による特開平5−238827号公報に記載されているケイ素アルコキシド付加ポリシラザンが挙げられる。この変性ポリシラザンは、前記一般式(I)で表されるポリシラザンと、下記一般式(II):
Si(OR (II)
(式中、Rは、同一でも異なっていてもよく、水素原子、炭素原子数1〜20個を有するアルキル基またはアリール基を表し、少なくとも1個のRは上記アルキル基またはアリール基である)で表されるケイ素アルコキシドを加熱反応させて得られる、アルコキシド由来ケイ素/ポリシラザン由来ケイ素原子比が0.001〜3の範囲内かつ数平均分子量が約200〜50万のケイ素アルコキシド付加ポリシラザンである。上記Rは、炭素原子数1〜10個を有するアルキル基がより好ましく、また炭素原子数1〜4個を有するアルキル基が最も好ましい。また、アルコキシド由来ケイ素/ポリシラザン由来ケイ素原子比は0.05〜2.5の範囲内にあることが好ましい。ケイ素アルコキシド付加ポリシラザンの調製については、上記特開平5−238827号公報を参照されたい。
低温セラミックス化ポリシラザンの別の例として、本出願人による特開平6−122852号公報に記載されているグリシドール付加ポリシラザンが挙げられる。この変性ポリシラザンは、前記一般式(I)で表されるポリシラザンとグリシドールを反応させて得られる、グリシドール/ポリシラザン重量比が0.001〜2の範囲内かつ数平均分子量が約200〜50万のグリシドール付加ポリシラザンである。グリシドール/ポリシラザン重量比は0.01〜1であることが好ましく、さらには0.05〜0.5であることがより好ましい。グリシドール付加ポリシラザンの調製については、上記特開平6−122852号公報を参照されたい。
低温セラミックス化ポリシラザンの別の例として、本願出願人による特開平6−240208号公報に記載されているアルコール付加ポリシラザンが挙げられる。この変性ポリシラザンは、前記一般式(I)で表されるポリシラザンとアルコールを反応させて得られる、アルコール/ポリシラザン重量比が0.001〜2の範囲内かつ数平均分子量が約100〜50万のアルコール付加ポリシラザンである。上記アルコールは、沸点110℃以上のアルコール、例えばブタノール、ヘキサノール、オクタノール、ノナノール、メトキシエタノール、エトキシエタノール、フルフリルアルコールであることが好ましい。また、アルコール/ポリシラザン重量比は0.01〜1であることが好ましく、さらには0.05〜0.5であることがより好ましい。アルコール付加ポリシラザンの調製については、上記特開平6−240208号公報を参照されたい。
低温セラミックス化ポリシラザンのまた別の例として、本願出願人による特開平6−299118号公報に記載されている金属カルボン酸塩付加ポリシラザンが挙げられる。この変性ポリシラザンは、前記一般式(I)で表されるポリシラザンと、ニッケル、チタン、白金、ロジウム、コバルト、鉄、ルテニウム、オスミウム、パラジウム、イリジウム、アルミニウムの群から選択される少なくとも1種の金属を含む金属カルボン酸塩を反応させて得られる、金属カルボン酸塩/ポリシラザン重量比が0.000001〜2の範囲内且つ数平均分子量が約200〜50万の金属カルボン酸塩付加ポリシラザンである。上記金属カルボン酸塩は、式(RCOO)M〔式中、Rは炭素原子数1〜22個の脂肪族基又は脂環式基であり、Mは上記金属群から選択される少なくとも1種の金属を表し、そしてnは金属Mの原子価である〕で表される化合物である。上記金属カルボン酸塩は無水物であっても水和物であってもよい。また、金属カルボン酸塩/ポリシラザン重量比は好ましくは0.001〜1、より好ましくは0.01〜0.5である。金属カルボン酸塩付加ポリシラザンの調製については、上記特開平6−299118号公報を参照されたい。
