JP2006316307A - Iii族窒化物半導体基板の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】損傷の少ない高品質のGaN基板を提供する。
【解決手段】サファイア基板10上に、開口部112を有する二酸化珪素(SiO2)のマスク11を形成する。マスクは、<11−20>方向に延在するストライプ状の被覆部が平行配置されたパターンを有し、隣接する被覆部の間に開口部112を有する。開口部112に、サファイア基板10の基板面に対して傾斜するファセット面{1−101}を有するGaN膜14を成長させる。隣接する第一のGaN膜14同士がマスク11を覆い尽くす前に、第一のGaN膜14の成長を止める。続いてマスク11を除去し空隙15を形成する。その後、内部に空隙15を有する第一のGaN膜14上に第二のGaN膜16を成膜する。以上のようにして得られた構造体を冷却する過程でサファイア基板10を分離除去し、GaN自立基板を得る。
【選択図】 図1
【解決手段】サファイア基板10上に、開口部112を有する二酸化珪素(SiO2)のマスク11を形成する。マスクは、<11−20>方向に延在するストライプ状の被覆部が平行配置されたパターンを有し、隣接する被覆部の間に開口部112を有する。開口部112に、サファイア基板10の基板面に対して傾斜するファセット面{1−101}を有するGaN膜14を成長させる。隣接する第一のGaN膜14同士がマスク11を覆い尽くす前に、第一のGaN膜14の成長を止める。続いてマスク11を除去し空隙15を形成する。その後、内部に空隙15を有する第一のGaN膜14上に第二のGaN膜16を成膜する。以上のようにして得られた構造体を冷却する過程でサファイア基板10を分離除去し、GaN自立基板を得る。
【選択図】 図1
Description
本発明は、III族窒化物半導体基板の製造方法に関する。
近年、窒化ガリウム(GaN)結晶を窒化物系光デバイスや電子デバイス作製用基板として用いることが提案されており、この基板を得るためにバルク結晶を作製する試みが、多くの研究機関で行われている。しかしながら、GaN結晶の窒素の解離圧が高いために、GaAsのように溶液から大きなバルク結晶を得ることが難しく、GaN半導体基板として利用できるGaNバルク結晶の作製は非常に困難である。
このため、GaN基板を作製する方法として、サファイア(Al2O3)等の異種材料基板にGaN膜を成長させた後、異種材料基板を分離除去することによりGaN基板を得る方法が広く採用されており、このような基板を自立基板と呼んでいる。以下、自立基板の作製方法に関連する従来技術について説明する。
特許文献1には、サファイア基板上にGaN膜を成長させ、その後レーザ光を照射してサファイア基板からGaN膜を剥離する方法が開示されている。しかし、この方法ではサファイア基板およびGaN層に加わっている歪が大きいことから、剥離の最中にクラックが発生しやすく大きな自立基板を得ることが困難である。また、剥離の最中に転位などの欠陥が生じやすいという問題もある。
一方、特許文献2には、サファイアに代わる基板材料としてガリウム砒素(GaAs)を用いてGaN膜を成長させ、その後エッチングによりGaAsを除去する方法が開示されている。
この方法によれば、クラック等の発生も少なく、GaN層とGaAsの分離は比較的良好に行われる。しかし、GaAsは分解温度が低いのでGaN膜成長中にGaAsが分解されてGaN膜の中にAsが不純物として混入し、GaN基板の品質を下げる場合がある。また、毒性の強いAsを扱うため安全性の面で好ましくない。
この方法によれば、クラック等の発生も少なく、GaN層とGaAsの分離は比較的良好に行われる。しかし、GaAsは分解温度が低いのでGaN膜成長中にGaAsが分解されてGaN膜の中にAsが不純物として混入し、GaN基板の品質を下げる場合がある。また、毒性の強いAsを扱うため安全性の面で好ましくない。
また、特許文献3には、サファイア基板上に、結晶欠陥または空隙を含むAlGaN膜またはInGaN膜からなるリフトオフ層を成長させ、リフトオフ層上にGaN膜を成長させ、結晶欠陥または空隙を含むリフトオフ層によって、サファイア基板からGaN膜を剥離する方法が開示されている。しかし、AlGaN層やInGaN層といったGaNとは格子定数の異なる層を成長させることで、転位などの結晶欠陥が導入されやすくなり、リフトオフしたGaN層の結晶性が悪化するという問題を有している。また、AlGaN層またはInGaN層からなるリフトオフ層に多数の微細な空隙または結晶欠陥を安定して形成するためには、1)キャリアガスの水素(H2)と窒素(N2)との割合、2)NH3と、トリメチルガリウム(TMGa)や塩化ガリウム(GaCl)などIII族原料との気相における比(V/III比)、3)AlまたはInの供給量、4)成長温度の各条件を精緻にバランスさせる必要性が高い。そのため、制御安定性の面でさらなる改善の余地がある。また、微細な空隙または結晶欠陥を有するリフトオフ層上に形成されるGaN膜の結晶性を向上させることは困難である。そのため、GaN基板の品質の面でも課題を有している。
また、特許文献4には、HVPE法を用いたGaN半導体基板の製造方法が開示されている。この製造方法では、サファイア基板上に、ストライプ状に配置された断面矩形形状の被覆部および被覆部間に形成された開口部を有するマスクを形成する。このマスクの被覆部は、サファイア基板の<11−20>、GaN半導体基板の<1−100>方向に延在する。マスク形成後、その開口部からGaN半導体層を成長させ、マスクの被覆部上面を、完全には覆わない状態で成長を止める。このときGaN半導体層は、特許文献1の請求項1等に記載されているように、断面略T字型となる。その後、マスクをドライエッチングにより除去し、次いでGaN半導体層上にさらにGaN半導体層を成長させた後、サファイア基板を剥離し、GaN半導体基板を得る。
しかしながらこの方法では、マスク上面を完全に覆わない状態で成長を止めることが困難である。マスク上面がGaN半導体層で覆われてしまうと、マスクをドライエッチングできなくなる。上記のように断面T字型の半導体膜が形成される成長方法は、いわゆるELO法とよばれ、横方向の成長速度が速い上、各開口部におけるGaN半導体層の成長速度がばらつくという傾向を有している。したがって、マスクを覆わないタイミングでGaN半導体層の成長を制御性良く止めることは困難である上、各マスクがGaN半導体層で覆われるタイミングがずれる関係で、不可避的に、少なくとも一部のマスクについては上面がGaN半導体層で覆われてしまう形態となる。このため、同文献記載の方法では、マスクを充分に除去してサファイア基板を容易に剥離することは、事実上困難である。
特開2002−57119号公報
国際公開第WO99/23693号パンフレット
特開2004−112000号公報
特開2003−55097号公報
