JP2810922B2 - アルミナージルコニア複合焼結体及びその製造方法 - Google Patents

アルミナージルコニア複合焼結体及びその製造方法

Info

Publication number
JP2810922B2
JP2810922B2 JP62241988A JP24198887A JP2810922B2 JP 2810922 B2 JP2810922 B2 JP 2810922B2 JP 62241988 A JP62241988 A JP 62241988A JP 24198887 A JP24198887 A JP 24198887A JP 2810922 B2 JP2810922 B2 JP 2810922B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
zro
powder
alumina
sintered body
less
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Lifetime
Application number
JP62241988A
Other languages
English (en)
Other versions
JPS6483566A (en
Inventor
茂夫 井上
史博 若井
政和 笹川
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Riken Corp
Original Assignee
Riken Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Riken Corp filed Critical Riken Corp
Priority to JP62241988A priority Critical patent/JP2810922B2/ja
Publication of JPS6483566A publication Critical patent/JPS6483566A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP2810922B2 publication Critical patent/JP2810922B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Lifetime legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Compositions Of Oxide Ceramics (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】 イ.産業上の利用分野 本発明はアルミナ−ジルコニア複合焼結体及びその製
造方法に関する。 ロ.従来技術 摺動部材等の機械構造用部材にファインセラミックス
を適用しようとする際、耐摩耗性、化学的安定性、軽量
性等はその長所であるが、他方、破壊靱性が極めて低い
ことが大きな問題となっている。そのため、セラミック
ス分野の技術者の努力にも拘わらず、機械設計技術者が
ファインセラミックスを機械要素又は摺動部材の材料と
して採用することは非常に希であるのが現状である。 1970年代にオーストラリアのガービー(Garvie)によ
って部分安定化ZrO(PSZ)が発見されて以来、破壊靱
性値(KIC)が7〜8MPa√mというPSZは構造用セラミッ
クスの代表的材料として大きく注目されるようになっ
た。種々の研究がPSZに対してなされ、この高靱性は正
方晶ジルコニアから単斜晶ジルコニアへの相変態の際、
体積膨張によるクラックシールディング効果に起因する
ことが理解された。以来、構造用部材へのPSZの応用も
殆ど同時に開始され構造用部材として特に重要である耐
摩耗試験が行われた。しかし、摩耗試験においては当初
期待されたような結果は得られず非常に低い耐摩耗性し
か示さなかった。調査の結果摩耗試験中摺動面にマイク
ロクラックが発生しそれらがつながることによって表面
剥離が生じ、摩耗が進行することが理解された。このた
め、現在ではPSZは摺勤が問題になるような部材への応
用は殆どなされていない。 表面剥離の理由として、PSZ単相では摺動の際、摺動
面全体に摩擦応力による相変態が生じてしまい、相変態
の際の体積膨張を吸収しきれずマイクロクラックを発生
してしまうことが第一に挙げられる。第2の理由として
PSZの不安定性が考えられている。PSZを200℃から400℃
の大気中に長時間保持する(摺動時に摩擦熱で加熱され
る)か、100℃以上の水蒸気又は水中に長時間保持する
と表面層に相変態が生じマイクロクラックが発生する。
これらは応力以外の要因による相変態であり、これが前
記の応力誘起変態と重なることにより、表面剥離を助長
する結果になったと考えられる。 いずれにしても、PSZ単相のものを摺動部材、耐摩材
に適用することは、上述した理由から問題であり、ZrO
の高靱性を利用したければ、何等かの対策が考えられ
なければならない。 次にセラミックを構造部材に応用する際、加工という
ことが大きな問題である。一般に摺動部材、耐摩部材は
精密部品であるため非常に高い加工精度が要求される。
これに対してセラミックスは高硬度であるため、一般に
はダイヤモンドの砥石やプレードがセラミックスの加工
に用いられなければならないし、また、加工速度も非常
に遅い、加えて靱性が低いため、表面仕上げを良くする
ためには高度の加工技術を要することとなり、これらは
いずれも加工コストの増大へとつながる。このため、た
とえ性能は良くてもコスト面からセラミックス部品が見
送られるという場合は非常に多くみられる。このため、
セラミックス加工費を大きく下げない限り、セラミック
スが実際の製品に適用されるという可能性は非常に少な
いと考えられ、これは非常に大きな問題である。それゆ
え機械加工しない安価な加工法が考えられなければなら
ない。セラミックスを塑性加工できれば、加工費が大幅
に低減されるのであるが、セラミックスは変形が極めて
困難であって、セラミックスを塑性加工することは、こ
れ迄全く考えられていなかった。 ハ.発明の目的 本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであっ
て、機械的強度及び耐スカッフ性に優れ、かつ塑性加工
可能なセラミックス及びその製造方法を提供することを
目的としている。 ニ.発明の構成 本発明の第一の発明は、純度98%以上で平均粒径1.0
μm以下の部分安定化ジルコニア粒子14〜35容積%、ジ
ルコニア以外の焼結助材0.1〜2重量%、残部が純度98
