本発明は、電子写真法、静電記録法等によって形成される静電荷像を現像するためのトナーの製造方法に関し、さらに詳しくは、懸濁重合法により粒径分布のシャープな重合トナー粒子を効率よく製造することができる静電荷像現像用トナーの製造方法に関する。
従来より、電子写真装置や静電記録装置等において、電気的または磁気的潜像は、トナーにより顕像化されている。例えば、電気写真法では、種々の方法により感光体上に静電荷像(潜像)を形成し、次いで、該潜像をトナーを用いて現像し、トナー画像を形成している。トナー画像は、必要に応じて紙等の転写材上に転写され、次いで、加熱、加圧、溶剤蒸気など種々の方式を用いて、転写材上に定着される。
静電荷像現像に使用されるトナーは、一般に、熱可塑性樹脂中に、着色剤、帯電制御剤、オフセット防止剤等を溶融混練して均一に分散させた後、粉砕し、所望の粒径になるように分級することにより製造されている。この製造方法(粉砕法)によれば、実用的な特性を有するトナーを製造することができるが、粉砕及び分級に多大の設備費が必要であること、粉砕時に多量のエネルギーを消費すること、シャープな粒径分布のトナーを得ることが困難であることなど、多くの問題点を有している。そのため、トナー材料の選択にもおのずと制限がある。
例えば、粉砕法において、熱可塑性樹脂と着色剤等を溶融混練した樹脂組成物には、経済的に使用可能な装置により粉砕し、分級し得ることが要求される。そのため、溶融混練した樹脂組成物は、充分に脆く、粉砕し易いものであることが求められる。ところが、充分に脆い樹脂組成物を粉砕すると、極めて広範囲の粒径分布を有するトナー粒子が生成する。良好な解像度と諧調性のある複写画像を得ようとすると、粉砕物の中から、多量の微粉及び粗粉を分級により除去しなければならず、収率が非常に低下する。
近年、複写画像のフルカラー化、高精細化、高品質化を図るために、粒径分布のシャープなトナーまたは粒径の小さなトナーが要求されている。しかしながら、粉砕法では、粒径分布が従来よりもシャープなトナーを製造することが極めて困難である。また、粉砕法により粒径の小さなトナーを製造するには、粉砕時に多大のエネルギーを必要とすることに加えて、極微粒子が大量に発生して、トナーの粒径分布がブロードになり過ぎるという問題がある。この極微粒子は、複写画像の高品質化を妨げるものであるが、分級による除去が困難である。
これらの粉砕法に伴う問題点を解決するために、懸濁重合により、直接、粒径分布のシャープなトナー(重合トナー粒子)を製造する方法が提案されている。この懸濁重合法では、重合性単量体、着色剤、帯電制御剤、オフセット防止剤、重合開始剤等を均一に溶解または分散せしめた重合性単量体組成物を、分散安定剤を含有する水または水を主体とする水系分散媒中に投入し、高剪断力を有する混合装置等を用いて分散し、造粒した後、造粒した重合性単量体組成物を懸濁重合して重合トナー粒子を製造している。
この懸濁重合法によれば、粉砕法における溶融混練工程や粉砕工程を省略することができる。しかしながら、従来の懸濁重合法は、(1)重合性単量体組成物の造粒工程において、所望の粒径に造粒することが困難であること、(2)生成する重合トナー粒子の粒径分布が広く、均質でシャープな粒径分布のトナーを得ることが難しいこと、(3)重合性単量体組成物を水系分散媒体中に均一かつ微粒子状に分散させるために、分散安定剤の使用量を増やすと、該分散安定剤が重合トナー粒子に残存し、画質の低下をもたらす、などの問題点を有している。
すなわち、懸濁重合法では、重合性単量体と着色剤などを均一に攪拌、混合して重合性単量体組成物を調製し、次いで、重合性単量体組成物を分散媒体中に投入し、攪拌、混合して微粒子化する。ところが、液状の重合性単量体を液状の分散媒体中で所望の粒径の微粒子に造粒することは、極めて困難である。そして、懸濁重合により生成する重合トナー粒子は、粒径分布がブロードであるため、分級工程を必要とするが、収率が低く生産性が悪い。しかも、粉砕法においては、分級工程で除去された微粒子及び粗粒子は、再度原料に混合し、混練、粉砕、分級工程を経て再使用できるのに対し、分級工程で除去された重合トナー粒子は、懸濁重合法において再使用することが困難である。
