JP2006027986A - 半導体製造装置用部材 - Google Patents

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Abstract


【課題】 窒化珪素と同等の熱膨張係数を有し、緻密質で最大ボイド径が小さく、窒化珪素よりも加工性が高められたサイアロン焼結体を用いた半導体製造装置用部剤材を提供する。
【解決手段】 半導体製造装置用部材はβ−サイアロン焼結体からなり、その相対密度は90%以上であり、最大ボイド径が30μm以下であり、ヤング率が250GPa以上であって、室温における熱膨張係数が1.4×10-6/℃±0.30×10-6/℃を有し、所定の機械加工速度が所定の緻密な窒化珪素焼結体の1.5倍以上である。このβ−サイアロン焼結体は、比表面積が14m/g以上の窒化珪素粉末に化学式Si6−ZAl8−ZにおけるZ値が2以上3以下となるように酸化アルミニウム粉末を添加混合し、得られた混合粉末を所定の圧力で成形し、1600〜1800℃で焼成することにより作製される。
【選択図】 なし

Description

本発明はβ−サイアロン焼結体からなる半導体製造装置用部材に関する。
半導体製造装置には、耐食性や耐熱性に優れた種々のセラミック焼結体からなる部品が使用されている。例えば、半導体製造装置用部材のひとつであるステージには、高い精度が要求されることから、剛性が高く、かつ、低熱膨張性である窒化珪素(Si)が使用されている。それに伴い、静電チャックや測長用ミラーには、窒化珪素に対する熱膨張係数を合わせるために、同様に窒化珪素が使用されている(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、窒化珪素焼結体は硬く、研磨加工し難いといった問題を有している。この問題を解決する方法として、加工しやすい別の材料を選択する方法が考えられるが、この場合には、熱膨張係数が窒化珪素と異なるために、半導体製造装置用部材の特性や精度が低下するという問題が生ずる。また、静電チャックや測長用ミラーでは、その表面に現れるボイドの径が小さいことが望まれるために、窒化珪素焼結体の気孔率を上げることによって研磨加工性を高める方法を採ることはできず、組織の緻密性を維持しながら、研磨加工性を向上させる必要がある。
特開平7−135246号公報
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、窒化珪素と同等の熱膨張係数を有し、緻密質で最大ボイド径が小さく、窒化珪素よりも加工性が高められたサイアロン焼結体を用いた半導体製造装置用部材を提供することを目的とする。
発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、窒化珪素をβ−サイアロン化することにより、熱膨張係数を窒化珪素と同等に維持し、かつ、半導体製造装置用部材として十分に用いることができる微構造および機械的特性を有し、さらに、加工性の良好な材料を発明するに至った。
すなわち、本発明によれば、β−サイアロン焼結体からなる半導体製造装置用部材であって、
相対密度が90%以上であり、最大ボイド径が30μm以下であり、ヤング率が250GPa以上であり、室温における熱膨張係数が1.4×10-6/℃±0.30×10-6/℃を有し、所定の機械加工速度が所定の緻密な窒化珪素焼結体の1.5倍以上であることを特徴とする半導体製造装置用部材、が提供される。
このような半導体製造装置用部材は、出発原料としての窒化珪素粉末を比表面積が14m/g以上となるように粉砕し、この粉砕処理された窒化珪素粉末に化学式Si6−ZAl8−ZにおけるZ値が2以上3以下となるように酸化アルミニウム粉末を添加混合し、得られた混合粉末を所定の圧力で成形し、1600〜1800℃で焼成することにより、好適に製造される。
本発明に係る半導体製造装置用部材は、最大ボイド径が小さく、高いヤング率を有し、窒化珪素と同等の熱膨張係数を有し、しかも機械加工性に優れる。このため高品質な半導体製造装置用部材を低い加工コストで製造することができる。
本発明に係る半導体製造装置用部材は、β−サイアロン焼結体からなる。β−サイアロン焼結体は、周知の通り、窒化珪素にアルミナを固溶させた材料であり、その組成式は一般的に、Si6−ZAl8−Z、で表される。ここで、この組成式に示されるZの値(以下単に「Z値」と記す)は、アルミナの固溶量を示している。一般的にβ−サイアロン焼結体におけるZ値は0<Z<4.2の範囲であるが、本発明の半導体製造装置用部材に用いられるサイアロン焼結体では、Z値を2.0≦Z≦3.0の範囲とすることが好ましい。これは、Z値が2.0未満になると加工性が悪くなり、一方、Z値が3.0を超えるとヤング率が大きく低下するからである。
