JP2006347798A - セラミック焼結体及びその製造方法並びに磁気ヘッド用基板 - Google Patents

セラミック焼結体及びその製造方法並びに磁気ヘッド用基板 Download PDF

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Abstract

【課題】導電性と低熱伝導性及び良好な機械加工性を備えたセラミック焼結体とその製造方法、及びリセスを解消することで、浮上量を実質的に低減し、磁気記録の高密度化に答えられる磁気ヘッド用基板を提供することを目的とする。
【解決手段】TiC粒子20〜50重量%、残部がAl粒子を主成分とする焼結体であって、Ti、Alの少なくとも一方を含む金属酸化物から成る微粒子(TiO、Alを除く)を上記Al粒子上に有するとともに、前記微粒子がAl;A重量%、Ti;B重量%、酸素;C重量%(但し、A=0.03〜53重量%、B=0.04〜60重量%、C=39〜48重量%、A+B+C=100)からなるセラミック焼結体である。
【選択図】図2

Description

本発明は、高密度記録装置であるハードディスクドライブやテープドライブ等に用いられる磁気抵抗効果(MR)ヘッドや巨大磁気抵抗効果(GMR)ヘッド用の基板及びその製造方法に関する。
近年、磁気記録の高密度化は急速に進んでおり、一般に書込用の電磁変換素子や記録再生用の磁気抵抗効果素子が搭載された薄膜磁気ヘッドが使用されている。
かかる薄膜磁気ヘッドには、機械加工性、耐摩耗性及び表面平滑性に優れることが要求されている。この要求を満たすために、一般的にAl−TiC系セラミックスから成るセラミック基板上にアモルファスアルミナから成る絶縁膜をスパッタリング法により成膜し、この絶縁膜上に書込用の電磁変換素子や再生用の磁気抵抗効果を用いたMR(Magnetro Resistive)素子(以下、MR素子と称す。)、GMR(Giant Magnetro Resistive)素子(以下、GMR素子と称す。)等磁気抵抗効果素子を搭載した後、チップ形状に分割し、これら素子の搭載方向に対し、垂直方向のセラミック表面を研磨してABS(エア・ベアリング・サーフェイス)面を形成し、イオンミリング加工や反応性イオンエッチングによって溝加工を施したものが用いられている。
書込用の電磁変換素子に加え、MR素子あるいはGMR素子等磁気抵抗効果素子を備えた磁気ヘッドの場合、記録密度を高くするため、最近では、磁気ヘッドの浮上量(磁気ヘッドに搭載された電磁変換素子や磁気抵抗効果素子と、記録媒体である磁気ディスクとの隙間)が10nm程度と低浮上量になってきている。
しかしながら、上述のような研磨をすると、上記素子の硬度が一般的にセラミック基板の硬度より低いために、両者の間にリセスと呼ばれる段差が発生し、この段差分実質的な浮上量が高くなるという問題が低浮上化するに従って、顕在化しつつある。
ところで、このような磁気ヘッド用基板を形成する材料として特許文献1〜4では、種々のセラミックスが提案されている。
特許文献1ではAlを主成分とし、チタン酸化物をTiO換算で0.1〜1.0重量%含有し、TiO及びAlとの複合酸化物であるチタン酸アルミニウムAlTiO結晶及びAlTiO不定比化合物結晶を析出させたアルミナ系セラミックスが提案されている。
特許文献2では一般式TiC、(但し、xは0.65〜0.93)で表される炭化チタンを15〜60重量%、α−SiCを10〜30重量%、及び焼結助剤であるMgOまたはYのいずれかを0.1〜2重量%含み、残部がAlからなる複合セラミックスが提案されている。
特許文献3ではAlを主成分とし、TiC及びTiBを25〜50体積%、TiBを15〜40体積%含有したアルミナ系複合セラミックスが提案されている。
また、特許文献4ではAlを主成分とし、TiC、ZrO、MgOをそれぞれ30重量%、4重量%、0.3重量%未満含有したアルミナ系複合セラミックスが提案されている。
近年、このような磁気ヘッド基板に対し、磁気記録の高密度化への要求は一段と高まる傾向にあり、上記リセスを解消して実質的な浮上量を低減することが急務となりつつある。
特開2004−18296号公報 特開平5−254938号公報 特開2002−226258号公報 特表2002−544108号公報
しかしながら、特許文献1で提案されたアルミナ系セラミックスは、導電性及び機械加工性に有効なTiCを含んでいるもののその比率が5重量%以下と低いことから、体積固有抵抗が10〜10Ω・cmと高く、帯電した電荷を速やかに逃がすこともできない上、機械加工性も良好とは言えなかった。また、熱伝導率の低いチタン酸アルミニウムAlTiO結晶やAlTiO不定比化合物結晶が析出しているものの、熱伝導性の低いTiCの比率が相対的に少ないことから、上記セラミックスの熱伝導率は34W/(m・k)程度と高かった。
また、特許文献2で提案された複合セラミックスは、摺動性、耐摩耗性に優れ、体積固有抵抗が低いことから摩擦帯電性も小さく、磁気ヘッド用のセラミック焼結体として良好であるものの、放熱特性も高く、例えば炭化チタンTiC0.82を40重量%、α−SiCを20重量%、Alを39重量%及びMgOを1重量%含むセラミック焼結体の熱伝導率は42W/(m・k)と高かった。
また、特許文献3で提案されたアルミナ系複合セラミックスは、機械加工性に優れ、体積固有抵抗が低いことから摩擦帯電性も小さく、磁気ヘッド用のセラミック焼結体として良好であるものの、特許文献1,2で提案されたものと同様、放熱特性が高く、その熱伝導率は35W/(m・k)以上と高かった。
