JP4950715B2 - 窒化珪素焼結体とそれを用いた摺動部材 - Google Patents

窒化珪素焼結体とそれを用いた摺動部材 Download PDF

Info

Publication number
JP4950715B2
JP4950715B2 JP2007074641A JP2007074641A JP4950715B2 JP 4950715 B2 JP4950715 B2 JP 4950715B2 JP 2007074641 A JP2007074641 A JP 2007074641A JP 2007074641 A JP2007074641 A JP 2007074641A JP 4950715 B2 JP4950715 B2 JP 4950715B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
silicon nitride
sintered body
nitride sintered
ticn
mass
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2007074641A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2008230922A (ja
Inventor
実 高尾
裕 小森田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Toshiba Corp
Toshiba Materials Co Ltd
Original Assignee
Toshiba Corp
Toshiba Materials Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Toshiba Corp, Toshiba Materials Co Ltd filed Critical Toshiba Corp
Priority to JP2007074641A priority Critical patent/JP4950715B2/ja
Publication of JP2008230922A publication Critical patent/JP2008230922A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4950715B2 publication Critical patent/JP4950715B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Description

本発明は窒化珪素焼結体とそれを用いた摺動部材に関する。
摺動部材は、例えば軸受部材、圧延用等の各種ロール材、コンプレッサ用ベーン、ガスタービン翼、カムローラのようなエンジン部品等、各種の分野で使用されている。このような摺動部材に、軽量で高強度のセラミックス材料が適用されるようになってきている。特に、窒化珪素焼結体は機械的強度や耐摩耗性に優れることから、ベアリングボール等の軸受部材への適用が進められている。
窒化珪素焼結体を用いたベアリングボール等の軸受部材に関しては、例えば焼結体組成(焼結助剤の種類や添加量等)の制御、焼結体中での各助剤成分の形態制御、製造工程の制御等に基づいて、機械的強度や転がり寿命に代表される耐摩耗性等を向上させることが検討されている。例えば、特許文献1には平均粒径が0.1μm以下のTiN粒子を含有させることによって、耐摩耗性を向上させた窒化珪素焼結体が記載されている。
さらに、特許文献2にはTi化合物としてTiNおよびTiCNの少なくとも一方を含む窒化珪素焼結体が記載されている。TiNに加えてTiCNを生成することで、窒化珪素焼結体の緻密性等を向上させることができる。すなわち、窒化珪素焼結体の焼結阻害要因となる炭素(C)をチタン(Ti)と反応させてTiCNを生成することによって、窒化珪素焼結体の緻密性をより一層向上させることができる。従って、ボイドのサイズや量を低減した窒化珪素焼結体を提供することが可能となる。
特開2004−002067号公報 特開2006−036554号公報
しかしながら、単にTiCNの生成を促進した場合には、窒化珪素焼結体の耐摩耗性等の摺動特性が低下するおそれがあることが明らかになりつつある。すなわち、本願発明者等のさらなる研究によれば、TiCN自体はTiNに比べて強度や硬度等の機械的特性が劣ることから、TiCNの生成量が多くなりすぎると窒化珪素焼結体の強度や耐摩耗性等が低下するおそれがあることが明らかとなった。
本発明の目的は、ボイドのサイズや量を低減した上で、材料特性としての強度や耐摩耗性等を再現性よく高めることを可能にした窒化珪素焼結体とそれを用いた摺動部材を提供することにある。
