JP2006316321A - 中性子吸収用アルミニウム粉末合金複合材及びその製造方法並びにそれで製造されたバスケット - Google Patents
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Abstract
【解決手段】
0.2〜2質量%のSi、0.4〜2質量%のMg、0.3〜2質量%のMnを含むアルミニウム合金母材粉末と、B4C等のホウ素系化合物粉末を混合し、これを加圧成形あるいは缶封入し、減圧雰囲気、不活性ガス雰囲気あるいは還元性ガス雰囲気中で200〜600℃まで加熱し、脱ガス処理、熱間塑性加工を行うことにより、アルミニウム合金母材中にホウ素系化合物が分散せしめられた中性子吸収用アルミニウム粉末合金複合材を製造する。
【選択図】なし
Description
また、他の中性子吸収用成形体として、ホウ素をアルミニウム合金中に溶解させ製造した中性子吸収体も提案されている。(例えば、特許文献4参照)。
また、ホウ素をアルミニウム合金中に溶解させた溶製材である中性子吸収材は、ホウ素を溶解させるのが難しく、ホウ素の濃度を高くすることができなかった。更にホウ素を溶解させるためにはアルミニウム合金を800℃以上まで加熱する必要があり、生産性が悪く、溶解炉も傷みやすいという問題があった。また、ホウ素を均一に分散させることが難しく、品質的にバラツキが生じやすいという問題もあった。
また本発明は、高温強度や耐食性に加えて、更に熱伝導性も良好な中性子吸収用アルミニウム合金複合材を提供することを目的とする。
更に本発明は、上述の中性子吸収用アルミニウム複合材を安価に製造できる生産性に優れた製造方法を提供することを目的とする。
また本発明は、上述の中性子吸収用アルミニウム複合材を用いて製造されたキャスクのバスケットを提供することも目的とする。
本発明において使用されるホウ素系化合物は、複合材の全質量に対してホウ素量で0.35〜21質量%であることが好ましい。またホウ素系化合物の種類は、中性子吸収能に優れるものであれば如何なるものでも使用可能であるが、特にB4Cであることが好ましい。B4Cの場合、その含有量は好適には複合材の全質量に対して化合物量で0.5〜30質量%である。さらにホウ素系化合物は天然Bからなることが好ましい。
また、他の態様として、上述の組成を有する母材となるアルミニウム合金粉末と、ホウ素系化合物粉末、好適には平均粒径が1〜20μm(さらに好ましくは5〜10μm)のB4C粉末を混合して混合粉末を生成した後、これをアルミニウム製の容器に封入し、ついで加圧成形し、減圧雰囲気、不活性ガス雰囲気あるいは還元性ガス雰囲気中で、200〜600℃まで加熱し、脱ガス処理を行い、次に熱間塑性加工を行っても良い。
熱間塑性加工としては、熱間押出加工が好ましい。その際加工後200℃になるまでは、冷却速度200〜300℃/分となるように冷却することが好ましい。
更に、本発明に係る、使用済み核燃料を収容するキャスクのバスケットは、上述の本発明に係る中性子吸収用アルミニウム粉末合金複合材で製造したことを特徴とする。
また、本発明の好適な実施態様では、母材と強化材の密着性がよく、強度も熱伝導性も良好なアルミニウム合金粉末複合材が得られる。
更に、本発明の製造方法は、ホウ素を溶解させないので、生産性が高く、安価に複合材を製造できるという効果がある。
Siは、母相中に固溶したり、共晶Siや他の元素と化合物(Al−Fe−Si,Al−(Fe+Mn)−Si系化合物)を形成したりして、高温強度を向上させ、耐摩耗性を向上させる作用を呈する。この作用は0.2質量%以上で顕著となり、逆に3質量%を超えると合金の延性を低下させると共に耐熱性効果を減少させる。
また、Siは、アルミニウム合金の融点を低下させ、自身も高温拡散しやすい元素であるため、焼結性が向上する。
