JP4869171B2 - 窒化けい素製耐摩耗性部材の製造方法 - Google Patents

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本発明は窒化けい素を主成分とする耐摩耗性部材の製造方法に係り、特に1600℃以下の低温度で焼結した場合においても、従来の窒化けい素焼結体と同等以上の緻密さと窒化けい素焼結体本来の機械的強度に加えて、優れた耐摩耗性、特に転がり寿命特性を発揮でき、耐久性に優れた転がり軸受け部材として好適な窒化けい素製耐摩耗製部材の製造方法に関する。
従来の窒化けい素焼結体の焼結組成としては窒化けい素−希土類酸化物−酸化アルミニウム系、窒化けい素−希土類酸化物−酸化アルミニウム−酸化チタニウム系等が知られている。上記焼結組成における希土類酸化物等の焼結助剤は、焼結中にSi−希土類元素−Al−O−N等からなる粒界相(液相)を生成させ、焼結体を緻密化し高強度化するために添加されている。
従来の窒化けい素焼結体は窒化けい素原料粉末に上記のような焼結助剤を添加物として加えて成形し、得られた成形体を焼成炉を使用して1700〜1900℃程度の高温で所定時間焼成する方法で量産されている。
特開平4−260669号公報
しかしながら、上記従来の製造方法においては、焼結温度が1700〜1900℃と極めて高いため、焼成炉およびその付属機器の耐熱仕様を高度化する必要があり、製造設備費が高騰する上に、連続式の製造プロセスを採用することが困難であり、窒化けい素焼結体の製造コストが大幅に上昇するとともに量産性が低下する問題点があった。
また、上記従来方法によって製造された窒化けい素焼結体では、曲げ強度や破壊靭性値、耐摩耗性が向上しているものの充分ではなく、特に優れた摺動特性を必要とする転がり軸受け部材としての耐久性については不十分であり、さらなる改良が要請されている。
近年、精密機器用部材としてのセラミックス材料の需要が増加しており、このような用途においては、高硬度で軽量で耐摩耗性が優れるというセラミックスの特長が、高耐食性と低熱膨張性という性質とともに利用されている。特に、高硬度と耐摩耗性との観点から、軸受などの摺動部を構成する耐摩耗性部材としての用途も急速に拡大している。
しかしながら、軸受などの転動ボールをセラミックス製耐摩耗性部材で構成した場合、転動ボールが高い応力レベルで繰り返し接触しながら転動したときに、耐摩耗性部材の転がり寿命が未だ十分ではなく、短期間の運転により耐摩耗性部材の表面が剥離したり、割れを生じてしまうため、軸受を装着した機器に振動を生じたり、損傷を引き起こす事故が発生し易く、いずれにしても機器構成部品材料としての耐久性および信頼性が低いという問題点があった。
本発明は上記のような課題要請に対処するためになされたものであり、特に1600℃以下の低温度で焼結して製造した場合であっても、従来の窒化けい素焼結体と同等以上の緻密さと窒化けい素焼結体本来の高い機械的強度に加えて、耐摩耗性、とりわけ転がり寿命特性が優れた転がり軸受部材として好適な窒化けい素製耐摩耗性部材の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者は上記目的を達成するため、従来の窒化けい素焼結体を製造する際に、一般的に使用されていた窒化けい素原料粉末の種類、焼結助剤や添加物の種類および添加量、焼成条件を種々変えて、それらの要素が焼結体の特性に及ぼす影響を実験により確認した。
その結果、微細な窒化けい素原料粉末に希土類酸化物、MgAlスピネルまたは酸化マグネシウムと酸化アルミニウムとの混合物,炭化けい素,Ti,Hf,Zr,W,Mo,Ta,Nb,Crから成る群より選択される少なくとも1種を所定量添加した原料混合体を調製したときに、焼結性が大幅に改善され、1600℃以下の低温度で焼結したときに、さらには焼結した後に所定の条件で熱間静水圧プレス(HIP)処理したときに、従来の窒化けい素焼結体と同等以上の緻密性および高い機械的強度に加えて、優れた耐摩耗性、特に転がり寿命特性が優れた転がり軸受部材として好適な窒化けい素製耐摩耗性部材が得られることが判明した。
本発明は上記知見に基づいて完成されたものである。
すなわち、本発明で得られる窒化けい素製耐摩耗性部材は、焼結助剤として希土類元素を酸化物に換算して2〜10質量%,MgAlスピネルを2〜7質量%,炭化けい素を1〜10質量%,Ti,Zr,Hf,W,Mo,Ta,NbおよびCrからなる群より選択される少なくとも1種を酸化物に換算して5質量%以下含有し、気孔率が1%以下であり、3点曲げ強度が900MPa以上であり、破壊靭性値が6.3MPa・m1/2以上である窒化けい素焼結体から成ることを特徴とする。
また上記添加成分としてのMgAlスピネルの代りに、酸化マグネシウムと酸化アルミニウムとの混合物を添加した場合においても、同等の作用効果が得られる。すなわち、本発明で得られる他の窒化けい素製耐摩耗性部材は、焼結助剤として希土類元素を酸化物に換算して2〜10質量%,酸化マグネシウムを1〜2質量%,酸化アルミニウムを2〜5質量%,炭化けい素を1〜10質量%,Ti,Zr,Hf,W,Mo,Ta,NbおよびCrからなる群より選択される少なくとも1種を酸化物に換算して5質量%以下含有し、気孔率が1%以下であり、3点曲げ強度が900MPa以上であり、破壊靭性値が6.3MPa・m1/2以上である窒化けい素焼結体から成ることを特徴とする。
