JP5270677B2 - 金属基複合材の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、一般に金属基複合材の製造方法に関する。より詳細には、本発明は、塑性加工性、熱伝導性、室温又は高温での強度、高剛性、中性子吸収性能、耐磨耗性及び低熱膨張性等の特性に優れた金属基複合材の製造方法に関する。
従来から、
(1)母相となるアルミニウム粉末に、強化材となるAl、SiC、BC、BN、窒化アルミ、窒化ケイ素等のセラミック材料の粉末を混合する工程と;
(2)混合粉末を、缶封入したり、冷間圧縮して成形体を形成する工程と;
(3)成形体に脱ガス、焼結等を施す工程と;
(4)焼結成形体を所望の形状に成形する工程と
を具備する、粉末冶金法でアルミニウムを母相とする複合材を製造する方法が知られている。
工程(3)の焼結プロセスは、成形体を単に加熱する方法(A);熱間プレスのように成形体を高温でプレスする方法(B);熱間押出、熱間鍛造又は熱間圧延のように熱間塑性加工によって成形体を焼結させる方法(C);パルス電流を通電しながら成形体をプレスする、つまり成形体にいわゆる「通電加圧焼結」(例えば特開2001−329302号公報に開示)を施す方法(D);及び方法(A)から(D)の二以上の組合せに基づく方法(E)を含む。脱ガスプロセスと併せて、焼結プロセスを実施する方法もまた知られている。
近年、アルミニウム基複合材は、強度ばかりでなく、高ヤング率、耐磨耗性、低熱膨張性、そして放射能吸収性能が求められる新たな用途に使用するために益々開発されてきている。各機能性を持つセラミック添加材の量を増加させれば、各機能を増加させることは可能であるが、単にセラミック添加材の量を増加させただけでは、焼結性、押出性、圧延性又は鍛造性等の塑性加工性が著しく低下してしまう。
この観点から、セラミック予備成形体を作製し、該セラミック予備成形体にアルミニウム合金溶湯を浸透させて、セラミック粒子を高密度で均一にアルミニウム合金母相中に分散させるようにした方法が提案されている。実際には、この方法では、アルミニウム合金溶湯の浸透不足やアルミニウム合金溶湯の凝固時のひけ等の欠陥の発生に関する問題が生じる虞があった。
国際公開第2006/070879号は、(a)アルミニウム粉末とセラミック粉末を混合して混合粉末を調製する工程と、(b)混合粉末を金属板材と共に通電加圧焼結して、焼結体が金属板材で被覆されたクラッド材を形成する工程と、(c)クラッド材に塑性加工を施してアルミニウム基複合材を得る工程を具備するアルミニウム基複合材の製造方法に関する。
国際公開第2006/070879号では、アルミニウム粉末とセラミック粉末を混合して調製した混合粉末に圧延加工を施す前に、金属板材間に混合粉末を挟みながら混合粉末に通電加圧焼結を施し、クラッド材を所定の形状に維持されるように予備成形する必要がある。焼結によって所定の形状に維持されるようにしておかないと、クラッド材を圧延することが困難か実質的に不可能であるためである。
上述の如く、国際公開第2006/070879号では、クラッド材を所定の形状に維持されるように予備成形すること、つまり混合粉末に通電加圧焼結を施すことが必須であり、このためプロセス効率が悪化し、所期のコスト削減の達成が困難となっている。よって、これらの問題解決に対して強い必要性が残っている。
上記事情に鑑み、簡略化された製造プロセスによって高いプロセス効率で金属基複合材を製造できる方法を提供することが本発明の主たる目的である。
通電加圧焼結を必要としないで高品質の金属基複合材を製造できる方法を提供することが本発明の他の目的である。
金属板材間にアルミニウム複合粉末を挟んでクラッド化した金属基複合材を形成する方法を単純化しながら金属基複合材を製造できる方法を提供することが本発明の更に他の目的である。
クラッド化した金属基複合片に圧延を施す過程において割れ等の発生を確実に防ぎながら金属基複合材を製造できる方法を提供することが本発明の更に他の目的である。
高い生産性で金属基複合材を製造できる方法を提供することが本発明のまた更なる他の目的である。
正確に制御された板厚を有する金属複合材を製造できる方法を提供することが本発明の他の更なる目的である。
本明細書及び特許請求の範囲において使用される場合、「アルミニウム」なる用語は、純アルミニウムとアルミニウム合金の双方を意味する。
詳細には、本発明の一態様によれば、金属粉末とセラミック粉末を混合して混合粉末を調製する工程と、混合粉末を中空の平板状金属容器中に充填する工程と、混合粉末を充填した金属容器を密封して閉塞して圧延前アセンブリを準備する工程と、圧延前アセンブリを予備加熱する工程と、予備加熱したアセンブリを圧延する工程を具備する、金属基複合材の製造方法が提供される。
本発明の該態様に記載の方法では、圧延前アセンブリは、金属容器中に混合粉末を充填し、金属容器を密封して閉塞することによって形成される。詳細には、圧延前アセンブリは、混合粉末、つまり混合された微細な粒子が、金属容器の上板部と底板部となる二枚の金属板によって上下から挟まれた状態で形成される。よって、予備加熱後、圧延前アセンブリに圧延を施して、金属粉末とセラミック粉末の混合物の層が金属板によって上下からクラッドされているクラッド材を確実に形成することができる。
本発明の特定の実施態様では、金属粉末は、純度99.0%以上の純Alの粉末もしくはAlにMg、Si、Mn、Crからなる群から選択される少なくとも1種を0.2〜2重量%含有するアルミニウム合金の粉末であり得、ここで、セラミック粉末は混合粉末100質量%に対して0.5〜60質量%の量で含まれる。