低温セラミックス化ポリシラザンのさらに別の例として、本願出願人による特開平6−306329号公報に記載されているアセチルアセトナト錯体付加ポリシラザンが挙げられる。この変性ポリシラザンは、前記一般式(I)で表されるポリシラザンと、金属としてニッケル、白金、パラジウム又はアルミニウムを含むアセチルアセトナト錯体を反応させて得られる、アセチルアセトナト錯体/ポリシラザン重量比が0.000001〜2の範囲内かつ数平均分子量が約200〜50万のアセチルアセトナト錯体付加ポリシラザンである。上記の金属を含むアセチルアセトナト錯体は、アセチルアセトン(2,4−ペンタジオン)から酸解離により生じた陰イオンacacが金属原子に配位した錯体であり、一般に式(CHCOCHCOCHM〔式中、Mはn価の金属を表す〕で表される。アセチルアセトナト錯体/ポリシラザン重量比は、好ましくは0.001〜1、より好ましくは0.01〜0.5である。アセチルアセトナト錯体付加ポリシラザンの調製については、上記特開平6−306329号公報を参照されたい。
その他の低温セラミックス化ポリシラザンの例として、本願出願人による特開平7−196986号公報に記載されている金属微粒子添加ポリシラザンが挙げられる。この変性ポリシラザンは、前記一般式(I)で表されるポリシラザンを主成分とするコーティング溶液に、Au、Ag、Pd、Niをはじめとする金属の微粒子を添加して得られる変性ポリシラザンである。好ましい金属はAgである。金属微粒子の粒径は0.5μmより小さいことが好ましく、0.1μm以下がより好ましく、さらには0.05μmより小さいことが好ましい。特に、粒径0.005〜0.01μmの独立分散超微粒子を高沸点アルコールに分散させたものが好ましい。金属微粒子の添加量は、ポリシラザン100重量部に対して0.01〜10重量部、好ましくは0.05〜5重量部である。金属微粒子添加ポリシラザンの調製については、上記特開平7−196986号公報を参照されたい。
本発明によると、上記のようなポリシラザン、好ましくはその変性物を溶剤中に含む組成物をポリカーボネートに塗布することによって塗膜を形成する。
溶剤を選定する際には、用いるポリシラザン又はその変性物の良溶剤である点の他、塗被されるポリカーボネートに対して不活性である、すなわちこれを攻撃しないという観点も必要である。本発明において使用可能な溶剤としては、飽和炭化水素基を含むシクロヘキサン系溶剤、炭素原子数5以上の飽和炭化水素系溶剤及びテトラアルコキシシラン〔(RO)−Si〕系溶剤、等が挙げられる。具体的には、シクロヘキサン系溶剤としては、シクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、デカリンが好ましく、飽和炭化水素系溶剤としては、n−オクタン、n−ノナンが好ましく、またテトラアルコキシシラン系溶剤としては、テトラエトキシシランが好ましい。とりわけ、塗布時の濡れ性や塗膜の平坦性の点から、テトラアルコキシシラン、特にテトラエトキシシランを使用することが好ましい。但し、メチル基を含まないペルヒドロポリシラザン(PHPS)は飽和炭化水素系溶剤には不溶である。
これらの溶剤を使用する場合、ポリシラザンの溶解度や溶剤の蒸発速度を調節するために、2種類以上の溶剤を混合してもよい。
溶剤の使用量(割合)は採用するコーティング方法により作業性がよくなるように選択され、また用いるポリシラザンの平均分子量、分子量分布、その構造によって異なるので、適宜、自由に混合することができる。一般には、ポリシラザン含有組成物の固形分濃度が1〜50重量%、好ましくは10〜30重量%になるように混合することができる。
本発明においては、ポリカーボネート上に得られるハードコート膜の膜厚を増加させてその耐擦傷性をさらに向上させるため、上記したような側鎖に有機基を有するポリシラザンを使用することが好ましい。有機基を含むことにより、得られるハードコート膜自体の硬度は低下するが、ポリシラザン塗膜のセラミックス化時に膜中にクラックが発生しにくくなるため厚膜にすることができ、ポリカーボネート製品全体としての耐擦傷性を向上させることができる。この有機基としてはアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、またはこれらの基以外でケイ素に直結する基が炭素である基、アルキルシリル基、アルキルアミノ基、アルコキシ基、等が挙げられる。有機基の種類や割合は、得られるハードコート膜の厚さと硬度の所望のバランスを考慮しながら適宜選定することができる。本発明においてはアルキル基、特にメチル基を有するポリシラザンを使用することが好ましい。
