以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1は、タイヤの設計方法(以下、単に「設計方法」ということがある。)で設計されるタイヤの一例を示す断面図である。
本実施形態のタイヤ1は、重荷重用タイヤである場合が例示される。なお、タイヤ1は、重荷重用タイヤに限定されるわけではない。本実施形態のタイヤ1は、トレッド部2からサイドウォール部3を経てビード部4のビードコア5に至るカーカス6と、このカーカス6のタイヤ半径方向の外側かつトレッド部2の内部に配されるベルト層7とを具えている。
カーカス6は、少なくとも1枚、本実施形態では1枚のカーカスプライ6Pで構成されている。本実施形態のカーカスプライ6Pは、トレッド部2からサイドウォール部3を経てビード部4のビードコア5に至る本体部6aと、この本体部6aに連なりビードコア5の廻りをタイヤ軸方向内側から外側に折り返された折返し部6bとを含んでいる。
図2(a)は、カーカスプライ6Pの一例を示す部分斜視図である。カーカスプライ6Pは、コード配列体11と、コード配列体11を被覆するカーカストッピングゴム12とを含んでいる。コード配列体11は、タイヤ赤道Cに対して、例えば65~90度の角度δで配列されたカーカスコード11cによって構成されている。カーカスコード11cとしては、例えば、ポリエステル、ナイロン、レーヨン、又は、アラミドなどの有機繊維コード等が採用される。
図1に示されるように、ベルト層7は、例えば、4枚のベルトプライ7Pから構成される。図2(b)は、ベルトプライ7Pの一例を示す斜視図である。各ベルトプライ7Pは、コード配列体13と、このコード配列体13を夫々被覆するベルトトッピングゴム14とを含んでいる。コード配列体13、タイヤ周方向に対して、例えば10~60度の角度φで傾斜するベルトコード13cによって構成されている。各ベルトプライ7Pのベルトコード13cの向きについては、適宜設定することができる。ベルトコード13cとしては、例えば、アラミド又はレーヨン等の高弾性の有機繊維コードや、スチールコード等が採用される。
図1に示されるように、タイヤ1には、ゴム9が含まれている。本実施形態のゴム9は、ベルト層7のタイヤ半径方向外側に配されるトレッドゴム9a、カーカス6のタイヤ軸方向外側に配されるサイドウォールゴム9b、カーカス6の内側に配されるインナーライナーゴム9c、本体部6aと折返し部6bとの間でビードコア5からタイヤ半径方向外側にのびるビードエーペックスゴム9d、及び、ビード部4のタイヤ軸方向の外側に配されるクリンチゴム9eを含んでいる。さらに、ゴム9には、図2(a)に示したカーカストッピングゴム12、及び、図2(b)に示したベルトトッピングゴム14を含んでいる。
タイヤ1のビード部4を嵌合するリム15は、リム組み時にビード部4を落とし込むためのウェル部(図示省略)と、このウェル部のタイヤ軸方向両外側に配置される一対のリム片15A、15Aとを含んでいる。
次に、本実施形態の設計方法について説明する。本実施形態の設計方法では、コンピュータが用いられる。図3は、タイヤの設計方法を実行するためのコンピュータの一例を示す斜視図である。
コンピュータ18は、本体18a、キーボード18b、マウス18c及びディスプレイ装置18dを含んで構成されている。この本体18aには、例えば、演算処理装置(CPU)、ROM、作業用メモリ、磁気ディスクなどの記憶装置、及び、ディスクドライブ装置18a1、18a2が設けられている。また、記憶装置には、本実施形態の設計方法を実行するためのソフトウェア等が予め記憶されている。
図4は、タイヤの設計方法の処理手順の一例を示すフローチャートである。
本実施形態のシミュレーション方法では、第1タイヤが設計される(工程S1)。図1に示されるように、本実施形態の第1タイヤ21は、トレッド部2のプロファイルが確定していない試作段階のタイヤである。第1タイヤ21は、カーカス6とベルト層7とを具えている。第1タイヤ21の構造の詳細については、上述のとおりである。第1タイヤ21の設計には、例えば、一般的なCAD等のソフトウェアが用いられている。本実施形態の工程では、第1タイヤ21の各寸法が、内圧充填前の状態に基づいて設定される。本実施形態では、内圧充填前の第1タイヤ21に基づいて、内圧充填後かつ経時変化後の第1タイヤ21が取得される。本実施形態の内圧としては、例えば、タイヤ1(図1に示す)が基づいている規格を含む規格体系において、各規格が定めている空気圧が設定される。第1タイヤ21の設計データは、コンピュータ18に記憶される。
次に、本実施形態の設計方法では、第1タイヤ21の内圧充填後かつ経時変化後のカーカス6のプロファイル、又は、ベルト層7のプロファイルの少なくとも一方が取得される(プロファイル取得工程S2)。本実施形態のプロファイル取得工程S2では、カーカス6のプロファイル、及び、ベルト層7のプロファイルの双方が取得される。
カーカス6のプロファイルは、タイヤ回転軸を含むタイヤ子午線断面において、カーカス6を構成するカーカスプライ6Pの厚さ中心線で特定されるものとする。同様に、ベルト層7のプロファイルは、タイヤ子午線断面において、ベルト層7を構成するベルトプライ7Pの厚さ中心線で特定されるものとする。
