JP2006240540A - タイヤの性能予測方法及び設計方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 より精度良くタイヤの性能予測を行う。
【解決手段】 タイヤの性能をコンピュータを用いて予測するタイヤの性能予測方法であって、前記タイヤを数値解析法により取り扱い可能な要素でモデル化した初期タイヤモデルを設定するステップS1、前記初期タイヤモデルを予め定めた条件に基づいて外径を成長させた成長タイヤモデルを作る成長ステップS2及び予め定めた条件に基づいて前記成長タイヤモデルからタイヤ性能に関する物理量を取得するステップS4を含むことを特徴とする。
【選択図】 図2

Description

本発明は、タイヤの性能予測方法及び設計方法に関する。
近年、タイヤ性能は、コンピュータを用いたシミュレーションにより予測することが可能である(例えば下記特許文献1参照)。この方法は、タイヤを数値解析が可能な有限個の要素で分割したタイヤモデルを設定するステップと、該タイヤモデルに所定の境界条件を与えて微小時間毎に変形計算(シミュレーション)を行うステップとを含んでいる。シミュレーションの結果を参照することより、タイヤを実際に試作することなく、例えば接地面形状、接地圧、コーナリングフォース又は摩耗エネルギーといった種々のタイヤ性能に関する情報を知り得る。そして、前記タイヤ性能が許容範囲と認められる場合、前記タイヤモデルに基づいてタイヤの具体的な設計ないし試作が行われる。
特開平11−153520号公報
ところで、タイヤは、新品の状態から初期走行(これはタイヤのカテゴリによっても変わるが概ね1000〜5000km程度)すると、新品時に比べて外径が増加するいわゆる成長が生じる。この成長のほぼ9割は、前記初期走行によって生じる。タイヤの成長の要因は種々考えられるが、主な原因はタイヤコードの永久伸びやゴムのモジュラスの低下と考えられる。
しかしながら、タイヤの摩耗ライフを仮に100000km程度とすると、タイヤが設計時の形状で走行する距離は摩耗ライフ全体の1ないし5%程度に過ぎず、摩耗ライフのうち大部分の距離は成長後の形状によって走行されることになる。従って、タイヤ性能をより実走行状況に応じて計算ないし評価するためには、新品時のみならず成長後のタイヤ形状をも予測し、かつこれに基づいてシミュレーションを行うことが効果的である。同様に、タイヤを設計する場合において、新品時の形状のみならず、成長後の形状を予測しかつそれが最適であるか否かについての十分な検討が必要である。
本発明は、以上のような問題点に鑑み案出なされたもので、精度良くタイヤの性能予測ないし設計を行いうるタイヤの性能予測方法及び設計方法を提供することを目的としている。
本発明のうち請求項1記載の発明は、タイヤの性能をコンピュータを用いて予測するタイヤの性能予測方法であって、前記タイヤを数値解析法により取り扱い可能な要素でモデル化した初期タイヤモデルを設定するステップ、予め定めた条件に基づいて前記初期タイヤモデルの外径を成長させることにより成長タイヤモデルを設定する成長ステップ及び前記成長タイヤモデルからタイヤ性能に関する物理量を取得するステップを含むことを特徴とする。
また請求項2記載の発明は、前記初期タイヤモデルは、タイヤコードをモデル化した第1の要素を含むとともに、前記成長ステップは、初期タイヤモデルの前記第1の要素に永久伸びを与える工程を含む請求項1記載のタイヤの性能予測方法である。
また請求項3記載の発明は、前記タイヤコードは、ベルトコード又はカーカスコードである請求項2記載のタイヤの性能予測方法である。
また請求項4記載の発明は、前記初期タイヤモデルは、ゴムをモデル化した第2の要素を含むとともに、前記成長ステップは、初期タイヤモデルの前記第2の要素のモジュラスを低下させる工程を含む請求項1乃至3のいずれかに記載のタイヤの性能予測方法である。
