JP4090771B2 - 半導電性セラミックス、並びにこれを用いた磁気ディスク基板用保持部材及び治工具 - Google Patents

半導電性セラミックス、並びにこれを用いた磁気ディスク基板用保持部材及び治工具 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導電性セラミックス、並びにこれを用いた、複数の磁気ディスク基板を所定の間隔に保持するスペーサ、シム、ハブなどの磁気ディスク基板用保持部材及び治工具に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、導電性セラミックスとして、アルミナやジルコニア等を主成分とし、導電性付与材としてのNi、Nb、Co、Ti、Zr、Ta、Hf等の金属あるいはこれらの化合物をセラミックス材料中に添加して焼成した焼結体が知られている。これらの導電性セラミックスは、セラミックスセンサ、あるいはプリンタの分離爪、電子部品製造装置用部材、抵抗用基板等の静電気除去部材として用いられていた(特開平2−295009号公報等参照)。
【0003】
一方、コンピューターの記録手段として磁気記録装置が用いられており、この磁気記録装置にも静電気除去部材が用いられている。
図1は磁気記録装置の概略断面図である。同図に示すように、この磁気記録装置10は、回転軸14に固定されたハブ15に、複数のガラス製磁気ディスク基板16とスペーサ12を交互に取り付け、シム11及びクランプ13で押さえ付けた後、ネジ17にて締め付けることにより固定する構造になっている。
【0004】
情報の読み取りや書き込みを行うには、モータ(図示せず)により回転軸14を回転させ、ハブ15に固定された複数の磁気ディスク基板16を高速回転させて磁気ディスク基板16上の磁気ヘッド18を浮上させ、この状態で磁気ヘッド18を磁気ディスク基板16上で走査させることにより、磁気ディスク基板16の所定の位置に情報の書き込みや読み取りを行うようになっていた。
【0005】
ところが、磁気ディスク基板16が帯電すると、放電時に書き込まれた情報が破壊されるため、磁気ディスク基板16を所定の間隔に保持するスペーサ12やシム11あるいはクランプ13等の磁気ディスク基板用保持部材を導電材料により形成することが提案されており、磁気ディスク基板用保持部材を形成する導電材料として、チタニア系焼結体や、酸化チタン(TiO2)、炭化チタン(TiC)、酸化錫(SnO、SnO2)を含有したアルミナ質焼結体等の導電性セラミックスが用いられていた(特開平6−168536号公報、特開平11−228224号公報参照)。
【0006】
しかしながら、アルミナやジルコニアを主成分とし、これに導電性付与材を添加した焼結体からなる導電性セラミックスでは、導電性付与材が高価であることや、還元雰囲気で焼成しなければならない等の特別な焼成条件を必要とするため、コストダウンの要求がある中、製品化することは非常に困難であった。
【0007】
また、アルミナやジルコニアを主成分とする焼結体やチタニア系焼結体からなる磁気ディスク基板用保持部材では、ガラス製の磁気ディスク基板との間に2〜5×10-6/℃程度の熱膨張係数の差があるため、動作中の発熱により磁気ディスク基板16に歪みが生じたり、磁気ディスク基板16間の平面度が損なわれるといった課題があった。
【0008】
そこで、これらの課題を解決するものとして、本発明者らは先に、フォルステライトを主成分とし、導電性付与材として酸化鉄を添加した焼結体からなる半導電性セラミックスと、この半導電性セラミックスにより磁気ディスク基板用保持部材を形成することを提案した(特開平9−20560号公報、特許2984199号公報、特開平11−343169号公報参照)。これらの提案における半導電性セラミックスは、2MgO・SiO2、MgSiO3の結晶を有し、かつMgFe24、Fe34のうち少なくとも1種の結晶を有しており、その体積固有抵抗値は107Ω・cm以下、曲げ強度は100〜140MPa、ヤング率は100〜140GPa程度であった。
【0009】