金属と比較すると、強化材として添加されるセラミック粉末、つまりセラミック粒子は、一般に極めて高い硬度を有している。よって、セラミック粉末を多く含む金属粉末を、一般的な形で、焼結して焼結体を形成し、該焼結体を圧延すると、焼結体表面のセラミック粒子が破壊の起点となり、塑性加工材にしわや割れが発生する可能性が高い。また、押出ダイス、圧延ロール、鍛造金型等の摩耗を早めてしまう問題がある。
これに対して、本発明の方法には、通電加圧焼結のような焼結過程が含まれていない。よって、圧延前アセンブリの表面には圧延ダイス等の摩耗を引き起こすセラミック粒子が存在していない。これは、本発明の第一の特徴として、高品質の圧延材を得ることができるという格別な効果をもたらす。
更に、圧延に先だって、セラミック粉末と金属粉末を含有する混合粉末を中空容器に充填し、圧延前アセンブリを圧延に必要とされる所定の形状に維持できるようにする。これは、本発明の第二の特徴として、通電加圧焼結、プレス加工等により混合粉末を予備硬化させる必要性をなくし、製造方法を単純化することができるという格別の効果をもたらす。
更に、混合粉末を金属板材によって上下からクラッド化する工程では、中空容器の上板部と底板部を、クラッド材を形成するための上方及び下方金属板とできる。よって、クラッド材の構造は混合粉末を容器に充填するだけで達成される。これはまた本発明の第三の特徴として、製造プロセスの単純化を容易にする。
本発明の好ましい実施態様では、金属粉末としてのアルミニウム粉末とセラミック粉末を混合して混合粉末を調製した後、充填工程が、容器内に充填される混合粉末の密度を増加させるために容器を振動させるサブ工程を更に含む。
従来の方法では、混合粉末の密度は、圧延に必要とされる所定の形状に混合粉末を維持するのに十分な値にまで増大させられる。例えば、98%以上まで粉末密度を増加させる必要がある。それとは異なって、本発明では、混合粉末には、粉末形態で直接、圧延が施される。よって、混合粉末が容器に充填された後の状態で維持されるべき粉末密度は、最大で約98%で十分である。
本発明の好ましい実施態様では、容器の周縁部を補強枠材で囲撓する。つまり、圧延前に、混合粉末の外表面を金属板によって完全に覆う。これは、圧延によって得られる複合材の上面や側面又は内部にしわや割れが発生するのを確実に防止できるという効果を奏する。
本発明のかかる目的や他の目的、特徴、及び効果は、添付図面と共に次の詳細な説明を読めば明らかになるであろう。
本発明の第一実施態様に係る方法で使用される容器の構造を示す斜視図である。 第一実施態様に係る方法で使用される補強枠材の構造を示す。 混合粉末が内部に充填された容器を示す縦断面図である。 本発明の方法によって得られた最終製品としてのクラッド材のスキン層付近の領域を示す顕微鏡写真(倍率:100倍)である。 図3のスキン層付近の領域を部分的に示す顕微鏡写真(倍率:400倍)である。 図3のクラッド材の中間層の領域を示す顕微鏡写真(倍率:100倍)である。 図5のクラッド材の中間層の領域を部分的に示す顕微鏡写真(倍率:400倍)である。 形状比と圧延機出口側温度との関係によって、スキン層と中間層の間の剥離を示すグラフである。 本発明の第二実施態様に係る方法に使用される容器の構造を示す斜視図である。
本発明の一態様に係る方法は、(a)金属粉末とセラミック粉末を混合して混合粉末を調製する工程と、(b)混合粉末を中空の平板状金属容器中に充填する工程と、(c)混合粉末を充填した金属容器を密封して閉塞して圧延前アセンブリを準備する工程と、(d)圧延前アセンブリを予備加熱する工程と、(e)予備加熱したアセンブリを圧延して金属基複合(MMC)材を得る工程を具備する。
第一実施態様
以下、原材料の説明を行った後、本発明の第一実施態様に係る方法における製造工程を説明する。
(1)原材料
母材となるアルミニウム粉末
好ましい実施態様では、母材となるアルミニウム粉末は、Al−Mg系合金、特にJIS A1100(又はAA規格ではAA1100)として規定されるアルミニウム合金からなる。より詳細には、アルミニウム粉末は、0.25重量%以下のケイ素(Si)、0.40重量%以下の鉄(Fe)、0.05重量%以下の銅(Cu)、0.05重量%以下のマンガン(Mn)、0.05重量%以下のマグネシウム(Mg)、0.05重量%以下のクロム(Cr)、0.05重量%以下の亜鉛(Zn)、0.05重量%以下のバナジウム(V)及び0.03重量%以下のチタン(Ti)を含有し、残部がアルミニウム(Al)と不可避不純物である。
本発明のアルミニウム粉末は上記の特定の組成に限定されない。例えば、純アルミニウム(JIS1050又は1070等)及び例えばAl−Cu系合金(JIS2017等)、Al−Mg−Si系合金(JIS6061等)、Al−Zn−Mg系合金(JIS7075等)、Al−Mn系合金等の種々のタイプのアルミニウム合金をアルミニウム粉末として、単独で又は2種以上を混合した形で、使用することができる。
すなわち、アルミニウム粉末の組成は、所望される特性又は性質、後の成形/圧延加工時の変形抵抗、混合されるセラミック粉末の量、原料コスト等々を考慮して、選択的に決定される。例えば、塑性加工性/成形性や放熱性を高める観点からは、純アルミニウム粉末を選択するのが好ましい。純アルミニウム粉末は、アルミニウム合金粉末に比べて原料コストの面で有利でもある。好ましくは、純アルミニウム粉末は、純度が99.5%以上のものである(市販の純アルミニウム粉末は通常99.7%以上の純度である)。
アルミニウム基複合材に中性子吸収能を付与する場合、後述するセラッミク粉末としてホウ素化合物を用いる。中性子吸収能を更に高めたい場合には、ハフニウム(Hf)、サマリウム(Sm)又はガドリニウム(Gd)等の中性子吸収能を備えた少なくとも1種の元素を、アルミニウム粉末中に好ましくは0.1〜50質量%の量で添加することができる。