また請求項5記載の発明は、前記ゴムは、ベルトコードを被覆するトッピングゴムである請求項4記載のタイヤの性能予測方法である。
また請求項6記載の発明は、タイヤを数値解析法により取り扱い可能な要素でモデル化した初期タイヤモデルを設定するステップ、予め定めた条件に基づいて前記初期タイヤモデルの外径を成長させることにより成長タイヤモデルを設定する成長ステップ、予め定めたテスト条件に基づいて前記成長タイヤモデルの接地面形状を計算するステップ、前記接地面形状が許容範囲内か否かを判断する判定ステップ、前記接地面形状が許容範囲内でないときに許容範囲内になるまで初期タイヤモデルを変更するステップ及び前記接地面形状が許容範囲内となったときに初期タイヤモデルに基づいてタイヤを設計するステップを含むことを特徴とするタイヤの設計方法である。
また請求項7記載の発明は、前記初期タイヤモデルのトレッド部には、ショルダリブを含むリブパターンが設定されるとともに、前記判定ステップは、前記接地面形状において、前記ショルダリブのタイヤ軸方向内側の接地長さとタイヤ軸方向外側の接地長さとの比が予め定めた許容値か否かを判断する工程を含むことを特徴とする請求項6記載のタイヤの設計方法である。
請求項1記載の発明によれば、初期タイヤモデルから、予め定めた条件に基づいて外径を成長させた成長タイヤモデルが得られる。そして、該成長タイヤモデルに基づいてタイヤ性能に関する物理量が取得される。従って、経時変化による成長したタイヤの性能を評価しうる。
また請求項7記載の発明によれば、成長タイヤモデルの接地面形状を最適化しうる初期タイヤモデルを得ることができ、かつ、それに基づいて新品時のタイヤ形状を設計することができる。従って、現実の走行状況に沿ったタイヤの設計が可能になる。
以下、本発明の実施の一形態を図面に基づき説明する。
図1には、本発明の性能予測方法ないし設計方法を実施するためのコンピュータ装置1の一例が示されている。この装置1は、本体1aと、入力手段としてのキーボード1b、マウス1cと、出力手段としてのディスプレイ装置1dとから構成されている。コンピュータ装置1aには、図示していないが、演算処理装置(CPU)、ROM、作業用メモリー、磁気ディスクなどの大容量記憶装置、CD−ROMやフレキシブルディスクのドライブ1a1、1a2などの記憶装置が適宜設けられる。
図2には、本発明のタイヤの性能予測方法を含むタイヤ設計方法の手順の一例が示される。タイヤの性能は、タイヤに関する種々の性能を含むが、本実施形態では最も基本的な性能として耐摩耗性能を取り上げる。この耐摩耗性は、トレッドの接地面形状から概ね予測することができる。
先ず本実施形態のタイヤの設計方法では、タイヤを数値解析法(本例では有限要素法)により取り扱い可能な要素でモデル化した初期タイヤモデルが設定される(ステップS1)。ここで、初期タイヤモデルとは、成長していない未走行のタイヤ、言い換えると加硫直後の寸法を持ったタイヤである。
図3には、初期タイヤモデル2の一例が視覚化して示される。本実施形態の初期タイヤモデル2は、小型トラック用ラジアルタイヤがモデル化されたもので、ボディモデル部2Aとトレッドゴムモデル部2Bとで構成される。前記トレッドゴムモデル部2Bは、本実施形態では、トレッド溝の溝底を通りかつトレッド面と実質的に平行な仮想曲面Pよりもタイヤ半径方向外側の部分をなすトレッドゴムをモデル化したものとして定義される。従って、前記ボディモデル部2Aは、この仮想曲面Pよりもタイヤ半径方向の内側部分を構成する。
解析対象となるトラック用ラジアルタイヤ(図示省略)は、スチールコードからなる少なくとも1枚のカーカスプライからなるカーカスと、複数枚のスチールコードベルトプライからなるベルト層とを含んでいる。ただし、解析対象となるタイヤは、実在するもののみならず、実在していない設計段階のものでも良い。
前記ボディモデル部2Aは、タイヤコードをモデル化した複数個の第1の要素e1と、ゴム部分をモデル化した複数個の第2の要素e2とを含んで設定される。