%以上で平均粒径1.0μm以下のアルミナ粒子及び不可
避的不純物からなり、密度が95%以上で前記部分安定化
ジルコニア粒子群が互いに実質的に離れて前記アルミナ
粒子からなる素地中に分散した組織を有し、機械的強度
及び耐スカッフ性に優れ、塑性を有するアルミナ−ジル
コニア複合焼結体に係る。 本発明の第二の発明は、アルミナ−ジルコニア複合焼
結体を製造するに際し、 (a)純度98%以上で平均粒径0.098μm以下の部分
安定化ジルコニア粉末を14〜35容積%、ジルコニア以外
の焼結助材用粉末を0.1〜2重量%、実質的に残部が純
度98%以上で平均粒径0.15μm以下のアルミナ粉末とな
るように配合し、これらの粉末を混合する工程と、 (b)この混合粉を造粒して粒径50〜100μmで略球
形の造粒粉とする工程と、 (c)この造粒粉を成形して成形体とする工程と、 (d)この成形体を1400〜1700℃の温度で密度が95%
以上になるように焼結する工程と を有する、アルミナ−ジルコニア複合焼結体の製造方法
に係る。 ホ.発明の作用効果 第一の発明にあっては、アルミナ粒子からなる素地中
にPSZ粒子を35容積%迄均一に分散させ、而もアルミナ
粒子、PSZ粒子共平均粒経1.0μm以下とすることによ
り、高い強度と靭性と、優れた耐スカッフ性とが付与さ
れ、更に塑性変形が可能となる。 金属材料の超塑性には微細構造超塑性と変態超塑性と
がある。金属材料の通常の変形は結晶粒内での双晶の発
生とこれに続く結晶粒内の原子密度最大の面に沿うすべ
りとによって進行するのに対し、微細構造超塑性による
変形は微細な結晶粒の界面でのすべりによって進行し、
これによって極めて大きな伸びが得られる。本発明に於
ける塑性変形は上記金属材料に於ける微細構造超塑性の
機構と同様な機構によるものである。 以下、本発明の各構成要件についてその作用効果を説
明する。 アルミナ粒子及び部分安定化ジルコニア粒子は、平均
粒径が1.0μmを越えると上記の強度、靱性、耐スカッ
フ性改善の効果が顕著ではなく、塑性変形も困難である
ので、平均粒径を1.0μm以下とする。焼結体の密度は
真密度に近い高密度であることが望ましいことは言う迄
もないが、後述する95%以上の真密度に近い密度まで焼
結でき、しかも焼結後に平均粒径が0.3μm未満となる
ような超微細なアルミナ原料粉やジルコニア原料粉は現
在のところないので、現実には燒結後の平均粒径は0.3
〜1.0μmになる。また、アルミナ粒子が素地を形成し
ているので、第一の発明に係る焼結体は、アルミナが本
来有している高硬度、化学的安定性をその儘有してい
る。また微細結晶粒からなっているので非常に多数の結
晶粒界が硬度を一層高くする作用を有している。 次に靱性について述べる。まず、ジルコニアが部分安
定化ジルコニア(PSZ)であるため、相変態による強靱
化作用によって靱性改善の効果が奏せられる。また、ア
ルミナ粒子、ジルコニア粒子共に1.0μm以下と微細で
あるため、クラック進行の際に抵抗となる結晶粒界が非
常に多く、このことも強靭化に寄与している。 次に、部分安定化ジルコニア粒子の平均粒径及び量に
ついて説明する。 前述したように、PSZのみからなる焼結体では摺動時
にマイクロクラックが発生して耐摩耗性が大きく低下す
る。これは、表面の摩擦応力による応力誘起変態の際の
体積膨張をZrO自身が吸収しきれずに、クラックを発
生してしまうことに起因している。そこで、このクラッ
ク対策として次の2つの事柄が考えられる。 (i)ZrO粒サイズを小さくしてZrO粒の正方晶系
安定性を増す。 (ii)ZrO粒同志の接触がない範囲までにZrO添加
量を抑える。 (i)については次のように説明できる。正方晶
(T)から単斜晶(M)へ半径rのZrO球が相変態す
る際の自由エネルギー△Gは次のように表現される。 △G=4/3πr△Gv+4πrγ……(1) ここで△GvはT→M変態の際に生ずる単位体積当たり
の自由エネルギー変化であり負の値である。γはT→M
変態の際に生ずる単位面積当たりの界面エネルギーの変
化であり正の値である。(1)式よりΔG<0で相変態
が生ずるので、安定性を増す。つまり変態を生じさせな
いための条件はΔG>0である。これを(1)式に通用
すると、 となり、rc=−3γ/ΔGv(ΔGvは負であるのでrcは正
の値)という臨界半径rc以下のrであれば、相変態は起
こらないということになる。多くの実験結果によればrc
は2〜4μmである。然し、本発明にあっては、塑性変
形能を付与するためにPSZ粒子の平均粒径を1.0μm(r
は0.5μm)以下としてPSZの安定化を図っている。 次に(ii)について説明する。これはたとえZrO
が相変態したとしても、変態歪を素地(本発明において
はAl)が吸収してしまいクラック発生までには至
らない。むしろ、表面付近のZrO粒が相変態すること
により表面付近に圧縮応力場を発生して表面強化すると
いうことを狙ったものである。この要求を満たすための
条件はZrO粒サイズがある臨界値以下((i)におけ
る臨界値とは別の臨界値)であり回りをAl素地で
囲まれていることである。まず、Al素地中にZrO
を複合化するとき何Vol%までならばZrO粒の相互接
触が生じないかという問題は正確には非常に難しい問題
である。これは、ZrO粒添加量の他にAl、ZrO
の粒子形状、Al、ZrO粒子サイズの相対比に依
存するからである。ここでは簡単のためにAlとZr
O粒は球形であり、しかもサイズも両者で同じである
とすると第1図のような2次元モデルが通用できるZrO
粒子2がAl粒子1のクラスターからなる素地中
に均一に分散していると仮定すると第1図におけるZrO
粒の面積割合がZrO粒が接触しない上限であると考
えてよい。第1図よりZrOクラスター1個に対してAl
クラスターは3個でありZrOクラスターの全体
に対する体積割合は25Vol%である。同図中、 の領域を1つのユニットセルと考えて良い。この2次元
モデルを積み重ねると3次元にも拡張できるので25Vol
%がZrOクラスターが相互接触を生じない限界であ
る。しかし、実際の焼結体においては、ZrOクラスタ
ーとAlクラスクーの相対大きさが違うし(ZrO
クラスターの方が小さい可能性大)形状も球からずれて
くるので接触を生じないZrOのVol%はもっと大きくな
る。このような理由から本発明においてはZrO添加量
の上限を35Vol%としている。ZrO(PSZ)粒子が35Vol
%を越えると、互いに接触するようになり、相変態によ
ってクラックが発生し、靭性及び耐摩耗性を低下させる
ようになる。 PSZ粒子は、上記の作用のほか、焼結助材としても機
能し、微粒子からなる焼結体の密度を上昇させる作用も
有する。 なお、PSZ粒子の量が14Vol%未満では、前述したPSZ