本発明の態様に係る窒化珪素焼結体は、Ti化合物を金属Ti換算で0.05質量%以上5質量%以下の範囲で含有する窒化珪素焼結体であって、焼結助剤成分として、1質量%以上6質量%以下の範囲の希土類元素と、0.5質量%以上6質量%以下の範囲のAlとを含有し、前記Ti化合物はTiNとTiCNとを含み、かつ前記窒化珪素焼結体のX線回折測定を実施したとき、前記TiNの最大ピーク強度ITiNに対する前記TiCNの最大ピーク強度ITiCNの比(ITiCN/ITiN)が0.01以上0.2以下、SiNの最大ピーク強度I SiN に対する前記TiCNの最大ピーク強度I TiCN の比(I TiCN /I SiN )が0.01以下であることを特徴としている。
本発明の他の態様に係る摺動部材は、本発明の態様に係る窒化珪素焼結体を具備することを特徴としている。
本発明の態様に係る窒化珪素焼結体は、Ti化合物としてTiNとTiCNを共に含み、その上でTiNに対するTiCNの量を制御している。従って、窒化珪素焼結体中のボイドのサイズや量を低減した上で、窒化珪素焼結体の材料特性としての強度や耐摩耗性等を向上させることができる。すなわち、強度や耐摩耗性、さらにはそれらの再現性に優れた窒化珪素焼結体を提供することが可能となる。
以下、本発明を実施するための形態について説明する。本発明の実施形態による窒化珪素焼結体は、窒化珪素を主成分とすると共に、焼結助剤成分とTi化合物とを含有するものである。焼結助剤成分は少なくとも希土類元素とアルミニウムを含むことが好ましい。希土類元素やアルミニウムは、例えばSi―R―Al―O―N化合物(R:希土類元素)からなる粒界相を形成し、これにより焼結体の緻密化等に寄与する。このように、窒化珪素焼結体は窒化珪素結晶粒子と粒界相とから主として構成されるものである。
焼結助剤成分としての希土類元素は特に限定されるものではないが、イットリウム(Y)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、サマリウム(Sm)、ネオジウム(Nd)、ジスプロシウム(Dy)、エルビウム(Er)等のランタノイド系希土類元素を適用することが好ましい。希土類元素の含有量は1〜6質量%の範囲であることが好ましい。希土類元素の含有量が1質量%未満であると、窒化珪素焼結体を十分に緻密化することができないおそれがある。希土類元素の含有量が6質量%を超えると、窒化珪素焼結体中の粒界相の量が過剰となるため、強度等の機械的特性が低下する。希土類元素は例えば酸化物、窒化物、硼化物、炭化物、珪化物等として添加される。
焼結助剤成分としてのアルミニウムは、希土類元素の焼結促進剤としての機能を助長する役割を果たすものであり、例えば酸化アルミニウムや窒化アルミニウム等として添加される。アルミニウムの含有量は0.5〜6質量%の範囲であることが好ましい。アルミニウムの含有量が0.5質量%未満であると、窒化珪素焼結体の緻密化が不十分となるおそれがある。アルミニウムの含有量が6質量%を超えると粒界相が増加するだけでなく、アルミニウムが窒化珪素結晶粒中に固溶することで熱伝導率等が低下するおそれがある。
窒化珪素焼結体は上記した希土類元素とアルミニウム以外の焼結助剤成分を含んでいてもよい。それらを含めて焼結助剤成分の総含有量は2〜15質量%の範囲とすることが好ましい。焼結助剤成分の総含有量が2質量%未満であると、窒化珪素焼結体を十分に緻密化することができないおそれがある。焼結助剤成分の総含有量が15質量%を超えると、窒化珪素焼結体が本来有する機械的強度や耐摩耗性等の特性が低下するおそれがある。なお、各元素の含有量は窒化珪素焼結体を溶かした後にICPで化学分析して測定する。
窒化珪素焼結体は、さらにジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)、ニオブ(Nb)、およびクロム(Cr)から選ばれる少なくとも1種の金属元素Mを、金属元素の単体または金属元素の化合物として含んでいてもよい。これら金属元素Mの含有量は0.01〜3質量%の範囲とすることが好ましい。金属元素Mは酸化物、炭化物、窒化物、珪化物、硼化物等の化合物(M化合物)として窒化珪素焼結体に添加される。
金属元素Mの化合物(M化合物)は焼結助剤や各種機械的特性の向上剤として機能する。例えば、M化合物を窒化珪素焼結体中に分散させることで分散強化効果を得ることができる。これによって、窒化珪素焼結体の機械的強度や転がり寿命等を向上させることが可能となる。金属元素Mの含有量は0.01〜3質量%の範囲とすることが好ましい。金属元素Mの含有量が3質量%を超えると、逆に機械的強度や転がり寿命等が低下するおそれがある。金属元素Mの含有量の下限値は必ずしも規定されるものではないが、有効な添加効果を得る上で0.01質量%以上とすることが好ましい。