本発明に係る半導体製造装置用部材は、相対密度が90%以上であり、最大ボイド径が30μm以下であり、ヤング率が250GPa以上であり、室温における熱膨張係数が1.4×10-6/℃±0.30×10-6/℃であり、所定の機械加工速度が所定の緻密な窒化珪素焼結体の1.5倍以上であるβ−サイアロン焼結体からなる。
これは、相対密度が90%より小さく、最大ボイド径が30μmより大きいと、緻密質でない多孔質焼結体となり、半導体製造装置用部材、特に静電チャックや測長用ミラーとしての、必要な平面度、表面粗さ、反射率が得られないからである。また、多孔質焼結体では、パーティクルの抑制が非常に困難となる。さらに、ヤング率が250GPaより小さいと、半導体製造装置用部材として用いるための機械的強度の特性を確保できなくなる。
また、室温における熱膨張係数が1.4×10-6/℃±0.30×10-6/℃の範囲外であると、半導体製造装置用部材のひとつであるステージに用いられている窒化珪素(Si)との大きな膨張差が生じるため、高い精度が得られなくなる等の問題が生ずる。例えば、ステージ材に熱膨張係数が1.40×10-6/℃である窒化珪素と共に、熱膨張係数が8.00×10-6/℃である酸化アルミニウムを測長用バーミラーとして用いた場合、双方500mmの部材で温度が1℃変化すると、窒化珪素を用いたステージの端面では700nmの偏差であるのに対して、酸化アルミニウムを用いた測長用バーミラーの端面では4μmの偏差が生じることとなり、測長用バーミラーが歪んで正確な測定ができなくなったり、破壊に至る等の問題が生ずる。さらにまた、所定の機械加工速度が所定の緻密な窒化珪素焼結体の加工速度が1.5倍より小さいと、加工コストが高くなってしまう。
一般的に、β−サイアロン焼結体の製造には、焼結時の緻密化を促進するために焼結助剤が用いられる。本発明に係る半導体製造装置用部材を構成するβ−サイアロン焼結体は、焼結助剤成分として希土類元素を含むことが好ましい。具体的な希土類元素として、好ましくはランタン(La)、セリウム(Ce)、イットリウム(Y)、イットリビウム(Yb)、エルビウム(Er)、ネオジム(Nd)が挙げられる。しかし、これらに限定されるものではなく、ガドリニウム(Gd)やディスプロシウム(Dy)、サマリウム(Sm)、ユーロピウム(Eu)を用いることもできる。また、希土類元素以外の成分、例えば、マグネシウム(Mg)やアルミニウム(Al)等をさらに含んでいてもよい。
このような焼結助剤は、窒化珪素粉末とアルミナ粉末と焼結助剤粉末の合計量(つまり、100重量部)に占める焼結助剤の割合が、0.1重量部以上5重量部以下となるようにすることが好ましい。これは、焼結助剤量が0.1重量部未満では焼結体の緻密化が進み難く、一方、5重量部超では後述する加工性が低下するためである。
また、β−サイアロン焼結体の熱膨張係数は、窒化珪素をβ−サイアロン化することにより、またZ値を変化させることによっては変化せず、焼結助剤の種類および添加量を変えることによって変化する。上述のように、β−サイアロン焼結体の製造には、所定量の焼結助剤を用いることが好ましいことから、半導体製造装置用部材を窒化珪素焼結体とβ−サイアロン焼結体から構成する場合(例えば、窒化珪素製のステージにβ−サイアロン製の測長用ミラーを取り付ける場合)には、窒化珪素焼結体とβ−サイアロン焼結体の熱膨張係数をできるだけ接近させる必要がある。上述の通り、焼結助剤の添加量を窒化珪素粉末とアルミナ粉末と焼結助剤粉末の合計量の0.1重量部以上5重量部以下とすることは、β−サイアロン焼結体の熱膨張係数を窒化珪素焼結体の熱膨張係数に近付ける効果も有する。
本発明に係るβ−サイアロン焼結体からなる半導体製造装置用部材の製造方法は次の通りである。出発原料としての窒化珪素粉末と酸化アルミニウム粉末、焼結助剤成分を、比表面積(BET値)が14m/g以上となるように、均一に混合粉砕する。BET値が14m/g未満の粉末では一般的に粒子径が大きいために、β−サイアロン焼結体に形成されるボイドの径が大きくなりやすい。
なお、原料粉末の粉砕方法は湿式と乾式のどちらでもよい。主成分である窒化珪素粉末の比表面積が大きく、かつ、酸化アルミニウム粉末および焼結助剤粉末を合わせた状態での比表面積(BET値)が最初から14m/g以上であれば、粉砕処理を行なわずに混合処理のみで済ませることも可能である。但し、この場合において、酸化アルミニウム粉末および焼結助剤粉末のBET値が窒化珪素粉末と比較して極端に小さい場合には、組織の均一性を高める等の観点から、酸化アルミニウム粉末および焼結助剤粉末を予め粉砕するか、または全原料粉末を混合粉砕することが好ましい。
