JP2001130966A - 窒化珪素質焼結体とその製造方法およびこれを用いた窒化珪素質耐磨耗性部材 - Google Patents

窒化珪素質焼結体とその製造方法およびこれを用いた窒化珪素質耐磨耗性部材

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JP2001130966A
JP2001130966A JP31001799A JP31001799A JP2001130966A JP 2001130966 A JP2001130966 A JP 2001130966A JP 31001799 A JP31001799 A JP 31001799A JP 31001799 A JP31001799 A JP 31001799A JP 2001130966 A JP2001130966 A JP 2001130966A
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sintered body
oxide
rare earth
mpa
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Takami Sakamoto
隆己 坂元
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Abstract

(57)【要約】 【課題】寿命が長く信頼性に富み、加工効率の良好な窒
化珪素質耐摩耗部材を提供する。 【解決手段】破壊靭性値が4.0〜5.4MPa√mで
あり、かつHv10硬度が14.0〜15.5であり、
かつ室温強度が800〜1100MPaである窒化珪素
質焼結体とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、窒化珪素質焼結体
からなる耐磨耗性部材及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】窒化珪素質焼結体は、耐熱性、耐熱衝撃
性および耐酸化性に優れることからエンジニアリングセ
ラミックス、特にターボローター等の熱機関用として応
用が進められ、またその耐摩耗性、高強度を利用してベ
アリングの転動体であるボールやローラーにも使用され
ている。
【0003】上記窒化珪素質焼結体の焼結に際しては、
上記窒化珪素質焼結体の原材料である窒化珪素に自己焼
結性がないため焼結助剤を添加して焼成を行っている。
上記焼結助剤としては、一般にY23などの希土類元素
酸化物や、Al23、MgO、CaOなどの酸化物が組
み合わされて用いられている。そして、窒化珪素粉末に
これらの焼結助剤を混合して成形した後、焼成を行うこ
とにより窒化珪素質焼結体を得ている。
【0004】上記の焼成方法としては、常圧下で行う常
圧焼成や窒素等による雰囲気加圧焼成などがあり、さら
に、上記常圧焼成により得られる焼結体においては、焼
結体内部の残留機構を排除するために高温で高いガス圧
力で処理して機械的強度を向上させるために、HIP
(熱間静水圧加圧)処理を行っている。近時、高密度で
高強度の焼結体を作製するために焼結助剤として希土類
元素酸化物やAl23を添加することが特公昭52−3
649号公報、特公昭58−51910号公報にて提案
されている。また緻密化を促進するため加圧焼成や、H
IP焼結の手法も行われている。また耐摩耗性を改善す
るために燃料噴射ポンプ用部品にセラミックスを用いる
事が特開平10−54321号公報や実開昭63−15
1967号公報にて提案されている。
【0005】さらに、近年はセラミック軸受の主用途で
ある工作機械の高速化、及び、航空機、宇宙産業、ハー
ドディスクドライブ(HDD)等への市場展開により、
セラミック軸受のニーズが高まっている。
【0006】特に、軸受材料として用いる場合は、材料
に内在する微小な欠陥(気孔等)が転がり疲労によって
表面で剥離を起こす原因となるため、雰囲気加圧焼結や
HIP処理が用いられている。このようにして得られた
焼結体は、製品として精密加工された後、軸受部品とし
て使用される。
【0007】転動体は、表面ないしはその近傍の表層に
高い引っ張り応力を受けるために、表面ないしはその近
傍に欠陥が存在しないことが重要であり、軸受部品材料
として用いる焼結体には、特に、欠陥(気孔、介在物、
組織の異常など)がないことが要求されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述の
ようにして得られる窒化珪素質焼結体を用いた軸受材料
は、高強度、高硬度で破壊靭性が高いため、非常に加工
し難いという問題があった。
【0009】一般的なセラミック製構造部材は焼成後、
ダイヤモンドホイール等により機械加工を行うが、軸受
に用いられるボールやローラーは、その形状精度を満足