窒化珪素焼結体はTi化合物を含有する。Ti化合物はTiNとTiCNを共に含むものである。TiN粒子やTiCN粒子は主として窒化珪素焼結体の粒界相中に存在し、粒界相の強度の向上、ひいては窒化珪素焼結体の強度や耐摩耗性等の向上に寄与する。特に、窒化珪素焼結体中にTi化合物粒子を存在させることによって、繰り返し応力に対する抵抗力が増大するため、窒化珪素焼結体をベアリングボール等のベアリング部材に適用した際に、優れた摺動特性と耐久性を得ることが可能となる。
これらTi化合物のうち、TiN粒子はそれ自体が強度や硬度等に優れることから、窒化珪素焼結体の耐摩耗性等の摺動特性の向上に大きく寄与する。一方、TiCN粒子は窒化珪素焼結体の焼結阻害要因となる炭素(C)を焼結過程で捕捉し、窒化珪素焼結体の緻密性をより一層向上させる。ただし、TiCN粒子はTiN粒子と比べると強度や硬度等に劣ることから、Ti化合物中のTiCN粒子の比率が高くなりすぎると窒化珪素焼結体の強度や耐摩耗性等の向上効果が不十分となる。
そこで、この実施形態では窒化珪素焼結体のX線回折測定を実施したとき、X線回折チャートにおけるTiNの最大ピーク強度ITiNに対するTiCNの最大ピーク強度ITiCNの比(ITiCN/ITiN)を0.5以下としている。ITiCN/ITiN比を0.5以下に制御することによって、Ti化合物による窒化珪素焼結体の強度や耐摩耗性の向上効果と緻密性の向上効果を共に高めることができる。ITiCN/ITiN比が0.5を超えるということは、Ti化合物中のTiCN粒子の比率が高くなりすぎることを意味する。従って、窒化珪素焼結体の強度や耐摩耗性を再現性よく向上させることができない。
上記したITiCN/ITiN比は0.2以下であることがより好ましい。これによって、窒化珪素焼結体の強度や耐摩耗性をより一層高めることができる。ただし、ITiCN/ITiN比が低くなりすぎると、TiCN粒子による炭素の捕捉効果、およびそれによる窒化珪素焼結体の緻密性の向上効果が不十分となるため、ITiCN/ITiN比は0.01以上とすることが好ましい。
さらに、TiCNの最大ピーク強度ITiCNは窒化珪素の最大ピーク強度ISiNに対する比(ITiCN/ISiN)が0.1以下となるようにすることが好ましい。また、窒化珪素焼結体中のTiNやTiCNからなるTi化合物粒子は、長径が3μm以下の粒子形状を有することが好ましい。これらによって、窒化珪素焼結体の耐摩耗性等をより一層高めることが可能となる。
TiNとTiCNとを含むTi化合物の含有量は、金属Ti換算で0.05〜5質量%の範囲とする。Ti化合物の含有量が金属Ti換算で0.05質量%未満の場合、窒化珪素焼結体の耐摩耗性や緻密性の向上効果を十分に得ることができない。Ti化合物の含有量が金属Ti換算で5質量%を超えると、窒化珪素焼結体の抗折強度や破壊靭性値等が逆に低下してしまう。Ti化合物の含有量は金属Ti換算で0.1〜3質量%の範囲とすることがより好ましい。Tiは金属TiやTi酸化物等の化合物の形態で添加される。
窒化珪素焼結体の結晶構造に関しては、窒化珪素結晶粒子のβ化率が95%以上であることが好ましい。さらに、窒化珪素結晶粒子は短径に対する長径の比(アスペクト比)が2以上である針状粒子を面積比で50%以上含むことが好ましい。このように、窒化珪素焼結体を主として針状の窒化珪素結晶粒子で構成することによって、機械的強度や転がり寿命等を向上させることができる。ただし、針状の窒化珪素結晶粒子が異常成長すると転がり寿命に代表される耐摩耗性が低下するため、針状の窒化珪素結晶粒子の最大長さは40μm以下とすることが好ましい。
この実施形態の窒化珪素焼結体は、例えばビッカース硬さHvが1300〜1600の範囲の硬度、破壊靭性値が6.0MPa・m1/2以上の靭性、3点曲げ強度が700MPa以上の抗折強度を満足するものである。このような特性を有する窒化珪素焼結体によれば、摺動部材の特性を高めることができる。なお、ビッカース硬度はJIS−R−1610で規定された測定法に基づいて、試験荷重198.1Nで試験を行った結果を示すものとする。破壊靭性値はJIS−R−1607で規定されたIF法に基づいて測定し、niiharaの式により算出する。
さらに、TiCNによる炭素の補足効果等に基づいて、窒化珪素焼結体中に存在するボイドの最大径を3μm以下とし、かつ30×30μmの範囲内におけるボイドの面積率を5%以下とすることができる。このように、ボイドのサイズを低下させつつ、ボイドの量(面積率)も低減して、窒化珪素焼結体の緻密性を高めることによって、窒化珪素焼結体の強度や耐摩耗性を再現性よく高めることが可能となる。なお、ボイドの大きさと量は、窒化珪素焼結体の任意の表面もしくは断面に研磨加工、ポリッシュ加工、ラップ加工を施したとき、加工面に残留するピット(ボイドに相当)の大きさおよび面積率を測定することにより求めるものとする。
