JPH09183949A - ハードコート膜を被覆した物品及びハードコート膜の被覆方法 - Google Patents

ハードコート膜を被覆した物品及びハードコート膜の被覆方法

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JPH09183949A
JPH09183949A JP7344031A JP34403195A JPH09183949A JP H09183949 A JPH09183949 A JP H09183949A JP 7344031 A JP7344031 A JP 7344031A JP 34403195 A JP34403195 A JP 34403195A JP H09183949 A JPH09183949 A JP H09183949A
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JP
Japan
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polysilazane
hard coat
coating
film
group
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JP7344031A
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English (en)
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Fumitaka Tamura
文孝 田村
Sunao Suzuki
直 鈴木
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Tonen General Sekiyu KK
Original Assignee
Tonen Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 物品に実用的なハードコート膜を付与するこ
と。 【解決手段】 Si−O結合とSi−N結合を含むハー
ドコート膜を被覆した物品であって、前記ハードコート
膜の結合組成において前記物品との界面側から前記ハー
ドコート膜の表面側へ向かって前記Si−O結合の比率
が増加し且つ前記Si−N結合の比率が低下している前
記物品。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ポリシラザンを用
いたハードコート膜の被覆方法に関する。
【0002】
【従来の技術】耐擦傷性が低い物品にセラミックスを被
覆することができるポリシラザン系組成物及びそれらを
用いた被覆方法が開示されている。例えば、本出願人に
よる特開平5−238827号、同6−122852
号、同6−299118号、同6−306329号、同
6−240208号、同7−196986号公報に、ポ
リシラザンにそのセラミックス化を促進するための触媒
化合物を付加又は添加したより低温でセラミックス化す
る各種ポリシラザン組成物が開示されている。また、本
出願人による特開平7−223867号公報に、ポリシ
ラザンを含むコーティング組成物を塗布し、熱処理した
後、水蒸気雰囲気にさらす工程及び/又は酸触媒若しく
は塩基触媒含有水溶液に浸漬する工程を施すことによ
り、150℃以下という低温でプラスチックフィルムに
SiO2 系セラミックスを被覆する方法が開示されてい
る。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記の
組成物や方法により得られるセラミックス被膜自体の硬
度は十分に高いものであるが、厚みが足りないために耐
擦傷性が不十分な場合がある。例えば、スチールウール
等の細かい傷に対しては薄い被膜であっても被膜自体の
硬度によって耐擦傷性が得られるが、鉛筆のような鋭い
先端のものに対しては、十分な厚みがないと被膜自体の
硬度は十分にあっても、耐擦傷性の効果が現れにくかっ
た。従って、本発明の目的は、実用的なハードコート膜
とするに十分な厚さを有するセラミックス膜を表面に形
成させた物品、特にプラスチック製品とその製造方法を
提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明によると、これら
の及びその他の目的は、 (1)Si−O結合とSi−N結合を含むハードコート
膜を被覆した物品であって、前記ハードコート膜の結合
組成において前記物品との界面側から前記ハードコート
膜の表面側へ向かって前記Si−O結合の比率が増加し
且つ前記Si−N結合の比率が低下している前記物品、
並びに (2)ポリシラザンを含む塗膜を物品表面に形成した
後、前記ポリシラザンが実質的に酸化しない条件下で前
記塗膜を焼成し、次いで前記焼成後の塗膜にその表面か
ら前記ポリシラザンが酸化される条件下で酸化処理を施
すことを特徴とするハードコート膜の被覆方法によって
達成される。
【0005】本発明の好ましい実施態様を以下に列挙す
る。 (3)前記ポリシラザンが下記一般式(I):
【0006】
【化1】
【0007】(上式中、R1 、R2 及びR3 は、それぞ
れ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、シクロ
アルキル基、アリール基、またはこれらの基以外でケイ
素に直結する基が炭素である基、アルキルシリル基、ア
ルキルアミノ基、アルコキシ基を表わすが、但し、
1 、R2 及びR3 の少なくとも1つは水素原子であ
る)で表わされる単位からなる主骨格を有する数平均分
子量が100〜5万のポリシラザンであることを特徴と
する、(2)項に記載の方法。 (4)前記ポリシラザンにさらに有機ポリマーを配合し
たことを特徴とする、(2)又は(3)項に記載の方
法。 (5)前記有機ポリマーがアクリル系樹脂であることを
特徴とする、(4)項に記載の方法。 (6)前記焼成を80〜150℃で実施することを特徴
とする、(2)〜(5)項のいずれか一項に記載の方
法。 (7)前記酸化処理が、前記焼成後の塗膜を水に浸漬す
る処理であることを特徴とする、(2)〜(6)項のい
ずれか一項に記載の方法。 (8)前記酸化処理の後に、前記焼成と同じ条件の工程
及び前記酸化処理と同じ条件の工程を1回又は2回以上
繰り返すことを特徴とする、(2)〜(7)項のいずれ
か一項に記載の方法。 (9)前記物品が透明プラスチック材料である、(1)