また、特許文献4で提案されたAlを主成分とし、TiC、ZrO、MgOをそれぞれ30重量%、4重量%、0.3重量%未満含むアルミナ系複合セラミックスの熱伝導率は17.4W/(m・k)であり、特許文献1〜3で提案されたものより低くなっているものの、まだ十分とは言えなかった。また、上記アルミナ系複合セラミックスはZrOを含むため、このセラミックスを用いて磁気ヘッド用基板を作製すると、RIE(Reactive Ion Etching)加工時にZrOに起因する突起が発生することがあり、浮上量が不安定になるといった課題もあった。
特許文献1〜4で提案された複合セラミックスから製作される磁気ヘッドは、高い放熱特性を用いて、磁気ヘッドに形成されたコイルからの発熱による磁気ディスク中の記録の破壊を防ぐという点では効果的であった。
しかしながら、上述のような複合セラミックスから製作される磁気ヘッドは、コアに蓄熱させてコアを熱膨張させることでリセスの高さを解消して、浮上量を実質的に低減できるものではなく、磁気記録の高密度化という要求に答えられるものではなかった。
本発明は上述のような問題を解決するためになされたものであり、導電性、低熱伝導性及び良好な機械加工性を備えたセラミック焼結体とその製造方法、並びにリセスを解消することで、浮上量を実質的に低減し、磁気記録の高密度化に答えられる磁気ヘッド用基板を提供することを目的とする。
本発明のセラミック焼結体は、TiC粒子20〜50重量%、残部がAl粒子を主成分とするセラミック焼結体であって、Ti、Alの少なくとも一方を含む金属酸化物から成る微粒子(TiO、Alを除く)を上記Al粒子上に有するとともに、前記微粒子がAl;A重量%、Ti;B重量%、酸素;C重量%(但し、A=0.03〜53重量%、B=0.04〜60重量%、C=39〜48重量%、A+B+C=100)からなり、上記セラミック焼結体の不純物が5重量%以下であることを特徴とするものである。
また、上記微粒子をAl;A重量%、Ti;B重量%、酸素;C重量%(但し、A=0.3〜53重量%、B=0.4〜60重量%、C=40〜47重量%、A+B+C=100)とするものである。
さらに、上記微粒子がX線回折測定で回折角(2θ)=31〜34°、40〜41.5°、47〜50°、54〜57°のいずれかの範囲に、回折ピークを2本以上有するものである。
またさらに、上記Al粒子の粒径が0.3〜3μm,上記TiC粒子の粒径が0.1〜2μm,上記微粒子の粒径が0.02〜0.2μmであり、上記TiC粒子の粒径は上記微粒子の粒径よりも全て大きい関係とするものである。
さらにまた、上記Al粒子の表面の少なくとも一部にTiC被膜を有するものである。
また、X線回折測定におけるTiC粒子の{200}面及び{111}面における各回折ピークI200、I111の強度比として示される結晶配向率I200/(I200+I111)を0.418以下とするものである。
さらに、平均粒径1μmのダイヤモンド砥粒を濃度0.5g/lで分散させたpH8.1の水性スラリー状の研磨液と、平坦度10μm以下、ビッカース硬度(H)68〜88MPaの錫製のラップ盤と、円板形状のラップ治具とを使用し、上記セラミック焼結体からなる10mm×10mmの試験基板を上記ラップ冶具に30枚等間隔で円周状に配置して、上記試験基板に上記研磨液を供給しながら上記ラップ盤上で圧力0.15MPa、周速0.4m/秒の条件で研磨したとき、上記試験基板の単位時間当たりの研磨量が23μm/時間以上であることを特徴とするものである。
またさらに、上記セラミック焼結体の製造方法は、平均粒径0.2〜0.7μmのAl粉末と平均粒径1〜2μmのTiC粉末及び平均粒径50〜200nmのTiO粉末とを混合して原料を得る工程と該原料を加圧成形して成形体を得る工程と、該成形体を非酸化性雰囲気中で温度1400〜1700℃で加圧焼成する工程とを有するものである。
さらにまた、本発明の磁気ヘッド用基板は上記セラミック焼結体からなることが好適である。
本発明のセラミック焼結体はTiC粒子20〜50重量%、残部がAl粒子を主成分とする焼結体であって、Ti、Alの少なくとも一方を含む金属酸化物から成る微粒子(TiO、Alを除く)を上記Al粒子上に有するとともに、前記微粒子をAl;A重量%、Ti;B重量%、酸素;C重量%(但し、A=0.03〜53重量%、B=0.04〜60重量%、C=39〜48重量%、A+B+C=100)とすることで、熱伝導率を低くすることができるとともに、機械加工性を向上させることができる。TiC粒子やAl粒子に比べ、上記微粒子はその熱伝導率が著しく低いために、熱がセラミック焼結体を伝わる際に律速されるからであり、焼結後に残存したAl:0.03〜53重量%、Ti:0.04〜60重量%、酸素:39〜48重量%の範囲となる不定比のチタン酸アルミニウムの微粒子、例えば分子式AlTi0.013.01やAl0.01TiO2.01で示される微粒子によりTiC粒子やAl23粒子が歪みを受けて脆性破壊しやすくなるからである。
また、上記微粒子をAl;A重量%、Ti;B重量%、酸素;C重量%(但し、A=0.3〜53重量%、B=0.4〜60重量%、C=40〜47重量%、A+B+C=100)
とすることが機械加工性の点でより好適である。
さらに、上記微粒子はX線回折測定で回折角(2θ)=40〜41.5°,40〜41.5°,47〜50°,54〜57°のいずれかの範囲に回折ピークを2本以上有することが好適である。回折ピークをこのようにすることで、Ti、Alの少なくともいずれか一方を含む金属酸化物から成る微粒子(TiO、Alを除く)、例えばチタン酸アルミニウムの微粒子の熱分解が進み、その結晶中における格子欠陥が増加して結晶構造が乱れ、セラミック焼結体の熱伝導率をさらに下げることができるからである。