本実施形態のプロファイル取得工程S2では、コンピュータ18を用いた計算によって、カーカス6のプロファイル、及び、ベルト層7のプロファイルが取得される。図5は、プロファイル取得工程S2の処理手順の一例を示すフローチャートである。
本実施形態のプロファイル取得工程S2では、先ず、コンピュータ18に、第1タイヤ21をモデル化した第1タイヤモデルが入力される(工程S21)。図6は、第1タイヤモデル22の一例を示す断面図である。図7は、図6の部分拡大図である。
工程S21において、第1タイヤモデル22は、2次元モデルとして定義されている。なお、第1タイヤモデル22は、2次元モデルに限定されるわけではなく、3次元モデルとして定義されてもよい。
本実施形態の工程S21は、先ず、図1に示したタイヤ1(第1タイヤ21)に関する情報(例えば、輪郭データ等)に基づいて、有限個の要素F(i)(i=1、2、…)で離散化している。これにより、工程S21では、第1タイヤモデル22が設定される。このようなモデリングには、従来のシミュレーション方法と同様に、メッシュ化ソフトウェア(例えば、Altair社製のHypermesh等)を用いることができる。
要素F(i)は、数値解析法により取り扱い可能なものである。数値解析法としては、例えば有限要素法、有限体積法、差分法、又は、境界要素法を適宜採用できるが、本実施形態では有限要素法が採用されている。また、要素F(i)としては、例えば、第1タイヤモデル22が2次元である場合、複雑な形状を表現するのに適した三角形要素や四辺形要素等が用いられる。なお、第1タイヤモデル22が3次元である場合には、4面体ソリッド要素、5面体ソリッド要素、又は、6面体ソリッド要素などが用いられるのが望ましい。各要素F(i)は、複数個の節点23が設けられる。このような各要素F(i)には、要素番号、節点23の番号、節点23の座標値、及び、材料特性(例えば密度等)などの数値データが定義される。
第1タイヤモデル22には、ゴム9(図1に示す)を有限個の要素F(i)で離散化したゴムモデル24と、カーカスプライ6P(図1に示す)を有限個の要素F(i)で離散化したカーカスプライモデル26と、ベルトプライ7P(図1に示す)を有限個の要素F(i)で離散化したベルトプライモデル27とを含んで構成されている。ゴムモデル24は、トレッドゴムモデル24a、サイドウォールゴムモデル24b、インナーライナーゴムモデル24c、ビードエーペックスゴムモデル24d、クリンチゴムモデル24e、カーカストッピングモデル24f(図7に示す)、及び、ベルトトッピングモデル24g(図7に示す)を含んでいる。
図7に示されるように、カーカストッピングモデル24fは、タイヤ半径方向内側に配置される内側トッピングゴムモデル28と、外側に配置される外側トッピングゴムモデル29とを含んでいる。同様に、ベルトトッピングモデル24gは、内側トッピングゴムモデル30と、外側トッピングゴムモデル31とをそれぞれ含んでいる。
本実施形態のゴムモデル24を構成する要素F(i)の少なくとも一部は、弾性特性と応力緩和特性とが定義された第1要素33として定義される。
弾性特性とは、外力によって形状や体積に変化が生じた物体(要素F(i))が、外力を取り除かれると再び元の状態(形状や体積)に回復する性質である。このような弾性特性が定義された第1要素33(図7に示す)は、歪(外力)が与えられることにより、弾性変形した状態が計算される。
弾性特性を特定する弾性係数(弾性率)等のパラメータについては、モデル化されたタイヤ構成部材に応じて適宜設定される。また、弾性特性は、ゴム9(図1に示す)の温度条件に応じて変化する傾向がある。このため、弾性特性は、予め定められた温度条件下(例えば、70℃)に基づいて定められるのが望ましい。
図8は、応力緩和曲線の一例を示すグラフである。応力緩和曲線は、応力比と時間との関係を示している。応力比は、応力τと時間0の応力τ0との比(τ/τ0)である。図8の応力緩和曲線に示されるように、応力緩和特性は、荷重に応じて内部に生ずる応力(抵抗力)τが、少なくとも時間tの経過とともに緩和される性質である。このような応力緩和特性が定義された第1要素33(図6及び図7に示す)では、歪(外力)が与えられることにより、元の状態(形状や体積)に回復しない塑性変形が計算される。
応力緩和特性は、例えば、一般化Maxwellモデルに基づいて定義することができる。なお、応力緩和特性を特定するための弾性係数(弾性率)及び粘性係数等のパラメータについては、モデル化されるタイヤ構成部材に応じて適宜設定される。また、応力緩和特性は、ゴム9の温度条件に応じて変化する傾向がある。このため、応力緩和特性は、予め定められた温度条件下(例えば、100℃以上)において定められるのが望ましい。図8の応力緩和曲線は、110℃及び30%伸長時の条件下において求められたものである。