また、懸濁重合法において、水または水を主体とする水系分散媒体中で、重合性単量体組成物の造粒及び重合反応を行っているが、その際、重合性単量体組成物粒子の分散を安定化させるために分散安定剤が使用されている。分散安定剤としては、一般に、保護コロイド膜を形成し、立体障害による反発力を発現させる水溶性高分子と難水溶性無機物質とがある。水溶性高分子としては、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ゼラチン等が知られている。難水溶性無機物質としては、リン酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の難水溶性塩類;タルク、珪酸等の無機高分子物質;酸化アルミニウム、酸化チタン等の金属酸化物;水酸化アルミニウム、水酸化第二鉄等の金属水酸化物;等が知られている。
ところが、これらの分散安定剤は、親水性が強いため、重合トナー粒子表面に残存すると、主にトナーの電気抵抗や帯電性などの電気的な性質が低下する。したがって、分散安定剤が多量に残存する重合トナー粒子を用いると、現像性能や転写効率が低下する。さらには、複写濃度の低下、解像度の低下、かぶりの増大等がもたらされ、トナーとしての実用性能が損なわれる。分散安定剤の使用量を減少させると、重合性単量体組成物粒子の粒度が粗くなり、粒径分布もブロードなものとなる。
従来、懸濁重合法により重合トナー粒子を製造する方法において、前記のような問題点を克服し、効率よく粒度分布のシャープな粒子を形成する方法として、幾つかの提案がなされている。例えば、粉末分散剤と分散媒からなる分散液を加圧する加圧工程と、加圧された分散液を低圧部へ吐出して上記粉末分散剤をよく分散させた後、重合性単量体混合物を該分散液中に加えて造粒する工程を含む重合トナーの製造方法が開示されている(特許文献1)。該文献1記載の方法では、造粒工程において、TKホモミキサー(特殊機化工業製)などの通常の高剪断力攪拌装置が使用されている。
また、重合性単量体組成物を、分散安定剤を含有する液状分散媒体中に分散させて造粒するに際し、造粒容器内に配置した2以上の高剪断力攪拌装置を用いて造粒する静電荷現像用トナーの製造方法が開示されている(特許文献2)。該文献2記載の方法では、造粒工程において、タービン型攪拌機であるTKホモミキサー(特殊機化工業製)2本が用いられている。
また、重合性単量体組成物を水系媒体中に予備分散し、次いで、造粒工程において、分散液を、一層または多層の櫛歯型同心リングである回転子及び固定子の間隙を回転子内側から固定子外側方向に流す方法が開示されている(特許文献3)。該文献3記載の方法では、実際には、重合性単量体組成物を含有する分散液を、高能率分散機エバラマイルダー〔(株)荏原製作所製〕に供給して造粒している。
しかしながら、本発明者らの検討結果によれば、これらの公報に開示されている方法は、いずれも所望の粒径とシャープな粒径分布を有する重合トナー粒子を得る上で、いまだ充分な方法ではない。したがって、比較的少量の分散安定剤を使用しても、造粒工程において、粒径が小さく、かつ、粒径分布がシャープな重合性単量体組成物粒子を水系分散媒体中に効率よく生成させることができ、そして、懸濁重合により、所望の粒径とシャープな粒径分布を有する重合トナー粒子を得ることができる新たな製造方法が求められている。
特開昭63−113561号公報
特開昭63−165869号公報
特開平2−32363号公報
本発明の目的は、懸濁重合法により、粒径(体積平均粒径)の制御が容易で、しかも粒径分布(体積平均粒径/個数平均粒径)がシャープな重合トナー粒子を効率よく、安定的に製造することができる静電荷像現像用トナーの製造方法を提供することにある。特に、本発明の目的は、懸濁重合法により、小粒径で、かつ、粒径分布が極めてシャープなトナーを製造することができる静電荷像現像用トナーの製造方法を提供することにある。本発明の他の目的は、トナーの粒径分布が極めてシャープであり、しかも電気的な性質が良好で、画質特性の優れた静電荷像現像用トナーの製造方法を提供することにある。
本発明者らは、前述した懸濁重合法による静電荷像現像用トナーの製造方法における諸問題を克服するために鋭意研究した結果、造粒工程において、重合性単量体組成物を、リン酸カルシウムを含有する水系分散媒体中で、高速で回転するローターとそれを取り囲むスクリーンにより生じる剪断力、衝突力、圧力変動、キャビテーション、及びポテンシャルコアの作用により造粒することにより、体積平均粒径の制御が容易で、しかも小粒径であっても粒径分布が極めてシャープな重合トナー粒子を効率よく安定的に製造し得ることを見いだし、その知見に基づいて本発明を完成するに至った。
