JP2006325550A - ナンの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 (A)小麦粉、イースト、油脂及び水を混合して生地を調製する生地調製工程と、(B)該生地をを発酵させる生地発酵工程と、(C)該発酵済みの生地をシート状に延伸した後、シート状の生地を複数層に折り、複数層の折り生地を得た後、それをさらにシート状に延伸する生地層折り工程と、(D)層折りし、延伸した生地を所定の大きさに分割後、最終発酵を経て焼成する焼成工程と、を有することを特徴とする。
【選択図】 なし
Description
通常、食パンなどを製造する際には、原料を全て混捏し、発酵させ、分割、成形後に、さらに発酵させ、焼成させることで製造されるが、このような方法では、ナンに特有のもっとりとした風味が得られず、量産が困難であった。
しかしながら、これらの添加物を用いる方法では、焼成したパンや菓子の食感をある程度は改良しうるものの、ナンに特有のもっちり感とひきの良さを実現するには至っていない。
また、プロセスの観点から、一般に使用されるストレート法や中種法を基調とし、もちもち感を向上させ得るパン類の製造方法が提案されている(例えば、特許文献3参照。)。しかしながら、このような食パンの製造方法によれば、もちもち感のみを改良することはできても、窯焼きナンの特有の風味を再現するには至っていないのが現状である。
即ち、本発明に係るナンの製造方法は、(A)小麦粉、イースト、油脂及び水を混合して生地を調製する生地調製工程と、(B)該生地を発酵させる生地発酵工程と、(C)該発酵済みの生地をシート状に延伸した後、シート状の生地を複数層に折って、複数層の折り生地を得た後、それをさらにシート状に延伸する生地層折り工程と、(D)層折りし、延伸した生地を所定の大きさに分割後、最終発酵を経て焼成する焼成工程と、を有することを特徴とする。
ここで、本発明の特徴的な工程である前記生地層折り工程を複数回繰り返し、生地を折り、延伸する工程を繰り返し実施したのち、前記焼成工程を実施することにより、より自然な食感を得ることができる。
また、生地原料においては、前記生地発酵工程において用いられるイーストが天然酵母であること、小麦粉が強力粉であることが好ましい態様である。
本発明の製造方法においては、窯焼きナンの食感を再現するという観点からは、比較的高温度で短時間焼成することが好ましく、具体的には、前記焼成工程において、240℃〜400℃の温度範囲のオーブンで、1分〜4分間焼成することは好ましい態様である。
本発明の製造方法は、 (A)小麦粉、イースト、油脂及び水を混合して生地を調製する生地調製工程と、(B)該生地を発酵させる生地発酵工程と、(C)該発酵済みの生地をシート状に延伸した後、シート状の生地を複数層に折って、複数層の折り生地を得た後、それをさらにシート状に延伸する生地層折り工程と、(D)層折りし、延伸した生地を所定の大きさに分割後、最終発酵を経て焼成する焼成工程、という少なくとも(A)〜(D)の工程を有することを特徴とする。
以下、各工程について詳細に説明する。
本発明の製造方法に好適に用いうるナンの生地としては、少なくとも、小麦粉、イースト、及び油脂を含む。
イーストは、一般にパン生地の調製に使用されるドライイースト、生イーストなどを適宜選択して用いることができるが、食感の観点からは、天然酵母を含むものが好ましい。イーストは、生地材料中に0.3〜5質量%程度含まれるのが一般的である。
小麦粉は、薄力粉、強力粉、両者の混合物などを用いることができるが、得られるナンをコシの強いものとするためには、強力粉が好ましい。
ナン特有の風味を発現させるという観点からは植物油脂とショートニングを併用することが好ましく、両者の含有比は、1:4〜1:10程度が好ましい。
また、その他の成分は、通常は小麦粉100質量部に対して、イーストを0.5〜3.5質量部、油脂を3〜10質量部、及び、水を55〜65質量部の割合で配合することが好ましい。
具体的には、例えば、イーストフード、乳製品、乳化剤、ビタミンCなどが挙げられる。調味料としては、塩、砂糖などが用いられ、風味付けのため、各種香辛料、ハーブ(香味植物)などを配合することもできる。
また、もちもち感を向上させるため、マンナンを主成分とする増粘多糖類や、でん粉、好ましくは小麦粉でん粉、米粉でん粉等、を倍量以上の熱湯に溶解させた食品用糊剤などを使用することもできる。