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、結晶品質の良好なIII族窒化物半導体基板が安定的に得られる製造方法を提供することにある。
本発明によれば、
下地基板上に開口部を有するマスクを形成する工程と、
前記開口部から第一のIII族窒化物半導体膜を選択成長させるとともに、第一のIII族窒化物半導体膜が前記マスクの表面全面を覆わないうちに成長を止め、前記開口部に、前記下地基板の基板面に対して傾斜するファセット面を有する構造体を形成する工程と、
前記第一のIII族窒化物半導体膜により覆われていないマスク表面の露出部にエッチャントを接触させて前記マスクの少なくとも一部をエッチング除去し、空隙を形成する工程と、
前記空隙を残しつつ前記第一のIII族窒化物半導体膜上に第二のIII族窒化物半導体膜をさらに成長させ、前記第一のIII族窒化物半導体膜および前記第二のIII族窒化物半導体膜を含むIII族窒化物半導体層を得る工程と、
前記III族窒化物半導体層と前記下地基板とを分離し、前記III族窒化物半導体層を含むIII族窒化物半導体基板を得る工程と、を含むことを特徴とするIII族窒化物半導体基板の製造方法が提供される。
下地基板上に開口部を有するマスクを形成する工程と、
前記開口部から第一のIII族窒化物半導体膜を選択成長させるとともに、第一のIII族窒化物半導体膜が前記マスクの表面全面を覆わないうちに成長を止め、前記開口部に、前記下地基板の基板面に対して傾斜するファセット面を有する構造体を形成する工程と、
前記第一のIII族窒化物半導体膜により覆われていないマスク表面の露出部にエッチャントを接触させて前記マスクの少なくとも一部をエッチング除去し、空隙を形成する工程と、
前記空隙を残しつつ前記第一のIII族窒化物半導体膜上に第二のIII族窒化物半導体膜をさらに成長させ、前記第一のIII族窒化物半導体膜および前記第二のIII族窒化物半導体膜を含むIII族窒化物半導体層を得る工程と、
前記III族窒化物半導体層と前記下地基板とを分離し、前記III族窒化物半導体層を含むIII族窒化物半導体基板を得る工程と、を含むことを特徴とするIII族窒化物半導体基板の製造方法が提供される。
本発明においては、マスク開口部から第一のIII族窒化物半導体膜を選択成長させるとともに、第一のIII族窒化物半導体膜が前記マスクの表面全面を覆わないうちに成長を止める。これにより、開口部に、下地基板の基板面に対して傾斜するファセット面を有する構造体が形成される。このような構造体が形成される成膜方法は、いわゆるFIELO(facet-initiated epitaxial lateral overgrowth)とよばれるもので、前述の特許文献4に記載されている断面T字型の構造体が形成されるELO法に比し、横方向の結晶成長が遅い。このため、ELO法に比べ、マスクを覆わないタイミングでGaN半導体層の成長を制御性良く止めることが容易となる上、各マスクがGaN半導体層で覆われるタイミングのずれも低減できる。このため、マスクを確実に除去し、空隙部を下地基板全面にわたって安定に形成することができる。この結果、III族窒化物半導体層に過大なストレスをかけることなく、サファイア基板を容易に分離除去することができる。
以上のように本発明は、マスクの表面全面を覆わない段階でIII族窒化物半導体の成長を止め、下地基板の基板面に対して傾斜するファセット面を有する構造体を形成し、その後、マスクを除去して空隙部を形成し、下地基板を除去する方法を採用する。このため、空隙部を下地基板全面にわたって安定に形成することができ、下地基板の除去に際しIII族窒化物半導体層に過大なストレスをかけることを避けることができる。これにより、本発明によれば、結晶品質の良好なIII族窒化物半導体基板を得ることができる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
<実施形態1>
図1は、本実施形態に係るGaN基板の製造方法を模式的に示す工程断面図である。
本実施形態に係るGaN基板の製造方法においては、まず、サファイア基板10上に開口部112を有する二酸化珪素(SiO2)のマスク11を形成する。マスクは、<11−20>方向に延在するストライプ状の被覆部が平行配置されたパターンを有し、隣接する被覆部の間に開口部112が設けられる。次いで、500℃の低温でGaN層13を成長させた後、昇温し、GaN層13の一部を分解・蒸発させてマスク開口部に結晶核を形成する。その後、この結晶核を種として第一のGaN膜14を形成する。隣接する第一のGaN膜14同士がマスク11を覆い尽くす前に、第一のGaN膜14の成長を止める(一次成膜工程)。このとき、開口部112に、サファイア基板10の基板面に対して傾斜するファセット面{1−101}を有する構造体が形成される。続いてマスク11をウエットエッチングにより除去し、空隙15を形成する。そして、内部に空隙15を有する第一のGaN膜14上に第二のGaN膜16を成膜する(二次成膜工程)。以上のようにして得られた構造体には成長温度から降温する過程でGaNとサファイアの熱膨張係数差に起因する応力が成長界面に加わり、空隙15が存在することで簡単にサファイア基板10を分離除去することができ、その結果、GaN膜だけの自立基板が得られる。
図1は、本実施形態に係るGaN基板の製造方法を模式的に示す工程断面図である。
本実施形態に係るGaN基板の製造方法においては、まず、サファイア基板10上に開口部112を有する二酸化珪素(SiO2)のマスク11を形成する。マスクは、<11−20>方向に延在するストライプ状の被覆部が平行配置されたパターンを有し、隣接する被覆部の間に開口部112が設けられる。次いで、500℃の低温でGaN層13を成長させた後、昇温し、GaN層13の一部を分解・蒸発させてマスク開口部に結晶核を形成する。その後、この結晶核を種として第一のGaN膜14を形成する。隣接する第一のGaN膜14同士がマスク11を覆い尽くす前に、第一のGaN膜14の成長を止める(一次成膜工程)。このとき、開口部112に、サファイア基板10の基板面に対して傾斜するファセット面{1−101}を有する構造体が形成される。続いてマスク11をウエットエッチングにより除去し、空隙15を形成する。そして、内部に空隙15を有する第一のGaN膜14上に第二のGaN膜16を成膜する(二次成膜工程)。以上のようにして得られた構造体には成長温度から降温する過程でGaNとサファイアの熱膨張係数差に起因する応力が成長界面に加わり、空隙15が存在することで簡単にサファイア基板10を分離除去することができ、その結果、GaN膜だけの自立基板が得られる。
以下、上記製造方法の各工程の詳細および製造に用いる装置について説明する。
図5は、GaN層13を成膜する際に使用する有機金属気相成長(MOCVD)装置である。
図5は、GaN層13を成膜する際に使用する有機金属気相成長(MOCVD)装置である。