アルミニウム基複合材が高温強度を有していることが必要な場合には、アルミニウム粉末に、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、マグネシウム(Mg)、鉄(Fe)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、モリブデン(Mo)、ニオブ(Nb)、ジルコニウム(Zr)及びストロンチウム(Sr)からなる群から選択される少なくとも1種を添加することができる。アルミニウム基複合材が室温強度を有していることが必要な場合には、アルミニウム粉末に、ケイ素(Si)、鉄(Fe)、銅(Cu)、マグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)からなる群から選択される少なくとも1種を添加することができる。これらの場合、上記各元素は7重量%以下の量で添加することができ、上記元素の2種以上を15質量%以下の合計量で添加することができる。
アルミニウム粉末の平均粒径は特定値に限定されるものではないが、平均粒径の上限値は通常は200μm以下、好ましくは100μm以下、より好ましくは30μm以下とされうる。平均粒径の下限値もまた製造可能であれば自由に決定することができるが、通常は0.5μm以上、好ましくは10μm以上とされうる。特に、アルミニウム粉末の粒度分布を100μm以下として、強化材となる上記セラミック粉末の平均粒径を40μm以下とできる。この場合、強化材粒子がアルミニウム粉末に対して均一に分散し、混合粉末の低密度領域が有意に減少し、安定した性質をMMC板に効果的に付与する。
アルミニウム粉末と後述するセラミック粉末の各平均粒径間の差が大きいと圧延の際にしわや割れを生じやすい。アルミニウム粉末の平均粒径が大きくなりすぎると、平均粒径を大きくできない後述のセラミック粉末との均一混合が困難となる。逆に、アルミニウム粉末の平均粒径が小さすぎると、微細アルミニウム粒子の凝集が起こり易くなり、後述のセラミック粉末との均一混合が非常に困難になる。上記の好ましい範囲とした平均粒径を有するアルミニウム粉末は、一層優れた塑性加工性/成形性及び機械的性質を圧延前アセンブリに付与しうる。
本発明におけるアルミニウム粉末の平均粒径は、レーザー回折式粒度分布測定法による値で表される。アルミニウム粉末の粒子形状も特定のものに限定されるものではない。例えば、アルミニウム粉末は、涙滴状、真球状、回転楕円体状、フレーク状又は不定形状等何れであっても差し支えない。
アルミニウム粉末の製造方法は特定のものに限定されない。例えば、任意の一般的な金属粉末の製造方法によって製造することができる。一般的な製造方法は、例えば、アトマイズ法、メルトスピニング法、回転円盤法、回転電極法、その他の急冷凝固法等が挙げられる。工業的生産に鑑みると、アトマイズ法、特に金属溶湯をアトマイズすることにより微細粒子を製造するガスアトマイズ法を選択することが好ましい。
金属溶湯は700〜1200℃の範囲の温度に加熱してアトマイズすることが好ましい。溶湯温度を上記範囲に設定すると、金属溶湯のアトマイズを効果的に達成することができるからである。噴霧媒は、空気、窒素、アルゴン、ヘリウム、二酸化炭素又は水、あるいはそれらの混合ガスであってもよい。経済的観点からは、空気、窒素ガス又はアルゴンガスが噴霧媒として好ましい。
セラミック粉末
アルミニウム粉末と混合されて混合粉末を形成するセラミック材料としては、Al、SiC、BC、BN、窒化アルミ及び窒化ケイ素がある。これらのセラミック材料は、単独で又はそれらの2種以上の混合物の形の粉末形態で使用することができ、アルミニウム基複合材の意図される目的に応じて選択することができる。ホウ素(B)には中性子を吸収する性能があるので、ホウ素系セラミック粉末を用いた場合は、得られるアルミニウム基複合材は中性子吸収材として使用できる。この場合、ホウ素系セラミック材料としては、BC、TiB、B、FeB及びFeBを挙げることができる。これらのホウ素系セラミック材料は、単独で又はそれらの2種以上の混合物の形の粉末形態で使用することができる。特に、中性子を良く吸収し得るBの同位体である10Bを多く含む炭化ホウ素(BC)を使用するのが好ましい。
セラミック粉末は、前述のアルミニウム粉末に、好ましくは0.5〜90質量%、より好ましくは5〜60質量%、特に好ましくは5〜45質量%の量で含有せしめられる。下限を0.5質量%に設定した理由は、セラミック粉末の含有量が0.5質量%より少ないと、アルミニウム基複合材を十分に強化できないためである。上限を90質量%に設定した理由は、セラミック粉末の含有量が90質量%より多いと、アルミニウム基複合材は、変形抵抗が高く、塑性加工が困難な上、その成形体が脆い構造のために折れやすくなるためである。更に、アルミニウム粒子とセラミック粒子の接合性が悪くなるので、成形体に空隙が非常にできやすく、意図される機能が得られなくなり、熱伝導性も低下する。更に、アルミニウム基複合材の切削性も低下する。
CやAl粉末のようなセラミック粉末は如何なる平均粒径を有していてもよい。好ましくは、セラミック粉末の平均粒径は1〜30μmの範囲とされる。アルミニウム粉末の平均粒径に対して説明したように、該二種の粉末の各平均粒径間の差は条件によって好ましく選択される。例えば、セラミック粉末の平均粒径は5〜20μmの範囲とすることがより好ましい。セラミック粉末の平均粒径が20μmより大きいと、アルミニウム基複合材には切断時に鋸歯が直ぐに摩耗してしまう問題がある。セラミック粉末の平均粒径が5μmより小さいと、微細セラミック粒子同士で凝集が非常に起こり易くなり、アルミニウム粉末との均一混合が困難になる。
本発明のセラミック粉末の平均粒径は、レーザー回折式粒度分布測定法による値を示す。セラミック粉末の粒子形状も特定のものに限定されない。例えば、セラミック粉末は涙滴状、真級状、回転楕円体状、フレーク状又は不定形状を採りうる。
容器
