JP2007031503A - 赤色蛍光体及び白色発光装置 - Google Patents

赤色蛍光体及び白色発光装置 Download PDF

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Abstract

【課題】 近紫外及び青色光によって励起し、高い発光効率及び発光強度をもって赤色光に波長変換することのできる赤色蛍光体の提供。
【解決手段】 一般式(1)で示され、ペロブスカイト化合物を結晶母材、Eu及び/又はSmを発光中心とし、波長360〜420nm及び420〜500nmの励起光によって発光すること赤色蛍光体で、上記Eu及び/又はSmの濃度は、上記結晶母材に対して0.1〜10モル%である事が好ましく、更に、上記結晶母材中のZrの50モル%以下がチタン族元素から選択される少なくとも1種により置換されていてもよい。
Figure 2007031503

【選択図】図4

Description

本発明は赤色蛍光体に関する。詳しくは、ペロブスカイト化合物を結晶母材、Eu及び/又はSmを発光中心とし、近紫外及び青色の励起光によって発光する赤色蛍光体に関する。
従来、白色光源としては、蛍光灯や白熱灯が用いられている。しかし、これらの白色光源は電力消費量、大きさ、動作寿命等の点で問題がある。
発光ダイオード(LED)は、小型で、発光効率がよく、水銀に代表される有害物質を含まないことから、環境に悪影響を与えないエコロジー商品としての発光素子であり、将来的な需要増が期待できる。また、発光ダイオードは、固体素子であるため、動作寿命が長く、初期駆動特性が良好であり、耐振動性にも優れ、さらに反復的なON/OFF点灯の繰り返しに強いという特性も有する。このため、発光ダイオードは、発光素子として電力消費量が少ない各種インジケータや種々の光源に広く利用されてきている。
また、近年、超高輝度、高効率な赤色、緑色及び青色の発光ダイオードが開発され、これらの発光ダイオードを発光素子として用いた大画面のLEDディスプレイが使用されてきており、小電力で動作可能で、軽量、長寿命であるという利点を有している。このような状況から、蛍光灯や白熱灯に代わるものとして、発光ダイオードを発光素子とした白色発光装置の出現が期待されている。
しかし、発光ダイオードを発光素子とした場合には、一般的には、発光ダイオードは単色性の強い発光スペクトルしか持たず、白色光を得るために必要な可視光域でブロードな発光スペクトルを有しないという問題がある。
そこで、最近、白色光を得るために、赤色、緑色及び青色の3つの光の成分を提供する発光ダイオード等の発光素子を相互に近接して設けて各々を発光させ、拡散混色させて白色光を発生させる試みがなされ、大型スクリーンのLEDディスプレイとして既に使用されている。
しかるに、この方法では、個々のダイオードの温度特性や経時変化が異なるため、赤色、緑色及び青色の各発光の色調、輝度等にバラツキが生じたり、各発光を均一に混色させることができず、色むらを生じたりする等の問題があり、所望の白色光が得られない。また、各発光ダイオードの材料が一般的には相違し、駆動電力が異なったものとなるため、各々に所定電圧を印加する必要があり、このため駆動回路が複雑になるという問題がある。
白色光を得るための他の方法としては、発光ダイオード等の発光素子により発光された光を蛍光体で吸収し、吸収した光を波長の異なる光に波長転換し、発光ダイオードからの発光と蛍光体により波長転換された発光との拡散混色により白色光を得る方法が提案されている。
以上のような種々の手法で白色光を得ようと試みられている。そして、近紫外光(360〜420nm)や青色光(420〜500nm)を吸収し、吸収した光を波長転換し、拡散混色により白色光を得ようとすると赤色蛍光体は必要不可欠となり、重要な蛍光体と言える。
近紫外励起用赤色蛍光体としては、酸化物蛍光体、酸硫化物蛍光体、硫化物蛍光体、窒化物蛍光体等が提案されている。ここで、これらに関して、簡単に述べておくこととする。
酸化物蛍光体としては、(Ba,Sr,Ca)MgSi:Eu2+,Mn2+、(Eu,Y):Eu3+等が提案されている。しかし、酸化物蛍光体は、近紫外の360〜410nmの励起波長で発光する材料が少ない。
