JP3860681B2 - 導電性セラミックスおよびこれを用いた帯電防止部材並びに磁気ディスク装置 - Google Patents

導電性セラミックスおよびこれを用いた帯電防止部材並びに磁気ディスク装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば抵抗体、導電材料、接点、センサ、ヒーター、真空管部品等に使用可能な導電性セラミックスに関するものであり、特に搬送用アーム、ハンドリング治具、ウェハー搬送用ピンセット等の半導体製造装置等で静電気防止が必要な帯電防止(静電気防止)部材、および帯電防止機能のある磁気ディスク保持部材を有する磁気ディスク装置に関する。
【0002】
【従来技術】
一般にセラミックスは絶縁材であるが、炭化珪素質セラミックスやランタンクロマイト等のペロブスカイト系セラミックス等の導電性を有するセラミックスが知られており、また、アルミナやジルコニア等の絶縁性セラミックス材料に導電性付与材、例えば、TiO2 、TiC、NiO、CoO等を添加して還元雰囲気下で焼成したの導電性セラミックスが知られている(特開平2−295009号公報、特開平1−243388号公報参照)。
【0003】
一方、従来、例えば半導体製造装置等で静電気防止が必要な部品(搬送用アーム、ハンドリング治具、ウェハー搬送用ピンセット等)に用いる静電気防止用部材、あるいは抵抗体基体、導電材料、接点、ヒーター、真空管部品、磁気ディスク用スペーサには、上述した材料からなり、104 〜108 Ωcm程度の体積固有抵抗を有するセラミックスが用いられている。
【0004】
他方、コンピュータの外部記録装置等として使用される磁気ディスク装置は、図1に示すように、複数枚の磁気ディスク基板15をシム10、スペーサ11及びクランプ12で固定して、回転軸13を回転させながら磁気ヘッド17にて磁気ディスク基板15表面上に非接触状態で情報の書き込みや読み取りを行うものである。
【0005】
近年、このような磁気ディスク装置20は情報が高密度で大容量化するに伴って、磁気ヘッド17と磁気ディスク基板15との距離の極小化、磁気ディスク基板15のより高度な平面化と表面の平滑化等が要求されており、磁気ディスク基板15を固定・保持するスペーサ11、シム10、及びクランプ12等の保持部材は熱膨張差に伴う磁気ディスク基板15の歪みを防止する為に、セラミックスやガラスで形成することが検討されている(特公平5−80745号公報、特開昭61−148667号公報参照)。
【0006】
しかしながら、上記保持部材を構成するセラミックスやガラスは一般的に絶縁性材料である為、これらの保持部材で磁気ディスク基板15を保持すると、磁気ディスク基板15が帯電し、情報の読み込みや書き込みの際にノイズが発生して、記録内容を破壊してしまうという問題があり、その対策として上記セラミックスやガラス等の磁気ディスク基板15との当接面にアルミニウムや亜鉛などの金属膜を被覆して静電気を除去することが考えられている。
【0007】
しかし、このような方法では、磁気ディスク基板15との当接面の平坦度が損なわれ、磁気ディスク基板15に歪みを生じたり、場合によっては、磁気ヘッド17が磁気ディスク基板15と接触して傷付けてしまう恐れがあった。また、セラミックスやガラスと金属被膜との熱膨張差のために繰り返しの使用により金属被膜が剥がれるといった課題もあり、前述したアルミナ等に導電性付与材を添加した導電性セラミックスで保持部材を形成することが提案されている(特開平2−226566号公報参照)。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した導電性セラミックスでは、例えば、上記炭化珪素質セラミックスは、難焼結体であるために非酸化性雰囲気でかつ2000℃以上の温度で焼成しなければならず、また、ホットプレスや熱間静水圧プレス(HIP)を行う必要があり生産性が悪くコストが高くなる、また、ペロブスカイト系セラミックスについては原料単価が高く、しかも、曲げ強度が10kg/mm2 未満と低く、構造部品材料としての信頼性が低いという問題があった。
【0009】