本発明の方法において用いられる金属容器、上部及び下部容器、容器本体及び閉塞部材(以下、集合的に「容器」という)の各々は、混合粉末と十分に接合され得る任意の金属製でありうる。好ましくは、容器はアルミニウム製又はステンレス鋼製である。例えばアルミニウム製の容器の場合、純アルミニウム(JIS1050、1070等)が通常用いられる。あるいは、Al−Cu系合金(JIS2017等)、Al−Mg系合金(JIS5052等)、Al−Mg−Si系合金(JIS6061等)、Al−Zn−Mg系合金(JIS7075等)及びAl−Mn系合金等の種々のタイプのアルミニウム合金も容器に使用することができる。
アルミニウムの組成は、所望される特性又は性質、コスト等々を考慮して選択的に決定されうる。例えば、塑性加工性/成形性や放熱性能を高める観点からは、純アルミニウムを選択するのが好ましい。純アルミニウムは、アルミニウム合金に比べて原料コストの面で有利でもある。更に強度や塑性加工性を高めたい場合には、Al−Mg系合金(JIS5052等)を選択するのが好ましい。中性子吸収能を更に高めたい場合には、Hf、Sm、Gd等の中性子吸収能を備えた少なくとも1種の元素をアルミニウムに添加することができる。
(2)製造工程
2−1:混合粉末調製工程
アルミニウム粉末とセラミック粉末を準備し、均一に混合する。アルミニウム粉末は一種のみでもよいし複数種のアルミニウム粉末を混合してもよい。セラミック粉末についても一種のみでもよいし複数種のセラミック粉末の混合物、例えばBC及びAl粉末の混合物であってもよい。アルミニウム粉末とセラミック粉末は、任意のタイプのミキサー、例えばVブレンダーもしくはクロスロータリーミキサー又はドラムブレンダー;あるいは遊星ミルを使用し、所定の時間(例えば約10分〜10時間)、一般的な方法で混合することができる。混合は、乾式混合でも湿式混合でもよい。混合の際に解砕の目的で、アルミナ又はSUSボール等の解砕メディアを適宜加えてもよい。
基本的には、混合粉末調製工程は、アルミニウム及びセラミック粉末を混合して混合粉末を調製する工程のみからなり、得られた混合粉末は次工程に送られる。
2−2:容器準備工程
容器準備工程では、上記の混合粉末調製工程によって調製された混合粉末を充填するための中空の平板状金属容器を準備する。
すなわち、下部容器12と上部容器14を準備して金属容器10を形成する。下部容器12は、アルミニウム製で、図1に示される如く、対向する側壁部12A,12B、前壁部12C、後壁部12D及び底面部12Eを有する形状に形成する。上部容器14は、アルミニウム製、つまり下部容器12と同じ材料製で、図1に示される如く、対向する側壁部14A,14B、前壁部14C、後壁部14D及び上面部14Eを有する形状に形成する。より詳細には、下部容器12は、閉塞された底部と開口した上部を有する矩形の平行六面体に形成し、上部容器14は、下部容器12の開口した上部を閉塞する閉塞部材となるように下部容器12の外周面を上から覆う構成とされた略矩形の平行六面体に形成する。つまり、上部容器14は下部容器12よりも僅かに大なるサイズを有するように形成する。
2−3:補強枠材準備工程
後述の充填工程後に、容器10の外周面、特に図2Aに示される圧延時の配置での容器の外周面を補強するための補強枠材16を準備する。容器10の圧延時の配置とは、容器10が、その長軸(平面視で正方形の形状を有している場合は、容器19の任意の中心軸)が圧延方向に沿って延び、その圧延される面が水平方向に沿って延びるように位置せしめられている状態を意味する。
補強枠材16は、それぞれ圧延方向に平行な上部容器14の対向側面(壁部)14A,14Bの各一に、圧延方向に沿って延びるように固定されるように構成された第一及び第二補強部材16A,16Bと、それぞれ圧延方向に直交する上部容器14の前面(壁部)14C及び後面(壁部)14Dの各一に、圧延方向に直交する方向に沿って延びるように固定されるように構成された第三及び第四補強部材16C,16Dを具備する。
第一及び第二補強部材16A,16Bのそれぞれは、該第一及び第二補強部材16A,16Bを各側面14A,14Bに固定した場合に、その前端及び後端が上部容器14の対応する側面14A,14Bの前端及び後端の各一を越えて圧延方向に沿って延びるように位置せしめられる長さを持つように形成する。第三及び第四補強部材16C,16Dのそれぞれは、圧延方向に直交する方向において上部容器14の対応する前面及び後面14C,14Dの長さに等しい長さを有するように形成し、第一及び第二補強部材16A,16Bに固定するか又は取付ける。
2−4:充填工程
ついで、上述の混合粉末調製工程によって調製された混合粉末Mを下部容器12内に充填する。この充填工程は、一定の供給速度で混合粉末Mを供給する操作として実施される。一定の供給操作と同時に、充填される混合粉末Mの密度を増加させるために下部容器12のタッピング又は機械的圧縮の操作が実施される。タッピングによって、混合粉末Mの理論充填率を35〜65%の範囲に設定する。タッピングの完了後に、下部容器12の開口した上部から溢れ出る過剰の混合粉末を除去し、混合粉末Mが下部容器12に完全な充填状態で充填されるようにする。
ついで、上部容器14を上から下部容器12に嵌めて下部容器12の開口した上部を閉塞し、混合粉末Mが内部に充填された圧延前アセンブリ18を形成する。
次に、補強枠材16による圧延前アセンブリ18の補強操作を実施する。補強操作は、図2Bに示される如く、圧延時の配置にある圧延前アセンブリ18の上面及び底面を除く外周面を補強枠材16によって囲撓することによって実施する。