上述した実施形態の窒化珪素焼結体は、例えば以下のようにして作製される。まず、窒化珪素粉末を用意する。窒化珪素粉末は不純物陽イオン元素の含有量が0.3質量%以下、酸素含有量が1.5質量%以下で、かつα相型窒化珪素を90質量%以上含むことが好ましい。このような窒化珪素粉末に対して、希土類化合物粉末、アルミニウム化合物粉末、Ti化合物粉末(または金属Ti粉末)、さらに必要に応じてM化合物粉末を所定量添加し、さらに有機バインダや分散媒等を加えてよく混合した後、一軸プレス、ラバープレス、CIP等の公知の成形法を適用して所望の形状に成形する。Tiは酸化物粉末の形態で窒化珪素粉末に添加することが好ましい。
次に、上記した成形体に脱脂処理を施した後、1600〜2000℃の範囲の温度で焼成して窒化珪素焼結体を作製する。この焼成(焼結)過程において、まず真空雰囲気下(例えば0.1Pa以下の真空雰囲気)で成形体を熱処理して脱気処理する。脱気処理を施すことで、Tiの反応を促進することができる。次いで、800〜1200℃の範囲内の温度下で窒素ガス等の非酸化性ガスを導入し、その雰囲気下で焼結温度(1600〜2000℃の範囲の温度)まで昇温し、所定時間保持した後に室温まで降温させる。
ここで、Tiの窒化反応は1400℃前後から始まる。窒素ガス等を導入する温度が窒化反応の開始温度を超えると、Tiの反応が急激に進行するためにTiCNの生成量が増大する。窒素ガス等を導入する温度が窒化反応の開始温度に近い場合にも、TiCNの生成量が増大する。このため、窒素ガス等は1200℃以下の温度で導入することが好ましい。これによって、TiCNに比べてTiNの生成量を増加させることができる。ただし、窒素ガス等を導入する温度が低すぎると脱気処理が不十分になるため、窒素ガス等は800℃以上の温度で導入することが好ましい。
焼結工程には、常圧焼結、雰囲気加圧焼結、加圧焼結(ホットプレス)、HIP(ホットアイソスタティックプレス)等の様々な焼結方法が適用可能である。また、常圧焼結後にHIP処理を行う等、複数の方法を組合せてもよい。特に、窒化珪素焼結体をベアリングボールのような軸受部材に適用する場合には、常圧焼結または雰囲気加圧焼結後にHIP処理を行うことが有効である。HIP処理は100〜200MPaの圧力下で1600〜1900℃の温度で所定時間保持することにより行うことが好ましい。これによって、ボイドのサイズや量をより有効に低減することができる。
さらに、焼結工程にHIP処理を適用する場合には、HIP処理後の降温過程において、1450〜1300℃の範囲内の温度下で所定時間保持したり、また1450〜1300℃の温度範囲の降温速度を十分に遅くすることによって、TiNとTiCNの比率を制御することができる。例えば、HIP処理後の降温速度は800℃/h以下とすることが好ましい。これによって、TiCNの生成量を低減することができる。
この実施形態の窒化珪素焼結体は、軸受部材、圧延用等の各種ロール材、コンプレッサ用ベーン、ガスタービン翼、カムローラのようなエンジン部品等の摺動部材に好適である。これらのうちでも、特にベアリングボールのような軸受部材(転動体)に有効である。なお、上述した実施形態の窒化珪素焼結体は、これら以外にヒータカバーや切削工具等としても使用することができる。本発明の実施形態による摺動部材としては、上述した実施形態の窒化珪素焼結体からなるベアリングボール、ローラ、コンプレッサ用ベーン、ガスタービン翼、カムローラ等が挙げられる。
図1は本発明の実施形態によるベアリングボールを適用したベアリングを示している。図1に示すベアリング1は、上述した実施形態の窒化珪素焼結体からなる複数のベアリングボール2と、これらベアリングボール2を支持する内輪3および外輪4とを有している。内輪3と外輪4は回転中心に対して同心状に配置されている。基本構成は通常のベアリングと同様である。内輪3や外輪4はJIS−G−4805で規定されるSUJ2等の軸受鋼で形成することが好ましく、これにより信頼性のある高速回転が得られる。
前述したように、窒化珪素焼結体(摺動部材)からなるベアリングボール2は、転がり寿命等の摺動特性に優れている。従って、ベアリング1を装着した回転軸を高速回転させる場合においても、耐久性や信頼性を維持することが可能となる。このようなベアリング1は回転軸を高速回転させる各種機器、例えばHDDのような磁気記録装置やDVDのような光ディスク装置等の電子機器に好適に用いられる。
次に、本発明の具体的な実施例およびその評価結果について述べる。
(実施例1)