させるために最終加工段階でダイヤモンド砥粒等による
ラッピング、あるいはポリッシング加工を行わなければ
ならない。ラッピング加工やポリッシング加工はダイヤ
モンドホイール等で強制的に加工する方法と異なり、遊
離砥粒により加工を行うため、加工時間が非常に長くな
る。このため、製造コストが上がり実用化が妨げられて
いる。
【0010】また、セラミックスの場合、焼結体中のボ
イドが破壊起点となりヘルツ応力により剥離が発生する
という問題もあった。従ってこれら問題を解決するため
にさらなる強度の改良、低ボイド化が要求される。
【0011】このように窒化珪素焼結体は優れた特性を
有しながら、金属に比較し加工し難い性質から製造コス
ト高のために実用化が妨げられている。
【0012】よって本発明の目的は、加工効率が良く、
安価な製造コストで優れた信頼性、耐久性、耐摩耗性を
もった窒化珪素質焼結体及び耐磨耗性部材を提供する点
にある。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明者は、上記問題点
に対し鋭意研究を重ねた結果、靱性などをコントロール
することで目的が達成できることを見出した。また、窒
化珪素への添加成分として希土類元素化合物と、Al化
合物、SiO2とを特定の割合で添加した成形体を、特
定の焼成条件で緻密化させる事によって、上記目的が達
成されることを知見し本発明に至った。
【0014】即ち、本発明の窒化珪素焼結体は、破壊靭
性値(JIS R1607)が4.0〜5.4MPa√
mであり、かつHv10硬度が14.0〜15.5、室
温強度が800MPa〜1100MPaであることを特
性としている。
【0015】このような窒化珪素質焼結体を得るには、
窒化珪素質焼結体の添加成分として少なくとも酸化物換
算で1〜30重量%の希土類元素化合物を含み、SiO
2:希土類元素酸化物のモル比が1:0.05〜1:
0.5、あるいは窒化珪素質焼結体の添加成分としてア
ルミニウム元素を含み、酸化物換算のアルミニウム化合
物:希土類元素酸化物の重量比が1:0.05〜1:1
である成形体を、非酸化性雰囲気中で1600℃〜20
00℃の温度で焼成した後、粒界相の融点以上の温度で
HIP(熱間静水圧プレス)処理を行い、その冷却時に
1600℃〜800度の温度域を3時間以内で冷却させ
て、粒界相を非晶質化させることによって得られる。
【0016】
【作用】本発明によれば助剤成分として希土類元素、ア
ルミニウム、シリカの化合物を特定の比率にし、特定の
焼成条件により焼成することにより、破壊靭性を4.0
MPa√m以上、5.4MPa√m以下であり、かつHv
10硬度(JISB 7725)が14.0以上、1
5.5以下で室温強度が800MPa〜1100MPa
の特性をもつ窒化珪素質焼結体が得られる。この窒化珪
素焼結体は、硬度および硬度を低下させることなく破壊
靱性値を低くしたことが特徴であり、これによって、従
来に比較してラッピング加工や、ポリッシング加工にお
いて非常に加工効率が良く、短時間で要求される高精度
の加工が可能な焼結体が得られる。
【0017】本発明の特徴は、従来の窒化珪素質焼結体
に較べ、SiO2含有量の多い組成にしている点にあ
る。高温強度を必要とする用途では、SiO2を増やす
ことは粒界層の融点を下げ、且つ粒界層の量を増やすこ
とになり好ましくないが、摺動部材のように比較的低温
で使用する材料については、影響がほとんどない。一
方、これにより上述したように窒化珪素の靱性を下げる
効果があるので、窒化珪素質焼結体の加工性を向上させ
ることになる。
【0018】
【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に報告する。
【0019】本発明の窒化珪素質焼結体は、破壊靭性値
を4.0〜5.4MPa√m、Hv10硬度が14.0
〜15.5、室温強度を800〜1100MPaとする
ことにより、軸受用のボールやローラーの最終加工段階
であるラッピング加工やポリッシング加工の加工時間を
大幅に短縮し、製品としての品質特性を維持しつつ、加
工効率を上げることが可能となることを見出し、本発明
に至ったのである。
【0020】本発明によれば、破壊靭性値およびHv1
0硬度、室温強度を制御することにより、軸受部品とし
て用いられるボールやローラーの品質特性を劣化させる
ことなく、最終加工段階であるラッピング加工やポリッ
シング加工の時間を大幅に短縮できるのである。しか
し、破壊靭性値、及びHv10硬度、室温強度がこの範
囲を外れると、加工時間が極端に長くなったり、軸受部
品としての特性(転がり寿命、耐磨耗性、圧砕荷重等)
を満足できない。
【0021】具体的には破壊靭性値を4.0〜5.4M
Pa√m、好ましくは4.5〜5.0MPa√m、また
Hv10硬度を14.0〜15.5、好ましくは14.
