JP2004018296A - アルミナ質焼結体及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】アルミナ質焼結体の優れた特性を低下させることなく,かつ多量の添加物による不純物汚染がない,体積固有抵抗率が10〜10Ωcmのアルミナ質焼結体を得る.
【解決手段】チタン酸化物をTiO換算で0.1〜1.0質量%含み,残部が実質的にアルミナからなる焼結体において,前記チタン酸化物がTiO及びアルミナとの複合酸化物の結晶としての存在量が2体積%以下であることにより,体積固有抵抗率が10〜10Ωcmであるアルミナ質焼結体を得ることを特徴とする.すなわち,本発明は,0.1〜1.0質量%という極めて少ないチタン酸化物の含有量により,10〜10Ωcmという非常に低い体積固有抵抗率を実現し,しかもアルミナ質焼結体本来の優れた機械的特性の劣化がなく,かつ多量の添加物による不純物汚染が全くないアルミナ質焼結体を提供できる.
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は,電子ビームを利用する描画装置,計測装置,加工装置に用いられる静電気拡散性を有し,また誘導起電力による磁場発生の少ないアルミナ質焼結体及びその製造方法に関する.また本発明は,半導体製造設備や記録再生装置等に用いられる静電防止部材として適用可能なアルミナ質焼結体及びその製造方法に関する.
【0002】
【従来の技術】
従来から,アルミナ質焼結体は優れた機械的特性を有し,体積固有抵抗率は1012Ωcm以上と絶縁性が良く,その上,製造コストも安価であるため,半導体露光装置や液晶露光装置などの描画装置,コンピューターの電子部品などに広く使用されている.
【0003】
ところが,絶縁性が良いという反面,このアルミナ質焼結体を,電子ビームを利用する装置に使用した場合には,アルミナ質焼結体への電荷の蓄積により電子ビーム位置が変動するという問題がある.また,電子ビームを利用する装置に金属材料等の体積固有抵抗率が低い材料を使用した場合には,発生した電荷がすぐにリークされるためリーク電流が発生し,それに伴う外乱磁界により電子ビーム軌道が変動するという問題がある.さらに,可動部材が磁界中を移動した場合には,誘導起電力による渦電流の発生に伴い外乱磁界を生じるため,電子ビーム軌道が悪影響を受けるという問題がある.
【0004】
上記問題を解決するためには,体積固有抵抗率が10〜10Ωcm程度である部材を使用する必要がある.この程度の体積固有抵抗率であると帯電した電荷は微弱なリーク電流として徐々に除荷されるようになり,また可動部材の移動による渦電流の発生が抑制されるため,電子ビーム軌道に影響を与えなくなる.
【0005】
このため,アルミナ質焼結体等の絶縁性セラミックスの表面にメッキ等で薄い導電層をコーティングした部材が使用される場合がある.しかし,このコーティング膜は加工中や使用中に膜剥がれを起こすことが多く,さらにコーティング費用が高いという問題がある.
【0006】
このため,焼結体全体の体積固有抵抗率が10〜10Ωcm程度であることが求められる.この点から,電子ビームを利用する装置に適当である材料としてSiC焼結体が挙げられる.このSiC焼結体の体積固有抵抗率は,製法により10〜10Ωcmの範囲のものを得ることができる.しかしながら,いずれのSiC焼結体の焼結温度も酸化物系セラミックスの焼結温度に比べて非常に高く,また加工が困難であることから,製造コストが高価であり経済的ではないという問題がある.
【0007】
そこで,優れた機械的特性を有すると共に,製造コストが安価であるアルミナ質焼結体に,種々の導電性付与剤を含有せしめて,アルミナ質焼結体自体の体積固有抵抗率を低下させる手法が試みられている.
【0008】
例えば,導電性付与剤として金属を添加する方法がある.この方法によれば,確かに体積固有抵抗率を下げることはできるが,10〜10Ωcmの領域に制御することは困難である.また導電性付与剤の添加に伴い,アルミナ質焼結体本来の高い機械的強度や優れた精密加工性が著しく劣化してしまう.
【0009】
また,導電性付与剤として遷移金属炭化物を用いる方法がある.しかし,この遷移金属炭化物を酸化物に添加した場合,その添加量の増加に伴い,ある添加量で急激に抵抗率が低下するため,10−1Ωcm以下の導電性セラミックスを得ることはできても,10〜10Ωcmの領域に制御することは困難である.