前記第1の要素e1は、タイヤコードとしてカーカスプライのカーカスコードをモデル化したカーカスコードモデル部2A1(グレー色で示す。)と、ベルトプライのベルトコードをモデル化したベルトコードモデル部2A2(やや太い線で示す。)とを含む。
図4(A)には、一例として積層された2枚のベルトプライfの部分斜視図が示され、同図(B)はそれと等価な解析モデルが視覚化かつ分解されて示される。各ベルトプライfは、ベルトコードc1を配列したコード層cと、それを被覆するトッピングゴムtとから構成される。ベルトプライの各コード層cは、図4(B)のように、例えばコードc1の長手方向及びそれと直角な方向で引張剛性の異方性が定義されたシェル要素からなるベルトコードモデル部2A2としてそれぞれモデル化される。また、ベルトコードモデル部2A2は、例えば四辺形ないし三角形状のシェル要素の集合体で作ることができる。カーカスプライについてもこれと同様にモデル化しうる。
第1の要素e1には、それぞれ要素番号、節点番号、節点座標、要素形状及び/又は各コードに対応した材料物性値(弾性率、密度等)がそれぞれ定義され、前記コンピュータ装置1に記憶される。従って、各要素e1は、実際には数値データを構成する。
前記第2の要素e2は、例えばサイドウォールゴムをモデル化したサイドウォールゴムモデル部2A3と、ビード部に配されたクリンチゴムをモデル化したクリンチゴムモデル部2A4と、タイヤ内腔に配されたインナーライナーゴムをモデル化したインナーライナーゴムモデル部2A5とを含む。各ゴムモデル部2A3ないし2A5は、いずれも微小形状の三次元ソリッド要素の複数個からなる。また本実施形態において、図4(A)で示したベルトプライfのトッピングゴムtも、例えば三次元のソリッド要素からなるトッピングゴムモデル部2A6としてモデル化されている。
第2の要素e2にも、それぞれ要素番号、節点番号、節点座標、要素形状及び/又は各コードに対応した材料物性値(複素弾性率、モジュラス、密度等)がそれぞれ定義され、前記コンピュータ装置1に記憶される。
また、ボディモデル部2Aは、上記の各モデル部の他にビードコアがモデル化されたビードコアモデル部2A7を含んでいる。ビードコアモデル部2A7は、例えば剛体要素を用いてモデル化される。なお、各モデルは例示であり、必要に応じて他のモデル部を加えても良く、また減じても良い。
前記トレッドゴムモデル部2Bは、本実施形態において、ゴムをモデル化した第2の要素e2だけで構成される。この第2の要素e2には、例えば複数個の三次元ソリッド要素が用いられ、解析対象となるタイヤのトレッドパターンがほぼ忠実に再現されている。本実施形態において、トレッドモデル部2Bには、ショルダリブLsを含む合計6本のリブLからなるリブパターンが設定されている。
またトレッドゴムモデル部2Bは、好ましくはボディモデル部2Aよりも小さいタイヤ周方向のピッチで分割されるのが望ましい。これにより、接地面形状をより精度良くシミュレーションするのに役立つ。一例として、トレッドゴムモデル部2Bは、トレッド端部において1.5度以下のタイヤ周方向の角度ピッチで分割されるのが望ましい。
次に、本実施形態のタイヤの設計方法では、予め定めた条件に基づいて前記初期タイヤモデル2の外径を成長させることにより成長タイヤモデル3を設定する成長ステップが行われる(ステップS2)。
発明者らが行った種々の実験の結果、タイヤの成長は、トレッドのクラウン領域よりもショルダ領域において顕著に生じること、またその主たる原因は、ベルトコードの永久伸びの発生及び/又はベルトコードを被覆しているトッピングゴムのモジュラスの低下等にあることを知見した。
