JP6359897B2 - 薄膜磁気ヘッド用基板、磁気ヘッドスライダ、および、ハードディスクドライブ装置 - Google Patents

薄膜磁気ヘッド用基板、磁気ヘッドスライダ、および、ハードディスクドライブ装置 Download PDF

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Description

本発明は、ハードディスクドライブ装置の磁気ヘッドスライダに用いられる薄膜磁気ヘッド用基板に関する。
映像の高精細化などにつれマルチメディアデータの情報量は近年ますます増加しており、これを記録するための情報記録装置の容量も大きくすることが求められている。ハードディスクドライブ装置は、パーソナルコンピュータのデータ格納装置や、テレビジョンに接続される録画機器などとして用いられる情報記録装置であり、その容量をより大きくし、装置を小型化することが求められている。
図1(a)は、一般的なハードディスクドライブ装置(以下、HDDと呼ぶことがある)が備える薄膜磁気ヘッドスライダアセンブリ10と、磁気記録媒体としてのディスク(プラッタ)13とを模式的に示している。図1(a)に示すように、ジンバル14により保持されたスライダ10Aは、基部11および基部11の一方の端部に設けられた読み込み素子および書き込み素子12(以下、単に素子12(transducer)と呼ぶことがある)から構成されている。ジンバル14によって保持されるユニットをヘッドスライダ、あるいは単にスライダと呼ぶことがある。
素子12のうち、書き込み素子は、磁性材料から形成されている。リングの内部にコイルが巻かれており、記録信号をコイルに与えることによって書き込み素子に磁界が発生し、ディスク13にデータを書き込む。一方、再生ヘッドである読み込み素子は、磁場の変化を電気抵抗の変化に変換する磁気抵抗効果素子(MR、あるいはGMR)やトンネル磁気抵抗効果素子TMR(Tunneling Magneto Resistive)などであり、ディスク13に記録されている磁気を読み取って電気信号に変換する。
また、素子12を保持する基板11は、従来、Al23−TiC系のセラミックス焼結体から形成されることが多かった。これは、熱特性、機械特性、および加工性の点で、Al23−TiC(以下AlTiCと略す)がバランス良く優れているためである。
ところで、HDDの記憶容量を増大させるためには、ディスク13における記録密度を向上させることが求められる。現在、HDDの記録密度は750Gbit/平方インチ程度にまで達している。このような高記録密度での書き込み/読み取り動作を精度よく実現するには、動作中における素子12とディスク13との間隙が小さいことが好ましい。現在、この間隙は10nm以下にまで小さくなっている。
ハードディスクドライブ装置の小型化や大容量化にともない、薄膜磁気ヘッドがディスクから浮上する高さも低くなり、薄膜磁気ヘッドのスライダのエアベアリングサーフェイス(ABS)11aの面粗さも、さらに高品位のものが要求されるようになってきている。なお、ABS11aは、スライダにおけるディスク13と対面する側の基部11の表面であり、ディスク13の回転によって生じた空気流によってディスク面から適切な距離だけ安定的に浮上するようにその形状が工夫されている。
ABSを所望の形状とするために、基部11は、ナノレベルで正確に加工できる性質が求められている。通常、基部11はラッピング工程(ラップ機を用いた研磨工程)などを経て平面に加工された後、上記のような空気流を適切に利用できるような形状に、イオンミリング法やイオンビームエッチング法などのドライエッチング法などを用いて加工される。上記のラッピング工程後の状態において、基部11の加工面は極めて平滑な平面であることが好ましい。
動作中におけるディスク13と素子12との間隙は、基部11の平滑性以外の要因によっても変化し得る。以下、このような要因の例について説明する。
図2(a)および(b)に示すように、薄膜磁気ヘッド(スライダ)20は、例えば、AlTiC基板(基部)21、Al23膜22、素子23、およびAl23膜24を積層して形成される。Al23膜22、24は、典型的には、アモルファスのアルミナである。薄膜磁気ヘッド20を作製する際、ABSとなる面25(厚さtを有する基板21を、図2(b)右下に示すように棒状体21’に切り出したときの切り出し面に対応)は、まず研磨によって平坦になるように仕上げられる。ABSとなる面25(以下、ABS形成面と呼ぶ)は、AlTiC基板21と、Al23膜22、24と、素子23とを含む積層体の断面に対応する。
ABS形成面25において、AlTiC基板21とAl23膜22、24と素子23とが露出しているため、ABS形成面25を研磨する際に、これらの要素における硬度の違いが問題となる。AlTiC基板21のAl23相およびTiC相のビッカース硬度Hvはそれぞれ2000以上であり、アモルファスAl23膜22、24および素子23(金属)のビッカース硬度Hvは700〜900および100〜300である。
