JP2004352572A - アルミナセラミックス及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】アルミナを主成分としTi及びTi酸化物が分散してなり、表面抵抗を104〜1011Ω/□の範囲としたことを特徴とするアルミナセラミックスである。
【選択図】なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、導電性・半導電性部品、摺動部品、耐薬品性部品、導電性・半導電性で非磁性の部品として使用するのが好適なアルミナセラミックス及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から半導体製造装置部品、摺動部品、耐薬品性部品として導電性又は半導電性を示すセラミックス部品が検討されてきている。
【0003】
一方、セラミックスの中でアルミナセラミックスは、高硬度、高耐摩耗性、耐食性、耐薬品性などの優れた特性を有し、従来からこの特性を活かして種々の分野に応用されてきている。例えば、高耐摩耗性材料として、アルミナと炭化チタンの複合材料(特許文献1)や、アルミナと酸化ジルコニウムの複合材料(特許文献2)が提案されている。また、高い耐摩耗性と高い温度安定性を有するようにアルミナ結晶相を主相とし、そのアルミナ結晶粒内に、TiO2、MgAl2O4から選ばれる少なくとも1種の結晶相を含むアルミナセラミックスが提案されている。
【0004】
【特許文献1】特開平7−330423号公報
【0005】
【特許文献2】特開平8−67557号公報
【0006】
【特許文献3】特開平11−228215号公報
ここで、アルミナセラミックスを導電性又は半導電性とする場合、金属材料を含有させた導電性セラミックスを用いることも考えられるが、これらの多くの導電性セラミックスは、例えばFeやTiなどの導電性材料を多く含有させないと導電性を得ることができないものであった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、アルミナセラミックスに導電性を付与し、その導電性を高めるためには上述のような導電性材料を多く含有する必要があるが、導電性材料を多く含有すると、結果として機械的特性を悪化させるだけでなく、温度変化のある環境下で使用する場合は耐熱衝撃性(ヒートショック性)が低下し、特に複雑な形状や薄肉な部分を有する形状としたものは破損しやすいという問題があった。
【0008】
本発明は、上述の課題を鑑みて案出されたものであり、その目的は機械的強度を損なわず、耐摩耗性や耐熱衝撃性に優れたアルミナセラミックス及びその製造方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために本発明のアルミナセラミックスは、アルミナを主成分としTi及びTi酸化物が分散してなり、表面抵抗を104〜1011Ω/□の範囲としたことを特徴とするものである。この場合、上記Ti及びTi酸化物をTi換算で0.6〜3重量%含有させるのが好ましい。
【0010】
また、アルミナを主成分とし、Ti酸化物を添加した原料粉末を成形して焼成した後、さらに還元雰囲気中で熱処理したことを特徴とするアルミナセラミックスの製造方法を提供する。この場合、上記熱処理で表面抵抗を104〜1011Ω/□の範囲にすることが好ましい。また、上記熱処理の温度を500〜1600℃とすることが好ましい。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のアルミナセラミックス及びその製造方法について具体的に説明する。
【0012】
本発明のアルミナセラミックスは、アルミナを主成分としTi及びTi酸化物が分散したものであり、その表面抵抗を104〜1011Ω/□としてある。
【0013】
即ち、表面抵抗が104〜1011Ω/□の範囲としたのは、1011Ω/□より大きいと絶縁体となってしまい、104Ω/□より小さくなると、アルミナセラミックスを製作する為の導電材料を多く含有させねばならず、アルミナセラミックスとして耐摩耗性や強度が損なわれてしまうからである。そのため、アルミナセラミックスの表面抵抗が104〜1011Ω/□の範囲とすることが好ましく、さらに好ましくは104〜106Ω/□の範囲が良い。