項に記載の物品。 (10)前記ハードコート膜の表面におけるSi−O結
合の比率が実質的に100%である、(1)又は(9)
項に記載の物品。
【0008】本発明による方法は、ポリシラザン塗膜を
ポリシラザンが実質的に酸化しない条件下で焼成し、次
いで塗膜表面を酸化雰囲気に暴露することによってポリ
シラザンを塗膜の表面側から内部へ向かって漸次酸化
(Si−N結合→Si−O結合)することを特徴とす
る。このようにハードコート膜の結合組成におけるSi
−O結合の比率を表面部から基材近傍へかけて低下させ
ることにより、ポリシラザンのSiO2 化に伴う塗膜
の収縮量が基材近傍へ向かうにつれて漸次少なくなるの
で成膜時のクラック発生が起こりにくく、膜全体を均一
にSiO2 化する場合よりも厚いハードコート膜を形成
させることができ、また熱膨張率の大きい基材物品が
温度差によって膨張・収縮した場合にはハードコート膜
のSi−N結合比率の高い基材近傍部分がこの膨張・収
縮に追従するため、Si−O結合比率が高く熱膨張率の
小さいハードコート膜表面部へのストレスが少なくなり
剥離が発生しにくくなる。塗膜のセラミックス化時の収
縮量及びその後のストレス緩和については、ポリシラザ
ンに有機基を導入したり、ポリシラザンに有機ポリマー
を共重合させたり、またポリシラザンに有機ポリマーを
配合することによっても制御することができる。このよ
うに、本発明によると従来よりも厚く実用的な耐擦傷性
を示すハードコート膜が得られる。
【0009】以下、本発明について詳しく説明する。本
発明で用いるポリシラザンは、分子内に少なくともSi
−H結合又はN−H結合を有するポリシラザンであれば
よく、ポリシラザン単独は勿論のこと、ポリシラザンと
他のポリマーとの共重合体やポリシラザンと他のポリマ
ー化合物との混合物でも利用できる。用いるポリシラザ
ンには、鎖状、環状又は架橋構造を有するもの、あるい
は分子内にこれら複数の構造を同時に有するものがあ
り、これら単独でもあるいは混合物でも利用できる。
【0010】用いるポリシラザンの代表例としては下記
のようなものがあるが、これらに限定されるものではな
い。上記一般式(I)でR1 、R2 及びR3 に水素原子
を有するものは、ペルヒドロポリシラザンであり、その
製造法は、例えば特公昭63−16325号公報、D. S
eyferth らCommunication of Am. Cer. Soc., C-13, Ja
nuary 1983. に報告されている。これらの方法で得られ
るものは、種々の構造を有するポリマーの混合物である
が、基本的には分子内に鎖状部分と環状部分を含み、
【0011】
【化2】
【0012】の化学式で表わすことができる。ペルヒド
ロポリシラザンの構造の一例を以下に示す。
【0013】
【化3】
【0014】一般式(I)でR1 及びR2 に水素原子、
3 にメチル基を有するポリシラザンの製造方法は、D.
Seyferth らPolym. Prepr., Am. Chem. Soc., Div. Po
lym.Chem., 25, 10(1984)に報告されている。この方
法により得られるポリシラザンは、繰り返し単位が−
(SiH2 NCH3 )−の鎖状ポリマーと環状ポリマー
であり、いずれも架橋構造をもたない。一般式(I)で
1 及びR3 に水素原子、R2 に有機基を有するポリオ
ルガノ(ヒドロ)シラザンの製造法は、D. Seyferth ら
Polym. Prepr., Am. Chem. Soc., Div. Polym. Chem.,
25, 10(1984)、特開昭61−89230号公報、同6
2−156135号公報に報告されている。これらの方
法により得られるポリシラザンには、−(R2 SiHN
H)−を繰り返し単位として、主として重合度が3〜5
の環状構造を有するものや(R3 SiHNH)X 〔(R
2 SiH)1.5 N〕1-X (0.4<x<1)の化学式で
示される分子内に鎖状構造と環状構造を同時に有するも
のがある。
【0015】一般式(I)でR1 に水素原子、R2 及び
3 に有機基を有するポリシラザン、またR1 及びR2
に有機基、R3 に水素原子を有するものは、−(R1
2 SiNR3 )−を繰り返し単位として、主に重合度が
3〜5の環状構造を有している。用いるポリシラザン
は、上記一般式(I)で表わされる単位からなる主骨格
を有するが、一般式(I)で表わされる単位は、上記に
も明らかなように環状化することがあり、その場合には
その環状部分が末端基となり、このような環状化がされ
ない場合には、主骨格の末端はR1 、R2 、R3 と同様
の基又は水素であることができる。
【0016】ポリオルガノ(ヒドロ)シラザンの中に
は、D. Seyferth らCommunication ofAm. Cer. Soc., C
-132, July 1984. に報告されている様な分子内に架橋
構造を有するものもある。一例を下記に示す。
【0017】
【化4】
【0018】また、特開昭49−69717号公報に報
告されている様なR1 SiX3 (X:ハロゲン)のアン
モニア分解によって得られる架橋構造を有するポリシラ
ザン(R1 Si(NH)X )、あるいはR1 SiX3
びR2 2SiX2 の共アンモニア分解によって得られる下
記の構造を有するポリシラザンも出発材料として用いる
ことができる。
【0019】
【化5】
【0020】また、ポリシラザン変性物として、例えば
下記の構造(式中、側鎖の金属原子であるMは架橋をな
していてもよい)のように金属原子を含むポリメタロシ
ラザンも出発材料として用いることができる。
【0021】
【化6】
【0022】その他、特開昭62−195024号公報
に報告されているような繰り返し単位が〔(SiH2
n (NH)m 〕及び〔(SiH2 r O〕(これら式
中、n、m、rはそれぞれ1、2又は3である)で表さ
れるポリシロキサザン、特開平2−84437号公報に
報告されているようなポリシラザンにボロン化合物を反
応させて製造する耐熱性に優れたポリボロシラザン、特
開昭63−81122号、同63−191832号、特
開平2−77427号公報に報告されているようなポリ
シラザンとメタルアルコキシドとを反応させて製造する
ポリメタロシラザン、特開平1−138108号、同1
−138107号、同1−203429号、同1−20
3430号、同4−63833号、同3−320167
