JP5150064B2 - 耐磨耗性部材の製造方法 - Google Patents

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本発明は、耐磨耗性部材、耐磨耗性機器および耐磨耗性部材の製造方法に係り、特に窒化けい素を主成分とするセラミックス焼結体からなる耐磨耗性部材とそれを用いた耐磨耗性機器および当該耐磨耗性部材の製造方法に関する。
セラミックス焼結体は軽量であり、硬度が高く、耐磨耗性、耐食性に優れ、熱膨張率も低いといった性質を有することから、精密機器用部材として多用されるに至っている。特に、硬度が高く、耐磨耗性に優れるといった観点から、軸受等を構成する耐磨耗性部材として好適に利用されている。特に窒化けい素焼結体はセラミックス焼結体の中でも硬度が高く、耐磨耗性にも優れることから、軸受等を構成する耐磨耗性部材として好適に用いられている。
このような窒化けい素焼結体については、軸受等を構成する耐磨耗性部材としての信頼性を向上させる観点から、さらなる特性の向上が図られている。例えば、窒化けい素原料粉末に焼結助剤として酸化イットリウムと、スピネルと、酸化アルミニウムおよび/または窒化アルミニウムとを特定の金属元素のモル比、含有量で含有させて原料混合粉末とし、この原料混合粉末からなる成形体に対して1400〜1500℃での焼結に引き続き1500〜1650℃での焼結を行い相対密度が98%程度の焼結体を得、さらに10気圧以上の窒素ガス雰囲気中、1400〜1650℃で相対密度が99%以上となるように2次焼結を行うことで、強度に優れ、かつ、強度のバラツキも少ない窒化けい素焼結体を製造することができることが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
また、このような窒化けい素焼結体の製造に用いる窒化けい素原料粉末としては、一般に純度の高いものが好適であることが知られており、例えばイミド熱分解法によって合成された高純度原料粉末が好適に用いられる。しかしながら、このような高純度原料粉末は高価であり、また製造された窒化けい素焼結体の機械的強度や破壊靭性値が高くなりすぎるため加工性が十分でないという課題がある。
このため、例えば金属Siを直接的に窒化する直接窒化法によって製造された安価な窒化けい素原料粉末を用いて窒化けい素焼結体を製造することが検討されている。直接窒化法によって製造される窒化けい素原料粉末はFeやCaの含有量が比較的多いものの、例えば希土類元素、アルミニウム成分および炭化けい素等の含有量を所定の範囲内とすることで、従来と同等以上の機械的強度、耐磨耗性、転がり寿命特性とすることができ、加工性にも優れたものとできることが知られている(例えば、特許文献2参照。)。
特開平06−080470号公報(実施例等) WO 2005/030674号公報
上記したように、窒化けい素原料粉末を含む原料混合粉末からなる成形体に対して焼結を行うことにより相対密度が98%程度の焼結体を得た後、さらに10気圧以上の窒素ガス雰囲気中で相対密度が99%以上となるように2次焼結を行うことで、強度に優れ、かつ、強度のバラツキも少ない窒化けい素焼結体を製造することができるようになっている。しかしながら、このように1次焼結で相対密度を98%程度とするためには製造工程を厳密に管理しなければならず、窒化けい素焼結体の製造コストが上昇するという課題がある。
また、上記したように、直接窒化法によって製造される窒化けい素原料粉末は比較的安価であり、また希土類元素、アルミニウム成分および炭化けい素等の含有量を所定の範囲内に調整することで、機械的強度、耐磨耗性、転がり寿命特性等に優れ、また加工性にも優れた窒化けい素焼結体を製造できるようになっている。
しかしながら、このようにして製造される窒化けい素焼結体については個々のものに特性のバラツキがあり、耐磨耗性部材としてより厳しい条件下で使用した場合に、必ずしも特性が十分でないものがあるという課題がある。また、このように特性のバラツキがあることから、耐磨耗性部材を製造する際の加工等のときに損傷するものがあり、製造時の歩留まりに優れないという課題がある。
本発明は上記したような課題に対処するためになされたものであって、安価に製造することができ、特性のバラツキも抑制された窒化けい素焼結体からなる耐磨耗性部材を提供することを目的としている。また、本発明はこのような耐磨耗性部材を用いた耐磨耗性機器およびこのような耐磨耗性部材の製造方法を提供することを目的としている。