調整された混合粉末には、成形性を高めるために所定量のバインダを加えてもよい。こうして得られた粉末を所定圧力でプレス成形し、窒素雰囲気中、1600℃〜1800℃で所定時間焼成を行う。なお、粉末にバインダが添加されている場合には、焼成処理前または焼成時に所定温度で脱脂処理を行う。混合粉末のプレス成形は、一軸プレスにより仮成形した後に冷間静水圧プレス(CIP)することが好ましい。
このようにして製造されたβ−サイアロン焼結体には、半導体製造装置用部材として用いるために必要な切削や研磨等の機械加工が施される。上述の通りにして作製されたβ−サイアロン焼結体は、高いヤング率を有するにもかかわらず機械加工性に優れている。具体的には、本発明に係る半導体製造装置用部材を構成するβ−サイアロン焼結体では、一般的な研磨処理(ラッピング処理)における加工速度(つまり、研磨レート)が、以下に説明する緻密質窒化珪素焼結体の場合の1.5倍以上である。
ここで、研磨レートを求めるための基準となる緻密質窒化珪素焼結体(以下「基準試料」という)の製造方法および特性について説明する。基準試料は、最初に、窒化珪素粉末(粒径:0.2μm、純度:90%)90重量部に、焼結助剤として8重量部の酸化イットリウム(Y)粉末(平均粒径:0.3μm、純度:99.9%)と2重量部のスピネル(MgAl)粉末(平均粒径:0.3μm、純度:99.9%)を添加し、これに所定量のエタノールを加えて、窒化珪素製ボールを用いてボールミル処理する。このような混合粉砕処理後にエタノールを除去乾燥して得られる混合粉を300kgf/cm(=29.4MPa)で50mm×50mm×10mmの角柱形状にプレス成形し、さらにこのプレス成形体を1500kgf/cm(=147.1MPa)で冷間静水圧成形する。作製した成形体を窒素雰囲気中、昇温速度を10℃/分として1700℃に昇温し、6時間焼成する。このようにして得られる焼結体から10mm×10mm×5mmの試料片を切り出し、これを基準試料とする。
なお、このようにして作製された窒化珪素焼結体は、後に示す表1に比較例1として示されるように、ヤング率が315GPa、最大ボイド径が10μm、アルキメデス法による相対密度が99%で嵩密度が3.33×10kg/m、という特性を有する。また、この窒化珪素焼結体は、SEM観察による平均粒子径が1.0μm、ビッカース硬度が17.9GPa、破壊靱性値が8.7MPam1/2、4点曲げ強度が1100MPa、熱膨張係数が1.4×10-6/℃、という特性を有する。
この基準試料の研磨処理は次のようにして行われる。直径100mmφのプレートの裏面に、10mm×10mm×5mmの基準試料3個が略正三角形の頂点に位置するように10mm×10mmの面で固定する。次に、このプレートに1kg/cm(=0.098MPa)の荷重を掛けて、基準試料を銅と鋳物材質とからなる直径200mmφのラップ盤に押し当てる。このプレートは、その中心が、ラップ盤の中心からその半径の半分だけ離れた位置に位置するように配置される。そして、所定の時間間隔でラップ盤に粒径9μmのダイヤモンドスラリーを所定量吹き付けながら、このラップ盤を30rpmの速度で回転させる。なお、基準試料が取り付けられたプレートは、ラップ盤の回転時に基準試料とラップ盤との間に働く摩擦によって自由に回転できる状態で保持されている。
研磨レートは、このような研磨処理によって所定時間に研磨された試料の厚さt(μm/分)により求められる。本発明に係る半導体製造装置用部材を構成するβ−サイアロン焼結体の研磨処理もこれと同様に行われ、その研磨レートが求められる。
本発明に係る半導体製造装置用部材を構成するβ−サイアロン焼結体のこのような研磨処理による研磨レートは、基準試料の研磨レートの1.5倍以上である。基準試料も、その切断処理や研削処理にはダイヤモンドホイールが使用されるが、このときの処理時間等には大差は生じず、したがって処理コストも同等である。しかし、このような研磨処理によって所望の表面粗度を有する面を出す処理では、その焼結体の特性に依存して、処理時間が大きく異なり、処理コストや生産性に大きな差が生ずる。本発明に係る半導体製造装置用部材を構成するβ−サイアロン焼結体は研磨レートが高いために、生産性がよく、処理コストが低く抑えられる。