酸硫化物蛍光体としては、LaS:Eu3+、YS:Eu3+等が提案されている。LaS:Eu3+は従来からCRT用蛍光体として用いられているもので、現状では近紫外LED用蛍光体として最も有力である。
また、特許文献1(特開平7−310074号公報)には、(Y1−x−yLaLnS(但し、LnはEu及び/又はSm、0<x≦0.035、0.01≦y≦0.10)で表されるEu及び/又はSm付活酸硫化イットリウム蛍光体と導電性物質からなる赤色発光組成物が記載されている。さらに、特許文献2(特開2000−144130号公報)には、LnS:Eu(但し、0.001≦x≦0.5、0.00001≦y≦0.3、LnはY、La、Gd及びLuからなる群より選ばれた少なくとも1種、Mは共付活剤であり、Mg、Sr及びBaからなる群より選ばれた少なくとも1種)で示される赤色発光蛍光体が記載されている。
これら酸硫化物蛍光体は、近紫外LED用蛍光体として最も有力とされているが、380nm以上の近紫外励起では、極端に発光効率が悪く、また吸湿性を有するという問題がある。
硫化物蛍光体としては、BaZnS:Mn2+、(Ba,Sr)S:Eu2+等が提案されている。これら硫化物蛍光体は、酸化されやすく化学的に不安定であり、焼成雰囲気が限定されるのみならず、吸湿して硫化水素を発生する恐れがある。
窒化物蛍光体としては、CaAlSiN:Eu2+、YNb:Eu2+等が提案されている。これら窒化物蛍光体は、高温、高圧下での合成が必要であるため、高コストであり、工業的規模での量産が難しい。
特許文献3(特開2004−300247号公報)には、Ti、Zr、Hf、Nb、Ta、W、及びMoよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を含有する酸窒化物及び/又は酸硫化物を含有する蛍光体が開示されている。この蛍光体も上述した酸硫化物蛍光体や窒化物蛍光体が有する問題を解決するものではない。
また、これら近紫外励起用赤色蛍光体は、いずれも間接(母体)励起型蛍光体で発光効率が低いため、技術的問題が多くあった。
一方、特許文献4(特開平7−166161号公報)には、青緑色光を発する分散型無機EL(硫化亜鉛蛍光体)とローダミン等からなる赤色有機蛍光顔料を組み合わせて白色ELとすることが記載されている。しかし、照射時の発光面が赤色有機蛍光顔料の色を反映して赤色〜ピンク色となり、好適な白色光は得られない。
このような背景から、発光ダイオード(LED)や分散型無機ELから発せられた近紫外及び青色光を高い発光効率及び発光強度をもって赤色光に変換することのできる赤色蛍光体が要望されている。
なお、特許文献5(特開2001−107044号公報)には、広範な組成を有するEuで賦活された蛍光体が記載されており、実施例にはその一組成として(Ca0.99Eu0.01)O・ZrOが記載されている。しかし、この蛍光体は、蓄光性の一般蛍光体であり、近紫外及び青色光励起用の赤色蛍光体に関しては何ら示されていない。
特開平7−310074号公報 特開2000−144130号公報 特開2004−300247号公報 特開平7−166161号公報 特開2001−107044号公報
従って、本発明の目的は、特に白色光を作り出すために有用な赤色蛍光体であって、近紫外及び青色光によって励起し、高い発光効率及び発光強度をもって赤色光に波長変換することのできる赤色蛍光体を提供することにある。
そこで、本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、特定組成のペロブスカイト化合物を結晶母材、Eu及び/又はSmを発光中心とする赤色蛍光体によって、上記目的が達成し得ることを知見した。以下、本発明に関して述べる。
すなわち、本発明に係る赤色蛍光体は、化2として示した下記一般式(1)で示され、ペロブスカイト化合物を結晶母材、Eu及び/又はSmを発光中心とし、波長360〜420nm及び420〜500nmの励起光によって発光することを特徴とするものである。
Figure 2007031503
本発明に係る上記赤色蛍光体において、上記Eu及び/又はSmの濃度は、上記結晶母材に対して0.1〜10モル%であることが望ましい。