このため、ABS形成面25においてもっとも広い面積を占め、ABSの主要構成部となるAlTiC基板21(特にTiC相)の表面の研磨量が最適となるようにABS面25を研磨すると、TiC相より硬度の低いAl23膜22、24および素子23が研磨されすぎてしまう。その結果、平坦であるべきABS面25において、Al23膜22および24の部分は、AlTiC基板21の部分に比べて一段低くなり、素子23の部分はそれよりさらに低くなってしまう。
一般に、この段差はポールチップリセッション(以下、「PTR」と略す)と呼ばれる。PTRの発生によって、素子と磁気記録媒体との間には余分な空隙が形成されることになる。このため、ハードディスクドライブの記録密度の向上や大容量化の妨げとなる。
上記のように、HDDの記録密度を高めるためには、動作中におけるスライダとディスクとの間の距離を、できるだけ精密に制御することが求められる。例えば、特許文献1には、焼結体として作製されるAlTiC基板の組織を適切に形成することによって、機械的な加工特性を向上させる技術が記載されている。このような加工特性に優れたAlTiC基板を用いれば、高い形状精度を有する磁気ヘッドを作製することができるので、ディスクに対する磁気ヘッドの浮上量を高い精度で制御することができる。
国際公開第2008/056710号
AlTiC基板から形成されるスライダ基部の片側の面には、ABSの形状に加工するためのイオンビームエッチングやRIE(反応性イオンエッチング)等のドライエッチングが施されるこのドライエッチング工程において、エッチング速度の異なる相が存在すると、ドライエッチング後の面粗度が大幅に低下するという問題が生じる場合がある。例えば、AlTiC基板に含まれるAl23相とTiC相とのエッチング量は揃えることができたとしても、第3相として例えばAl2TiO5相(チタン酸アルミ相)が生成されている場合、そのエッチング量が揃わずにドライエッチング後の面粗度が大幅に低下してしまう場合があった。
また、ヒーターなどを用いて素子を熱膨張させることによって、動作中の素子と基板との距離を制御する技術が知られている。より具体的には、ディスクに対する記録・読取り用ヘッドの浮上量(フライングハイト)を素子の熱膨張を利用して調節する方式として、DFH(Dynamic Flying Height)機構を搭載したヘッドが普及している。
DFH機構では、磁気ヘッドの先端部にヒーターが設けられる。ヒーターは、先端金属部を加熱し、熱膨張によって素子がディスク側に近接する。ヒーターの温度を適切に制御すれば、素子とディスクとの距離をより精密に制御することができる。これにより、素子とディスクとをより近接させたまま、フライングハイトを安定的に維持させることができる。このようにして素子とディスクとをさらに近接させることによって、より高い記録密度を実現することができる。
このようにDFH機構を搭載した磁気ヘッドを用いる場合、AlTiC基板の熱伝導率が高すぎるとヘッド先端から熱が逃げやすく、所望の熱膨張状態を維持するためには、ヒーターに与える電力がより多く必要となり、消費電力が増大するという問題がある。また、熱伝導率が高い場合には、フライングハイトを細かく精密に制御することがより困難になる。したがって、読み取りの精度や位置精度を向上させるためには、AlTiC基板の熱伝導率が低いことが好ましい場合があった。
また、高い形状精度が求められる一方で、スライダの生産性を高めるためにはAlTiC基板の機械加工性も良好であることが望まれる。より具体的に説明すると、スライダの作製工程において、図2(b)に示したように、円盤状のAlTiC基板21は、ダイシングソーなどを用いて棒状体(raw bar)21’に切断されるが、この切断工程が効率的に行われることが好ましい。また、得られた棒状体の切断面はラッピング(研磨)されるが、このラッピング工程の効率性(ラップレート)を向上させることが好ましい。したがって、十分な素子性能を実現できるとともに、切断加工性やラップレートが良好なAlTiC基板が望まれていた。
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、生産性が高く、また、高密度記録に適したAlTiC系の薄膜磁気ヘッド用基板およびこれを用いた磁気ヘッドスライダやHDDを提供することをその目的とする。
本発明のある実施形態によるAl23−TiC系薄膜磁気ヘッド用基板は、Al23相とTiC相とを含み、前記Al23相のc軸の格子定数が12.998Å(1.2998nm)以上13.006Å(1.3006nm)以下であり、かつ、前記TiC相の格子定数が4.297Å(0.4297nm)以上4.325Å(0.4325nm)以下である。1Å=0.1nmである。
ある実施形態において、前記Al23相のc軸の格子定数が12.999Å(1.2999nm)以上である。
ある実施形態において、前記Al23相のc軸の格子定数が13.000Å(1.3000nm)以上である。
ある実施形態において、前記TiC相の格子定数が4.318Å(0.4318nm)以上4.325Å(0.4325nm)以下である。