上記フォルステライトを主成分とし、導電性付与材として酸化鉄を添加した焼結体からなる半導電性セラミックスは、主成分のMgと反応して生成されるMgFe24や未反応分の酸化鉄が導電性に寄与していることが明らかとなっており、前述のアルミナやジルコニアを主成分とする導電性セラミックスと比較して、酸化鉄の添加量と導電性を有する結晶相(MgFe24や未反応分の酸化鉄)のX線回折のピーク強度との関係から体積固有抵抗の調整がし易く、静電気除去部材に要求されている104〜107Ω・cmを満足させることができると共に、主成分のフォルステライトはMgOとSiO2の複合酸化物で、ガラス製の磁気ディスク基板16との熱膨張係数を近似させることができるため、磁気ディスク基板16に熱歪みが発生することを防止し、磁気ディスク基板16間の平面度を高精度に保つことができるといった利点がある。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
近年、ますます磁気ディスク装置10の高記録密度化が進むに従って、磁気ヘッド18と磁気ディスク基板16の浮上隙間が極小化し、現在は浮上隙間が0.02μmより小さな領域となっている。このように浮上隙間の極小化が進むと、磁気ディスク基板16間の平面度をより高精度に保つために、磁気ディスク基板16を固定するためのシム11、スペーサ12、クランプ13およびハブ15自体の加工精度をさらに向上させたいという要求が高まっていた。また、上記加工精度の課題以外に、様々な衝撃によって焼結体に欠けが発生しやすいという不具合が生じることがあった。
【0011】
【発明の目的】
本発明の目的は、2MgO・SiO2(フォルステライト)を主結晶相とし、副成分として酸化鉄を有する半導電性セラミックスにおいて、加工性に影響する曲げ強度、ヤング率、硬度および破壊靱性値をより好適な範囲とし、且つ所望の半導電性及び熱膨張係数を得ることができ、さらに様々な衝撃で欠けが発生しやすいという不具合を低減し耐久性を向上させることができる半導電性セラミックス、並びにこれを用いた磁気ディスク基板用保持部材及び治工具を提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、加工精度および耐久性に関する上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、2MgO・SiO2(フォルステライト)を主結晶相とし、副成分として酸化鉄を有する半導電性セラミックスにおいて、この焼結体中に2MgO・SiO2だけでなく、MgOをも析出させることにより焼結体の加工性に影響を与える機械的特性をより好適な範囲にすることができるという新たな事実を見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明にかかる半導電性セラミックスは、2MgO・SiO2を主結晶相とし、副結晶相としてMgFe24、Fe34及びFe23から選ばれる少なくとも1種の結晶とMgOの結晶とを有する焼結体からなり、該焼結体中におけるMgO/SiO 2 のモル比率が3以上であることを特徴とする。
【0014】
本発明の半導電性セラミックスでは、前記半導電性セラミックスをX線回折により分析して得られるMgO結晶相の2θ=43゜付近におけるピーク強度を1としたとき、MgFe24、Fe34及びFe23の結晶相が混在する2θ=35〜36゜付近のピーク強度(以下、「ピーク強度比」という。)が0.2〜4であるのが好ましい。
【0015】
また、本発明の半導電性セラミックスでは、前記半導電性セラミックス中に含まれるMgがMgO換算で40〜68重量%、SiがSiO2換算で14.5〜30重量%、FeがFe23換算で10〜40重量%であるのが好ましい。
【0016】
さらに、本発明の半導電性セラミックスでは、前記半導電性セラミックスの体積固有抵抗が104〜107Ω・cm、曲げ強度が150MPa以上、ヤング率が200GPa以上、硬度が8GPa以上、破壊靱性値が1.5MPa・m0.5以上であるのが好ましい。
【0017】