さらに、上記窒化けい素製耐摩耗性部材において、前記窒化けい素焼結体の粒界相に存在する凝集偏析の幅の最大値が5μm以下であることが好ましい。
また、前記窒化けい素焼結体の粒界相に存在する凝集偏析の幅の平均値が2μm以下であることが好ましい。
窒化けい素原料混合体を焼結すると、焼結助剤や添加物成分化合物が液相となって粒界相が形成される。この粒界相における液相成分が凝集偏析して粗大になると焼結体の機械的強度が低下し、特に耐摩耗性部材とした場合に転がり特性が低下してしまう。そのため、粒界相における凝集偏析部の最大幅は5μm以下とすることが好ましく、また凝集偏析部の幅の平均値は2μm以下となるような微細な組織構造を有することが好ましい。
また、上記耐摩耗性部材を構成する窒化けい素焼結体の三点曲げ強度は900MPa以上であり、破壊靭性値は6.3MPa・m1/2以上となる。この窒化けい素焼結体からなる耐摩耗性部材の上面に設定した直径40mmの軌道上に直径が9.35mmである3個のSUJ2製転動鋼球を配置し、この転動鋼球に39.2MPaの荷重を印加した状態で回転数1200rpmの条件下で回転させたときに、上記窒化けい素製耐摩耗性部材の表面が剥離するまでの回転数で定義される転がり寿命が1×10回以上である耐摩耗性部材とすることも可能である。
さらに、上記窒化けい素焼結体の圧砕強度が200MPa以上であり、この窒化けい素焼結体からなる耐摩耗性部材から直径が9.35mmである3個の転動ボールを調製する一方、SUJ2製鋼板の上面に設定した直径40mmの軌道上に上記3個の転動ボールを配置し、この転動ボールに5.9GPaの最大接触応力が作用するように荷重を印加した状態で回転数1200rpmの条件下で回転させたときに、上記窒化けい素焼結体製転動ボールの表面が剥離するまでの時間で定義される転がり疲労寿命が400時間以上である耐摩耗性部材とすることも可能である。
また、本発明に係る耐摩耗性部材の製造方法において、前記窒化けい素焼結体はTi,Hf,Zr,W,Mo,Ta,Nb,Crからなる群より選択される少なくとも1種を酸化物に換算して5質量%以下含有する。
さらに、前記窒化けい素焼結体からなる耐摩耗性部材が、ベアリングボールなどの転がり軸受け部材であるときに、特に優れた摺動特性および耐久性を発揮させることが可能である。
また本発明に係る窒化けい素製耐摩耗性部材の製造方法は、酸素を1.5質量%以下、α相型窒化けい素を90質量%以上含有し、平均粒径が1.0μm以下の窒化けい素粉末に、希土類元素を酸化物に換算して2〜10質量%,MgAlスピネルを2〜7質量%,炭化けい素を1〜7質量%,Ti,Hf,Zr,W,Mo,Ta,Nb,Crからなる群より選択される少なくとも1種を酸化物に換算して5質量%以下添加した原料混合体を120〜200MPaの成形圧力で成形して成形体を調製し、得られた成形体を非酸化性雰囲気中で温度1600℃以下で0.5〜10時間焼結することにより窒化けい素焼結体の粒界相に存在する凝集偏析の幅の最大値5μm以下にし、焼結体の気孔率を1.0%以下にすることを特徴とする。
上記製造方法において、上記添加成分としてのMgAlスピネルの代りに、酸化マグネシウムと酸化アルミニウムとの混合物を添加した場合においても、同等の作用効果が得られる。すなわち、本発明に係る窒化けい素製耐摩耗性部材の他の製造方法は、酸素を1.5質量%以下、α相型窒化けい素を90質量%以上含有し、平均粒径が1.0μm以下の窒化けい素粉末に、希土類元素を酸化物に換算して2〜10質量%,酸化マグネシウムを1〜2質量%,酸化アルミニウムを2〜5質量%,炭化けい素を1〜7質量%,Ti,Hf,Zr,W,Mo,Ta,Nb,Crからなる群より選択される少なくとも1種を酸化物に換算して5質量%以下添加した原料混合体を120〜200MPaの成形圧力で成形して成形体を調製し、得られた成形体を非酸化性雰囲気中で温度1600℃以下で0.5〜10時間焼結することにより窒化けい素焼結体の粒界相に存在する凝集偏析の幅の最大値5μm以下にし、焼結体の気孔率を1.0%以下にすることを特徴とする。
また焼結後、前記窒化けい素焼結体に対し、30MPa以上の非酸化性雰囲気中で1600℃以下の温度で熱間静水圧プレス(HIP)処理を実施することが好ましい。
上記製造方法によれば、耐摩耗性部材を構成する窒化けい素焼結体を調製する際に、希土類元素酸化物,MgAlスピネルまたは酸化マグネシウムと酸化アルミニウムとの混合体,炭化けい素,Ti,Hf,Zr等の化合物を添加しているため、MgAlスピネルが酸化イットリウムなどの希土類酸化物と共に窒化けい素原料粉末と反応して低融点の液相を生成して焼結促進剤として機能し、1600度以下の低温での緻密化を可能とするとともに結晶組織において粒成長を抑止する機能を果し窒化けい素焼結体の組織構造を微細化し機械的強度を向上させる。