かくして、本発明によれば、少なくとも重合性単量体と着色剤とを含む重合性単量体組成物を、リン酸カルシウムを含有する水系分散媒体中で、高速で回転するローターとそれを取り囲むスクリーンにより生じる剪断力、衝突力、圧力変動、キャビテーション、及びポテンシャルコアの作用により造粒し、次いで、造粒された重合性単量体組成物を懸濁重合して重合トナー粒子を形成することを特徴とする静電荷像現像用トナーの製造方法が提供される。
本発明の好ましい実施態様として、以下の(1)及び(2)が提供される。
(1)ローターが4,500〜21,500rpmの回転数で回転する攪拌羽根であり、それを取り囲むスクリーンが多数のスリット部を設けた固定環であり、そして、ローターとスクリーンとの間隙が0.1〜1.3mmである前記の製造方法。
(2)生成する重合トナー粒子の体積平均粒径が2〜20μm、好ましくは4〜10μmで、粒径分布(体積平均粒径/個数平均粒径)が1.6以下である前記の製造方法。
本発明によれば、懸濁重合法による静電荷像現像用トナーの製造において、造粒工程に高速で回転するローターとそれを取り囲む固定されたスクリーンより生じる剪断力、衝突力、圧力変動、キャビテーション、及びポテンシャルコアの作用を応用した造粒装置を使用することにより、従来用いられてきた造粒装置よりも体積平均粒径の制御が容易で、しかも小粒径であっても粒径分布が極めてシャープなトナーを、効率よく安定的に製造し得る製造方法が提供される。
本発明の製造方法によれば、従来法に比べてリン酸カルシウムの使用量が少量でも、生成するトナーの体積平均粒径は小さく、粒径分布が極めてシャープである。したがって、重合トナー粒子表面に残留するリン酸カルシウムの量を少なくすることが可能である。また、優れたカラートナーやカプセルトナーを製造することができる。このように、本発明によれば、着色剤を含有し、粒径分布が極めて狭く、しかも画像特性の優れたトナーを得ることができる。
以下、本発明について詳述する。
本発明の製造方法では、先ず、少なくとも重合性単量体と着色剤とを含む重合性単量体組成物を調製する。そのために、重合性単量体、着色剤、帯電制御剤、オフセット防止剤、重合開始剤等を、高剪断力を有する混合機等を用いて、均一に溶解または分散せしめる。一方、リン酸カルシウムを含有する水系分散媒体を調製する。重合性単量体組成物を、リン酸カルシウムを含有する水系分散媒体中に投入し、通常、プロペラ式撹拌機のような撹拌装置で1〜60分間程度攪拌して予備分散する。次いで、予備分散した分散液は、高速で回転することができるローターとそれを取り囲むスクリーンを備えた分散機に、ポンプ等の送液手段を用いて供給する。
本発明の製造方法において、高速で回転するローターとそれを取り囲むスクリーンにより生じる剪断力、衝突力、圧力変動、キャビテーション、及びポテンシャルコアの作用により造粒することができる装置としては、エム・テクニック株式会社製のクレアミックス(CLEARMIX)のような分散機を挙げることができる。
前記クレアミックスは、被処理液を高速で回転するローターとそれを取り囲む固定されたスクリーンにより、剪断力、衝突力、圧力変動、キャビテーション、及びポテンシャルコアの作用を生じさせる構造を有しており、これらの相乗効果により乳化・分散を行うことができる。すなわち、クレアミックスは、一般にエマルジョンの生成に使用されているが、本発明者らは、この装置が、懸濁重合法による重合トナー粒子の製造方法において、重合性単量体組成物を、リン酸カルシウムを含有する水系分散媒体中で、分散、懸濁させて微粒子化するための造粒装置として有効であることを見いだした。
図1及び図2を参照しながら、エム・テクニック株式会社製のクレアミックスを造粒装置として使用する場合を例に挙げて説明する。