5〜15.0、室温強度を800〜1100MPa、好
ましくは900〜1000MPaに制御することが必要
である。破壊靭性値が4.0MPa√mより低いと加工
時間は短くなるが、軸受としての転がり寿命が短くな
り、特性を満足できない。また5.4MPa√mを越え
ると加工時間が長くなる。またHv10硬度が14.0
より低いと転がり寿命が短くなり、軸受としての特性を
満足しない。また15.5を越えると削り難くなり加工
時間が長くなる。また強度が800MPa未満では圧砕
荷重が低くなり、製品特性を満足できなくなり、110
0MPaを越えると本発明の目的である加工効率が悪く
なり加工時間が長くなる。
【0022】従来の窒化珪素質焼結体のHv10硬度は
14.0〜15.5、室温強度は600〜1300MP
aと、本発明の窒化珪素焼結体と大きな差はないが、破
壊靱性値が5.7〜6.7MPa√mと高いため、加工
効率が悪い材料であった。これに対し、本発明の窒化珪
素焼結体の特徴は、硬度および強度を低下させることな
く破壊靱性値を4.0〜5.4MPa√mと下げ、加工
効率を向上させた点にある。
【0023】このような破壊靭性、硬度、室温強度を達
成するには、窒化珪素質焼結体の添加成分として少なく
とも酸化物換算で1〜30重量%の希土類元素化合物を
含み、酸化物換算した酸化ケイ素:希土類元素酸化物の
モル比が1:0.05〜1:0.5、好ましくは1:
0.15〜1:0.4とすることが好ましい。ここで、
酸化物換算した酸化ケイ素量は、窒化珪素質焼結体をを
分析する事によって求めた酸素量から、SiO2以外の
添加した酸化物の含有する酸素量を差し引き、残りの酸
素がSiO2となっていると仮定して計算した。なお、
添加物を酸化物以外の形態で添加したものは、焼結体の
分析値に基づきその全量が焼成中に酸化物に変化したも
のとして酸化物換算の酸素量を差し引き計算した。
【0024】これらの成分の含有量を上記のように限定
したのは、まず希土類元素化合物は焼結助剤として重要
であり、その量は1〜30重量%が望ましい。この範囲
を選んだ理由は、1重量%未満では緻密化させるために
焼成温度を高温にする必要があるため機械的特性が低下
する傾向にあるからであり、また、30重量%を越える
と窒化珪素の本来の特性、即ち機械的特性が低下する傾
向にあるからである。
【0025】なお、本発明に用いられる希土類元素とし
ては、Y、Er、Yb、Lu、Sm等が挙げられる。こ
れらの間で特性に有意差は認められないが、鉱物中の存
在量から判断するとYを使用することが好ましい。
【0026】また、酸化ケイ素:希土類元素酸化物のモ
ル比について1:0.05よりも酸化ケイ素が多いと、
粒界相がSiO2に富んだ相を分離して破壊靭性が低く
なりすぎる傾向にあり、また、1:0.5よりも酸化ケ
イ素が少なきなると、酸化ケイ素−希土類元素酸化物の
反応による低融点組成から大幅に外れるため液相生成が
十分ではなく、焼結不良が発生して機械的特性の低い焼
結体になる傾向にあるためである。なお、SiO2は窒
化珪素原料中に最初から含まれていたものに加え、場合