また炭化けい素は単独に粒子分散し、窒化けい素焼結体の転がり寿命特性を顕著に改善する一方、Ti,Hf,Zrなどの化合物は希土類酸化物等の焼結促進剤としての機能を促進するとともに、SiCと同様に結晶組織において分散強化の機能を果し、窒化けい素焼結体の機械的強度を向上させる。その結果、窒化けい素結晶組織中に希土類元素等を含む微細な粒界相が形成され、その粒界相中の凝集偏析部の幅の最大値が5μm以下であり、さらには幅の平均値が2μm以下と微細になり、最大気孔径が0.4μm以下であり、気孔率が1.0%以下、三点曲げ強度が室温で900MPa以上であり、破壊靭性値が6.3MPa・m1/2以上であり、圧砕強度が200MPa以上の機械的特性に優れた窒化けい素製耐摩耗性部材が得られる。
本発明方法において使用され、耐摩耗性部材を構成する窒化けい素焼結体の主成分となる窒化けい素粉末としては、焼結性、曲げ強度、破壊靭性値および転がり寿命を考慮して、酸素含有量が1.7質量%以下、好ましくは0.7〜1.5質量%であるα相型窒化けい素を90質量%以上、好ましくは92〜97質量%含有し、平均粒径が1.0μm以下、好ましくは0.4〜0.8μm程度の微細な窒化けい素粉末を使用することが好ましい。
なお、窒化けい素原料粉末としてはα相型のものとβ相型のものとが知られているが、α相型の窒化けい素原料粉末では焼結体とした場合に強度が不足し易い傾向がある一方、β相型の窒化けい素原料粉末では高温度焼成が必要であるが、アスペクト比が高い窒化けい素結晶粒子が複雑に入り組んだ高強度の焼結体が得られる。しかるに、本発明においてはα相型原料粉末を1600℃以下の低温度で焼成して窒化けい素焼結体としているため、α相型とβ相型の窒化けい素結晶粒子が混在する焼結体が得られる。そして、α相型の結晶粒子がβ相型中に少量混在することによって、実質的複合材料的な構成となり焼結体の強度および靭性値が改善されるのである。
本発明方法において、α相型窒化けい素粉末の配合量を90質量%以上の範囲に限定した理由は、90質量%以上の範囲で焼結体の曲げ強度、破壊靭性値および転がり寿命が格段に向上し、窒化けい素の優れた特性が顕著となるためである。一方、焼結性を考慮すると、97質量%までの範囲とする。好ましくは92〜95質量%の範囲とすることが好ましい。
その結果、窒化けい素の出発原料粉末としては、焼結性、曲げ強度、破壊靭性値、転がり寿命を考慮して、酸素含有率が1.7質量%以下,好ましくは0.7〜1.5質量%であり、α相型窒化けい素を90質量%以上含有し、平均粒径が1.0μm以下、好ましくは0.4〜0.8μm程度の微細な窒化けい素粉末を使用することが好ましい。
特に平均粒径が0.7μm以下の微細な原料粉末を使用することにより、少量の焼結助剤であっても気孔率が1.0%以下の緻密な焼結体を形成することが可能である。この焼結体の気孔率はアルキメデス法により容易に計測できる。
また本発明で得られる耐摩耗性部材を構成する窒化けい素焼結体に含有される全酸素量は4.5質量%以下に抑制することが好ましい。この焼結体の全酸素量が4.5質量%を超えると結晶粒界相中の最大気孔径が大きくなり疲労破壊の起点となり易く、耐摩耗性部材の転がり(疲労)寿命が低下する。好ましくは4.0質量%以下とする。
なお、上記のように規定する「焼結体の全酸素量」とは、窒化けい素焼結体を構成している酸素の全量を質量%で示したものである。したがって、酸素が窒化けい素焼結体中に金属酸化物や酸窒化物等として存在している場合は、その金属酸化物(および酸窒化物)量ではなく、その金属酸化物(および酸窒化物)中の酸素量に着目したものである。
さらに本発明で得られる耐摩耗性部材を構成する窒化けい素焼結体の粒界相中の最大気孔径は0.4μm以下とすることが好ましい。この最大気孔径が0.4μmを超えると、特に疲労破壊の起点となり易く、耐摩耗性部材の転がり(疲労)寿命が低下する。好ましくは0.2μm以下とする。
また窒化けい素原料粉末に焼結助剤として添加する希土類元素としては、Y,Ho,Er,Yb,La,Sc,Pr,Ce,Nd,Dy,Sm,Gdなどの酸化物もしくは焼結操作により、これらの酸化物となる物質が単独で、または2種以上の酸化物を組み合せたものを含んでもよい。これらの焼結助剤は、窒化けい素原料粉末と反応して液相を生成し、焼結促進剤として機能する。
上記焼結助剤の添加量は、酸化物換算で原料粉末に対して2〜10質量%の範囲とする。この添加量が2質量%未満の場合は、焼結体の緻密化あるいは高強度化が不十分であり、特に希土類元素がランタノイド系元素のように原子量が大きい元素の場合には、比較的低強度で比較的に低熱伝導率の焼結体が形成される。一方、添加量が10質量%を超える過量となると、過量の粒界相が生成し、気孔の発生量が増加したり、強度が低下し始めるので上記範囲とする。特に同様の理由により3〜8質量%とすることが望ましい。
また、本発明において添加成分として使用するMgAlスピネルは、酸化イットリウム等の希土類酸化物と共に窒化けい素原料粉末と反応して低融点の液相を生成し焼結促進剤として機能し、1600℃以下の低温での焼結体の緻密化を可能にすると共に、結晶組織において粒成長を制御する機能を果し、窒化けい素焼結体の機械的強度を向上させる成分である。また、焼結時にα相型窒化けい素からβ相型窒化けい素へ変化する転移温度を低下させて、低温で緻密化が進行するため焼結後における結晶組織にある程度のα相型窒化けい素相を残存せしめて、焼結体の強度および破壊靭性値を向上させる。