本発明の耐磨耗性部材の製造方法は、窒化けい素を主成分とするセラミックス焼結体からなる耐磨耗性部材の製造方法であって、窒化けい素原料粉末および焼結助剤粉末を含有し、Fe成分の含有量が10ppm以上3500ppm以下かつCa成分の含有量が10ppm以上1000ppm以下である原料混合粉末を成形して成形体とした後、前記成形体を相対密度が80%以上95%以下となるように1775℃以上1825℃以下の温度で2時間以上8時間以下の1次焼結を行い、さらに相対密度が98%以上となるように1600℃以上1800℃以下の温度かつ70MPa以上の加圧力で0.5時間以上2時間以下の2次焼結を熱間静水圧プレス(HIP)により行って耐摩耗性部材を製造する工程を有する。前記窒化けい素原料粉末および前記焼結助剤粉末の平均粒径は0.3〜1.5μmである。前記窒化けい素原料粉末は、金属窒化法により製造されたものである。前記焼結助剤粉末は、希土類元素を原料混合粉末の全体に対して酸化物換算で2質量%以上5質量%以下、アルミニウム成分を原料混合粉末の全体に対して酸化物換算で2質量%以上6質量%以下、Ti、Hf、Zr、W、Mo、Ta、Nb、Crの酸化物、炭化物、窒化物、珪化物、硼化物から成る群から選択される少なくとも1種の化合物を原料混合粉末の全体に対して0.3質量%以上3質量%以下含む。前記工程は、製造される耐摩耗性部材の窒化けい素結晶粒子の長径が40μm以下かつ平均アスペクト比が2以上、さらに製造される複数の耐摩耗性部材の中から任意の10個についてビッカース硬度および破壊靭性値を測定したとき、ビッカース硬度および破壊靭性値の平均値に対して最遠値のバラツキが±10%以内となるように行う。
前記耐磨耗性部材は例えば略板状の耐磨耗性部材であり、前記略板状の耐磨耗性部材の上面に設けた直径40mmの軌道上に直径が9.35mmである3個のSUJ2製転動球を配置し、この転動球に5.9GPaの最大接触応力が作用するように荷重を印加した状態で回転数1200rpmの条件下で回転させたときに、前記略板状の耐磨耗性部材の表面が剥離するまでの回転数で定義される転がり寿命が2×10回以上であることが好ましい。
また、前記耐磨耗性部材は例えば球状であり、直径が3mm以上であることが好ましい。さらに、前記耐磨耗性部材は直径9.35mmの球状であり、SUJ2製鋼板の上面に設定された直径40mmの軌道上に前記球状の耐磨耗性部材を3個配置し、この球状の耐磨耗性部材に5.9GPaの最大接触応力が作用するように荷重を印加した状態で回転数1200rpmの条件下で回転させたときに、前記球状の耐磨耗性部材の表面が剥離するまでの時間で定義される転がり寿命が700時間以上であることが好ましい。
本発明によれば、窒化けい素を主成分とするセラミックス焼結体からなる耐磨耗性部材において、Fe成分の含有量が10ppm以上3500ppm以下かつCa成分の含有量が10ppm以上1000ppm以下であって、硬度および破壊靱性値のバラツキが±10%以内に抑制された、安価かつ信頼性に優れた耐磨耗性部材を提供することができる。また、本発明によれば、このような耐磨耗性部材を用いて耐磨耗性機器を構成することで、安価かつ信頼性に優れた耐磨耗性機器を提供することができる。
さらに、本発明によれば、窒化けい素原料粉末および焼結助剤粉末を含有し、Fe成分の含有量が10ppm以上3500ppm以下かつCa成分の含有量が10ppm以上、1000ppm以下である原料混合粉末を成形して成形体とした後、前記成形体を相対密度が80%以上95%以下となるように1次焼結し、さらに相対密度が98%以上となるように2次焼結することで、Fe成分の含有量が10ppm以上3500ppm以下かつCa成分の含有量が10ppm以上1000ppm以下であって、硬度および破壊靱性値のバラツキが±10%以内に抑制された耐磨耗性部材を容易に製造することができる。
以下、本発明の耐磨耗性部材について説明する。
本発明の耐磨耗性部材は、窒化けい素を主成分とするセラミックス焼結体からなる耐磨耗性部材であって、Fe成分の含有量が10ppm以上3500ppm以下かつCa成分の含有量が10ppm以上1000ppm以下であって、硬度および破壊靱性値のバラツキが±10%以内であることを特徴とするものである。
耐磨耗性部材におけるFe成分またはCa成分の含有量が上記範囲を超える場合、破壊の起点となる脆弱な凝集部が発生し、硬度や破壊靱性値等の特性が低下しやすくなる。このため、耐磨耗性部材を製造するための表面加工時や、耐磨耗性部材としての実際の使用時に剥離や割れ等が発生しやすくなる。一方、Fe成分またはCa成分の含有量が上記範囲未満の場合には、耐磨耗性部材を製造するための窒化けい素原料粉末として高純度のものを使用しなければならず、原料コストが高くなり経済的に不利となる。
すなわち、本発明では不純物であるFe成分やCa成分の含有量を上記範囲内とすることで、例えば金属Siを直接的に窒化する直接窒化法によって製造されるFe成分やCa成分等の不純物含有量が比較的多い窒化けい素原料粉末を使用することができ、耐磨耗性部材の製造コストを低減することができる。
また、本発明では、不純物であるFe成分やCa成分の含有量が多いにも関わらず、硬度および破壊靱性値のバラツキが±10%以内に抑制されているため、長期間に亘って使用した場合においても剥離や割れが発生するものが少なく信頼性に優れたものとすることができる。また、本発明の耐摩耗性部材は、ビッカース硬度1380以上、破壊靱性5.5MPa・m1/2以上と優れた特性を有するものである。本発明では、このような高硬度または/および高破壊靱性の耐摩耗性部材においても、各特性のバラツキを抑制することができる。さらに本発明では、ビッカース硬度1430以上、破壊靱性6.0MPa・m1/2以上としたとしても、各特性のバラツキを抑制することができる。
なお、硬度あるいは破壊靱性値のバラツキは、以下のようにして算出されるものである。まず、原料組成、製造条件等を同様として製造された複数の耐磨耗性部材について、硬度あるいは破壊靱性値を測定して平均値を算出する。また、複数の測定値の中で上記平均値から数値的に最も遠いもの(離れているもの)を「最遠値」とする。そして、求めた平均値、最遠値を以下の式に代入してバラツキを算出する。