本発明に係る上記赤色蛍光体は、上記結晶母材中のZrの50モル%以下がチタン族元素から選択される少なくとも1種により置換されていることが望ましい。
本発明に係る上記赤色蛍光体は、上記結晶母材中のZrの50モル%以下がアルミニウム族元素から選択される少なくとも1種により置換されていることが望ましい。
本発明に係る上記赤色蛍光体は、上記結晶母材中のZrの50モル%以下が希土類族元素から選択される少なくとも1種により置換されていることが望ましい。
以上に述べた本件発明に係る赤色蛍光体は、近紫外及び青色光の励起よって赤色発光を行うものである。従って、この赤色蛍光体を内蔵し、近紫外及び青色発光手段、黄色発光手段及び/又は緑色発光手段とを備える白色発光装置であって、近紫外及び青色光の発光手段からの近紫外及び青色光を、前記赤色蛍光体に照射し励起することにより赤色発光を行なわせ、当該赤色発光と、励起に用いた近紫外及び青色発光、黄色発光手段からの黄色発光及び/又は緑色発光手段からの緑色発光とを混色させ白色光を得ることを特徴とした白色発光装置に用いることで、発光強度が高く、演色性に優れた白色光を得る装置を提供できる。
本発明に係る赤色蛍光体は、近紫外及び青色光の励起よって赤色発光を呈し、励起に用いた近紫外及び青色発光、黄色発光手段及び/又は緑色発光と組み合わせることで発光強度が高く、演色性に優れた白色発光スペクトルを示す。また、結晶母材の組成において、カルシウムを過剰にすることにより、発光強度が大幅に向上し、また直接励起型の蛍光体であるので発光効率を改善することができる。さらに、結晶母材中のジルコニウムの一部をチタン族元素、アルミニウム族元素又は希土類元素で置換することによって、発光強度をさらに増加させることが出来る。
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
(本発明に係る赤色蛍光体)
本発明に係る赤色蛍光体は、化3に示す下記一般式(1)で示され、ペロブスカイト化合物を結晶母材、Eu及び/又はSmを発光中心とする。Eu及び/又はSmを発光中心とすることで、発光強度を大幅に向上させることが出来る。
Figure 2007031503
また、上記一般式(1)において、結晶母材であるペロブスカイト化合物のxは1.0〜3.0、好ましくは1.5〜2.0である。すなわち、ジルコニウムに対するカルシウムが過剰組成であることが望ましく、このことにより発光強度が大幅に向上する。xが1.0未満では、Zrが過剰となり、ZrOの不純物相が観測され、発光強度が大幅に低下する。また、xが3.0を超えると、CaOの不純物相が増大し、発光強度が低下していく。
上記一般式(1)において、発光中心であるLnは、Eu及び/又はSmであり、その濃度が上記結晶母材に対して0.1〜10モル%であることが望ましい。Ca過剰組成では5〜10モル%が最も好ましい。Eu及び/又はSmの濃度が0.1モル%未満では、発光強度が大幅に低下し、10モル%を超えると、漸次発光強度が低下する。ここで、EuとSmとを同時に併用することで、より安定した発光強度及び発光する赤色の色調調整を行うことが出来る。かかる場合には、[Eu(モル%)]:[Sm(モル%)]=1:2〜20:1の混合バランスの範囲で用いることが好ましい。このEuとSmとを併用する場合の混合バランスが、前記範囲を外れると発光強度の向上効果及び赤色の色調調整も不可能となり、Eu又はSmを単独で使用した場合と変わらず、EuとSmとを併用する意義が没却する。
本発明に係る赤色蛍光体は、近紫外光(波長360〜420nm)及び青色光(420〜500nm)の励起光によって発光することが好ましい。この励起に用いる近紫外光や青色光は、発光ダイオードや分散型無機EL等の発光素子により発光されるもので、特に395nm、405nm、470nmに極大発光波長を有する発光素子を用いることが好ましい。
市販のLEDの発光スペクトルを図1に示す。近紫外LEDの中心波長は394nmであり、CIEは(0.20,0.13)である。また、青色LEDの中心波長は470nmであり、CIEは(0.12,0.09)である。市販の分散型無機ELの発光スペクトルを図2に示す。青色ELの中心波長は450nmであり、CIEは(0.15,0.12)である。また、青緑色ELの中心波長は490nmであり、CIEは(0.15,0.30)である。