このMOCVD装置500は、反応管50と、反応管50内に回転自在に配設されている基板サセプタ51と、を備える。このMOCVD装置500は、反応管50のうち、基板サセプタ51の上半を成長領域58、下半を回転機構室59として区画している。
成長領域58には、ガス供給管53、54が設けられている。回転機構室59には、成長領域58側のキャリアガスが回転機構室59側に流入することを抑制するためのガス供給管52、および駆動軸56が設けられている。
成長領域58と回転機構室59とは、反応管50内の下流側で合流しており、その先にはガス排出管55が設けられている。反応管50外周の基板サセプタ51と相対する箇所には、加熱用高周波コイル57が設けられている。
以下、図5に示すMOCVD装置500を用いてGaN層13を成膜する工程について説明する。
GaN層13を成膜する前に、まず、(0001)面(c面)から0.15°傾斜した厚さ430μmのサファイア基板10を用意し、この基板のc面に電子ビーム(EB)蒸着法を用いて2μmの厚さのSiO2膜を形成する。
GaN層13を成膜する前に、まず、(0001)面(c面)から0.15°傾斜した厚さ430μmのサファイア基板10を用意し、この基板のc面に電子ビーム(EB)蒸着法を用いて2μmの厚さのSiO2膜を形成する。
続いて、リソグラフィ技術を用いて開口部112の幅が3μm、SiO2膜の幅が7μmとなるようストライプ状のマスク11を形成する。ストライプ方向は、サファイア基板10の<1−100>方向(基板上に形成されるGaN半導体層の<11−20>方向)とする。ここまでが本実施形態のマスキング工程(図1(a))である。
上記工程に続いて、図5に示す構成を備えるMOCVD成長装置500の反応管50内の基板サセプタ51上に、マスク11を形成したサファイア基板10を、セットする。図5中、サファイア基板10をウェハ502として表示する。そして、ガス供給管52、53、および54からN2ガスを供給して、反応管50内をパージする。反応管50内に供給したガスは、排出口55より排出される。
反応管50内を充分パージした後、導入管53、54より水素(H2)ガスを供給し、加熱用高周波コイル57でサセプタ51を加熱し、サファイア基板10を昇温する。サファイア基板10の温度は1050℃まで昇温させる。
サファイア基板10の表面を10分間熱アニール待機した後、500℃の温度まで降温する。サファイア基板10の温度が安定した時点で、ガス供給管53からトリメチルガリウム(TMG)、導入管54からアンモニア(NH3)ガスをそれぞれ供給してサファイア基板10上にGaN層13の成長を行う。TMG、NH3の供給量は、それぞれ10μmol/min、5000cc/minとする。
なお、GaN層13を構成する低温バッファ層は、40nm以上200nm以下とすることが好ましい。こうすることにより、その後のGaN層の成長において、ファセット構造を安定的に形成することができる(図1(b))。
なお、GaN層13を構成する低温バッファ層は、40nm以上200nm以下とすることが好ましい。こうすることにより、その後のGaN層の成長において、ファセット構造を安定的に形成することができる(図1(b))。
GaN層13の成膜後、サファイア基板10をMOCVD装置から取り出し、ハイドライド気相成長(HVPE)装置にセットする。
図4は、第二のGaN膜を成膜する際に使用するHVPE装置である。このHVPE装置400は、反応管40と、反応管40内に回転自在に配設されている基板ホルダ41と、反応管40の外部のヒータ42とを備える。このHVPE装置400は、ガリウム(Ga)ソース44を載置するソースボート48を反応管40内に備える。また、このHVPE装置400は、反応管40に、ガス供給管43、45と、ガス排出管47とを備える。
図4は、第二のGaN膜を成膜する際に使用するHVPE装置である。このHVPE装置400は、反応管40と、反応管40内に回転自在に配設されている基板ホルダ41と、反応管40の外部のヒータ42とを備える。このHVPE装置400は、ガリウム(Ga)ソース44を載置するソースボート48を反応管40内に備える。また、このHVPE装置400は、反応管40に、ガス供給管43、45と、ガス排出管47とを備える。
基板ホルダ41は、反応管40の下流側に回転自在に設けられている。基板ホルダ41に保持されるウェハ402(図1におけるサファイア基板10に相当する)に相対する箇所に成長領域46が形成されている。ヒータ42は、反応管40の外周に設けられている。ガス排出管47は、基板ホルダ41の下流側に設けられている。
Gaソース44は、反応管40内の上流側のGaCl生成領域49に区画されて配されている。塩化水素(HCl)ガスを供給するガス供給管45は、GaCl生成領域49の上流側に設けられている。GaCl生成領域49の排出口は成長領域46に相対している。アンモニア(NH3)ガスを供給するガス供給管43は、反応管40の上流側のGaCl生成領域49の区画外の箇所に設けられている。
以下、図1(c)以降の工程について説明する。まず、図4に示す構成を備えるHVPE装置400の反応管40内の基板ホルダ41に、空隙15を形成したサファイア基板10をセットした後、ガス供給管43、45よりN2ガスを供給して反応管40内をパージする。反応管40内に供給したガスは、排出口47より排出される。その後、N2ガスがらH 2ガスに切替えて、ヒータ42により反応管40内を昇温する。反応管40内の温度が500℃前後からガス導入管43よりNH3ガスを供給する。GaClの生成領域49の温度を850℃、成長領域46の温度を1040℃とする。この昇温過程でGaN膜13の一部が分解・蒸着する一方、GaN膜13の他の一部がマスク開口部において結晶化して残留する。ガス供給管45よりHClガスを供給してGaと反応させGaClを成長領域46に輸送する。結晶化したGaN膜13を種としてGaN膜14の成長が行なわれる(図1(c))。さらに成長を続けると開口部112から成長したGaN膜14は、SiO2マスク11表面を覆い始めとともに第一のGaN膜14は、傾斜面14aを有するファセット構造を維持しながら成長していく。傾斜面14aは、サファイア基板の基板面に対して傾斜するファセット面{1−101}である。
SiO2マスク11の表面の露出幅が1μm程度になった時点でガス導入管45からのHClガスの供給を停止し、ヒータ42の電源を遮断して反応管40を降温する。反応管40の温度が500℃前後でNH3ガスの供給を停止し、H2ガスからN2ガスに切替える。常温に達した時点で反応管40からサファイア基板10を取り出す。ここまでが本実施形態の一次成膜工程(図1(d))である。
取り出したサファイア基板10を弗化水素(HF)あるいは、弗化水素(HF)と水の混合液に浸して処理し、サファイア基板10上部のSiO2マスク11を、SiO2マスク11の上面のうち第一のGaN膜14に覆われない領域(露出領域)を通じて溶解して、複数の空隙15を形成する。その結果、複数の空隙15に挟まれた第一のGaN膜14は、隔壁部14b上に形成される。空隙15形成後、充分に流水洗浄し、水分を乾燥させる。ここまでが本実施形態の空隙形成工程(図1(e))である。