Mgは、母相中に固溶したり、他の元素と化合物(Mg2Si)を形成したりして、機械的強度や耐摩耗性を向上させる作用を呈する。この作用は、0.4質量%以上で顕著となり、逆に2質量%を超えると熱間加工性や耐食性を低下させる。
また、Mgは、アルミニウム合金の融点を低下させ、自身も高温拡散しやすい元素であるため、焼結性が向上する。さらにセラミックス粒子とアルミニウム合金との濡れ性を改善する作用もある。
MnはAl中での拡散が遅く、急冷凝固によって固溶量が多くなり、母材の耐熱性、耐食性を向上させ、さらに生成する化合物Al−Mn,Al−(Fe+Mn)−Siもその微細化合物の存在によって耐熱性を向上させる。
効果を生じる量は0.3質量%以上であり、2質量%を超えると変形抵抗が高くなり、熱間加工性を低下させる。
Cr、NiもMnと同一の効果を呈するため、その何れか1種以上を0.05〜1.5質量%含有させるのが好ましい。但し、Cr、Niを何れか一種にして多く含有させると、Mnの急冷凝固での溶け込み量を低下させると共に、Cr、Niの晶出物が生成し、強度−延性を低下させるおそれがあるので、双方を含有させるのが更に好ましい。
ここで、単独もしくは複合でCr及び/又はNiを添加する場合、Mnとの量的組み合わせを考慮しなければならない。上述のように各元素は同一の効果を呈するが、例えばMnとCrを添加し、Mn+Cr量を1.5質量%とする場合、Cr量を1質量%以上にすると粉末製造上高温化せざるを得なくなり、溶け込まない化合物が残存するおそれがある。Niの場合も同様な弊害があり、上限を1質量%とするのが好ましい。また、耐軟化性を付与するためには、Mn+Cr量を0.05質量以上とする。
本発明の複合材の母材となるアルミニウム合金では、Zn、Cuなどの不可避不純物は各元素で0.1質量%以下であれば耐食性などの性質に大きな影響を与えないので、不可避不純物として許容される。但し、Feは、不可避的に混入する元素であるが、強度を向上させる作用もある。しかし、0.5%を超えると、Al−Fe−Si系化合物、Al−(Mn,Fe)−Si系化合物を形成するため、本来のAl−Mn(Cr,Ni)系化合物の生成量を減少させてしまい、その効果を減少させる。よって、Fe量は0.5質量%以下であるのが好ましい。
本発明において用いて好適なホウ素系化合物は、中性子吸収能に優れるものであれば如何なるものでもよいが、好適には、例えば炭化ホウ素、酸化ホウ素、窒化ホウ素等、ホウ化アルミニウム等の金属とホウ素との化合物等を挙げることができ、これらを単独で又は混合物として使用することができる。特に、炭化ホウ素B4Cは、工業的に量産でき、中性子を良く吸収するBの同位体であるB10を約20%含有するので複合化に最適である。
このホウ素系化合物は、前述のアルミニウム合金粉末に、ホウ素量で0.35〜21質量%の量で含有せしめられる。0.35質量%以上とした理由は、0.35質量%より少ないと、十分な中性子吸収能力が得られないためであり、十分な中性子吸収能力を得るために中性子吸収材の板厚を厚くしなければならなくなり、限られたスペース内に中性子吸収成形体を収納することができなくなるばかりか、材料が嵩むという問題がある。また、21質量%以下とした理由は、21質量%より多いと、成形時の変形抵抗が高く、成形加工が難しい上、成形体が脆くなって、折れやすくなるという問題があるからである。またアルミニウムとホウ素化合物の密着性も悪くなり、空隙ができやすく、放熱性も低下する。例えば、B4Cの場合、前述のアルミニウム合金粉末に、化合物で0.5〜30質量%含有せしめられる。0.5質量%未満では、中性子吸収材として十分に作用しない一方、30質量%を超えると塑性加工性や切削性も悪化する。
[第一の製造方法]
本発明の製造方法の第一の実施形態は、(a)上述の組成を有する母材となるアルミニウム合金粉末と、ホウ素系化合物粉末を混合して混合粉末を生成する工程と、(b)上記混合粉末を加圧成形する工程と、(c)加圧成形した成形体を所定雰囲気中で加熱し、脱ガス処理を行う工程と、(d)最後に熱間塑性加工を行う工程とを具備する。以下、使用される原材料についてまだ述べていない特性等についての説明を追加した上で、各工程を(a)工程から(d)工程の順に詳細に説明する。