【0010】
またこの他に,アルミナに酸化チタンを20〜50質量%添加して焼結し,体積固有抵抗率を10〜10Ωcmに減少させる方法がある.ところが,このような多量の酸化チタンを添加しても,1×10Ωcm以下の体積固有抵抗率を得ることはできず,さらに多量の酸化チタンの添加は焼結不足による気孔率の増加を生じ,機械的特性の大幅な劣化を引き起こしてしまう.また,多量の添加物からの不純物汚染も問題となるため,電子ビームを利用する装置等の用途には不適当である.
【0011】
この酸化チタンの添加による機械的強度と精密加工性の劣化の程度を低減するための手段が特開平7−149560号公報に開示されている.これによると,添加する酸化チタンとして針状のものを従前よりも少ない5〜25質量%程度使用し,大気雰囲気中で焼成することで,アルミナ質焼結体本来の優れた特性を低下させることなく,体積固有抵抗率を低下させることができるというものである.しかしながら,この方法では体積固有抵抗率が10〜10Ωcmの範囲の焼結体しか得られず,1×10Ωcm以下の焼結体を得ることはできない.さらにこのような針状の酸化チタンは高価な上に,針状であるため酸化チタン同士の連結が多くなり,亀裂の発生源となりやすいため機械的強度を劣化させる原因となる.
【0012】
また,特開2001−19536公報によると,球状のチタン酸化物を3〜50体積%程度添加し,還元雰囲気で焼成することで,添加した酸化チタンの一部が化学量論組成よりも酸素量が少ないアルミニウムとの複合酸化物を形成するため,少ないチタン酸化物の存在で抵抗率を10〜10Ωcmに低下させ,かつ酸化チタンの存在による機械的強度の劣化を抑制できるというものである.この方法によると,確かに焼結体の機械的強度は改善されるようであるが,10〜10Ωcmの体積固有抵抗率を得るためには3〜50体積%もの多量のチタン酸化物を添加する必要があり,少ないチタン酸化物の添加により体積固有抵抗率を低下させているとはいえない.さらに,実施例によると,1×10Ωcm以下の体積固有抵抗率を得るためには,チタン酸化物を30体積%も添加する必要があり,多量のチタン酸化物の添加による焼結不足のため,得られた焼結体の気孔率が2%以上と非常に高くなっている.このような気孔率の高い材料では,その表面に多くの気体を吸着してしまうため,電子ビームを利用する装置のように部材が真空中で使用される場合には,容器内の真空度が低下するという問題が生じてしまう.さらに,多量の添加物からの不純物汚染も問題となるため,電子ビームを利用する装置等の用途には不適当である.この方法と本発明の方法は,アルミナにチタン酸化物を添加することで10Ωcm程度の体積固有抵抗率を有する焼結体が得られるという点において類似ではあるが,後述する理由により両者は全く異なる発明である.
【0013】
また,主成分のアルミナに,酸化チタンを0.1〜0.5質量%,TiC及び/又はTi(CN)を0.2〜10質量%添加し,還元雰囲気で焼成することで,高剛性の黒色アルミナを得る製造方法が筆者らにより特開平4−50161に開示されている.ところが,特開平4−50161に開示されている配合では,比較例3に示したように,炭素添加による還元促進効果が得られないために,優れた機械的特性を有した黒色アルミナを得ることはできるが,10〜10Ωcmの体積固有抵抗率を有するアルミナ質焼結体は得られないことが分かっている.
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする課題は,アルミナ質焼結体の優れた特性を低下させることなく,かつ多量の添加物による不純物汚染がない,体積固有抵抗率が10〜10Ωcmのアルミナ質焼結体を得ることにある.
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明は,チタン酸化物をTiO換算で0.1〜1.0質量%含み,残部が実質的にアルミナからなる焼結体において,体積固有抵抗率が10〜10Ωcmであるアルミナ質焼結体を得ることを特徴とする.すなわち,本発明は,0.1〜1.0質量%という極めて少ないチタン酸化物の含有量により,10〜10Ωcmという非常に低い体積固有抵抗率を実現し,しかもアルミナ質焼結体本来の優れた機械的特性の劣化がなく,かつ多量の添加物による不純物汚染が全くないアルミナ質焼結体を提供できるものである.
【0016】
本発明のアルミナ質焼結体は,チタン酸化物を含有せしめて非酸化性雰囲気又は真空中で焼成することにより,体積固有抵抗率が低下する.このチタン酸化物は非酸化性雰囲気又は真空中で焼成することにより,Ti4+の一部がTi3+に還元され,このTi3+がアルミナのAl3+サイトに置換固溶することでアルミナ粒子自体の体積固有抵抗率を低下させる事ができると考えられる.よって,チタンの含有量がTiO換算で0.1質量%より少ないとこの効果が少なく,体積固有抵抗率は高くなる.また,チタン酸化物は焼結助剤としての効果もあるため,少量のチタン酸化物を含有させることにより,より緻密な焼結体が得られ機械的特性も向上する.