本発明に係る上記赤色蛍光体は、励起効率の向上のために、Ti、Hf等のチタン族元素から選択される1種以上の元素を増感剤として上記結晶母材中のZrと置換して含有させることができる。その置換量は、Zrの50モル%以下が好ましく、1〜50モル%がさらに好ましい。これらの元素の置換量が50モル%を超えると、異相が多量に析出し、輝度が著しく低下する。なお、この元素の置換量が1モル%未満の場合には、当該元素を全く添加しない場合に比べ、増感効果の向上はあるものの、増感剤としての効果が顕著にならない。
本発明に係る上記赤色蛍光体は、励起効率の向上のために、Al、Ga等のアルミニウム族元素から選択される1種以上の元素を増感剤として上記結晶母材中のZrと置換して含有させることができる。その置換量は、Zrの50モル%以下が好ましく、1〜50モル%がさらに好ましい。これらの元素の置換量が50モル%を超えると、異相が多量に析出し、輝度が著しく低下する。なお、この元素の置換量が1モル%未満の場合には、当該元素を全く添加しない場合に比べ、増感効果の向上はあるものの、増感剤としての効果が顕著にならない。
また、本発明に係る上記赤色蛍光体は、上記と同様に励起効率の向上のために、Sc、Y、La、Gd、Lu等の希土類族元素から選択される1種以上の元素を増感剤として上記結晶母材中のZrと置換して含有させることができる。その置換量は、Zrの50モル%以下が好ましく、1〜50モル%がさらに好ましい。これらの元素の置換量が50モル%を超えると、異相が多量に析出し、輝度が著しく低下する。なお、この元素の置換量が1モル%未満の場合には、当該元素を全く添加しない場合に比べ、増感効果の向上はあるものの、増感剤としての効果が顕著にならない。
(本発明に係る赤色蛍光体の製造方法)
次に、本発明に係る蛍光体の好ましい製造方法の一例を説明する。
本発明に係る赤色蛍光体の製造方法では、下記化合物を原料とするのが好ましい。以下の組み合わせが、最も安定して高い発光強度を得やすいためである。
結晶母材:CaCO,ZrO
発光中心:Eu塩(EuF,Eu等)
Sm塩(SmF,Sm等)
本発明に係る赤色蛍光体の好ましい製造方法に関して、以下に工程の順を追って説明する。最初に、上記原料を所定の割合になるように秤量し、混合する。混合は、直径3mm〜5mmのジルコニアボールをメディアに用い、水を加えてペイントシェーカーやボールミル等で60分〜100分程度の粉砕混合することが好ましい。ここで、直径3mm〜5mmのジルコニアボールをメディアに用いた理由を述べる。直径3mm以下のジルコニアボールを使用すると、粉砕を受けた原料粉同士の凝集が顕著になり、粒子分散性に優れた原料粉が得られない。一方、直径が5mmを超えるジルコニアボールをメディアとして用いると、適正なレベルでの粉砕が困難となり、原料粉体を均一に混合するのに適した粉体としての調整が困難だからである。なお、メディアにジルコニアボールを用いたのは、本件発明に係る赤色蛍光体を成分的に見て、ジルコニアボールからの混入主成分はジルコニアでしかありえないため、製造する赤色蛍光体の品質の変動を最小限にすることが可能だからである。また、混合時間は、ペイントシェーカーを用いた場合を想定して60分未満の場合には、混合が不十分で原料粉の適度な粉砕が出来ず、微粒化が困難である。これに対し、混合時間が100分を超えるものとしても、原料粉を粉砕して微粒化する効果は少なくなり、製造コストを上昇させ、生産効率を下げる要因となるため好ましくない。
次いで、混合粉体のスラリーを、100μm以下の篩(メッシュ)に通して、スラリーとメディアとを分離する。更に、このスラリーをアドバンテック社製 定量濾紙No.5Cフィルターで真空濾過して、フィルター上に残存した混合粉体をケーキ状として採取する。
次に、採取した混合粉体のケーキを、大気中で70℃〜100℃の温度で4〜6時間乾燥させ、800℃〜1500℃にてアルゴン等の不活性ガス雰囲気中又は酸素含有雰囲気中で1時間〜12時間の焼成を行うことで赤色蛍光体が得られる。大気中での乾燥には、70℃〜100℃の温度を採用する。70℃未満の温度では、乾燥に長時間を要し、工業的に必要な乾燥速度とは言えない。また、乾燥の対象が主に水分であるため、その沸点を考えれば乾燥温度を100℃を超えるものとすると意義はない。また、乾燥時間は、4時間以上の乾燥を行わなければ、粉体粒子の表面に吸着した水分を十分に除去することが出来ない。一方、6時間以上の乾燥を行っても、不必要な乾燥になり、製造コストを上昇させるため好ましくない。