粒子による強度改善の効果が顕著ではない。 次に、ZrO粒サイズがある臨界値以下で、しかもAl
に囲まれていれば、たとえ相変態が生じたとして
もマイクロクラックが発生しない理由を説明する。第2
図にAlに囲まれたZrO粒が相変態した際の残留
応力状態を示す。このとき、δθθは引張応力であり、
δγγは圧縮応力である。δθθの値は次式によって求
められている。(注.クラックは引張応力部分に発生す
る。) ここでνAl2O3、μAl2O3はAl素地中のポアッソ
ン比及び剛性率、μZrO2はZrO粒の剛性率、εは相
変態による体積歪である。ZrO粒がマイクロクラック
を発生するかしないかは下記(4)式によって判定され
る。半径rのZrO粒が相変態したとき、Al素地
にマイクロクラックが発生しない条件は、 rclust<Rc………(4) である。 ここで、rclustはZrOクラスターの径、RcはZrO
変態して膨張したときにクラックが発生しないZrO
子の半径の臨界値、βはZrO粒子に対する幾何学的定
数、KIC(Al)はAl素地の破壊靱性であ
る。(3)式及び(5)式を(4)式に代入して が得られる。 (6)式より、rclustがRcより小であれば、たとえZr
O粒の相変態が生じてもAl素地にはマイクロラ
ックは発生しない。Rcの値は大体01.0〜2.0μm程度
(直径では2〜4μm程度)であり、本発明におけるよ
うに、ZrO粒半径を0.5μm以下に抑えたものにおいて
は、たとえZrO粒な単斜晶に相変態してもAl
地にマイクロラックが発生することはない。このこと
は、本発明のAl/ZrO系複合材を摺動又は耐摩材
に適用した時、表面の摩擦応力でたとえ相変態したとし
てもアルミナ素地中にはマイクロクラックは発生せず、
従ってZrO単相のときのような耐摩性の低下という現
象は生じないということを意味するものである。 以上のように、ZrO粒径を1.0μm以下に抑え、しか
もZrO添加量を相互接触がないと考えられる35Vol%以
下に限定することにより、ZrO(PSZ)単相のときに問
題となった、マイクロクラックの発生及び合体による表
面剥離からの耐摩性の低下をほぼ完全に解決することが
できる。また、表面付近のZrO粒は長時間の使用によ
り応力以外の要因、例えば摩擦熱、水分等により相変態
することも十分に考えられる。このようなときにもAl
素地中にマイクロクラックは発生しないのであるか
ら本発明によるAl/ZrO複合焼結体は長期使用に
も十分に耐えられるものであると考えることができる。 次に本発明の系の高温における性質について述ベる。
本系は結晶粒径が1.0μm以下であるし、また、酸化物
であることから1500℃近辺において粒界すべりによる超
塑性を示すことが十分に予想できる。超塑性は100%程
度の巨大伸びを生ずること以外に多くの応用的側面を持
っている。その中の1つに精密加工できるということが
ある。具体的には希望する最終形状の型を超塑性加工す
る温度でも塑性変形しない材料で作っておき(例えばSi
C型、タイヤモンド型、サファイヤ型等)この中に本系
の材料を押し込むことにより最終形状品を高い加工精度
で加工するという方法である。型材の当たり面を鏡面に
しておけば超塑性により鏡面を得ることも可能である。
この方法を用いれば、従来技術と問題点の所で述べた機
械加工によるコスト増大という問題は一挙に解決され
る。 最後に、本発明材を常温で機械加工する際の仕上げ加
工精度について説明する。Alは結晶系が六方晶で
あるため、c軸方向とa軸方向との線膨張係数はかなり
違う。このため、焼結温度から室温まで冷却した際この
熱膨張の異方性により結晶粒界には残留応力が発生す
る。この残留応力の大きさはその結晶粒径に比例し、極
端な場合、つまりAl結晶粒が異常に大きい時には
室温に冷却しただけで粒界にクラックが発生する。そこ
で、通常、Al結晶粒はできるだけ小さくするよう
に焼成するのであるが、それでも粒界に残留応力が存在
した状態が通常のAl焼結体である。このようなAl
をダイヤモンド砥石で機械加工する際、切削応力
がこの残留応力に重ね合わされるので、研削、切削にお
けるAlの剥離はAl粒界から生ずることにな
る。このことは、仕上げ粗さがAl結晶粒径よりも
細かくならないということを意味している。ことろが、
本発明材であるAl/ZrO複合焼結体はAl
結晶粒径が1.0μm以下であることから、粒界に存在す
る残留応力は非常に小さいものである。また、たとえ機
械加工時に粒界破壊したとしても、結晶粒自体が非常に
細かいものであるため加工粗さはそう粗くならない。ま
た、ZrO自身は異方性を殆ど持たないため、加工に際
して粒界破壊することは少ない。このように本発明材は
たとえ機械加工されようとも、仕上げ精度が非常に良い
セラミックスであり、本発明が意図する摺動・耐摩材に
要求される高い仕上げ精度を可能にするセラミック材で
あるということができる。 本発明に基づく焼結体には、MgO、TiO、CaO等の焼
結助材が0.1〜2重量%含有される。これらの焼結助材
は、Al又はAl/ZrOの結晶粒界に微量存在
して焼結性を改善し、かつ焼結時の結晶粒成長を抑制す
る。焼結助材が0.1重量%未満では上記の効果が顕著で
はなく、これが2重量%を越えると独立した相を形成す
るようになって、却って焼結助材としての役割を果たさ
なくなるようになる。 以上が本発明における焼結体の特性についての説明で
あるが次に、本発明材が摺動・耐摩部品にいかに適して
いるかについて説明する。 まず、本発明材の応用を意図している摺動・耐摩部品
は機械要素であり、1個1個は非常に安価なものであ
る。このため、セラミックスで摺動・耐摩部品を製造す
るためには何よりも安価に製造できることが大前提であ
る。安価な原料粉を用い、生産性の良い成形を行い、設
備費が安価な焼成炉で焼結し、殆ど機械加工をしないと
いうような方法で生産しない限り量産的であるとはいえ
ない。ところで、本発明材は微細Al、ZrO(PS
Z)原料粉を使用しているが、これらの粉は現在少々高
価である。しかし、量産体別が整えば近い将来十分に安
価になる原料粉である。また、これらを射出成形又はプ
レス成形により成形すれば高い生産性で成形を行うこと
が可能である。また、本発明材は酸化物系複合材である
ので、大気中で焼成することが可能であり、これに塑性
加工を加えれば機械加工しないで或いは僅かな加工で最
終製品まで持ってゆくことができる。このように、本発
明材は安価という観点からは相当高いポテンシャルを持
った材料であり、このことが摺動・耐摩材に適する第一
の理由である。 次に摺動・耐摩部品に要求される特性は耐スカッフ性
及び耐摩耗性である。スカッフィングは焼付きによる摺