上述した特性を備えた本発明に係るβ−サイアロン焼結体からなる半導体製造装置用部材としては、例えば、静電チャックや各種リング等が挙げられるが、特に、相対密度が高く、かつ、最大ボイド径が小さく、窒化珪素と同等の熱膨張係数を有し、鏡面出しを行う研磨処理の加工性が良好であることを活かして、測長用ミラーとして用いることが好ましい。
(比較例1の作製方法)
比較例1は緻密質窒化珪素焼結体であり、その製造方法については先に説明した通りであるので、ここでの詳細な説明は割愛する。
(β−サイアロン焼結体(比較例1を除く)の作製方法)
窒化珪素粉末、アルミナ粉末、焼結助剤成分の酸化物粉末を表1に示す組成となるように秤量し、これにエタノールを混合して、窒化珪素ボールを用いたボールミル処理を行うことにより、表1に示すBET値を有する均質な原料粉末を作製した。次に、このような混合粉砕処理後にエタノールを除去乾燥して得られる混合粉を100kgf/cm(=9.81MPa)で50mm×50mm×10mmの角柱形状にプレス成形し、さらにこのプレス成形体を1200kgf/cm(=117.68MPa)で1分間、冷間静水圧処理した。なお、このような原料粉末の成形条件は、実施例および比較例(比較例1を除く)に共通である。
こうして作製した成形体を窒素雰囲気中、昇温速度を10℃/分として表1に示される各温度に昇温し、その温度で3時間焼成した。得られた焼結体から10mm×10mm×5mmの試料片を切り出し、研磨レートを求めるための試料とした。
(焼結体の評価方法)
また、作製した焼結体の嵩密度および相対密度をアルキメデス法により、またヤング率を共振法により、最大ボイド径をSEM観察により、熱膨張係数を(JIS R3251)低熱膨張ガラスのレーザー干渉計による線膨張率の測定方法により、求めた。また、研磨レートの測定は、先に説明した通りである。
(評価結果)
表1に示されるように、各実施例に係るβ−サイアロン焼結体の室温における熱膨張係数は1.4×10-6/℃±0.25×10-6/℃の範囲内に収まっており、基準となる窒化珪素焼結体の室温における熱膨張係数の1.4×10-6/℃±0.30×10-6/℃の範囲内である。このように各実施例では、窒化珪素焼結体とともに半導体製造装置用部材を構成する場合に好ましい特性が得られている。これに対して比較例2および比較例3の室温における熱膨張係数は1.4×10-6/℃±0.30×10-6/℃の範囲外となっている。
また、表1に示されるように、基準試料である比較例1のヤング率は315GPaであるが、本発明に係る実施例1〜10についても250GPa以上のヤング率が確保されており、半導体製造装置用部材として十分な特性が確保されていることが確認された。また、実施例では、相対密度が90%以上であり、かつ、最大ボイド径は30μm以下である。さらに実施例の研磨レートは160μm/hr以上となっており、基準試料たる比較例1の研磨レートの100μm/hrと比較すると1.5倍以上となっている。これらのことから、各実施例では、優れた加工性が得られ、研磨加工によって平滑な面(鏡面)を得ることが容易であることが確認された。
これに対して比較例2および比較例3を除くその他の比較例では、室温における熱膨張係数の基準は満たしているものの、研磨レートが高いものでは最大ボイド径が大きく、または相対密度が低く、あるいはヤング率が低い等、半導体製造装置用部材として用いるには機械的特性の観点から問題があった。一方、研磨レートが低いものは、半導体製造装置用部材と用いることはできるが、製品コストが高くなる問題がある。
Figure 2006027986
本発明の半導体製造装置用部材は、その表面を平坦に研磨処理することによって作製される静電チャックや、表面を鏡面研磨処理することによって作製される測長用ミラーに好適である。

Claims (2)

  1. β−サイアロン焼結体からなる半導体製造装置用部材であって、
    相対密度が90%以上であり、最大ボイド径が30μm以下であり、ヤング率が250GPa以上であり、室温における熱膨張係数が1.4×10-6/℃±0.30×10-6/℃であり、所定の機械加工速度が所定の緻密な窒化珪素焼結体の1.5倍以上であることを特徴とする半導体製造装置用部材。
  2. 出発原料としての窒化珪素粉末を比表面積が14m/g以上となるように粉砕し、この粉砕処理された窒化珪素粉末に化学式Si6−ZAl8−ZにおけるZ値が2以上3以下となるように酸化アルミニウム粉末を添加混合し、得られた混合粉末を所定の圧力で成形し、1600〜1800℃で焼成することにより得られることを特徴とする請求項1に記載の半導体製造装置用部材。
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