またさらに、上記Al粒子の粒径を0.3〜3μm,TiC粒子の粒径を0.1〜2μm,上記微粒子の粒径を0.02〜0.2μmとし、上記TiC粒子の粒径は上記微粒子の粒径よりも全て大きい関係にすることが好適である。Al粒子、TiC粒子、微粒子の各粒径を上記範囲にすることで、溝加工、切断加工等の研削加工におけるチッピングを小さくし、加工抵抗を低減することができるとともに、機械加工性も向上するからである。
さらにまた、上記Al粒子の表面の少なくとも一部にTiC被膜を有することが好適である。このTiC被膜によりAlより熱伝導率の低いTiCが障壁となって熱伝導が遮られ、セラミック焼結体としての熱伝導率を低くすることができるからである。
また、X線回折測定における窒化チタンの{200}面及び{111}面における各回折ピークI200、I111の強度比として示される結晶配向率I200/(I200+I111)を0.418以下とすることにより、特定の結晶面が互いに平行して配列し、その配列方向の熱伝導率が特に高くなることのない、無配向性かつ低熱伝導性のセラミック焼結体とすることができる。
さらに、平均粒径1μmのダイヤモンド砥粒を濃度0.5g/lで分散させたpH8.1の水性スラリー状の研磨液と、平坦度10μm以下、ビッカース硬度(H)68〜88MPaの錫製のラップ盤と、円板形状のラップ治具とを使用し、上記セラミック焼結体からなる10mm×10mmの試験基板を上記ラップ冶具に30枚等間隔で円周状に配置して、上記試験基板に上記研磨液を供給しながら上記ラップ盤上で圧力0.15MPa、周速0.4m/秒の条件で研磨したとき、上記試験基板の単位時間当たりの研磨量が23μm/時間以上とすることで、平均粒径の小さなダイヤモンド砥粒を用いて研磨しなければならない状況下においても良好な研磨効率が得られる。
さらに、本発明のセラミック焼結体の製造方法によれば、平均粒径0.2〜0.7μmのAl粉末、平均粒径1〜2μmのTiC粉末及び平均粒径50〜200nmのTiO粉末を混合して原料を得る工程と、該原料を加圧成形して成形体を得る工程と、該成形体を非酸化性雰囲気中で温度1400〜1700℃で加圧焼成する工程とを有することで、TiC粒子は焼結体中均一に分散するので、導電性、強度を兼備するとともに、上記加圧焼結により生成したチタン酸アルミニウム等Ti、Alの少なくともいずれか一方を含む金属酸化物から成る微粒子(TiO、Alを除く)により熱伝導率の低いセラミック焼結体とすることができる。
特に、上記セラミック焼結体は導電性と低熱伝導性を兼備しているので磁気ヘッド用基板に用いることが好適である。
以下、本発明の実施形態を説明する。
本発明のセラミック焼結体は、TiC粒子20〜50重量%、残部をAl粒子を主成分し、Ti、Alの少なくともいずれか一方を含む金属酸化物から成る微粒子(TiO、Alを除く)(以下、単に酸化物微粒子と称す。)を上記Al粒子上に有するとともに、前記微粒子をAl;A重量%、Ti;B重量%、酸素;C重量%(但し、A=0.03〜53重量%、B=0.04〜60重量%、C=39〜48重量%、A+B+C=100)とする焼結体である。
ここで、上記微粒子が再現性よく形成されるようにするには、不純物を5重量%以下、好適には0.1重量%以下とするのが望ましい。
上記TiC粒子はその体積固有抵抗が1.8×10−4Ω・cmと低いため、帯電した電荷を速やかに除去させることが可能で、セラミック焼結体中、20〜50重量%含むことが重要である。TiC粒子を20〜50重量%としたのは、20重量%未満ではセラミック焼結体に導電性を十分与えることができず、帯電した電荷を速やかに逃がすことができないからであり、50重量%を超えるとその融点が3070℃と高く、焼結が難しくなったり、焼結できたとしてもセラミック焼結体の表面が白っぽくなることがあり商品価値が下がったりする場合があるからである。なお、セラミック焼結体中のTiC粒子の比率は、ICP(Inductively Coupled Plasma)発行分光分析で測定することができる。
ここで、上記酸化物微粒子とは、各元素の比率がAl;A重量%、Ti;B重量%、酸素;C重量%(但し、A=0.03〜53重量%、B=0.04〜60重量%、C=39〜48重量%、A+B+C=100)であって、例えば、分子式AlTiO,AlTi0.01,Al0.01TiO2.01等で示されるチタン酸アルミニウムの微粒子や加圧焼結後の降温過程でチタン酸アルミニウムの微粒子が熱分解してできた不定比の酸化チタン微粒子や不定比のアルミナ微粒子を総称していう。
チタン酸アルミニウムは元々その熱伝導率が1.2W/(m・k)と低いために、セラミック焼結体中で合成されることにより、セラミック焼結体全体の熱伝導率を下げる作用がある。チタン酸アルミニウムの低熱伝導のメカニズムは、チタン酸アルミニウムが有する特有の作用、即ち、各結晶方向の熱膨張係数が著しく異なることに起因するものと推察される。各結晶方向の熱膨張係数が著しく異なることにより、結晶粒界に亀裂が容易に入りやすく、この亀裂によって熱伝導は阻害されるため、見かけ上、熱伝導は低くなるのである。また、チタン酸アルミニウムの微粒子が熱分解してできた不定比の酸化チタン微粒子や不定比のアルミナ微粒子もその結晶中の格子欠陥の存在により結晶構造が乱れ、さらにセラミック焼結体の熱伝導率を下げる作用がある。