上記MgAlスピネルの代りに酸化マグネシウム(MgO)と酸化アルミニウム(Al)との混合体を使用した場合においても同等な作用効果が得られる。この場合におけるMgOの添加量は、1〜2質量%の範囲とされる。添加量が1質量%未満では焼結体の緻密化が不十分である一方、2質量%を超えるように過量になる場合には焼結体の強度や耐摩耗性部材としての転がり寿命特性が低下する。
また、Alの添加量は、2〜5質量%の範囲とされる。添加量が2質量%未満では焼結体の緻密化が不十分である一方、5質量%を超えるように過量になる場合には焼結体の強度や耐摩耗性部材としての転がり寿命特性が低下する。
また本発明において添加成分として使用する炭化けい素(SiC)は、結晶組織において単独に粒子分散して窒化けい素焼結体の転がり寿命を著しく改善する機能を果するとともに、Si焼結体の曲げ強度および破壊靭性値などの機械的強度を向上させるために1〜10質量%の範囲で添加される。
この炭化けい素の添加量が1質量%未満の場合においては添加効果が不十分である一方、10質量%を超える過量となる場合には焼結体の緻密化が不十分となり焼結体の曲げ強度の低下が起こるため、添加量は1〜10質量%の範囲とされるが、好ましくは3〜7質量%の範囲とする。特に3.5〜6質量%とすることが望ましい。
なお、上記炭化けい素にはα型とβ型とが存在するが、双方とも同一の作用効果を発揮する。
また本発明において他の添加成分として、Ti,Hf,Zr,W,Mo,Ta,Nb,Crを、酸化物,炭化物、窒化物、けい化物、硼化物として5質量%以下の範囲で添加する。これらの化合物は、上記希土類元素の焼結促進剤としての機能を促進すると共に、焼結時にα相型窒化けい素からβ相型窒化けい素へ変化する転移温度をさらに低下させる上に、結晶組織において分散強化の機能を果しSi焼結体の機械的強度を向上させるものであり、特に、Ti,Zr,Hfの化合物が好ましい。これらの化合物の添加量が酸化物換算で0.3質量%未満の場合においては添加効果が不十分である一方、5質量%を超える過量となる場合には焼結体の機械的強度や転がり寿命の低下が起こるため、添加量は5質量%以下の範囲とする。特に0.5〜3質量%とすることが望ましい。
また上記Ti,Zr,Hf等の化合物は窒化けい素セラミックス焼結体を黒色系に着色し不透明性を付与する遮光剤としても機能する。
また焼結体の気孔率は耐摩耗性部材の転がり寿命および曲げ強度に大きく影響するため1.0%以下となるように製造する。気孔率が1.0%を超えると、疲労破壊の起点となる気孔が急増して耐摩耗性部材の転がり寿命が低下するとともに、焼結体の強度低下が起こる。
本発明で得られる耐摩耗性部材を構成する窒化けい素焼結体は、例えば以下のようなプロセスを経て製造される。すなわち前記所定の微細粒径を有し、また酸素含有量が少ない微細な窒化けい素粉末に対して所定量の焼結助剤、MgAlスピネルまたはMgOとAlとの混合体,炭化けい素,有機バインダ等の必要な添加剤およびTi等の化合物を加えて原料混合体を調製し、次に得られた原料混合体を成形して所定形状の成形体を得る。原料混合体の成形法としては、汎用の金型プレス法、ドクターブレード法のようなシート成形法などが適用できる。
上記金型プレス法で成形体を形成する場合において、特に焼結後において気孔が発生し難い粒界相を形成するためには、原料混合体の成形圧力を120MPa以上に設定することが必要である。この成形圧力が120MPa未満である場合には、主として粒界相を構成する成分となる希土類元素化合物が凝集した箇所が形成され易い上に、十分に緻密な成形体となり得ず、クラックの発生が多い焼結体しか得られない。
上記粒界相の凝集した箇所(偏析部)は疲労破壊の起点となり易いため、耐摩耗性部材の寿命耐久性が低下してしまう。一方、成形圧力を200MPaを超えるように過大にした場合、成形型の耐久性が低下してしまうので、必ずしも製造性が良いとは言えない。そのため、上記成形圧力は120〜200MPaの範囲が好ましい。
上記成形操作に引き続いて、成形体を非酸化性雰囲気中で温度600〜800℃、または空気中で温度400〜500℃で1〜2時間加熱して、予め添加していた有機バインダ成分を十分に除去し、脱脂する。
次に脱脂処理された成形体を窒素ガス、水素ガスやアルゴンガスなどの不活性ガスを充填した非酸化性雰囲気中で1600℃以下の温度で0.5〜10時間、常圧焼結または加圧焼結を行う。加圧焼結法としては、雰囲気加圧焼結、ホットプレス、HIP処理など各種の加圧焼結法が用いられる。
また上記焼結後、得られた窒化けい素焼結体に対し、さらに30MPa以上の非酸化性雰囲気中で温度1600℃以下で熱間静水圧プレス(HIP)処理を実施することにより、疲労破壊の起点となる焼結体の気孔の影響をより低減できるため、さらに改善された耐摩耗特性および転がり寿命特性を有する耐摩耗性部材が得られる。
上記製法によって製造された窒化けい素製耐摩耗性部材は全酸素量が4.5質量%以下で気孔率が1.0%以下、最大気孔径が0.4μm以下であり、また三点曲げ強度が常温で900MPa以上と機械的特性にも優れている。
また、圧砕強度が200MPa以上、破壊靭性値が6.3MPa・m1/2以上である窒化けい素製耐摩耗性部材を得ることもできる。