図1において、ローター1は、通常、4,500〜21,500rpmの回転数で回転することができる攪拌羽根であり、それを取り囲むスクリーン2は、多数のスリット部を設けた固定環である。ローター1とスクリーン2との間隙(クリアランス)は、通常、0.1〜1.3mmである。重合性単量体組成物を水系分散媒体中に予備分散した前記の分散液(予備混合液)は、図2に示す予備混合液入り口4から、ローター1とスクリーン2との帯域中に供給される。ローター1とスクリーン2は、例えば、約500ccのポット(加圧真空アタッチメント)3により囲まれており、温度センサー6、冷却ジャケット7、及び冷却コイル8が配置されている。高速回転するローター1とスクリーン2により機械的エネルギーを与えられて、分散液中の重合性単量体組成物は、造粒される。
すなわち、ローター1とスクリーン2とで形成される帯域に供給された分散液は、高速回転するローター1とそれを取り囲む固定されたスクリーン2により、剪断力、衝突力、圧力変動、キャビテーション、及びポテンシャルコアの作用を受けて、スクリーン2の間隙(スリット)より、ポット3内に噴出される。これらの作用の相乗効果により、小粒径で粒径分布のシャープな液滴(重合性単量体組成物粒子)が形成される。重合性単量体組成物粒子を含む分散液は、出口(分散、懸濁液出口)5から、次の重合工程に送られる。
高速回転するローター1とそれを取り囲む固定されたスクリーン2により重合性単量体組成物が分散液中で微粒化される機構としては、次のような作用を挙げることができる。(1)高速で回転するローター(攪拌羽根)の表面付近では、大きな速度勾配が存在し、高速剪断速度域を形成する。剪断力を受けた分散液は、微粒化する。(2)液体中で回転する羽根の後方には、真空部(キャビテーション)が発生する。これにより発生した気泡は、流速が低下し圧力が上がった時点で壊滅するが、このとき、気泡が圧縮されて衝撃圧力が気泡内に生じ、この衝撃により微粒化が行われる。(3)高速で回転するローターにより分散液に与えられた圧力エネルギーが急激に解放されると、運動エネルギーが増大する。分散液が、ローターとそれを取り囲む固定環(スクリーン)の解放部(スリット)と密閉部を繰返し通過する際に、圧力波が生じる。これらにより、微粒化が行われる。(4)大きな運動エネルギーを持っている分散液がスクリーンその他の壁面に衝突する際に、微粒化が行われる。(5)速度エネルギーを持った分散液が、スクリーンのスリット部を通過する際に、噴流(ジェット流)となる。噴流中のポテンシャルコア(粘性の作用を受けない速度領域)では、周囲の流体が高速度で吸引され、非常に高いエネルギーが与えられて、微粒化が行われる。実際には、これらの作用の相乗効果により、小粒径であっても粒径分布のシャープな造粒が行われると推定される。
高速回転するローターとそれを取り囲む固定されたスクリーンによる造粒工程では、ローターの回転速度を速くすることが、粒径を小さくし、粒径分布をシャープにする上で好ましい。ローターの回転数は、通常、4,500〜21,500rpmであり、好ましくは10,000〜21,500rpm、より好ましくは15,000〜21,000rpmである。回転数は、回転センサーによる実測表示値である。処理時間(連続式の場合は滞留時間)を長くすることが、粒径を小さくし、粒径分布をシャープにする上で好ましい。処理時間は、通常、10〜300秒間、好ましくは30〜250秒間、より好ましくは50〜240秒間である。ローターとスクリーンとの間隙(クリアランス)は、一般に、0.1〜1.3mm、好ましくは0.2〜1.0mm程度である。
重合トナー粒子の粒径及び粒径分布は、ローター及びスクリーンの形状を選択することによっても、調整することができる。具体的には、例えば、エム・テクニック株式会社製のクレアミックスに使用されるローターR1〜R4、及びスクリーンS1.0−24、S1.5−24、S1.5−18、S2.0−18、S3.0−9などの標準装備を組み合わせて使用することができるが、所望の形状のものを自製することも可能である。
重合トナー粒子の粒径及び粒径分布は、リン酸カルシウムの使用量、重合性単量体組成物とリン酸カルシウムを含有する水系分散媒体との比率、水系分散媒体の粘度等を調節することによっても、調整することができる。例えば、重合性単量体組成物とリン酸カルシウムを含有する水系分散媒体との比率は、造粒のし易さや重合反応中での粒子の分散安定性を考慮すると、系中の重合性単量体組成物の濃度が5〜50重量%、好ましくは10〜40重量%、より好ましくは20〜35重量%程度となる範囲が好ましい。