次に、800℃〜1500℃にてアルゴン等の不活性ガス雰囲気中又は酸素含有雰囲気中で1時間〜12時間の焼成を行うのである。ここで、焼成温度が、800℃未満の場合には、原料粉である前記混合粉体の固相反応が不十分で目的とするペロブスカイト化合物を得ることが困難である。一方、焼成温度が1500℃を超えると溶融成分が多くなり、原料成分の偏在が起こり、むしろ粉体として混合させて成分的均一性を確保した意義が損なわれる。そして、焼成時間が1時間未満の場合には、上記温度範囲に於いて、十分な固相反応が完結せず、結晶性の高い赤色蛍光体を得ることが出来ない。これに対し、焼成時間が12時間を超える焼成を行うと、液相成分が生成し成分の不均一が生じると共に、製造コストの上昇となり好ましくない。なお、ここで焼成に用いる雰囲気は、不活性ガス雰囲気又は酸素含有雰囲気のいずれかを用いる。即ち、このような雰囲気を採用して、得られる赤色蛍光体のストイキオメトリを設計道理のものとして維持するためである。
以上に述べてきた本発明に係る赤色蛍光体は、近紫外及び青色光を照射し励起することで赤色発光を起こす。そして、発光した赤色と、この励起に用いた近紫外及び青色光と、黄色発光及び/又は緑色発光とを混色させ白色光を得ることができる。従って、本件発明に係る赤色蛍光体を内蔵し、近紫外及び青色発光手段、黄色発光手段及び/又は緑色発光手段とを備える白色発光装置であって、近紫外及び青色光の発光手段からの近紫外及び青色光を、前記赤色蛍光体に照射し励起することにより赤色発光を行なわせ、当該赤色発光と、励起に用いた近紫外及び青色発光、黄色発光手段からの黄色発光及び/又は緑色発光手段からの緑色発光とを混色させ白色光を得る白色発光装置に好適である。従って、当該白色発光装置は、上述のようにして白色光を発光できる限り、近紫外及び青色光の発光手段、黄色発光手段、緑色発光手段、本件発明に係る赤色蛍光体の配置等に関して特段の制限はない。なお、黄色発光手段には黄色発光蛍光体としてCaGa:Eu、YAG(YAl12):Ce、SrSiO:Eu等を、緑色発光手段には緑色発光体としてSrGa:Eu、SrAl:Eu等を用いることが可能である。また、ここで言う、白色発光装置とは、一般照明を初め、バックライト、広告看板、階段灯、アクセント照明等を含む概念として記載している。
以下に実施例を示すが、本発明はこれらに限定されて解釈されるものではない。
CaCO,ZrO及びEuFを原料とし、蛍光体中のEu濃度が7モル%となるように秤量し、これをφ3mmのジルコニアボールをメディアに用い、水を加えてペイントシェーカーで90分混合した。次いで、100μm以下の篩で分級し、混合粉体スラリーとメディアとを分離した。次に、当該混合粉体スラリーをアドバンテック社製 定量濾紙No.5Cフィルターで濾過して得られた混合粉体のケーキを、80℃、5時間、大気中で乾燥した後、1300℃、1時間、酸素雰囲気中で焼成し、Ca1.5ZrO:Eu(Eu:7モル%)で示される赤色蛍光体(実施例1−1)を調製した。比較として、従来より提案されているLaS:Eu(Eu:3モル%)からなる赤色蛍光体(比較例1−1)及びYS:Eu(Eu:0.1モル%)からなる赤色蛍光体(比較例1−2)を用いた。
実施例1−1、比較例1−1及び比較例1−2の各赤色蛍光体の励起スペクトルを図3に示すと共に、実施例1−1及び比較例1−1の各赤色蛍光体の発光スペクトルを図4に示す。図3の結果から明らかなように、394nm及び470nmにおける励起強度は、実施例1−1が最も高く、比較例1−1、比較例1−2の順であった。図4に示されるように、実施例1−1の発光強度は、比較例1−1の2倍程度であった。