[母材のアルミニウム合金粉末]
B4C等の粒子と混合される合金の母材となるアルミニウム合金粉末の平均粒径は特に限定されるものではないが、上限値は一般には500μm以下、好ましくは150μm以下、より好ましくは60μm以下の粉末を用いることができる。平均粒径下限値は製造可能であれば特に限定されるものではないが、通常は1μm以上、好ましくは20μm以上である。アルミニウム合金粉の平均粒度を100μm以下として、ホウ素系化合物粒子の平均粒度を10μm以下とするとホウ素系化合物粒子が均一に分散し、ホウ素系化合物粒子の希薄な部分が非常に少なくなり、特性の安定化に効果がある。アルミニウム合金粉末の平均粒径は、後述するB4C等の粒子の平均粒径の差が大きいと押出加工や圧延加工等の塑性加工の際に割れが生じやすいので、平均粒径の差を小さくすることが好ましい。平均粒径が大きくなりすぎると、平均粒径を大きくできない、例えばB4C粒子との均一混合が困難となる。一方、平均粒径が小さすぎると、微細アルミニウム合金粉末同士で凝集が起こり易くなり、B4C粒子等との均一混合が非常に困難になるからである。また、かかる範囲内の平均粒径とすることにより、一層優れた加工性、成形性、機械的特性を得ることもできる。
粉末形状も限定されるものではなく、例えば涙滴状、真球状、回転楕円体状、フレーク状又は不定形状等いずれであっても差し支えない。
なお、アトマイズ法においては、上記溶湯を通常700〜1200℃に加熱してアトマイズすることが好ましい。この温度範囲に設定することにより、より効果的なアトマイズを実施することができるからである。またアトマイズ時の噴霧媒・雰囲気は、空気、窒素、アルゴン、ヘリウム、二酸化炭素、水等あるいはそれらの混合であってもよいが、噴霧媒は、酸化防止の観点から、窒素ガスまたはアルゴンガスによるのが好ましい。
ホウ素系化合物の平均粒径は任意であるが、アルミニウム合金の平均粒径に対して説明したように、これら二種の粉末間の粒径差が少ない方が好ましい。具体的には、B4Cの場合は、1〜20μmが好ましい。平均粒径が20μm(好ましくは10μm)より大きいと、切断時に鋸歯が直ぐに摩耗してしまう問題があり、また、平均粒径が1μm(好ましくは5μm)より小さいと、これら微細粉末同士で凝集が起こり易くなり、アルミニウム粉末との均一混合が非常に困難になるからである。
粉末形状も限定されず、例えば、涙滴状、真級状、回転楕円体状、フレーク状、不定形状等のいずれであってもよい。
(a)アルミニウム合金粉末とホウ素系化合物粉末の混合粉末の製造工程
アルミニウム合金粉末と、B4C等のホウ素系化合物粉末を用意し、これら粉末を均一に混合する。混合の方法は、公知の方法でよく、例えばVブレンダー、クロスロータリーミキサー等の各種ミキサー、振動ミル、遊星ミル等を使用し、所定の時間(例えば10分〜6時間程度)混合すればよい。また、混合は、乾式又は湿式の何れでであってもよい。また、混合の際に解砕の目的で、アルミナボール等のメディアを適宜加えてもよい。
B4C等のホウ素系化合物粉末とアルミニウム合金の混合粉末を、加圧焼結を行いやすい形状に加圧成形する。加圧成形する方法は、公知の方法で良く、例えば冷間静水圧成形、冷間一軸成形やホットプレス成形を用いて、加圧成形すれば良い。