ある実施形態において、前記TiC相の格子定数が4.297Å(0.4297nm)以上4.315Å(0.4315nm)以下である。
ある実施形態において、前記TiC相の格子定数が4.297Å(0.4297nm)以上4.300(0.4300nm)Å以下である。
本発明のある実施形態による磁気ヘッドスライダは、上記のいずれかのAl23−TiC系薄膜磁気ヘッド用基板を用いて構成されている。
本発明のある実施形態によるハードディスクドライブ装置は、上記の磁気ヘッドスライダを備えている。
本発明によれば、生産性が高く、熱伝導性が低い薄膜磁気ヘッド用基板が得られる。このような基板を用いて作製された磁気ヘッドスライダは、熱伝導性が低いので、DFH機構を利用する場合に、ディスクからの浮上量がより精度よく制御され、また、消費電力が削減される。したがって、HDDの小型化・大容量化に貢献することができる。
(a)、(b)は、「磁気ヘッドを示す側面図および斜視図である。 (a)、(b)は、他の形態の磁気ヘッドを示す図である。 (a)はアルミナの結晶構造を示す斜視図であり、(b)はαアルミナのリファレンスデータ(領域A:原料として用いる粉末状態、領域B:AlTiC焼結後の状態におけるAl23相)のそれぞれにおける格子定数(a軸およびc軸)を示すグラフである。 Al23相のc軸の格子定数とTiC相の格子定数とが異なる実施例および比較例の分布を示す図である。 本発明の実施形態によるハードディスクドライブ装置の構成を示す模式的な斜視図である。
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明の実施形態による薄膜磁気ヘッド用基板は、Al23相とTiC相とを含むAl23−TiC系の基板(以下、AlTiC基板という)である。本実施形態のAlTiC基板において、典型的には、Al23相がマトリクス相を形成しており、このAl23マトリクス相中にTiC相が分散された組織が形成されている。
ここで、Al23相は、Al23結晶およびAl23結晶を構成する元素の一部が他の元素で置換された結晶からなる相である。また、TiC相は、TiC結晶およびTiC結晶を構成する元素の一部が他の元素で置換された結晶からなる相である。
なお、Al23相とTiC相とは、例えば、光学顕微鏡やSEM(走査型電子顕微鏡)を用いて観察することによって容易に識別することができる。このように識別されたAl23相およびTiC相において、Al23相の格子定数およびTiC相の格子定数は、後述するように、X線回折を用いて求められる。
ここで、本実施形態の薄膜磁気ヘッド用基板では、Al23相のc軸の格子定数が12.998Å以上13.006Å以下に設定されている。なお、Al23(酸化アルミニウム(III))は、一般にアルミナ(αアルミナ)と称されることがある。本明細書においても、Al23をアルミナと称することがある。
なお、アルミナ相およびTiC相の格子定数は、AlTiC基板中で完全に一様ではなく、測定場所によってわずかに差があっても良いが、この場合、基板の異なる場所を数点以上測定した平均の値を、そのAlTiC基板における格子定数と見なしてよい。
ここでアルミナ相の格子定数について説明する。アルミナ結晶は三方晶系の結晶構造を有しているが、図3(a)に示すように、擬似的に六方晶に近似しており、a軸とc軸にて格子定数を示すことができる。図3(b)に示すように、コランダム構造を有するαアルミナでは、a軸の格子定数が4.754Åであり、c軸の格子定数が12.982Åであることが知られている。
ただし、図3(b)の領域Aとして示すように、AlTiC基板を作製するためのアルミナの原料粉末において、格子定数はa軸およびc軸のそれぞれにおいて、より大きいものとなる。これは、鉱石からアルミナ原料粉末を製造する工程において、Na、Mg、CaなどのAlおよびO以外の不純物の元素が残存することによって生じる現象であると考えられる。これらの原子半径はいずれもAlの原子半径よりも大きいために、上記の不純物の元素で置換されるほど、結晶格子は大きくなる傾向がある。
また、後述するが、焼結助剤としてのMgOやY23などを原料の粉末状態のアルミナおよびTiCに添加して焼結工程を行うことによって、焼結性を高めてAlTiC基板を作製する場合がある。このように焼結助剤を添加すると、焼結工程において、Al原子の一部と他の元素が置換される。その結果、作製されたAlTiC基板において、図3(b)の領域Bとして示すように、AlTiC基板におけるAl23相の格子定数がa軸およびc軸のそれぞれにおいてさらに大きくなることがある。
以上に説明したように、AlTiC基板におけるAl23相の格子定数は、製造工程中の種々の要因で変動し得る。そこで、本発明者は、従来検討されていなかったAl23相のc軸の格子定数に着目し、磁気ヘッドスライダとして用いる場合のAlTiC基板において、Al23相のc軸の格子定数が表面の平滑性等にどのように影響するかについて鋭意実験および検討を行った。