弾性特性及び応力緩和特性は、例えば、市販の有限要素解析アプリケーションソフト(Dassault Systems社製のAbaqus、LSTC社製のLS-DYNA、又は、MSC社製のNASTRANなど)を用いて容易に設定することができる。また、本実施形態では、第1要素33(図7に示す)に弾性特性を有効に設定し、かつ、応力緩和特性を無効に設定した状態と、第1要素33に弾性特性及び応力緩和特性の双方を有効に設定した状態とで切り替えられる。したがって、本実施形態のシミュレーション方法では、例えば、弾性特性のみに基づいて第1要素33を弾性変形させた後に、応力緩和特性に基づいて第1要素33を塑性変形させることができる。弾性変形及び塑性変形の計算の切り替えは、上記した有限要素解析アプリケーションソフトによって実施することができる。
第1要素33で定義されるゴムモデル24については適宜選択することができる。本実施形態では、図6に示した全てのゴムモデル24(トレッドゴムモデル24a、サイドウォールゴムモデル24b、インナーライナーゴムモデル24c、ビードエーペックスゴムモデル24d、クリンチゴムモデル24e、カーカストッピングモデル24f(図7に示す)、及び、ベルトトッピングモデル24g(図7に示す))の要素F(i)に、第1要素33が定義されている。なお、第1要素33は、解析の目的に応じて、一部のゴムモデル24のみに定義されてもよい。また、第1タイヤモデル22の要素F(i)のうち、第1要素33以外の要素F(i)については、弾性特性のみが定義された第2要素34が設定される。第1タイヤモデル22は、コンピュータ18に記憶される。
次に、本実施形態のプロファイル取得工程S2では、コンピュータ18に、図1に示したリム15をモデル化したリムモデル35(図6に示す)が入力される(工程S22)。図6に示されるように、リムモデル35は、図1に示した一対のリム片15A、15Aをモデル化した一対のリム片モデル35A、35Aから構成される。
各リム片モデル35A、35Aは、実際のリム15(図1に示す)の変形が微小であることに鑑み、例えば、変化しない剛体表面として条件付けられる。リムモデル35と第1タイヤモデル22との間には、予め定められた摩擦係数が設定されている。本実施形態の摩擦係数は、図1に示したリム15とタイヤ1との間の実際の摩擦係数に基づいて設定される。リムモデル35は、コンピュータ18に記憶される。
次に、本実施形態のプロファイル取得工程S2では、コンピュータ18が、第1タイヤモデル22の内圧充填後かつ経時変化後の形状を計算する(経時変化工程S23)。図9は、経時変化工程S23の処理手順の一例を示すフローチャートである。なお、経時変化工程S23では、第1タイヤモデル22の内圧充填後かつ経時変化後の形状を計算できれば、図9に示した処理手順に限定されない。
本実施形態の経時変化工程S23では、先ず、第1タイヤモデル22の内圧充填後(弾性変形後)の形状が計算される(工程S31)。本実施形態の工程S31では、図6に示した第1タイヤモデル22に内圧を作用させ、第1要素33及び第2要素34に定義された弾性特性に基づいて、第1タイヤモデル22の弾性変形後の形状が計算される。
本実施形態の工程S31では、先ず、第1要素33(図6に示す)に、弾性特性が定義される。本実施形態では、第1要素33に定義された弾性特性及び応力緩和特性のうち、弾性特性のみが有効に設定される(即ち、応力緩和特性は、無効に設定される)。弾性特性が定義された第1要素33は、コンピュータ18に記憶される。
次に、本実施形態の工程S31では、予め定められた内圧の下で、第1タイヤモデル22の弾性変形が計算される。
本実施形態では、先ず、図6の2点鎖線で示されるように、内圧が零の状態で、第1タイヤモデル22のビード部22cをタイヤ軸方向内側に変形させて、第1タイヤモデル22がリムモデル35に仮組み装着される。次に、第1タイヤモデル22の内腔面の全体に、内圧に相当する等分布荷重w1が設定される。これにより、工程S31では、リムモデル35と第1タイヤモデル22との間に設定されている摩擦係数、及び、内圧の下で、第1タイヤモデル22の弾性変形が計算される。
第1タイヤモデル22の変形計算は、各要素F(i)の形状及び材料特性などをもとに、各要素F(i)の質量マトリックス、剛性マトリックス及び減衰マトリックスがそれぞれ作成される。さらに、これらの各マトリックスが組み合わされて、全体の系のマトリックスが作成される。そして、前記各種の条件を当てはめて運動方程式が作成され、これらを微小時間(単位時間Tx(x=0、1、…))ごとに、第1タイヤモデル22の変形計算が行われる。このような第1タイヤモデル22の変形計算は、例えば、上記の有限要素解析アプリケーションソフトを用いて計算できる。なお、単位時間Txについては、求められるシミュレーション精度によって、適宜設定することができる。工程S31では、内圧(等分布荷重w1)に基づいて、第1タイヤモデル22のつり合い計算が行われ、各節点23の変位が計算される。