まず、酸素含有量が1.3質量%、平均粒径が0.55μmの窒化珪素粉末を用意した。この窒化珪素粉末に対して、焼結助剤として平均粒径が0.7μmの酸化イットリウム粉末を7質量%、平均粒径が0.5μmの酸化アルミニウム粉末を2質量%、平均粒径が1μmのTiO2粉末を1質量%の割合で添加し、これらをエチルアルコール中で72時間湿式混合した後に乾燥して原料混合粉末を調製した。
次に、上記した原料混合粉末に有機バインダを所定量添加して混合した後、CIP法で成形体を作製した。得られた成形体を空気気流中で脱脂した後、0.1Paの真空雰囲気下で1200℃まで昇温し、この温度で窒素ガスを0.3気圧となるまで導入した。この状態で1750℃まで昇温して雰囲気加圧焼結した。さらに、この焼結体に対して100MPaの圧力下で1700℃×1hの条件でHIP処理を施すことによって、目的とする窒化珪素焼結体を得た。HIP処理後の降温速度は800℃/hとした。
このようにして得た窒化珪素焼結体のビッカース硬さ、破壊靭性値、抗折強度を測定した。その結果、ビッカース硬さは1500Hv、破壊靭性値は7MPa・m1/2であった。抗折強度については100本の3×4×40mmの試料を作製し、これらに3点曲げ試験を実施した。その結果、抗折強度の最小値は800MPa、抗折強度の平均値は1000MPaであった。さらに、100本の試料の抗折強度をワイブルプロットし、抗折強度のワイブル係数を求めた。ワイブル係数は15と良好な値を示した。
また、窒化珪素焼結体のX線回折測定を実施し、TiNの最大ピーク強度ITiN、TiCNの最大ピーク強度ITiCN、窒化珪素の最大ピーク強度ISiNをそれぞれ求めた。それらの値からITiCN/ITiN比とITiCN/ISiN比を算出したところ、ITiCN/ITiN比は0.2、ITiCN/ISiN比は0.01以下であった。
窒化珪素焼結体中のボイドサイズとボイドの面積率を以下のようにして測定した。まず、窒化珪素焼結体の表面2箇所と断面2箇所を任意に選び、各面に対して研磨加工、ポリッシュ加工、ラップ加工を施した。各加工面をSEMで3000倍の視野で観察し、加工面に残留するピットの大きさ(最大値)と面積率を測定し、それらの平均値としてボイドの最大径と面積率を求めた。その結果、ボイドの最大径は1μm、ボイドの面積率は2%であった。また、各面のボイドの面積率からバラツキ(=[最大値−最小値]/[最大値+最小値]×100(%))を求めたところ、20%であった。
次に、同条件で作製した直径2mmの窒化珪素ボール(ベアリングボール)に転がり寿命試験を実施した。ベアリングボールの表面はグレード3で表面研磨した。転がり寿命試験はスラスト型軸受試験機を用いて、100個のベアリングボールを順にSUJ2鋼製の平板上を回転させることにより実施した。転がり寿命は最大接触応力5.9GPa、回転数1200rpmで試験し、ベアリングボールが破壊するまでの時間を測定した。その結果、ベアリングボールの最短寿命時間は300時間であった。
(実施例2〜10)
実施例1と同一の窒化珪素粉末に対して、表1に示す焼結体組成となるように焼結助剤粉末とTi酸化物粉末等を添加した後、実施例1と同様に混合して各原料混合粉末を調製した。これら原料混合粉末に有機バインダを所定量添加して混合した後にCIP法で成形した。得られた各成形体を空気気流中で脱脂し、実施例1と同様な真空雰囲気下で脱気処理した後、表1に示す温度で窒素ガスを導入し、その状態で実施例1と同一温度まで昇温して雰囲気加圧焼結した。さらに、各焼結体に対して実施例1と同一条件でHIP処理を施すことによって、目的とする窒化珪素焼結体をそれぞれ得た。各窒化珪素焼結体の特性を実施例1と同様にして測定した。それらの結果を表2および表3に示す。
(比較例1〜3)
脱気処理後の窒素ガスの導入温度とHIP処理後の降温速度を表1に示す条件に変更する以外は、実施例1と同様にして窒化珪素焼結体を作製した。各窒化珪素焼結体の特性を実施例1と同様にして測定した。それらの結果を表2および表3に示す。
Figure 0004950715
Figure 0004950715
Figure 0004950715
表2および表3から明らかなように、各実施例による窒化珪素焼結体はいずれも緻密性が高く、さらに抗折強度およびその再現性に優れていることが分かる。それらの結果として、実施例による各窒化珪素焼結体を用いたベアリングボールは信頼性および耐久性に優れていることが分かる。さらに、これら各ベアリングボールを用いてそれぞれベアリングを組立て、電子機器用のスピンドルモータに組み込んで実機試験を行ったところ、回転軸の高速回転の耐久性に優れることが実証された。
本発明の実施形態によるベアリングの構成を一部断面で示す図である。
符号の説明
1…ベアリング、2…ベアリングボール、3…内輪、4…外輪。