【0014】
表面抵抗としては高抵抗領域の106Ω/□以上はJIS K−6911に準拠して測定したものであり、また、低抵抗領域の106Ω/□以下は、JIS K−7194に準拠して測定したものである。
【0015】
また、このアルミナセラミックスにはTi及びTi酸化物がTi換算で0.6〜3重量%含有させるのが好ましい。
【0016】
即ち、アルミナセラミックスに含有するTi及びTi酸化物の量が0.6重量%よりも少ない場合は所定の導電性が得られない。一方、3重量%より多い場合、アルミナセラミックスの機械的特性が低下し、耐熱衝撃性が低下するからである。
【0017】
特にTi及びTi酸化物の含有量が多くなると、複雑な形状をしたものは温度変化が大きい場合に破損しやすく製品として問題となってしまう。そのため、上述のように0.6〜3重量%と少量を含有させるのが特徴であり、より好ましくは1.8〜2.4重量%の範囲とする。この範囲であれば導電性・半導電性でありながらも機械的特性の低下を抑え、耐熱衝撃性を充分得ることが可能となる。
【0018】
このようにアルミナセラミックスの抵抗を低下させるのにTiを選択しているのも本発明の特徴である。即ち、アルミナセラミックスには導電性・半導電性でありながらもコバルトやバナジュームのような重金属を用いていないので、導電性・半導電性でありながら非磁性の特性を有することができる。
【0019】
このTi及びTi酸化物の含有量はICP発光分光分析装置(セイコー電子工業製JY38P2型)にてアルミナセラミックスを強アルカリ溶液に投入し、3日間放置して溶出したTiを定量分析した値である。
【0020】
本発明のアルミナセラミックスは、焼成後のアルミナ焼結体を還元雰囲気下で熱処理を行うことによって、上述のようなアルミナセラミックスの表面抵抗104〜1011Ω/□としている。
【0021】
ここで、本発明のアルミナセラミックスが還元雰囲気にて焼成されたかどうかを確認するのは、呈色を確認すればよく、本発明のようにアルミナを主成分としTi及びTi酸化物を分散したアルミナセラミックスは、還元雰囲気で熱処理が行われると青色の呈色となる。このように呈色は最終的な熱処理の雰囲気に左右される。
【0022】
このアルミナセラミックスは、還元雰囲気にて熱処理されることにより、アルミナセラミックス中のTi酸化物の酸素量が欠乏し、Tiとなって導電性を付与することができる。従って、実際にはアルミナセラミックス中にTiとTi酸化物の双方が分散した状態が得られる。このアルミナセラミックス中のTiとTi酸化物との含有比率は熱処理の温度、熱処理時間、Ti酸化物の添加量によって適宜調整することができる。
【0023】
このような本発明のアルミナセラミックスの機械的特性としては、ビッカース硬度が8.0〜20.0GPa、好ましくは9.0〜18.0GPaとなっている。この値はJIS R1610に準拠して測定された値である。また、3点曲げ強度が300〜500MPa、好ましくは300〜450MPaとなっている。この値はJIS R1601に準拠して測定された値である。破壊靭性としては3〜7MPam1/2となっており、より好ましくは4〜6MPam1/2となっている。この値もJIS R1607に準拠して測定された値である。
【0024】
また、アルミナセラミックスの熱的特性として線膨張係数(40〜400℃)が6.0〜8.0×10−6/℃、好ましくは6.5〜7.5×10−6/℃となっている。この値もJIS R1618に準拠して測定された値である。また、熱伝導率(20℃)が6.0〜35.0W/(m・K)、好ましくは8.0〜34.0W/(m・K)となっている。この値もJIS R1611に準拠して測定された値である。
【0025】
さらに、アルミナセラミックスの誘電率としては1MHzの交流電界中で7.0〜10.0が好ましく、より好ましくは8.0〜9.9となっている。この値もJIS C1241に準拠して測定された値である。
【0026】