本発明に係る耐摩耗性部材の製造方法によれば、所定量の希土類元素,MgAlスピネルまたは酸化マグネシウムと酸化アルミニウムとの混合物,炭化けい素,Ti,Hf,Zr,等の化合物を添加した原料混合体を調製しているため、焼結性が大幅に改善され、1600℃以下の低温度で焼結した場合においても、従来の窒化けい素焼結体と同等以上の緻密性および高い機械的強度に加えて、優れた耐摩耗性、特に転がり寿命特性が優れた転がり軸受部材として好適な窒化けい素製耐摩耗性部材が得られる。
換言すると、本発明に係る耐摩耗性部材の製造方法では、所定の焼結助剤を用いると共に焼結温度を1600℃以下にすることにより、窒化けい素結晶粒子の粒成長を抑制することができる。粒成長を抑制することができるので、窒化けい素結晶粒子同士により形成される3重点が小さくなり粒界相の幅を小さくすることができるのである。
また、焼結温度を1600℃以下と低くすることにより、焼結時に形成される粒界相の幅を小さくすると共に、粒界相成分(または粒界相中の不純物)が揮発する(またはガスとして系外へ排出される)ことを防止していることから、気孔の発生が抑制されて最大気孔径を極微小化することが可能であり、転がり寿命特性および耐久性が優れた耐摩耗性部材が得られる。そのため、この耐摩耗性部材を転がり軸受部材として使用して軸受部を調製した場合には、長期間に亘って良好な転動特性を維持することが可能であり、動作信頼性および耐久性に優れた回転機器を提供することができる。また、他の用途としては、エンジン部品、各種治工具、各種レール、各種ローラなど耐摩耗性を要求される様々な分野に適用可能である。
本発明に係る耐摩耗性部材の製造方法によれば、所定量の希土類元素,MgAlスピネルまたは酸化マグネシウムと酸化アルミニウムとの混合物,炭化けい素,Ti,Hf,Zr,等の化合物を添加した原料混合体を調製しているため、焼結性が大幅に改善され、1600℃以下の低温度で焼結した場合においても、従来の窒化けい素焼結体と同等以上の緻密性および高い機械的強度に加えて、優れた耐摩耗性、特に転がり寿命特性が優れた転がり軸受部材として好適な窒化けい素製耐摩耗性部材が得られる。
また、気孔の発生が抑制されて最大気孔径を極微小化することが可能であり、転がり寿命特性および耐久性が優れた耐摩耗性部材が得られる。そのため、この耐摩耗性部材を転がり軸受部材として使用して軸受部を調製した場合には、長期間に亘って良好な転動特性を維持することが可能であり、動作信頼性および耐久性に優れた回転機器を提供することができる。
次に本発明の実施形態を以下に示す実施例を参照して具体的に説明する。
[実施例1〜3]
実施例1として、酸素量が1.3質量%であり、α相型窒化けい素97%を含む平均粒径0.55μmのSi(窒化けい素)原料粉末86質量%に、焼結助剤として平均粒径0.9μmのY(酸化イットリウム)粉末を5質量%と、平均粒径0.5μmのMgAlスピネル粉末5質量%と、平均粒径0.8μmのβ相型SiC(炭化けい素)を5質量%と、平均粒径0.6μmのZrO(酸化ジルコニウム)粉末を1質量%を添加し、エチルアルコール中で粉砕媒体として窒化けい素製ボールを用いて96時間湿式混合したのち乾燥して原料混合体を調製した。
次に得られた原料粉末混合体に有機バインダを所定量添加し調合造粒粉としたのち、130MPaの成形圧力でプレス成形し、曲げ強度測定用サンプルとして50mm×50mm×厚さ5mmの成形体と、転がり寿命測定用サンプルとして直径80mm×厚さ6mmの成形体とを多数製作した。次に得られた成形体を450℃の空気気流中において4時間脱脂したのち、0.7MPaの窒素ガス雰囲気中にて温度1550℃で6時間焼結して実施例に係る窒化けい素焼結体製耐摩耗性部材を調製した。
一方、実施例1で得られた焼結体に対して窒素ガス雰囲気中で圧力100MPaにて温度1500℃で1時間加熱する熱間静水圧プレス(HIP)処理を実施することにより、実施例2に係る窒化けい素製耐摩耗性部材を調製した。
また、実施例3として、MgAlスピネル粉末の代替として平均粒径0.5μmのMgO(酸化マグネシウム)粉末を1.5質量%と平均粒径0.8μmのAl(酸化アルミニウム)粉末を3.5質量%とを添加した点以外は実施例2と同一条件で処理することにより実施例3に係る窒化けい素製耐摩耗性部材を調製した。
[比較例1〜4]
比較例1としてSiC粉末を添加しない点以外は実施例1と同一条件で処理することにより比較例1に係る窒化けい素製耐摩耗性部材を調製した。
また、比較例2として比較例1で得られた焼結体を温度1500℃の窒素ガス雰囲気中で100MPaの加圧力を作用させるHIP処理を1時間実施することにより、比較例2に係る窒化けい素製耐摩耗性部材を調製した。
さらに比較例3として、MgAlスピネル粉末に代えて平均粒径0.8μmのAl粉末を5質量%添加した点以外は実施例1と同一条件で処理して比較例3に係る窒化けい素製耐摩耗性部材を調製した。
さらに、比較例4として酸素量が1.7質量%であり、α相型窒化けい素を91%含む平均粒径1.5μmのSi(窒化けい素)原料粉末を使用した点以外は実施例2と同一条件で処理することにより比較例4に係る窒化けい素製耐摩耗性部材を調製した。