また、上記酸化物微粒子を構成する各元素の比率をAl;A重量%、Ti;B重量%、酸素;C重量%(但し、A=0.03〜53重量%、B=0.04〜60重量%、C=39〜48重量%、A+B+C=100)とすることで、機械加工性を向上させることができる。上記比率の範囲内である不定比のチタン酸アルミニウムの微粒子、例えば分子式AlTi0.013.01やAl0.01TiO2.01で示される微粒子によりTiC粒子やAl23粒子が歪みを受けて脆性破壊しやすくなるからである。
特に、上記酸化物微粒子をAl;A重量%、Ti;B重量%、酸素;C重量%(但し、A=0.3〜53重量%、B=0.4〜60重量%、C=40〜47重量%、A+B+C=100)とすることが好適であり、さらに機械加工性を向上させることができる。
実際、超微小硬度計を用いてTiC粒子及びAl23粒子の結晶極表面の硬度、ヤング率を測定すると、上記チタン酸アルミニウムの微粒子の存在により硬度は低く、ヤング率は高くなるので、脆性材料の摩耗式とも整合する。
このような酸化物微粒子は、特性X線としてCu−Kα線を用いたX線回折測定にて確認することができ、その存在を示す回折ピークは、例えば、回折角(2θ)=31〜34°,40〜41.5°、47〜50°,54〜57°のいずれかの範囲に2本以上表れる。
図1は、横軸に回折角(2θ)、縦軸にX線管電圧、X線管電流をそれぞれ50kV、200mAとして、Cu−Kα線を本発明のセラミック焼結体に照射して得られる回折波の強度を示すグラフであり、◎、○、△を付した回折ピークはそれぞれ酸化物微粒子、Al粒子、TiC粒子の存在を示すものである。
また、酸化物微粒子を構成する各元素の比率は、ICP発行分光分析で測定することができる。
チタン酸アルミニウムの微粒子が熱分解してできた不定比の酸化チタン微粒子や不定比のアルミナ微粒子が増えるに従って、回折ピークの本数は増え、上記範囲に2本以上有することで、セラミック焼結体の熱伝導率を15W/(m・k)以下にすることができる。
熱伝導率を15W/(m・k)以下にすることで、上記セラミック焼結体より磁気ヘッドを製作した場合、磁気ヘッドに装着された素子に発生した熱は磁気ヘッドを介して伝わりにくくなるため、磁気ヘッドへの伝熱に伴って発生するリセスを未然に防ぐことができる。
なお、上記熱伝導率は、JIS R 1611−1997に準拠して測定することができる。
また、上記Al粒子の粒径を0.3〜3μm,TiC粒子の粒径を0.1〜2μm,酸化物微粒子の粒径を0.02〜0.2μmとすることが好適である。Al粒子、TiC粒子、酸化物微粒子の各粒径を上記範囲にすることで、溝加工、切断加工等の研削加工におけるチッピングを小さくし、加工抵抗を低減することができるとともに、機械加工性も向上するからである。
また、上記Al粒子の粒径を0.3〜3μm,TiC粒子の粒径を0.1〜2μm,上記微粒子の粒径を0.02〜0.2μmとし、上記TiC粒子の粒径は上記微粒子の粒径よりも全て大きい関係にすることが好適である。Al粒子、TiC粒子、微粒子の各粒径を上記範囲にすることで、溝加工、切断加工等の研削加工におけるチッピングを小さくし、加工抵抗を低減することができるとともに、機械加工性も向上するからである。
さらに、本発明のセラミック焼結体では、図2にその組織の模式図を示すように、Al粒子2上に、酸化物微粒子3を有するとともに、Al粒子2の表面の少なくとも一部にTiC被膜4を有することが好適である。このTiC被膜4によりAlより熱伝導率の低いTiCが障壁となって熱伝導が遮られ、セラミック焼結体としての熱伝導率を低くすることができるからである。
なお、上記TiC被膜は、上記セラミック焼結体を煮沸した燐酸でエッチングし、その表面を走査型電子顕微鏡により、倍率13000倍として、10μm×7μmの範囲で観察することができる。
また、X線回折測定における炭化チタンの{200}面及び{111}面における各回折ピークI200、I111の強度比として示される結晶配向率I200/(I200+I111)を0.418以下とすることが好適である。これは0.418をしきい値として熱伝導率が大きく変わるためであり、0.418以下とすることで、特定の結晶面が互いに平行して配列し、その配列方向の熱伝導率が特に高くなることのない、無配向性かつ低熱伝導性のセラミック焼結体とすることができるからである。結晶配向率I200/(I200+I111)も特性X線としてCu−Kα線を用いたX線回折測定より導くことができる。
さらにまた、平均粒径1μmのダイヤモンド砥粒を濃度0.5g/lで分散させたpH8.1の水性スラリー状の研磨液と、平坦度10μm以下、ビッカース硬度(H)68〜88MPaの錫製のラップ盤と、円板形状のラップ治具とを使用し、該ラップ治具に上記セラミック焼結体からなる10mm×10mmの試験基板を30枚等間隔で円周状に配置した状態とし、該試験基板5に上記研磨液を供給しながら上記ラップ盤上で圧力0.15MPa、周速0.4m/秒の条件で研磨したとき、単位時間当たりの研磨量が23μm/時間以上とすることで、平均粒径の小さなダイヤモンド砥粒を用いて研磨しなければならない状況下においても良好な研磨効率が得られる。例えば、セラミック焼結体が磁気ヘッドである場合、低浮上化の要求に応えようとすると、平坦なABS(エア・ベアリング・サーフェイス)面を形成しなければならず、このために平均粒径の小さなダイヤモンド砥粒を用いて研磨しなければならないが、このような場合でも良好な研磨効率が得られる。
なお、上述のような研磨条件を選定したのは、再現性よく研磨量を測定することができるからである。