再び、空隙15を形成したサファイア基板11をHVPE装置に反応管40内にセットする。ガス導入管43、45よりN2ガスを供給して反応管40内を十分パージした後、N2ガスからH2ガスに切替えて、ヒータ42により反応管40を昇温する。反応管40の温度が500℃前後からガス導入管43よりNH3ガスを加えて供給する。
引き続き、Gaソース44が存在するGaCl生成領域49の温度が850℃、成長領域46の温度が1040℃に到達する時点まで昇温を続ける。それぞれの温度が安定した時点で導入管45よりH2ガスにHClガスを加えて供給し、Gaソース44と反応させ、塩化ガリウム(GaCl)を生成し、成長領域46に輸送する。成長領域46では、NH3ガスとGaClとが反応して第一のGaN膜14のファセット構造の傾斜面14a上に第二のGaN膜16を成長させる。
ファセット構造の傾斜面14aの上で第二のGaN膜16が成長すると、隣接する傾斜面14a上を成長した第二のGaN膜16と合体し、空隙15の上面がGaN16によって閉塞されたが、内部の空隙15はそのまま保持される。さらに、成長を続けると第一のGaN膜14のファセット構造は埋め込まれて第二のGaN膜16の表面は平坦になる。
第二のGaN膜16の厚さが500μmになった時点で、ガス供給管45からのHClガスの供給を停止し、ヒータ42の電源を遮断して、反応管40を降温する。ここまでが本実施形態の二次成膜工程(図1(f))である。
この降温中に、空隙15に挟まれた隔壁部14bに亀裂が生じて、第二のGaN膜16はサファイア基板10の界面から剥離する。剥離した第二のGaN膜16の表面および裏面を研磨することで、最終的に平坦化したGaN基板を作製することができる(図1(g))。
本実施形態に係るGaN基板の製造方法の作用効果について、以下、説明する。
本実施形態の製造方法によれば、損傷の少ない高品質のGaN基板を安定的に得ることができる。本実施形態によれば、下地のサファイア基板とその上のGaN層との境界面において、マスクを形成した箇所に対応し、複数の空隙15が形成される。このため、下地のサファイア基板とGaN層とは、空隙を除く領域に形成されたGaN膜のみによって接合された状態となり、容易に分離することができる。たとえば、成膜直後の高温状態(1040℃程度)から常温(25℃程度)まで降温すると、サファイアおよびGaNの熱膨張係数の違いにより両者の界面に熱応力が発生するが、この熱応力によって、外力を加えることなくGaN層からサファイア基板が自然に除去される。また、自然に除去できない場合であっても、サファイアとGaNの接合体をエッチング液に浸漬すれば、空隙にエッチング液が速やかに浸入し、空隙を除く領域に形成されたGaN膜を容易に溶解することができる。この結果、サファイア基板を容易に分離することができる。
特に本実施形態では、FIELO法により第一のGaN膜14を形成している。このため、ELO法に比べて第一のGaN膜14の横方向の成膜速度が小さくなり、その制御が容易となる。このため、図1(c)の工程においてSiO2マスク11上面における第一のGaN膜14の横方向成長を制御性良く停止させることができ、第一のGaN膜14に覆われない露出領域を確実に残すことができる。この露出部を介してエッチング液をSiO2マスク11に接触させて溶解し、空隙15を安定に形成することができる。
また、本実施形態の製造方法によれば、GaN膜をFIELO法により形成しているため、結晶品質の良好なGaN基板が得られる。FIELO法によれば、基板に対して傾斜するファセットを形成しながら成長が進むため、マスク開口部の成長領域において下地から受け継いだ転位がファセット面で折れ曲がり、積層方向上部への転位の伝播を効果的に抑制することができる。このため、第一のGaN膜14の上部に形成される第二のGaN膜16中に生じる結晶欠陥を大幅に低減することができ、良好な品質のGaN基板を得ることができる。
<実施形態2>
図2は、本実施形態に係るGaN基板の製造方法を模式的に示す工程断面図である。
図2は、本実施形態に係るGaN基板の製造方法を模式的に示す工程断面図である。
まず、サファイア基板21上にMOCVDを用いてGaN層21を形成する(図2(a))。次いで、フォトリソグラフィ法とエッチングにより、GaN層21上に複数の開口部23を有するマスク22を形成するマスキング工程を行う。マスクは、<11−20>方向に延在するストライプ状の被覆部が平行配置されたパターンを有し、隣接する被覆部の間に開口部23が設けられる。続いて、マスク開口部23を成長領域として、第一のGaN膜24を形成し、その際に隣接する第一のGaN膜24同士がマスク22を覆い尽くす前に、第一のGaN膜24の成長を止める一次成膜工程を行う。このとき、開口部23に、サファイア基板の基板面に対して傾斜するファセット面{1−101}を有する構造体が形成される。その後、マスク22をエッチングにより除去し空隙25を形成する空隙形成工程を行う。さらに、内部に空隙を有する第一のGaN膜24上に再度第二のGaN膜26を成膜する二次成膜工程を行う。以上のようにして得られた構造体を冷却し、サファイア基板20を分離除去し、GaN膜からなる自立基板が得られる。
以下、本実施形態に係るGaN基板の製造工程をより詳細に説明する。
はじめに、図2(a)に示すように、サファイア基板20上にGaN層21を形成する。GaN層21の形成は、MOCVD法による。まず、サファイア基板20を図5に示すMOCVD装置の反応管50内の基板サセプタ51をセットする。図5では、サファイア基板20が502に対応する。つづいて、ガス供給管52、53、および54よりN2ガスを供給して反応管50内を十分置換する。反応管50内に供給したガスは、ガス排出管55より排出される。反応管50内をパージした後、駆動軸56により基板サセプタ51を毎分20回の速度で回転させる。
次にN2ガスに対して水素(H2)ガスを30%の割合で供給して、高周波加熱コイル57により基板サセプタ51を1050℃の温度に昇温する。基板サセプタ51の温度が1050℃の温度で10分間待機した後、降温して500℃の温度する。基板サセプタの温度が安定してからトリメチルガリウム(TMG)とアンモニア(NH3)ガスを供給して、サファイア基板20の表面に30nmの厚さのGaN層を形成し、TMGの供給を停止して再び、1050℃の温度に12分程度かけて昇温し、1050℃の温度に安定させる。再びTMGを供給して、GaN層21を形成する。GaN層21の膜厚が2μm程度の厚さになったらTMGの供給を停止して降温する。基板サセプタ51が500℃前後の温度になったらNH3ガスとH2ガスの供給を停止、基板サセプタ51の回転を停止する。基板サセプタ51が常温になってから反応管50より取り出す。