バラツキ[%]=((平均値−最遠値)/平均値)×100
なお、平均値を算出するための測定は、通常、原料組成、製造条件等を同様として製造された複数の耐磨耗性部材の中から選ばれる任意の10個について行えばよい。また、硬度はJIS−R−1610に準じた方法により測定されるビッカース硬度であり、破壊靱性値はJIS−R−1607に記載されたIF法に準じて測定されるものである。
本発明の耐磨耗性部材における窒化けい素結晶粒子は長径が40μm以下であることが好ましい。言い換えれば、耐磨耗性部材中に長径が40μmを超える窒化けい素結晶粒子が存在していないことが好ましい。耐磨耗性部材中に長径が40μmを超えるような粗大な窒化けい素結晶粒子が存在する場合、この粗大な窒化けい素結晶粒子が破壊の起点として作用するために破壊靭性が大きく低下し、機械的強度も低下するため好ましくない。
なお、窒化けい素結晶粒子の長径は、耐磨耗性部材を切断し、鏡面加工した面をエッチングし粒界成分を除去した面の任意の部分における単位面積(100μm×100μm)を走査型電子顕微鏡(SEM)により写真撮影(倍率5000倍以上)し、当該写真上において観察される窒化けい素結晶粒子の長径である。従って、本発明では、当該写真上において長径が40μmを超えるような窒化けい素結晶粒子が観察されなければよい。
また、本発明の耐磨耗性部材は、窒化けい素結晶粒子のアスペクト比の平均である平均アスペクト比が2以上であることが好ましい。この平均アスペクト比が2未満である場合、耐磨耗性部材の微細構造が窒化けい素結晶粒子が複雑に入り組んだ構造とならないため、耐磨耗性部材の機械的強度等が不足しやすくなる。
なお、窒化けい素結晶粒子のアスペクト比(=長径/短径)は、上記したことと同様に、耐磨耗性部材の切断し、鏡面加工した面をエッチングし粒界成分を除去した面を走査型電子顕微鏡により写真撮影し、当該写真上において観察される窒化けい素結晶粒子の長径と短径とから得られるものである。また、平均アスペクト比は、当該写真上の単位面積(100μm×100μm)における全ての窒化けい素結晶粒子について上記したようにしてアスペクト比を求め、それらを平均して得られるものである。
本発明の耐磨耗性部材は、その形状が略板状であるが、試験面表面は鏡面に研磨加工を施し、この略板状の耐磨耗性部材の上面に設けた直径40mmの軌道上に直径が9.35mmである3個のグレード5以上の表面状態であるSUJ2製転動球を配置し、この転動球に5.9GPaの最大接触応力が作用するように荷重を印加した状態で回転数1200rpmの条件下で回転させたときに、この略板状の耐磨耗性部材の表面が剥離するまでの回転数で定義される転がり寿命が2×10回以上であることが好ましい。本発明の耐磨耗部材は、例えば転がり寿命が上記したように2×10回以上となるものであり、従来よりも長い転がり寿命を有するものである。
本発明の耐磨耗性部材は、上記したように板状のものとして用いられる他に、例えば軸受に用いられる転動球(ベアリングボール)のように球状のものとして用いられる。本発明の耐磨耗性部材を転動球として用いる場合、必ずしも限定されるものではないが、例えば直径3mm以上のものとして好適に用いられる。また、直径10mm以上、さらには20mm以上とすれば、従来の製造法による耐磨耗性部材に比べて転がり寿命等の特性を顕著に向上させることができる。また、比較的直径の大きなものとすることで、従来のイミド熱分解法によって合成される高価な窒化けい素原料粉末を用いて製造されたものと比べ、価格の違いがより顕著となる。
本発明の耐磨耗性部材は直径9.35mmの球状とし、試験面表面は鏡面に研磨加工を施したSUJ2製鋼板の上面に設定された直径40mmの軌道上にグレード5以上の表面状態である球状の耐磨耗性部材を3個配置し、この球状の耐磨耗性部材に5.9GPaの最大接触応力が作用するように荷重を印加した状態で回転数1200rpmの条件下で回転させたときに、この球状の耐磨耗性部材の表面が剥離するまでの時間で定義される転がり寿命が700時間以上となることが好ましい。本発明の耐磨耗部材は、例えば転がり寿命が上記したように700時間以上となるものであり、従来よりも長い転がり寿命を有するものである。
このような本発明の耐磨耗性部材は、軸受を構成する転動球等の他、例えば切削工具、圧延治具、弁のチェックボール、エンジン部品、各種治工具、各種レール、各種ローラ等、耐磨耗性を要求される様々なものとして用いることができる。
本発明の耐磨耗性機器は、上記したような耐磨耗性部材を有するものであり、特に上記したような耐磨耗性部材を複数個具備するものである。本発明の耐磨耗性機器は、具体的には例えば耐磨耗性部材を転動球として用いた軸受あるいはこのような軸受を具備する機器である。このような耐磨耗性機器においては、耐磨耗性部材の硬度および破壊靱性値のバラツキが±10%以内に抑制されていることで、短期間で剥離や割れ等の損傷が発生するものが少なく、長期に亘って振動等の発生が抑制され、信頼性に優れたものとなる。また、本発明の耐磨耗性機器では、耐磨耗性部材として上記したようなFe成分およびCa成分の含有量が多い比較的安価なものを用いることで、耐磨耗性機器の価格も比較的安価なものとすることができる。