号公報に報告されているような分子量を増加させたり
(上記公報の前4者)、耐加水分解性を向上させた(後
2者)、無機シラザン高重合体や改質ポリシラザン、特
開平2−175726号、同5−86200号、同5−
331293号、同3−31326号公報に報告されて
いるようなポリシラザンに有機成分を導入した厚膜化に
有利な共重合ポリシラザン、なども同様に使用できる。
【0023】本発明では、さらに以下のような低温セラ
ミックス化ポリシラザンを使用することができる。例え
ば、本願出願人による特開平5−238827号公報に
記載されているケイ素アルコキシド付加ポリシラザンが
挙げられる。この変性ポリシラザンは、前記一般式
(I)で表されるポリシラザンと、下記一般式(II): Si(OR4 4 (II) (式中、R4 は、同一でも異なっていてもよく、水素原
子、炭素原子数1〜20個を有するアルキル基またはア
リール基を表し、少なくとも1個のR4 は上記アルキル
基またはアリール基である)で表されるケイ素アルコキ
シドを加熱反応させて得られる、アルコキシド由来ケイ
素/ポリシラザン由来ケイ素原子比が0.001〜3の
範囲内かつ数平均分子量が約200〜50万のケイ素ア
ルコキシド付加ポリシラザンである。上記R4 は、炭素
原子数1〜10個を有するアルキル基がより好ましく、
また炭素原子数1〜4個を有するアルキル基が最も好ま
しい。また、アルコキシド由来ケイ素/ポリシラザン由
来ケイ素原子比は0.05〜2.5の範囲内にあること
が好ましい。ケイ素アルコキシド付加ポリシラザンの調
製については、上記特開平5−238827号公報を参
照されたい。
【0024】低温セラミックス化ポリシラザンの別の例
として、本出願人による特開平6−122852号公報
に記載されているグリシドール付加ポリシラザンが挙げ
られる。この変性ポリシラザンは、前記一般式(I)で
表されるポリシラザンとグリシドールを反応させて得ら
れる、グリシドール/ポリシラザン重量比が0.001
〜2の範囲内かつ数平均分子量が約200〜50万のグ
リシドール付加ポリシラザンである。グリシドール/ポ
リシラザン重量比は0.01〜1であることが好まし
く、さらには0.05〜0.5であることがより好まし
い。グリシドール付加ポリシラザンの調製については、
上記特開平6−122852号公報を参照されたい。
【0025】低温セラミックス化ポリシラザンの別の例
として、本願出願人による特開平6−240208号公
報に記載されているアルコール付加ポリシラザンが挙げ
られる。この変性ポリシラザンは、前記一般式(I)で
表されるポリシラザンとアルコールを反応させて得られ
る、アルコール/ポリシラザン重量比が0.001〜2
の範囲内かつ数平均分子量が約100〜50万のアルコ
ール付加ポリシラザンである。上記アルコールは、沸点
110℃以上のアルコール、例えばブタノール、ヘキサ
ノール、オクタノール、ノナノール、メトキシエタノー
ル、エトキシエタノール、フルフリルアルコールである
ことが好ましい。また、アルコール/ポリシラザン重量
比は0.01〜1であることが好ましく、さらには0.
05〜0.5であることがより好ましい。アルコール付
加ポリシラザンの調製については、上記特開平6−24
0208号公報を参照されたい。
【0026】低温セラミックス化ポリシラザンのまた別
の例として、本願出願人による特開平6−299118
号公報に記載されている金属カルボン酸塩付加ポリシラ
ザンが挙げられる。この変性ポリシラザンは、前記一般
式(I)で表されるポリシラザンと、ニッケル、チタ
ン、白金、ロジウム、コバルト、鉄、ルテニウム、オス
ミウム、パラジウム、イリジウム、アルミニウムの群か
ら選択される少なくとも1種の金属を含む金属カルボン
酸塩を反応させて得られる、金属カルボン酸塩/ポリシ
ラザン重量比が0.000001〜2の範囲内且つ数平
均分子量が約200〜50万の金属カルボン酸塩付加ポ
リシラザンである。上記金属カルボン酸塩は、式(RC
OO)n M〔式中、Rは炭素原子数1〜22個の脂肪族
基又は脂環式基であり、Mは上記金属群から選択される
少なくとも1種の金属を表し、そしてnは金属Mの原子
価である〕で表される化合物である。上記金属カルボン
酸塩は無水物であっても水和物であってもよい。また、
金属カルボン酸塩/ポリシラザン重量比は好ましくは
0.001〜1、より好ましくは0.01〜0.5であ
る。金属カルボン酸塩付加ポリシラザンの調製について
は、上記特開平6−299118号公報を参照された
い。
【0027】低温セラミックス化ポリシラザンのさらに
別の例として、本願出願人による特開平6−30632
9号公報に記載されているアセチルアセトナト錯体付加
ポリシラザンが挙げられる。この変性ポリシラザンは、
前記一般式(I)で表されるポリシラザンと、金属とし
てニッケル、白金、パラジウム又はアルミニウムを含む
アセチルアセトナト錯体を反応させて得られる、アセチ
ルアセトナト錯体/ポリシラザン重量比が0.0000
01〜2の範囲内かつ数平均分子量が約200〜50万
のアセチルアセトナト錯体付加ポリシラザンである。上
記の金属を含むアセチルアセトナト錯体は、アセチルア
セトン(2,4−ペンタジオン)から酸解離により生じ
た陰イオンacac- が金属原子に配位した錯体であ
り、一般に式(CH3 COCHCOCH3 n M〔式
中、Mはn価の金属を表す〕で表される。アセチルアセ
トナト錯体/ポリシラザン重量比は、好ましくは0.0
01〜1、より好ましくは0.01〜0.5である。ア
セチルアセトナト錯体付加ポリシラザンの調製について
は、上記特開平6−306329号公報を参照された
い。
【0028】その他の低温セラミックス化ポリシラザン
の例として、本願出願人による特開平7−196986
号公報に記載されている金属微粒子添加ポリシラザンが
挙げられる。この変性ポリシラザンは、前記一般式
(I)で表されるポリシラザンを主成分とするコーティ
ング溶液に、Au、Ag、Pd、Niをはじめとする金
属の微粒子を添加して得られる変性ポリシラザンであ
る。好ましい金属はAgである。金属微粒子の粒径は
0.5μmより小さいことが好ましく、0.1μm以下
がより好ましく、さらには0.05μmより小さいこと
が好ましい。特に、粒径0.005〜0.01μmの独
立分散超微粒子を高沸点アルコールに分散させたものが
好ましい。金属微粒子の添加量は、ポリシラザン100
重量部に対して0.01〜10重量部、好ましくは0.