さらに、導電付与材としてNiO、CoO等を添加したアルミナ質やジルコニア質の導電性低温焼成セラミックスでは充分に緻密化させることが難しく、表面の平滑性が悪いために表面から脱粒等が生じてパーティクルが発生し、悪影響を及ぼす等の問題があった。
【0010】
また、上述した導電性セラミックスでは、例えば、ガラス製の磁気ディスク基板との間に熱膨張差があるため、ディスクの高速回転に伴う温度上昇のために磁気ディスク基板15に歪みを生じたり、磁気ディスク基板15間の平行度が損なわれるといった課題があった。そのため、磁気ディスク装置20の高密度化および大容量化には限界があった。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記用途を満足する材料について検討したところ、TiおよびSiを含有する特定の酸化物相と、導電性付与材とを含有するセラミックスを用いることによって、体積固有抵抗値を所定の範囲に調整でき、かつ容易に緻密化でき平滑な表面とすることにより、高い寸法精度を有するとともに耐磨耗性に優れたセラミックスが得られることを見出し、本発明に至った。
【0012】
すなわち、本発明の導電性セラミックスは、Zn、Mg、Ca、SrおよびBaの群から選ばれる少なくとも1種と、TiおよびSiとを含有する複合酸化物に対して、導電性付与材として酸化鉄、酸化錫、酸化銅、酸化コバルト、酸化ニオブ、酸化ニッケル、炭化チタンおよび窒化チタンの群から選ばれる少なくとも1種を含有するとともに、焼結助剤としてホウ素を含有し、−50〜85℃における体積固有抵抗が10〜10Ω・cm、かつ表面粗さ(Ra)が2.0μm以下であることを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明の他の導電性セラミックスは、Zn、Mg、Ca、SrおよびBaの群から選ばれる少なくとも1種と、TiおよびSiとを含有する複合酸化物に対して、導電性付与材として酸化亜鉛を含有するとともに、焼結助剤としてホウ素を含有し、−50〜85℃における体積固有抵抗が10〜10Ω・cm、かつ表面粗さ(Ra)が2.0μm以下であることを特徴とするものである。
【0014】
なお、前記Zn、Mg、Ca、SrおよびBaの群から選ばれる少なくとも1種と、TiおよびSiとを含有する複合酸化物に含まれる結晶相が、スピネル型結晶相、イルメナイト型結晶相、ウイレマイト型結晶相、エンスタタイト型結晶相、CaSiO、SrSiO、BaSiO、SiO型結晶相の群から選ばれる少なくとも1種以上であること、上記セラミックス中には、ホウ素(B)を酸化物換算で15重量%以下含有することが望ましい。
【0015】
また、−50〜85℃における熱膨張係数が4×10-6〜1×10-5/℃以下、ヤング率が80GPa以上であることが望ましい。
【0016】
さらに、本発明によれば、上記導電性セラミックスを帯電防止部材として用いることにより、優れた信頼性と耐久性を有する帯電防止部材を得ることができる。
【0017】
また、本発明の磁気ディスク装置は、複数の磁気ディスクを所定の間隔で保持し、該複数の磁気ディスクからの情報の読み取りまたは情報の書き込みが可能なものであって、前記磁気ディスクを保持する部材を導電性セラミックスによって形成することにより優れた特性を有する装置とすることができる。
【0018】
【作用】
Zn、Mg、Ca、SrおよびBaから選ばれる少なくとも1種と、TiおよびSiとを含む複合酸化物相は比較的低温での焼成により容易に緻密化でき、平滑な表面を有する耐磨耗性に優れた材料であるとともに、100GPa以上のヤング率を有し、かつ各成分を調整することによりセラミックスの熱膨張係数を所定の範囲に制御可能なものであるが、室温における体積固有抵抗値が1012Ω・cm以上の絶縁体である。
【0019】
これに、所定量の導電性付与材を含有せしめることによりセラミックスの体積固有抵抗を所望の範囲内に制御でき、帯電防止部材として優れた特性を有するものとなる。
【0020】
特に、導電性付与材として特定の金属酸化物を用いることにより容易にセラミックスを製造することができる。例えば、酸化亜鉛(ZnO)は通常半導体材料であるが、焼成等により結晶内に酸素欠損等の格子欠陥等を生成させることにより、その体積固有抵抗を低下せしめることができる、いわゆる不定比化合物である。これが、導電性付与材としての機能を有するものであることから、上記絶縁体材料に所定量含有させることによりセラミックスの体積固有抵抗値を102 〜108 Ω・cmに調整することができる。