本発明にかかる磁気ディスク基板用保持部材は、磁気ディスク基板を所定の位置に保持するための保持部材であって、前記半導電性セラミックスにより形成され、前記磁気ディスク基板との接触面の平面度が3μm以下であることを特徴とする。
【0018】
本発明にかかる治工具は、前記半導電性セラミックスにより形成したことを特徴とする。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。本発明にかかる導電性セラミックスは、2MgO・SiO2を主結晶相とし、副結晶相としてMgFe24、Fe34及びFe23から選ばれる少なくとも1種の結晶とMgOの結晶とを有する焼結体からなり、該焼結体中におけるMgO/SiO 2 のモル比率が3以上であるものである。
【0020】
主結晶相である2MgO・SiO2(フォルステライト)とMgOは、体積固有抵抗値の高い絶縁性セラミックスであるが、この絶縁性セラミックスに導電性付与材として酸化鉄(FeO、Fe23、Fe34)を含有させることにより半導電性を付与することができ、この体積固有抵抗値を静電気除去部材として要求される104〜107Ω・cmとすることができる。
【0021】
このように酸化鉄を含有させることにより、本発明の半導電性セラミックス中には、2MgO・SiO2とMgOの結晶と、MgFe24、Fe34及びFe23から選ばれる少なくとも1種の結晶とが存在している。また、この半導電性セラミックスのX線回折による前記ピーク強度比は0.2〜4であるのが好ましい。
【0022】
このピーク強度比が0.2〜4の範囲内にあれば、該セラミックスの曲げ強度、ヤング率、硬度等の剛性と破壊靱性を向上させることができる。これにより、焼結体を磁気ディスク基板用保持部材や治工具の形状に加工するための研削、研磨加工による部材表面の加工精度をより向上させることが可能で、磁気ディスク基板間にそれら保持部材を取り付け、磁気ディスク基板を高速回転させた際の、ディスクの締め付け力や回転時の遠心力やモーター発熱による歪みを極力小さくすることができる。また、剛性の向上により、例えば本発明の半導電性セラミックスがノート型パソコンのハードディスク装置の磁気ディスク基板用保持部材として用いられた場合でも、その持ち運びの際に生じる様々な衝撃によって焼結体に欠けが発生するのを大幅に低減し、より耐久性の優れたものとなる。
【0023】
これに対して、前記ピーク強度比が0.2未満であると、焼結体中に導電性を有するMgFe24、Fe34、Fe23等の結晶の存在量が少なくなり、所望の体積固有抵抗の値を得ることができなくなるおそれがある。一方、前記ピーク強度比が4を超えると、焼結体の機械的特性向上に寄与すると思われるMgO結晶の存在量が少なくなり、曲げ強度、ヤング率、硬度、破壊靱性等を向上させることができなくなるおそれがある。すなわち、焼結体中に、2MgO・SiO2結晶だけでなくMgO結晶をも析出させて剛性に優れるMgO結晶を焼結体中に分散させた形で新たに存在させることによって、焼結体の研削、研磨加工による加工精度、並びに衝撃に対する焼結体の耐久性に影響を与える機械的特性、すなわち曲げ強度、ヤング率、硬度及び破壊靱性の値を向上させることができるものと推測される。
【0024】
また、本発明の半導電性セラミックスでは、この半導電性セラミックス中に含まれるMgがMgO換算で40〜68重量%であるのが機械的特性を向上させるためには好ましく、44〜65重量%であるのがより好ましい。また、このとき、半導電性セラミックス中に含まれるSiがSiO2換算で14.5〜30重量%、FeがFe23換算で10〜40重量%であるのが好ましい。
【0025】
半導電性セラミックス中に含まれるFeがFe23換算で10〜40重量%であることにより、104〜107Ω・cmの範囲の体積固有抵抗値を得ることができる。FeがFe23換算で10重量%未満となると、所望の体積固有抵抗値を得ることができず、40重量%を超えるとセラミックス中に酸化鉄の結晶相が多く存在することとなり、曲げ強度等の機械的特性が低下するおそれがある。また、セラミックスの特性をより向上させるためにはFeがFe23換算で15〜35重量%の範囲となるように添加するのがより好ましい。