先ずベルトコードの永久伸びについて述べる。図5には、一般的なベルトコードについて、引張の力(N)とそれに伴うコードの伸び(%)との関係が示される。ベルトコードは、通常、複数本のフィラメントを撚り合わせた撚り線が用いられる。このため、撚りに起因した初期伸びとして0〜0.5%の範囲では非線形な挙動を示し、0.5%〜1.5%の範囲では、引張力と伸びとの線形な関係が得られる。継続的な内圧の作用及び走行に伴う周期的な歪の作用により、ベルトコードには撚りに変形が生じ、引張力が0になっても伸びが0に戻らず、永久伸びε0 が残ると考えられる。そして、この永久伸びε0 は、前記線形域(具体的には伸び曲線の0.5%伸びの位置Aと1.5%伸びの位置Bとの区間)を延長した直線Lが横軸と交差する点Cが示す伸びとほぼ等しい。
従って、現実のタイヤ成長メカニズムをシミュレーションに取り入れるためには、各ベルトコードモデル部2A2に、コードに沿った方向に永久伸びε0 を与えれば良い。以下、このようにベルトコードに永久伸びを与えて初期タイヤモデル2を成長させる方法を第1の成長方法と呼ぶ。
また、カーカスコードついても、初期走行によって永久伸びが生じると、タイヤの外径を成長させる。従って、初期タイヤモデル2から成長タイヤモデル3を得るためのさらに他の手法として、カーカスコードモデル2A1に永久伸びを与える方法がある。永久伸びの求め方は、ベルトコードの場合と同様に、コードの力(又は応力)−伸び曲線から求めることができる。以下、カーカスコードに永久伸びを与えてタイヤを成長させる方法を第2の成長方法と言う。
また、ベルトプライを被覆しているトッピングゴムのうち、特にショルダ領域に配された部分は、走行時に大きな歪を受けることにより、モジュラスが大幅に低下することが種々の実験の結果判明した。このトッピングゴムのモジュラスの低下率は、加硫時の熱履歴、ゴム配合及び/又は初期走行時に作用する歪の大きさ等のパラメータによって種々異なるものになるが、概ねショルダー領域のトッピングゴムのモジュラスが当初の60〜90%程度めで低下することが判明した。
ショルダ領域のベルトプライのトッピングゴムのモジュラスが大きく低下すると、該ショルダ領域においてベルトプライのタイヤ周方向の長さ、特にショルダ領域での長さを大として外径を成長させる。従って、初期タイヤモデル2から成長タイヤモデル3を得るための他の手法として、ベルトコードモデル2A2のタイヤ半径方向内、外に設定されるトッピングゴムモデル2A6のモジュラスの低下、とりわけショルダ領域に配されたトッピングゴムモデルのモジュラスをより大きく低下させる方法が挙げられる。具体的には、前記のように、ショルダー領域のベルトプライのトッピングゴムモデル部2A6のモジュラスを、初期タイヤモデル2で設定されたモジュラス値の好ましくは60〜90%、より好ましくは60〜80%とするのが好ましい。以下、このようにしてタイヤを成長させる方法を第3の成長方法と言う。
また、図6に示されるように、ベルトプライfのタイヤ軸方向の全幅をBWとすると、ベルトプライのショルダー領域Shとしては、ベルトプライの端部から前記全幅BWの10%以上、より好ましくは15%以上が望ましく、上限については25%以下、より好ましくは20%以下が望ましい。
以上のように、前記成長ステップは、上記第1ないし第3の成長方法の少なくとも一つ、好ましくは二つ、より好ましくは全てを採用することによって、初期タイヤモデル2の外径を、現実の成長メカニズムに合致した条件に基づいて増大させた成長タイヤモデル3を容易に得ることができる。
また、成長ステップにおいて、例えば第1の成長方法を採用する場合、ベルトコードモデル部2A2には前記永久伸びε0 が与えられるが、この永久伸びは、0からε0 までの間、微小な増分で徐々に与えられる。コンピュータ装置1では、ベルトコードモデル部2A2の微小な永久伸びが逐次与えられた各状態で、初期タイヤモデル2に発生する内部応力が計算され、それらの釣合から初期タイヤモデル2の変形形状が得られる。ベルトコードモデル2の永久伸びが最終的にε0 になったときに、最終的な成長タイヤモデル3の形状が得られる。そして、各要素の座標位置などが新たにコンピュータ装置1に記憶される。