工程S31では、第1タイヤモデル22の弾性変形により、第1タイヤモデル22のビード部22cは、リム片モデル35Aに拘束される。さらに、工程S31では、ビード部22cがリム片モデル35Aに拘束された後も、内圧の下で、第1タイヤモデル22の弾性変形が計算される。これにより、工程S31では、従来のシミュレーション方法と同様に、リムモデル35にリム組みされた第1タイヤモデル22の内圧充填後の形状を計算することができる。第1タイヤモデル22の内圧充填後の形状は、コンピュータ18に記憶される。
次に、本実施形態の経時変化工程S23では、第1タイヤモデル22の経時変化後の形状が計算される(工程S32)。本実施形態の工程S32では、工程S31で設定された内圧(本実施形態では、タイヤ1の各規格が定めている空気圧)を維持したまま、応力緩和特性及び予め定められた経過時間に基づいて、第1タイヤモデル22の経時変化後の形状が計算される。
本実施形態の工程S32では、先ず、工程S31で内圧が充填された第1タイヤモデル22の第1要素33(図6及び図7に示す)に、応力緩和特性が定義される。本実施形態では、第1要素33に定義された弾性特性及び応力緩和特性の双方が有効に設定される(即ち、弾性特性は、無効に設定される)。応力緩和特性が定義された第1要素33は、コンピュータ18に記憶される。
次に、本実施形態の工程S32では、応力緩和特性に基づいて、第1タイヤモデル22の変形が計算される。図8に示したように、応力緩和特性は、荷重に応じて内部に生ずる応力(抵抗力)τが、少なくとも時間tの経過とともに緩和される性質である。このような緩和特性が設定された第1要素33では、内圧(等分布荷重w1)によって生じた内部応力に基づいて、元の状態(形状や体積)に回復しない塑性変形が、単位時間Tx毎に計算される。一方、第2要素34では、塑性変形する第1要素33に追従するように、弾性特性及び内圧に基づいて、単位時間Tx毎に弾性変形が計算される。本実施形態の工程S32では、予め定められた経過時間が過ぎるまで、応力緩和特性に基づいて変形させた第1タイヤモデル22の経時変化後の形状が計算される。図10は、第1タイヤモデル22の経時変化後の形状の一例を示す概念図である。なお、図10のカーカスプライモデル26及びベルトプライモデル27については、それらのプロファイルのみが示されている。
このように、本実施形態の経時変化工程S23では、応力緩和特性に基づく第1要素33(図7に示す)の塑性変形が計算されることにより、複雑な変形計算を行うことなく、内圧充填後かつ経時変化後の第1タイヤモデル22(図10に示す)を容易に計算することができる。内圧充填後かつ経時変化後の第1タイヤモデル22は、コンピュータ18に記憶される。
次に、本実施形態のプロファイル取得工程S2では、コンピュータ18が、第1タイヤモデル22の内圧充填後かつ経時変化後のカーカス6のプロファイル26Sを取得する(工程S24)。工程S24では、図10に示した内圧充填後かつ経時変化後の第1タイヤモデル22について、カーカスプライモデル26のプロファイル26Sが取得される。カーカスプライモデル26のプロファイル26Sは、カーカスプライモデル26の厚さ中心線26a(図7に示す)の座標値で特定される。カーカスプライモデル26のプロファイル26Sは、コンピュータ18に記憶される。
次に、本実施形態のプロファイル取得工程S2では、コンピュータ18が、第1タイヤモデル22の内圧充填後かつ経時変化後のベルト層7のプロファイルを取得する(工程S25)。工程S25では、図10に示した内圧充填後かつ経時変化後の第1タイヤモデル22について、各ベルトプライモデル27のプロファイル27Sが取得される。各ベルトプライモデル27のプロファイル27Sは、各ベルトプライモデル27の厚さ中心線27a(図7に示す)の座標値で特定される。各ベルトプライモデル27のプロファイル27Sは、コンピュータ18に記憶される。
上述の経時変化工程S23では、内圧(図6に示した等分布荷重w1)に基づく第1タイヤモデル22のつり合い計算が行われ、内圧充填後かつ経時変化後の第1タイヤモデル22が計算される。この内圧充填後かつ経時変化後の第1タイヤモデル22から、図10に示したカーカスプライモデル26のプロファイル26S、及び、各ベルトプライモデル27のプロファイル27Sが取得される。このようなカーカスプライモデル26のプロファイル26S、及び、各ベルトプライモデル27のプロファイル27Sは、第1タイヤモデル22に充填される内圧と最もつり合いのとれた状態である。したがって、プロファイル取得工程S2では、経時変化が小さいカーカスプライモデル26(カーカス6)のプロファイル26S、及び、各ベルトプライモデル27(ベルト層7)のプロファイル27Sを取得することができる。
次に、本実施形態の設計方法では、カーカス6のプロファイル、又は、ベルト層7のプロファイルの少なくとも一方に基づいて、図1に示した第1タイヤ21のトレッド部2のプロファイル40を修正した第2タイヤ41(図1に示す)が設計され(工程S3)、設計された第2タイヤ41が製造される(工程S4)。
本実施形態の工程S3では、図10に示したカーカスプライモデル26のプロファイル26S、及び、各ベルトプライモデル27のプロファイル27Sの双方に基づいて、第1タイヤ21のトレッド部2のプロファイル40(図1に示す)が修正される。