05〜5重量部である。金属微粒子添加ポリシラザンの
調製については、上記特開平7−196986号公報を
参照されたい。
【0029】本発明によると、上記のようなポリシラザ
ン又はその変性物を含むコーティング組成物を物品に塗
布するか、或いは上記のようなポリシラザン又はその変
性物と他の有機ポリマーとの共重合体や他の有機ポリマ
ー化合物との混合物を含むコーティング組成物を物品に
塗布することによって、塗膜を形成する。好適な態様と
してコーティング組成物が有機基を含むことにより、ポ
リシラザンのSiO2 化時に膜中にクラックが発生しに
くくなるためハードコート膜をさらに厚くすることがで
きる。ポリシラザン自体に含まれる有機基としては、ア
ルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール
基、またはこれらの基以外でケイ素に直結する基が炭素
である基、アルキルシリル基、アルキルアミノ基、アル
コキシ基、等が挙げられる。有機基の種類や割合は、得
られるハードコート膜の厚さと硬度の所望のバランスを
考慮しながら適宜選定することができる。本発明におい
てはアルキル基、特にメチル基を有するポリシラザンを
使用することが好ましい。
【0030】また、本発明においては、同様にハードコ
ート膜の膜厚を増加させる目的で、ポリシラザンと有機
ポリマーとの共重合体を含むコーティング組成物を使用
することもできる。この場合、ポリシラザンは有機基を
含むものであっても含まないもの(例えば、ペルヒドロ
ポリシラザン)であってもよい。有機ポリマーとの共重
合体としては、上記特開平2−175726号公報に記
載されている無機ポリシラザンと有機ポリシラザンとを
アンモニア等の架橋基の存在下あるいは非存在下、塩基
性溶媒中で反応させたポリシラザンの共重合体、上記特
開平3−31326号公報に記載されている無機ジハロ
シランと有機ジハロシランとをルイス塩基と反応させて
得られた錯体をアンモニアと反応させることにより合成
される共重合シラザンポリマー、上記特開平5−862
00号公報に記載されている熱硬化性のペルヒドロポリ
シラザンブロックと熱可塑性のケイ素含有ポリマーブロ
ックからなる新規な熱硬化性のブロック共重合体及び上
記特開平5−331293号公報に記載されているケイ
素含有熱可塑性ポリマー(ポリカルボシラン等)にポリ
ボロシラザンを共重合させて得られる熱硬化性共重合
体、等を使用することができる。共重合体として用いら
れる有機ポリマーの種類及び割合についても同様に、得
られるハードコート膜の厚さと硬度の所望のバランスを
考慮しながら適宜選定することができる。これら共重合
ポリシラザンの製造方法については、上記特開平2−1
75726号、同3−31326号、同5−86200
号及び同5−331293号公報を参照されたい。
【0031】さらに本発明においては、ポリシラザンに
有機ポリマーを混合したコーティング組成物を使用する
ことによって、ハードコート膜の膜厚を増加させ、物品
全体としての耐擦傷性を向上させることもできる。混合
物として使用可能な有機ポリマーの例として、アクリル
系樹脂、フッ素樹脂、等が挙げられる。ここでもまた、
混合すべき有機ポリマーの種類及びその割合は、得られ
るハードコート膜の厚さと硬度の所望のバランスを考慮
しながら適宜選定することができる。本発明において混
合物として特に好適に用いられる有機ポリマー化合物は
アクリル系樹脂である。
【0032】使用可能なアクリル系樹脂としては、各種
の樹脂が使用できるが、例えばアクリル酸エステル(ア
ルコール残基としては、メチル基、エチル基、n−プロ
ピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル
基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキ
シル基、フェニル基、ベンジル基、フェニルエチル基等
を例示できる);メタクリル酸エステル(アルコール残
基は上記と同じ);2−ヒドロキシエチルアクリレー
ト、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロ
キシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメ
タクリレート等の如きヒドロキシ含有モノマー;アクリ
ルアミド、メタクリルアミド、N−メチルメタクリルア
ミド、N−メチルアクリルアミド、N−メチロールアク
リルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N,N
−ジメチロールアクリルアミド、N−メトキシメチルア
クリルアミド、N−メトキシメチルメタクリルアミド、
N−フェニルアクリルアミド等の如きアミド基含有モノ
マー;N,N−ジエチルアミノエチルアクリレート、
N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート等の如き
アミノ基含有モノマー;グリシジルアクリレート、グリ
シジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル等の