その結果、Al23相のc軸の格子定数を12.998Å以上13.006Å以下に設定することによって、AlTiC基板をロウバー(raw bar)やチップに切断するための切断加工性や、ラッピング工程におけるラップレートを向上させることを見出した。また、上記の範囲に設定することによって、熱伝導率を低下させることができ、DFH機構によるディスクと素子との空隙制御を精密に行うことができるので、高密度記録をより容易に実現できることを見出した。
加工性が向上する理由は、Al23相のc軸の格子定数が12.998Å以上13.006Å以下の範囲であると、AlおよびO以外の元素の含有量が比較的多いAlTiC基板の焼結体が作製され、アルミナ相に歪みが生じることで、クラックが進展しやすくなり、その結果、切断工程やラッピング工程において加工が促進されるためであると考えられる。
ここで、切断加工性とは、AlTiC基板を切断してロウバーやチップにするときの切断加工の容易性を示している。また、切断加工性は、例えば、切断時における抵抗値が所定値に達するまでに切断可能な切断本数によって評価することができる。切断本数が高いほど、生産性が高いことを意味する。
また、ラップレートとは、ラップ機(lapping apparatus)を用いて行う研磨工程における、単位時間当たりの研磨量(μm/min)を意味する。被加工物の加工性が良好である場合にラップレートが高くなり、生産性が向上する。
本発明の実施形態においては、アルミナ粉末の特別の選定、あるいは、焼結助剤の添加量の増量などによって、焼結後に得られるAlTiC基板に含まれる不純物の量を増加させている。より具体的には、アルミナの原料粉末として、不純物(アルミナの結晶格子中に固溶状態で存在)の量が多いものを使用する。また、主として焼結時においてアルミナ相を形成するアルミナ結晶格子に侵入する焼結助剤を、粉末混合の時点で比較的多めに混合し、焼結体中においてAl23相のc軸の格子定数を一定値以上とするものである。
切断抵抗を下げラッピングレートを向上させるという観点からは、Al23相のc軸の格子定数が12.998Å以上13.006Å以下であることが好ましく、12.999Å以上であることがより好ましく、13.000Å以上であることがさらに好ましい。
また、上記のように加工特性を向上させて生産性を高めるだけではなく、Al23相のc軸の格子定数が12.998Å以上13.006Å以下の範囲にあると、熱伝導率(W/(m・K))が比較的低くなり、これにより、DFH機構によるヘッド浮上量の制御を消費電力を低減しつつ適切に行えることが本発明者によって確認された。このようなDFH機構による浮上量の制御を好適に行うためには、Al23相のc軸の格子定数は、12.999Å以上であることがより好ましく、13.000Å以上であることがさらに好ましい。
また、本実施形態の薄膜磁気ヘッド用基板では、AlTiC基板におけるTiC相の格子定数が、4.297Å以上4.325Å以下に設定されている。ここで、TiC結晶はNaCl型の結晶(立方晶系)であり、結晶中での各方位における格子定数が同じ値(すなわちa軸の格子定数として表される値)を取る。本明細書において、TiC相の格子定数は上記の値を指す。
TiC相は、TiC0.5〜TiC1.0までの組成比を有していて良い。Tiに対するCの量が少ないほど、TiC相の格子定数は低下する傾向にある。また、TiC相のCの一部をO(酸素)および/またはN(窒素)と置換することによって格子定数は低くなる。なお、化学量論比に近いTiCの組成比を有する原料粉末(現実的に入手可能であるTiCの原料粉末であり、Tiに対するCの原子比率が0.95程度のもの)における格子定数は4.327Å〜4.330Å程度である。
AlTiC基板におけるTiC相の格子定数を上記の範囲に設定するためには、例えば、Tiに対するCの原子比率が0.5〜0.95程度のものを原料粉末として選択し、添加物として用いられるTiO2(またはTiOx(xは0.5以上1未満)、Ti23、Ti35など)や、TiNの量を調節することによって、焼結後におけるTiC相の格子定数を適切な範囲に設定することができる。さらに、焼結雰囲気中の酸素分圧や窒素分圧を適切に調節することによってもTiC相の格子定数を調節することができる。より具体的な例としては、粉末の混合、粉砕、乾燥や造粒時における、水や空気などからの酸素の取り込み量を増やす方法(酸素の増量)や、焼結の際の雰囲気中のN2分圧を13kPa〜90kPaの範囲として窒素量を増やす方法(窒素の増量)が挙げられる。
また、AlTiC基板におけるTiC相の格子定数が4.318Å〜4.325Åの範囲であるような場合には、AlTiC基板中に生じる微細な気孔(以下、マイクロポアと呼ぶことがある)の個数を低減できることがわかった。これは、TiC相においてOやNなどを含まないTiC結晶に近い組織構造が形成されている場合に比べて、TiOxやTiNなどを添加すると上記のような範囲にTiC相の格子定数は低下するが、このとき、添加したTiOxなどにより焼結性が格段に向上し、その結果、緻密な焼結体が形成されてマイクロポアの発生が防止されたものと考えられる。なお、OやNは、添加物からだけでなく、焼結雰囲気からTiC相のCの一部と置換する形で供給されてもよく、この場合にも、焼結性を向上させることができる。