次にN2ガスに対して水素(H2)ガスを30%の割合で供給して、高周波加熱コイル57により基板サセプタ51を1050℃の温度に昇温する。基板サセプタ51の温度が1050℃の温度で10分間待機した後、降温して500℃の温度する。基板サセプタの温度が安定してからトリメチルガリウム(TMG)とアンモニア(NH3)ガスを供給して、サファイア基板20の表面に30nmの厚さのGaN層を形成し、TMGの供給を停止して再び、1050℃の温度に12分程度かけて昇温し、1050℃の温度に安定させる。再びTMGを供給して、GaN層21を形成する。GaN層21の膜厚が2μm程度の厚さになったらTMGの供給を停止して降温する。基板サセプタ51が500℃前後の温度になったらNH3ガスとH2ガスの供給を停止、基板サセプタ51の回転を停止する。基板サセプタ51が常温になってから反応管50より取り出す。
次に、サファイア基板20のGaN層21上に、シラン(SiH4)ガスと酸素(O2)との反応による熱CVD法を用いて、2μmの厚さのSiO2膜を形成する。そして、リソグラフィ技術とウエットエッチング技術とを用いて、開口部23の幅が3μm、SiO2膜の幅が6μmとなるようストライプ状のマスク22を形成する。ストライプの方向は、GaN層21に対して<11−20>方向に作成する。ここまでが、本実施形態のマスキング工程(図2(b))である。
次に、マスク22を形成したサファイア基板20を、図4に示すHVPE装置の反応管40内の基板ホルダ41にセットする。図4中、サファイア基板20をウェハ402として表示する。そして、ガス供給管43、45よりN2ガスを供給して反応管40内をパージする。反応管40内に供給したガスは、排出口47より排出される。
反応管40内を充分パージした後、ガス供給管43、45より供給するガスをH2ガスに切替えて、ヒータ42により反応管40を昇温する。
引き続き、Gaソース44領域の温度が850℃、成長領域46の温度が1040℃に到達する時点まで昇温を続ける。それぞれの温度が安定した時点で、ガス供給管45よりH2ガスにHClガスを加えて供給し、Gaソース44と反応させGaClを成長領域46に輸送する。成長領域46では、NH3ガスとGaClとが反応してGaN膜を成長させる。
上記のようにして開口部23に露出したGaN層21から第一のGaN膜24を成長させる。約10分間の成長を行うと、第一のGaN膜24は、SiO2膜のマスク22上まで成長し、SiO2マスク22を覆い始めるとともに、傾斜面24aを有するファセット構造が形成される。傾斜面24aは、ファセット面{1−101}からなる。
SiO2マスク22の表面の露出幅が0.5μm程度になった時点で、HClガスの供給を停止して、反応管40を降温する。その後、常温まで冷却して、サファイア基板20を反応管40より取り出す。ここまでが本実施形態の一次成膜工程(図2(c))である。
次に、サファイア基板20の上部のSiO2マスク22を、SiO2マスク22の上面のうち第一のGaN膜24に覆われない領域(露出領域)を通じて、弗化水素(HF)と水との混合液で処理する。このようにして、SiO2マスク22を除去し、空隙25を形成した後、充分に流水洗浄して乾燥させる。その結果、空隙25に挟まれた第一のGaN膜24は、隔壁部24b上に形成される。ここまでが本実施形態の空隙形成工程(図2(d))である。
次に、空隙25を形成したサファイア基板20を再び、HVPE装置400の反応管40内の基板ホルダ41にセットする。図4中、サファイア基板20をウェハ402として表示する。そして、ガス供給管43、45よりN2ガスを供給して、反応管40内をパージする。反応管40内に供給したガスは、排出口47より排出される。
反応管40内を充分パージした後、ガス供給管43、45より供給するガスをH2ガスに切替えて、ヒータ42により反応管40を昇温する。引き続きGaソース44が存在するGaCl生成領域49の温度が850℃、成長領域46の温度が1040℃に到達する時点まで昇温を続ける。
それぞれの温度が安定した時点で導入管45よりH2ガスにHClガスを加えて供給し、Gaソース44と反応させ、GaClを生成し成長領域46に輸送する。成長領域46では、NH3ガスとGaClとが反応してファセット構造の傾斜面24a上に第二のGaN膜26を成長させる。このとき、SiH2Cl2ガスを添加する。
第一のGaN膜24のファセット構造の傾斜面24aの上で第二のGaN膜26が成長すると、隣接する傾斜面24a上を成長した第二のGaN膜26と合体し、空隙25の上面が第二のGaN膜26によって閉塞されたが、内部の空隙25はそのまま保持される。さらに、成長を続けると第一のGaN膜24のファセット構造は埋め込まれて第二のGaN膜26の表面は平坦になる。
約5時間の成長により第二のGaN膜16の厚さが600μmになった時点で、ガス供給管45からのHClガスの供給を停止し、ヒータ42の電源を遮断して、反応管40を降温する。ここまでが本実施形態の二次成膜工程(図2(e))である。
この降温中に、空隙25に挟まれた隔壁部24bに亀裂が生じて、第二のGaN膜26はサファイア基板20の界面から剥離する。剥離して得られるGaN層の表面および裏面を研磨することで、最終的に平坦化したGaN基板を作製することができる(図2(f))。
以上の工程を経て得られたGaN膜(第二のGaN膜26)について室温のホール測定によりキャリア濃度を調べたところ、2×1018cm-3のキャリア濃度が測定された。剥離したGaN膜に含まれる第二のGaN膜26の表面および裏面を研磨することで、平坦なn型のGaN基板として用いることができた。得られた基板は、レーザーダイオード(LD)、発光ダイオード(LED)、およびトランジスタ等を作製する際に好適に利用可能な、高品質な自立GaN基板であった。
本実施形態の製造方法は、第一の実施形態で述べたのと同様の作用効果にくわえ、以下の作用効果を奏する。すなわち、本実施形態では、バッファ層としてGaN層21を形成し、この上面にマスクを設けて選択成長を行っているため、各開口部から成長する第一のGaN膜24の成長速度をより精密に制御することができる。このため、図2(c)の工程においてマスクの露出部分を確実に残し、エッチング液によるマスク除去を確実に行うことができる。
本実施形態において、GaN層21は、500℃で成長した低温バッファ層と、1050℃で成長したGaN結晶層との積層構造とした。1050℃で成長したGaN結晶層を設けることにより、設計通りの寸法、形状のマスクを安定的に形成することが可能となる。しかしながら、GaN層21は上記積層構造以外の構造としてもよく、たとえば低温バッファ層のみにより構成してもよい。
本実施形態において、GaN層21は、500℃で成長した低温バッファ層と、1050℃で成長したGaN結晶層との積層構造とした。1050℃で成長したGaN結晶層を設けることにより、設計通りの寸法、形状のマスクを安定的に形成することが可能となる。しかしながら、GaN層21は上記積層構造以外の構造としてもよく、たとえば低温バッファ層のみにより構成してもよい。