如きエポキシ基含有モノマー;スチレンスルホン酸、ビ
ニルスルホン酸、及びそれらの塩(例えばナトリウム
塩、カリウム塩、アンモニウム塩等)等の如きスルホン
酸基又はその塩を含有するモノマー;クロトン酸、イタ
コン酸、アクリル酸、マレイン酸、フマール酸、及びそ
れらの塩(例えばナトリウム塩、カリウム塩、アンモニ
ウム塩等)等の如きカルボキシル基又はその塩を含有す
るモノマー;無水マレイン酸、無水イタコン酸等の無水
物を含有するモノマー;その他ビニルイソシアネート、
アリルイソシアネート、スチレン、ビニルメチルエーテ
ル、ビニルエチルエーテル、ビニルトリスアルコキシシ
ラン、アルキルマレイン酸モノエステル、アルキルフマ
ール酸モノエステル、アクリロニトリル、メタクリロニ
トリル、アルキルイタコン酸モノエステル、塩化ビニリ
デン、酢酸ビニル、塩化ビニル等の単量体の組合せから
つくられたものであるが、アクリル酸誘導体、メタクリ
ル酸誘導体の如き(メタ)アクリル単量体の成分が50
モル%以上含まれているものが好ましく、特にメタクリ
ル酸メチルの成分を含有しているものが好ましい。
【0033】ポリシラザンとアクリル系樹脂とは相溶
し、しかも適当なアクリル系樹脂を選ぶことによりポリ
シラザンを変質することなく安定なコーティング組成物
が得られる。またそれによって両者の特性、特に透明性
がそのまま生かされ、両者の短所を相補ったハードコー
ト膜を得ることが可能になる。ポリシラザンとアクリル
系樹脂の配合量は、コーティングの用途に応じて広く選
択でき、例えば、より厚い被膜を形成する場合には、全
固形分〔ポリシラザンとアクリル系樹脂の合計量〕を1
00重量%として、ポリシラザンを3〜30重量%の範
囲内とし、また硬度や耐擦傷性を重視する場合にはポリ
シラザンを30〜97重量%の範囲内とすることがよ
い。アクリル系樹脂を含むポリシラザン含有組成物を調
製する場合、一般にはポリシラザンの溶液と、後述のポ
リシラザン溶剤の中で使用するアクリル系樹脂に良溶剤
である溶剤に溶解させたアクリル系樹脂溶液とを混合す
ればよい。
【0034】ポリシラザン含有コーティング組成物に
は、得られるハードコート膜に紫外線カット性を付与す
るために、透明無機フィラーを含めることができる。こ
のような透明無機フィラーとしては、ポリシラザンとの
相性が良いことから酸化亜鉛(ZnO)、酸化チタン
(TiO2 )、酸化セリウム(Se2 3 )、等を使用
することが好ましい。紫外線カット性を示すハードコー
ト膜が透明であるためには、無機フィラーの平均粒径が
1.0μm以下、好ましくは0.05μm以下である必
要がある。また、ポリシラザン含有組成物中でこれらの
無機フィラーが凝集しないように、必要に応じて攪拌、
超音波、ボールミル、振動ミル、ペイントシェーカー、
アトライター、分散剤、等を使用して無機フィラーを均
一に分散させることが好ましい。無機フィラー含有量
は、ハードコート膜において一般に10〜90重量%、
好ましくは40〜75重量%の範囲とする。このような
紫外線カットを目的としたポリシラザンへの無機フィラ
ー導入についての詳細は、本出願人による特願平6−3
08917号明細書〔発明の名称「紫外線防止透明板及
びその製造方法」〕を参照されたい。
【0035】本発明によるポリシラザン含有コーティン
グ組成物は、通常はポリシラザンを溶剤に溶解させたも
のである。溶剤を選定する際には、用いるポリシラザン
の良溶剤である点の他、塗被される基材物品に対して不
活性である、すなわちこれを攻撃しないという観点も必
要である。ポリシラザンの溶剤としては、脂肪族炭化水
素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素の炭化水素溶剤、
ハロゲン化メタン、ハロゲン化エタン、ハロゲン化ベン
ゼン等のハロゲン化炭化水素、脂肪族エーテル、脂環式
エーテル等のエーテル類、テトラアルコキシシラン系溶
剤を使用することができる。好ましい溶剤は、塩化メチ
レン、クロロホルム、四塩化炭素、ブロモホルム、塩化
エチレン、塩化エチリデン、トリクロロエタン、テトラ
クロロエタン等のハロゲン化炭化水素、エチルエーテ
ル、イソプロピルエーテル、エチルブチルエーテル、ブ
チルエーテル、1,2−ジオキシエタン、ジオキサン、
ジメチルジオキサン、テトラヒドロフラン、テトラヒド
ロピラン等のエーテル類、ペンタンヘキサン、イソヘキ
サン、メチルペンタン、ヘプタン、イソヘプタン、オク
タン、イソオクタン、シクロペンタン、メチルシクロペ
ンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ベン
ゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の炭化水
素等、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、
等である。これらの溶剤を使用する場合、ポリシラザン
の溶解度や溶剤の蒸発速度を調節するために、2種類以
上の溶剤を混合してもよい。
【0036】ポリシラザンと有機ポリマーを混合する場