こうして得られた各実施例および比較例に係る各窒化けい素製耐摩耗性部材について気孔率、粒界相中の凝集偏析の幅の最大値および平均値、室温での3点曲げ強度、マイクロインデンテーション法における新原方式による破壊靭性値および転がり寿命を測定して表1に示す結果を得た。
なお、焼結体の気孔率はアルキメデス法によって測定する一方、粒界相中の凝集偏析の幅の最大値および平均値は、焼結体の観察断面の中から、単位面積100μm×100μmを任意の3個所選択しSEM等の拡大写真(倍率5000倍程度)により測定し、その中から最も大きな凝集偏析幅を計測した。具体的には結晶粒子間の3重点領域に外接する最小円の直径として測定した。
また、窒化けい素焼結体中の凝集偏析幅の平均値は観察視野の20箇所における偏析幅の平均値として算出した。
なお、SEM等の拡大写真で確認すると、凝集偏析は通常の粒界相より色が濃く映し出される(例えば、白黒写真の場合、窒化けい素結晶粒子が黒色、粒界相が白色に映し出され、凝集偏析では白色が濃く映し出される)ので区別は可能である。また、必要に応じてEPMAにて希土類元素の存在を確認すると希土類元素の濃度が通常の粒界相より色濃く映し出されるので、この方法によっても区別可能である。
また、三点曲げ強度については焼結体から3mm×40mm×厚さ4mmの曲げ試験片を作成し、スパン(支点距離)を30mmとし、荷重の印加速度を0.5mm/minに設定した条件で測定した。
また各耐摩耗性部材の転がり特性は、図1に示すようなスラスト型転がり摩耗試験装置を使用して測定した。この試験装置は、装置本体1内に配置された平板状の耐摩耗性部材2と、この耐摩耗性部材2上面に配置された複数の転動鋼球3と、この転動鋼球3の上部に配置されたガイド板4と、このガイド板4に接続された駆動回転軸5と、上記転動鋼球3の配置間隔を規制する保持器6とを備えて構成される。装置本体1内には、転動部を潤滑するための潤滑油7が充填される。上記転動鋼球3およびガイド板4は、日本工業規格(JIS G 4805)で規定される高炭素クロム軸受鋼(SUJ2)で形成される。上記潤滑油7としては、パラフィン系潤滑油(40℃での粘度:67.2mm2/S)やタービン油が使用される。
本実施例に係る板状の耐摩耗性部材の転がり寿命は、耐摩耗性部材2の上面に設定した直径40mmの軌道上に直径が9.35mmである3個のSUJ2製転動鋼球を配置し、タービン油の油浴潤滑条件下で、この転動鋼球3に439.2MPaの荷重を印加した状態で回転数1200rpmの条件下で回転させたときに、上記窒化けい素製耐摩耗性部材2の表面が剥離するまでの回転数を転がり寿命として測定した。各測定結果を下記表1に示す。
Figure 0004869171
上記表1に示す結果から明らかなように各実施例に係る窒化けい素製耐摩耗性部材においては、所定の添加成分が含有されて形成されているため、気孔の発生が抑制されて最大凝集偏析幅が微小化されており、強度特性が良好であり、転がり寿命および耐久性に優れた窒化けい素製耐摩耗性部材が得られた。また、表1には示されていないが、各実施例に係る耐摩耗性部材の粒界相中における最大気孔径は0.4μm以下であった。
一方、SiC成分を含有しない比較例1においては、液相成分の凝集偏析が大きくなり、強度特性および転がり寿命が低下した。
一方、比較例2のように焼結体にHIP処理を実施しても、SiC成分を含有しない場合は三点曲げ強度は高いが、凝集偏析の低減効果が十分ではなく、転がり寿命が低下した。
また、MgAlスピネル粉末に代えてAl粉末のみを添加した比較例3においては、焼結を十分に実施しても気孔率が大きく、また凝集偏析幅も大きくなるため、強度および転がり寿命が共に低下することが判明した。
さらに酸素含有量が高い窒化けい素粉末を使用した比較例4においては、酸素成分による気孔の発生量が大きく気孔率が大きくなり、凝集偏析幅も増加したため曲げ強度および転がり寿命が低下した。
次に本発明に係る耐摩耗性部材を軸受材の転動ボールに適用した場合について以下の実施例および比較例を参照して具体的に説明する。
実施例1B〜3Bおよび比較例1B〜4B前記実施例1〜3および比較例1〜4において作成した調合造粒粉をそれぞれ金型に充填加圧して球状の予備成形体を調製した。さらに各予備成形体を100MPaの成形圧でラバープレス処理を実施することにより、圧砕強度測定用および転がり寿命測定用サンプルとしての直径11mmの球状成形体をそれぞれ調製した。
次に各球状成形体について、それぞれ対応する実施例または比較例と同一条件で脱脂・焼結し処理して緻密な焼結体を得た。さらに得られた焼結体を研摩加工して直径が9.52mmであり、表面粗さが0.01μmRaであるボール状に形成することにより、それぞれ実施例1B〜3Bおよび比較例1B〜4Bに係る耐摩耗性部材としての軸受用転動ボールを調製した。なお、上記表面粗さは、触針式表面粗さ測定器を使用し、転動ボールの赤道上を測定して求めた中心線平均粗さ(Ra)として測定した。
また上記のようにして調製した各実施例および比較例に係る耐摩耗性部材としての転動ボールについて、気孔率,粒界相中の凝集偏析幅の最大値および平均値,室温での圧砕強度,破壊靭性値および転がり疲労寿命を測定した。