次に、本発明の耐磨耗性部材の製造方法について説明する。
本発明の耐磨耗性部材の製造方法は、窒化けい素を主成分とするセラミックス焼結体からなる耐磨耗性部材の製造方法であって、窒化けい素原料粉末および焼結助剤粉末を含有し、Fe成分の含有量が10ppm以上3500ppm以下かつCa成分の含有量が10ppm以上1000ppm以下である原料混合粉末を成形して成形体とした後、前記成形体を相対密度が80%以上95%以下となるように1次焼結し、さらに相対密度が98%以上となるように2次焼結することを特徴とするものである。
本発明では、従来の1次焼結および2次焼結を行う製造方法に比べ、1次焼結では相対密度を80%以上95%以下と低めに焼結しておき、2次焼結で相対密度が98%以上となるように焼結を行うことで、原料混合粉末中のFe成分およびCa成分の含有量が比較的多い場合であっても、硬度および破壊靱性値に優れ、かつ、そのバラツキも±10%以内に抑制された耐磨耗性部材を容易に製造することができる。
耐磨耗性部材を製造するために用いられる窒化けい素原料粉末としては、例えばFe成分の含有量が10ppm以上3500ppm以下程度かつCa成分の含有量が10ppm以上1000ppm以下程度であるものが好適に用いられる。Fe成分およびCa成分の含有量がこのような範囲内にある窒化けい素原料粉末としては、例えば金属窒化法により製造される安価な窒化けい素原料粉末が好適に使用される。
窒化けい素原料粉末としては、焼結性、曲げ強度および破壊靭性値等を考慮して、酸素含有量が好ましくは1.5質量%以下、より好ましくは0.9〜1.2質量%であるα相型窒化けい素を好ましくは80質量%以上、より好ましくは90〜97質量%含有し、平均粒径が好ましくは1.2μm以下、より好ましくは0.6〜1.0μmであるものが好適に使用される。
ここで、窒化けい素原料粉末としてはα相型のものとβ相型のものとが知られているが、β相型の窒化けい素原料粉末は焼結体とした場合に強度が不足し易い傾向があり、α相型の窒化けい素原料粉末はアスペクト比が高い窒化けい素結晶粒子が複雑に入り組んだ高強度の焼結体が得られる。
α相型およびβ相型の窒化けい素原料粉末の合計量中、このα相型の窒化けい素原料粉末の配合量を80質量%以上とすることで、耐磨耗性部材の曲げ強度、破壊靭性値および転がり寿命を向上させることができる。一方、焼結性を考慮して、α相型窒化けい素原料粉末の配合量は97質量%までの範囲とすることが好ましい。α相型窒化けい素原料粉末の配合量はより好ましくは90〜95質量%の範囲である。
また、窒化けい素原料粉末としては、特に平均粒径が0.8μm以下の微細な原料粉末を使用することにより、少量の焼結助剤であっても気孔率が1%以下の緻密な焼結体を形成することが可能となるため好ましい。この焼結体の気孔率はアルキメデス法により容易に計測できる。
窒化けい素原料粉末には、希土類元素を添加することが好ましく、この希土類元素としてはY、Ho、Er、Yb、La、Sc、Pr、Ce、Nd、Dy、Sm、Gd等から選択される少なくとも1種を添加することが好ましい。これらは、窒化けい素原料粉末と反応して液相を生成し、焼結促進剤として機能するものである。
上記希土類元素の添加量は、窒化けい素原料粉末その他焼結助剤等からなる原料混合粉末(以下、単に原料混合粉末と呼ぶ。)の全体中、酸化物換算で2質量%以上5質量%以下となるようにすることが好ましい。添加量が2質量%未満の場合は、耐磨耗性部材の緻密化あるいは高強度化が不十分となり、特に希土類元素がランタノイド系元素のように原子量が大きい元素の場合には、強度の低い耐磨耗性部材となりやすい。一方、添加量が5質量%を超える過量となると、過量の粒界相が生成し、気孔の発生が増加し、また強度が低下するおそれがある。
さらに、窒化けい素原料粉末には、アルミニウム成分を添加することが好ましく、このアルミニウム成分は酸化アルミニウム(A1)や窒化アルミニウム(AlN)として添加することが好ましい。また、これらアルミニウム成分の合計した添加量は、原料混合粉末の全体中、酸化物換算で2質量%以上、6質量%以下の範囲とすることが好ましい。
酸化アルミニウムは希土類元素の焼結促進剤の機能を促進し、低温での緻密化を可能にし、結晶組織において粒成長を制御する機能を果たし、耐磨耗性部材の曲げ強度や破壊靭性値等を向上させる。
酸化アルミニウムは、原料混合粉末の全体中、4質量%以下の範囲で添加されることが好ましい。酸化アルミニウムの添加量が4質量%を超える過量となる場合には、酸素含有量の上昇が起こり、これによる粒界相中の成分分布のむらが発生し耐磨耗性部材の転がり寿命が低下するため好ましくない。また、酸化アルミニウムの添加量が2質量%未満の場合は添加効果が不充分であるため、酸化アルミニウムの添加量は2質量%以上とすることが好ましい。酸化アルミニウムの添加量は、上記したような観点から、より好ましくは2質量%以上、3.5質量%以下の範囲である。