ただし、添加物や焼結雰囲気によって取り込まれるOやNの量が多すぎ、焼結後におけるTiC相の格子定数が4.318Åを下回るような場合にもマイクロポアはかえって生じ易くなることがわかった。これは、TiC相がOやNを取り込む際に、置換されたCが例えばCOガスとして焼結工程中に排出され、この量が多い時にはガスが焼結体に残存し、これによって、マイクロポアが形成されるからであると考えられる。
このため、AlTiC基板におけるTiC相中のOやNの含有量が一定の範囲内にあり、焼結後のTiC相の格子定数が4.318Å〜4.325Åの範囲に入るような場合にマイクロポアの発生が低減される。マイクロポアが少ない場合、イオンミリング等によってAlTiC基板の表面にABSを形成した後にも表面粗さのばらつきが少ない状態が維持されるので、使用時にパーティクルポケット(パーティクルが挟まる隙間)に異物が巻き込まれて、HDDがクラッシュする恐れが少なくなる。
また、TiC相の格子定数が4.297Å〜4.315Åの範囲であるような場合に、切断加工性やラップレートをさらに向上させることができ、工業生産性を有意に向上させ得ることが本発明者によって確認された。これは、TiC相に含まれるOまたはNの含有量が比較的多いために、切断工程およびラッピング工程において、機械的な加工が促進されるからであると考えられる。さらに、TiC相の格子定数が4.297Å〜4.315Åの範囲であるような場合には、ラップ工程後のラップ加工面の平滑性が向上することも確認できた。
なお、比較的平滑なABSを形成可能にしながら生産性を向上させることを両立させるためには、TiC相の格子定数を、4.310Å〜4.320Åに設定してもよく、4.313Å〜4.318Åに設定してもよい。
なお、熱伝導率および切断加工性は、焼結体におけるアルミナ相とTiC相との質量比率を所定の範囲内にすることによっても制御することができる。具体的には、TiC相の質量比率を比較的大きくすることで、熱伝導率をより低くすることができる。また、TiC相の質量比率を比較的大きくすることで切断加工性は向上する。ただし、ラップ面平滑性やマイクロポアの発生数は、上記の焼結体中の質量比率によってもさほど変化しないことが発明者によって確認されている。
本実施形態において、切断加工性を向上させるためには、焼結後におけるアルミナ相とTiC相との比率が適切な範囲にあればよく、このために、焼結用混合粉末の段階で、TiC相を形成するために用いられる原料粉末(例えば、TiC粉末およびTiO2粉末)の総量が、全体の25〜50質量%であり、アルミナ相を形成するために用いられる原料粉末(例えば、アルミナ粉末)が残部であるような質量比が好ましい。特に、TiC相を形成するために用いられる原料粉末の総量が全体の35〜45質量%であればさらに好ましい。また、熱伝導率を比較的低くしてDFH機構によるヘッド浮上量を精密に制御するためには、TiC相を形成するために用いられる原料粉末の総量が全体の35〜50質量%であることが好ましい。
また、得られたAlTiC基板にABSを形成するためにイオンミリング等のドライエッチングが施されるが、上記のようにAl23相のc軸の格子定数が12.998Å以上13.006Å以下であり、TiC相の格子定数が4.297Å以上4.325Å以下である場合には、エッチング速度の異なる相が生成されにくく、ドライエッチング後の面粗度の低下が防がれることが確認できた。
以下、本発明の実施形態によるAlTiC基板の製造方法を説明する。
まず、原料粉末としてのアルミナの粉末と、TiCの粉末と、TiO2の粉末とを準備する。このとき、アルミナの粉末としては、不純物の含有量が多い粉末を準備してもよい。このためには、例えば、Na、Mg、CaなどのTi、C、Oを除く元素の量が1520〜5800ppmのアルミナの粉末を用いればよい。
また、各原料粉末は、ボールミルなどを用いて、所望の平均粒子径を持つように粉砕される。アルミナの粉末、TiCの粉末、およびTiO2の粉末のそれぞれの平均粒子径は、例えば、0.2〜0.6μm、0.02〜1.0μm、0.02〜0.2μmである。なお、本明細書において、「平均粒子径」は、レーザー回折法により求められる、d50平均粒子径(累積50%のメジアン径)を意味する。
また、粉末ごとに別個に粉砕工程を行うことなく、混合と粉砕を同時に行なってもよい。混合・粉砕工程は、ボールミルの他、振動ミル、コロイドミル、アトライター、高速ミキサー等を用いて行うことができる。
アルミナ原料粉末の平均粒子径を0.2μm〜0.6μmにする理由は、0.2μm未満では成形性が低下し、焼結工程が適切に行えない可能性があるからである。また、0.6μmを超えると、焼結体の緻密化が十分にならずに、ポアが残存したり、強度が不足するおそれがあるからである。