本発明で使用する重合性単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−クロロスチレン等の芳香族ビニル単量体類;アクリロニトリル等の不飽和ニトリル類;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等の不飽和(メタ)アクリル酸エステル類;ブタジエン、イソプレン等の共役ジオレフィン類;等を挙げることができる。これらの重合性単量体は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
本発明で使用する着色剤としては、例えば、カーボンブラック、チタンホワイト、ニグロシンベース、アニリンブルー、カルコオイルブルー、クロムイエロー、ウルトラマリンブルー、オリエントオイルレッド、フタロシアニンブルー、マラカイトグリーンオクサレート等の染顔料類;コバルト、ニッケル、三二酸化鉄、四三酸化鉄、酸化鉄マンガン、酸化鉄亜鉛、酸化鉄ニッケル等の磁性粒子;などを挙げることができる。
磁性カラートナー用としては、例えば、C.I.ダイレクトレッド1、C.I.ダイレクトレッド4、C.I.アシッドレッド1、C.I.ベーシックレッド1、C.I.モーダントレッド30、C.I.ダイレクトブルー1、C.I.ダイレクトブルー2、C.I.アシッドブルー9、C.I.アシッドブルー15、C.I.ベーシックブルー3、C.I.ベーシックブルー5、C.I.モーダントブルー7、C.I.ダイレクトグリーン6、C.I.ベーシックグリーン4、C.I.ベーシックグリーン6等がある。顔料としては、黄鉛、カドミウムイエロー、ミネラルファストイエロー、ネーブルイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、パーマネントイエローNCG、タートラジンレーキ、赤口黄鉛、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、ベンジジンオレンジG、カドミウムレッド、パーマネントレッド4R、ウオッチングレッドカルシウム塩、エオシンレーキ、ブリリアントカーミン3B、マンガン紫、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、ファーストスカイブルー、インダンスレンブルーBC、クロムグリーン、酸化クロム、ピグメントグリーンB、マラカイトグリーンレーキ、ファイナルイエローグリーンG等がある。
二成分フルカラー用トナーとしては、次のようなものが挙げられる。
マゼンタ用着色顔料としては、C.I.ピグメントレッド1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、21、22、23、30、31、32、37、38、39、40、41、48、49、50、51、52、53、54、55、57、58、60、63、64、68、81、83、87、88、89、90、112、114、122、123、163、202、206、207、209、C.I.ピグメントバイオレット19、C.I.バットレッド1、2、10、13、15、23、29、35等が挙げられる。
マゼンタ用染料としては、C.I.ソルベントレッド1、3、8、23、24、25、27、30、49、81、82、83、84、100、109、121、C.I.ディスパースレッド9、C.I.ソルベントバイオレット8、13、14、21、27、C.I.ディスパースバイオレット1等の油溶染料;C.I.ベーシックレッド1、2、9、12、13、14、15、17、18、22、23、24、27、29、32、34、35、36、37、38、39、40、C.I.ベーシックバイオレット1、3、7、10、14、15、21、25、26、27、28等の塩基性染料;が挙げられる。
シアン用着色顔料としては、C.I.ピグメントブルー2、3、15、16、17、C.I.バットブルー6、C.I.アシッドブルー45及びフタロシアニン骨格にフタルイミドメチル基を1〜5個置換した銅フタロシアニン顔料等が挙げられる。
イエロー用着色顔料としては、C.I.ピグメントイエロー1、2、3、4、5、6、7、10、11、12、13、14、15、16、17、23、65、73、83、138、C.I.バットイエロー1、3、20等が挙げられる。
染顔料類は、重合性単量体100重量部に対して、通常、0.1〜20重量部、好ましくは1〜10重量部の割合で用いられる。磁性粒子は、重合性単量体100重量部に対して、通常、1〜100重量部、好ましくは5〜50重量部の割合で用いられる。