合の溶剤としては、ポリシラザンと有機ポリマーの両方
を安定的に溶解するものが好ましく、例えば、有機ポリ
マーがアクリル樹脂である場合には、キシレン、トルエ
ン、ブチルカルビトールアセテート、酢酸n−ブチル、
等を使用することが好ましい。ポリシラザンとアクリル
系樹脂を含むコーティング用溶液を調製する場合、一般
的にはポリシラザンの溶液とアクリル系樹脂の溶液とを
混合すればよい。溶剤の使用量(割合)は採用するコー
ティング方法により作業性がよくなるように選択され、
また用いるポリシラザンの平均分子量、分子量分布、そ
の構造によって異なるので、適宜、自由に混合すること
ができる。好ましくは固形分濃度で1〜50重量%の範
囲で混合することができる。
【0037】また、本発明のコーティング用組成物にお
いて、必要に応じて適当な充填剤及び/又は増量剤を加
えることができる。充填剤の例としてはシリカ、アルミ
ナ、ジルコニア、マイカを始めとする酸化物系無機物あ
るいは炭化珪素、窒化珪素等の非酸化物系無機物の微粉
等が挙げられる。また用途によってはアルミニウム、亜
鉛、銅等の金属粉末の添加も可能である。さらに充填剤
の例を詳しく述べれば、シリカゾル、ジルコニアゾル、
アルミナゾル、チタニアゾル等のゾル:ケイ砂、石英、
ノバキュライト、ケイ藻土等のシリカ系:合成無定形シ
リカ:カオリナイト、雲母、滑石、ウオラストナイト、
アスベスト、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム等
のケイ酸塩:ガラス粉末、ガラス球、中空ガラス球、ガ
ラスフレーク、泡ガラス球等のガラス体:窒化ホウ素、
炭化ホウ素、窒化アルミニウム、炭化アルミニウム、窒
化ケイ素、炭化ケイ素、ホウ化チタン、窒化チタン、炭
化チタン等の非酸化物系無機物:炭酸カルシウム:酸化
亜鉛、アルミナ、マグネシア、酸化チタン、酸化ベリリ
ウム等の金属酸化物:硫酸バリウム、二硫化モリブデ
ン、二硫化タングステン、弗化炭素その他無機物:アル
ミニウム、ブロンズ、鉛、ステンレススチール、亜鉛等
の金属粉末:カーボンブラック、コークス、黒鉛、熱分
解炭素、中空カーボン球等のカーボン体等があげられ
る。好ましい充填剤は、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化ア
ルミニウム、酸化ジルコニウムなどの酸化物系無機物の
超微粒子及びシリカゾルである。
【0038】これら充填剤は、針状(ウィスカーを含
む)、粒状、鱗片状等種々の形状のものを単独又は2種
以上混合して用いることができる。又、これら充填剤の
粒子の大きさは1回に適用可能な膜厚よりも小さいこと
が望ましい。また充填剤の添加量はポリシラザン1重量
部に対し、0.05重量部〜10重量部の範囲であり、
特に好ましい添加量は0.2重量部〜3重量部の範囲て
ある。コーティング用組成物には、必要に応じて各種顔
料、レベリング剤、消泡剤、帯電防止剤、紫外線吸収
剤、pH調整剤、分散剤、表面改質剤、可塑剤、乾燥促進
剤、流れ止め剤を加えてもよい。
【0039】本発明は、金属、ガラス、木材、プラスチ
ック、等をはじめとするどんな材料の物品にも適用する
ことができるが、一般に耐擦傷性も耐熱性も低い材料に
は特に有効に適用することができる。さらに、本発明に
より得られるハードコート膜は透明であることができる
ので、透明なハードコート膜が要求される用途にも特に
有効に適用される。このため、本発明をプラスチック基
材物品に適用することが特に有利である。本発明におい
てプラスチック物品として耐熱性、耐溶剤性の観点から
好ましい基材として、ポリエチレンテレフタレート(P
ET)、ポリイミド(PI;例えば、商品名カプトンで
市販されているピロメリット酸無水物とジアミノジフェ
ニルエーテルとの重縮合生成物)、ポリカーボネート
(PC)、二軸延伸ポリプロピレン(OPP)、ポリフ
ェニレンスルフィド(PPS)、ポリエチレンナフタレ
ート(PEN)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポ
リエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルエーテルケ
トン(PEEK)、ポリアリレート(PAR)、二軸延
伸パラ系アラミドフィルム、ノルボルネン系ポリオレフ
ィンフィルム、支持体付き極薄フィルム、等が挙げられ
る。プラスチック基材の形状や大きさに特に制限はな
く、用途に応じた任意のもの、例えばシート状物、フィ
ルム状物、三次元形状物、等を使用することができる。
【0040】基材物品には、所望により密着性向上のた
めにコロナ放電処理、シランカップリング剤の塗布、等
の前処理を施すこともできる。本発明によると、上記の
ようなコーティング組成物を上記のような基材物品の表
面に塗布することによってポリシラザンの膜を形成す
る。塗布方法は、通常実施されている基材物品への塗布
方法、すなわち浸漬塗布、ロール塗布、バー塗布、ウェ
ブ塗布(グラビア、キス、キスメイヤバー、ダイ、フレ
キソ、等)、刷毛塗り、スプレー塗布、回転塗布、流し
塗り等が用いられる。好ましい適用方法は浸漬塗布又は