CaCO,ZrO及びEuFを原料とし、蛍光体中のEu濃度が3モル%となるように秤量し、これをφ3mmのジルコニアボールをメディアに用い、水を加えてペイントシェーカーで90分混合した。次いで、100μm以下の篩で分級し、混合粉体スラリーとメディアとを分離した。次に、当該混合粉体スラリーをアドバンテック社製 定量濾紙No.5Cフィルターで濾過して得られた混合粉体のケーキを、80℃、5時間、大気中で乾燥した後、1300℃、1時間、酸素雰囲気中で焼成し、Ca1.0ZrO:Eu(Eu:3モル%)で示される赤色蛍光体(実施例2−1)を調製した。
Ca/Zr比を変えて、Ca0.7ZrO:Eu(Eu:3モル%)で示される赤色蛍光体(比較例2−1)、Ca1.5ZrO:Eu(Eu:3モル%)で示される赤色蛍光体(実施例2−2)及びCa2.3ZrO:Eu(Eu:3モル%)で示される赤色蛍光体(実施例2−3)をそれぞれ上記と同様にして調製した。
これらの赤色蛍光体の励起スペクトルを図5に示す。図5に示されるように、Ca/Zr比が1.0を超えた実施例2−2及び2−3は、比較例2−1及び実施例2−1に比較して、近紫外での励起強度が2〜3倍に増加した。
CaCO,ZrO及びEuFを原料とし、蛍光体中のEu濃度が1モル%となるように秤量し、これをφ3mmのジルコニアボールをメディアに用い、水を加えてペイントシェーカーで90分混合した。次いで、100μm以下の篩で分級し、混合粉体スラリーとメディアとを分離した。次に、当該混合粉体スラリーをアドバンテック社製 定量濾紙No.5Cフィルターで濾過して得られた混合粉体のケーキを、80℃、5時間、大気中で乾燥した後、1300℃、1時間、酸素雰囲気中で焼成し、Ca1.0ZrO:Eu(Eu:1モル%)で示される赤色蛍光体(実施例3−1)を調製した。
Euの含有量を変えて、Ca1.0ZrO:Eu(Eu:3モル%)で示される赤色蛍光体(実施例3−2)及びCa1.0ZrO:Eu(Eu:5モル%)で示される赤色蛍光体(実施例3−3)をそれぞれ上記と同様にして調製した。
Ca/Zr比及びEuの含有量を変えて、Ca1.5ZrO:Eu(Eu:1モル%)で示される赤色蛍光体(実施例3−4)、Ca1.5ZrO:Eu(Eu:3モル%)で示される赤色蛍光体(実施例3−5)、Ca1.5ZrO:Eu(Eu:5モル%)で示される赤色蛍光体(実施例3−6)、Ca1.5ZrO:Eu(Eu:7モル%)で示される赤色蛍光体(実施例3−7)及びCa1.5ZrO:Eu(Eu:10モル%)で示される赤色蛍光体(実施例3−8)をそれぞれ上記と同様にして調製した。
これら赤色蛍光体のEu濃度と発光強度との関係を図6に示す(λex=394nm)。図6の結果に示されるように、Eu濃度の増加と共に発光強度は増加するが、Ca/Zr=1.0では、Eu濃度は3モル%で飽和した。Ca/Zr=1.5では、Eu濃度7モル%の実施例3−7で最大になり、その後順次低減した。また、Ca/Zr=1.0とCa/Zr=1.5の比較では、Eu濃度3モル%以上では、Ca/Zr=1.5が大幅に高い発光強度を示した。
また、従来より提案されているLaS:Eu(Eu:0.5モル%、1モル%、3モル%、5モル%)で示される赤色蛍光体(比較例3−1〜3−4)を調製し、これらの赤色蛍光体のEu濃度と発光強度(394nm励起時)との関係を上記した実施例3−4〜3−8の結果と共に図7に示す。図7に示されるように、実施例3−4〜3−8は、比較例3−1〜3−4の倍程度の発光強度を示す。
実施例3−7と同様にしてCa1.5ZrO:Eu(Eu:7モル%)で示される赤色蛍光体(実施例4−1)を調製した。さらに、実施例4−1の赤色蛍光体のZrの一部をAlに置換したCa1.5(Zr0.9Al0.1)O:Eu(Eu:7モル%、Al:10モル%)で示される赤色蛍光体(実施例4−2)及びCa1.5(Zr0.7Al0.3)O:Eu(Eu:7モル%、Al:30モル%)で示される赤色蛍光体(実施例4−3)をそれぞれ調製した。
このようにして調製された各赤色蛍光体の励起スペクトルを図8に示す。図8の結果に示されるように、アルミニウムをZrと置換して含有させることによって、励起強度が増大し、特にアルミニウムを10モル%含有させた実施例4−2は、アルミニウムを含有しない実施例4−1に比較して励起強度が2倍程度増加している。このことからアルミニウムを含有させることによって、発光強度が向上することが判る。
実施例3−7と同様にしてCa1.5ZrO:Eu(Eu:7モル%)で示される赤色蛍光体(実施例5−1)を調製した。さらに、実施例5−1の赤色蛍光体のZrの一部をTiに置換したCa1.5(Zr0.9Ti0.1)O:Eu(Eu:7モル%、Ti:10モル%)で示される赤色蛍光体(実施例5−2)、Ca1.5(Zr0.7Ti0.3)O:Eu(Eu:7モル%、Ti:30モル%)で示される赤色蛍光体(実施例5−3)及びCa1.5(Zr0.7Ti0.5)O:Eu(Eu:7モル%、Ti:50モル%)で示される赤色蛍光体(実施例5−4)を調製した。
このようにして調製された各赤色蛍光体の励起スペクトルを図9に示す。図9の結果に示されるように、チタンをZrと置換して含有させることによって、励起強度が増大し、特にチタンを30モル%含有させた実施例5−3は、チタンを含有しない実施例5−1に比較して励起強度が2倍程度増加している。このことからチタンを含有させることによって、発光強度が向上することが判る。
実施例3−7と同様にしてCa1.5ZrO:Eu(Eu:7モル%)で示される赤色蛍光体(実施例6−1)を調製した。さらに、実施例6−1の赤色蛍光体のZrの一部をLaに置換したCa1.5(Zr0.9La0.1)O:Eu(Eu:7モル%、La:10モル%)で示される赤色蛍光体(実施例6−2)及びCa1.5(Zr0.7La0.3)O:Eu(Eu:7モル%、La:30モル%)で示される赤色蛍光体(実施例6−3)をそれぞれ調製した。
このようにして調製された各赤色蛍光体の励起スペクトルを図10に示す。図10の結果に示されるように、ランタンをZrと置換して含有させることによって、励起強度が増大し、特にランタンを10モル%含有させた実施例6−2は、ランタンを含有しない実施例6−1に比較して励起強度が1.6倍程度増加している。このことからランタンを含有させることによって、発光強度が向上することが判る。
実施例3−7と同様にしてCa1.5ZrO:Eu(Eu:7モル%)で示される赤色蛍光体(実施例7−1)を調製した。さらに、実施例7−1の赤色蛍光体のZrの一部をYに置換したCa1.5(Zr0.90.1)O:Eu(Eu:7モル%、Y:10モル%)で示される赤色蛍光体(実施例7−2)及びCa1.5(Zr0.70.3)O:Eu(Eu:7モル%、Y:30モル%)で示される赤色蛍光体(実施例7−3)をそれぞれ調製した。
このようにして調製された各赤色蛍光体の励起スペクトルを図11に示す。図11の結果に示されるように、イットリウムをZrと置換して含有させることによって、励起強度が増大し、実施例7−2及び7−3は、イットリウムを含有しない実施例7−1に比較して励起強度が2.4倍程度増加している。このことからイットリウムを含有させることによって、発光強度が向上することが判る。
CaCO,ZrO及びSmFを原料とし、蛍光体中のSm濃度が1モル%となるように秤量し、これをφ3mmのジルコニアボールをメディアに用い、水を加えてペイントシェーカーで90分混合した。次いで、100μm以下の篩で分級し、混合粉体スラリーとメディアとを分離した。次に、当該混合粉体スラリーをアドバンテック社製 定量濾紙No.5Cフィルターで濾過して得られた混合粉体のケーキを、80℃、5時間、大気中で乾燥した後、1300℃、1時間、酸素雰囲気中で焼成し、Ca1.5ZrO:Sm(Sm:1モル%)で示される赤色蛍光体(実施例8−1)を調製した。また、Sm含有量を変えて、Ca1.5ZrO:Sm(Sm:3モル%)で示される赤色蛍光体(実施例8−2)を調製した。
これらの赤色蛍光体の励起スペクトルを図12に示し、また発光スペクトルを図13に示した。図12に示されるように、実施例8−1〜8−2は、いずれも406nm付近で励起強度が最も高く、この励起光によって600nmの赤色発光がなされる(図13参照)。
CaCO,ZrO、EuF及びSmFを原料とし、蛍光体中のEu濃度が3モル%、Sm濃度が1モル%となるように秤量し、これをφ3mmのジルコニアボールをメディアに用い、水を加えてペイントシェーカーで90分混合した。次いで、100μm以下の篩で分級し、混合粉体スラリーとメディアとを分離した。次に、当該混合粉体スラリーをアドバンテック社製 定量濾紙No.5Cフィルターで濾過して得られた混合粉体のケーキを、80℃、5時間、大気中で乾燥した後、1300℃、1時間、酸素雰囲気中で焼成し、Ca1.0ZrO:Eu,Sm(Eu:3モル%、Sm:1モル%([Eu(モル%)]:[Sm(モル%)]=3:1))で示される赤色蛍光体(実施例9−1)を調製した。また、Ca/Zr比を変えて、Ca1.5ZrO:Eu,Sm(Eu:3モル%、Sm:1モル%、([Eu(モル%)]:[Sm(モル%)]=3:1))で示される赤色蛍光体(実施例9−2)を調製した。