によっては焼結助剤として加えても構わないし、製造工
程中で原料の酸化等による増加や焼成分解等による減少
が生じても構わない。
【0027】また、本発明の窒化珪素焼結体は、副添加
成分としてさらにアルミニウム化合物を含み、酸化物換
算した酸化アルミニウム:希土類元素酸化物のモル比が
1:0.05〜1:1、好ましくは1:0.25〜1:
0.55とすることが好ましい。
【0028】副添加成分としてアルミニウム化合物、好
ましくは酸化アルミニウムを添加することにより焼結性
を向上し、破壊靭性値が高くなり過ぎることを防止し、
かつ粒界相を非晶質化する点で望ましい。これは、酸化
アルミニウムを含有することにより、粒界相が非晶質相
として安定になるからである。酸化アルミニウム:希土
類元素酸化物のモル比について1:0.05よりも酸化
ケイ素が多くなると、粒界層の量が多くなり破壊靭性値
が低下する傾向になる。また、酸化アルミニウム:希土
類元素酸化物が1:1よりも酸化アルミニウムが少なく
なると、粒界相の非晶質化が不十分で焼結性が悪く、ボ
イドが発生し圧砕荷重が低くなる傾向にあり軸受として
の特性を満足できない。
【0029】このような組成に調整した成形体を、詳細
を後述するように非酸化性雰囲気中で1600〜200
0℃、好ましくは1750〜1850℃の温度で0.5
時間から3時間、好ましくは1〜2時間保持し焼成した
後、粒界相の融点以上の温度でHIP(熱間静水圧加
圧)処理を行い、その冷却時に1600〜800℃の温
度域を3時間以内で冷却させて、粒界相を非晶質化させ
ることが必要である。
【0030】さらに本発明の窒化珪素質焼結体におい
て、5μm以上の径のボイドが存在すると、そのボイド
が破壊起点となり、ヘルツ応力による剥離が生じ、転が
り寿命が短くなる。特にHDD用の軸受として用いられ
る場合、軸受にかかる荷重は工作機械等に用いられる軸
受と比較すると非常に小さいが、このような5μm以上
のボイドが存在すると、軸受として評価した場合に、ボ
イドを原因とする音が発生し音響試験をクリアーできな
い。したがって、HIP(熱間静水圧加圧)処理を施す
等して最大ボイド径を5μm以下にすることが必要であ
る。
【0031】次に、本発明の窒化珪素質焼結体を製造す
る方法について説明する。
【0032】原料粉末を所定量秤量し、公知の混合方
法、例えば回転ミルや振動ミル、バレルミルでIPAや
メタノール、水等を溶媒として混合する。場合によって
は、溶媒を使わない乾式混合でも構わない。
【0033】できあがった混合粉末を所望の成形手段、
例えば、金型プレス、HIP(冷間静水圧加圧)、押し
出し成形、射出成形、鋳込み成形等により任意の形状に
する。成型手段によっては、スプレードライ等による造
粒や、水、有機バインダーと共にある一定粘度の杯土を
作製するなどの準備も必要であるが、通常のセラッミク
スの成形手順に従えばよい。
【0034】成形後、乾燥、脱脂が必要な場合、窒素中
や真空中、大気中で、50〜1400℃の温度で加熱処
理する。
【0035】焼成は、窒素を含有した非酸化物雰囲気中