一方、窒化アルミニウムは焼結過程における窒化けい素成分の蒸発等を抑制するとともに、希土類元素の焼結促進剤としての機能をさらに向上させる役目を果たすものであり、原料混合粉末の全体中、3質量%以下の範囲で添加することが好ましい。窒化アルミニウムの添加量が3質量%を超えるように過量となると、耐磨耗性部材の機械的強度や転がり寿命特性が低下するため好ましくない。また、窒化アルミニウムの添加量が1質量%未満となると、上記機能が不十分となるおそれがあるため、窒化アルミニウムの添加量は、原料混合粉末の全体中、1質量%以上とすることが好ましい。
なお、前記窒化けい素原料粉末と共に、2〜4質量%の酸化アルミニウムと1〜3質量%の窒化アルミニウムとを共に添加すると耐磨耗性部材の機械的特性をより効果的に高めることができるが、両者の合計量が過大になると、耐磨耗性部材としての転がり寿命特性が低下するため、原料混合粉末の全体中、アルミニウム成分の合計した含有量は酸化物換算で6質量%以下とすることが好ましい。
さらに、窒化けい素原料粉末には、Ti、Hf、Zr、W、Mo、Ta、Nb、Crの酸化物、炭化物、窒化物、珪化物、硼化物から成る群から選択される少なくとも1種の化合物を添加することが好ましい。これらの化合物は、上記の希土類酸化物等の焼結促進剤としての機能を促進するとともに、結晶組織において分散強化の機能を果し、耐磨耗性部材の機械的強度や転がり寿命を向上させるものである。これらの中でも、特にTi、Mo、Hf化合物が好ましいものとして挙げられる。
これらTi等の化合物の添加量は、原料混合粉末の全体中、酸化物換算で0.3質量%未満では添加効果が不十分である一方、3質量%を超える過量となる場合には耐磨耗性部材の機械的強度や転がり寿命の低下が起こるため、添加量は0.3質量%以上、3質量%以下とすることが好ましく、特に0.5質量%以上、2質量%以下とすることが好ましい。
また、窒化けい素原料粉末には、炭化けい素(SiC)を添加してもよい。炭化けい素(SiC)は結晶組織において単独に粒子分散し、耐磨耗性部材の転がり寿命特性を顕著に改善させるものである。炭化けい素を添加する場合には、原料混合粉末の全体中、2質量%未満では添加効果が不十分である一方、7質量%を超える過量となる場合には緻密化が不充分になり、耐磨耗性部材の曲げ強度の低下が起こるため、添加量は2質量%以上、7質量%以下の範囲とすることが好ましい。なお、炭化けい素にはα型とβ型があるが、双方とも同一の作用効果を発揮するため、いずれを添加してもよい。
本発明に係る耐磨耗性部材は、例えば以下のような工程を経て製造されるものである。すなわち、上記したような窒化けい素原料粉末に、希土類元素からなる焼結助剤、必要に応じて酸化アルミニウムや窒化アルミニウム等のアルミニウム成分、Ti等の化合物、炭化けい素を混合して原料混合粉末を調製する。さらに、この原料混合粉末に有機バインダ成分を添加して造粒粉末とする。
この際、原料混合粉末中のFe成分の含有量は10ppm以上3500ppm以下かつCa成分の含有量は10ppm以上1000ppm以下である。原料混合粉末中のFe成分およびCa成分の含有量を上記範囲内とするためには、例えばFe成分およびCa成分の含有量が所定の範囲内に調整された金属窒化法により製造された窒化けい素原料粉末を用いることにより行うことができる。なお、通常、希土類酸化物、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、Ti等の化合物、炭化けい素等の焼結助剤粉末にはFe成分およびCa成分は含まれていないまたは含まれていても微量のため、原料混合粉末中のFe成分およびCa成分の含有量は窒化けい素原料粉末に含まれるFe成分およびCa成分の含有量によって調整することができる。
次に得られた造粒粉末を成形して所定形状の成形体を得る。造粒粉末の成形法としては、汎用の金型プレス法やCIP(冷間静水圧プレス)法等が適用できる。上記金型プレス法やCIP成形法で成形体を形成する場合において、特に焼結後において気孔が発生し難い粒界相を形成するためには、上記成形時の成形圧力を120MPa以上に設定することが好ましい。
この成形圧力が120MPa未満である場合には、主として粒界相を構成する成分となる希土類元素化合物が凝集した箇所が形成されやすい上に、十分に緻密な成形体となり得ず、クラックの発生が多い耐磨耗性部材となりやすい。
一方、成形圧力を200MPaを超えるように過大にした場合、成形型の耐久性が低下してしまうので、必ずしも製造性が良いとは言えない。そのため、上記成形圧力は120MPa以上200MPa以下の範囲が好ましい。
上記成形繰作に引き続いて、成形体を非酸化性雰囲気中で温度600℃以上800℃以下、または空気中で温度400℃以上500℃以下で1時間以上2時間以下の範囲で加熱して、予め添加していた有機バインダ成分を十分に除去し、脱脂する。
次に脱脂処理された成形体を窒素ガス等の不活性ガスを充填した非酸化性雰囲気中で、相対密度が80%以上95%以下となるように1次焼結を行った後、さらに、非酸化性雰囲気中で、相対密度が98%以上となるように2次焼結して窒化けい素焼結体(耐磨耗性部材)とする。なお、相対密度は、窒化けい素焼結体の理論密度に対するアルキメデス法により測定された実密度の比率(%)である。