他の材料の添加量は、目的に応じて適宜選択されるが、通常は小麦粉100質量部に対し、イーストフード0〜0.1質量部、安定化剤としてのビタミンC0〜0.1質量部の範囲であることが好ましい。また、調味料としての食塩0〜2質量部、砂糖0〜5質量部を所望により添加することができる。
ミキシングを行って生地を調製する際の作業環境としては、特に限定されないが、通常温度が25〜28℃程度、湿度が70〜75%程度で行われることが好ましい。
ミキシング時間は特に限定されず、ミキシングする原料の量、その他の条件等に応じて適宜設定できるが、通常は低速2〜5分間及び高速6〜10分間程度行うことが好ましい。なお、ここで低速とは、50rpm以下、好ましくは40rpm程度、高速とは60rpm以上、好ましくは80rpm程度の条件で攪拌することを指す。このような条件でミキシングすることで、生地の伸展性向上などの効果が得られる。
生地中心部の温度を測定するのは、雰囲気温度の影響を受けやすい生地表層部温度よりも、雰囲気温度の影響の少ない生地中心部の温度が、その生地の特性をただしく反映するためである。
(B)工程は、前記(A)生地調製工程で調製した生地を発酵させる工程である。
(B)工程における発酵室の温度は23〜40℃の範囲であることが好ましく、使用するイーストの働きを適正化するという観点からは25〜38℃、さらに好ましくは37〜33℃の範囲である。
また、発酵時間は0.5〜2時間の範囲であれば特に制限されず、使用するイーストの種類、生地の組成、発酵温度等に応じて適宜設定することができるが、好ましくは0.5〜1時間の範囲である。
(B)工程における発酵室条件を前記範囲とすることにより、生地の効率的な発酵が行われる。
生地の発酵による膨脹倍率は限定的ではないものの、通常は発酵前の体積と比較して1.5〜3倍程度となることが好ましい。
発酵終了時における生地中心部の温度は、25℃以上であることが好ましく、より好ましくは30〜38℃程度である。
また、このときの生地のpHは5〜7程度が好ましく、より好ましくは5〜6程度である。このpHの範囲において、ナンの発酵が効率よく行われる。
本発明における生地のpH測定方法は特に限定されないが、例えば生地10gを100gの蒸留水に充分に懸濁させた懸濁液のpHを測定することが好ましい。pH測定装置は特に限定されず、市販のpHメーターを常法に従って使用すればよい。
次に、本発明の特徴的な工程である(C)生地層折り工程について説明する。(C)工程においては、該発酵済みの生地をシート状に延伸した後、シート状の生地を複数層に折り、複数層の折り生地を得た後、それをさらにシート状に延伸する。
より具体的には、発酵済みの生地を30分間〜1時間程度のフロアタイムをとった後、好ましくは厚さ1〜5mm程度のシート状に延伸し、該シート状の生地を複数層、好ましくは4〜8層に折り、複数層の層折り生地を得た後、それに圧力を加えて延伸して、好ましくは厚さ2〜5mmのシート状生地とする。なお、このシート状生地を再度複数層に折って、層折り生地を調製し、それを延伸してシート状の生地とすること、即ち、この層折り工程を複数回繰り返して薄い層を何層も積層してなる生地を調製することが、ナンの食感を向上させる観点から好ましい。この複数の層折り工程を行う場合、2回目以降の層折りを行った後、3〜10分程度生地を休ませ、その後、延伸して厚さ5〜20mm程度のシート状生地を調製することが好ましい。
本工程において、生地をシート状に延伸成形する方法としては、特に制限はなく、硬質の台上で麺棒の如きものを用いてシート状としてもよく、また、市販のシーターを用いることもできる。
(D)工程では、層折りし、延伸した複数の薄層を有するナン生地を、所定の大きさに分割後、最終発酵を経て焼成する。
(C)工程において、ナン生地を最終的に厚さ5〜20mmのシート状とした後、生地を所望の形状に分割、成形し、最終発酵の後、焼成する。
シート状のナン生地は、伝統的なナンの形状である、底辺が5〜10cm程度、高さが10〜20cm程度の略三角形に成形してもよく、また、ナンの食感を生かしたスナックなどに利用する場合には、幅1〜3cm、長さ8〜15cmのスティック状に成形してもよい。
ここでナン生地の発酵による膨脹倍率は限定的ではないものの、発酵前の生地の体積と比較して通常1.5〜2倍程度であればよい。発酵終了時における生地のpHは特に限定されないが、通常5.2〜5.4の範囲であることが好ましく、生地中心部の温度は、26〜30℃程度が好ましく、より好ましくは27〜29℃である。