グラビア塗布法である。1回の適用で得られる塗膜の厚
さは、コーティング用組成物の濃度を変更することによ
って制御することができる。すなわち、膜厚を増加する
ためにはコーティング用組成物の固形分濃度を高くする
(溶剤濃度を低くする)ことができる。また、塗布と乾
燥を繰り返しコーティング用組成物を複数回適用するこ
とによって塗膜厚を増加させることもできる。
【0041】本発明によると、このような方法で基材物
品にポリシラザンをコーティングした後、焼成工程と酸
化工程を制御することによって、得られるハードコート
膜の厚さを制御することができる。すなわち、ポリシラ
ザンの架橋は起こるが実質的な酸化までは起こらないよ
うな条件下(例えば、低温、短時間)で焼成を行う工程
と、続く塗膜の表面側からポリシラザンが酸化される条
件下(例えば、水への浸漬)で酸化を行う工程とを実施
することによって、基材物品との界面ではSi−N結合
が比較的多く残存し、ハードコート膜表面へ向かうにつ
れSi−O結合が増加する傾斜組成を示すハードコート
膜が得られる。こうすることにより、ポリシラザンのS
iO2 化に伴う塗膜の収縮量が基材近傍へ向かうにつれ
て漸次少なくなるので膜内にクラックが発生しにくく、
膜全体を均一にSiO2 化する場合よりも厚いハードコ
ート膜を形成させることができる。
【0042】焼成のための条件はポリシラザンの分子量
や構造、基材物品の種類、等によって異なる。焼成温度
は、耐熱性の低いプラスチック基材を使用する場合に
は、より低温でセラミックス化するタイプのポリシラザ
ンを用いて、例えば60〜150℃で5〜120分焼成
することが好ましい。昇温速度は特に限定しないが、1
0〜20℃/分の緩やかな昇温速度が好ましい。焼成雰
囲気は酸素、空気、不活性ガス中、等のいずれであって
もよい。この焼成処理条件は、基材物品の種類によって
当業者が適宜設定することができるが、例えばポリカー
ボネートの場合、焼成温度80〜120℃、昇温速度1
0〜20℃/分、より好ましくは焼成温度100〜12
0℃、昇温速度10〜20℃/分で30〜120分焼成
することが好ましい。
【0043】上記の焼成処理に続いて、この塗膜を酸化
雰囲気に暴露することによって、ポリシラザンのSiO
2 化を表面から進行させる。こうして、基材物品近傍か
ら表面部にかけて漸次SiO2 化が進んだハードコート
膜を形成させる。酸化処理としては、次に述べる方法を
採用することが好ましい。
【0044】蒸留水又は触媒を含有した蒸留水への浸漬
処理 触媒を使用する場合は、酸、塩基が好ましく、その種類
については特に限定されないが、例えば、トリエチルア
ミン、ジエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタ
ノールアミン、トリエタノールアミン、n−ヘキシルア
ミン、n−ブチルアミン、ジ−n−ブチルアミン、トリ
−n−ブチルアミン、グアニジン、ピグアニン、イミダ
ゾール、1,8−ジアザビシクロ−〔5,4,0〕−7
−ウンデセン、1,4−ジアザビシクロ−〔2,2,
2〕−オクタン等のアミン類;水酸化ナトリウム、水酸
化カリウム、水酸化リチウム、ピリジン、アンモニア水
等のアルカリ類;リン酸等の無機酸類;氷酢酸、無水酢
酸、プロピオン酸、無水プロピオン酸のような低級モノ
カルボン酸、又はその無水物、シュウ酸、フマル酸、マ
レイン酸、コハク酸のような低級ジカルボン酸又はその
無水物、トリクロロ酢酸等の有機酸類;過塩素酸、塩
酸、硝酸、硫酸、スルホン酸、パラトルエンスルホン
酸、三フッ化ホウ素及びその電気供与体との錯体、等;
SnCl4 、ZnCl2 、FeCl3 、AlCl3 、S
bCl3 、TiCl4 などのルイス酸及びその錯体等を
使用することができる。好ましい触媒は塩酸である。触
媒の含有割合としては0.01〜50重量%、好ましく
は1〜10重量%である。保持温度としては室温から沸
点までの温度にわたって有効である。保持時間としては
特に限定されるものではないが10分〜30日が現実的
に適当である。
【0045】蒸留水又は触媒を含有した蒸留水に浸漬す
ることにより、(触媒が存在する場合にはポリシラザン
の酸化あるいは水との加水分解が更に加速され)上記の
ような低い加熱温度で、実質的にSiO2 からなる緻密
な膜が表面から形成される。但し、先に記載したよう
に、この表面のSiO2 膜はポリシラザンに由来するた
め窒素を同様に原子百分率で0.005〜5%含有す
る。
【0046】なお、本発明では、焼成・酸化処理を一度
施して得られた被膜に、これと同じ又は異なる条件の焼
成・酸化処理を1回又は2回以上繰り返して施すことに
よって、所望の酸化程度(シリカ比率)にしたハードコ
ート膜を得ることができる。また、本発明により得られ
たハードコート膜の上に再度本発明を適用することによ
って、Si−O結合比率が傾斜している膜を多層化して
耐擦傷性をさらに高めることも可能である。
【0047】こうして、本発明のコーティング組成物を
ハードコート化すると、硬度2H以上(鉛筆硬度)で且
つ膜厚3μm以上、さらには最大で10μmという厚い
ハードコート膜が塗布、低温硬化という通常の簡便な方