図3は本発明のセラミック焼結体の研磨に使用するラップ装置の概略構成図を示すものである。ラップ盤7は、水性スラリー状の研磨液8が容器9から供給されるとともに、駆動部(不図示)により回転し、円板形状のラップ治具6に配置された試験基板5は、ラップ盤7上で圧力(P)0.15MPaを受けながら、回転、研磨される構成となっている。
また、図4は試験基板5を30枚等間隔でラップ治具6に円周状に配置した状態を示す斜視図である。
特に、上記研磨量のばらつきを低減するには、ラップ装置はラップマスターSFT社製18“型、ラップ盤は矩形状の溝を螺旋状に形成したものを用い、ダイヤモンド砥粒は、pH8.1,水性のスラリー状にしたものを所定時間毎に、例えば2分間隔毎に4秒間噴霧することが好適である。
なお、上記ラップ盤に形成された溝の間隔は4〜6mmとすることがより好適である。
上述のようなセラミック焼結体は導電性と低熱伝導性を兼備しているので、磁気ヘッド用基板に用いることが好適であるが、導電性と低熱伝導性、場合によっては機械加工性も求められる他の用途にも用いることができる。
次に、本発明のセラミック焼結体の製造方法について説明する。
本発明のセラミック焼結体を得るには、先ず、平均粒径0.2〜0.7μmのAl粉末、平均粒径1〜2μmのTiC粉末及び平均粒径50〜200nmのTiO粉末を調合して原料とし、ボールミル、振動ミル、コロイドミル、アトライター、高速ミキサー等で均一に混合する。
ここでAl粉末は焼結体にしたときに機械的強度や耐摩耗性を与えるのに作用し、Al粉末の平均粒径を0.2〜0.7μmとしたのは、平均粒径が0.2μm未満では成形性が低下しやすく、そのため焼結における制御も難しくなるからであり、0.7μmを超えると、焼結体の緻密化が不十分となり、強度不足となるからである。Al粉末の平均粒径を0.2〜0.7μmとすることで、緻密化は促進され、セラミック焼結体として必要な強度を容易に得ることができる。
また、TiC粉末は焼結体にしたときに導電性粒子となって、帯電した電荷を速やかに除去し、TiC粉末の平均粒径を1〜2μmとしたのは、平均粒径が1μm未満では、Al粉末と同様、成形性が低下しやすく、そのため焼結における制御も難しくなるからであり、2μmを超えると、焼結時にTiCが異常粒成長しやすくなるからである。
また、TiO粉末はAl粉末と加圧焼結中に反応して、熱伝導率の低いチタン酸アルミニウムの微粒子を生成する作用を有し、TiO粉末の平均粒径を50〜200nmとしたのは、平均粒径が50nm未満では、TiO粉末の凝集力が強過ぎるため、凝集体が形成されやすくなるからであり、200nmを超えると、TiOの焼結活性が低くなり、Alと反応してチタン酸アルミニウムの微粒子を生成することができなくなるからである。TiO粉末の平均粒径を50〜200nmとすることで、凝集体が形成されることなく、焼結活性が良好となり、上記微粒子を生成することができるため、熱伝導率の低いセラミック焼結体とすることができる。
なお、チタン酸アルミニウムの微粒子は焼成工程における降温中、800〜1250℃で分解しやすく、分解を抑制する場合には、上記原料に稀土類酸化物、酸化鉄、酸化マグネシウム(MgO)、ジルコン(ZrSiO)、スピネル(MgAl)、チタン酸マグネシウム(MgTi)少のなくともいずれか1種を分解抑制剤として添加することができる。
但し、セラミック焼結体が磁気ヘッド用基板に用いられる場合には、非磁性が要求されるという点、また、ABS(エア・ベアリング・サーフェイス)面のRIE加工後の平坦性を考慮し、分解抑制剤として希土類酸化物を用いることが好ましい。
なお、Al粉末が55重量%の場合、TiC粉末及びTiO粉末はそれぞれ26〜36重量%、9〜19重量%、Al粉末が63重量%の場合、TiC粉末及びTiO粉末はそれぞれ22〜30重量%、7〜15重量%、Al粉末が80重量%の場合、TiC粉末及びTiO粉末はそれぞれ15〜16重量%、4〜5重量%とすることが好適である。また、焼結を促進し、より緻密にするために、上記原料に対しYb、Y、MgOの少なくともいずれか1種を0.1〜0.3重量%加えてもよい。
上記Al、TiC、TiO各粉末の平均粒径は液相沈降法、光投下法、レーザー散乱回折法等により測定することができる。
次に、原料に結合剤、分散剤等成形助剤を添加して均一に混合した後、転動造粒機、スプレードライヤー、圧縮造粒機、押し出し造粒機等各種造粒機を用いて顆粒にする。
その後、得られた顆粒を乾式加圧成形等の成形手段で所望の形状に成形して成形体とした後、アルゴン、ヘリウム、ネオン、窒素、真空等の非酸化雰囲気中、温度1400〜1700℃で加圧焼成することで本発明のセラミック焼結体とすることができる。
ここで、加圧焼成温度は1400〜1700℃とすることが重要で、1400℃未満では、十分焼結させることができないからであり、1700℃を超えると、TiO粉末が凝集しやすく、TiO粉末が本来備えている機能を十分に発揮することができないからである。加圧焼成温度を1400〜1700℃とすることで、TiO粉末はAl粉末と反応して、酸化物微粒子、例えばチタン酸アルミニウムの微粒子を生成することができる。
なお、焼成方法のうち、加圧焼成を選択したのは、緻密化を促進し、セラミック焼結体として良好な強度を得るためであり、本発明の磁器ヘッド用基板を得るには、加圧力は30MPa以上とすることが好適である。
ところで、上記微粒子がX線回折測定回折角(2θ)=31〜34°,40〜41.5°,47〜50°,54〜57°のいずれかの範囲に2本以上表れるようにするには、焼結助剤であるとともに分解抑制剤として作用するYb、Y、MgOの比率を原料に対し、低くすればよく、例えば、0.15重量%以下にすればよい。