<実施形態3>
図3は、本実施形態に係る二酸化珪素のマスクパターンの形状を模式的に示す平面図である。
図3は、本実施形態に係る二酸化珪素のマスクパターンの形状を模式的に示す平面図である。
本実施形態に係るGaN基板の製造方法は、基本的には、実施形態1の場合と同様の工程を含む方法であるが、マスキング工程において、ストライプ状のマスクを形成するかわりに、図3(a)、(c)に示すような矩形状の開口部30を備えるマスク31、または、図3(b)に示すような三角形状の開口部33を備えるマスク32形成した点で異なる。なお、それ以外の工程は、基本的に実施形態1の場合と同条件とする。
本実施形態に係るGaN基板の製造方法は、第一の実施形態で述べたのと同様の作用効果にくわえ、GaN膜の損傷を一層効果的に抑制できるという作用効果を奏する。
上記の方法では、マスクパターンを、矩形状の開口部30を備えるマスク31または三角形状の開口部33を備えるマスク32としている。ここで、ストライプ状のマスクでは、ストライプと直角方向に歪が大きく、熱歪が加わるとサファイア/GaN構造体において馬の背状態に反りが発生するのに対し、矩形状または角形状の開口部を備えるマスクでは、熱歪みによる反りがサファイア/GaN構造体の面内で均一となる。
このため、二次成膜工程後の降温中の剥離がサファイア基板上の空隙に挟まれた隔壁部の全体で均一に発生し、剥離途中でGaN膜中に亀裂が生じる割合を低減できる。したがって、上記の製造方法によれば、損傷の少ない高品質のGaN膜が安定的に得られる。
<実施形態4>
本実施形態に係るGaN基板の製造方法は、基本的には、実施形態1の場合と同様の工程を含む方法であるが、本実施形態では、マスクの断面形状を変更している。
本実施形態に係るGaN基板の製造方法は、基本的には、実施形態1の場合と同様の工程を含む方法であるが、本実施形態では、マスクの断面形状を変更している。
図6は、本実施形態に係るGaN半導体基板の製造方法を模式的に示す工程断面図である。この製造方法においては、まず、フォトリソグラフィ法とエッチングにより、下地基板であるサファイア基板(Al2O3)10上に、断面形状がサファイア基板10側から上方に向かって幅広となる開口部112、断面形状がサファイア基板10側から上方に向かって幅狭となる被覆部111を有する二酸化珪素(SiO2)のマスク11を形成する。
次いで、開口部112から第一のGaN半導体膜14を成長させる。この第一のGaN半導体膜14を成長させる工程では、マスク11の開口部112内部から、第一のGaN半導体膜14を形成し、隣接する第一のGaN半導体膜14同士がマスク11を覆い尽くす前に、第一のGaN半導体膜14の成長を止める。
続いて、マスク11をエッチングにより除去し、空隙15を形成する。そして、空隙15を有する第一のGaN半導体膜14上に、前記空隙15を残しつつ、第二のGaN半導体膜16を成膜する。これにより、第一のGaN半導体膜14と、第二のGaN半導体膜16とを含むGaN半導体層17が形成される。
こうして得られたサファイア基板10およびGaN半導体層17の接合体を冷却して、サファイア基板10を分離除去する。
上述の製造工程を、以下、詳細に説明する。まず、厚さ550μmの3インチφのサファイア基板10表面に、1μmの厚さのSiO2膜11を積層する(図6(a))。ここで、SiO2膜11の成膜には、シラン(SiH4)ガスと酸素(O2)ガスを用いる熱CVD(Chemical Vapor Deposition)法や電子ビーム(EB:Electron Beam)蒸着法、およびその他の手法を使用することができる。
続いて、リソグラフィ技術を用いてこのSiO2膜11上にレジストマスク12を形成する。レジストマスク12は、その被覆部121の長手方向がサファイア基板10の<1−100>方向に沿うように形成した。レジストマスク12の開口部122の幅は2μmであり、被覆部121の幅は10μmである。このレジストマスク12は、基板10の一部または全面に形成される(図6(b))。
次に、適宜条件を設定し、レジストマスク12が形成されたサファイア基板10をフッ化水素系の溶液に浸した。開口部122を通して、SiO2膜11がエッチングされ、SiO2膜11は、サファイア基板10を被覆するストライプ状の複数の被覆部111と、前記サファイア基板10が露出し、前記被覆部111間に配置された開口部112とを有するマスク11となる(図6(c))。被覆部111の長手方向は、サファイア基板10の<1−100>方向に沿った方向である。被覆部111の断面形状は、略台形形状で、サファイア基板10側から上方に向かって幅狭となっている。また、開口部112の断面は、サファイア基板10側から上方に向かって広くなる台形形状であり、サファイア基板10側から上方に向かって幅広となっている。ここでいう断面とは、被覆部111の前記長手方向と直交する方向の断面である。換言すると、マスク11をサファイア基板10の<11−20>方向(GaN半導体層17の<1−100>方向)方向で切断したときの断面である。開口部112の幅が3〜4μmとなるまでエッチングを行った後、レジストマスク12を除去する。
次に、サファイア基板10の表面を20分間熱アニールした後、500℃の温度まで降温する。サファイア基板10の温度が安定した時点で、MOCVD法によりサファイア基板10上にGaN層13を形成する(図6(d))。
GaN層13の厚さが100nmに達した時点で成長を止め、基板をMOCVD装置から取り出しHVPE装置にセットする。つづいて、HVPE装置の成膜室内にNH3ガス、H2ガス、N2ガスを供給しながら昇温する(図6(d))。この過程でGaN層13の一部は、分解・蒸発する一方で、GaN層13の他の一部は結晶化して残留する。この残留した結晶部分を種として以後の層成長が行われる。
つづいて、マスク11の開口部112内に残存した結晶部分をHVPE法により成長させる。約15分間の成長を行うと、結晶部分は、開口部112内で{1−101}ファセット構造を有する第一のGaN半導体膜14を形成するに至る(図6(e))。このファセット構造は、サファイア基板10の基板面に対して傾斜した傾斜面を有し断面三角形状となる。
さらに成長を続けると第一のGaN半導体膜14はマスク11の被覆部111の側壁面111aを覆いはじめる(図6(f))。
さらに成長を続けると、第一のGaN半導体膜14は、マスク11の被覆部111の上面を覆い、被覆部111を介して隣接する開口部112から成長した第一のGaN半導体膜14のファセット構造と合体を始める。隣り合う第一のGaN半導体膜14のファセット構造が50%合体した段階で第一のGaN半導体膜14の成長を停止し、反応室を降温する。常温まで冷却した段階で、反応室より第一のGaN半導体膜14が形成されたサファイア基板10を取り出す。