また、本発明においては、同様にハードコート膜の膜厚を増加させる目的で、ポリシラザンと有機ポリマーとの共重合体を使用することもできる。有機ポリマーとの共重合体としては、上記特開平2−175726号公報に記載されている無機ポリシラザンと有機ポリシラザンとをアンモニア等の架橋基の存在下あるいは非存在下、塩基性溶媒中で反応させたポリシラザンの共重合体、上記特開平3−31326号公報に記載されている無機ジハロシランと有機ジハロシランとをルイス塩基と反応させて得られた錯体をアンモニアと反応させることにより合成される共重合シラザンポリマー、上記特開平5−86200号公報に記載されている熱硬化性のペルヒドロポリシラザンブロックと熱可塑性のケイ素含有ポリマーブロックからなる新規な熱硬化性のブロック共重合体及び上記特開平5−331293号公報に記載されているケイ素含有熱可塑性ポリマー(ポリカルボシラン等)にポリボロシラザンを共重合させて得られる熱硬化性共重合体、等を使用することができる。共重合体として用いられる有機ポリマーの種類及び割合についても同様に、得られるハードコート膜の厚さと硬度の所望のバランスを考慮しながら適宜選定することができる。これら共重合ポリシラザンの製造方法については、上記特開平2−175726号、同5−86200号、同5−331293号及び同3−31326号公報を参照されたい。
さらに本発明においては、有機ポリマーを混合することによってハードコート膜の膜厚を増加させてポリカーボネート製品全体としての耐擦傷性を向上させることもできる。混合物として使用可能な有機ポリマーの例として、アクリル樹脂及びフッ素樹脂が挙げられる。ここでもまた、混合すべき有機ポリマーの種類及びその割合は、得られるハードコート膜の厚さと硬度の所望のバランスを考慮しながら適宜選定することができる。本発明において混合物として特に好適に用いられる有機ポリマー化合物はアクリル系樹脂である。
使用可能なアクリル系樹脂としては、各種の樹脂が使用できるが、例えばアクリル酸エステル(アルコール残基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ベンジル基、フェニルエチル基等を例示できる);メタクリル酸エステル(アルコール残基は上記と同じ);2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等の如きヒドロキシ含有モノマー;アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N,N−ジメチロールアクリルアミド、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−メトキシメチルメタクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド等の如きアミド基含有モノマー;N,N−ジエチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート等の如きアミノ基含有モノマー;グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル等の如きエポキシ基含有モノマー;スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、及びそれらの塩(例えばナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等)等の如きスルホン酸基又はその塩を含有するモノマー;クロトン酸、イタコン酸、アクリル酸、マレイン酸、フマール酸、及びそれらの塩(例えばナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等)等の如きカルボキシル基又はその塩を含有するモノマー;無水マレイン酸、無水イタコン酸等の無水物を含有するモノマー;その他ビニルイソシアネート、アリルイソシアネート、スチレン、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルトリスアルコキシシラン、アルキルマレイン酸モノエステル、アルキルフマール酸モノエステル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アルキルイタコン酸モノエステル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル、塩化ビニル等の単量体の組合せからつくられたものであるが、アクリル酸誘導体、メタクリル酸誘導体の如き(メタ)アクリル単量体の成分が50モル%以上含まれているものが好ましく、特にメタクリル酸メチルの成分を含有しているものが好ましい。
ポリシラザンとアクリル系樹脂とは相溶し、しかも適当なアクリル系樹脂を選ぶことによりポリシラザンを変質することなく安定なコーティング溶液が得られる。またそれによって両者の透明性がそのまま生かされ、両者の短所を相補ったコーティングを得ることが可能になる。
ポリシラザンとアクリル系樹脂の配合量は、コーティングの用途に応じて広く選択でき、例えば、より厚い被膜を形成する場合には、全固形分〔ポリシラザンとアクリル系樹脂の合計量〕を100重量%として、ポリシラザンを3〜30重量%の範囲内とし、また硬度や耐擦傷性を重視する場合にはポリシラザンを30〜97重量%の範囲内とすることがよい。
アクリル系樹脂を含むポリシラザン含有組成物を調製する場合、一般にはポリシラザンの溶液と、上記ポリシラザン溶剤の中で使用するアクリル系樹脂に良溶剤である溶剤に溶解させたアクリル系樹脂溶液とを混合すればよい。
本発明のポリシラザン含有組成物には、得られるハードコート膜に紫外線カット性を付与するために、透明無機フィラーを含めることができる。このような透明無機フィラーとしては、ポリシラザンとの相性が良いことから酸化亜鉛(ZnO)、酸化チタン(TiO)、酸化セリウム(Ce)、等を使用することが好ましい。紫外線カット性を示すハードコート膜が透明であるためには、無機フィラーの平均粒径が1.0μm以下、好ましくは0.05μm以下である必要がある。また、ポリシラザン含有組成物中でこれらの無機フィラーが凝集しないように、必要に応じて攪拌、超音波、ボールミル、振動ミル、ペイントシェーカー、アトライター、分散剤、等を使用することが好ましい。
無機フィラー含有量は、ハードコート膜において一般に10〜90重量%、好ましくは40〜75重量%の範囲とする。このような紫外線カットを目的としたポリシラザンへの無機フィラー導入についての詳細は、本出願人による特願平6−308917号明細書〔発明の名称「紫外線防止透明板及びその製造方法」〕を参照されたい。
本発明のポリシラザン含有組成物には、必要に応じて適当な充填剤及び/又は増量剤を加えることができる。充填剤の例としてはシリカ、アルミナ、ジルコニア、マイカを始めとする酸化物系無機物あるいは炭化珪素、窒化珪素等の非酸化物系無機物の微粉等が挙げられる。また用途によってはアルミニウム、亜鉛、銅等の金属粉末の添加も可能である。さらに充填剤の例を詳しく述べれば、シリカゾル、ジルコニアゾル、アルミナゾル、チタニアゾル等のゾル:ケイ砂、石英、ノバキュライト、ケイ藻土等のシリカ系:合成無定形シリカ:カオリナイト、雲母、滑石、ウオラストナイト、アスベスト、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム等のケイ酸塩:ガラス粉末、ガラス球、中空ガラス球、ガラスフレーク、泡ガラス球等のガラス体:窒化ホウ素、炭化ホウ素、窒化アルミニウム、炭化アルミニウム、窒化ケイ素、炭化ケイ素、ホウ化チタン、窒化チタン、炭化チタン等の非酸化物系無機物:炭酸カルシウム:アルミナ、マグネシア、酸化ベリリウム等の金属酸化物:硫酸バリウム、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、弗化炭素その他無機物:アルミニウム、ブロンズ、鉛、ステンレススチール、亜鉛等の金属粉末:カーボンブラック、コークス、黒鉛、熱分解炭素、中空カーボン球等のカーボン体等があげられる。