また、上記微粒子をAl;A重量%、Ti;B重量%、酸素;C重量%(但し、A=0.3〜53重量%、B=0.4〜60重量%、C=40〜47重量%、A+B+C=100)にするには、例えば非酸化雰囲気中、炭素が浮遊する状態にし、該炭素による還元反応により、定比のチタン酸アルミニウムAlTiOから不定比のチタン酸アルミニウムAlTi0.013.01やAl0.01TiO2.01が生成する雰囲気にすればよい。
このような雰囲気にするには、例えば炭素質材料を含む遮蔽材を上記成形体の周囲に配置すればよい。
また、Al粒子の少なくとも一部にTiC被膜を有するには、原料に占めるTiC粉末及びTiO粉末の合計を20〜30重量%とした上で、TiO粉末の比率を15重量%以上にすればよい。
また、X線回折測定における炭化チタンの{200}面及び{111}面における各回折ピークI200、I111の強度比として示される結晶配向率I200/(I200+I111)は、乾式加圧成形が一軸方向からなされる場合、主にその加圧力によって支配され、窒化チタンの結晶配向性と加圧力の関係は、正の相関となる。結晶配向率I200/(I200+I111)を0.418以下にするには、加圧力を47.5MPa以下にすればよい。
また、本発明のセラミック焼結体は、機械加工性が良好で、平均粒径1μmのダイヤモンド砥粒を濃度0.5g/lで分散させたpH8.1の水性スラリー状の研磨液と、平坦度10μm以下、ビッカース硬度(H)68〜88MPaの錫製のラップ盤と、円板形状のラップ治具とを使用し、該ラップ治具に上記セラミック焼結体からなる10mm×10mmの試験基板を30枚等間隔で円周状に配置した状態とし、該試験基板に上記研磨液を供給しながら上記ラップ盤上で圧力0.15MPa、周速0.4m/秒の条件で研磨したときに、単位時間当たりの研磨量を23μm/時間以上とすることもできる。
混合におけるAl粉末の比率を仮に一定とすると、本発明のセラミック焼結体の機械加工性は、TiC粉末及びTiO粉末の比率に影響される。TiC粉末、TiO粉末の合計に対し、TiO粉末の比率が高くする、例えばTiO粉末/(TiC粉末+TiO粉末)を20重量%以上にすると、TiO粉末の焼結活性は元々高いのでAl粉末と反応して、焼結時にチタン酸アルミニウムの生成比率が一時的に高くなる。
しかし、加圧焼結後の降温過程でチタン酸アルミニウムは熱分解し、不定比の酸化チタン微粒子や不定比のアルミナ微粒子に分解する比率も高くなる。熱分解によって生成した不定比の酸化チタン微粒子の一部は還元された後、TiC粉末と結合し、粒成長して粒径の大きい結晶を形成する結果、単位時間あたりの研磨量を大きくすることができ、その値を23μm/時間以上にすることができる。
以下、本発明の実施例を説明する。
なお以下の実施例における不純物については、精製を重ねて0重量%に近い状態とした。
(実施例1)
先ず、Al粉末、TiC粉末及びTiO粉末を原料とし、これら原料に対し、焼結助剤兼分散抑制剤として0.18重量%のYb、成形用結合剤及び分散剤を均一に混合し、スラリーを作製した。また、比較例として、上記粉末からTiO粉末のみを除いたスラリーも作製した。これらスラリーをそれぞれ噴霧乾燥機に投入し、顆粒とした後、乾式加圧成形にて成形体を得た。次に、この成形体を所定の金型に配置し、非酸化性雰囲気中、温度1600℃で加圧焼結して、セラミック焼結体を作製した。
なお、アルミナ粉末、TiC粉末、TiO粉末の各平均粒径は、それぞれ0.45μm、1.5μm、125nmであり、これら粉末の合計に対する比率は表1に示す通りとした。
得られたセラミック焼結体については、セラミック焼結体に含まれるTiC粒子の比率、
酸化物微粒子の有無、体積固有抵抗及び熱伝導率を評価した。
上記TiC粒子の比率については、ICP(Inductively Coupled Plasma)発行分光分析により測定した。
また、酸化物微粒子の有無については、X線管電圧、X線管電流をそれぞれ50kV、200mAとして、Cu−Kα線を用いたX線回折で測定し、体積固有抵抗、熱伝導率についてはそれぞれJIS C 2141−1992、JIS R 1611−1997に準拠して測定した。
また、酸化物微粒子の存在が確認された試料については、酸化物微粒子を構成する各元素の比率をICP発行分光分析で測定した。
測定結果は表1に示す通りである。なお、X線回折により酸化物微粒子の存在が確認できたものを○、確認できなかったものを×で示した。
Figure 2006347798
表1に示す通り、試料No.1,2はいずれもTiC粒子の比率が少なかったために体積固有抵抗、熱伝導率とも高かった。また、試料No.4,6,8,10,11は、体積固有抵抗はいずれも低いものの、酸化物微粒子が存在していなかったために、熱伝導率は高かった。
一方、本発明の試料No.3,5,7,9は、体積固有抵抗、熱伝導率ともそれぞれ2.0×10−2Ω・cm以下、16W/(m・K)以下と低く、良好である。
(実施例2)
先ず、Al粉末、TiC粉末及びTiO粉末を原料とし、これら原料に対し、焼結助剤兼分散抑制剤として0.16重量%のYb、成形用結合剤及び分散剤を均一に混合し、スラリーを作製した。これらスラリーをそれぞれ噴霧乾燥機に投入し、顆粒とした後、乾式加圧成形にて成形体を得た。次に、この成形体を所定の金型に配置し、非酸化性雰囲気中、温度1630℃で加圧焼結して、セラミック焼結体を作製した。
なお、Al粉末、TiC粉末及びTiO粉末の比率は、セラミック焼結体における酸化物微粒子が表2の比率になるように予め設定し、加圧焼成では炭素質材料を含む遮蔽材を成形体の周囲に予め配置した。