以上がマスク11の開口部112から第一のGaN半導体膜14を形成する工程である。
取り出したサファイア基板10上の第一のGaN半導体膜14は、マスク11の被覆部111を完全には覆っておらず、被覆部111が露出した状態となっている(図6(g))。このような第一のGaN半導体膜14が形成されたサファイア基板10を弗化水素(HF)と水の混合液であるエッチャントに2時間程度浸す。エッチャントは、マスク11の被覆部111が露出した露出部111bに接触し、被覆部111を溶解して空隙15を形成する。空隙15を形成した後、十分流水洗浄し、乾燥させる。以上により、マスク11が除去され空隙15が形成される(図6(h))。
次に、HVPE法により、ファセット構造の傾斜面14a上に第二のGaN半導体膜16を成長させる。第二のGaN半導体膜16は、ファセット構造の傾斜面14aから成長が行なわれ、隣接する傾斜面14aに形成された第二のGaN半導体膜16と合体し、空隙15の上面が第二のGaN半導体膜16によって閉塞される。
なお、空隙15内部には、第二のGaN半導体膜16は形成されず、空隙15はそのまま保持される。さらに、成長を続けるとファセット構造は埋め込まれる。これにより、第一のGaN半導体膜14と第二のGaN半導体膜16とを備えたGaN半導体層17が形成される(図6(i))。
GaN半導体層17の厚さが1mmに到達した段階でGaN半導体層17の成長を終了し、反応室を降温する。この降温中にGaN半導体層17とサファイア基板10の熱膨張係数の違いから、空隙15を構成する隔壁に応力が集中し、GaN半導体層17はサファイア基板10の界面近傍から剥離する(図6(j))。剥離したGaN半導体層17の表面および裏面を研磨することで、最終的に平坦化したGaN基板を作製することができる。
本実施形態に係る基板製造方法によれば、既述の実施形態の作用効果にくわえ、以下の作用効果を奏する。
マスク11の開口部112を挟んで配置された被覆部111の断面形状が略台形形状であり、サファイア基板10側から上方に向かって狭くなる形状となっている。このような形状とすることで開口部112から成長した第一のGaN半導体膜14が、結晶性のよいものとなる。この第一のGaN半導体膜14上に第二のGaN半導体膜16を形成し、GaN基板を得ているため、結晶性のよいGaN基板を得ることができる。
マスク11の開口部112内部および被覆部111表面に、第一のGaN半導体膜14を形成したのち、マスク11を除去することで、第一のGaN半導体膜14のうち、被覆部111表面に形成された部分の下部に空隙15が形成される。そして、第一のGaN半導体膜14上に、前記空隙15を埋めないように、第二のGaN半導体膜16を形成し、これをGaN半導体層17としている。従って、空隙15により、サファイア基板10とGaN半導体層17とが接触している面積が小さくなるため、GaN半導体層17をサファイア基板10から容易に分離することが可能となる。
また、マスク11の開口部112の断面形状がサファイア基板10側から上方に向かって広がる形状であり、この開口部122から第一のGaN半導体膜14を成長させている。そのため、第一のGaN半導体膜14の開口部112内部に形成される部分をサファイア基板10側から上方に向かって広がる形状とすることができ、第一のGaN半導体膜14のサファイア基板10に支持される部分の面積を小さくすることができる。これにより、サファイア基板10の分離除去を容易化することができる。
より詳細に説明すると、本実施形態では、サファイア基板10と第一のGaN半導体膜14との熱膨張係数の違いを利用し、第一のGaN半導体膜14に亀裂を生じさせて、サファイア基板10を分離している。第一のGaN半導体膜14のうち、サファイア基板10に支持されている部分の面積が小さいので、単位断面積あたりの応力の負荷が大きくなる。そのため、前記熱膨張係数の違いにより発生する応力が、例え小さかったとしても容易に亀裂が生じ、サファイア基板10の分離を容易に行うことができるのである。
さらに、本実施形態では、第一のGaN半導体膜14によりマスク11の被覆部111を完全に覆わず、被覆部111が露出した露出部111bにエッチャントを接触させているので、マスク11の被覆部111を容易にエッチング除去できる。
また、本実施形態では、第一のGaN半導体膜14をFIELO法により成長させているため、マスク11の被覆部111上面のうち、第一のGaN半導体膜14により覆われない部分は、第一のGaN半導体膜14の傾斜面14aで囲まれ、略逆三角形状となる。このためエッチャントが第一のGaN半導体膜14の傾斜面14aで囲まれた部分に入り易くなり、エッチャントが被覆部111に接触しやすくなる。
さらに、本実施形態では、第一のGaN半導体膜14によりマスク11の被覆部111を完全に覆わず、被覆部111が露出した露出部111bにエッチャントを接触させている。そのため、被覆部を第一のGaN半導体膜により、完全に覆ってしまった後、第一のGaN半導体膜をはがして露出部を形成する場合に比べ、製造に手間を要しない。
また、本実施形態では、マスク11の被覆部111を断面略台形形状とし、開口部112の断面形状を上方に向かって幅広となるようにしているので、第一のGaN半導体膜14を成長させる際に、第一のGaN半導体膜14が開口部112を埋め尽くすのにかかる速度が上方に向かって低下する。そのため、第一のGaN半導体膜14の成長状態が把握しやすくなる。これにより、隣接する開口部112から成長した第一のGaN半導体膜14同士が被覆部111上面で完全に合体してしまう前に確実に第一のGaN半導体膜14の成長を止めることが容易となる。
これにくわえ、FIELO法を用いて第一のGaN半導体膜14を成長させているため、第一のGaN半導体膜14の水平方向の成長速度がELO法に比べ遅く、第一のGaN半導体膜14の水平方向の成長の制御性がよい。従って、より確実に第一のGaN半導体膜14同士が完全に合体してしまう前に、第一のGaN半導体膜14の成長を止めることができる。
特に、本実施形態では、被覆部111の断面形状を略台形形状としており、被覆部111の上面の面積が小さいため、第一のGaN半導体膜14により、埋まってしまい易いが、FIELO法を用いて第一のGaN半導体膜14を成長させることでこの問題を解決することができる。
また、FIELO法を用いて第一のGaN半導体膜14を成長させることで、マスク11の被覆部111が第一のGaN半導体膜14で覆われるタイミングのずれを防止できる。
さらに、本実施形態では、マスク11の被覆部111の断面形状を略台形形状としているため、第一のGaN半導体膜14および第二のGaN半導体膜16で被覆部111の上面を完全に覆うのに時間を要しない。
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