【0021】
【発明の実施の形態】
本発明の導電性セラミックスは、Zn、Mg、Ca、SrおよびBaの群から選ばれる少なくとも1種と、TiおよびSiとの複合酸化物と、導電性付与材とを含有するものである。
【0022】
前記導電性付与材としては、体積固有抵抗値が10Ωcm以下の化合物、具体的には酸化鉄、酸化錫、酸化銅、酸化コバルト、酸化ニッケル、酸化ニオブ等の金属酸化物、窒化チタン等の金属窒化物、炭化チタン等の金属炭化物および酸化亜鉛のうちの1種以上によって構成されるが、体積固有抵抗値の制御の容易性、製造の容易性、原料コスト、原料の経時変化が少なく管理が容易である点で金属酸化物であることが望ましく、特に、体積固有抵抗値の制御の容易性および製造の容易性の点で、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化錫、酸化銅、酸化コバルト、酸化ニッケルおよび酸化ニオブの群から選ばれる少なくとも1種であることが望ましい。
【0023】
なお、これら導電性付与材は、セラミックス中で主として結晶粒界に存在するが、連続的に存在することが望ましく、粒界を通して導通するものである。また、前記導電性付与材が酸化亜鉛からなる場合は、セラミックス中に独立した相として存在し、酸化亜鉛相の割合は、30〜75体積%であることが望ましい。
【0024】
すなわち、酸化亜鉛相が30体積%より少ないと、セラミックスの体積固有抵抗値を所望の範囲内に制御することが難しく、帯電防止部材としての機能が低下するためであり、逆に、酸化亜鉛相が75体積%を超えると、通常の焼成でセラミックスを緻密化させることが難しくなり、耐磨耗性が悪くなるとともに、ヤング率が低下し構造部材としての信頼性が低下するためである。
【0025】
なお、Zn、Mg、Ca、SrおよびBaの群から選ばれる少なくとも1種と、TiおよびSiとの複合酸化物のAサイト成分になりうるZn、Mg、Ca、SrおよびBaから選ばれる少なくとも1種(A)に対するBサイト成分になりうるTiおよびSi(B)の比率(B/A)は焼結性および熱膨張係数を任意に調整でき、またヤング率を高める点で、モル比で0.14〜3.5、特に0.5〜1.5であることが望ましい。また、本発明によれば、Zn、Mg、Ca、SrおよびBaの群から選ばれる少なくとも1種と、TiおよびSiとの複合酸化物に対して、ホウ素(B)を酸化物換算で15重量%以下含有することにより、ホウ素(B)が焼結助剤としての働き、セラミックスの焼結性を改善させることができ、セラミックス中に存在するボイドを低減することができ、セラミックス表面の平滑性を高める結果、構造部材としての耐摩耗性を高めることができるが、構造体としての安定した強度を維持する点で、ホウ素(B)の含有量は15重量%以下、特に10重量%以下であることが望ましい。
【0026】
ここで、ホウ素(B)としては、B2 3 またはB2 3 やH2 BO3 等の焼成の過程でB2 3 になりうるもの、あるいはホウ素(B)含有のガラス、例えばホウ珪酸鉛系ガラス、ホウ珪酸亜鉛系ガラスやAl2 3 を30重量%以下と、アルカリ金属酸化物を20重量%以下の割合で含むものが好適に使用される。
【0027】
なお、Zn、Mg、Ca、SrおよびBaの群から選ばれる少なくとも1種と、TiおよびSiとの複合酸化物に含まれる結晶相としては、少なくともZr、Mg、Ca、SrおよびBaから選ばれる少なくとも1種とTiとを含むスピネル型結晶相、少なくともZn,MgおよびTiを含むイルメナイト型結晶相、少なくともZn、MgおよびSiを含むウイレマイト型結晶相、CaSiO結晶相、SrSiO結晶相、BaSiO結晶相、エンスタタイト型結晶相、SiO型結晶相の少なくとも1種以上が析出することが望ましく、これらの結晶相を析出させることによって、構造部材として必要な硬度および強度を有するとともに、所望のヤング率、熱膨張係数を得ることができる。
【0028】
また、上記セラミックス中にはこれらの成分を含有する絶縁性ガラス相が析出してもよい。
【0029】