動抵抗の急激な増加によって定義されるが、これは表面
平滑度が失われたときに発生するものであり本質的には
摩耗性と同一の性質である。耐摩耗性は材料の硬度及び
靱性により決まる性質であるが、本発明材は高硬度であ
るAlが素地であること、またAl結晶粒が微
細であることから、現在使用されている金属系材料に比
べるとはるかに高硬度であるといえる。更に、微細組織
であることとZrO(PSZ)が含まれていることから靱性
もセラミックス材の中では相当に高いものである。この
高硬度・高靱性から容易にこの材料が耐摩耗性に富むも
のである。また、発明材はZrOがAlの焼結助材
の役割を果たすため、比較的容易に高密度を得ることが
可能でありこのことも耐摩性の高い材料がこの系で達成
できる別の理由である。 次に摺動・耐摩部品に要求される耐熱性については、
本発明材はセラミック材であるので通常の使用温度(10
00℃以下)では問題ないと思われる。次に、化学的安定
性について述べる。前述したように、ZrOは200℃から
400℃の大気中及び水分の影響で相変態する。しかし、
たとえ相変態してもマイクロクラックは発生しないので
あるから化学的安定性は高いといえる。 最後に、摺動・耐摩部品に要求される特性として仕上
げ面精度がある。摺動・耐摩部品は常に他の材料と接触
することによって機能を果たすものであるので、表面仕
上げ精度は特に重要な性質である。ところで、本発明材
は超塑性加工による鏡面加工も可能であるし、機械加工
による精密加工も可能であると考えられるので、この表
面仕上げ精度がいかにきびしくとも、これを達成するこ
とは十分に可能であると考えられる。 以上のように本発明材は摺動・耐摩耗部品に適したセ
ラミック焼結材であり、広汎な応用が期待される。 次に本発明に基づく焼結体の製造方法について特長と
なる原料粉について説明する。 原料粉としてのAl粉末は、ファインセラミック
スの条件である純度98%以上、形状は球形に近いものし
かも粒径が非常に細かいものを使用するのが望ましい。
純度が98%以下であると結晶粒界にガラス相ができ室温
強度の低下及び高温における耐クリープ性の低下を生ず
るからである。また、Al粉粒径は本発明材に対し
て最も重要な要素である、焼成後Al結晶粉が1.0
μm以下を達成するためには原料粉の段階でできるだけ
小さい(比表面積の大きい。)粒径のものを使用するの
が良く、少なくともBET値で10m/g以上であることが望
ましく、100m/g以上のものを使用するのが更に望まし
い。焼結時にAl結晶粒の成長を完全に抑止できれ
ば、平均粒径1.0μm(球としてBET値1m/g)以下の粒
子からなる粉末を使用できるのであるが、焼結時のAl
結晶粒成長を考慮すると、上記のような10m/g以
上(平均粒径0.15μm以下)の粒子からなる粉末を使用
するのが望ましい。また焼結体の密度が95%以上であ
り、しかも平均粒径1.0μm以下の焼結体を得るために
は焼結体の特に良いBET値100m/g以上(平均粒径0.015
μm以下)のものを使用するのが一層望ましい。 ZrO粉末については、Y、MgO、CaO、CeO
で部分安定化した部分安定化ZrO粉を使用すべきであ
る。純度はZrOと安定化材を加えたものが98%以上で
あるのが良い。純度98%未満であると正方晶結晶系の安
定性が失われやすいし、また、焼結時に結晶粒界にガラ
ス相を生ずることになり室温における強度低下、高温に
おける耐クリープ性の低下につながる。ZrO粒子は球
形であるのが良く、粒径もできるだけ小さいものを使用
するのが良い。本発明材の重要なポイントである焼結後
のZrO粒径を1.0μm以下に抑えるためには、上記Al
粉末と同様の理由から、BET値10m/g以上(平均粒
径0.098μm)であるのが望ましく、30m/g以上(平均
粒径0.033μm以下)であるのが更に望ましい。 上記Al粉末及びZrO粉末のほかに、前述した
ように焼結助材を使用する。これらの配合比は第一の発
明に係る焼結体中のこれらの割合と同様である。 本発明に基づくAl/ZrO系複合焼結体は、ZrO
(PSZ)が35Vol%までであり、しかもAl、PSZ
の結晶平均粒径が夫々1.0μm以下であることを特徴と
するものであるが、このような微細2相混合組織を持つ
焼結体が製造可能である背景には非常に細かいAl
、ZrO(PSZ)粉が工業的なレベルで供給可能に
なったことが挙げられる。Al粉については、接触
の担体用として非常に細かい粉を製造する努力が続けら
れているが、このAl粉の結晶系はγタイプのもの
であり、現在では200m/gというものまで製造されてい
る。このような微細Al粉を用いることによって本
発明の実施に困難はない。次に部分安定化ZrO(PSZ)
粉であるが、現在まで安定化材としてY、MgO、C
aO、CeO等を用いた、BET値15〜2Om/gのものが一般
的である。しかし、PSZ粉でしかもBET値40〜70m/gと
いう微細PSZ粉も試作品としては製造されており、この
ような微細PSZ粉を用いることが、本発明のもう一つの
ポイントである。このような微細Al、PSZ粉をボ
ールミル法又はその他の方法で徹底的に混練することに
より均一なAl/ZrO相混合粉を得ることが可能で
ある。 以上のように乾式粉(Al、PSZ粉)を混合す
る方法とは別に共沈法やアルコキシド法のような湿式法
で直接Al/ZrO微細混合粉を合成する方法も現在
精力的に研究が進められており、BET値15〜20m/g程度
のものも得られるようになってきた。この方法の利点は
湿式の段階で混合するので非常に均一な2相混合粉が得
られることにあり、本発明の主旨であるAl素地の
中に微細なZrOクラスターが均一に分散するという要
求に良く合う混合粉の製造法であるということができ
る。 へ.実施例 以下、本発明の実施例を説明する。 最初に、本発明の好ましい実施の態様について説明す
る。 〔原料粉〕 原料粉については前述したので省略する。 〔混合〕 前述した3種類の原料粉を機械的に混合して(例えば
ボールミル法)最終原料粉にする方法以外に湿式法(共
沈法又はアルコキシド法等)により最終原料粉を得る方
法もある。湿式法においては、次のような利点がある。 (1)溶液を出発原料にしているので最終原料粉の純度
が非常に高い。 (2)溶液の状態でAlとZrOの前駆体を混合す
るので非常に均一な混合体ができる。(例えば共沈
法。) (3)溶液からの析出によってAl、ZrO粉が得
られるので非常に細かい原料粉を得ることが可能であ
る。 以上のように、湿式法による合成混合粉は本発明材を
得るための原料粉としては、目的にかなったものであ
り、もし、合成が溶液化学的に可能であれば利用すべき