トレッド部2のプロファイル40の修正は、図10に示したカーカスプライモデル26のプロファイル26S及び各ベルトプライモデル27のプロファイル27Sの各位置から、予め定められた厚さD1を有するトレッドゴム9a(図1に示す)が配置されるように、第1タイヤ21のトレッド部2のプロファイル40が修正される。
なお、ベルト層7(図1に示す)の構造によっては、各ベルトプライモデル27のプロファイル27Sのタイヤ軸方向両外側が大きく反り上がる場合がある。このようなプロファイル27Sに基づいて、トレッド部2のプロファイル40が修正された場合、トレッド部2のタイヤ軸方向両外側の接地圧が大きくなり、早期に摩耗しやすくなる。このような場合、各プロファイル27Sのタイヤ軸方向両外側の反り上がりを平滑に補正した後に、トレッド部2のプロファイル40が修正されるのが望ましい。これにより、本実施形態の設計方法では、耐摩耗性に優れたタイヤ1を設計することができる。
トレッド部2のプロファイル40の修正は、カーカスプライモデル26のプロファイル26S及び各ベルトプライモデル27のプロファイル27Sの座標値と、第1タイヤ21の設計データとに基づいて行うことができる。第2タイヤ41は、コンピュータ18に記憶される。
上述したように、図10に示したカーカスプライモデル26のプロファイル26S及び各ベルトプライモデル27のプロファイル27Sは、第1タイヤ21に充填される内圧と最もつり合いのとれた状態である。このようなプロファイル26S、27Sを基準として、第1タイヤ21のトレッド部2のプロファイル40を修正することで、経時変化が小さいトレッド部2のプロファイル40を有するタイヤ1(第2タイヤ41)を、確実に設計することができる。
さらに、本実施形態の設計方法では、上記特許文献1の設計方法のように、遠心力荷重が作用したタイヤモデルの接地面形状が許容範囲内になるまで、タイヤモデルの設定、及び、タイヤモデルの接地面形状の計算を繰り返し行う必要はないため、経時変化が小さいトレッド部2のプロファイル40を有するタイヤ1(第2タイヤ41)を、短時間で設計することができる。また、本実施形態の設計方法では、経時変化が小さいタイヤ1を設計することができるため、例えば、トレッド部2のプロファイル40のみを修正するだけで、耐摩耗性に優れる接地形状に設計することができる。なお、本実施形態では、トレッド部2のプロファイル40のみが修正されたが、例えば、サイドウォール部3のプロファイル等も修正されてもよい。
本実施形態の設計方法では、第1タイヤ21のトレッド部2のプロファイル40を修正した第2タイヤ41が設計されたが、このような態様に限定されない。内圧充填後かつ経時変化後の第2タイヤ41は、トレッド部2のプロファイル40の修正により、カーカスプライ6Pのプロファイル及びベルトプライ7Pのプロファイルと、カーカスプライモデル26のプロファイル26S及び各ベルトプライモデル27のプロファイル27Sとの間に誤差が生じ、トレッド部2のプロファイル40の経時変化を十分に小さくできない場合がある。このため、経時変化が小さいトレッド部2のプロファイル40を有するタイヤ1を確実に設計するために、第2タイヤ41のトレッド部2のプロファイル40がさらに修正されてもよい。図11は、本発明の他の実施形態の設計方法の処理手順の一例を示すフローチャートである。なお、この実施形態において、これまでの実施形態と同一の構成については、同一の符号を付し、説明を省略することがある。
この実施形態の設計方法では、工程S3の後に、第2タイヤ41について、経時変化前のトレッド部2のプロファイル40が取得される(工程S5)。図12は、経時変化前後の第2タイヤ41のトレッド部2のプロファイル40の一例を示す図である。
本実施形態の第2タイヤ41のトレッド部2のプロファイル40aは、第1タイヤ21と同様に、第2タイヤ41に内圧が充填された後のトレッド部2のプロファイルに近似している。このため、本実施形態では、第2タイヤ41の設計データに基づいて、第2タイヤ41の経時変化前のトレッド部2のプロファイル40a(図1に示す)が取得される。トレッド部2のプロファイル40aは、座標値としてコンピュータ18に記憶される。
次に、この実施形態の設計方法では、第2タイヤ41の内圧充填後かつ経時変化後のトレッド部2のプロファイル40bを取得する(工程S6)。本実施形態の工程S6では、コンピュータ18を用いた計算によって、第2タイヤ41の内圧充填後かつ経時変化後のトレッド部2のプロファイル40bが取得される。
本実施形態の工程S6では、先ず、第1タイヤモデル22を入力する工程S21(図5に示す)と同様の処理手順で、第2タイヤ41(図1において二点鎖線で示す)をモデル化した第2タイヤモデル(図示省略)が入力される。次に、本実施形態の工程S6では、プロファイル取得工程S2の経時変化工程S23(図9に示す)と同様の処理手順に基づいて、第2タイヤモデルの内圧充填後かつ経時変化後の形状が計算される。そして、工程S6では、第2タイヤモデルの内圧充填後かつ経時変化後のトレッド部2のプロファイル40bが取得される。第2タイヤ41の内圧充填後かつ経時変化後のトレッド部2のプロファイル40bは、座標値としてコンピュータ18に入力される。