さらに、Aサイト成分としては、焼結性および熱膨張係数の調整、表面の平滑性の向上およびセラミックスの体積固有抵抗値の調整の容易さの点でZnをモル比換算で0.25以上含有することが望ましい。
【0030】
また、これらの成分以外に、不純物としてAl、Zr、Li、Na、K、Y(イットリウム)を含む希土類元素、Pb、Bi等を酸化物換算で0.1重量%以下の範囲で含有しても特性に影響を及ぼさない。
【0031】
上記態様のセラミックスは、体積固有抵抗値が102 〜108 Ω・cmであることからセラミックスが帯電することなく耐電防止部材として好適に使用できる。また、表面粗さ(Ra)が2.0μm以下であることから、耐摩耗性が高く、寸法精度の高い部材を作製できる。
【0032】
さらに、構造体として均一な組成にて形成し被覆層等がないことから、使用時等の熱膨張差による被覆層の剥離が生じず、また、−50〜85℃における熱膨張係数が4×10-6〜1×10-5/℃、特に5×10-6〜9×10-6/℃の範囲に制御できることから、ガラスやセラミックスからなる磁気ディスク基板との熱膨張差が小さく、温度上昇によっても精度よくディスクを保持することができる。
【0033】
さらに、ヤング率が80GPa以上であることから、ネジ止め等によっても変形することがなく、構造部材としての信頼性が高いものである。
【0034】
次に、本発明の導電性セラミックスを製造する方法について説明する。
まず、出発原料として、Zn、Mg、Ca、SrおよびBaの群から選ばれる少なくとも1種と、TiおよびSiとの酸化物を形成するための金属成分の酸化物、炭酸塩、窒化物、炭化物等を上述した割合で調合、混合し、酸化性雰囲気中、あるいは非酸化性雰囲気にて800〜1000℃で仮焼する。これに、導電性付与材となりうる成分を添加して混合する。
【0035】
そして、この混合粉末を用いてプレス成形法、冷間静水圧プレス法、ドクターブレード法、カレンダーロール法、圧延法法の周知の成形法により所定形状に成形した後、酸化性雰囲気中、あるいは非酸化性雰囲気にて1000〜1200℃の温度で1〜2時間程度の焼成を行うことにより相対密度95%以上、特に98%以上、さらに99.5%以上に緻密化した本発明の導電性セラミックスを得ることができる。また、所望によりセラミックスの表面を研磨して表面粗さ(Ra)が2.0μm以下とすることができる。
【0036】
本発明によれば、上述した導電性セラミックスを用いることによって、帯電する静電気を速やかに除去することができることから、例えば、磁気記録装置や各種電子部品の製造工程や取扱工程において用いられるハンドリング治具やピンセット等の治工具等の帯電防止部材として、少なくとも各種部品との接触面を本発明の導電性低温焼成ガラスセラミックスで形成することにより、静電気を除去して悪影響を及ぼすことを防止できる部材を形成することができる。
【0037】
また、図1に本発明の導電性セラミックスを好適に使用しうる一例である磁気ディスク装置の概略断面図を示す。
磁気ディスク装置20は、回転軸13に固定されたハブ14に、複数枚の磁気ディスク基板15とスペーサ11とを交互に挿入し、最後にシム10およびクランプ12を配設してネジ16で固定するものである。そして、回転軸13の回転に伴い、磁気ディスク基板15が回転するとともに、磁気ヘッド17が磁気ディスク基板15の表面上を非接触状態で移動しながらディスク基板の所定の位置に情報の書き込みや読み取りを行うものである。
【0038】
磁気ディスク基板15は、アルミニウム基板、Al2 3 などのセラミックスの表面にグレーズ層を形成し、該グレーズ層上に磁性膜を備えたもの、あるいは全体がガラスからなりその表面に磁性膜を備えたもの等を用いてもよい。さらに、その他の材質として、チタン、シリコン、YAG、カーボン等を用いることもできるが、表面の平滑性、剛性の高さおよびコストの点でガラスからなることが望ましい。
【0039】
本発明によれば、スペーサ11、シム10およびクランプ12は上述した導電性セラミックスにより形成されており、磁気ディスク基板15が帯電するのを防止でき、情報の書き込みや読み込みの際のノイズを低減することができる。
【0040】