加圧成形体は、減圧雰囲気、不活性ガス雰囲気または還元雰囲気において、200〜600℃の温度範囲に加熱保持され、脱ガスされる。この工程により、加圧成形体に付着していた水分が気化し除去される。また成形体内部に残っていた気体も除去される。水分や気体を除去させるためには、200〜600℃の温度範囲に4時間以上保持することが好ましい。加熱保持温度が200℃未満だと水分や気体の除去が、不十分となり、この後の加圧焼結や、熱処理の際に、フクレとなり、欠陥の原因となる。加熱保持温度が450℃以上になると、一部焼結が進行し、この後のハンドリングが容易となる。また、誘電加熱が容易となり、加圧焼結の際の加熱が容易となるので450℃以上で加熱保持することが好ましい(更に、好ましくは500℃以上)。十分に仮焼結させるためには、1時間以上保持することが好ましい。加熱保持温度が600℃を超えるとアルミニウム合金の溶融や結晶粒の粗大化がおこる恐れがあるので、加熱保持温度は600℃以下にすることが好ましい(更に好ましくは550℃以下)。脱ガス後は、常温まで冷却する。なお、200℃以下まで冷却されるまでは、減圧雰囲気、不活性ガス雰囲気又は還元雰囲気にしておくことが好ましい。更に好ましくは常温まで上記雰囲気で冷却する。また脱ガス後、そのまま熱間加工温度まで、冷却あるいは加熱し、熱間加工を行っても良い。
脱ガス処理を行った仮成形体を所定の温度(好ましくは400〜550℃)に加熱して、押出、鍛造、圧延等の熱間塑性加工を行い、加圧焼結させる。加熱温度が400℃以下だと変形抵抗値が大きく、熱間加工に大きな力が必要となる。550℃を超えると一部溶融や結晶粒の粗大化がおこる恐れがある。目的とする形状にするために熱間塑性加工は複数回行っても良いし、また熱間塑性加工の後冷間塑性加工(圧延、鍛造、引き抜き加工等)を行っても良い。冷間塑性加工する場合には、加工の前に350〜450℃で焼鈍を行うことが好ましい。熱間塑性加工または冷間塑性加工後、複合材はそのまま使用してもよいし、溶体化処理や人工時効等の熱処理を行っても良い。
また、熱間押出加工を行う場合、押出加工後複合材が200℃以下の温度に達するまでは、冷却速度100〜300℃/分で冷却する。冷却速度が100℃/分未満の場合、熱間押出の際に固溶したSiやMgが粗大に析出してしまい、強度が低下してしまう恐れがある。逆に300℃/分を超えた速度で冷却すると冷却ムラによる変形が起こりやすい。複合材の温度が200℃未満になるとSiやMgが析出することもなく、またMg2Siが成長することがなくなるので200℃未満においては、冷却速度を制御する必要は無い。
本発明の製造方法の第二の実施形態は、(a)上述の組成を有する母材となるアルミニウム合金粉末と、ホウ素系化合物粉末を混合して混合粉末を生成する工程と、(b’)上記混合粉末をアルミニウム製の容器に封入する工程と、(c)加圧成形した成形体を所定雰囲気中で加熱し、脱ガス処理を行う工程と、(d)最後に熱間塑性加工を行う工程とを具備する。
複合材でないアルミニウム容器に封入して熱間塑性加工することにより、複合材表面がアルミニウムに覆われることになり、複合材の耐食性、熱伝導性が向上する。また塑性加工の際に押出ダイス等の塑性加工工具とホウ素化合物が直接接触しないので、加工工具の寿命が延び、さらに複合材表面に表面欠陥も発生しにくくなる。
第一の製造方法に用いられるものと同様の原材料の他、アルミニウム製の容器を準備する。このアルミニウム製容器は、複合体の熱間塑性加工工程後には複合材の表層部に残ることになるが、これを剥がさないで複合体の表層部とすることができるし、これを剥がしてもよい。但し、剥がさないでそのまま複合体の表層部とする場合には、複合体に要求される特性に合致したアルミニウムを用いる必要がある。その場合のアルミニウムは純アルミニウム又はアルミニウム合金であるが、簡便には、JIS1070等の純アルミニウムやAl−Cu系合金(JIS2017等)、Al−Mg系合金(JIS5052等)、Al−Mg−Si系合金(JIS6061等)、Al−Zn−Mg系合金(JIS7075等)、Al−Mn系合金等の通常のアルミニウム合金を使用することができ、所望される特性、コスト等々を考慮して決定する。