【0026】
なお、本発明の半導電性セラミックスでは、2MgO・SiO2とMgOの結晶、MgFe24、Fe34及びFe23から選ばれる少なくとも1種の結晶の他、結晶相としてMgSiO3(ステアタイト)を含んでいてもよい。
【0027】
更に本発明の導電性セラミックスでは、Mg、Si、Fe、O成分以外に、Al、Ti、Ca、Mn、S等の不純物が酸化物或いは窒化物等の化合物の形でセラミックス全体の1重量%以下の範囲で含有されていてもよい。
【0028】
次に、本発明に係る半導電性セラミックスの製造方法について説明する。
まず、市販のMgOあるいはその化合物や水和物、シリカ複合酸化物(例えばタルク(Mg3Si410(OH)2))、および酸化鉄(FeO、Fe23、Fe34)の各粉末を所定の重量で混合する。このとき、焼成後にMgOの結晶相を焼結体中に析出させ、機械的特性を向上させるためには、焼結体中におけるMgO/SiO2のモル比率が3以上となるように、MgOあるいはその化合物や水和物及びシリカ複合酸化物の添加量を調整する。このモル比が2以下になると、焼結体中にMgOが析出しない。
【0029】
ついで、上記混合粉末に水、水溶性バインダー(ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、アクリル系樹脂等)等のバインダーを加え、ボールミル等で12時間以上粉砕混合した後、得られたスラリーを排出し回収する。そしてこのスラリーをスプレードライヤー等の各種造粒法によりバインダーを含めた形で造粒し、成形可能な粉末とした後、プレス成型法等を用いて所定の形状に成形し、1500〜1700℃の焼成温度で1〜2時間焼成し、本発明の半導電性セラミックスを得る。
【0030】
ここで、上記MgO/SiO2のモル比率を3以上としたのは、このモル比率が3以上であればMgO結晶を析出させて焼結体の機械的特性をより安定して向上させることができるからである。また、MgO比率を抑えて焼成温度を低く保ち製造し易くするためには上記モル比率を3〜5の範囲とするのがより好ましい。
【0031】
また、上記粉砕混合時間は12時間以上としたが、MgOあるいはその化合物や水和物、シリカ複合酸化物及び酸化鉄の分散性を高め、焼結性をより高めるためには、粉砕後の粒度を1μm以下とするのがより好適である。したがって、粉砕時間はこの1μm以下の粒度が得られる範囲であれば特に限定されない。
【0032】
また、上記焼成温度は酸化鉄の含有量及びMgO/SiO2のモル比率にもよるが、アルキメデス法等により求める焼結体の気孔率が0.5%以下と低くできるような範囲が良く、MgO/SiO2モル比率3以上の場合には1530〜1650℃がより好適範囲である。なお、焼成雰囲気は、大気雰囲気に限らず、非酸化性雰囲気や還元性雰囲気であっても構わない。
【0033】
以上のように、本発明の半導電性セラミックスを用いれば、帯電する静電気を速やかに逃がすことができるという特性に加え、曲げ強度、ヤング率、硬度及び破壊靱性等の加工精度に影響する焼結体の機械的特性を向上させることができる。
【0034】
また、例えば、磁気記録装置や、各種電子部品の製造工程や取付工程において用いられるハンドリング治具やピンセット等の治具において、少なくとも各種部品との接触面を本発明の半導電性セラミックスで形成すれば、静電気を取り除くことができるとともに、磁性による悪影響を防止することもできる。
【0035】
さらに、図1に示す磁気記録装置に組み込まれている複数枚の磁気ディスク基板16を所定間隔に位置決め保持するスペーサ12、シム11及びクランプ13を本発明の半導電性セラミックスにより形成すれば、磁気ディスク基板16に帯電する静電気を速やかに除去することができる。さらに本発明の半導電性セラミックスは、曲げ強度、ヤング率、硬度、破壊靱性に優れることから、磁気ディスク基板16との接触面の平面度を3μm以下の高精度に加工できるばかりか、それ以下の高精度な加工、例えば1μm以下の高精度な領域の平面度を得ることも可能であるので、磁気ディスク基板16が締め付け時や高速回転する際にディスクにブレや歪みを生じることがない。したがって、本発明の半導電性セラミックスにより磁気ディスク基板用保持部材を形成すれば、常に安定した情報の書き込みや読み込みを実現することができ、高密度記録が可能な磁気記録装置を容易に製造することができる。