これら充填剤は、針状(ウィスカーを含む)、粒状、鱗片状等種々の形状のものを単独又は2種以上混合して用いることができる。又、これら充填剤の粒子の大きさは1回に適用可能な膜厚よりも小さいことが望ましい。また充填剤の添加量はポリシラザン1重量部に対し、0.05重量部〜10重量部の範囲であり、特に好ましい添加量は0.2重量部〜3重量部の範囲てある。
ポリシラザン含有組成物には、さらに必要に応じて各種顔料、レベリング剤、消泡剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、pH調整剤、分散剤、表面改質剤、可塑剤、乾燥促進剤、流れ止め剤を加えてもよい。
本発明で使用するポリカーボネートの形状や大きさに特に制限はなく、用途に応じた任意のもの、例えばシート状物、フィルム状物、三次元形状物、等を使用することができる。また、ハードコート膜の密着性向上のため、所望によりポリカーボネート製品にコロナ放電処理、シランカップリング剤の塗布、等の前処理を施すこともできる。
本発明によると、上記のようなポリシラザン含有組成物を上記のようなポリカーボネート製品の表面に塗布することによってポリシラザンの膜を形成する。塗布方法は、通常実施されているプラスチック基材への塗布方法、すなわち浸漬塗布、ロール塗布、バー塗布、ウェブ塗布(グラビア、キス、キスメイヤバー、ダイ、フレキソ、等)、刷毛塗り、スプレー塗布、回転塗布、流し塗り等が用いられる。好ましい適用方法は浸漬塗布及びグラビア塗布法である。
1回の適用で得られる塗膜の厚さは、ポリシラザン含有組成物の濃度を変更することによって制御することができる。すなわち、塗膜厚を増加するためにはポリシラザン含有組成物の固形分濃度を高くする(溶剤濃度を低くする)ことができる。また、ポリシラザン含有組成物を複数回塗布することによって塗膜厚をさらに増加させることもできる。
本発明によると、このような方法でポリカーボネート製品にポリシラザンをコーティングした後、その塗膜をセラミックス化して実質的にSiOから成るハードコート膜を得る。このセラミックス化は焼成工程と酸化工程とに分けることができる。
焼成のための条件はポリシラザンの分子量、構造、等によって異なる。焼成温度は、ポリカーボネート基材の耐熱性を考慮すると、より低温でセラミックス化するタイプのポリシラザンを用いて、例えば80〜120℃で5〜120分焼成することが好ましい。昇温速度は特に限定しないが、10〜20℃/分の緩やかな昇温速度が好ましい。焼成雰囲気は酸素中、空気中又は不活性ガス等のいずれであってもよい。
上記の焼成処理においてはSi−O、Si−N、Si−H、N−H結合が存在する膜が形成される。この膜はまだSiOへの転化が不完全である。この膜を酸化雰囲気に暴露することによって、膜のSiO化をさらに進行させる。こうして、実質的にSiOから成る(好ましくは、後述するように膜のポリカーボネート基材近傍から表面部にかけて漸次SiO化が進んだ)ハードコート膜を形成させる。酸化雰囲気としては、次に述べる2つの方法(1)及び(2)のいずれか一方又は両方を採用することが好ましい。
(1)水蒸気雰囲気中での熱処理。
圧力は特に限定されるものではないが、1〜3気圧が現実的に適当である。相対湿度は特に限定されるものではないが、10〜100%RHが好ましい。温度は室温以上で効果的であるが室温〜150℃が好ましい。熱処理時間は特に限定されるものではないが10分〜30日が現実的に適当である。
水蒸気雰囲気中での熱処理により、ポリシラザンの酸化または水蒸気との加水分解が進行するので、上記のような低い加熱温度で、実質的にSiOからなる緻密な膜が表面から形成される。但し、このSiO膜はポリシラザンに由来するため窒素を原子百分率で0.005〜5%含有する。この窒素含有量が5%よりも多いと膜のSiO化が不十分となり所期の効果(例えば耐擦傷性や硬度)が得られない。一方、窒素含有量を0.005%よりも少なくすることは困難である。好ましい窒素含有量は原子百分率で0.1〜3%である。
(2)蒸留水中又は触媒を含有した蒸留水中に浸す