理論密度の求め方としては、次のような方法で簡易的に求めることができる。例えば、理化学辞典等には理論密度として窒化けい素は3.185g/cm、酸化イットリウム(Y)は5.03g/cm、酸化アルミニウム(Al)は4.0g/cm、酸化マグネシウム(MgO)は3.58g/cmと記載されている。添加する焼結助剤の質量比に応じて、(窒化けい素の質量×理論密度+酸化イットリウムの質量×理論密度+…)=窒化けい素焼結体の理論密度として算出しても良い。
例えば、窒化ケイ素92質量%、酸化イットリウム5質量%、酸化アルミニウム3質量%のとき、窒化ケイ素の質量0.92×3.185+酸化イットリウムの質量0.05×5.03+酸化アルミニウムの質量0.03×4.0=3.3017g/cmが当該窒化けい素焼結体の理論密度となる。
本発明では、上記したように、1次焼結の段階では従来の製造方法に比べて低い相対密度80%以上95%以下に焼結させておき、その後の2次焼結の段階で主として相対密度を上げるように焼結を行うことで、窒化けい素焼結体(耐磨耗性部材)の硬度および破壊靱性値のバラツキを±10%以内に抑制することができる。また、硬度1380以上、破壊靱性5.5MPa・m1/2以上、さらには硬度1430以上、破壊靱性6.0MPa・m1/2以上の優れた特性を得ることができる。
すなわち、1次焼結で相対密度を80%未満あるいは95%とすると、その後の2次焼結で相対密度を98%以上としたとしても、窒化けい素焼結体(耐磨耗性部材)の硬度および破壊靱性値のバラツキを±10%以内に抑制することは困難となる。本発明では、上記したような2次焼結を終了した段階での窒化けい素焼結体の密度を高密度とし、また硬度および破壊靱性値のバラツキを±10%以内に抑制する観点から、1次焼結の段階での密度を85%以上95%以下とすることがより好ましい。
1次焼結で相対密度を80%以上95%以下とするには、例えば1775℃以上1850℃以下の温度で2時間以上8時間以下、より好ましくは1775℃以上1825℃以下の温度で2時間以上6時間以下、常圧焼結または加圧焼結を行えばよい。1次焼結の焼結温度が上記温度範囲の下限未満あるいは焼結時間が上記時間範囲の下限未満であると、1次焼結を終了した段階での密度を80%以上とすることが困難となる。また、1次焼結の焼結温度が上記温度範囲の上限を超えるか、焼結時間が上記時間範囲の上限を超えるような場合、1次焼結で焼結が進みすぎ、密度が95%を超えてしまうおそれがある。
また、2次焼結は、例えば1600℃以上1800℃以下の温度で、70MPa以上、好ましくは100MPa以上の加圧力で、0.5時間以上2時間以下の熱間静水圧プレス(HIP)処理を実施することが好ましい。2次焼結の焼結温度が上記温度範囲の下限未満あるいは加圧力が上記加圧力未満または焼結時間が上記時間範囲の下限未満の場合、2次焼結を終了した段階での窒化けい素焼結体の密度が98%以上と高密度にならないおそれがあり、また硬度や破壊靱性値のバラツキを±10%以内に抑制することが困難となるおそれがある。一方、上記温度範囲の上限を超えるような温度で焼結を行った場合、窒化けい素成分の蒸発、分解等のおそれがあり、また焼結時間が上記時間範囲の上限を超えるような場合、密度はそれ以上向上せず効果が飽和すると共に、製造時間の増大にも繋がるため好ましくない。
以上、本発明の製造方法に説明したが、本発明の製造方法によれば、Fe成分の含有量が10ppm以上3500ppm以下かつCa成分の含有量が10ppm以上1000ppm以下となるような原料混合粉末を用いて、硬度および破壊靱性値のバラツキが±10%以内に抑制された窒化けい素焼結体(耐磨耗性部材)を製造することができる。
また、本発明の製造方法によれば、例えば窒化けい素結晶粒子の長径が40μm以下であり、平均アスペクト比が2以上である窒化けい素焼結体(耐磨耗性部材)を製造することができる。
さらに、本発明の製造方法によれば、耐磨耗性部材が板状である場合について、所定の操作によって定義される転がり寿命が2×10回以上であるものを製造することができ、また耐磨耗性部材が球状である場合について、所定の操作によって定義される転がり寿命が700時間以上であるものを製造することができる。
以下、本発明を実施例を参照して詳細に説明する。
(実施例1〜7、比較例1〜4)
窒化けい素原料粉末として、金属窒化法により製造されたFe成分およびCa成分の含有量が異なる複数種類を用意した。これらの窒化けい素原料粉末に、焼結助剤粉末としてY粉末、Al粉末、AlN粉末およびTiO粉末を配合して、表1に示すようなFe成分含有量およびCa成分含有量の原料混合粉末を用意した。
なお、窒化けい素原料粉末および焼結助剤粉末としては、平均粒径が0.3以上、1.5μm以下のものを用いた。また、この原料混合粉末におけるYの含有量は重量%、Alの含有量は3重量%、AlNの含有量は2重量%、TiOの含有量は1重量%であり、残部が窒化けい素原料粉末である。なお、窒化けい素原料粉末以外の粉末、すなわち焼結助剤粉末であるY粉末、Al粉末、AlN粉末およびTiO粉末にはいずれもFe成分およびCa成分は含まれておらず、原料混合粉末中のFe成分およびCa成分はいずれも窒化けい素原料粉末に含有されていたFe成分およびCa成分に由来するものである。
この原料混合粉末をエチルアルコール中で粉砕媒体として窒化けい素製ボールを用いて48時間湿式粉砕した後、乾燥した。さらに、この湿式粉砕された原料混合粉末に有機バインダを添加し、調合造粒粉末とした。