【0036】
さらに、本発明の半導電性セラミックスは、磁気テープの走行を案内する案内部材、自動車等の塗装に使用される電着塗装用ノズル等の静電気除去部材としても好適に使用できる他、セラミックセンサーやセラミックヒーターあるいは半導体・薄膜プロセスの抵抗評価用プローブとしても用いることができる。
【0037】
【実施例】
ここで、本発明の半導電性セラミックスと従来のフォルステライトを主成分とする半導電性セラミックスとを用意し、体積固有抵抗、曲げ強度、ヤング率、硬度、破壊靱性および熱膨張係数について比較する実験を行った。
【0038】
出発原料として、市販のMgO、シリカ複合酸化物(タルク(Mg3Si410(OH)2))、酸化鉄(Fe23)をそれぞれ用意した。表1に示すように、MgOとシリカ複合酸化物とは、MgO/SiO2のモル比率が2、3または4となるように配合した。酸化鉄の添加量は、MgO/SiO2モル比率が2のもの(従来1および従来2)については25または30重量%、MgO/SiO2モル比率が3または4のもの(試料No.1〜12)については10、15、20、25、30または40重量%になるようにそれぞれ調合を行った。
【0039】
上記で調合した各原料粉末、水及び分散剤を直径がφ5〜10mmのアルミナボールを入れた所定の容器に投入し、容器を所定速度で12時間回転させ、粉砕・混合を行い、粒度を1μm以下とした後、得られたスラリーを回収し、これにバインダーとしてポリビニルアルコールとポリエチレングリコールを加え、攪拌した後、噴霧造粒機(スプレードライヤー)により造粒を行った。そして造粒後の粉体を所定の形状に成形し、1500〜1700℃の間の温度で焼成し、アルキメデス法により測定した気孔率の値が0.5%以下の焼結体をそれぞれ得た。得られた各焼結体のX線回折による分析結果、並びに体積固有抵抗、曲げ強度、ヤング率、硬度、破壊靱性及び熱膨張係数の各測定結果を表1、2に示す。ここで、表1中の「X線回折ピーク強度比」とは、前記したピーク強度比、すなわちX線回折におけるMgO結晶相の2θ=43°付近におけるMgOピーク強度を1としたとき、MgFe24、Fe34、Fe23等の結晶相が混在する2θ=35〜36°付近のピーク強度のことをいう。なお、表1中の「−」を記入している試料については、MgOが検出されなかったことを示す。
【0040】
また、上記分析および各測定は以下のようにして行った。
<X線回折による分析>
理学社製の分析装置RINTを用いて分析を行った。
<体積固有抵抗>
JIS C 2141に準拠して行った。
<曲げ強度>
JIS R 1601に準拠して行った。
<ヤング率>
JIS R 1602に準拠して行った。
<硬度>
JIS R 1610に準拠して行った。
<破壊靱性>
JIS R 1607に準拠して行った。
<熱膨張係数>
JIS R 1618に準拠して行った。
【0041】
【表1】
Figure 0004090771
【表2】
Figure 0004090771
【0042】
表1、2から、本発明の範囲に含まれる試料No.1〜12は、X線回折においてMgO結晶相の検出されない従来1及び従来2と比較して、曲げ強度、ヤング率、硬度、破壊靱性が高かった。X線回折結果の一例として試料No.3及びNo.9の各結晶ピークを図2及び図3に示す。
【0043】
また、上記方法により作製した焼結体をダイヤモンドホイールにより研磨加工した結果、試料No.1〜12については3μm以下の平面度が得られた。なお、平面度は、JIS B 0621に準拠して測定した。
【0044】