1600℃〜2000℃で行う。1800℃以上で焼成
を行う場合は、窒化珪素の分解が生じるので、1気圧以
上の窒素分圧下で焼成する必要がある。さらにこれらの
焼成後、HIP(熱間静水圧加圧)処理することにより
より緻密な焼結体を得る。焼成温度は、高すぎると主相
である窒化珪素結晶が粒成長し強度が低下するため、1
650〜1850℃で焼成することが望ましい。また、
HIP温度は粒界層の融点以上の温度とし、好ましくは
1500〜1750℃とするとよい。
【0036】粒界層の融点以下の温度でHIP(熱間静
水圧加圧)処理しても、熱処理中の粒界滑りによる緻密
化が期待できないので好ましくない。また、焼成温度よ
り高い温度でHIP(熱間静水圧加圧)処理すると、緻
密化と同時に窒化ケイ素の粒成長が進むので好ましくな
い。
【0037】また粒界相を非晶質化させるためには冷却
速度は速いほうが良く、特に1600〜800℃の温度
領域を3時間、望ましくは1時間、さらに望ましくは3
0分以内で冷却させる方がよい。粒界相の結晶化が起こ
ると、窒化珪素と粒界結晶相との熱膨張差に起因する数
μmから10μm程度のボイドが発生し、機械的特性お
よび軸受としての特性を満足できない。
【0038】この焼成により窒化珪素は、原料がα、β
のいずれの場合においても主相β−Si34となる。
【0039】この焼成により最終的にはβ−窒化珪素主
結晶相と粒界相を含む焼結体が得られる。特に希土類元
素酸化物、酸化アルミニウムを焼結助剤として用いた場
合は、希土類元素、アルミニウム、酸素および窒素を含
む非晶質粒界相からなる焼結体を得ることができる。
【0040】以上の本発明の窒化珪素質焼結体は種々の
セラミックス部品、特に、転動体、ピストンピン、ロー
ラーピン、ロッカーアームチップ、ローラーブッシュ、
カムローラー、バルブ等の耐摩耗性部品に使用する事が
可能である。
【0041】
【実施例】実施例1 窒化珪素粉末(BET比表面積9m2/g、α率98
%、酸素量1.2重量%)と各種の希土類元素酸化物粉
末と各種の酸化アルミニウム粉末、酸化珪素粉末を用い
て、所望の組成になるように調合後、成形圧98MPa
で金型成形した。
【0042】次に、この成形体を1.33×103Pa
以下の減圧中800〜1400℃の温度域で加熱後、1
750〜1850℃で窒素雰囲気の下、相対比重99%
以上まで緻密化させた。さらに、2000気圧の加圧下
にて1600℃でHIP(熱間静水圧加圧)処理を施
し、1600〜800℃までの冷却時間を1〜7時間と
して直径3/8インチ及び直径2.4mmの球状セラミ
ックス焼結体および強度測定用試験片を得た。
【0043】次に球状セラミックスの加工性を評価する
ため、岡部製作所製ボール研磨機BOY-400を用
い、直径2.4mm球状セラミック焼結体の加工時間の
比較を行った。加工条件(上定盤、下定盤回転数、上定
盤押し付け圧力、上定盤揺動回転数)はすべて同じ条件
で行い、加工砥粒はGC#120で2.4mm〜2.1
mmまで加工し、GC#2000にて2.1mm〜2.