より詳細に述べると、第一及び第二補強部材16A,16Bのそれぞれを、圧延方向に沿って位置させたその対向端(つまり前端及び後端)が側面14A,14Bの対応する前端及び後端の各一を越えて延びるように、上部容器14の対応する側面14A,14Bに一時的に固定する。ついで、第三補強部材16Cを、その対向側端が第一及び第二補強部材16A,16Bの各前端に接するように上部容器14の前面14Cに一時的に固定し、第四補強部材16Dを、その対向側端が第一及び第二補強部材16A,16Bの各後端に接するように上部容器14の後面14Dに一時的に固定する。
補強枠材16が一時的に固定された圧延前アセンブリ18を真空炉に投入し、真空炉を所定の真空度になるまで減圧し、圧延前アセンブリ18中の混合粉末Mに脱ガス処理を施す。
脱ガス操作完了後、一時的に固定した補強枠材16をMIG(金属不活性ガス)溶接によって最終的に固定する。MIG溶接によって、補強枠材16の上縁を上部容器14の上縁部全体にわたって溶接し、補強枠材16の下縁部を上部容器14の下縁部全体にわたって溶接する。この状態で、上部容器14の下縁部は下部容器12の下縁部に十分に隣接して位置している。よって、補強枠材16の下縁部を上部容器の下縁部に溶接すると、下部容器12の下縁部もまた補強枠材16及び上部容器14の各下縁部に溶接される結果、容器10はその全体が密封してシールされる。本発明では、容器10を補強するために第一及び第二補強部材16A及び16Bを少なくとも使用することができる。第一及び第二補強部材16A及び16Bと共に第三及び第四補強部材16C及び16Dをまた使用することもできる。
気密的にシールされる容器10のため、圧延前アセンブリ18中に空気が存在(残存)していると、空気が欠陥を引き起こす虞がある。この観点から、上部容器14の上面部の4箇所の隅部のそれぞれにガス抜き孔(図示せず)を形成して圧延前アセンブリ18から空気(及び他のガス)を逃がし、圧延前アセンブリ18内に空気が残存するのを防止する。溶接中に圧延前アセンブリ18内に入るガスがガス抜き孔から効果的に放出されることもまた期待できる。
2−5:予備加熱工程
圧延前に、補強枠材16によって補強された圧延前アセンブリ18を予備加熱する。この予備加熱は、大気中、2時間以上の保持時間、300〜600℃の温度で加熱炉を使用して実施する。予備加熱雰囲気は大気に限定されない。予備加熱は、好ましくは例えばアルゴンガス雰囲気のような不活性ガス雰囲気下で、より好ましくは5Pa以下の真空雰囲気下で実施する。
2−6:圧延工程
圧延工程では、予備加熱したアセンブリに塑性加工の一つとして圧延を施す。圧延工程の説明に先立って、本発明の格別の効果をもたらすための圧延前又は予備加熱アセンブリ18の条件を以下に記載する。
圧延工程を施される予備加熱アセンブリ中の混合粉末は、固まらないようにして粉末形態に維持する。すなわち、混合粉末には、混合粉末を所定の形状に維持することを可能にする予備成形工程、特にプレス加工又は通電加圧焼結によって混合粉末を意図した形状に予備成形する工程を施さない。本発明では、混合粉末は比較的高い充填率で圧延前アセンブリに充填されるが、充填率は、混合粉末を粉末状態から変化させるレベルにまでは増加させない。
また、粉末形態に維持された混合粉末Mに圧延工程を施す場合、混合粉末は金属又はアルミニウム部材によって上下から挟まれる。すなわち、混合粉末Mの上面は上部容器14の上面部14Eによって完全かつ強固に覆われ、混合粉末Mの底面は下部容器12の底面部12Eによって完全かつ強固に覆われる。このようにして、容器10中に密封シールされアルミニウム部材に上下から挟まれた混合粉末Mを有する圧延前アセンブリ18が、板状のクラッド材の原料として提供される。
予備加熱アセンブリ18に通常は圧延を施し、意図した形状に成形する。予備加熱アセンブリ18を板状に成形する場合、所定のクラッド率のAl板及び/又はAl容器を有する板状クラッド材を、冷間圧延だけで得ることができる。熱間塑性加工では、一つの塑性加工を実施してもよいし、複数のタイプの塑性加工を組み合わせて実施してもよい。あるいは、熱間塑性加工後に冷間塑性加工を実施してもよい。冷間塑性加工を行う場合、冷間塑性加工前に、圧延前アセンブリに300〜600℃(好ましくは400〜500℃)の温度での焼鈍を施して冷間塑性加工を容易にしてもよい。
圧延前アセンブリ18はアルミニウム板によってクラッドされているので、圧延前アセンブリ18の表面には、塑性加工の際に破壊の起点として作用し、ロール、ダイス等の摩耗の加速を引き起こすセラミック粒子が無い。このため、向上した圧延性をもたらし、強度や表面性状に優れたアルミニウム基複合材を得ることができる。また得られた熱間塑性加工材は、表面が金属でクラッドされ、金属クラッドが内部の混合粉末Mに強固に結合している。従って、熱間塑性加工材は、表面を金属でクラッドされていないアルミニウム基複合材より、耐食性、耐衝撃性、熱伝導性に優れる。
他の好ましい実施態様では、圧延前に、圧延前アセンブリ18の表面を、保護板、例えばSUS又はCu製の薄板で効果的に覆う。これにより、塑性加工時に生じる虞のある長手方向(前方/後方)のしわや割れの発生を防止することができる。
より詳細には、圧延工程において、予備加熱アセンブリ18に10〜70%の範囲のドラフト(つまり、圧下率)で熱間圧延を施す。熱間圧延における圧延温度はおよそ500℃に設定する。
予備加熱アセンブリ18はこの熱間圧延によって最終の厚みを有するように仕上げることができる。あるいは、この熱間圧延後に、熱間圧延アセンブリに、200〜300℃の温度で温間圧延を更に施してもよい。更には、第一の温間圧延を施したアセンブリに、200℃以下の温度で第二の温間圧延を施してもよい。
圧延加工の完了後、圧延したアセンブリに、300〜600℃の温度で所定の時間、加熱処理、つまり焼鈍工程を施す。焼鈍工程の完了後、焼鈍したアセンブリに冷却処理と、所望の平坦度を得るための矯正処理を施す。ついで、矯正したアセンブリの対向側縁及び前縁及び後縁を切断して、所定の形状を有する製品を得る。
第一実施態様に係る本発明の方法を特定の実施例を参照しながらより詳細に説明する。各実施例中の物性値は次の方法で測定した。