以上の試験結果から、2MgO・SiO2を主結晶相とし、MgFe24、Fe23、Fe34の結晶を有する半導電性セラミックスに、新たにMgO結晶を焼結体中に析出させることにより、曲げ強度、ヤング率、硬度、破壊靱性等の機械的特性が向上することが確認された。このことから、本発明範囲内の試料No.1〜12は、磁気ディスク基板用保持部材として非常に優れており、好適に用いることができるといえる。
【0045】
【発明の効果】
本発明によれば、焼結体の加工性に影響を与える機械的特性をより好適な範囲、すなわち、曲げ強度が150MPa以上、ヤング率が200GPa以上、硬度が8GPa以上、破壊靱性値が1.5MPa・m0.5以上とすることができ、しかも体積固有抵抗を磁気ディスク基板用保持部材として必要な104〜107Ω・cmとすることができ、所望の熱膨張係数を得ることができる。さらに、様々な衝撃に対しても欠けが発生しやすいという不具合を低減し耐久性を向上させることができるという効果がある。
【0046】
また、本発明の半導電性セラミックスを磁気ディスク基板用保持部材として用いる場合に、磁気ディスク基板用保持部材の加工精度及び衝撃に対する耐久性をより向上させることができる。具体的には、保持部材における磁気ディスク基板との接触面の平面度を3μm以下の高精度に加工することが可能であるため、保持する磁気ディスク基板が高速回転した際もその平面度を高精度に保つことができるとともに、衝撃が加わっても欠けが生じ難いため、欠けに伴う破片が磁気ディスク基板と磁気ヘッドにかみ込むのを防ぐことができるので、データを記録、再生する際のエラー発生を防止することができるという効果がある。
【0047】
更に、磁気記録装置や、各種電子部品の製造工程や取付工程において用いられるハンドリング治具やピンセット等の治工具において、少なくとも各種部品との接触面を本発明の半導電性セラミックスで形成すれば、静電気を取り除くことができるとともに、磁性による悪影響を防止することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】磁気ディスク基板用保持部材を組み込んだ磁気記録装置の断面を示す図である。
【図2】本発明の実施例に示す、試料No.3のX線回折における結晶ピークを示すスペクトル図である。
【図3】本発明の実施例に示す、試料No.9のX線回折における結晶ピークを示すスペクトル図である。
【符号の説明】
10:磁気ディスク装置
11:シム
12:スペ−サ
13:クランプ
14:回転軸
15:ハブ
16:磁気ディスク基板
17:ねじ
18:磁気ヘッド

Claims (6)

  1. 2MgO・SiO2を主結晶相とし、副結晶相としてMgFe24、Fe34及びFe23から選ばれる少なくとも1種の結晶とMgOの結晶とを有する焼結体からなり、
    該焼結体中におけるMgO/SiO 2 のモル比率が3以上であることを特徴とする半導電性セラミックス。
  2. 前記半導電性セラミックスをX線回折により分析して得られるMgO結晶相の2θ=43゜付近におけるピーク強度を1としたとき、MgFe24、Fe34及びFe23の結晶相が混在する2θ=35〜36゜付近のピーク強度が0.2〜4である請求項1記載の半導電性セラミックス。
  3. 前記半導電性セラミックス中に含まれるMgがMgO換算で40〜68重量%、SiがSiO2換算で14.5〜30重量%、FeがFe23換算で10〜40重量%である請求項1または2記載の半導電性セラミックス。
  4. 前記半導電性セラミックスの体積固有抵抗が104〜107Ω・cm、曲げ強度が150MPa以上、ヤング率が200GPa以上、硬度が8GPa以上、破壊靱性値が1.5MPa・m0.5以上である請求項1〜3のいずれかに記載の半導電性セラミックス。
  5. 磁気ディスク基板を所定の位置に保持するための保持部材であって、請求項1〜4のいずれかに記載の半導電性セラミックスにより形成され、前記磁気ディスク基板との接触面の平面度が3μm以下であることを特徴とする磁気ディスク基板用保持部材。
  6. 請求項1〜4のいずれかに記載の半導電性セラミックスにより形成したことを特徴とする治工具。
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