たとえば、上記の実施形態では、SiO2マスクを2μmの厚さで形成したが、HVPE法で成長する第二のGaN膜の一部が空隙内に入り込んだとしても、空隙を完全に充填しない程度の厚さであればよい。また、開口部の幅を3μmとし、マスクの幅を7μmとしたが、寸法の設定は任意であり、空隙の幅が充分確保できればよい。
また、実施形態1では、アンドープGaN膜を形成したが、実施形態2で説明したように、GaN膜に不純物を添加して、n型の導電性のGaN基板にしてもよい。あるいは、鉄(Fe)を添加することで、高抵抗のGaN基板とすることも可能である。
また、GaN半導体層17を厚く成長させた場合には、スライスにより複数枚のGaNウエハを切り出すことができ、これらの表面、および裏面を研磨することでGaN基板を作製することができる。
また、GaN半導体層17を厚く成長させた場合には、スライスにより複数枚のGaNウエハを切り出すことができ、これらの表面、および裏面を研磨することでGaN基板を作製することができる。
さらに、上記の実施形態では、異種材料基板としてサファイア基板を用いたが、他にもSiC、スピネル基板、Si基板、ZnO基板などの異種材料基板を好適に用いることができる。
図1(c)、図6(d)〜(e)において、マスク開口部に結晶核を形成する工程は、上記実施形態ではHVPE装置内で行う例を示したが、これらは、MOCVD装置内で行ってもよい。
また、上記の実施形態では、エッチングによりSiO2マスクを全部除去したが、必ずしもマスクを全部除去しなくてもよい。一部のマスクが残存していても、空隙が形成されれば、冷却過程で隔壁部において亀裂が生じて、特に大きな外力を加えることなくサファイア基板を分離除去できる。このため、損傷の少ない高品質のGaN基板を安定的に得ることができる。
また、上記の実施形態では、エッチングによりSiO2マスクを全部除去したが、必ずしもマスクを全部除去しなくてもよい。一部のマスクが残存していても、空隙が形成されれば、冷却過程で隔壁部において亀裂が生じて、特に大きな外力を加えることなくサファイア基板を分離除去できる。このため、損傷の少ない高品質のGaN基板を安定的に得ることができる。
また、上記の実施形態では、冷却により外力を付加することなしに亀裂が形成され下地基板が全面剥離する態様について説明したが、必ずしも冷却過程で全面剥離しなくてもよい。この場合においても、剥離のために付与する外力を最小限にすることができ、損傷の少ない高品質のGaN基板を安定的に得ることができる。
また、上記の実施形態では、特定の膜厚の半導体膜を、特定の製造条件で形成したが、特に限定する趣旨ではない。すなわち、上記の膜厚および製造条件は単なる例示に過ぎず、形成する半導体膜の構造または組成に応じて適宜変更が可能である。
サファイア基板―GaN厚膜からなる構造体上に半導体レーザや、発光ダイオード等の発光素子構造、さらには電界効果トランジスタ等の電子デバイス構造を作製した後に、これらの構造体を成長温度から冷却する過程で、隔壁部において亀裂を生じさせて下地基板を除去する方法も本発明の範囲に含まれる。
10、20、60 サファイア基板
11、22、27、61 マスク(SiO2膜)
112、23、28、62 開口部
13、63 GaN膜
14、24、64 GaN膜
14a、24a、64a 傾斜面
14b、24b、64b 隔壁部
15、25、65 空隙
16、26、66 GaN膜
21 GaN膜
30 開口部
31、32 マスク(SiO2膜)
33 開口部
40 反応管
41 基板ホルダ
42 ヒータ
43、45 ガス供給管
44 ガリウムソース
46 成長領域
47 ガス排出管
48 ソースボート
49 GaCl生成領域
400 HVPE装置
402 ウェハ
50 反応管
51 基板サセプタ
52、53、54 ガス供給管
55 ガス排出管
56 駆動軸
57 加熱用高周波コイル
58 成長領域
59 回転機構室
111 被覆部
500 MOCVD装置
502 ウェハ
11、22、27、61 マスク(SiO2膜)
112、23、28、62 開口部
13、63 GaN膜
14、24、64 GaN膜
14a、24a、64a 傾斜面
14b、24b、64b 隔壁部
15、25、65 空隙
16、26、66 GaN膜
21 GaN膜
30 開口部
31、32 マスク(SiO2膜)
33 開口部
40 反応管
41 基板ホルダ
42 ヒータ
43、45 ガス供給管
44 ガリウムソース
46 成長領域
47 ガス排出管
48 ソースボート
49 GaCl生成領域
400 HVPE装置
402 ウェハ
50 反応管
51 基板サセプタ
52、53、54 ガス供給管
55 ガス排出管
56 駆動軸
57 加熱用高周波コイル
58 成長領域
59 回転機構室
111 被覆部
500 MOCVD装置
502 ウェハ
Claims (5)
- 下地基板上に開口部を有するマスクを形成する工程と、
前記開口部から第一のIII族窒化物半導体膜を選択成長させるとともに、第一のIII族窒化物半導体膜が前記マスクの表面全面を覆わないうちに成長を止め、前記開口部に、前記下地基板の基板面に対して傾斜するファセット面を有する構造体を形成する工程と、
前記第一のIII族窒化物半導体膜により覆われていないマスク表面の露出部にエッチャントを接触させて前記マスクの少なくとも一部をエッチング除去し、空隙を形成する工程と、
前記空隙を残しつつ前記第一のIII族窒化物半導体膜上に第二のIII族窒化物半導体膜をさらに成長させ、前記第一のIII族窒化物半導体膜および前記第二のIII族窒化物半導体膜を含むIII族窒化物半導体層を得る工程と、
前記III族窒化物半導体層と前記下地基板とを分離し、前記III族窒化物半導体層を含むIII族窒化物半導体基板を得る工程と、
を含むことを特徴とするIII族窒化物半導体基板の製造方法。 - 請求項1に記載の製造方法において、
前記マスクは、前記第一のIII族窒化物半導体膜の<11−20>方向に延在するストライプ状の被覆部が平行配置されとともに、隣接する被覆部の間に前記開口部が設けられたパターンを有する、III族窒化物半導体基板の製造方法。 - 請求項1または2に記載の製造方法において、
前記マスクのストライプ方向と垂直な方向の断面形状が、下地基板側から上方に向かって幅狭となる形状であるIII族窒化物半導体基板の製造方法。 - 請求項1乃至3いずれかに記載の製造方法において、
前記下地基板の上部にIII族窒化物半導体からなる膜を形成する工程を含み、
前記膜の上部に前記マスクを形成する、III族窒化物半導体基板の製造方法。 - 請求項1乃至4いずれかに記載の製造方法において、
前記下地基板と、前記III族窒化物半導体層とを分離する前記工程は、
前記下地基板と前記III族窒化物半導体層とを冷却する過程で、前記冷却により、前記III族窒化物半導体層の下地基板近傍部分に亀裂が生じ、前記下地基板が分離除去される工程を含むことを特徴とするIII族窒化物半導体基板の製造方法。
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