また、他のパラメータ、例えばトッピングゴムのモジュラスを低下させる場合には、初期タイヤモデル2のトッピングゴムモデル部2A6の材料物性を変更することにより、成長タイヤモデル3が得られる。なお、この成長タイヤモデル3は、遠心力及び/又は空気圧の作用時での比較において、初期タイヤモデル2に比して外径が増大する。図3には、仮想線にて成長タイヤモデル3の輪郭形状の一部が示される。
次に、本実施形態のタイヤの設計方法では、初期タイヤモデル2及び成長タイヤモデル3の接地面形状が計算される(ステップS3、S4)。
前記接地面形状を得るために、各種の条件が初期タイヤモデル2及び成長タイヤモデル3それぞれに設定される。設定される条件としては、各モデル2、3が装着されるリムに関する条件、充填される空気圧に関する条件及び負荷される垂直荷重に関する条件等が挙げられる。本実施形態において、これらの各条件は、初期タイヤモデル2及び成長タイヤモデル3ともに同一の条件が与えられる。
リムに関する条件としては、図7に示されるように、各タイヤモデル2ないし3のリム接触領域Ba、Ba及び仮想のリム巾Wを含む。前記リム接触領域Baは、後のシミュレーションにおいて、変位不能に拘束されるとともに、仮想のリム幅Wに強制変位される。また、タイヤモデル2ないし3の仮想の回転軸(以下、単に「回転軸」という。)CLは、前記リム拘束域Baとの相対距離rが常に一定となるよう連結固定される。
また空気圧に関する条件としては、図7に示されるように、タイヤモデル2ないし3のインナーライナーゴムモデル部2A5の表面に負荷される等分布荷重を含む。この荷重には、例えば規格で定められた最大の空気圧に相当する値が設定される。
また垂直荷重に関する条件としては、図8に示されるように、前記タイヤモデル2ないし3の回転軸CLを垂直下方に押し下げる荷重の値がある。前記垂直荷重の値としては、例えば当該タイヤモデルの基礎となったタイヤの規格最大荷重などを用いるのが好適である。ただし、これらは任意に定めうる。
次に、前記各条件に基づいてタイヤモデル2ないし3を路面モデル4に静的に接地させてトレッドの接地面形状を求めるシミュレーション(変形計算)が行われる。本実施形態において、路面モデル4は、剛平面要素からなる水平面としてモデル化されている。また、この路面モデル4とタイヤモデル2ないし3との間には、現実に合わせて摩擦係数が定義される。
前記シミュレーションは、各タイヤモデルに前記諸条件を与えたときの変形状態が微小時間毎に計算され、その結果が逐次数値データとして出力される。このシミュレーションは、前記コンピュータ装置1と、汎用の有限要素解析アプリケーションソフトウエア(例えば米国リバモア・ソフトウエア・テクノロジー(LSTC)社製のアプリケーションソフト「LS−DYNA」等)とを用いて行われる。前記タイヤモデル2及び3のシミュレーションを終えると、その結果を適宜処理することにより、タイヤモデル2ないし3それぞれについて、トレッドが路面モデル4と接触している部分の輪郭形状である接地面形状を例えば二次元データに視覚化して表し得る。
図9(A)には初期タイヤモデル2の接地面形状が、同図(B)には成長タイヤモデル3の接地面形状がそれぞれ示される。色彩の変化は、接地圧の大きさを示し、この実施形態では中央部が最も大きく、そこから外周部に向かって徐々に小さく変化している。また、タイヤ外径の差異等に基づき、初期タイヤモデル2と成長タイヤモデル3とでは、両接地面形状に違いが認められる。
次に、本実施形態では、前記2つの接地面形状がいずれも許容範囲内か否かを判断する判定ステップが行われる(ステップS6)。接地面形状が許容範囲内か否かは重視して評価すべきタイヤ性能との関係で種々定めることができる。本実施形態の判定ステップは、接地面形状において、図9(A)に示されるように、ショルダリブLsのタイヤ軸方向内側の接地長さSiとタイヤ軸方向外側の接地長さSoとの比(Si/So)が予め定めた許容値か否かを判断する工程により行われる。