このようなTi及びTi酸化物が分散させたアルミナセラミックスを用いることにより、Ti及びTi酸化物の含有量がTi換算で0.6〜3重量%と、本来、アルミナセラミックスの表面抵抗を得るのに必要なTi酸化物の含有量に比べて極めて少ない添加でアルミナセラミックスの表面抵抗を導電性又は半導電性とすることができる。また、材料特性を損なわずにアルミナセラミックスを作製することができる。すなわち、アルミナセラミックスの本来の機械的特性がほとんど損なわれず、耐熱衝撃性が良く、耐薬品性にも優れたものを提供することができる。
【0027】
この理由としてTiは還元性雰囲気で加熱すると、Tiのイオン価数が4+から3+となり、アルミナ結晶に対する溶解度が高くなって固溶体を形成が、この固溶体は、還元された表層から内部に向かって徐々に進行することからムライト層を形成することになり表層近傍に強化機構を形成して機械的特性、耐熱衝撃性、耐薬品性の特性となるためと考えられる。
【0028】
なお、本発明のアルミナセラミックスの相対密度はアルミナ成分が高いほどよく、好ましくは90.0%以上、より好ましくは95.0%以上、更に好ましくは99.0%以上の緻密質とする。90.0%未満であると機械的特性や耐熱衝撃性を充分得ることができないからである。
【0029】
次に本発明のアルミナセラミックスの製造方法について説明する。
【0030】
本発明のアルミナセラミックスは基本的にアルミナの原料粉末を成形・焼成して得られるアルミナ焼結体を熱処理してなるものである。
【0031】
まず、出発原料として、用いるアルミナ粉末の純度は96%で、平均粒子径が1〜2μmのアルミナ粉末を使用する。
【0032】
その後、添加剤としてはSiO2、MgO、CaOを添加するとともにTiO2(Ti酸化物)を添加して原料粉末を作製する。そして、この原料粉末にアルコール等の有機溶媒又は水を加えてボールミルで湿式状態にて混合、粉砕したあと、スプレードライヤーによって乾燥、造粒を行って2次原料を作製する。
【0033】
得られた2次原料は、冷間静水圧プレス(CIP)成形またはメカプレス成形にて80〜200MPaの範囲の圧力にて成形する。
【0034】
次に、大気中又は還元雰囲気中での最高温度が1500〜1700℃の範囲となるように焼成することで、アルミナ焼結体を形成する。このアルミナ焼結体を所望の形状に研削加工を行って所定の面状態に仕上げる。そして、アルミナ焼結体を、還元雰囲気中で熱処理を行う。即ち、窒素あるいはアルゴンなどの還元雰囲気の焼成炉で500〜1600℃にて熱処理を行う。そして、研磨によって最終の面状態に仕上げる。
【0035】
この熱処理としては大気圧において還元雰囲気中で熱処理を行うこともできるが、これに限定されず、還元雰囲気下で熱間静水圧プレス(HIP)処理を行うとよい。大気圧において熱処理を行う場合にはコストが安く抑えることができるだけでなく、アルミナセラミックスの表面に存在するボイド(気孔)がある程度存在させて焼成することが可能となる。これらの用途としては水道栓、湯水混合栓に代表されるディスクバルブの摺動部品を用いるのに適している。
【0036】
還元雰囲気下で熱間静水圧プレス(HIP)処理を行う場合にはアルミナセラミックスが緻密質となり良好である。例えば、このようにして製造したアルミナセラミックスをインクジェットプリンタにおけるプリンタヘッドに用いた場合には、強アルカリ性のインクが長時間曝されることとなるために、内部の不純物が溶出するのをおさえることができるものである。
【0037】
なお、本発明ではこの還元雰囲気中で熱処理する温度が500℃以下であると充分な表面抵抗を得ることができず、1600℃を越えるとTiの融点を超えることからアルミナセラミックスの形態性が悪くなるばかりでなく、Tiが減少して表面抵抗も低下する。従って、より好ましくは還元雰囲気中の熱処理温度として1200℃〜1500℃とする。ここで、上述のHIPによる熱処理の温度としては上述の温度である1200〜1500℃で処理され、圧力100MPa以上で処理とするのが好ましい。
【0038】
本発明のアルミナセラミックスの用途としては、導電性・半導電性部品、摺動部品、耐薬品性部品、導電性・半導電性で非磁性の材料として使用される。
【0039】