これらの赤色蛍光体の励起スペクトルを図14に示し、また発光スペクトルを図15に示した。図14に示されるように、実施例9−2は実施例9−1よりも励起強度が高く、発光強度も実施例9−2が高い(図15参照)。
本発明に係る赤色蛍光体は、近紫外及び青色光の励起によって赤色発光を呈し、励起光の近紫外及び青色光、黄色光及び/又は緑色光と組み合わせることで白色発光スペクトルを示す。特に、結晶母材の組成をカルシウム過剰にすることにより、発光強度が大幅に向上し、また直接励起型の蛍光体であるので発光効率が改善することができる。従って、本発明に係る赤色蛍光体は、一般照明に適用できるほか、バックライト、広告看板、階段灯、アクセント照明等としても利用可能である。
図1は、市販のLEDの発光スペクトルを示すグラフである。 図2は、市販の分散型無機ELの発光スペクトルを示すグラフである。 図3は、実施例1−1、比較例1−1及び比較例1−2の各赤色蛍光体の励起スペクトルを示すグラフである。 図4は、実施例1−1及び比較例1−1の各赤色蛍光体の発光スペクトルを示すグラフである。 図5は、実施例2−1〜2−3及び比較例2−1の各赤色蛍光体の励起スペクトルを示すグラフである。 図6は、実施例3−1〜3−8のEu濃度と発光強度との関係を示すグラフである。 図7は、実施例3−4〜3−8及び比較例3−1〜3−4のEu濃度と発光強度との関係を示すグラフである。 図8は、実施例4−1〜4−3の各赤色蛍光体の励起スペクトルを示すグラフである。 図9は、実施例5−1〜5−4の各赤色蛍光体の励起スペクトルを示すグラフである。 図10は、実施例6−1〜6−3の各赤色蛍光体の励起スペクトルを示すグラフである。 図11は、実施例7−1〜7−3の各赤色蛍光体の励起スペクトルを示すグラフである。 図12は、実施例8−1〜8−2の各赤色蛍光体の励起スペクトルを示すグラフである。 図13は、実施例8−1〜8−2の各赤色蛍光体の発光スペクトルを示すグラフである。 図14は、実施例9−1〜9−2の各赤色蛍光体の励起スペクトルを示すグラフである。 図15は、実施例9−1〜9−2の各赤色蛍光体の発光スペクトルを示すグラフである。

Claims (6)

  1. 下記一般式(1)で示され、ペロブスカイト化合物を結晶母材、Eu及び/又はSmを発光中心とし、波長360〜420nm及び420〜500nmの励起光によって発光することを特徴とする赤色蛍光体。
    Figure 2007031503
  2. 上記Eu及び/又はSmの濃度が、上記結晶母材に対して0.1〜10モル%である請求項1記載の赤色蛍光体。
  3. 上記結晶母材中のZrの50モル%以下がチタン族元素から選択される少なくとも1種により置換されている請求項1又は2記載の赤色蛍光体。
  4. 上記結晶母材中のZrの50モル%以下がアルミニウム族元素から選択される少なくとも1種により置換されている請求項1〜請求項3のいずれかに記載の赤色蛍光体。
  5. 上記結晶母材中のZrの50モル%以下が希土類族元素から選択される少なくとも1種により置換されている請求項1〜請求項4のいずれかに記載の赤色蛍光体。
  6. 請求項1〜請求項5のいずれかに記載の赤色蛍光体を内蔵し、近紫外及び青色発光手段、黄色発光手段及び/又は緑色発光手段とを備える白色発光装置であって、
    近紫外及び青色光の発光手段からの近紫外及び青色光を、前記赤色蛍光体に照射し励起することにより赤色発光を行なわせ、
    当該赤色発光と、励起に用いた近紫外及び青色発光、黄色発光手段からの黄色発光及び/又は緑色発光手段からの緑色発光とを混色させ白色光を得ることを特徴とした白色発光装置。
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