また、TiC原料粉末の平均粒子径を0.02μm〜1.0μmにする理由は、0.02μm未満では成形性が低下しやすく焼結工程が適切に行えない可能性があり、1.0μmを超えると焼結性が低下し、緻密な焼結体が得られにくくなるからである。
また、TiO2原料粉末の平均粒子径を0.02μm〜0.2μmにする理由は、0.02μm未満では粉末が凝集しやすくなるからであり、0.2μmを超えると焼結工程を促進させる作用が低下し、緻密な焼結体が得られにくくなるからである。
次に、各粉末を所定の割合で混合し、例えば湿式粉砕を行うことでスラリーを形成し、これを乾燥することによって焼結用混合粉末を得ることができる。ここで、焼結用混合粉末において、Al23粉末とTiC粉末とTiO2粉末との合計質量を100質量%としたとき、Al23粉末の質量%は、例えば50質量%以上75質量%以下である。また、TiC粉末とTiO2粉末との合計質量%は、例えば、25質量%以上50質量%以下である。また、TiC粉末とTiO2粉末との合計質量を100質量部としたとき、TiC粉末の質量比は、例えば、70質量部以上97.2質量部以下であり、TiO2粉末の質量比は、例えば、2.8質量部以上30質量部以下である。
なお、上記のTiC粉末およびTiO2粉末以外に、焼結後にTiC相を形成するための粉末材料(例えば、TiN粉末)を用いる場合には、TiC相を形成するための粉末材料の合計質量が、上記のAl23粉末との合計である100質量%に対して、25質量%以上50質量%以下の範囲にあってよい。
また、上記の混合工程において、焼結助剤として用いられるMgOやY23などを添加しても良い。ただし、これらの焼結助剤(添加剤)の量が少なすぎると、焼結後のアルミナ相の格子定数を大きくできない場合がある。このため、添加量は、例えば、添加剤以外を100質量%とした場合に1000ppm〜3800ppmであることが好ましく、2300ppm〜3800ppmであることがさらに好ましい。ただし、上記のようにして準備したアルミナ粉末に含まれる不純物が比較的多く、アルミナ粉末における格子定数が大きい場合には、焼結助剤の量を上記範囲より少なくしてもよい。
次に、スプレイドライヤ、圧縮造粒機、押し出し造粒機等を用いて、上記の焼結用混合粉末を顆粒にする。そして、得られた顆粒状の焼結用混合粉末を金型でプレス成形して、成形体(圧粉体)を得る。なお、上記の顆粒状の焼結用混合粉末を乾式加圧成形法や冷間等方静水圧成形法によって成形することで成形体を作製してもよい。
このようにして作製された成形体に対し、例えば、ホットプレス焼結するか、非酸化雰囲気中での常圧焼結または雰囲気加圧焼結を行うことで、焼結体としてのAlTiC基板を得ることができる。また、これらの工程に熱間静水圧プレス(HIP)処理をさらに加えてもよい。
なお、ホットプレス装置を用いる場合には、例えば、アルゴン、ヘリウム、ネオン、窒素、真空等の雰囲気中で、1400℃以上1800℃以下の温度にて加圧焼結を行えばよい。焼結温度を1400℃以上1800℃以下に設定する理由は、1400℃未満では十分に焼結できないおそれがあり、また、1800℃を超えるとアルミナ結晶およびTiCの結晶の粒成長が顕著になって、加工後の面粗さを低くできなくなる上に、機械的特性が大きく下がるおそれがあるからである。
このように、加圧焼結を行えば、緻密な焼結体を作製し、強度が良好なAlTiC基板を得ることができる。なお、上記のように加圧焼結工程を行った後に、熱間等方加圧焼結(HIP)をさらに行なってもよい。例えば、l50MPa以上200MPa以下の圧力を加え、1350℃以上1700℃以下の温度で熱間等方加圧焼結を行なうことで、抗折強度を700MPa以上にすることができる。特に、マイクロポアを減らすために、温度1500℃以上1700℃以下で熱間等方加圧焼結(HIP)を行なってもよい。
得られたAlTiC基板の基板面に対して、公知の薄膜堆積プロセスによって複数の素子や、絶縁膜(例えばAl23膜)を形成する。さらに、図2(b)に示すように、素子23が形成されたAlTiC基板21をダイシングソーなどを用いて棒状(ロウバー)に切断した後、切断面(素子23形成面に対して垂直な側面)をラッピングすることによって厚さを調節するとともに平滑な面を形成する。さらに、イオンミリング法などによって、平滑化された面において空気流に適合するABSを形成し、最後にチップに切断することによってスライダを作製することができる。
なお、ABSは、イオンミリング法や反応性イオンエッチング法などのドライエッチング工程において加工条件を適宜選択することで、所望の形状に形成され得る。例えば、ABSの平均粗さRa(本明細書においては、JIS規格番号JIS B 0601:1944、JIS B 0031:1994にて定義されている算術平均粗さRaを意味する)を25nm以下にするためには、イオンミリング法において、加速電圧を600Vに設定し、Arイオンを用いて18nm/分のミリングレートで75〜125分間加工すればよく、反応性イオンエッチング法においては、ArガスおよびCF4ガスをそれぞれ流量3.4X10-2Pa・m3/sおよび1.7X10-2Pa・m3/sとして混合ガスの圧力が0.4Paとなる条件で加工を行えばよい。