触媒を使用する場合には、酸、塩基が好ましく、その種類については特に限定されないが、例えば、トリエチルアミン、ジエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、n−ヘキシルアミン、n−ブチルアミン、ジ−n−ブチルアミン、トリ−n−ブチルアミン、グアニジン、ピグアニン、イミダゾール、1,8−ジアザビシクロ−〔5,4,0〕−7−ウンデセン、1,4−ジアザビシクロ−〔2,2,2〕−オクタン等のアミン類;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、ピリジン、アンモニア水等のアルカリ類;リン酸等の無機酸類;氷酢酸、無水酢酸、プロピオン酸、無水プロピオン酸のような低級モノカルボン酸、又はその無水物、シュウ酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸のような低級ジカルボン酸又はその無水物、トリクロロ酢酸等の有機酸類;過塩素酸、塩酸、硝酸、硫酸、スルホン酸、パラトルエンスルホン酸、三フッ化ホウ素及びその電気供与体との錯体、等;SnCl、ZnCl、FeCl、AlCl、SbCl、TiClなどのルイス酸及びその錯体等を使用することができる。好ましい触媒は塩酸である。触媒の含有割合としては0.01〜50重量%、好ましくは1〜10重量%である。保持温度としては室温から沸点までの温度にわたって有効である。保持時間としては特に限定されるものではないが10分〜30日が現実的に適当である。
蒸留水中又は触媒を含有した蒸留水中に浸すことにより、(触媒が存在する場合にはポリシラザンの酸化が更に加速され)上記のような低い加熱温度で、実質的にSiOからなる緻密な膜が表面から形成される。但し、先に記載したように、このSiO膜はポリシラザンに由来するため窒素を同様に原子百分率で0.005〜5%含有する。
本発明の好ましい態様によると、ポリシラザン塗布後のセラミックス化工程を調節することによって、得られるハードコート膜の厚さを制御することができる。例えば、ポリシラザンの架橋は起こるが酸化までは起こらないような条件(例えば、低温、短時間)で焼成を行う部分焼成工程と、続く塗膜の表面側から作用する酸化工程(例えば、水への浸漬)とを複数回繰り返すことにより、ポリカーボネートとの界面ではSi−N結合が比較的多く、ハードコート膜表面へ向かうにつれSi−O結合が増加する傾斜組成を示すハードコート膜が得られる。この傾斜組成によって、さらにポリシラザン含有組成物に有機成分を導入した場合には傾斜化により残存する有機成分によって、SiO化による塗膜の収縮が緩和されるため、より厚いハードコート膜を得ることができる。この方法で得られる厚いハードコート膜は、ポリカーボネート製品に全体として効果的な硬度、耐擦傷性を付与する。
こうして、本発明のポリシラザン含有組成物をハードコート化すると、5μm以上という膜厚で鉛筆硬度2H以上の厚いハードコート膜が塗布、硬化という通常の簡便な方法で得られる。
実施例によって本発明をさらに説明する。
ポリシラザン含有コーティング組成物の調製
参考例1:Mn=900のペルヒドロポリシラザン(PHPS)
内容積1リットルの四口フラスコにガス吹き込み管、メカニカルスターラー、ジュワーコンデンサーを装着した。反応基内部を脱酸素乾燥窒素で置換した後、四口フラスコに脱気した乾燥ピリジン490mLを入れ、これを氷冷した。次にジクロロシラン51.9gを加えると、白色固体状のアダクト(SiH2/2N)が生成した。反応混合物を氷冷し、攪拌しながら水酸化ナトリウム管及び活性炭管を通して精製したアンモニア51.0gを吹き込んだ後、乾燥窒素を液相に吹き込んで未反応のアンモニアを除去した。
反応終了後、反応混合物を遠心分離し、乾燥ピリジンを用いて洗浄した後、さらに乾燥窒素雰囲気下濾過して、濾液850mLを得た。濾液5mLから溶媒を減圧除去すると、樹脂状固体ペルヒドロポリシラザン0.102gが得られた。数平均分子量をベンゼンの凝固点降下法で測定したところ、600g/モルであった。
このペルヒドロポリシラザン〔東燃製ペルヒドロポリシラザンType−1(PHPS−1;数平均分子量900)〕の20%キシレン溶液を調製し、これを組成物1とした。