ものである。 乾式法(3種類の原料粉を機械的に混合する方法)に
於いては、ボールミルによる混合が好適である。 混合機の容器としては、セラミックス原材料の成分の
1種又は2種以上と実質的に同じ成分からなる容器を使
用する。例えば、アルミナ製ポット、ジルコニア製ポッ
ト(部分安定化ジルコニアに対しては部分安定化ジルコ
ニア製ポット)、を使用する。使用するボールもアルミ
ナ、ジルコニアのいずれかを材料とするボールを使用す
る。 混合媒体としては、メチルアルコール、エチルアルコ
ールのほか、蒸留水等無機系の液体が使用できる。 混合時は、1lの容器に対してセラミックス原材料200g、
混練媒体500ml、直径20mmのボール50個を装入する。容
器の容量が変われば、それに応じて上記に比例させれば
よい。 混合時間は10時間以上とする。混合時間が10時間未満
では、アルミナ、ジルコニアの造粒粒子が細かくなら
ず、分散が不十分で均一に分散しなくなる。 混合後の混合粉の乾燥造粒には、電子レンジ又はスプ
レードライヤが使用できる。造粒粉は略球形になるよう
にする。球形から著しく外れた形状の造粒粉を使用する
と成形時に型への充填が不完全(型内の隅々に迄行き渡
らない)になるからである。造粒粉の粒径は50〜100μ
mの範囲とするのが良い。50μm以下でも100μm以上
でも成形性が悪く成形体の密度が低下する。 但し、電子レンジを使用した場合は、再度乾式で混合
して混練媒体を除去する必要がある。然し、後述するよ
うに、焼結時に焼結温度への加熱に先立って、所定の温
度で排気すれば、乾燥をより確実にすることができる。 〔成形〕 成形は、プレス成形、射出成形、スリップキャスト成
形のいずれでも良い。 〔焼結〕 焼結は大気中での常圧焼結で良い。特に高強度が要求
される場合は、焼結後に、熱間静水圧処理(HIP処理)
を施す。 焼結温度への加熱に先立って室温から、粒子の表面拡
散が生じない温度範囲で、原料粉表面に付着している有
機物や水分(特に混練媒体の残留分)を除去するため、
昇温速度を非常に遅くするか又は400℃〜1000℃の温度
範囲に一定時間保持する必要がある。この目的のために
は昇温速度は5℃/min以下とし、また、保持時間は30分
間以上にするのが良い。焼結温度は1400℃〜1700℃の範
囲とする。焼結温度が1400℃以下であると焼結体の密度
が上がらず、これが1750℃を越えると結晶粒の粒大化が
生じ、本発明材の要求を満たさなくなるからである。好
ましくは1450〜1550℃の範囲であり、この範囲であれば
焼結時間を相当長く(5時間以上)しても1.0μmを越
えるような甚だしい結晶粒粗化が起こることはない。密
度95%以上、結晶粒径1.0μm以下になるように結晶温
度時間を設定しなければならない。 焼結終了後は冷却時にクラックが入らないようにゆっ
くりと降温(5℃/分以下)することも重要なことであ
る。 〔塑性加工〕 以上のようにして得られたAl/ZrO複合体焼結
体が塑性加工できるためには次のような条件が必要であ
る。 (1)塑性を示す温度で、歪速度が10−3、10−4/s
ecの時伸びが100%程度であること。 (2)変形引張応力が10MPa程度であること。 (3)塑性加工後、空孔の発生や結晶粒粗大化による
強度低下がないこと。 (4)超塑性押し込み加工する際、加工温度で型材が
塑性変形を生じないこと。 本発明材においては、超塑性加工温度は1400℃〜1600
℃とする。1400℃以下では超塑性の原因である粒界すべ
りが生ぜず、1600℃以上では超塑性加工中に結晶粒の粗
大化を生じてしまい、強度低下を引き起こしてしまう。
歪速度は10−2〜10−4(/sec)とする。10−2/sec以
上では粒界すべりが生じないため超塑性は発現しない。
また、たとえ超塑性が生じても粒界に空孔が生じる。ま
た10−4/sec以下ではあまりに遅く量産的でない。ま
た、超塑性押し込み加工する際の型材はSiC型、ダイヤ
モンド型、サファイヤ型等の超塑性加工温度(1400℃〜
1600℃)で塑性変形しない材料でなければならない。本
発明材が酸化物であることから型材は非酸化物であるこ
とが望ましい。しかし、非酸化物は超塑性加工温度付近
では酸化が著しいのでN又はAr等の非酸化雰囲気で超
塑性加工することも考えられる。特に超塑性加工で鏡面
加工する際は、型材に存在する空孔を消滅させておかな
ければならない。このためには型材をHIP処理すること
が考えられる。また表面にCVDその他の表面処理を施す
ことにより耐摩耗性に優れるSiCの表面相を形成せし
め、表面付近の空孔を消滅させることも一つの手段であ
る。 次に具体的実施例について説明する。 (1)製造例並びに硬度試験及び曲げ試験 純度99%以上、比表面積約200m/g(BET値)(平均
粒径約0.0075μm)のγ型結晶系Al粉と、純度99
%(ZrOと1/2Oを加えた総量として)以上、比表面
積40m/g(平均粒径0.025μm)の正方晶系、部分安定
化ZrO粉とを原料として用いた。更に、ZrOが6.8、1
4.1、20、30Vol%の割合になるように4種類の混合原料
粉200gを配合した。このおのおのに、焼結助材としてMg
Oを全体に対して0.2wt%添加したものを混合原料粉とし
た。 これらを容量2lのアルミナポット中に1000mlのエチル
アルコール、直径20mmのアルミナボール100個と共に装
入して72時間湿式混合を行った。造粒はスプレードライ
ヤーで行い、球状の2次粒子径(凝集粒子径)を50〜10
0μmとした。50gの造粒粉を65mmφの金型に入れ、300k
g/cmのプレス圧で単軸プレスした後ラバーに入れ脱気
を行った。その後4ton/cmのプレス圧でラバープレス
を行い成形品とした。得られた成形体を第3図に示すプ
ログラムで焼成した。なお、焼結温度は1450℃、1500℃
の2水準を用いた。得られた焼結体について、密度、硬
度、破壊、靱性値、3点曲げ強度を測定したものの結果
を下記第1表に示す。同表には、比較のために市販の3m
ol%1/2O−ZrO粉を用いて1450℃で5時間焼成した
焼結体のデータを併記してある。 同表中、は平均値、nは測定回数、δは標準偏差で
ある。硬度及び破壊靱性はビッカースインデンテーショ
ン法によって測定した。荷重は20kgであり、破壊靱性値
KICは次式によって算出した。 KIC=0.203(c/a)−3/2a/H 但し、Hはビッカース硬度、aは圧痕対角線長さ、c
はこの対角線の先端から発生したラディアルクラック長
さである。曲げ試験は支点間距離30mm、クロスヘッド移
動速度0.5mm/min、の3点曲げ試験法によって行い、最
大応力付加面は鏡面仕上げを施した。密度はアルキメデ
ス法によって測定した。 第1表から解るように、14.1Vol%ZrO以上で、1450
