以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
本実施形態のタイヤのシミュレーション方法(以下、単に「シミュレーション方法」ということがある)は、コンピュータ1を用いて、タイヤとリムとで囲まれるタイヤ内腔のタイヤ走行時の温度を計算するためのものである。
図1は、本実施形態のシミュレーション方法を実行するコンピュータの斜視図である。コンピュータ1は、本体1a、キーボード1b、マウス1c及びディスプレイ装置1dを含んでいる。この本体1aには、例えば、演算処理装置(CPU)、ROM、作業用メモリ、磁気ディスクなどの記憶装置、及び、ディスクドライブ装置1a1、1a2が設けられている。また、記憶装置には、本実施形態のシミュレーション方法を実行するためのソフトウェア等が予め記憶されている。
図2は、本実施形態のシミュレーション方法によって、走行時のタイヤ内腔の温度が予測されるタイヤの断面図である。タイヤ2は、例えば、乗用車用タイヤとして構成されている。本実施形態のタイヤ2は、例えば、トレッド部2aからサイドウォール部2bを経てビード部2cのビードコア5に至るカーカス6と、このカーカス6のタイヤ半径方向外側かつトレッド部2aの内部に配されるベルト層7とが設けられている。
さらに、タイヤ2には、ゴム部材11が設けられている。ゴム部材11は、トレッド部2aにおいてベルト層7の外側に配されるトレッドゴム11aと、サイドウォール部2bにおいてカーカス6の外側に配されるサイドウォールゴム11bと、ビード部2cに配されるクリンチゴム11cとを含んでいる。
タイヤ2の外面12は、トレッド接地端2t、2t間のトレッド接地面12a、トレッド接地面12aから凹む溝12b、クリンチゴム11cがリム14に接触するリム接触面12c、及び、トレッド接地端2tとリム接触面12cとの間のサイド面12dを含んでいる。
なお、本実施形態において、トレッド接地端2tは、正規リム14Sにリム組みしかつ正規内圧を充填し、正規荷重を負荷してキャンバー角0度で平面に接地させた正規荷重負荷状態において、トレッド接地面12aのタイヤ軸方向最外端の位置を意味している。また、リム接触面12cも、正規荷重負荷状態において特定されるものとする。
「正規リム」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えばJATMAであれば "標準リム" 、TRAであれば "Design Rim" 、ETRTOであれば "Measuring Rim" とする。
「正規内圧」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば "最高空気圧" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" とするが、タイヤが乗用車用である場合には180kPaとする。
「正規荷重」とは、前記規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば最大負荷能力、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "LOAD CAPACITY" である。
カーカス6は、少なくとも1枚、本実施形態では2枚のカーカスプライ6A、6Bで構成されている。カーカスプライ6A、6Bは、トレッド部2aからサイドウォール部2bを経てビード部2cのビードコア5に至る本体部6aと、この本体部6aに連なりビードコア5の廻りをタイヤ軸方向内側から外側に折り返された折返し部6bとを、それぞれ含んでいる。
カーカスプライ6A、6Bの本体部6aと折返し部6bとの間には、ビードコア5からタイヤ半径方向外側にのびるビードエーペックスゴム11dが配されている。また、カーカスプライ6A、6Bは、例えば、タイヤ赤道Cに対して80度〜90度の角度で配列されたカーカスコードが、互いに交差する向きに重ねられている。カーカス6の内面には、タイヤ2のタイヤ内腔面13をなすインナーライナーゴム11eが、ビード部2c、2c間に架け渡されている。
ベルト層7は、タイヤ半径方向内、外2枚のベルトプライ7A、7Bによって構成されている。2枚のベルトプライ7A、7Bは、ベルトコードが、タイヤ周方向に対して、例えば10度〜35度の角度で傾けて配列されている。このようなベルトプライ7A、7Bは、ベルトコードが互いに交差する向きに重ね合わされている。
リム14は、リム組時にビード部2cを落とし込むためのウェル部14aと、このウェル部14aのタイヤ軸方向両側に配置される一対のリム片14b、14bとを含んで構成されている。これらのリム片14b、14bは、タイヤ2のリム接触面12c、12cに接触している。また、リム14は、タイヤ内腔10を向くリム内腔面15が設けられている。