Claims (6)

  1. Ti化合物を金属Ti換算で0.05質量%以上5質量%以下の範囲で含有する窒化珪素焼結体であって、
    焼結助剤成分として、1質量%以上6質量%以下の範囲の希土類元素と、0.5質量%以上6質量%以下の範囲のAlとを含有し、前記Ti化合物はTiNとTiCNとを含み、かつ前記窒化珪素焼結体のX線回折測定を実施したとき、前記TiNの最大ピーク強度ITiNに対する前記TiCNの最大ピーク強度ITiCNの比(ITiCN/ITiN)が0.01以上0.2以下、SiNの最大ピーク強度I SiN に対する前記TiCNの最大ピーク強度I TiCN の比(I TiCN /I SiN )が0.01以下であることを特徴とする窒化珪素焼結体。
  2. 請求項1記載の窒化珪素焼結体において、
    前記Ti化合物を金属Ti換算で0.1質量%以上3質量%以下の範囲で含有することを特徴とする窒化珪素焼結体。
  3. 請求項1または2記載の窒化珪素焼結体において、
    Hfを単体または化合物として0.01質量%以上3質量%以下の範囲で含有することを特徴とする窒化珪素焼結体。
  4. 請求項1ないし請求項のいずれか1項記載の窒化珪素焼結体において、
    3点曲げ試験における抗折強度が700MPa以上であることを特徴とする窒化珪素焼結体。
  5. 請求項1ないし請求項のいずれか1項記載の窒化珪素焼結体において、
    前記窒化珪素焼結体中に存在するボイドの最大径が3μm以下であり、かつ30×30μmの範囲内における前記ボイドの面積率が5%以下であることを特徴とする窒化珪素焼結体。
  6. 請求項1ないし請求項のいずれか1項記載の窒化珪素焼結体を具備することを特徴とする摺動部材。
JP2007074641A 2007-03-22 2007-03-22 窒化珪素焼結体とそれを用いた摺動部材 Active JP4950715B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2007074641A JP4950715B2 (ja) 2007-03-22 2007-03-22 窒化珪素焼結体とそれを用いた摺動部材