また、その表面は滑らかであり、特にスペーサ11については、磁気ディスク基板15との接触面11aの表面粗さ(Ra)が2.0μm以下、特に1.0μm以下、また接触面11aの平行度が5μm以下であることが望ましく、これにより磁気ディスク基板15を極めて高精度に保持することができる。また、スペーサ11、シム10およびクランプ12の各エッジ部にはC面またはR面の面取りが施されている。
【0041】
さらに、本発明によれば、スペーサ11、シム10およびクランプ12がヤング率80GPa以上の高剛性部材からなるため、締め付け時に変形することがなく、高精度に保持できる。 また、磁気ディスク基板15として熱膨張係数が4×10-6〜1×10-5のガラスからなるものを用いた場合、高速回転による温度上昇によっても磁気ディスク基板15とスペーサ11、シム10およびクランプ12との熱膨張差が小さくできるため、磁気ディスク基板15を高精度に保持することができる。したがって、磁気ヘッド17の磁気ディスク基板15に対する浮上量を極めて小さくすることができ、情報記録密度を高めることができる。
【0042】
【実施例】
(実施例1)
平均粒径3μm以下のZn2 TiO4 、MgTiO3 、CaTiO3 、SrTiO3 、BaTiO3 、Zn2 SiO4 、TiO2 、SiO2 およびB2 3 のTiとSiとを含む酸化物を形成する成分粉末を表1、2に示す割合で混合し、仮焼した後、表1に示す導電性付与材を添加して、これに所定量の水又は有機溶剤及び結合材を添加して約1時間混合した。そして、該混合粉を1.0ton/cm2 の成形圧で所定の形状にプレス成形した後、大気雰囲気中にて表1に示す温度で2時間焼成を行った。
【0043】
得られたセラミックスについて、アルキメデス法により密度を測定し、理論密度に対する比率である相対密度を算出した。また、X線回折チャートから析出結晶相の同定を行い、さらに、セラミックス表面を研削加工した後、表面粗さ計により表面粗さ(Ra)を測定した。
【0044】
また、セラミックスを直径60mm×厚さ2mmの寸法に研削加工して体積固有抵抗値を測定した。さらに、同時に熱膨張係数とヤング率の測定を行った。なお、各測定方法についてはJIS規定に基づいて測定した。さらに、研磨面のSEM観察およびルーゼックス解析から酸化物相と導電性付与相との割合を求めた。結果は、表1、2に示した。
【0045】
(実施例2)
実施例1の導電性付与材としてTiCまたはTiNを添加混合し、大気中にて焼成する以外は実施例1と同様に作製し、評価した。結果は表2に示した(試料No.25、26)。
【0046】
(実施例3)
実施例1のB2 3 材を表1に示す元素を含むガラス材料に変える以外は実施例1と同様に作製し、評価した。結果は、表2に示した(試料No.27〜29)。
【0047】
(比較例)
Al2 3 粉末に対し、表1に示す導電性付与材を30重量%と、少量の公知の焼結助剤成分を添加して成形後、非酸化性雰囲気中、1450℃にて焼成してAl2 3 質セラミックスを作製し、実施例1と同様に評価した。結果は表2に示した(試料No.30、31)。
【0048】
【表1】
Figure 0003860681
【0049】
【表2】
Figure 0003860681
【0050】
表1、2から明らかなように、Tiを含まない試料No.8では、表面粗さ(Ra)が2.0μmを超えてしまった。結晶相として導電性付与材の析出が見られない試料No.17では、セラミックスの体積固有抵抗値が108 を超えてしまった。
【0051】
さらに、Al2 3 質セラミックスからなる試料No.30、31では体積固有抵抗値が102 より低くなり、また、研削時の研削抵抗が高く、かつ時間がかかった。
【0052】
これに対し、本発明の範囲内の試料は、表面粗さ(Ra)2.0μm以下、特に1.2μm以下、体積固有抵抗値が102 〜108 Ω・cmで、特に、導電性付与材としての酸化亜鉛相の比率が30〜75体積%の範囲内である試料No.1〜7、10〜16、18〜29では、熱膨張係数が4×10-6〜1×10-5/℃であり、ヤング率が80GPa以上を有するものを優れたものであった。
【0053】
また、上記実施例1の試料No.11のセラミックスを用いて磁気ディスク保持部材を作製し、図1の磁気ディスク装置に搭載したところ、磁気ディスクへの静電気によるノイズが発生することなく良好な書き込みが可能であった。