(実施例1)
<(A)ナン生地の調製>
小麦粉(製パン用強力粉)100部(100kg)、ドライイースト1.7部、水50部、食塩1部、油脂(なたね油0.5部及びショートニング1部の割合で混合したもの)1.5部、増粘剤(グアーガム)0.2部をミキサーに入れ、低速(40rpm)で3分間、高速(80rpm)で10分間の条件でミキシングした。
生地調製する環境は、温度24℃、湿度65%RHであった。ミキシング終了時の生地中心部の温度は28℃であった。温度測定は、市販の温度計を用いて、センサー部分を中種生地中心部に挿入して測定した。
次に、調製された生地を温度28℃の条件下で、1時間保存して発酵させた。肉眼で認められる発酵による生地の膨脹倍率は2倍であった。発酵終了時の生地中心部の温度は29℃であった。
発酵後の生地をシーター厚さ3mmのシート状にした後、シートを6層に折り、それを更にシーターで延伸して厚さ2.5mmのシート状とした。この生地を再度6層に折り、その状態で5分間放置した。その後、シーターにて圧縮し、厚さ15mmのシート状生地を得た。
厚さ15mmの生地を、カッターにて幅20mm、長さ120mmに切断した。
切断後の生地を温度28℃、湿度65%RHの発酵室内に30分間配置して最終発酵させた。肉眼で認められる発酵によるナン生地の膨脹倍率は2倍であった。発酵終了時の生地中心部の温度は27℃であった。
発酵終了後、300℃のオーブンで3分間焼成して実施例1のナンを得た。
本発明の方法により得られた実施例1のナンを用いて、試食による食感アンケートを実施した。
対象として、(C)層折り工程を実施しなかった他は同様にして得られたナン生地を、伝統的なナン用の土製釜の壁面に貼り付ける方法で、350℃で45秒間焼成した窯焼きナン(対照例1)、(C)層折り工程を実施しなかった他は同様にして得られたナン生地を、200℃のオーブンで30分焼成して得られたナン(比較例1)を用いた。
また、同様のアンケート対象者に、実施例1のナンと比較例1のナンを実際に試食させ、前記と同様の方法で評価させた。なお、試食用のナン2品は、いずれも焼成後さらに、20mm×100mmに切断し、無地包装したものを用い、外観による区別をつきにくくした。
その結果、実施例1と伝統的な釜で焼成したナンである対照例1との嗜好については、実施例1を好むもの9名、どちらとも言えないと答えたもの15名、対照例1を好むと答えたもの6名で大きな好みの差は見られなかった。
また、実施例1と比較例1との嗜好については、実施例1を好むもの18名、どちらとも言えないと応えたもの8名、対照例1を好むと応えたもの4名で、通常のオーブンで焼成したナンについては、本発明の方法で得られたナンが過半数の支持を得た。
また、もっちり感、サクサク感についての評価結果は下記表1に示した。
一方、同じ生地を用いていても、本発明の特徴的な生地層折り工程を行わず、一般的な焼成条件で焼成された比較例1のナンは、実施例1に比べ、もっちり感、サクサク感のいずれにも劣ることがわかった。
Claims (5)
- (A)小麦粉、イースト、油脂及び水を混合して生地を調製する生地調製工程と、(B)該生地を発酵させる生地発酵工程と、(C)該発酵済みの生地をシート状に延伸した後、シート状の生地を複数層に折って、複数層の折り生地を得た後、それをさらにシート状に延伸する生地層折り工程と、(D)層折りし、延伸した生地を所定の大きさに分割後、最終発酵を経て焼成する焼成工程と、を有することを特徴とするナンの製造方法。
- 前記生地層折り工程を複数回繰り返し、しかる後、前記焼成工程を実施することを特徴とする請求項1に記載のナンの製造方法。
- 前記生地発酵工程において用いられるイーストが天然酵母である請求項1又は請求項2に記載のナンの製造方法。
- 前記生地発酵工程において用いられる小麦粉が強力粉であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のナンの製造方法。
- 前記焼成工程において、240℃〜400℃の温度範囲のオーブンで、1分〜4分間焼成することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のナンの製造方法。
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