なお、転がり疲労寿命は、図1に示すスラスト型転がり摩耗試験装置を使用して測定した。ここで前記実施例1等においては評価対象が平板状の耐摩耗性部材2であり、この耐摩耗性部材2の表面を転動するボールはSUJ2製転動鋼球3であったが、本実施例1B〜2Bおよび比較例1B〜3Bの窒化けい素製転動ボール8を評価対象とするため、耐摩耗性部材2の代わりにSUJ2製の軸受鋼板9を配置した。
そして各転動ボールの転がり疲労寿命は、上記のように各耐摩耗性部材から直径が9.52mmである3個の転動ボール8を調製する一方、SUJ2製鋼板9の上面に設定した直径40mmの軌道上に上記3個の転動ボール8を配置し、タービン油の油浴潤滑条件下でこの転動ボール8に5.9GPaの最大接触応力が作用するように荷重を印加した状態で回転数1200rpmの条件下で回転させたときに、上記窒化けい素焼結体製転動ボール8の表面が剥離するまでの時間として転がり疲労寿命を測定した。測定結果を下記表2に示す。
Figure 0004869171
上記表2に示す結果から明らかなように各実施例に係る窒化けい素製転動ボールにおいては、所定の添加成分を添加して形成されているため、気孔の発生が抑制されて粒界相の凝集偏析幅が微小化されており、圧砕強度が高く、転がり疲労寿命が400時間を超え耐久性に優れた窒化けい素製転動ボールが得られた。
一方、SiCを含有しない比較例1Bにおいては、気孔の残存が多く、圧砕強度および転がり疲労寿命が低下した。
一方、比較例2Bのように焼結後にHIP処理してもSiCを含有しない場合には、気孔径の縮小化効果はあるが転がり疲労寿命が低下した。
また、Alスピネルに代えてAlのみを含有させた比較例3Bにおいては、焼結を十分に実施しても気孔率が大きくなるため、圧砕強度および転がり疲労寿命が共に低下することが判明した。
さらに酸素含有量が多い原料粉末を使用した比較例4Bにおいては、酸素成分による液相成分および気孔の発生量が多く、気孔率,圧砕強度,破壊靭性値および転がり疲労寿命がいずれも不十分であった。
なお、上記各実施例に係る窒化けい素製転動ボールの転がり疲労寿命を測定する際に、直径9.52mmの転動ボールを3個使用したが、他の直径を選択するとともに配置個数を変えた場合においても、その荷重条件や転動条件に応じた転がり特性が得られることが確認されている。
次に前記実施例以外の組成または処理条件によって調製した板状の耐摩耗性部材について以下の実施例および比較例を参照して具体的に説明する。
[実施例4〜35]
実施例4〜35として実施例1において使用した窒化けい素原料粉末と、Y粉末と、MgAlスピネル粉末と、SiC粉末と、表3〜4に示すように平均粒径0.9〜1.0μmの各種希土類酸化物粉末の他に、平均粒径0.5μmのMgO粉末と、平均粒径1.0μmのAl粉末の他に平均粒径0.4〜0.5μmの各種化合物粉末を表3〜4に示す組成比となるように調合して原料混合体をそれぞれ調製した。
次に得られた各原料混合体を実施例1と同一条件で成形脱脂処理した後、表3〜4に示す条件で焼結を実施し、さらにHIP処理することにより、それぞれ実施例4〜35に係る窒化けい素製耐摩耗性部材を製造した。
[比較例5〜14]
一方比較例5〜14として表3〜4に示すように、Yなどの希土類酸化物,MgAlスピネル,SiC等の各種添加物を過少量に添加したり、または過量に添加して各比較例用の原料混合体をそれぞれ調製した。
次に得られた各原料混合体を実施例4と同一条件で成形脱脂処理した後、表3〜4に示す条件で焼結し、さらにHIP処理することにより、それぞれ比較例5〜14に係る窒化けい素製耐摩耗性部材を製造した。
こうして製造した各実施例および比較例に係る各窒化けい素製耐摩耗性部材について、実施例1と同一条件で気孔率,粒界相中の凝集偏析幅の最大値および平均値、室温での三点曲げ強度、破壊靭性値および円板の転がり寿命を測定して下記表3〜4に示す結果を得た。
Figure 0004869171
Figure 0004869171
上記表3〜4に示す結果から明らかなように、所定量の希土類元素を含み、各種添加物の含有量を規定した原料成形体を焼結し、焼結後に必要に応じてHIP処理を実施して製造された各実施例に係る耐摩耗性部材においては、気孔の発生が抑制されて粒界相の凝集偏析幅が微小化されており、強度特性が良好であり、大部分の転がり寿命が108回を超えており、耐久性に優れた窒化けい素製耐摩耗性部材が得られている。
一方、比較例5〜14で示すように、希土類成分などの各種添加物の添加量を本発明で規定する範囲外とした焼結体では、十分な焼結処理やHIP処理を実施しても、転動ボールの転がり寿命が低く、焼結体の気孔率,凝集偏析幅,三点曲げ強度,破壊靭性値等のいずれかの特性において本発明で規定する特性要件が満たされていないことが確認できる。
次に上記実施例4〜25および比較例5〜14に係る耐摩耗性部材を軸受材の転動ボールに適用した場合について以下の実施例および比較例を参照して具体的に説明する。
[実施例4B〜35Bおよび比較例5B〜14B]
前記実施例4〜35および比較例5〜14において作成した調合造粒粉をそれぞれ金型に充填加圧して球状の予備成形体を調製した。さらに各予備成形体を100MPaの成形圧でラバープレス処理を実施することにより、圧砕強度測定用および転がり寿命測定用サンプルとしての直径11mmの球状成形体をそれぞれ調製した。