参考例2:Pd低温セラミック化ポリシラザン、1.0%
組成物1の20%キシレン溶液50gに酢酸パラジウムの0.5%キシレン溶液20gを添加し、大気中20℃で3時間攪拌しながら反応を行った。次いで、この溶液を濃縮して濃度20%の溶液を調製した。この溶液の数平均分子量はGPCにより測定したところ970であった。この溶液を組成物2とした。
参考例3:メチル化ポリシラザン
温度0℃の反応槽内に設置した1Lの反応容器内を乾燥窒素で置換し、次いで乾燥ピリジン500mLを入れ温度が一定になるまで保持した。その後、攪拌しながら、ジクロロシラン(SiHCl)50.5g、メチルジクロロシラン(MeSiHCl)28.75gをそれぞれ加えて錯体混合物を形成させ、白色固体状のアダクトを得た。
次に、反応混合物を攪拌しながら乾燥アンモニア32.0gを約30分かけて添加した。反応終了後、乾燥窒素を吹き込み未反応のアンモニアを除去し、次いで窒素雰囲気下で加圧濾過し、濾液450mLを得た。この濾液に乾燥m−キシレン1000mLを加え減圧下で溶媒を除去したところ、31.0gの無色の粘性液体が得られた。
この粘性液体の数平均分子量は、GPCにより測定したところ1500であった。また、IRスペクトルの分析結果によると、3350cm−1及び1175cm−1にN−Hに基づく吸収が、2165cm−1にSi−Hに基づく吸収が、1020〜820cm−1にSi−H、Si−N−Siに基づく吸収が、そして1270cm−1にSi−Meに基づく吸収がそれぞれ確認された。
この粘性液体の20%キシレン溶液を調製し、これを組成物3とした。
参考例4:Pd低温セラミック化メチル化ポリシラザン、0.5%
組成物3の20%キシレン溶液50gに酢酸パラジウムの0.5%キシレン溶液10gを添加し、大気中20℃で3時間攪拌しながら反応を行った。次いで、この溶液を濃縮して濃度20%の溶液を調製した。この溶液の数平均分子量はGPCにより測定したところ1600であった。この溶液を組成物4とした。
実施例1
ポリカーボネート基板をヘキサン、イソプロピルアルコール、等で洗浄した後、120℃で20分乾燥したものに、シリコーン系カップリング剤を0.1μm以下の膜厚に塗布し、さらに120℃で30分乾燥した。参考例4で作製した低温セラミック化メチル化ポリシラザン20gをモレキュラーシーブにより十分脱水したテトラエトキシシラン30gに溶解し、40重量%のポリシラザン溶液を得た。これを上記ポリカーボネート基板に流し塗り法で塗布し、120℃で1時間乾燥後、80%RH−95℃で3時間加湿処理を行いセラミック化した。これにより膜厚3〜5μmのセラミックス化膜がポリカーボネート基板上に形成された。この方法により表面鉛筆硬度2Hのハードコート付ポリカーボネートが得られた。このハードコート付ポリカーボネートの諸物性を表1にまとめた。なお、比較参考値はハードコートなしのポリカーボネート及び市販の樹脂系ハードコート付ポリカーボネートの実測値である。ポリカーボネート基板の板厚は1.0mmを使用した。
Figure 2007039694
*1) JIS K 5400に準拠
*2) 積分球式ヘイズメーター
*3) 1 mm間隔クロスカット後セロテープ(登録商標)剥離試験(剥離しなかった数)
*4) 砥石 CS-10F を荷重 100 gで押しつけ 100回転後のヘイズ変化
*5) #000スチールウール 100 g/cmで20往復したときの傷の付き方
ランク−5・・・ガラス並(傷なし)
ランク−1・・・ポリカーボネート並(白濁)
*6) 荷重1 kg、JIS K 5400 6.14 に準拠
*7) 沸騰水に1時間浸漬後の外観変化
*8) キシレンに室温で1時間浸漬後の外観変化
実施例2