(1)組成
各材料の組成は誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析法により分析した。
(2)平均粒径
各粉末の平均粒径は、粒度分布測定装置(商品名「マイクロトラック」(日機装製))を使用し、レーザー回折式粒度分布測定法により測定した。平均粒径は、体積基準メジアン径である。
(3)圧延性
各試料を圧延加工したときの割れの有無や表面性状を評価した。板面上に表面割れの発生があったものを「×」、表面に割れはないが、しわ状の凹凸のあるものを「○」と評価した。表面割れも凹凸の発生もなかった試料を「◎」と評価した。
(4)組織観察
各試料を切断した試験片を樹脂に埋め込み、エメリー研磨、バフ研磨を行なった。ついで、光学顕微鏡により、試験片の金属組織を観察した。
実施例1
表1に示す組成のアルミニウム合金粉末に、BCセラミック粉末を、35質量%の量になるように均一に混合して、混合粉末Mを調製した。ついで、アルミニウム合金(JIS A5052P)製で、正方形形状の上面及び底面の一辺が367.7mm、高さ31.6mm、壁厚1.6mmの外側寸法を有する略矩形の平行六面体形状に形成された下部容器12を準備した。更に、アルミニウム合金(JIS A5052P)製で、正方形形状の上面及び底面の一辺が370.9mm、高さ33.2mm、壁厚1.6mmの外側寸法を有する略矩形の平行六面体形状に形成された上部容器14を準備した。アルミニウム合金(JIS A5052P)は195MPaの引張強度を有していた。
断面矩形で長さ409.9mm、幅20.0mm、高さ33.2mm、壁厚2.0mmの外形寸法を有するようにそれぞれ形成された二枚のアルミニウム板を、補強枠材16を構築する第一及び第二補強部材16A,16Bとして準備した。更に、断面L字状で長さ370.9mm、幅19.5mm、高さ33.7mm、壁厚2.0mmの外形寸法を有するようにそれぞれ形成された二枚のアルミニウム板を、補強枠材16を構築する第三及び第四補強部材16C,16Dとして準備した。補強枠材16(つまり、第一から第四の補強部材16A〜16D)は上部容器12及び下部容器14と同じ材料(JIS A5052P)製とした。
下部容器12をタッピングしながら混合粉末Mを下部容器12中に供給した。タッピングは、次の条件下で実施した:振動周波数=0.53Hz;振幅=50mm;重り=5.4kg;振動時間=3分以上(設定時間:3分)。
ついで、得られた圧延前アセンブリ18を500℃で2時間以上、予備加熱し、500℃の圧延開始温度及び100℃の圧延終了温度で2段圧延機(400KW,Φ870×900)を使用して圧延し、1.9mmの最終厚を得た。圧延完了後、圧延アセンブリに450℃の温度で4時間、焼鈍処理を施した後、200℃に冷却した。
上記のようにして得られたクラッド材(最終製品)から試験片を採取し、試験片の金属組織を光学顕微鏡を用いて観察した。金属組織の顕微鏡写真を図3〜6に示す。ここで、図3は、上部容器14の上面部14Eが上部スキン層として見える部分を含む領域を示す顕微鏡写真(倍率:100倍)であり;図4は、図3の領域を部分的に示す顕微鏡写真(倍率:400倍)であり;図5は、圧延を施された混合粉末Mからなる中間層の領域を示す顕微鏡写真(倍率:100倍)であり;図6は、図5の中間層の領域を部分的に示す顕微鏡写真(倍率:400倍)である。
図5及び6の写真から分かるように、試験片は十分高密度になるように圧延されている。図3及び4の顕微鏡写真から分かるように、上部容器14の上面部14Eから形成された上部スキン層は内部混合粉末Mと強固に接着されている。
中間層(つまり、圧延によって高密度化され又は固化された混合粉末Mからなる層)は従来の製品によって達成することができなかった95%以上の高い理論密度比(理論密度比:測定された特定の密度に対する計算密度の比)を有している。
実施例2
補強枠材16の幅の最適範囲を明らかにするために、20.0mmの幅を有する実施例1の補強枠材16に加えて、5種の補強枠材16を、幅だけを5mm、10mm、15mm、30mm及び40mmに変更させて準備した。この変更以外は、実施例1のものと同じ条件下で製品を作製した。準備した補強枠材16のそれぞれを圧延前アセンブリ18に溶接して5種の試料を準備し、試料のそれぞれに同じようにして圧延を施した。
更に、更なる5種類の補強枠材16を、実施例1の補強枠材16の材料をアルミニウム合金(JIS A6063)に変更し、ついで幅のみを5mm、10mm、15mm、30mm及び40mmに変えて、準備した。これらの変更以外は、実施例1のものと同じ条件下で製品を作製した。準備した補強枠材16のそれぞれを圧延前アセンブリ18に溶接して5種の試料を準備し、試料のそれぞれに同じようにして圧延を施した。アルミニウム合金(JIS A6063)は95MPaの引張強度を有していた。
異なった材料及び/又は幅の上記補強枠材を使用した各試料における圧延性を評価した。結果を表2に示す。
表2から、補強枠材18を構成する補強部材18A〜18Dの各々について、圧延方向に直交する方向に沿った上部容器14の長さの4%以上に幅を設定することが必要であることが分かった。
実施例3
更に、中間層となる混合粉末Mと上部及び下部スキン層となるアルミニウム板部材(壁部)14E,12Eの各々の間の接合が圧延時に剥がれることなく維持されるために所望される圧延条件について試験を実施した。
圧延工程において使用される圧延機の圧延ロールの半径をR;圧延前アセンブリ18の厚み(圧延前)をH0;圧延アセンブリの厚み(圧延後)をH1としたとき(つまり、(H0−H1)が圧延工程当たりの圧延量)、次の二つの不等式を満たす範囲が所望される範囲、つまり上記の所望される条件であることが分かった:
H0/SQRT(R×(H0−H1))≦1.0
H0/SQRT(R×(H0−H1))≧2.2
上記不等式中の「SQRT(R×(H0−H1))」は接触弧長として定義される値である。つまり、各不等式の左辺側は[(圧延前アセンブリ18の厚み)÷(接触弧長)]に等しく、よって左辺の値は形状比として定義される。
この仮定に基づき、実施例1の方法によって製造された(つまり、圧延された)製品の剥離状態を検証した。検証結果を図7に示す。
図7に見られるように、形状比が1.0以下又は2.2以上である場合に圧延工程が剥離無しに完了し、形状比が次の不等式:1.0<形状比<2.2を満たす範囲にある場合に圧延工程中に剥離が生じることが実証された。
上記のように、本発明の方法では、スキン層の剥離を防止するための圧延条件を、上記不等式を使用して定めることができる。
第一実施態様は、混合粉末Mの基材がBCセラミック粉末とアルミニウム粉末を含有する一例に基づいて記載したが、本発明の方法において使用される基材はかかる組成に限定されるものではない。基材の主要成分はアルミニウムに限定されるものではなく、銅、マグネシウム、チタン、ガリウム、鉄又はインジウムのような任意の他の適切な金属元素の粉末であってもよいことがまた理解される。
第二実施態様
第一実施態様は、容器10が下部容器12と上部容器14を具備する一例に基づいて記載したが、本発明の方法において使用される容器はかかる構造に限定されるものではなく、任意の他の適切な構造、例えば本発明の第二実施態様に係る方法に使用される容器10’の構造を有しうる。
第二実施態様に係る方法を以下に記載する。第二実施態様は容器10’についてのみ第一実施態様と異なっており、他の成分、材料、製造方法等は第一実施態様のものとほぼ同じである。よって、次の説明は容器10’と充填操作のみについて行い、その他の重複する説明は省略する。
図8に示すように、第二実施態様における容器10’は、圧延方向に沿って位置する前部開口端及び後部開口端を画成するように外側まで完全に開口している内部中空キャビティを有する中空部材として押出加工によって製造された容器本体20を具備し、第一栓部材22が前部開口端を閉塞するように構成され、第二栓部材24が後部開口端を閉塞するように構成されている。
容器本体20は第一実施態様の容器(上部及び下部容器14,12)と同じ材料(JIS A5052P)製である。
第一実施態様における容器10とは異なり、容器本体20は、上述のように、押出加工によって製造された一体の中空構造を有している。より詳細に述べると、容器本体20は、それぞれが圧延方向に沿って延びる対向した側壁部20A,20Bと、上面部20Cと底面部20Dとを一体に有する平板矩形の平行六面体形状に形成されている。圧延工程では、容器本体20は、その長軸が圧延方向に沿って延び、圧延されるその上面部20C(つまり上面)が水平方向に延びる配置(圧延位置)に位置させられ、前部開口端から後部開口端への方向に圧延機を使用した圧延が施される。
第一実施態様と比較すると、第二実施態様の底面部20D及び上面部20Cが第一実施態様の下部容器12の底面部12E及び上部容器14の上面部14Eにそれぞれ対応する。第二実施態様の側壁部20Aは、第一実施態様の下部容器12の側壁部12Aと上部容器14の側壁部14Aと補強部材16Aの組合せに対応する。第二実施態様の側壁部20Bは、第一実施態様の下部容器12の側壁部12Bと上部容器14の側壁部14Bと補強部材16Bの組合せに対応する。
第一栓部材22は、容器本体20の前部開口端(特に、前部開口)に前部開口端を完全に閉塞するように摺動可能な形で嵌入可能な形状とサイズに形成されている。第一栓部材22は、第一栓部材22の外面が前部開口端の面と一致するように容器本体20の前部開口端に嵌入し、ついで圧着又は溶接によって容器本体20に固定する。
第一栓部材22は、第一実施態様の下部容器12の前面部12C、上部容器14の前面部14C、補強枠材16の補強部材16Cの全厚みに等しい値に設定された圧延方向の厚みを有している。
第二栓部材24は、容器本体20の後部開口端(特に、後部開口)に必要な深さまで押圧可能で後部開口端を完全に閉塞するように摺動可能な形で嵌入可能な形状とサイズに形成されている。第二栓部材24が容器本体の後部開口端に嵌入されると、第二栓部材24が圧着又は溶接によって容器本体20に固定される。第二栓部材24は、第一実施態様の下部容器12の後面部12D、上部容器14の後面部14D、補強枠材16の補強部材16Dの全厚みに等しい値に設定された圧延方向の厚みを有している。
第二栓部材24には圧延方向に沿って部材を貫通する貫通孔(図示せず)が形成されている。貫通孔は、加熱及び圧延時の容器本体20の内部からガスを放出するガス抜き(つまり、ガス放出)手段となり、第一実施態様におけるように、圧延前アセンブリの輸送中は栓又はテープ(図示せず)によって閉塞されるようになされている。
第一及び第二栓部材22,24の各々は容器本体20と同じ材料製である。
容器10’、つまり容器本体20と容器本体20に嵌合された第一及び第二栓部材22,24のアセンブリは、第一実施態様の圧延前アセンブリ18(補強枠材16を含む)と等しい外形寸法と、互いに嵌合された上部及び下部容器14,12によって画成される内部中空キャビティに等しい内部寸法を有している。
上記のように、第二実施態様の容器10’は第一実施態様の補強枠材16と一体に形成されている。
次の説明は、混合粉末Mを容器10’中に充填する充填工程についてなされる。
先ず、第一栓部材22を容器本体20の第一開口端に嵌入させ、容器を圧着して固定し、容器本体20の前部開口端を気密的に閉塞する。容器本体20の前部開口端の閉塞後、容器本体20を、後部開口端が容器本体20の上部に位置する起立配置に位置させる。ついで、混合粉末Mを一定の供給速度で容器本体20中にその後部及び上部開口端から供給する。充填工程は、必要とされる量の混合粉末Mを完全に充填し、容器本体20中に充填される混合粉末Mの密度を増加させるように容器本体20をタッピングしながら又は機械的圧縮を行いながら実施される。