【0017】
また,本発明のアルミナ質焼結体は炭素を分散含有することにより,体積固有抵抗率の低下が効率的に進行する.この炭素はTi4+のTi3+への還元をより促進するため,焼結体の体積固有抵抗率をより低下させるものと考えられる.このため,炭素の含有量が増加するに従い焼結体の体積固有抵抗率は減少する.しかしながら,その含有量が多すぎるとその焼結阻害により,焼結体の気孔率が増加するため,焼結体密度及び機械的強度は低下し,アルミナ質焼結体本来の優れた機械的特性の劣化を引き起こす.このことより焼結体密度3.75g/cm以上,見掛け気孔率0.2%以下,ヤング率300GPa以上であるアルミナ質焼結体を得るためには,炭素の含有量がC換算で1.2質量%以下であることが必要である.さらには,総量中,0.4質量%から0.8質量%であることが好ましい.ここで,炭素の原料としては,その分散性の点からカーボンブラックが好ましいが,グラファイト粉末,ピッチ,樹脂バインダーなど焼成後に炭素として存在するものであれば如何なるものでも良い.
【0018】
また,本発明のアルミナ質焼結体の場合,チタン酸化物の含有量がTiO換算で1.0質量%よりも多いと,焼結体の体積固有抵抗率が急激に高くなる.この理由については明確ではないが,チタン酸化物の含有量がアルミナへの固溶量よりも大幅に多いと,過剰に存在するチタン酸化物により添加した炭素が消費されるため,Ti4+のTi3+への還元が十分に進行せず抵抗率が高くなるものと考えられる.実際にX線回折により得られるデータを解析した結果,アルミナのAl3+サイトに置換固溶していない添加したチタン酸化物の一部は、分散含有する炭素との反応によりTiC結晶を形成していることが認められた.特開2001−19536公報の発明では,添加したチタン酸化物がアルミナとの複合酸化物を形成し、その複合酸化物の酸素量が化学等量よりも少なければ,少ないほど導電性を示し,さらに前記複合酸化物の含有量が3体積%よりも小さいと体積固有抵抗率が10Ωcmよりも高くなり半導性を示さないとしている.これに対し、本発明のアルミナ質焼結体では,炭素を分散含有することによる強還元雰囲気のため,アルミナに固溶していない添加したチタン酸化物は,TiO及びアルミナとの複合酸化物の結晶として存在するよりもTiC結晶として存在しやすい.ここで,前記アルミナとの複合酸化物とは,TiがアルミナのAl3+サイトに置換固溶した(Al,Ti)を除く,AlTiO結晶及びAlTiOの不定比化合物結晶である.また,本発明のアルミナ質焼結体において,炭素の分散含有量が少なく還元雰囲気が弱い場合,添加したチタン酸化物のすべてがアルミナとの複合酸化物結晶を形成したとしても,その存在は,総量中,2体積%以下となる.これらのことより,特開2001−19536公報の発明と本発明とは全く異なる発明であるといえる.さらには,前記焼結体中に,2体積%よりも多いTiOおよびアルミナとの複合酸化物の結晶が存在すると,焼結体の気孔率が急激に上昇し,アルミナ本来の優れた機械的特性が劣化してしまう.これらのことから,チタン酸化物の含有量は,総量中,0.1質量%から1.0質量%であることが必要である.さらには,総量中,0.2質量%から0.8質量%であることが好ましい.従って,残存するTiO及びアルミナとの複合酸化物の結晶としての存在量は必然的に2体積%以下であることが必要で,総量中,0.1体積%以下であることが好ましい。
【0019】
また焼結体中にTiC,TiN,TiCN,ZrC,ZrN,ZrCNの少なくとも1種を含有せしめると,焼結体が黒色を呈する特性を利用し,その含有量を調整することで焼結体の色調を制御することが出来る.しかしながら,これら含有量が多すぎると,アルミナ質焼結体本来の優れた機械的特性が劣化するため,TiC,TiN,TiCN,ZrC,ZrN,ZrCNの含有量は,総量中,5質量%以下とすることが好ましい.
【0020】
さらに低い気孔率が必要な場合には,その特性に悪影響を与えないY,SiO,MgO,CaOなどの焼結助剤中の少なくとも1種を,全量に対し,1質量%以下添加することができる.この添加量が1質量%以上であると,多量のガラス成分のため,アルミナ質焼結体の体積固有抵抗率が高くなり,機械的特性の劣化も引き起こしてしまう.