ポリカーボネート基板をヘキサン、イソプロピルアルコール、等で洗浄した後、120℃で20分乾燥したものに、シリコーン系カップリング剤を0.1μm以下の膜厚に塗布し、さらに120℃で30分乾燥した。参考例4で作製した低温セラミック化メチル化ポリシラザン15gをモレキュラーシーブにより十分脱水したシクロヘキサン35gに溶解し、30重量%のポリシラザン溶液を得た。これを上記ポリカーボネート基板に浸漬塗布法で塗布し、120℃で1時間乾燥後、80%RH−95℃で3時間加湿処理を行いセラミック化した。これにより膜厚3〜5μmのセラミックス化膜がポリカーボネート基板上に形成された。この方法により表面鉛筆硬度2Hのハードコート付ポリカーボネートが得られた。
実施例3
ポリカーボネート基板をヘキサン、イソプロピルアルコール、等で洗浄した後、120℃で20分乾燥したものに、シリコーン系カップリング剤を0.1μm以下の膜厚に塗布し、さらに120℃で30分乾燥した。参考例2で作製した低温セラミック化ポリシラザン10gをモレキュラーシーブにより十分脱水したシクロヘキサン30gに溶解し、25重量%のポリシラザン溶液を得た。十分乾燥させた三菱レーヨン製アクリル樹脂BR−100を脱水したシクロヘキサンに溶解させて25重量%の溶液40gを作製し、上記の低温セラミック化ポリシラザンシクロヘキサン溶液と混合し、固形分25重量%の溶液を得た。これを上記ポリカーボネート基板に浸漬塗布法で塗布し、120℃で1時間乾燥後、80%RH−95℃で3時間加湿処理を行いセラミック化した。これにより膜厚2〜4μmのセラミックス化膜がポリカーボネート基板上に形成された。この方法により表面鉛筆硬度2Hのハードコート付ポリカーボネートが得られた。
実施例4
参考例1で作製したポリシラザン20gをモレキュラーシーブにより十分脱水したテトラエトキシシラン20gに溶解して50重量%のポリシラザン溶液を得た。これを、ヘキサン、イソプロピルアルコール、等で洗浄した後、120℃で20分乾燥したポリカーボネート基板に流し塗り法で塗布し(シリコーン系カップリング剤は不要)、120℃で2時間乾燥した。これを純水中に5分間浸漬し、さらに120℃で2時間乾燥した。この純水浸漬・乾燥の工程を再度繰り返した。これにより膜厚8〜12μmの表面からセラミック化したハードコート膜を有するポリカーボネートを得ることができた。この表面鉛筆硬度は2Hであった。
実施例5
ポリカーボネート基板をヘキサン、イソプロピルアルコール、等で洗浄した後、120℃で20分乾燥したものに、シリコーン系カップリング剤を0.1μm以下の膜厚に塗布し、さらに120℃で30分乾燥した。参考例2で作製した低温セラミック化メチル化ポリシラザン12gをモレキュラーシーブにより十分脱水したシクロヘキサン28gに溶解し、30重量%のポリシラザン溶液を得た。これに固形分30重量%の住友セメント製ZnOシクロヘキサン分散液ZS−150を60g混合し、超音波を用いて十分攪拌した後、0.6μmのガラス繊維濾紙で濾過した。これを上記ポリカーボネート基板に浸漬塗布法で塗布し、120℃で1時間乾燥後、80%RH−95℃で3時間加湿処理を行いセラミック化した。これにより膜厚3〜5μmのZnOを含むセラミックス化膜がポリカーボネート基板上に形成された。この方法により表面鉛筆硬度2HのUVカット機能を有するハードコート付ポリカーボネートが得られた。
本発明によると、ポリシラザンを用い且つポリカーボネートを攻撃しない溶剤を使用することにより、従来よりも優れた耐擦傷性を示すハードコート膜をポリカーボネート製品に付与することができる。さらに、本発明のハードコート膜に有機成分、フッ素成分及び/又は透明無機フィラーを含めることにより、さらなる厚膜化、撥水性の付与及び/又は紫外線カット性の付与が可能となる。
また、セラミックス化工程を調節することによっても、得られるハードコート膜の厚さを制御することができる。その結果、実用的な硬度、耐擦傷性を示す従来よりも厚いセラミックス系ハードコート膜をポリカーボネートに付与することができる。

Claims (2)

  1. SiO2を主成分とし且つ窒素を原子百分率で0.005〜5%含有するハードコート膜を被覆したポリカーボネート製品。
  2. 前記ハードコート膜が、さらに平均粒径1.0μm以下の紫外線吸収性透明無機フィラーを含有する、請求項1に記載のポリカーボネート製品。
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