℃又は1500℃で24時間という焼結条件で真密度に極めて
近い97.7%以上の高密度が得られていて、硬度も約16.5
GPa以上、破壊靱性も 以上が得られており摺動・耐摩材にとって重要な高硬
度、高靱性が本実施例で達せられたと解せられる。更に
重要なことは、ZrO添加量が増すに従って強度が増加
としていることであり、30Vol%ZrOで実に900MPa近い
曲げ強度が得られている。これは、比較例に示した部分
安定化ZrOと同程度の値であり、ZrO単味のものでは
持ち得ない、高硬度、高強度セラミックス材が本実施例
で得られたことを意味している。 ZrO量と上記各特性植の平均値()との関係をグ
ラフ化して第4図〜第6図に示す。 硬度及び破壊靱性は、ZrO粒子が14Vol%未満になる
と急激に低下し、これが35Vol%を越えると、硬度は漸
減し、破壊靱性は漸増する。曲げ強度は、ZrO粒子の
増加に伴って上昇するが、35Vol%を越えてもその上昇
は顕著ではない。 第7図〜第10図は曲げ試験後の破断面の組織を示す走
査型電子顕微鏡写真である。 第7、8、9、10図のZrO含有量は6.8、14.1、20、
30Vol%である。図中灰色の部分がAl粒子であ
り、白色部分がZrOである。 第7図〜10図において共通しているのはZrOクラス
ターが互いに離れて散在していることであり、本発明で
意図したZrO粒がAl粒に囲まれているという条
件は達成されている。またAl、ZrO粒径も第
7、8図のAl粒も除けば1.0μm以下であり、こ
れも本発明の条件を満たしている。 第7、8図は真密度近傍まで密度を上昇させること
と、(表参照)、Al、ZrO粒径が共に1.0μm以
下であるという2つの条件を同時に満足することができ
なかった例である。(Al粒は1.0μmより少し大
きい。)しかし、ZrO添加量を増加させればこの問題
は解決される。第9、10図に示すようにZrOが、20、3
0Vol%の試料では、本発明に用いられた焼結条件により
真密度に近い値が得られており(表1参照)、しかも、
Al、ZrO粒径は1.0μm以下(第9、10図参照)
である。 第9図及び第10図のように、Al粒子、ZrO
子の粒径を1.0μm以下とし、ZrOクラスターを互いに
実質的に離れるようにして各ZrO粒子がAl粒子
によって囲まれるようにし、かつ高密度とすることによ
り、前述のような高硬度、高靱性を示すものと考えられ
る。 Al平均粒径を0.5〜0.8μm、ZrO平均粒径を
0.5〜0.8μm、ZrOの量を30Vol%に一定にし、焼結助
材としてのMgOの添加量を変化させて前記の曲げ試験を
行った。焼結温度はいずれも1500℃である。試験結果は
第11図に示す通りである。焼結助材の添加量が0.1〜2.0
wt%の範囲で曲げ強度が略一定の高い値を示し、上記の
範囲を外れると曲げ強度が低下している。 (2)高温引張試験 前述したようにZrOが20、30Vol%で1.0μm以下の微
細組織及び優れた機械的性質が得られたので第12図に示
すような引張試験片を作成した後、1500℃で引張試験を
行った。この結果を真歪−真応力に換算した曲線を第13
図及び第14図に示す。歪速度0.2mm/min(3.3×10−3
mm/sec)では両試料で約100%の巨大伸び(真歪では70
%)を示した。また、1mm/min(1.67×10−2mm/se
c)というかなり速い歪速度でも約40%の伸びを示し
た。また、第13図及び第14図から解るように変形応力は
僅か10〜20MPa程度(歪速度が0.2mm/min)であり、非常
に低い応力で変形する超塑性特有の現象が確認された。
超塑性後の試料の曲げ強度は750〜800MPa程度であっ
て、引張試験前のそれに較べて曲げ強度の低下は1割程
度にしか過ぎなかった。 第15図は第14図中、歪速度が0.2mm/minの試料の引張
試験後における破断面の組織を示す走査型電子顕微鏡写
真である。第7図〜第10図では各粒子の表面が平坦であ
って結晶粒内の所定の面に治って破断しているのに対
し、第15図では各粒子は略球形を維持していて結晶粒界
に沿って破断していることが示されており、この材料が
超塑性の機構である粒界すべりによって大きな変形を起
こしていることが裏付けられている。以上のように本実
施例は1500℃で超塑性特有の現象である、巨大伸び、低
い変形応力、変形後の低い強度劣化、粒界破壊がすべて
確認され、発明者の意図した塑性加工の容易な材料であ
るということが確認された。 ZrO粒子の配合量を20Vol%、Al粒子の配合量
を80Vol%とし、焼結助材としてMgOを全体に対して0.2w
t%添加し、アルミナポット中でエチルアルコールを用
い72Hr湿式混合し、スプレードライヤーにより造粒し、
更に300kg/cmで金型成形の後4ton/cmでラバープレ
スしたものを、種々の焼結条件で焼結することによりAl
粒子及びZrO粒子の平均粒径を変化させた焼結
体を得た。得られた焼結体について、1500℃での引張試
験を行った。但し、同一焼結体でのAl粒子とZrO
粒子との平均粒径は同じにしてある。試験条件は前記
と同じにしてある。 Al、ZrOの平均粒径と伸びとの関係は第16図
に示す通りである。平均粒径1.0μm以下では100%前後
の大きな伸びを示すが、平均粒径が1.0μmを越えると
伸びはかなり低下するようになる。 (3)摩擦試験 摩擦試験の装置及び試験条件は次の通りである。 試験装置は第17図及び第17図のXVIII一XVIII線に沿う
矢視側面図である第18図に概要を図解的に示すものであ
って、ステータホルダ11に取外し可能に取付けられた直
径65mm、厚さ20mmの鏡面仕上げを施した円板12の中央に
は、裏側から注油孔13を通じて潤滑油が注油される。ス
テータホルダー11には図示しない油圧装置によって図に
於いて右方へ向けて所定圧力で押圧力Pが作用するよう
にしてある。円板12に相対向してロータ14があり、図示
しない駆動装置によって所定速度で回転するようにして
ある。ロータ14の円板12に対する端面に取付けられた試
験片保持具14aには5×5mmの正方形端面を摺動面として
鏡面仕上げを施した。試験片15が同心円上に等間隔に3
個取外し可能に、かつ円板12に対して摺動自在に取付け
てある。 このような装置に於いて、ステータ11に所定の押圧力
Pをかけ、所定の面圧で円板(相手材)12と試験片15と
が接触するようにしておいて、ロータ14を回転させる。
一定時間毎にステータ11に作用する圧力を階段的に増加
してゆき、ロータ14の回転によって試験片15と相手の円
板12との摩擦によってステータ11に生ずるトルク(摩擦
力によって生ずるトルク)Tをスピンドル16を介してロ