【0021】
また,本発明のアルミナ質焼結体は,アルミナの粉末に,酸化チタンの粉末をTiO換算で0.1〜1.0質量%,炭素源をC換算で1.2質量%以下になるように添加した混合粉末を焼成することによって,優れた機械的特性を有した体積固有抵抗率が1×10〜1×10Ωcmである焼結体が得られる.
【0022】
これらの出発原料としては,純度99%以上,平均粒径2.0μm以下,好ましくは平均粒径1.0μm以下のアルミナ粉末,平均粒径5μm以下,好ましくは平均粒径2μm以下の酸化チタン粉末を用いるのが好ましい.また炭素源としては,カーボンブラック,グラファイト粉末,ピッチ,有機樹脂バインダー等が使用できるが,分散性の点から平均粒径0.1μm以下のカーボンブラックを用いるのが好ましい.
【0023】
また,この出発原料粉体の成形法としては,通常の金型プレス,CIP,シート成形など通常の成形法を用いることができる.
【0024】
また成形体の焼結が完了する前に,1000〜1200℃の温度で1〜20時間程度保持することが好ましい.この温度範囲ではアルミナ焼結体は焼結収縮を開始していないが,収縮の起こる温度範囲で還元反応によるガスが発生すると,焼結を阻害し,焼結体中に気孔が残存しやすくなる.そこで焼結収縮と還元反応によるガスの発生が同時に起こらない上記温度範囲で熱処理を施すことにより,ガスの発生を伴う還元反応を完結させる事ができるため,より緻密な焼結体を得ることができると共に,酸化チタンと炭素の含有量に応じた低い体積固有抵抗率を有する焼結体を安定的に得ることができる.
【0025】
焼結は非酸化性雰囲気又は真空中で行うことが望ましく,非酸化性雰囲気としては,H,Ar,N,カーボンヒーター,カーボン容器など還元源を有する雰囲気,またはその組み合わせを用いることができ,その非酸化性雰囲気中で焼結温度1500〜1800℃に1〜10時間程度保持する.この非酸化性雰囲気はアルミナ中へのチタン酸化物成分の固溶を引き起こし,その結果アルミナ粒子自体も導電性を生じる.この焼成温度が1500℃よりも低いと,アルミナ中へのチタン酸化物の固溶が十分に起こらないため,アルミナ質焼結体の体積固有抵抗率が十分に低下せず,さらに焼結不足のため緻密な焼結体を得ることができない.また焼成温度が1800℃以上であると,添加した低融点成分の反応により発泡現象が起きたり,アルミナの過焼成により緻密な焼結体を得ることができない.
【0026】
さらにより緻密な焼結体が必要な場合には,ガス圧焼成,ホットプレス焼成,HIP焼成を行うことが出来る.
【0027】
【発明の実施の形態】
以下,実施例によって本発明の実施の形態を説明する.
【0028】
【実施例】
(実施例1)
実施例1の出発原料として,純度99.99%,平均粒径0.2μmのアルミナ粉末に,純度99.9%,平均粒径が0.5μmの酸化チタン粉末,平均粒径20nmのカーボンブラック,及びグラファイト粉末,純度99.9%,平均粒径0.5μmのZrN粉末を表1に示す組成になるように加え,樹脂ボールを充填した樹脂製ボールミルでエチルアルコールを溶媒として8時間混合した.このスラリーを乾燥させた後,乳鉢で解砕した.解砕した粉末を,金型でプレス成形した後,1.4ton/cmの圧力でCIP成形した.この成形体をArガス中で昇温し,圧力30MPa,温度1700℃で1時間ホットプレス焼成した.得られた焼結体の特性を表1に示す.
【0029】
同表に示すように,その結果,本発明の実施例1の場合は,アルミナ本来の優れた機械的特性を低下させることなく,低い体積固有抵抗率を有するアルミナ質焼結体が得られていることが分かる.
【0030】
【表1】
Figure 2004018296
【0031】
(実施例2)
実施例2の出発原料として,純度99.9%,平均粒径0.5μmのアルミナ粉末に,純度99.5%,平均粒径が1.0μmの酸化チタン粉末,平均粒径20nmのカーボンブラック,有機樹脂バインダー,純度99.5%,平均粒径1.0μmのTi(CN)粉末を表2に示す組成になるように加え,アルミナボールを充填したアルミナポットミルで水を溶媒として24時間混合した.このスラリーを乾燥造粒し,静水圧1.4ton/cmで成形した.得られた成形体をHガス中で昇温し,1200℃で5時間の熱処理を施した後,1750℃で4時間焼結した.得られた焼結体の特性を表2に示す.