導電性・半導電性部品としては、除電部材、ヒータ、半導体製造装置部品、ディスプレイ装置用部品が挙げられる。除電部材としては、磁気ディスク基板保持用のスペーサ,シム,クランプ等、磁気テープ用ガイドとして利用される。また、半導体製造装置部品としては、ウエハ搬送用ピンセット,ウエハ保持用の静電チャック,ドーム型チャンバ,クランプリング等として利用される。さらに、ディスプレイ装置用部品としては背面板,スペーサとして利用することができる。
【0040】
また、摺動部品としては、湯水混合栓、水栓等のディスクバルブ、回転体の軸受、インターレースノズル等として利用することができる。
【0041】
さらに、耐薬品性部品としては、強アルカリ性インク等の薬品に曝される場所に用いられるインクジェットプリンタ用ヘッド等に利用することができる。
【0042】
さらにまた、導電性・半導電性で非磁性の材料としては、磁気ヘッド加工用治具に利用することができる。
【0043】
【実施例】
以下、本発明の実施例を示す。
【0044】
純度が96%で平均粒径が2μmのアルミナ粉体に、添加剤としてはSiO2、MgO、CaO及び、本発明のTiO2(Ti酸化物)を添加して原料粉末を作製した。この場合、表1に示すようなTi換算での含有量となるようにTiO2の添加量を適宜選択してそれぞれ作製した。
【0045】
そして、これらの原料粉末にアルコール等の有機溶媒を加えてボールミルで湿式状態にて混合、粉砕したあと、スプレードライヤーによって乾燥、造粒を行って2次原料を作製した。得られた2次原料は、CIP成形にて150MPaの圧力にて成形体を作製した。次に、最高温度が1600℃で焼成してアルミナ焼結体を形成した。この後、アルミナ焼結体を所望の形状に研削加工を行って表面の面状態を仕上げた。
【0046】
そして、得られたそれぞれのアルミナ焼結体を、アルゴンからなる還元雰囲気中で1300℃で熱処理を行った後、研磨により表面を仕上げてアルミナセラミックスを作製した(No.1〜7)。
【0047】
比較例として、アルミナ焼結体を還元雰囲気下で熱処理を行っていないアルミナセラミックスを用意した(No.8,9)。
【0048】
そして、互いの同じ箇所から試料片を採取し、その耐熱衝撃性を水中投下試験にて評価した。また、表面抵抗を参考として測定した。試料のサイズとしては外径φ20mm、内径φ15mm、厚み4mmのリング形状とした。
【0049】
水中投下試験において△180℃と示すのは、例えば、200℃の恒温槽にて温めた試料を20℃の水温の水中に瞬時に投下してクラックが入る際の温度を示している。なお、本試験ではNo.1〜9それぞれに20個の試料を準備して同時に水中投下した際にクラックが1個でも入った段階でNGとした。結果を表1に示す。
【0050】
【表1】
【0051】
以上の結果より0.6〜3重量%の範囲であれば、耐熱衝撃性試験において△200℃以上に耐えることが判り、機械的強度を損なわずに表面抵抗も104〜1011Ω/□「の範囲にあることが判る。
【0052】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、機械的特性を低下させず、耐熱衝撃性(ヒートショック性)の良いアルミナセラミックスが作製できるようになった。
Claims (5)
- アルミナを主成分としTi及びTi酸化物が分散してなり、表面抵抗を104〜1011Ω/□の範囲としたことを特徴とするアルミナセラミックス。
- 上記Ti及びTi酸化物をTi換算で0.6〜3重量%含有させたことを特徴とするアルミナセラミックス。
- アルミナを主成分とし、Ti酸化物を添加した原料粉末を成形して焼成した後、さらに還元雰囲気中で熱処理したことを特徴とするアルミナセラミックスの製造方法。
- 上記熱処理で表面抵抗を104〜1011Ω/□の範囲にすることを特徴とする請求項3に記載のアルミナセラミックスの製造方法。
- 上記熱処理の温度を500〜1600℃としたことを特徴とする請求項3又は4に記載のアルミナセラミックスの製造方法。
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2003
- 2003-05-29 JP JP2003153326A patent/JP2004352572A/ja active Pending
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