ードセル17に作用せしめ、その変化を動歪計18で読み取
り、記録計19に記録される。トルクTから摩擦係数
(f)が求められる。 試験条件は次に示す通りである。 摩擦速度:8m/sec 潤滑油:コンプレッサー用潤滑油 スニソ5GS'油温80
℃、400cc/min供給 接触圧力:試験開始時20kg/cm、その後3分経過毎に1
0kg/cm2ずつ上昇 相手材円板:過共晶Al/Si合金 なお、摩擦カが5kgを越えると試験機が自動的に停止
するようにしてある。 供試材には下記第2表に示すものを使用した。 但し、実施例は、前述のAl−30Vol%ZrO焼結
体より切り出したものである。 試験結果は第19図に示す通りである。同図から解るよ
うに、実施例では、従来から摺動特性に優れていると言
われているSiC焼結材と同程度の面圧−摩擦係数曲線が
得られていて、230kg/cmのスカッフ発生面圧が得られ
ている。これに対して、他の比較の供試材では、摩擦係
数は、CrNのイオンプレーティング層、Al焼結体
で約0.05と高く、PSZ焼結体でも実施例及びSiC焼結体の
約2倍であり、スカッフ発生面圧は上記の順に70、80、
120kg/cmであった。 従来から酸化物系セラミックスは摺動特性が良好では
ないと言われているが、上記の結果から、本実施例は酸
化物系セラミックスでありながら、SiC焼結体と同程度
の優れた摺動特性を示している。 実施例で述べたAl、ZrO原料粉を用いZrO
合比を10、14、20、30、35、37、72Vol%と変化させた
7種類の混合粉を用意した。なお焼結助材としてMgOを
0.2wt%添加した。これらを成形した後1500℃で焼結し
た。得られた拱試材について、前記と同様の摩擦試験を
行った。 第20図はZrO粒子配合量とスカッフ発生面圧との関
係を示すグラフである。ZrO粒子含有量が14〜35Vol%
の範囲でスカッフ発生面圧は220〜230kg/cmという極
めて高い値を示し、耐スカッフ性が著しく優れているこ
とが解る。 第16図からAl3粒子及びZrO粒子の平均粒径
を1.0μm以下とすることにより、第4図、第5図、第
6図及び第20図からZrO粒子の含有量を14Vol%以上と
することにより、第20図からZrO粒子の配合量を14〜3
5Vol%とすることにより、第11図から焼結助剤としての
MgOの含有量を0.1〜2.0wt%とすることにより、高硬
度、高強度及び高靱性並びに優れた塑性加工性及び耐ス
カッフ性が得られることが理解できる。
【図面の簡単な説明】 図面はいずれも本発明の実施例を示すものであって、 第1図はアルミナ粒子とジルコニア粒子との配列を図解
的に示す模式図、 第2図はジルコニア粒子が相変態したときの残留応力の
状態を図解的に示す模式図、 第3図は焼結のプログラムを示すグラフ、 第4図はジルコニア粒子含有量と焼結体の硬度との関係
を示すグラフ、 第5図はジルコニア粒子含有量と焼結体の破壊靱性との
関係を示すグラフ、 第6図はジルコニア粒子含有量と焼結体の曲げ強度との
関係を示すグラフ、 第7図、第8図、第9図及び第10図は曲げ試験による焼
結体破断面の組織を示す走査型電子顕微鏡によるセラミ
ックス組織写真、 第11図はMgO添加量と焼結体の曲げ強度との関係を示す
グラフ、 第12図は引張試験片の平面図、 第13図及び第14図は高温引張試験に於ける応力−歪線
図、 第15図は高温引張試験による試験片破断面の組織を示す
走査型電子顕微鏡によるセラミックス組織写真、 第16図はアルミナ粒子及びジルコニア粒子の平均粒径と
高温引張試験に於ける伸びとの関係を示すグラフ、 第17図は摩擦試験装置の要部を示す一部破砕正面図、 第18図は第17図のXVIII−XVIII矢視側面図、 第19図は摩擦試験における面圧と摩擦係数との関係を示
すグラフ 第20図はジルコニア粒子含有量とスカッフ発生面圧との
関係を示すグラフ である。 なお、図面に示された符号に於いて、 1……アルミナ粒子 2……ジルコニア粒子 12……相手材円板 15……試験片 である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き 合議体 審判長 松本 悟 審判官 影山 秀一 審判官 関根 恒也 (56)参考文献 特開 昭61−58857(JP,A) 特開 昭60−204666(JP,A) 特開 昭62−52191(JP,A) 特開 昭62−207756(JP,A)

Claims (1)

  1. (57)【特許請求の範囲】 1.純度98%以上で平均粒径1.0μm以下の部分安定化
    ジルコニア粒子14〜35容積%、ジルコニア以外の焼結助
    材0.1〜2重量%、残部が純度98%以上で平均粒径1.0μ
    m以下のアルミナ粒子及び不可避的不純物からなり、密
    度が95%以上で前記部分安定化ジルコニア粒子群が互い
    に実質的に離れて前記アルミナ粒子からなる素地中に分
    散した組織を有し、機械的強度及び耐スカッフ性に優
    れ、塑性を有するアルミナ−ジルコニア複合焼結体。 2.アルミナ−ジルコニア複合焼結体を製造するに際
    し、 (a)純度98%以上で平均粒径0.098μm以下の部分安
    定化ジルコニア粉末を14〜35容積%、ジルコニア以外の
    焼結助材用粉末を0.1〜2重量%、実質的に残部が純度9
    8%以上で平均粒径0.15μm以下のアルミナ粉末となる
    ように配合し、これらの粉末を混合する工程と、 (b)この混合粉を造粒して粒径50〜100μmで略球形
    の造粒粉とする工程と、 (c)この造粒粉を成形して成形体とする工程と、 (d)この成形体を1400〜1700℃の温度で密度が95%以
    上になるように焼結する工程と を有する、アルミナ−ジルコニア複合焼結体の製造方
    法。
JP62241988A 1987-09-25 1987-09-25 アルミナージルコニア複合焼結体及びその製造方法 Expired - Lifetime JP2810922B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP62241988A JP2810922B2 (ja) 1987-09-25 1987-09-25 アルミナージルコニア複合焼結体及びその製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP62241988A JP2810922B2 (ja) 1987-09-25 1987-09-25 アルミナージルコニア複合焼結体及びその製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPS6483566A JPS6483566A (en) 1989-03-29