Figure 0005150064
次に、この調合造粒粉末を150MPaの成形圧力でプレス成形して、複数の成形体を製作した。この成形体を450℃の空気気流中において4時間脱脂した後、0.7MPaの窒素ガス雰囲気中、表2に示すような焼成条件で1次焼結を行い、さらに同表に示すような焼成条件で2次焼結を行い窒化けい素焼結体からなる耐磨耗性部材を製造した。ここで、2次焼結はいずれも窒素ガス雰囲気中、100MPaの熱間静水圧プレス(HIP)によるものとした。表2に、1次焼結後の焼結体密度(相対密度)および2次焼結後の焼結体密度(相対密度)を併せて示す。なお、焼結体密度(相対密度)(%)は、窒化けい素焼結体の理論密度に対するアルキメデス法により測定される実密度の比(%)で示した。
Figure 0005150064
次に、製造された各実施例および比較例の耐磨耗性部材について、以下のようにしてビッカース硬度、破壊靱性値のそれぞれについて平均値、バラツキを求めると共に、転がり寿命の測定を行った。
ビッカース硬度の測定はJIS−R−1610に準じた方法により行った。また、ビッカース硬度の平均値は、各実施例および比較例に係る耐磨耗性部材10個の測定値を平均することにより求めた。さらに、ビッカース硬度のバラツキは、上記10個の測定値の中で上記平均値から数値的に最も遠いもの(離れているもの)を「最遠値」とし、上記平均値、上記最遠値を以下の式に代入して求めた。
バラツキ[%]=((平均値−最遠値)/平均値)×100
破壊靱性値の測定はJIS−R−1607に記載されたIF法に準じて行った。また、破壊靱性値の平均値およびバラツキは上記ビッカース硬度の平均値およびバラツキと同様にして求めた。
転がり寿命の測定は、図1に示すスラスト型転がり磨耗試験装置1を使用して行った。スラスト型転がり磨耗試験装置1は、装置本体2内に配置された板状部材3と、この板状部材3上面に配置された3個の転動球4と、この転動球4の上部に配置されたガイド板5と、このガイド板5に接続された駆動回転軸6と、上記転動球4の配置間隔を規制する保持器7とを備えて構成されている。装置本体2内には、転動部を潤滑するための潤滑油8が充填されている。
本測定では、このようなスラスト型転がり磨耗試験装置1における板状部材3として、各実施例および比較例の耐磨耗性部材を縦70mm×横70mm×厚さ3mmに加工したものを用いた。このときの板状部材3(耐磨耗性部材)の表面粗さRaは0.01μmとした。また、このようなスラスト型転がり磨耗試験装置1における転動球4として、SUJ2製の直径9.35mmの球体を用いた。
そして、このようなスラスト型転がり磨耗試験装置において、SUJ2製の転動球4に5.9GPaの最大接触応力が作用するように荷重を印加した状態で回転数1200rpmで回転させ、耐磨耗性部材からなる板状部材3の表面が剥離するまでの回転数を測定した。なお、本測定においては3×10回を上限として測定した。
Figure 0005150064
表3から明らかなように、相対密度が80%以上95%以下となるように1次焼結を行い、さらに相対密度が98%以上となるように2次焼結を行った実施例1〜7の耐磨耗性部材はビッカース硬度および破壊靱性値のいずれもバラツキが±10%以内となっていることが認められた。また、実施例1〜7の耐磨耗性部材はいずれも転がり寿命が2×10回を超え、転がり寿命にも優れていることが認められた。
次に、上記したものと同様にして製造された各実施例および比較例の耐磨耗性部材について、窒化けい素結晶粒子の長径の最大値を測定すると共に、窒化けい素結晶粒子の平均アスペクト比を算出した。
窒化けい素結晶粒子の長径の最大値は、耐磨耗性部材を切断し、切断面の任意の単位面積(100μm×100μm)を走査型電子顕微鏡(SEM)により写真撮影(倍率5000倍以上)し、この写真上における長径が最大となる窒化けい素結晶粒子の長径を測定し、これを長径の最大値とした。また、平均アスペクト比は、上記写真上の単位面積における全ての窒化けい素結晶粒子の長径と短径との比率からアスペクト比を求め、それらを平均することにより算出した。結果を表4に示す。
Figure 0005150064
表4から明らかなように、相対密度が80%以上95%以下となるように1次焼結を行い、さらに相対密度が98%以上となるように2次焼結を行った実施例1〜7の耐磨耗性部材については窒化けい素結晶粒子の長径の最大値が40μm以下であり、長径が40μmを超えるような粗大な窒化けい素結晶粒子は発生していないことが認められた。また、実施例1〜7の耐磨耗性部材については窒化けい素結晶粒子の平均アスペクト比がいずれも2以上となっており、窒化けい素結晶粒子が複雑に入り組んだ微細構造となっていることが認められた。
(実施例8〜11、比較例5〜8)
耐磨耗性部材の一種としての転動球(ベアリングボール)を製造する場合の歩留まりを評価すると共に、製造された転動球の転がり寿命を測定した。
歩留まりは、実施例2および比較例1、3の耐磨耗性部材と同様の組成・製造条件で表5に示すような直径の窒化けい素焼結体を作製した後、その表面粗さRaを0.01μmまで加工して転動球とする際の剥離や割れの発生を観察することにより評価した。なお、歩留まりの評価は、各実施例、比較例についてそれぞれ転動球を3000個製造し、この製造された転動球の総数に対する剥離や割れの発生が認められなかったものの個数の比率(%)で示した。