アルミニウム製容器は、缶(本体部)と蓋の形態に予め成形されたものを準備するか、公知の方法により適宜製作する。缶の肉厚は1〜10mm程度、好ましくは4〜6mm程度で、搬送に耐える強度を持たせることが望ましい。蓋は、缶と同材質でも異材質でもよく、後の成形時のガス抜き小孔を少なくとも一個以上備えたものとする。
(a)アルミニウム合金粉末とホウ素系化合物粉末の混合粉末の製造工程
第一の製造方法の場合と同様にして、アルミニウム合金粉末とホウ素系化合物粉末を公知の方法により均一に混合する。
工程(a)で得られた混合粉末を、前述のアルミニウム製の容器の本体部に充填する。ついで、振動を加えるなどして粉末周囲のガス抜きを行った後、蓋部を溶接等によって取り付け、搬送時に粉末が漏れ出ないようにして容器封入体を製造する。
尚、混合粉末を容器に封入する前に、加圧成形しおいてもよく、この場合は、第一の製造方法の加圧成形工程に容器封入工程が追加的に施されることになる。
工程(b’)で得られた容器封入体を、第一の製造方法と同様にして脱ガス処理する。すなわち、減圧雰囲気、不活性ガス雰囲気または還元雰囲気において、200℃以上、好ましくは450℃以上、より好ましくは500℃以上で、600℃以下、好ましくは550℃以下の温度範囲に加熱保持し、脱ガス処理した後、好ましくは200℃以下まで冷却されるまでは、減圧雰囲気、不活性ガス雰囲気又は還元雰囲気にて、常温まで冷却するか、あるいはそのまま熱間加工温度まで、冷却あるいは加熱する。
工程(c)で得られた仮成形体を、第一の製造方法と同様にして、所定の温度(好ましくは400〜550℃)に加熱して、押出、鍛造、圧延等の熱間塑性加工を一又は複数回行い、また場合によっては更に冷間塑性加工(圧延、鍛造、引き抜き加工等)を行って、所望の形状に加工する。
また、熱間押出加工を行う場合、押出加工後複合材が200℃以下の温度に達するまでは、冷却速度100〜300℃/分で冷却する。冷却速度が100℃/分未満の場合、熱間押出の際に固溶したSiやMgが粗大析出や微細に析出していたMg2Siが粗大に成長してしまい、強度が低下してしまう恐れがある。逆に300℃/分を超えた速度で冷却すると押出材形状が変形し、実用に供せられない。複合材の温度が200℃未満になるとSiやMgが析出することもなく、またMg2Siが成長することがなくなるので200℃未満においては、冷却速度を制御する必要は無い。
このようにして形成された複合材の表面にはアルミニウム製容器が残り、アルミニウム表層部でクラッドされた成形体が得られるが、前述のように、このクラッドされたアルミニウム製容器は、剥がしても剥がさなくても良い。
[実施例1]
ガスアトマイズ法で製造した表1の組成の平均粒径30μmのアルミニウム合金粉末に、平均粒径10μmのB4C粉末を、5質量%の割合となるようにVブレンダー混合機を用いて混合し、冷間静水圧成形で、直径200mmの円筒状に加圧成形した。得られた加圧成形体を、減圧炉で560℃×4時間保持し、脱ガスを行った後、減圧雰囲気中で常温まで冷却した。その後再度480℃まで加熱し、熱間押出加工を行い、100mm幅×5mm厚さの平板に塑性加工した。
得られた押出材について、高温強度、耐熱性及び耐食性を試験した。
ここで、高温強度としては、200℃での引張試験を行い、110MPa以上の引張強度を示したものを合格品とした。耐熱性としては、200℃で100時間加熱後に、200℃での引張試験を行い、100MPa以上の引張強度を示したものを合格品とした。また、耐食性は、室温で食塩水中に500時間浸漬した場合の純アルミニウムの減量を1(10mg/dm2以下)として比較することにより評価した。この判定基準では6061−T6材は4となるので、合格品は4以下とした。
上記の試験結果を表2に示す。
また比較例として、JIS規格の1050アルミニウム合金、2017アルミニウム合金、3003アルミニウム合金、5052アルミニウム合金、6061アルミニウム合金(詳細な組成はそれぞれ表1に記載)のアルミニウム合金を母材とする複合材の押出材を同様の方法で製造し、同様の試験方法で高温強度、耐熱性及び耐食性を試験した。その結果も表2に併せて示す。尚、試験材は全てT1材(押し出しのまま)である。