次いで、得られたセラミック焼結体を研磨加工し、その研磨加工における研磨量を測定し、セラミック焼結体の機械加工性を評価した。
なお、研磨量の測定については、平均粒径1μmのダイヤモンド砥粒を濃度0.5g/lで分散させたpH8.1の水性スラリー状の研磨液と、平坦度10μm以下、ビッカース硬度(H)78MPaの錫製のラップ盤と、円板形状のラップ治具とを使用し、該ラップ治具に上記セラミック焼結体からなる10mm×10mmの試験基板を30枚等間隔で円周状に配置した状態とし、該試験基板に上記研磨液を供給しながら上記ラップ盤上で圧力0.15MPa、周速0.4m/秒の条件で研磨したときの単位時間当たりの研磨量を測定した。
なお、ラップ機はラップマスターSFT社製18“型、ラップ盤は矩形状の溝を螺旋状に形成し、隣り合う溝の間隔を5mmとしたものを用いた。
測定結果は表2に示す通りである。
Figure 2006347798
表2に示す通り、酸化物微粒子がAl;A重量%、Ti;B重量%、酸素;C重量%(但し、A=0.03〜53重量%、B=0.04〜60重量%、C=39〜48重量%、A+B+C=100)のいずれかの範囲外である試料No.14,15,16,19,21,24,25,26は研磨量が20μm未満であった。
一方、酸化物微粒子がAl;A重量%、Ti;B重量%、酸素;C重量%(但し、A=0.03〜53重量%、B=0.04〜60重量%、C=39〜48重量%、A+B+C=100)の範囲内である試料No.12,13,17,18,20,22,23は研磨量がいずれも23μm以上と高かった。
特に、酸化物微粒子がAl;A重量%、Ti;B重量%、酸素;C重量%(但し、A=0.3〜53重量%、B=0.4〜60重量%、C=40〜47重量%、A+B+C=100)の範囲内である試料No.13,18,22は研磨量がいずれも26μm以上とさらに高く、好適である。
(実施例3)
先ず、Al粉末、TiC粉末及びTiO粉末を原料とし、これら原料に対し、焼結助剤兼分解抑制剤として表3に示す比率のYb、成形用結合剤及び分散剤を均一に混合し、スラリーを作製した。これらスラリーをそれぞれ噴霧乾燥機に投入し、顆粒とした後、乾式加圧成形にて成形体を得た。次に、この成形体を所定の金型に配置し、非酸化性雰囲気中、温度1650℃で加圧焼結して、セラミック焼結体を作製した。
なお、アルミナ粉末、TiC粉末、TiO粉末の各平均粒径は、それぞれ0.5μm、1.8μm、100nmであり、これら粉末の合計に対する比率はそれぞれ63重量%、22重量%、15重量%とした。
得られたセラミック焼結体については、JIS R 1611−1997に準拠して熱伝導率を評価した。
測定結果は表3に示す通りである。
Figure 2006347798
表3に示す通り、回折角(2θ)=40〜41.5°,40〜41.5°,47〜50°,54〜57°のどの範囲においても回折ピークが1本以下の試料No.14,15は、熱伝導率が16W/(m・K)であるのに対し、回折角(2θ)=40〜41.5°,40〜41.5°,47〜50°,54〜57°のの少なくともいずれかの範囲に回折ピークを2本以上有する試料No.12,13は、酸化物微粒子の熱分解が進んでいるため、伝導率は15W/(m・K)とさらに低く好適である。
(実施例4)
先ず、Al粉末、TiC粉末及びTiO粉末を原料とし、これら原料に対し、焼結助剤兼分散抑制剤として0.18重量%のYb、成形用結合剤及び分散剤を均一に混合し、スラリーを作製した。また、比較例として、上記粉末からTiO粉末のみを除いたスラリーも作製した。これらスラリーをそれぞれ噴霧乾燥機に投入し、顆粒とした後、乾式加圧成形にて成形体を得た。次に、この成形体を所定の金型に配置した後、加圧焼結して、セラミック焼結体を作製した。
なお、Al粉末、TiC粉末、TiO粉末の各比率は、表4に示す通りとした。
得られたセラミック焼結体については、セラミック焼結体に含まれるTiC粒子の比率、
酸化物微粒子、TiC被膜の有無及び熱伝導率を評価した。
上記TiC粒子の比率については、ICP(Inductively Coupled Plasma)発行分光分析により測定した。
また、酸化物微粒子の有無については、X線管電圧、X線管電流をそれぞれ50kV、200mAとして、Cu−Kα線を用いたX線回折で測定し、TiC被膜の有無についてはセラミック焼結体を煮沸した燐酸でエッチングし、その表面を走査型電子顕微鏡により、倍率13000倍として、10μm×7μmの範囲で観察した。
また、熱伝導率についてはJIS R 1611−1997に準拠して測定した。
測定結果は表4に示す通りである。
Figure 2006347798
表4に示す通り、TiC被膜を有する試料No.32,33,35,36はTiC被膜のない試料No.31,34に比べ、熱伝導率は低く、好適である。
(実施例5)
先ず、Al粉末、TiC粉末及びTiO粉末を原料とし、これら原料に対し、焼結助剤兼分散抑制剤として0.16重量%のYb、成形用結合剤及び分散剤を均一に混合し、スラリーを作製した。これらスラリーをそれぞれ噴霧乾燥機に投入し、顆粒とした後、乾式加圧成形にて成形体を得た。次に、この成形体を所定の金型に配置した後、加圧焼結して、セラミック焼結体を作製した。
なお、Al粉末、TiC粉末、TiO粉末の比率は、セラミック焼結体におけるTiC粒子の比率が37重量%となるように、それぞれ63重量%、22重量%、15重量%とし、Al粉末、TiC粉末、TiO粉末の各平均粒径及び焼成温度は、表5に示す通りとした。