【0054】
これに対し、試料No.17のセラミックスを用いて磁気ディスク保持部材を作製し、図1の磁気ディスク装置に搭載したところ、磁気ディスクへ静電気によるノイズが発生してしまった。
【0055】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明によれば、セラミックスの体積固有抵抗値を所望の値に制御でき、かつ容易に緻密化ができ平坦な表面を有することから、高い寸法精度および耐摩耗性に優れた帯電防止部材が作製でき、静電気による悪影響を防止することができる。
【0056】
また、セラミックスの熱膨張係数を所望の範囲に制御できるとともに、高いヤング率を有するものであることから、構造部材、特に磁気ディスクの保持部材として使用すれば、磁気ディスク基板の熱膨張係数と近似させることが出来、高速回転時に高温になっても熱膨張差に伴う不都合を生じることが無く、かつ磁気ディスク基板に帯電した静電気を効率良く逃すことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の磁気ディスク装置を示す概略断面図である。
【図2】本発明の導電性セラミックスの組織を説明するための図である。
【符号の説明】
10:シム
11:スペーサ
12:クランプ
13:回転軸
14:ハブ
15:磁気ディスク基板
17:磁気ヘッド

Claims (8)

  1. Zn、Mg、Ca、SrおよびBaの群から選ばれる少なくとも1種と、TiおよびSiとを含有する複合酸化物に対して、導電性付与材として酸化鉄、酸化錫、酸化銅、酸化コバルト、酸化ニオブ、酸化ニッケル、炭化チタンおよび窒化チタンの群から選ばれる少なくとも1種を含有するとともに、焼結助剤としてホウ素を含有し、−50〜85℃における体積固有抵抗が10〜10Ω・cm、かつ表面粗さ(Ra)が2.0μm以下であることを特徴とする導電性セラミックス。
  2. Zn、Mg、Ca、SrおよびBaの群から選ばれる少なくとも1種と、TiおよびSiとを含有する複合酸化物に対して、導電性付与材として酸化亜鉛を含有するとともに、焼結助剤としてホウ素を含有し、−50〜85℃における体積固有抵抗が1010 Ω・cm、かつ表面粗さ(Ra)が2.0μm以下であることを特徴とする導電性セラミックス。
  3. 前記Zn、Mg、Ca、SrおよびBaの群から選ばれる少なくとも1種と、TiおよびSiとを含有する複合酸化物に含まれる結晶相が、スピネル型結晶相、イルメナイト型結晶相、ウイレマイト型結晶相、エンスタタイト型結晶相、CaSiO、SrSiO、BaSiO、SiO型結晶相の群から選ばれる少なくとも1種以上であることを特徴とする請求項1または2記載の導電性セラミックス。
  4. 前記ホウ素(B)の含有量が酸化物換算で15重量%以下であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか記載の導電性セラミックス。
  5. −50〜85℃における熱膨張係数が4×10―6〜〜1×10−5/℃であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか記載の導電性セラミックス。
  6. −50〜85℃におけるヤング率が80GPa以上であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか記載の導電性セラミックス。
  7. 請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の導電性セラミックスからなることを特徴とする帯電防止部材。
  8. 複数の磁気ディスクを所定の間隔で保持し、該複数の磁気ディスクからの情報の読み取りまたは情報の書き込みが可能な磁気ディスク装置であって、前記磁気ディスクを保持する部材が、請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の導電性セラミックスからなることを特徴とする磁気ディスク装置。
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