【0032】
同表に示すように,その結果,本発明の実施例2の場合は,1200℃で5時間の熱処理を施したことにより,より緻密で,低い体積固有抵抗率を有するアルミナ質焼結体が得られていることが分かる.
【0033】
【表2】
Figure 2004018296
【0034】
(実施例3〜19)
実施例3〜19の出発原料として,純度99.99%,平均粒径0.2μmのアルミナ粉末に,純度99.5%以上で,平均粒径が0.5μm以下である各種成分と,炭素源として平均粒径20nmのカーボンブラック,またはグラファイト粉末,またはピッチ,または有機バインダーをを表3に示す組成になるように加え,アルミナボールを充填したアルミナポットミルで水を溶媒として22時間混合した.このスラリーを乾燥造粒し,静水圧1.4ton/cmで成形した.この成形体を表3に示す焼成条件で4時間焼結した.また,複数の配合については,完全焼結前に1100℃で5時間の熱処理を施した.得られた焼結体について焼結体密度,気孔率,体積固有抵抗率,ヤング率,曲げ強度の測定を行った.その結果を表4に示す.
【0035】
同表に示すように,その結果,本発明の実施例の場合は,アルミナ本来の優れた機械的特性を低下させることなく,10〜10Ωcmの体積固有抵抗率を有するアルミナ質焼結体が得られていることが分かる.
【0036】
それに対して,比較例3,15の場合は,高い焼結体密度が得られているものの,体積固有抵抗率が十分に低下していないことが分かる.また比較例8,16では,過剰に添加した炭素による焼結阻害のため,焼結体に膨れが生じてしまった.さらに,比較例9,12の場合は,得られた焼結体の体積固有抵抗率は十分に低下していなことが分かる.
【0037】
【表3】
Figure 2004018296
【0038】
【表4】
Figure 2004018296
【0039】
【発明の効果】
本発明によって以下の効果を奏する.
1.本発明のアルミナ質焼結体は,アルミナの優れた特性を何ら低下させることなく,10〜10Ωcmの体積固有抵抗率を有するため,静電気拡散性を示し,また誘電起電力による磁場発生も少ない.
2.製造のための格別の手段は必要なく,経済的に製造できる.

Claims (11)

  1. チタン酸化物をTiO換算で0.1〜1.0質量%含み,残部が実質的にアルミナからなる焼結体において,体積固有抵抗率が10〜10Ωcmであることを特徴とするアルミナ質焼結体.
  2. 前記チタン酸化物は、TiO及びアルミナとの複合酸化物の結晶としての存在量が2.0体積%以下であることを特徴とする請求項1に記載のアルミナ質焼結体.
  3. 炭素をC換算で1.2質量%以下含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のアルミナ質焼結体.
  4. 焼結助剤としてY,SiO,MgO,CaOの一種又は二種以上を1質量%以下含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のアルミナ質焼結体.
  5. 前記焼結体が,密度3.75g/cm以上,見掛け気孔率0.2%以下,ヤング率300GPa以上であることを特徴とする請求項1及至4のいずれかに記載のアルミナ質焼結体.
  6. 前記焼結体に,TiC,TiN,TiCN,ZrC,ZrN,ZrCNの少なくとも一種の結晶粒を5質量%以下含むことを特徴とする請求項1及至5のいずれかに記載のアルミナ質焼結体.
  7. アルミナの粉末に,酸化チタンの粉末をTiO換算で0.1〜1.0質量%,炭素源をC換算で1.2質量%以下になるように添加した混合粉末を焼成し,その焼結体の体積固有抵抗率が10〜10Ωcmであることを特徴とするアルミナ質焼結体の製造方法.
  8. 最終焼結前に,1000〜1200℃の温度で1時間以上熱処理を行うことを特徴とする請求項7に記載のアルミナ質焼結体の製造方法.
  9. 前記焼成が,非酸化性雰囲気又は真空中からなることを特徴とする請求項7又は8に記載のアルミナ質焼結体の製造方法.
  10. 前記焼成が,1500〜1800℃の温度で行われることを特徴とする請求項7及至9のいずれかに記載のアルミナ質焼結体の製造方法.
  11. 前記焼成が,常圧焼成,ガス圧焼成,ホットプレス焼成,HIP焼成の何れか,または,それらを組み合わせてなることを特徴とする請求項7及至10のいずれかに記載のアルミナ質焼結体の製造方法.
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