0mmまで加工し、それぞれの加工時間を測定した。従
来品の加工時間を参考に100時間より長いか短いか
を、加工時間の評価基準とした。
【0044】球状セラミックスの圧砕荷重は、同じ寸法
の2個の球を重ねて圧縮荷重を加えるもので、JIS−
B−1501に準じ、インストロン万能試験機によりク
ロスヘッドスピード5mm/分で測定した。圧砕荷重
は、15kNを越えるか否かを評価の基準とした。
【0045】寿命(転がり疲労試験)はスラスト型軸受
試験機を用いて、SUJ板上で3個のセラミックス製ボ
ールを荷重3920N回転数1200rpmで回転させ
試験した。転がり寿命は、200時間を超えるか否かを
評価の基準とした。
【0046】強度測定は、3×4×35mmの形状に加
工した試験片をJIS R1601に準じた四点曲げ試
験にて行った。またJIS R1607に準じSEPB
法により破壊靭性値を求めた。
【0047】また、Hv10硬度の測定は、サンプル表
面を1μmのダイヤモンドペーストを用いて鏡面研磨し
た後、JIS B7725に準じて測定した。
【0048】粒界相の非晶質化の判断は、焼結体を粉砕
した粉末のX線回折により判断し、さらに同一ロットの
球状セラミックス体を20μmに薄片加工し、偏光顕微
鏡によって非晶質化の確認を行った。
【0049】これらの結果を表1にまとめた。
【0050】
【表1】
【0051】表1から明らかなように、破壊靱性値が4
MPa√m未満、Hv10硬度が15未満かつ室温強度
が800MPa未満であるNo.1、2は、加工時間は
短くなるが、圧砕荷重が15kN未満、且つ転がり寿命
が200時間未満と低いレベルになってしまうので好ま
しくない。また、室温強度が1300MPaと高いN
o.8、Hv10硬度と室温強度が本発明の請求範囲よ
り大きいNo.10、破壊靱性値とHv10硬度が本発
明の請求範囲より大きいNo.11、12は、圧砕強度
および転がり寿命は良好であるが、加工時間が長くなる
ので好ましくない。
【0052】これに対し、破壊靭性値が4.0〜5.4
MPa√mであって、かつHv10硬度が14.0以
上、15.5以下、室温強度が800MPa以上110
0MPa以下である資料3、4、5、6、7、9は加工
時間が短く、かつ圧砕荷重、転がり寿命共に優れてい
た。
【0053】実施例2 実施例1と同様の手法を用い、希土類元素酸化物として
Yb23、Er23、Y23、Lu23を用いて、酸化
珪素:希土類元素酸化物のモル比を1:0.03から
1:3.08に調整した焼結体を作製した。また、比較
例として焼結助剤としてMgO、CaOを用いた焼結体
を作製した。これらの焼結体作製時の焼成温度、HIP
温度、冷却時間は表2に示した。
【0054】得られた焼結体を実施例1と同様な手法に
より評価した。
【0055】磁器の組成は、原子吸光法により各金属成
分を、また別途磁器中の酸素量を定量し、Al、希土類
元素、不可避不純物元素についてはこれらを酸化物換算
して酸素量を差し引き、残りの酸素は全てSiO2とな
っているとみなして、Al2 3、SiO2量を換算し
た。
【0056】磁器を粉砕した粉末のX線回折により検出
した窒化物、炭化物等については、それぞれの金属成分
を窒化物、炭化物等と換算して計算した。これらの評価
結果を表2にまとめた。
【0057】
【表2】
【0058】表2から明らかなように、焼結助剤として
MgO、CaO等のアルカリ土類酸化物を用いたNo.
21は、室温強度が低いため圧砕強度および転がり寿命
が低い値となった。また、酸化珪素:希土類元素酸化物
のモル比が1:0.03であるNo.22は、室温強度
及び破壊靱性値が本発明の請求範囲より小さくなるの
で、加工時間は短くなるものの圧砕荷重および転がり寿
命が低い値になった。また、該モル比が1:2.29で
あるNo.25は、破壊靱性値が6.1と大きくなるた
め、加工時間が100時間を越えてしまう。そして、前
記モル比が1:3.05となるNo.26は、焼結不良
となり特性評価しなかった。
【0059】これに対し、本発明の範囲内であるNo.
23、24、27、28、29は加工時間が短く、かつ
圧砕荷重、転がり寿命が優れていた。
【0060】実施例3 実施例1と同様の手法を用い、酸化アルミニウム:希土
類元素酸化物のモル比が1:6.74から1:0.03
となるように調整した焼結体を作製した。希土類元素酸
化物としては、Y23、Er23、Yb23を用いた。
焼結体作製時の焼成温度、HIP温度、冷却時間は表3
に示した。
【0061】得られた焼結体を実施例1と同様な手法に
より評価した。
【0062】そして、これらの評価結果を表3にまとめ
た。
【0063】
【表3】
【0064】表3から明らかなように、酸化アルミニウ
ム:希土類元素酸化物のモル比が1:1より酸化アルミ
ニウムが多くなるNo.31、33、35は焼結不良と
なった。また、No.32、36、37は、破壊靱性値
および室温強度が本発明の請求範囲以上に大きくなり、
加工時間が長くなってしまった。また、該モル比が1:
0.5より酸化アルミニウムが少なくなるNo.42
は、破壊靱性値とともに室温強度、Hv10硬度が共に
低下し、加工時間は短縮できるものの圧砕荷重および転
がり寿命が悪化してしまう。これに対し、該モル比が本
発明の範囲内である資料34、38〜41は加工時間が
短く、かつ圧砕荷重、転がり寿命が優れていた。さら
に、音響テスト不具合の原因となる5ミクロン以上のボ
イドも無かった。
【0065】実施例 4 実施例1と同様の手法を用いて、ボイドの最大径を0.