以下、本発明の実施例および比較例を説明する。
下記の表1は、本発明の実施例の試料No.1〜19および比較例の試料No.101〜113として、原料粉末としてのアルミナ粉末、TiC粉末、TiO2粉末の組成比(いずれも質量%)および焼結助剤としてのMgO粉末の量(アルミナ粉末、TiC粉末、TiO2粉末の合計質量を100質量部としたときの外部質量部)が異なる試料を示す。
また、各試料について、焼結体における格子定数(アルミナ相のc軸の格子定数およびTiC相の格子定数)を示す。さらに、評価項目として、切断加工性(本)および熱伝導率(W/(m・K))を示す。ここで、熱伝導率が20W/m・K以下となる場合をDFH制御を行いやすいスライダに適した試料として扱うこととした。また、切断時の切断抵抗が0.3kW以下で30本切断できた試料を、切断加工性(生産性)に優れた試料として扱うこととした。30本切断以前に切断抵抗が0.3kWに達した試料については、その時点で切断できた本数を表1に示している。なお、30本という本数は、ダイシングソーなどを用いて切断する際の、標準的なドレス(目直し)間隔である。切断本数が30本に満たない場合、比較的高い頻度でドレッシングを行うことが必要となり、生産速度を十分に向上させることが困難になる。
Figure 0006359897
実施例No.1、3、4、6〜9、11、13、15、18および比較例No.101〜113において、アルミナ原料粉末としては、コランダム型のαアルミナに近いものが利用されており、そのc軸の格子定数が12.983Åであった。このような格子定数を有するアルミナ原料粉末は、不純物としてのNa、Mg、Caなどを10ppm以下含むものであってよい。また、本実施例No.2、5、10、12、14、16、17、19において、アルミナ原料粉末として不純物を含むものが利用されており、そのc軸の格子定数が12.997Åであった。このような格子定数を有するアルミナ原料粉末は、不純物としてのNa、Mg、Caなどを例えば500ppm〜2000ppm程度含むものであってよい。ただし、表1に示すように焼結助剤として添加するMgOの添加量に応じて、焼結体(AlTiC基板)におけるアルミナ相のc軸の格子定数は変化する。
なお、各種組成の試料における格子定数は、次の方法で測定した。即ち、各試料より30mm×30mm×1mm程度の大きさの試験片を10枚切り出し、切り出した各試料にCuターゲットのK特性X線を管電圧45kV、管電流40mAで照射し、回折角2θ=20°〜80°の範囲で、ステップサイズ0.017°、スキャンスピード0.42°/secでスキャンして得られたX線回折パターンをPANalytical社製X’Pert High Score Plusのリートベルト解析プログラムを用いることにより、Al23相およびTiC相の格子定数を求める。必要に応じて、得られたX線回折パターンに対して、Kα分離、バックグラウンド除去、スムージングなどのデータ処理を施しても良い。この手法により、切り出したそれぞれの試験片の任意の10箇所で測定を行ない、10枚×10箇所の平均値を算出して各試料の格子定数値とした。
図4は、各試料についてのアルミナ相のc軸の格子定数とTiC相の格子定数との分布を示している。なお、図4において、横軸はアルミナ相のc軸の格子定数であり、縦軸はTiC相の格子定数である。
表1および図4からわかるように、アルミナ相のc軸の格子定数が12.998Å以上13.006Å以下の範囲内にあり、かつ、TiC相の格子定数が4.297Å以上4.325Å以下の範囲内にある試料No.1〜No.19の実施例において、切断加工性およびDFH制御性の双方において良好であることが確認された。また、表1には示していないが、試料No.1〜19では、焼結体においてアルミナ相およびTiC相以外のエッチング速度の異なる相(第3の相)が生成されておらず、ABS形成のためのドライエッチング後にも面粗度の低下が防止されることが確認できた。
特に、アルミナ相のc軸の格子定数が13.000Å以上である場合(試料No.8〜15、17〜19)には、TiC相の格子定数が4.297Å〜4.325Åまでの広い範囲で、熱伝導率19W/(m・K)以下を確実に実現できることがわかる。
また、TiC相の格子定数が4.297Å〜4.300Åの範囲内にある試料No.6、14〜16、18、および、19においては、熱伝導率が18W/(m・K)以下と比較的低くなっており、DFH制御特性が良好であることが確認できる。なかでも、アルミナ相のc軸の格子定数が12.999Å以上13.006Å以下であり、かつ、TiC相の格子定数が4.297Å以上4.300Å以下である、試料No.14、15、18、および、19においては、熱伝導率が16W/(m・K)以下と非常に低くなっており、DFH制御特性が特に良好であることが確認できる。なお、TiC相の格子定数が4.297Å以上4.300Å以下であったとしても、アルミナ相のc軸の格子定数が12.998Åの場合(試料No.6)には、熱伝導率が18W/(m・K)であり、16W/(m・K)以下とはならなかった。