トレッドゴムに関して、特に問題となりやすいのはショルダーリブLsの摩耗である。その耐摩耗性を評価する一つのパラメータとして、前記接地長さの比(Si/So)が挙げられる。即ち、前記比(Si/So)が大きくなると、ショルダーリブLsのタイヤ軸方向の内縁に大きな接地圧が作用する一方、外縁でのすべりが大きくなり該外縁に偏摩耗が生じやすくなる。逆に前記比(Si/So)が小さすぎると、ショルダーリブLsの内縁に偏摩耗が生じやすい。従って、各々の接地面形状から前記比(Si/So)を計算し、これを予め定めた許容値と比較することによって、初期タイヤモデル2のみならず、初期走行によって生じる成長後の成長タイヤモデル3についても、ショルダーリブLsの耐摩耗性が定量的に評価できる。
前記比(Si/So)の許容値については、評価の対象となるタイヤサイズに関する種々の実験データや経験則を使って、耐摩耗性に優れた好ましい範囲を適宜定めることができる。この実施形態では前記比(Si/So)の許容値として、1.00〜1.05が定められる。
接地面形状が許容範囲内か否かの基準は、重視したいタイヤ性能に応じて適宜変更される。即ち、本実施形態では、ショルダーリブLsの耐摩耗性に重点がおかれているため、前記基準は、ショルダーリブの接地長さの比が採用されたに過ぎない。従って、例えばクラウンリブの耐摩耗性などを重視したい場合、前記基準はそれに関連したパラメータになり、本実施形態とは当然異なったものになる。
次に、本実施形態の設計方法では、前記2つの接地面形状が許容範囲内でないとき(ステップS6でN)、許容範囲内になるまで初期タイヤモデル2を変更するステップが行われる。即ち、ステップS1〜S5までが再度実行される。即ち、初期タイヤモデル2を改めて設定し、それに基づいた新たな成長タイヤモデル3が設定される。初期タイヤモデル2を再度設定する際には、例えばカーカスコードモデル部2A1のプロファイル形状、ベルトコードモデル2A2の巾ないし剛性、トレッド面の曲率半径、リブ幅、接地端のプロファイル形状又はゴム材のモジュラスなどの少なくとも一つが改良されるることが望ましい。
また、接地面形状が許容範囲内か否かは、現実の走行距離が多い成長タイヤモデル3の接地面形状だけについて判断しても良いが、好ましくは初期タイヤモデル2及び成長タイヤモデル3の二つの接地面形状について、ともに判断することが望ましい。つまり、初期タイヤモデル2又は成長タイヤモデル3のいずれか一方でも許容範囲内でない場合には、初期タイヤモデル2を変更することが望ましい。これによって、新品タイヤ及び成長タイヤのいずれにおいても、ショルダーリブの耐摩耗性の向上が期待できる。
次に、本実施形態の設計方法では、前記接地面形状が許容範囲内となったときに初期タイヤモデル2に基づいてタイヤを設計する工程が行われる(ステップS7)。即ち、初期タイヤモデル2に設定された各種の寸法、材料特性、トレッドパターンなどを用いて製品タイヤの設計、加硫金型の設計を行うことができる。
以上述べたように、本実施形態のタイヤの設計方法によれば、初期のタイヤモデル2及び成長タイヤモデル3の各接地面形状を計算し、かつそれらが許容範囲内である初期タイヤモデル2が設定される。従って、これに基づいてタイヤを設計することにより、新品時及び成長時のいずれにおいても接地面形状を最適化でき、耐摩耗性に優れたタイヤが効率的に設計される。
先ず、実際にタイヤサイズ12R22.5のトラック用ラジアルタイヤが試作された。次に、このタイヤをリム(22.5×8.25)に装着後、内圧850kPaを充填し、縦荷重31.87kNでドラム試験器上で1000km走行させた(初期走行)。そして、新品時と初期走行後との接地面形状を撮像した。結果は、図10に略示される。
次に、前記試作タイヤに基づいて、同サイズの初期タイヤモデルが設定された。この初期タイヤモデルに対して、成長ステップを表1の仕様に基づいて行い複数種類の成長タイヤモデルが設定された。そして、各タイヤモデルについて、同一のリム、内圧及び荷重条件で接地面形状及び前記比(Si/So)が計算された。計算結果などは表1に示される。