次に、この実施形態の設計方法では、図12に示した経時変化前の第2タイヤ41のトレッド部2のプロファイル40aと、経時変化後の第2タイヤ41のトレッド部2のプロファイル40bとの差D2が、予め定められた許容範囲内であるか判断される(工程S7)。許容範囲については、例えば、トレッド部2のプロファイル40の許容可能な経時変化分に基づいて、適宜設定することができる。
工程S7において、経時変化前後でプロファイル40a、40bの差D2が、許容範囲内であると判断された場合(工程S7において、「Y」)、第2タイヤ41(図1に示す)が製造される(工程S4)。一方、工程S7において、経時変化前後でプロファイル40a、40bの差D2が許容範囲外であると判断された場合(工程S8において、「N」)、経時変化前の第2タイヤ41のトレッド部のプロファイル40aと、経時変化後の第2タイヤ41のトレッド部2のプロファイル40bとの差D2が小さくなるように、第2タイヤ41のカーカスプライのプロファイル及びベルトプライのプロファイルの一方、又は、双方が修正され(工程S8)、工程S3~工程S7が再度実施される。これにより、この実施形態の設計方法では、経時変化が小さいトレッド部2のプロファイル40を有するタイヤ1を、より確実に設計することができる。
これまでの実施形態では、第1タイヤ21の内圧充填後かつ経時変化後のカーカス6のプロファイル(カーカスプライモデル26のプロファイル26S)、又は、ベルト層7のプロファイル(各ベルトプライモデル27のプロファイル27S)の少なくとも一方が、コンピュータ18を用いた計算で取得される態様が例示されたが、例えば、実際に製造された第1タイヤ21(図1に示す)の測定によって取得されてもよい。図13は、本発明の他の実施形態のプロファイル取得工程S2の処理手順の一例を示すフローチャートである。なお、この実施形態において、これまでの実施形態と同一の構成については、同一の符号を付し、説明を省略することがある。
この実施形態のプロファイル取得工程S2では、先ず、第1タイヤ21(図1に示す)を実際に製造し(工程S27)、内圧が充填された第1タイヤ21を走行させて、経時変化後の第1タイヤ21を取得する(工程S28)。図14は、経時変化後の第1タイヤ21を取得するための装置の一例を示す概略図である。
本実施形態では、タイヤを走行させるためのドラム45を具えた周知のドラム試験機46が用いられる。工程S28では、このドラム45上に、内圧が充填された第1タイヤ21を走行させることで、経時変化後の第1タイヤ21が取得される。
工程S28では、先ず、第1タイヤ21がリム15にリム組みされて、内圧が充填される。次に、工程S28では、内圧充填後の第1タイヤ21が、ドラム試験機46にセットされる。そして、工程S28では、第1タイヤ21に荷重Wを負荷して、ドラム45上を走行させる。これにより、工程S28では、経時変化後の第1タイヤ21を取得することができる。
この実施形態の荷重Wとしては、例えば、第1タイヤ21が基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重が設定される。第1タイヤ21をドラム45上で走行させる距離や走行速度Vについては、第1タイヤ21を経時変化させることができれば、適宜設定されうる。この実施形態の第1タイヤ21が重荷重用である場合、第1タイヤを走行させる距離は、例えば500~2000km程度に設定される。また、第1タイヤ21の走行速度Vは、例えば50~100km程度に設定される。
次に、この実施形態のプロファイル取得工程S2では、第1タイヤ21の内圧充填後かつ経時変化後のカーカス6のプロファイル(図示省略)を取得する(工程S29)。上述したように、カーカス6のプロファイルは、タイヤ子午線断面において、カーカス6を構成するカーカスプライ6Pの厚さ中心線(図示省略)で特定される。工程S29では、内圧充填後かつ経時変化後のカーカスプライ6Pのプロファイル(図示省略)が、X線CTスキャン装置(図示省略)によって測定される。
次に、この実施形態のプロファイル取得工程S2では、第1タイヤ21の内圧充填後かつ経時変化後のベルト層7のプロファイル(図示省略)を取得する(工程S30)。上述したように、ベルト層7のプロファイルは、タイヤ子午断面において、ベルト層7を構成するベルトプライ7Pの厚さ中心線(図示省略)で特定される。工程S30では、内圧充填後かつ経時変化後のベルトプライ7Pのプロファイル(図示省略)が、X線CTスキャン装置(図示省略)によって測定される。
この実施形態の第2タイヤを設計する工程S3では、カーカスプライ6Pのプロファイル(図示省略)、及び、ベルトプライ7Pのプロファイル(図示省略)の双方に基づいて、第1タイヤ21のトレッド部2のプロファイル40(図1に示す)が修正される。タイヤ1のトレッド部2のプロファイル40の修正方法については、これまでの実施形態と同一の手順で実施される。