一方、比較例は、高温強度、耐熱性、耐食性の少なくとも何れかの特性が合格基準には至っていないことが分かる。例えば、Mnが少ない合金番号8は、高温強度、耐熱性が劣り、耐食性も悪い。Mgが無添加の合金番号9も、高温強度、耐熱性、耐食性が全て低い。Siが無添加の合金番号10は、耐食性には優れるものの、高温強度、耐熱性が低い。Feの含有量が多い合金番号11は、高温強度、耐熱性は合格基準であるが、耐食性が劣る。
更に、JIS規格品について見れば、JIS1050及びJIS3003は強度不足である。JIS2017は、高い高温強度、耐熱性を示すが、耐食性が劣悪である。JIS5052及びJIS6061は耐熱性が低い。
Claims (11)
- アルミニウム合金からなる母材中に中性子吸収能を有するホウ素系化合物を分散せしめた中性子吸収用アルミニウム粉末合金複合材において、母材を、母材の全質量に対して0.2〜2質量%のSi、0.4〜2質量%のMg、0.3〜2質量%のMnを含み、残部がアルミニウムと不可避不純物からなるアルミニウム合金としたことを特徴とする中性子吸収用アルミニウム粉末合金複合材。
- 母材のアルミニウム合金が、更にCr、Niのいずれか1種以上の元素を合計で、母材の全質量に対して0.05〜1.5質量%含有することを特徴とする請求項1に記載の中性子吸収用アルミニウム粉末合金複合材。
- 母材のアルミニウム合金が、母材の全質量に対してCrとNiの含有量が各々1質量%以下であることを特徴とする請求項2に記載の中性子吸収用アルミニウム粉末合金複合材。
- ホウ素系化合物の割合が複合材の全質量に対してホウ素量で0.35〜21質量%であることを特徴とする請求項1ないし3の何れか1項に記載の中性子吸収用アルミニウム粉末合金複合材。
- ホウ素系化合物の平均粒径が1〜20μmであることを特徴とする請求項1ないし4の何れか1項に記載の中性子吸収用アルミニウム粉末合金複合材。
- ホウ素系化合物がB4Cであることを特徴とする請求項1ないし5の何れか1項に記載の中性子吸収用アルミニウム粉末合金複合材。
- ホウ素系化合物が天然Bからなるものであることを特徴とする請求項1ないし6の何れか1項に記載の中性子吸収用アルミニウム粉末合金複合材。
- 請求項1ないし7の何れか1項に記載の中性子吸収用アルミニウム粉末合金複合材の製造方法であって、母材となるアルミニウム合金粉末と、ホウ素系化合物粉末を混合して混合粉末を生成した後、加圧成形し、減圧雰囲気、不活性ガス雰囲気あるいは還元性ガス雰囲気中で、200〜600℃まで加熱し、脱ガス処理を行い、次に熱間塑性加工を行うことを特徴とする中性子吸収用アルミニウム粉末合金複合材の製造方法。
- 請求項1ないし7の何れか1項に記載の中性子吸収用アルミニウム粉末合金複合材の製造方法であって、母材となるアルミニウム合金粉末と、ホウ素系化合物粉末を混合して混合粉末を生成した後、混合粉末をアルミニウム製の容器に封入し、減圧雰囲気、不活性ガス雰囲気あるいは還元性ガス雰囲気中で、200〜600℃まで加熱し、脱ガス処理を行い、次に熱間塑性加工を行うことを特徴とする中性子吸収用アルミニウム粉末合金複合材の製造方法。
- 熱間塑性加工が熱間押出加工であり、熱間押出加工後200℃までは、冷却速度100〜300℃/分となるように冷却することを特徴とする請求項8又は9記載の中性子吸収用アルミニウム粉末合金複合材の製造方法。
- 使用済み核燃料を収容するキャスクのバスケットにおいて、請求項1ないし7の何れか1項に記載の中性子吸収用アルミニウム粉末合金複合材で製造したことを特徴とするバスケット。
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