重合性単量体組成物には、必要に応じて油溶性の重合開始剤、分子量調整剤、架橋性単量体、離型剤、帯電制御剤を添加することができる。
油溶性の重合開始剤としては、使用する単量体に可溶なものであればよく、例えば、メチルエチルパーオキシド、ジ−t−ブチルパーオキシド、アセチルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ−イソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−t−ブチルジパーオキシイソフタレート等の過酸化物類;2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、1,1′−アズビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)等のアゾ化合物;などを挙げることができる。油溶性の重合開始剤は、重合性単量体100重量部に対して、通常、0.1〜20重量部、好ましくは1〜10重量部の割合で用いられる。重合開始剤は、重合性単量体組成物中に予め添加することができるが、場合によっては、造粒工程終了後の懸濁液に添加することもできる。
分子量調整剤としては、例えば、t−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、n−オキチルメルカプタン等のメルカプタン類;四塩化炭素、四臭化炭素等のハロゲン化炭化水素類;などを挙げることができる。これらの分子量調整剤は、重合開始前、あるいは、重合の途中で添加することができる。分子量調整剤は、重合性単量体100重量部に対して、通常、0.01〜10重量部、好ましくは0.1〜5重量部の割合で用いられる。
架橋性単量体としては、例えば、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の多官能性単量体類を挙げることができる。これらの架橋性単量体は、重合開始前、あるいは、重合の途中で添加することができる。架橋性単量体は、重合性単量体100重量部に対して、通常、0.01〜10重量部、好ましくは0.5〜5重量部の割合で用いられる。
離型剤としては、例えば、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、低分子量ポリブチレン等の低分子量ポリオレフィン類、及びワックス類を挙げることができる。離型剤は、重合性単量体100重量部に対して、通常、0.1〜20重量部、好ましくは1〜10重量部の割合で用いられる。
帯電制御剤は、生成するトナーの帯電性を向上させるために、重合性単量体組成物中に含有させることが好ましい。帯電制御剤としては、各種の正帯電性または負帯電性の帯電制御剤を用いることができる。帯電制御剤としては、例えば、ニグロシンN01(オリエント化学社製)、ニグロシンEX(オリエント化学社製)、スピロブラックTRH(保土ケ谷化学社製)、T−77(保土ケ谷化学社製)、ボントロンS−34(オリエント化学社製)、ボントロンE−81(オリエント化学社製)、ボントロンE−84(オリエント化学社製)、ボントロンE−89(オリエント化学社製)、ボントロンF−21(オリエント化学社製)、COPY CHRGE NX UP434(ヘキストインダストリー社製)、COPY CHRGE NEG UP2036(ヘキストインダストリー社製)、TNS−4−1(保土ケ谷化学社製)、TNS−4−2(保土ケ谷化学社製)、LR−147(日本カーリット社製)等を挙げることができる。帯電制御剤は、重合性単量体100重量部に対して、通常、0.01〜10重量部、好ましくは0.1〜5重量部の割合で用いられる。
さらに、着色剤のトナー粒子中への均一分散化を目的として、オレイン酸、ステアリン酸等の滑剤;シラン系またはチタン系カップリング剤等の分散助剤;極性基含有高分子分散助剤;などを重合性単量体組成物中に存在させてもよい。このような滑剤や分散助剤は、着色剤の重量を基準として、通常、1/1000〜1/50程度の割合で用いられる。
本発明では、水系分散媒体として、水または水を主成分とする水性液体を用いることができる。分散安定剤としては、リン酸カルシウムを挙げることができる。リン酸カルシウムは、水系分散媒体100重量部に対して、通常、0.1〜20重量部、好ましくは0.5〜18重量部の割合で用いられる。