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2007074641A JP4950715B2 (ja) 2007-03-22 2007-03-22 窒化珪素焼結体とそれを用いた摺動部材

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2008230922A JP2008230922A (ja) 2008-10-02
JP4950715B2 true JP4950715B2 (ja) 2012-06-13

Family

ID=39904172

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2007074641A Active JP4950715B2 (ja) 2007-03-22 2007-03-22 窒化珪素焼結体とそれを用いた摺動部材

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP4950715B2 (ja)

Families Citing this family (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP6037218B2 (ja) * 2012-10-05 2016-12-07 日立金属株式会社 窒化珪素質焼結体およびそれを用いた摺動部材

Family Cites Families (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS6117473A (ja) * 1985-05-17 1986-01-25 三菱マテリアル株式会社 切削工具用窒化けい素基焼結材料
JP3107168B2 (ja) * 1991-08-06 2000-11-06 東芝タンガロイ株式会社 工具用被覆窒化ケイ素焼結体
JP2001277010A (ja) * 2000-03-29 2001-10-09 Ngk Spark Plug Co Ltd 被覆工具
JP4693374B2 (ja) * 2004-07-22 2011-06-01 株式会社東芝 窒化けい素焼結体の製造方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2008230922A (ja) 2008-10-02

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5380277B2 (ja) 窒化珪素焼結体とそれを用いた摺動部材
JP6400478B2 (ja) 耐磨耗性部材
JP5732037B2 (ja) 耐摩耗性部材およびその製造方法
JP5886337B2 (ja) 耐摩耗性部材およびそれを用いた耐摩耗性機器
JP5100201B2 (ja) 窒化珪素焼結体とそれを用いた摺動部材
JP5002155B2 (ja) 窒化けい素製耐摩耗性部材およびその製造方法
JP5289053B2 (ja) 摺動部材とそれを用いた軸受
JP4693374B2 (ja) 窒化けい素焼結体の製造方法
JP2011016716A (ja) 窒化けい素焼結体
JP4950715B2 (ja) 窒化珪素焼結体とそれを用いた摺動部材
JP4497787B2 (ja) 転動ボール
JP4820840B2 (ja) 窒化けい素製耐摩耗性部材の製造方法
JP5150064B2 (ja) 耐磨耗性部材の製造方法
JP4869171B2 (ja) 窒化けい素製耐摩耗性部材の製造方法
JP4565954B2 (ja) 導電性窒化ケイ素材料とその製造方法
JP5349525B2 (ja) 転動体
JP5295983B2 (ja) 窒化けい素製耐摩耗性部材の製造方法
JP4939736B2 (ja) 窒化けい素焼結体の製造方法
JP2002068844A (ja) 快削性窒化珪素質焼結体及びその製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20091014

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20110729

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20110809

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20111003

RD02 Notification of acceptance of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7422

Effective date: 20111003

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20111003

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20120214

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20120309

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20150316

Year of fee payment: 3

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 4950715

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150