図3は、本実施形態のシミュレーション方法の具体的な処理手順を示すフローチャートである。本実施形態のシミュレーション方法では、先ず、コンピュータ1に、図2に示したタイヤ2をモデル化したタイヤモデルが入力される(工程S1)。図4は、本実施形態のタイヤモデル16の断面図である。
タイヤモデル16は、図2に示したタイヤ2を、数値解析法により取り扱い可能な有限個の要素F(i)(i=1、2、…)でモデル化(離散化)することによって設定される。数値解析法としては、例えば、有限要素法、有限体積法、差分法、又は、境界要素法を適宜採用することができる。本実施形態では、有限要素法が採用されている。
本実施形態の工程S1では、先ず、図2に示したトレッドゴム11a、サイドウォールゴム11b、クリンチゴム11c、ビードエーペックスゴム11d、及び、インナーライナーゴム11eを含むゴム部材11が、要素F(i)でモデル化される。これにより、トレッドゴムモデル17a、サイドウォールゴムモデル17b、クリンチゴムモデル17c、ビードエーペックスゴムモデル17d、及び、インナーライナーゴムモデル17eを含むゴムモデル17が設定される。
さらに、工程S1では、図2に示したカーカスプライ6A、6B、及び、ベルトプライ7A、7Bが、要素F(i)でモデル化される。これにより、カーカスプライモデル18A、18B、及び、ベルトプライモデル19A、19Bが設定される。
このようなモデルの設定(モデリング)は、従来の方法と同様に、例えば、加硫金型の設計データ(例えば、CADデータ)と、メッシュ化ソフトウェアとを用いることにより、容易に実施することができる。これらのゴムモデル17、カーカスプライモデル18A、18B、及び、ベルトプライモデル19A、19Bが順次設定されることにより、タイヤモデル16が設定される。
タイヤモデル16の外面22には、図2に示したタイヤ2の外面12が再現されている。即ち、タイヤモデル16の外面22は、トレッド接地面22a、溝22b、リム接触面22c、及び、サイド面22dが設定されている。本実施形態では、トレッド接地面22a、溝22b、リム接触面22c、及び、サイド面22dの各領域が、図2に示すタイヤ2の正規荷重負荷状態に基づいて区分される。また、タイヤモデル16には、タイヤ2のタイヤ内腔面13(図2に示す)が再現されたタイヤ内腔面23が設定されている。
各要素F(i)には、複数個の節点24が設けられる。また、各要素F(i)には、要素番号、節点24の番号、節点24の座標値、及び、各部材の材料特性(例えば、密度、ヤング率、減衰係数、損失正接tanδ、及び/又は、熱伝導率等)などの数値データが定義される。このようなタイヤモデル16は、コンピュータ1に記憶される。
次に、本実施形態のシミュレーション方法では、コンピュータ1に、図2に示したリム14をモデル化したリムモデル20が入力される(工程S2)。図4に示されるように、本実施形態のリムモデル20は、図2に示したリム14を、数値解析法により取り扱い可能な面要素Gでモデル化することによって設定される。
リムモデル20は、図2に示したリム14のウェル部14aをモデル化したウェルモデル20a、及び、一対のリム片14b、14bをモデル化した一対のリム片モデル20b、20bが含まれる。また、リムモデル20には、図2に示したリム14のリム内腔面15を再現したリム内腔面21が設定されている。面要素Gには、リム14の材料特性(例えば、密度、ヤング率、及び/又は、熱伝導率等)などの数値データが定義される。このようなリムモデル20は、コンピュータ1に記憶される。なお、リムモデル20は、タイヤモデル16と同様に、有限個の要素F(i)でモデル化されてもよい。
次に、本実施形態のシミュレーション方法では、コンピュータ1に、タイヤ2(図2に示す)が転動する路面(図示省略)を、有限個の要素でモデル化した路面モデルが入力される(工程S3)。図5は、タイヤモデル及び路面モデルの斜視図である。
路面モデル26は、例えば、単一の平面を構成する剛表面の要素Hでモデル化される。これにより、路面モデル26は、外力が作用しても変形不能に定義される。そして、路面モデル26を構成する要素Hの数値データが、コンピュータ1に記憶される。
なお、路面モデル26は、例えば、ドラム試験機のように円筒状表面に形成されても良い。また、路面モデル26には、必要に応じて、段差、窪み、うねり又は轍などが設けられても良い。
次に、本実施形態のシミュレーション方法では、コンピュータ1に、タイヤモデル16に境界条件が定義される(境界条件設定工程S4)。図6は、本実施形態の境界条件設定工程S4の処理手順の一例を示すフローチャートである。