本発明において、重合性単量体組成物と水系分散媒体との割合は、特に限定されないが、分散媒体中での造粒のし易さや重合反応中での粒子の分散安定性を考慮すると、系中の重合性単量体組成物の濃度が、通常、5〜50重量%、好ましくは10〜40重量%、より好ましくは20〜35重量%程度となる範囲が好ましい。
造粒工程の後、造粒された重合性単量体組成物は、常法により懸濁重合して重合トナー粒子を形成する。懸濁重合反応終了後、通常行う酸洗い、及び水洗により粒子表面に残留しているリン酸カルシウムを除去し、しかる後、脱水、乾燥することにより重合トナー粒子を得ることができる。本発明の方法によれば、懸濁重合法によるトナーの製造方法において、従来より造粒装置として汎用されている各種の高剪断力撹拌装置を用いて造粒を行った場合と比較して、リン酸カルシウムの使用量が比較的少量であっても、小粒径で粒径分布のシャープな重合トナー粒子を得ることができる。本発明の製造方法によれば、体積平均粒径が2〜20μmで、粒径分布(体積平均粒径/個数平均粒径の比)が1.6以下の粒径分布がシャープな重合トナー粒子を得ることができる。なお、本発明の方法は、低温定着性を具備するカプセルトナーへも適用することができる。
以下に参考例、実施例及び比較例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。なお、参考例、実施例及び比較例中の部及び%は、特に断りのない限り、重量基準である。
[参考例1]
スチレン 70部
n−ブチルメタクリレート 30部
カーボンブラック(プリンテックス150T、デグサ社製) 5部
帯電制御剤(スピロンブラックTRH、保土ケ谷化学社製) 1部
ジビニルベンゼン 1部
2,2′−アゾビスイソブチロニトリル 2部
上記成分を、高剪断力を有する混合機であるTK式ホモミキサー(特殊機化工社製)により6000rpmの回転数で撹拌、混合して、均一分散した重合性単量体組成物を調製した。
一方、イオン交換水250部にポリビニルアルコール(GH−23、日本合成化学社製)2.5部を溶解して、分散安定剤含有水溶液を調製した。このポリビニルアルコール分散安定剤含有水溶液に、上記重合性単量体組成物を投入し、プロペラ式撹拌機を用いて撹拌、混合した。
500cc加圧真空アタッチメント、ローター(R−2)、及びスクリーン(S−1.0−24)を装着し(ローターとスクリーンとの間隙は0.2mm)、ローター回転数21,000rpmで稼働している造粒装置(クレアミックスCLM−0.8S:エム・テクニック社製)に、ポンプを用いて、前記で得られた混合溶液を30kg/Hrの流量で供給した。このように連続処理を行って、重合性単量体組成物の液滴(粒子)を造粒した。次いで、造粒した重合性単量体組成物を含む水分散液を、撹拌翼を装着した反応器に入れ、65℃で8時間撹拌して重合反応を行い、重合体(重合トナー粒子)の水分散液を得た。
重合反応終了後、得られた重合トナー粒子の粒径をコールターカウンター(日科機社製)により測定したところ、体積平均粒径(dv)は8.2μmであり、粒径分布すなわち体積平均粒径(dv)と個数平均粒径(dp)との比(dv/dp)は1.30であった。
このコールターカウンターによる測定においては、以下に示すパラメータを用いた。
アパーチャー径:100μm
媒 体 :イソトンII
濃 度 :15%
測定粒子個数 :50,000個
次に、上記により得た重合体の水分散液を濾過して水を分離した後、新たにイオン交換水500部を加え、50℃に加温し、リスラリー化して、10分間水洗浄を行った。この水洗浄を5回繰り返し行って、固形分を濾過分離した後、乾燥器にて、50℃で一昼夜乾燥を行い、重合トナー粒子を得た。
上記により得られた重合トナー粒子(100部)に、疎水化処理したコロイダルシリカ(商品名:R−202、日本アエロジル社製)0.5部を添加し、ヘンシェルミキサー(三井三池社製)を用いて混合して、トナーを調製した。
上記により得たトナーを用い、市販の非磁性一成分現像方式のプリンター(沖電気株式会社製OL−400E)により、温度23℃、湿度50%の常温常湿の環境下で画像評価を行ったところ、画像濃度が高く、カブリ及びムラのない解像度の極めて良好な画像が得られた。さらに、温度35℃、湿度85%の高温高湿の環境下で同様の画像評価を行ったところ、常温常湿環境下と同様に、良好な画像が得られた。