テストの結果、実施例の成長タイヤモデルは、試作結果と非常に近い形に成長していることが確認できた。また代表例として、タイヤモデル4の接地面形状を図11に示す。
本発明のシミュレーション方法を実施するためのコンピュータ装置の構成図である。 本発明の方法の処理手順の一例を示すフローチャートである。 初期タイヤモデルを視覚化して示す断面図である。 (A)はベルトプライの部分斜視図、(B)はそれをモデル化した模式図である。 タイヤコードの一例としてベルトコードの引張力−伸びの関係を示すグラフである。 ベルトプライのショルダー領域を説明する断面図である。 タイヤモデルに設定されるリムに関する条件を説明する線図である。 タイヤモデルの接地面形状を得るシミュレーションを説明する模式図である。 (A)は初期タイヤモデルの接地面形状図、(B)は成長タイヤモデルの接地面形状図である。 試作タイヤの新品時及び成長時の接地面形状図である。 タイヤモデル4の接地面形状図である。
符号の説明
2 初期タイヤモデル
2A1 カーカスプライモデル部
2A2 ベルトプライモデル部
2A3 サイドウォールゴムモデル部
2A4 クリンチゴムモデル部
2A5 インナーライナーゴムモデル部
2A6 トッピングゴムモデル部
2A7 ビードコアモデル部
3 成長タイヤモデル
Ls ショルダリブ
e1 第1の要素
e2 第2の要素

Claims (7)

  1. タイヤの性能をコンピュータを用いて予測するタイヤの性能予測方法であって、
    前記タイヤを数値解析法により取り扱い可能な要素でモデル化した初期タイヤモデルを設定するステップ、
    予め定めた条件に基づいて前記初期タイヤモデルの外径を成長させることにより成長タイヤモデルを設定する成長ステップ及び
    前記成長タイヤモデルからタイヤ性能に関する物理量を取得するステップを含むことを特徴とするタイヤの性能予測方法。
  2. 前記初期タイヤモデルは、タイヤコードをモデル化した第1の要素を含むとともに、
    前記成長ステップは、初期タイヤモデルの前記第1の要素に永久伸びを与える工程を含む請求項1記載のタイヤの性能予測方法。
  3. 前記タイヤコードは、ベルトコード又はカーカスコードである請求項2記載のタイヤの性能予測方法。
  4. 前記初期タイヤモデルは、ゴムをモデル化した第2の要素を含むとともに、
    前記成長ステップは、初期タイヤモデルの前記第2の要素のモジュラスを低下させる工程を含む請求項1乃至3のいずれかに記載のタイヤの性能予測方法。
  5. 前記ゴムは、ベルトコードを被覆するトッピングゴムである請求項4記載のタイヤの性能予測方法。
  6. タイヤを数値解析法により取り扱い可能な要素でモデル化した初期タイヤモデルを設定するステップ、
    予め定めた条件に基づいて前記初期タイヤモデルの外径を成長させることにより成長タイヤモデルを設定する成長ステップ、
    予め定めたテスト条件に基づいて前記成長タイヤモデルの接地面形状を計算するステップ、
    前記接地面形状が許容範囲内か否かを判断する判定ステップ、
    前記接地面形状が許容範囲内でないときに許容範囲内になるまで初期タイヤモデルを変更するステップ
    及び前記接地面形状が許容範囲内となったときに初期タイヤモデルに基づいてタイヤを設計するステップを含むことを特徴とするタイヤの設計方法。
  7. 前記初期タイヤモデルのトレッド部には、ショルダリブを含むリブパターンが設定されるとともに、
    前記判定ステップは、前記接地面形状において、前記ショルダリブのタイヤ軸方向内側の接地長さとタイヤ軸方向外側の接地長さとの比が予め定めた許容値か否かを判断する工程を含むことを特徴とする請求項6記載のタイヤの設計方法。
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