法で得られる。
【0048】
【実施例】実施例によって本発明をさらに説明する。
【0049】参考例1:Mn=900のペルヒドロポリ
シラザン(PHPS)の合成 内容積1リットルの四口フラスコにガス吹き込み管、メ
カニカルスターラー、ジュワーコンデンサーを装着し
た。反応基内部を脱酸素乾燥窒素で置換した後、四口フ
ラスコに脱気した乾燥ピリジン490mLを入れ、これ
を氷冷した。次にジクロロシラン51.9gを加える
と、白色固体状のアダクト(SiH2/2 55 N)が
生成した。反応混合物を氷冷し、攪拌しながら水酸化ナ
トリウム管及び活性炭管を通して精製したアンモニア5
1.0gを吹き込んだ後、乾燥窒素を液相に吹き込んで
未反応のアンモニアを除去した。反応終了後、反応混合
物を遠心分離し、乾燥ピリジンを用いて洗浄した後、さ
らに乾燥窒素雰囲気下濾過して、濾液850mLを得
た。濾液5mLから溶媒を減圧除去すると、樹脂状固体
ペルヒドロポリシラザン0.102gが得られた。数平
均分子量をベンゼンの凝固点降下法で測定したところ、
600g/モルであった。このペルヒドロポリシラザン
〔東燃製ペルヒドロポリシラザンType−1(PHP
S−1;数平均分子量900)〕の20%キシレン溶液
を調製し、これを組成物1とした。
【0050】実施例1 参考例1で作製したポリシラザン20gをモレキュラー
シーブにより十分脱水したテトラエトキシシラン20g
に溶解して50重量%のポリシラザン溶液を得た。これ
を、ヘキサン、イソプロピルアルコール、等で洗浄した
後、120℃で20分乾燥したポリカーボネート基板に
流し塗り法で塗布し、120℃で2時間乾燥した。これ
を純水中に5分間浸漬し、さらに120℃で2時間乾燥
した。この純水浸漬・乾燥の工程を再度繰り返した。こ
れにより膜厚8〜12μmの表面からセラミック化した
ハードコート膜を有するポリカーボネートを得ることが
できた。この表面鉛筆硬度は2H(基材のポリカーボネ
ートは4B)であった。
【0051】実施例2 参考例1で作製したポリシラザン20gをモレキュラー
シーブにより十分脱水したキシレン30gに溶解して4
0重量%のポリシラザン溶液を得た。これを、キシレ
ン、イソプロピルアルコール、等で洗浄した後、80℃
で20分乾燥した(耐キシレン性の)アクリル基板に流
し塗り法で塗布し、80℃で3時間乾燥した。これを純
水中に5分間浸漬し、さらに80℃で3時間乾燥した。
この純水浸漬・乾燥の工程を再度繰り返した。これによ
り膜厚8〜12μmの表面からセラミック化したハード
コート膜を有するアクリルを得ることができた。この表
面鉛筆硬度は4H(基材のアクリルは2H)であった。
【0052】実施例3 参考例1で作製したポリシラザン20gをモレキュラー
シーブにより十分脱水したキシレン30gに溶解して4
0重量%のポリシラザン溶液を得た。これを(耐キシレ
ン性の)PETフィルムに流し塗り法で塗布し、120
℃で2時間乾燥した。これを純水中に5分間浸漬し、さ
らに120℃で2時間乾燥した。この純水浸漬・乾燥の
工程を再度繰り返した。これにより膜厚8〜12μmの
表面からセラミック化したハードコート膜を有するPE
Tフィルムを得ることができた。この表面鉛筆硬度は2
H(基材のPETフィルムは4B)であった。
【0053】
【発明の効果】本発明によると、ポリシラザン塗膜をポ
リシラザンが実質的に酸化しない条件下で焼成し、次い
で塗膜表面を酸化雰囲気に暴露することによって表面部
から基材近傍へかけてSiO2 含有率が低下する傾斜組
成を示すハードコート膜が得られる。このハードコート
膜は、ポリシラザンのSiO2 化に伴う塗膜の収縮量が
基材近傍へ向かうにつれて漸次少なくなるので成膜時に
クラックが発生しにくく、膜全体を均一にSiO2 化す
る場合よりも厚くすることができる。また熱膨張率の大
きい物品(例、プラスチック)が温度差によって膨張・
収縮した場合にはハードコート膜の基材近傍に向かうに
つれてより多く残存しているSiN成分がこの膨張・収
縮に追従するため、SiO2 含有率が高く熱膨張率の小
さいハードコート膜表面部へのストレスが少なくなり剥
離が起こりにくい。その結果、従来よりも厚く実用的な
耐擦傷性を示すハードコート膜が得られる。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Si−O結合とSi−N結合を含むハー
    ドコート膜を被覆した物品であって、前記ハードコート
    膜の結合組成において前記物品との界面側から前記ハー
    ドコート膜の表面側へ向かって前記Si−O結合の比率
    が増加し且つ前記Si−N結合の比率が低下している前
    記物品。
  2. 【請求項2】 ポリシラザンを含む塗膜を物品表面に形
    成した後、前記ポリシラザンが実質的に酸化しない条件
    下で前記塗膜を焼成し、次いで前記焼成後の塗膜にその
    表面から前記ポリシラザンが酸化される条件下で酸化処
    理を施すことを特徴とするハードコート膜の被覆方法。
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