また、耐磨耗性部材としての転動球の転がり寿命は、前述した図1に示すスラスト型転がり磨耗試験装置1を用いて行った。なお、前述した転がり寿命の測定方法では、図1に示される板状部材3を耐磨耗性部材からなるものとし、転動球4をSUJ2からなるものとしたが、本測定ではこれとは反対に、板状部材3をSUJ2からなるものとし、転動球4を実施例2または比較例1、3の転動球(表面粗さRa0.01μm)とした。
また、本測定では、スラスト型転がり磨耗試験装置の耐磨耗性部材からなる転動球4に5.9GPaの最大接触応力が作用するように荷重を印加した状態で回転数1200rpmで回転させ、耐磨耗性部材からなる転動球4の表面が剥離するまでの時間を測定した。なお、本測定においては、最長800時間を上限として測定した。
Figure 0005150064
実施例2の耐磨耗性部材と同様の組成・製造条件によって得られる実施例8〜11の耐磨耗性部材である転動球は、実施例2の耐磨耗性部材と同様にビッカース硬度や靱性が高くなり、それらのバラツキも小さくなることから、製造時(加工時)の歩留まりも高くなることが認められた。それに対し、比較例1、3の耐磨耗性部材と同様の組成・製造条件によって得られる比較例5〜8の耐磨耗性部材である転動球は直径が小さなうちは製造時(加工時)の歩留まりが高いものの、直径が10mm以上と大きくなると製造時(加工時)の歩留まりが大きく低下することが認められた。従って、本発明の耐磨耗性部材は、直径10mm以上、さらには直径25mm以上の中大型転動球に好適であることがわかった。また、実施例8〜11の転動球は転がり寿命も十分であることが認められた。
転がり寿命特性を測定するためのスラスト型転がり磨耗試験装置の構成を示す断面図。
符号の説明
1…スラスト型転がり磨耗試験装置、2…装置本体、3…板状部材、4…転動球、5…ガイド板、6…駆動回転軸、7…保持器、8…潤滑油

Claims (4)

  1. 窒化けい素を主成分とするセラミックス焼結体からなる耐磨耗性部材の製造方法であって、
    窒化けい素原料粉末および焼結助剤粉末を含有し、Fe成分の含有量が10ppm以上3500ppm以下かつCa成分の含有量が10ppm以上1000ppm以下である原料混合粉末を成形して成形体とした後、前記成形体を相対密度が80%以上95%以下となるように1775℃以上1825℃以下の温度で2時間以上8時間以下の1次焼結を行い、さらに相対密度が98%以上となるように1600℃以上1800℃以下の温度かつ70MPa以上の加圧力で0.5時間以上2時間以下の2次焼結を熱間静水圧プレス(HIP)により行って耐摩耗性部材を製造する工程を有し、
    前記窒化けい素原料粉末および前記焼結助剤粉末の平均粒径は0.3〜1.5μmであり、前記窒化けい素原料粉末は金属窒化法により製造されたものであり、前記焼結助剤粉末は、希土類元素を原料混合粉末の全体に対して酸化物換算で2質量%以上5質量%以下、アルミニウム成分を原料混合粉末の全体に対して酸化物換算で2質量%以上6質量%以下、Ti、Hf、Zr、W、Mo、Ta、Nb、Crの酸化物、炭化物、窒化物、珪化物、硼化物から成る群から選択される少なくとも1種の化合物を原料混合粉末の全体に対して0.3質量%以上3質量%以下含み、
    前記工程は、製造される耐摩耗性部材の窒化けい素結晶粒子の長径が40μm以下かつ平均アスペクト比が2以上、さらに製造される複数の耐摩耗性部材の中から任意の10個についてビッカース硬度および破壊靭性値を測定したとき、ビッカース硬度の平均値が1380以上、破壊靱性値の平均値が5.5MPa・m 1/2 以上、かつ前記ビッカース硬度および前記破壊靭性値の平均値に対して最遠値のバラツキが±10%以内となるように行うことを特徴とする耐磨耗性部材の製造方法。
  2. 前記耐磨耗性部材は略板状であるが試験面表面は鏡面に研磨加工を施した、前記略板状の耐磨耗性部材の上面に設けた直径40mmの軌道上に直径が9.35mmである3個のSUJ2製転動球を配置し、この転動球に5.9GPaの最大接触応力が作用するように荷重を印加した状態で回転数1200rpmの条件下で回転させたときに、前記略板状の耐磨耗性部材の表面が剥離するまでの回転数で定義される転がり寿命が2×10回以上であることを特徴とする請求項記載の耐磨耗性部材の製造方法
  3. 前記耐摩耗性部材は球状であり、かつ、直径が3mm以上であることを特徴とする請求項記載の耐摩耗性部材の製造方法
  4. 前記耐磨耗性部材は直径9.35mmのグレード5以上の表面状態である球状であり、試験面表面は鏡面に研磨加工を施したSUJ2製鋼板の上面に設定された直径40mmの軌道上に前記球状の耐磨耗性部材を3個配置し、この球状の耐磨耗性部材に5.9GPaの最大接触応力が作用するように荷重を印加した状態で回転数1200rpmの条件下で回転させたときに、前記球状の耐磨耗性部材の表面が剥離するまでの時間で定義される転がり寿命が700時間以上であることを特徴とする請求項記載の耐磨耗性部材の製造方法
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