この実施形態の設計方法では、実際に製造された第1タイヤ21の測定により、第1タイヤ21の内圧充填後かつ経時変化後のカーカス6のプロファイル(図示省略)、及び、ベルト層7のプロファイル(図示省略)が取得される。これらプロファイルを基準として、第1タイヤ21のトレッド部2のプロファイル40(図1に示す)を修正することで、経時変化が小さいトレッド部2のプロファイル40を有するタイヤ1を、より確実に設計することができる。
この実施形態の設計方法では、第1タイヤ21のトレッド部2のプロファイル40を修正した第2タイヤ41(図1に示す)が設計されたが、図11に示した手順に基づいて、第2タイヤ41のトレッド部2のプロファイル40がさらに修正されてもよい。
この実施形態の設計方法の工程S5では、実際に製造された第2タイヤ41に基づいて、経時変化前のトレッド部2のプロファイル40a(図1において二点鎖線で示す)が取得される。経時変化前のトレッド部2のプロファイル40aは、例えば、3Dスキャナ(図示省略)等によって測定される。
この実施形態の設計方法の工程S6では、実際に製造された第1タイヤ21を測定する前実施形態と同様に、実際に製造された第2タイヤ41(図2に示す)の測定によって、内圧充填後かつ経時変化後のトレッド部2のプロファイル(図示省略)が取得される。この工程S6では、先ず、前実施形態のプロファイル取得工程S2(図13に示す)と同様の手順に基づいて、内圧が充填された第2タイヤ41を走行させて、経時変化後の第2タイヤ41が取得される。そして、工程S6では、経時変化後の第2タイヤ41について、内圧充填後かつ経時変化後のトレッド部2のプロファイルが、例えば、3Dスキャナ(図示省略)等によって測定される。
そして、この実施形態の設計方法では、図11に示した前実施形態の処理手順と同様に、経時変化前の第2タイヤ41のトレッド部2のプロファイル40a(図1において二点鎖線で示す)と、経時変化後の第2タイヤ41のトレッド部2のプロファイル(図示省略)との差が、予め定められた許容範囲内であるか判断される。そして、差D2が小さくなるように、第2タイヤ41のトレッド部2のプロファイル40(図1に示す)が修正される(工程S8)。
この実施形態の設計方法では、実際に製造された第2タイヤ41の測定により、経時変化前後のトレッド部2のプロファイル40が取得される。したがって、この実施形態の設計方法では、経時変化前の第2タイヤ41のプロファイル40a(図1に示す)と、経時変化後の第2タイヤ41のプロファイル(図示省略)との差が小さくなるように、第2タイヤ41のトレッド部2のプロファイル40が修正されることにより、経時変化が小さいトレッド部2のプロファイル40を有するタイヤ1(第2タイヤ41)を、より確実に設計することができる。
これまでの実施形態では、第1タイヤ21の内圧充填後かつ経時変化後のカーカス6のプロファイル、及び、ベルト層7のプロファイルの双方に基づいて、第1タイヤ21のトレッド部2のプロファイル40を修正した第2タイヤ41が設計されたが、このような態様に限定されない。例えば、カーカス6のプロファイルのみ、又は、ベルト層7のプロファイルのみに基づいて、第1タイヤ21のトレッド部2のプロファイル40が修正されてもよい。これらのカーカス6のプロファイル、及び、ベルト層7のプロファイルは、第1タイヤ21に充填される内圧と最もつり合いのとれた状態であるため、この状態のプロファイルを基準として、第1タイヤ21のトレッド部2のプロファイルが修正されることで、経時変化が小さいトレッド部2のプロファイル40を有するタイヤ1(第2タイヤ41)を、確実に設計することができる。
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。
[実施例A]
図4、図5及び図9に示した処理手順に従って、図1に示した基本構造を有する第1タイヤモデルが設計され、第1タイヤモデルの内圧充填後かつ経時変化後の形状が計算された(実施例1)。実施例1では、経時変化後の第1タイヤモデルについて、カーカスプライモデルのプロファイル及びベルトプライモデルのプロファイルが取得された。そして、実施例1では、カーカスプライモデルのプロファイル及びベルトプライモデルのプロファイルに基づいて、第1タイヤのトレッド部のプロファイルを修正した第2タイヤが設計された。
実施例1では、第2タイヤをモデル化した2次元の第2タイヤモデルが作成され、この2次元の第2タイヤモデルをタイヤ周方向に小角度きざみで展開した3次元の第2タイヤモデルが作成された。さらに、実施例1では、図11に示した処理手順に従い、第2タイヤについて、経時変化前のトレッド部のプロファイルと、内圧充填後かつ経時変化後のトレッド部のプロファイルとの差が小さくなるように、第2タイヤのトレッド部のプロファイルが修正された。さらに、実施例1では、修正された第2タイヤをモデル化した2次元の第2タイヤモデルが作成され、この2次元の第2タイヤモデルをタイヤ周方向に小角度きざみで展開した3次元の第2タイヤモデルが作成された。そして、3次元の第2タイヤモデルについて、経時変化前の接地形状と、内圧充填後かつ経時変化後の接地形状とが計算された。図15は、実施例1の第2タイヤモデルについて、(a)は、経時変化前の接地形状を示す図、(b)は、経時変化後の接地形状を示す図である。