6〜8μmの範囲で調整した焼結体を作製した。焼成温
度、HIP温度、冷却時間は表4に示した。
【0066】得られた焼結体を実施例1と同様の手法に
より評価した。これらの評価結果を表4にまとめた。
【0067】
【表4】
【0068】表4から明らかなように、ボイドの最大径
が6〜8μmと大きなNo.53、54は、室温強度が
本発明の請求範囲より低くなり、圧砕荷重および転がり
試験寿命が低い値になった。これに対し、ボイドの最大
径が0.6〜1.0μmと本発明の請求範囲内であるN
o.51、52は、破壊靭性値が4.0〜5.4MPa
√mであって、かつHv10硬度が14.0〜15.5、
室温強度が800〜1100MPaであり、加工時間が
短く、かつ圧砕荷重、転がり寿命に優れていた。
【0069】
【発明の効果】以上詳述した通り、本発明によれば、窒
化珪素質焼結体の破壊靭性値が4.0〜5.4MPa√
m以下であり、かつHv10硬度が14.0〜15.5
であり、かつ室温強度が800〜1100MPaである
ことを特徴とする窒化珪素質焼結体を用いることによ
り、耐磨耗性が良く、長寿命で加工効率の良好な耐摩耗
性部材を提供することができる。

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】破壊靭性値が4.0〜5.4MPa√m以
    下、Hv10硬度が14.0〜15.5であり、室温強
    度が800〜1100MPaであることを特徴とする窒
    化珪素質焼結体。
  2. 【請求項2】窒化珪素を主成分とし、酸化物換算で1〜
    30重量%の希土類元素化合物を含み、酸化物換算した
    酸化ケイ素:希土類元素酸化物のモル比が1:0.05
    〜1:0.5であることを特徴とする請求項1記載の窒
    化珪素質焼結体。
  3. 【請求項3】添加成分としてさらにアルミニウム化合物
    を含み、酸化物換算した酸化アルミニウム:希土類元素
    酸化物のモル比が1:0.05〜1:1であることを特
    徴とする請求項2記載の窒化珪素質焼結体。
  4. 【請求項4】最大ボイド径が5μm以下であることを特
    徴とする請求項1〜3記載の窒化珪素質焼結体。
  5. 【請求項5】窒化珪素と焼結助剤の混合粉末を成形し、
    非酸化性雰囲気中1600℃〜2000℃の温度で焼成
    した後、上記焼結助剤からなる粒界相の融点以上の温度
    でHIP(熱間静水圧プレス)処理を行い、その冷却時
    に1600℃〜800℃の温度域を3時間以内で冷却さ
    せて、粒界相を非晶質化させることを特徴とする窒化珪
    素質焼結体の製造方法。
  6. 【請求項6】請求項1〜4記載の窒化珪素質焼結体から
    なることを特徴とする窒化珪素質耐磨耗性部材。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2003063871A (ja) * 2001-08-27 2003-03-05 Toshiba Corp 電子機器用耐摩耗性部材とそれを用いた電子機器用ベアリング
JPWO2013035302A1 (ja) * 2011-09-05 2015-03-23 株式会社東芝 窒化珪素焼結体とその製造方法、およびそれを用いた耐摩耗性部材とベアリング

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