混合粉末Mを容器本体20中に完全に充填した後、第二栓24を容器本体20の後部開口端(つまり、上部開口端)に嵌入させ、容器本体20に混合粉末Mの上面に配する。より詳細に述べると、この嵌合操作は、第二栓部材24(特に、第二栓部材24の底面)が容器本体20に充填された混合粉末Mの上面に接触するように実施する。更に、嵌合操作の間、タッピング操作を連続して実施する。よって、充填された混合粉末Mの密度が更に増加させられ、混合粉末Mの嵩が徐々に減少し、混合粉末Mの上面が徐々に低くなる。つまり、第二栓部材24は、混合粉末Mの上面の低下に応じて容器本体20に徐々に嵌入される。
タッピング操作と嵌合操作は、所定の密度の混合粉末Mが得られるのに十分な時間をかけて実施する。ついで、第二栓部材24を容器の圧着又は溶接によって容器本体20に固定する。このようにして、第一実施態様の圧延前アセンブリ18と等価な圧延前アセンブリを準備する。
ついで、少なくとも二つのガス抜き孔を、第一実施態様におけるものと同じようにして、圧延配置の圧延前アセンブリの上面部となる、圧延前アセンブリ(つまり、容器本体20に混合粉末Mが充填された容器10’)の第一及び第二栓の何れか一つに形成する。ついで、圧延前アセンブリに予備加熱工程及び圧延工程を施して最終製品を得る。
第一実施態様の容器10と異なる形状を有する第二実施態様の容器10’を使用した検証試験を、第一実施態様の場合(実施例1〜3)と同じようにして実施した。その結果、第一実施態様のものと同じ効果を確実に得ることができることが実証された。
本発明の有利な実施態様を示し説明した。添付の特許請求の範囲に記載されたその精神及び範囲から逸脱しないように様々な変更や修正をなすことができることは当業者には明らかであろう。

Claims (14)

  1. (a)アルミニウム粉末とセラミック粉末を混合して混合粉末を調製する工程と;
    (b)開口上部を有する矩形のアルミニウム下部容器と、下部容器の開口上部を密封して閉塞する構成の形状に形成されたアルミニウム閉塞部材を提供する工程と;
    (c)混合粉末を下部容器中に配する工程と;
    (d)閉塞部材により下部容器の上部開口を閉塞して圧延前アセンブリを準備する工程と;
    (e)混合粉末を粉末状態に維持するように圧延前アセンブリを予備加熱する工程と;
    (f)圧延前アセンブリの長軸を圧延方向に沿って延びるように位置決めし、その圧延される面が実質的に水平方向に配されるように予備加熱されたアセンブリを圧延してアルミニウム基複合材を得る工程を具備し、該アルミニウム基複合材が間に混合粉末を含む一対のアルミニウム板を有する、アルミニウム基複合材の製造方法であって、前記工程(f)の前に、圧延方向に延びるアルミニウム閉塞部材の少なくとも両側の外周面を補強することを更に含み、前記補強工程が、第一及び第二補強部材を使用することを含み、該第一及び第二補強部材の各々が、圧延方向に直交する方向に沿ったアルミニウム閉塞部材の長さの少なくとも4%である幅を有する、方法
  2. 工程(c)が、アルミニウム下部容器中の混合粉末を機械的に圧縮して混合粉末の密度を増加させることを更に含む請求項に記載の方法。
  3. アルミニウム閉塞部材が開口底部を有し、アルミニウム下部容器を覆うように囲繞して上方からアルミニウム下部容器の外周面に嵌合される構成とされた請求項に記載の方法。
  4. アルミニウム下部容器よりも僅かに大きいサイズを有するように形成されたアルミニウム閉塞部材を提供することを更に含む請求項に記載の方法。
  5. 前記予備加熱工程が、圧延前アセンブリを300〜600℃の温度の雰囲気中で予備加熱することを含む請求項に記載の方法。
  6. 前記予備加熱工程が大気中で予備加熱することを含む請求項に記載の方法。
  7. 前記予備加熱工程が不活性ガス雰囲気中で予備加熱することを含む請求項に記載の方法。
  8. 前記予備加熱工程が真空雰囲気中で予備加熱することを含む請求項に記載の方法。
  9. 前記圧延工程が、圧延前アセンブリを圧下率10〜70%の範囲で熱間圧延することを含む請求項に記載の方法。
  10. 前記圧延工程が、圧延前アセンブリに前記熱間圧延を施し、ついで200〜300℃の温度で温間圧延を施すことを含む請求項に記載の方法。
  11. 前記圧延工程が、圧延前アセンブリに第一の温間圧延を施し、ついで200℃以下の温度で第二の温間圧延を施すことを含む請求項10に記載の方法。
  12. 前記圧延工程後に300〜600℃の温度で熱処理する工程を更に含む請求項に記載の方法。
  13. 前記補強工程が、第一及び第二補強部材を、それぞれ圧延方向に平行なアルミニウム閉塞部材の対向側面の各一に、圧延方向に沿って延びるように固定し、第三及び第四補強部材を、それぞれ圧延方向に直交するアルミニウム閉塞部材の前面及び後面の各一に、圧延方向に直交する方向に沿って延びるように固定することを含む請求項に記載の方法。
  14. 前記工程(f)が、H0/SQRT(R×(H0−H1))として定義される形状比に圧延前アセンブリを圧延することを含み、ここで、H0は圧延前アセンブリの厚みであり;H1は圧延後のアセンブリの厚みであり;Rは圧延ロールの半径であり;SQRT(R×(H0−H1))は圧延ロールの回転当たりのアセンブリの圧延量であり、形状比は次の不等式:
    H0/SQRT(R×(H0−H1))≦1.0 又は
    H0/SQRT(R×(H0−H1))≧2.2
    を満たす請求項に記載の方法。
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