[実施例1]
参考例1において、分散安定剤として、ポリビニルアルコール2.5部に代えて、リン酸カルシウムを3部用いた以外は、参考例1と同様にして、重合性単量体組成物の造粒及び重合反応を行い、重合体(重合トナー粒子)を得た。
得られた重合トナー粒子の体積平均粒径は7.7μmで、その粒径分布(dv/dp)は1.25であった。
上記により得た重合体の水分散液を撹拌しながら、塩酸を添加して系のpHを4以下として酸洗浄(25℃、10分間)を行い、濾過により水を分離した後、新たにイオン交換水500部を加えリスラリー化して、水洗浄(25℃で10分間)を行った。この水洗浄を5回繰り返し行って、固形分を濾過分離した後、乾燥器にて50℃で一昼夜乾燥を行い重合トナー粒子を得た。
上記重合トナー粒子に、参考例1と同様に疎水化処理したコロイダルシリカを混合してトナーを調製した。このトナーを用いて、参考例1と同様に画像評価を行ったところ、常温常湿環境下及び高温高湿環境下ともに、画像濃度が高く、カブリ及びムラのない鮮明な画像が得られた。
[実施例2]
実施例1において、分散安定剤のリン酸カルシウムの量を4部とした以外は、実施例1と同様に重合性単量体組成物の造粒及び重合反応を行い、さらに、酸洗浄、水洗浄、乾燥を行い重合体(重合トナー粒子)を得た。
得られた重合トナー粒子の体積平均粒径は5.8μmで、その粒径分布(dv/dp)は1.28であった。
上記重合トナー粒子に、参考例1と同様に疎水化処理したコロイダルシリカを混合してトナーを調製した。このトナーを用いて、参考例1と同様に画像評価を行ったところ、常温常湿環境下及び高温高湿環境下ともに、画像濃度が高く、カブリ及びムラのない鮮明な画像が得られた。
[比較例1]
参考例1において、重合体単量体組成物の液滴の造粒装置として、高剪断力混合装置であるエバラマイルダー(荏原製作所社製)を用いた以外は、参考例1と同様に重合性単量体組成物の造粒、重合、及び水洗浄を行い、重合トナー粒子を得た。
エバラマイルダーを用いた重合性単量体組成物の液滴の造粒条件は、次のとおりであった。すなわち、ポリビニルアルコール分散安定剤含有水溶液に重合性単量体組成物を投入し、プロペラ式撹拌機を用いて撹拌、混合した。この混合溶液をエバラマイルダーMDM303Vに、回転子の回転数12,000rpm、流量120リットル/Hrで、5回繰り返して供給して処理した。
得られた重合トナー粒子の体積平均粒径は10.6μmで、その粒径分布(dv/dp)は1.89であった。
上記重合トナー粒子に、参考例1と同様に疎水化処理したコロイダルシリカを混合してトナーを調製した。このトナーを用いて、参考例1と同様に画像評価を行ったところ、常温常湿環境下画像濃度が低く、カブリとムラのある不鮮明な画像しか得られなかった。また、高温高湿環境下でも常温常湿環境下と同等の画像であった。
[比較例2]
実施例2において、液滴の造粒装置をエバラマイルダーに変えて行ったこと以外は、実施例2と同様にして、重合性単量体組成物の造粒、重合、酸洗浄、及び水洗浄を行い、重合トナー粒子を得た。
エバラマイルダーでの液滴の造粒条件は、比較例1と同様に行った。
得られた重合トナー粒子の体積平均粒径は9.5μmで、その粒径分布(dv/dp)は1.91であった。
上記重合トナー粒子に、参考例1と同様に疎水化処理したコロイダルシリカを混合してトナーを調製した。このトナーを用いて、参考例1と同様に画像評価を行ったところ、常温常湿環境下画像濃度が低く、カブリとムラのある不鮮明な画像しか得られなかった。また、高温高湿環境下では高温常湿環境下と同等の画像であった。
本発明の静電荷像現像用トナーの製造方法は、トナーの粒径分布が極めてシャープであり、しかも電気的な性質が良好で、画質特性の優れた静電荷像現像用トナーの製造に利用することができる。
高速回転するローターとそれを取り囲む固定されたスクリーンを示す模式図である。
高速回転するローターとそれを取り囲む固定されたスクリーンを含む造粒装置の全体を示す模式断面図である。
符号の説明
1 ローター
2 スクリーン
3 500ccポット
4 予備混合液入り口
5 分散、懸濁液出口
6 温度センサー
7 冷却ジャケット
8 冷却コイル