JP2810922B2 true JP2810922B2 (ja) 1998-10-15

Family

ID=17082578

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP62241988A Expired - Lifetime JP2810922B2 (ja) 1987-09-25 1987-09-25 アルミナージルコニア複合焼結体及びその製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2810922B2 (ja)

Families Citing this family (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH01242462A (ja) * 1988-03-24 1989-09-27 Narumi China Corp 塑性セラミック焼結体及びその製造方法
JP2976226B2 (ja) * 1989-06-08 1999-11-10 工業技術院長 アルミナ・ジルコニア系焼結体の製造法
JPH03112854A (ja) * 1989-09-25 1991-05-14 Osaka Cement Co Ltd 高強度アルミナ―ジルコニア系セラミックスの製造方法
JPH03271159A (ja) * 1990-03-19 1991-12-03 Mitsubishi Materials Corp アルミナ基セラミックス切削工具およびその製造法
JP4883885B2 (ja) * 2004-01-28 2012-02-22 京セラ株式会社 生体部材及びその製造方法並びに人工関節
FR2946337B1 (fr) * 2009-06-03 2011-08-05 Saint Gobain Ct Recherches Produit fritte a base d'alumine et de zircone
DE102010063290A1 (de) * 2009-12-16 2011-06-22 CeramTec GmbH, 73207 Keramischer Verbundwerkstoff, bestehend aus den Hauptbestandteilen Aluminiumoxid und Zirkonoxid und einer dispersoiden Phase
CN114538920B (zh) * 2022-03-17 2023-02-03 浙江金琨西立锆珠有限公司 一种高韧性高硬度锆镧铝复合磨介的制备方法

Family Cites Families (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS60204666A (ja) * 1984-03-28 1985-10-16 アイシン精機株式会社 酸化アルミニウム基セラミツク材料
JPS6158857A (ja) * 1984-08-25 1986-03-26 京セラ株式会社 高強度アルミナ質焼結体
JPS6252191A (ja) * 1985-08-29 1987-03-06 東芝タンガロイ株式会社 セラミツクス焼結体の塑性加工方法
JPS62207756A (ja) * 1986-03-05 1987-09-12 日本軽金属株式会社 磁器質材およびその製造法

Also Published As

Publication number Publication date
JPS6483566A (en) 1989-03-29

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US4279655A (en) Partially stabilized zirconia ceramics
KR910005053B1 (ko) 고-인성 ZrO₂소결체 및 이의 제조방법
JP2001328869A (ja) 耐摩耗性部材およびその製造方法
JPS61197464A (ja) 焼結成形体の製法
JP2003034581A (ja) 窒化けい素製耐摩耗性部材およびその製造方法
JP2810922B2 (ja) アルミナージルコニア複合焼結体及びその製造方法
JPS61111970A (ja) 窒化珪素焼結体及び製造法
JP2507479B2 (ja) SiC−Al▲下2▼O▲下3▼複合焼結体及びその製造法
JP5362758B2 (ja) 耐摩耗性部材
CN111517798A (zh) 一种碳化物基陶瓷材料、制备方法及其应用
JP2507480B2 (ja) SiC−Al▲下2▼O▲下3▼複合焼結体及びその製造法
JPS6291480A (ja) セラミツクスの成形方法
JP4395605B2 (ja) 酸化アルミニウム耐摩耗性部材及びその製造方法
JP2004002067A (ja) 耐摩耗性部材およびその製造方法
Attia et al. Hot Pressed Si 3 N 4 Ceramics Using MgO–Al 2 O 3 as Sintering Additive for Vehicle Engine Parts
US6136738A (en) Silicon nitride sintered body with region varying microstructure and method for manufacture thereof
JP3076682B2 (ja) アルミナ系焼結体及びその製造方法
JPS58156577A (ja) 強度及び耐久性に優れたジルコニア焼結体
US9108885B2 (en) Alumina-based ceramic materials and process for the production thereof
JP2581936B2 (ja) アルミナ質焼結体及びその製造方法
JP2650049B2 (ja) セラミック切削工具及びその製造方法
JP2690571B2 (ja) ジルコニア系切削工具とその製造法
Zayed et al. Liquid phase sintering of nano silicon carbide prepared from egyptian rice husk ash waste
JPH0687650A (ja) アルミナ系焼結体及びその製造方法
JP3359443B2 (ja) アルミナ質焼結体およびその製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
EXPY Cancellation because of completion of term