また、切断加工性について言えば、TiC相の格子定数が4.297Å〜4.325Åの比較的広い範囲において、アルミナ相のc軸の格子定数が12.998Å以上であれば、30本であり十分な切断加工性が得られることが確認できた。特に、TiC相の格子定数が4.297Å〜4.315Åの範囲であるような場合には、切断加工性が高く生産性が向上された状態において、ラップ加工面の平滑性も1.6nm程度以下に抑えることができ、形状特性に優れたAlTiC基板が得られる。
また、表1には示していないが、アルミナ相のc軸の格子定数が12.998Å〜13.006Åの範囲内にあり、かつ、TiC相の格子定数が4.318Å〜4.325Åの範囲であるような場合(試料No.1、7、10、17)には、マイクロポア(焼結体内部に存在する微小気孔)の個数が1個/□50μm以下となり、イオンミリング法などによって特に平滑なABSが形成できることが確認できた。なお、TiC相の格子定数が4.318Å未満の場合には、マイクロポアの個数が2個/□50μmとなる場合もあることが確認されている。なお、本明細書において、マイクロポアの個数とは、原子間力顕微鏡(AFM)により撮影された50μm×50μmの像の中に存在するφ0.2μm以上のサイズの空隙部の数を意味している。
なお、比較例の試料No.108および109については、切断加工性および熱伝導率の双方が良好であったものの、ABSを形成するためのドライエッチング工程後において、面粗度が著しく低下することが確認された。これは、TiC相の格子定数が低すぎる場合、焼結体においてエッチング速度の異なる第3の相(例えば、Al2TiO5相)が形成されたからであると考えられる。
また、比較例No.112においても、TiC相の格子定数が低く、かつ、アルミナ相のc軸の格子定数が大きいため、比較例No.108および109と同様に、エッチング速度の異なる第3の相が形成され、ドライエッチング工程後において面粗度が著しく低下することが確認された。
また、比較例No.110および111については、TiC相の格子定数が高く、かつ、アルミナ相のc軸の格子定数が大きく、アルミナ相およびTiC相の純度が低い。この場合にも、イオンミリングなどのドライエッチング時に速度が異なる領域が形成されるようであり、ABSにおいてピット(凹部)が形成されることが確認された。
このような理由から、表1には示していないが、実施例No.1〜No.19の場合とは異なり、比較例No.108〜112では、十分なABS面の平滑性が得られず、スライダとしての使用に適したものが得られない。
以上、本発明の実施形態による薄膜磁気ヘッド用基板について説明したが、上記の磁気ヘッド用基板を用いて作製された磁気ヘッドスライダを利用して、公知の方法によってハードディスクドライブ装置を作製することができる。
図5に示すように、本発明の実施形態によるハードディスクドライブ装置100は、例えば、上記に説明した構成を有する磁気ヘッドスライダ2と、磁気ディスク(プラッタ)4と、磁気ディスク4を回転させるモータ6と、磁気ディスク4に対する磁気ヘッドスライダ2の位置決めや磁気ヘッドスライダ2による書き込み/読み出し動作などを制御する制御装置8などを備える。制御装置8は、外部からの読み書き信号に応じて、ヘッドスライダ2をプラッタ4上の特定の位置に移動させるように構成されていてよい。このハードディスクドライブ装置において、書き込み/読み出し動作中における高記録密度での記録を実現することができる。
本発明の実施形態によるAl23−TiC系薄膜磁気ヘッド用基板は、高記録密度を実現するハードディスクドライブにおいて好適に用いられる。
2 磁気ヘッドスライダ
4 プラッタ
6 モータ
8 制御装置
10 薄膜磁気ヘッドスライダアセンブリ
11 基板
12、23 素子
13 ディスク
14 ジンバル
20 薄膜磁気ヘッドスライダ
21 AlTiC基板
22、24 Al23
25 ABS形成面

Claims (6)

  1. Al相とTiC相とを含むAl−TiC系薄膜磁気ヘッド用基板であって、
    前記Al相のc軸の格子定数が12.998Å以上13.006Å以下であり、かつ、前記TiC相の格子定数が4.297Å以上4.314Å以下である、Al−TiC系薄膜磁気ヘッド用基板。
  2. 前記Al相のc軸の格子定数が12.999Å以上である、請求項1に記載のAl−TiC系薄膜磁気ヘッド用基板。
  3. 前記Al相のc軸の格子定数が13.000Å以上である、請求項2に記載のAl−TiC系薄膜磁気ヘッド用基板。
  4. 前記TiC相の格子定数が4.297Å以上4.300Å以下である、請求項2に記載のAl−TiC系薄膜磁気ヘッド用基板。
  5. 請求項1からのいずれかに記載のAl−TiC系薄膜磁気ヘッド用基板を用いた磁気ヘッドスライダ。
  6. 請求項に記載の磁気ヘッドスライダを備えたハードディスクドライブ装置。
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