得られたセラミック焼結体については、酸化物微粒子の有無、体積固有抵抗、熱伝導率及び3点曲げ強度を評価した。
なお、酸化物微粒子の有無については、X線管電圧、X線管電流をそれぞれ50kV、200mAとして、Cu−Kα線を用いたX線回折で測定し、体積固有抵抗、熱伝導率及び3点曲げ強度についてはJIS C 2141−1992、JIS R 1611−1997及びJIS R 1601−1995に準拠して測定した。
測定結果は表5に示す通りである。なお、X線回折により酸化物微粒子の存在が確認できたものを○、確認できなかったものを×で示した。
Figure 2006347798
表5に示す通り、本発明の範囲外である、平均粒径が0.2μm未満のAl粉末を用いた試料No.37及び平均粒径が1μm未満のTiC粉末を用いた試料No.39は成形性が悪く、成形不良となり、温度1400℃未満で焼成した試料No.42は、温度が低いために焼結させることができなかった。また、本発明の範囲外である、試料No.41,46,49、51,53は、体積固有抵抗、熱伝導率のいずれかが高いか、あるいは3点曲げ強度が低くなっていた。
一方、本発明の試料No.38,40,43,44,45,47,48,50,52は体積固有抵抗が2.6×10−3Ω・cm以下、熱伝導率が16W/(m・K)以下と低く、また3点曲げ強度は704MPa以上と高く、良好である。
本発明のセラミック焼結体にCu−Kα線を照射して得られた回折ピークの強度を示すグラフである。 本発明のセラミック焼結体の組織を示す模式図である。 本発明のセラミック焼結体の研磨に用いるラップ装置の概略構成図である。 本発明のセラミック焼結体からなる試験基板をラップ治具に円周状に配置した状態を示す斜視図である。
符号の説明
◎:酸化物微粒子
○:Al粒子
△:TiC粒子
1:TiC粒子
2:Al粒子
3:酸化物微粒子
4:TiC被膜
5:試験基板
6:ラップ治具
7:ラップ盤
8:研磨液
9:容器

Claims (9)

  1. TiC粒子20〜50重量%、残部がAl粒子を主成分とするセラミック焼結体であって、Ti、Alの少なくとも一方を含む金属酸化物から成る微粒子(TiO、Alを除く)を上記Al粒子上に有するとともに、前記微粒子がAl;A重量%、Ti;B重量%、酸素;C重量%(但し、A=0.03〜53重量%、B=0.04〜60重量%、C=39〜48重量%、A+B+C=100)からなり、上記セラミック焼結体の不純物が5重量%以下であることを特徴とするセラミック焼結体。
  2. 上記微粒子がAl;A重量%、Ti;B重量%、酸素;C重量%(但し、A=0.3〜53重量%、B=0.4〜60重量%、C=40〜47重量%、A+B+C=100)からなることを特徴とする請求項1に記載のセラミック焼結体。
  3. 上記微粒子がX線回折測定で回折角(2θ)=31〜34°、40〜41.5°、47〜50°、54〜57°のいずれかの範囲に、回折ピークを2本以上有するものであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のセラミック焼結体。
  4. 上記Al粒子の粒径が0.3〜3μm,上記TiC粒子の粒径が0.1〜2μm,上記微粒子の粒径が0.02〜0.2μmであり、上記TiC粒子の粒径は上記微粒子の粒径よりも全て大きいことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のセラミック焼結体。
  5. 上記Al粒子の表面の少なくとも一部にTiC被膜を有することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のセラミック焼結体。
  6. X線回折測定におけるTiC粒子の{200}面及び{111}面における各回折ピークI200、I111の強度比として示される結晶配向率I200/(I200+I111)が0.418以下であることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のセラミック焼結体。
  7. 平均粒径1μmのダイヤモンド砥粒を濃度0.5g/lで分散させたpH8.1の水性スラリー状の研磨液と、平坦度10μm以下、ビッカース硬度(H)68〜88MPaの錫製のラップ盤と、円板形状のラップ治具とを使用し、上記セラミック焼結体からなる10mm×10mmの試験基板を上記ラップ冶具に30枚等間隔で円周状に配置して、上記試験基板に上記研磨液を供給しながら上記ラップ盤上で圧力0.15MPa、周速0.4m/秒の条件で研磨したとき、上記試験基板の単位時間当たりの研磨量が23μm/時間以上であることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載のセラミック焼結体。
  8. 請求項1乃至請求項7のいずれかに記載のセラミック焼結体の製造方法であって、
    平均粒径0.2〜0.7μmのAl粉末と平均粒径1〜2μmのTiC粉末及び平均粒径50〜200nmのTiO粉末とを混合して原料を得る工程と、
    該原料を加圧成形して成形体を得る工程と、
    該成形体を非酸化性雰囲気中で温度1400〜1700℃で加圧焼成する工程と
    を有することを特徴とするセラミック焼結体の製造方法。
  9. 請求項1乃至請求項7のいずれかに記載のセラミック焼結体からなることを特徴とする磁気ヘッド用基板。
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