次に各球状成形体について、実施例1と同一条件で脱脂処理を行った後に、表5〜6に示す焼結条件およびHIP条件で処理し、さらに得られた焼結体を研摩加工して直径が9.52mmであり、表面粗さが0.01μmRaであるボール状に形成することにより、それぞれ実施例4B〜35Bおよび比較例5B〜14Bに係る耐摩耗性部材としての軸受用転動ボールを調製した。なお、上記表面粗さは、触針式表面粗さ測定器を使用し、転動ボールの赤道上を測定して求めた中心線平均粗さ(Ra)として測定した。
また上記のようにして調製した各実施例および比較例に係る耐摩耗性部材としての転動ボールについて、気孔率,粒界相中の凝集偏析幅,圧砕強度,破壊靭性値および転がり疲労寿命を実施例1Bと同様にして測定した。測定結果を下記表5〜6に示す。
Figure 0004869171
Figure 0004869171
上記表5〜6に示す結果から明らかなように、所定量の希土類元素を含み、MgAlスピネル,SiCなどの各種添加物の含有量を規定した原料成形体を焼結し、必要に応じてHIP処理を実施して製造された各実施例に係る転動ボールにおいては、気孔の発生が抑制されて粒界相中の凝集偏析が微小化されており、圧砕強度特性が良好であり、転がり疲労寿命がいずれも400時間を超えており、耐久性に優れた窒化けい素製転動ボールが得られている。
一方、比較例5B〜14Bで示すように、希土類成分などの各種添加物の添加量が本発明で規定する範囲外とした焼結体では、十分な焼結処理およびHIP処理を実施しても、転動ボールの転がり疲労寿命が低く、焼結体の気孔率,凝集偏析幅,三点曲げ強度等のいずれかの特性において本発明で規定する特性要件が満たされていないことが確認できる。
本発明で得られる耐摩耗性部材の転がり寿命特性を測定するためのスラスト型転がり摩耗試験装置の構成を示す断面図。
符号の説明
1 装置本体
2 耐摩耗性部材
3 転動鋼球
4 ガイド板
5 駆動回転軸
6 保持器
7 潤滑油
8 転動ボール(窒化けい素製)
9 軸受鋼板(SUJ2製)

Claims (10)

  1. 酸素を1.5質量%以下、α相型窒化けい素を90質量%以上含有し、平均粒径が1.0μm以下の窒化けい素粉末に、希土類元素を酸化物に換算して2〜10質量%,MgAlスピネルを2〜7質量%,炭化けい素を1〜7質量%,Ti,Hf,Zr,W,Mo,Ta,Nb,Crからなる群より選択される少なくとも1種を酸化物に換算して5質量%以下添加した原料混合体を120〜200MPaの成形圧力で成形して成形体を調製し、得られた成形体を非酸化性雰囲気中で温度1600℃以下で0.5〜10時間焼結することにより窒化けい素焼結体の粒界相に存在する凝集偏析の幅の最大値5μm以下にし、焼結体の気孔率を1.0%以下にすることを特徴とする窒化けい素製耐摩耗性部材の製造方法。
  2. 酸素を1.5質量%以下、α相型窒化けい素を90質量%以上含有し、平均粒径が1.0μm以下の窒化けい素粉末に、希土類元素を酸化物に換算して2〜10質量%,酸化マグネシウムを1〜2質量%,酸化アルミニウムを2〜5質量%,炭化けい素を1〜7質量%,Ti,Hf,Zr,W,Mo,Ta,Nb,Crからなる群より選択される少なくとも1種を酸化物に換算して5質量%以下添加した原料混合体を120〜200MPaの成形圧力で成形して成形体を調製し、得られた成形体を非酸化性雰囲気中で温度1600℃以下で0.5〜10時間焼結することにより窒化けい素焼結体の粒界相に存在する凝集偏析の幅の最大値5μm以下にし、焼結体の気孔率を1.0%以下にすることを特徴とする窒化けい素製耐摩耗性部材の製造方法。
  3. 焼結後、前記窒化けい素焼結体に対し、30MPa以上の非酸化性雰囲気中で温度1600℃以下で熱間静水圧プレス(HIP)処理を実施することを特徴とする請求項1または2記載の窒化けい素製耐摩耗性部材の製造方法。
  4. 前記窒化けい素焼結体の粒界相に存在する凝集偏析の幅の平均値が2μm以下であることを特徴とする請求項1または2記載の窒化けい素製耐摩耗性部材の製造方法。
  5. 前記Ti,Zr,Hf,W,Mo,Ta,NbおよびCrからなる群より選択される少なくとも1種を酸化物に換算して1〜5質量%含有させることを特徴とする請求項1または2記載の窒化けい素製耐摩耗性部材の製造方法。
  6. 前記炭化けい素を3〜7質量%含有させることを特徴とする請求項1または2記載の窒化けい素製耐摩耗性部材の製造方法。
  7. 前記気孔率が0.01〜0.08%であることを特徴とする請求項1または2記載の窒化けい素製耐摩耗性部材の製造方法。
  8. 前記耐摩耗性部材がベアリングボールであることを特徴とする請求項1または2記載の窒化けい素製耐摩耗性部材の製造方法。
  9. 前記窒化けい素粉末の平均粒径が0.7μm以下とすることを特徴とする請求項1または2記載の耐摩耗性部材の製造方法。
  10. 前記窒化けい素焼結体の全酸素量を4.5質量%以下とすることを特徴とする請求項1または2記載の窒化けい素製耐摩耗性部材の製造方法。
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