実施例1では、経時変化前の接地形状(図15(a)に示す)、及び、経時変化後の接地形状(図15(b)に示す)について、クラウン部(タイヤ赤道C上にクラウン部に形成される場合は、タイヤ赤道C上)でのタイヤ周方向の第1長さと、接地半幅TWの70%の距離(0.7TW)をタイヤ赤道から離間したショルダー部でのタイヤ周方向の第2長さL2とがそれぞれ取得され、第1長さL1を第2長さL2で除した比(以下、単に「長さ比」ということがある。)が取得された。
比較のために、図1に示した第1タイヤをモデル化した2次元の第1タイヤモデルが作成され、この2次元の第1タイヤモデルをタイヤ周方向に小角度きざみで展開した3次元の第1タイヤモデルが作成された(比較例1)。そして、3次元の第1タイヤモデルについて、経時変化前の接地形状と、内圧充填後かつ経時変化後の接地形状とが計算された。図16は、比較例1の第1タイヤモデルについて、(a)は、経時変化前の接地形状を示す図、(b)は、経時変化後の接地形状を示す図である。そして、比較例1の経時変化前の接地形状の長さ比、及び、比較例1の経時変化後の接地形状の長さ比が、それぞれ取得された。なお、実施例1のトレッドパターンは、比較例1のトレッドパターンとは異なっている(タイヤ周方向にのびる主溝(縦溝)の本数が異なっている)が、実施例1と比較例のタイヤ構造は同一であるため、トレッドパターンが異なることによる接地面形状(とりわけ、タイヤ周方向の長さ)への影響は無視できる。
そして、実施例1及び比較例1について、経時変化前の接地形状の長さ比と、経時変化後の接地形状の長さ比との変化率が求められた。なお、変化率は、経時変化前の接地形状の長さ比から、経時変化後の接地形状の長さ比を減じた値を、経時変化前の接地形状の長さ比で除して取得された。共通仕様は、次のとおりである。
タイヤサイズ:385/55R22.5
リムサイズ:22.5×11.75
内圧:900kPa
荷重:44.13kN
応力緩和特性:図8に示す
経過時間:図8の応力緩和曲線において、応力が70%緩和する時間
テスト結果を表1に示す。
テストの結果、実施例1は、比較例1に比べて、経時変化が小さいトレッド部のプロファイルを有するタイヤを設計することができた。図17は、実施例1及び比較例1について、経時変化前後のクラウン部及びショルダー部の外径成長量を示すグラフである。実施例1のクラウン部の外形成長量とショルダー部の外形成長量との差D3は、比較例1のクラウン部の外形成長量とショルダー部の外形成長量との差D4に比べて小さくできた。したがって、実施例1は、比較例1に比べて、クラウン部及びショルダー部を均一に膨張させることができ、経時変化の小さいトレッド部のプロファイルを設計することができた。
さらに、実施例1は、第2タイヤのトレッド部のプロファイルが修正されたため、経時変化後の長さ比を、1.0に近似させることができた。したがって、実施例1は、クラウン部からショルダー部にかけて、接地形状のタイヤ周方向の長さを均一にすることができるため、耐摩耗性に優れるタイヤを設計することができた。
実施例1では、上記特許文献1の設計方法に比べて、設計時間を50~80%短縮することができた。したがって、実施例1は、経時変化が小さいトレッド部のプロファイルを有するタイヤを、短時間で設計することができた。
[実施例B]
図4及び図13に示した処理手順に従って、図1に示した基本構造を有する第1タイヤが製造され、第1タイヤの内圧充填後かつ経時変化後の形状が取得された(実施例2)。実施例2では、経時変化後の第1タイヤについて、カーカスプライのプロファイル及びベルトプライのプロファイルが、X線CTスキャン装置で取得された。そして、実施例2では、カーカスプライのプロファイル及びベルトプライのプロファイルに基づいて、第1タイヤのトレッド部のプロファイルを修正した第2タイヤが設計された。
実施例2では、第2タイヤが製造され、第2タイヤの経時変化前のトレッド部のプロファイルと、第2タイヤの内圧充填後かつ経時変化後のトレッド部のプロファイルとが、3Dスキャナで測定された。そして、実施例2の経時変化前の接地形状の長さ比、及び、実施例2の経時変化後の接地形状の長さ比が、それぞれ取得された。
比較のために、図1に示した第1タイヤが製造され、第1タイヤの経時変化前のトレッド部のプロファイルと、内圧充填後かつ経時変化後のトレッド部のプロファイルとが、3Dスキャナで測定された(比較例2)。そして、比較例2の経時変化前の接地形状の長さ比、及び、実施例2の経時変化後の接地形状の長さ比が、それぞれ取得された。共通仕様は、以下の点を除き、実施例Aと同一である。
ドラムの走行距離:1000km
走行速度V:80km/h
テスト結果を表2に示す。
テストの結果、実施例2は、比較例2に比べて、経時変化が小さいトレッド部のプロファイルを有するタイヤを設計することができた。