本実施形態の境界条件設定工程S4では、先ず、タイヤモデル16の転動条件が設定される(工程S41)。この工程S41では、従来のシミュレーション方法と同様に、例えば、タイヤモデル16の内圧条件、負荷荷重条件、キャンバー角、スリップ角、走行速度Vs、静摩擦係数、又は、動摩擦係数等が設定される。これらの条件は、コンピュータ1に記憶される。
次に、境界条件設定工程S4では、予め定められた外気の温度、及び、タイヤ内腔25の温度が設定される(工程S42)。外気の温度、及び、タイヤ内腔25の温度については、タイヤ2の走行条件等や、実際のタイヤ内腔25(図2に示す)に基づいて、適宜設定することができる。これらの条件は、コンピュータ1に記憶される。
次に、境界条件設定工程S4では、図4に示したタイヤモデル16の外面22と外気との間の熱伝達率が定義される(工程S43)。本実施形態では、トレッド接地面22aと外気との間の熱伝達率、溝22bと外気との間の熱伝達率、及び、サイド面22dと外気との間の熱伝達率が定義される。これらの熱伝達率は、例えば、実際のタイヤ2の走行試験の実測値や、タイヤモデルを用いて予め実施されたシミュレーションの計算結果から、図2に示したタイヤ2のトレッド接地面12a、溝12b及びサイド面12dの外気への放熱を考慮して、適宜定義することができる。
図2に示したタイヤ2の走行時において、走行速度に対応するトレッド接地面12aの周速度(外気の流速)は、該トレッド接地面12aよりもタイヤ半径方向内側に配置される溝12bや、サイド面12dに比べて大きくなる。周速度が大きいと、トレッド接地面12aに接触する外気の流速が大きくなるため、外気への放熱が大きくなる。このため、図3に示したタイヤモデル16のトレッド接地面22aと外気との間の熱伝達率は、溝22bと外気との間の熱伝達率、及び、サイド面22dと外気との間の熱伝達率よりも大に定義されるのが望ましい。
図2に示されるように、溝12bは、該溝12bよりもタイヤ半径方向内側に配置されるサイド面12dに比べて、周速度が大きくなる。このため、溝22bと外気との間の熱伝達率は、サイド面22dと外気との間の熱伝達率よりも大に設定されるのが望ましい。これらのトレッド接地面22a、溝22b及びサイド面22dに設定された熱伝達率は、コンピュータ1に記憶される。
次に、境界条件設定工程S4では、図5に示したトレッド接地面22aと路面モデル26との間の熱伝達率が定義され(工程S44)、さらに、図4に示したタイヤ内腔面23とタイヤ内腔25との間の熱伝達率が定義される(工程S45)。これらの熱伝達率は、工程S43と同様に、例えば、実際のタイヤ2の走行試験の実測値等から、図2に示したトレッド接地面12aの路面(図示省略)への放熱、及び、タイヤ内腔面13のタイヤ内腔10への放熱をそれぞれ考慮して、適宜定義することができる。これらの熱伝達率も、コンピュータ1に記憶される。
次に、境界条件設定工程S4では、図4に示したリム接触面22cとリムモデル20との間の熱伝達率が定義され(工程S46)、さらに、リムモデル20のリム内腔面21とタイヤ内腔25との間の熱伝達率が定義される(工程S47)。これらの熱伝達率も、工程S43と同様に、例えば、実際のタイヤ2の走行試験の実測値等から、図2に示したリム接触面12cのリム14への放熱、及び、リム内腔面15のタイヤ内腔10への放熱を考慮して、適宜定義することができる。これらの熱伝達率も、コンピュータ1に記憶される。
次に、本実施形態のミュレーション方法では、コンピュータ1に、内圧充填後のタイヤモデル16が設定される(工程S5)。工程S5では、先ず、図4に示されるように、タイヤモデル16のビード部16c、16cを拘束するように、リムモデル20のタイヤモデル16への嵌合が計算される。さらに、タイヤモデル16には、内圧条件に相当する等分布荷重wに基づいて変形計算される。これにより、工程S5では、内圧充填後のタイヤモデル16が計算される。このような内圧充填後のタイヤモデル16は、コンピュータ1に記憶される。
タイヤモデル16の変形計算は、各要素の形状及び材料特性などをもとに、各要素F(i)の質量マトリックス、剛性マトリックス及び減衰マトリックスがそれぞれ作成される。さらに、これらの各マトリックスが組み合わされて、全体の系のマトリックスが作成される。そして、コンピュータ1が、前記各種の条件を当てはめて運動方程式を作成し、これらを単位時間T(x)(x=0、1、…)ごと(例えば、1μ秒毎)にタイヤモデル16の変形計算を行う。このような変形計算は、例えば、LSTC社製のLS-DYNAなどの市販の有限要素解析アプリケーションソフトを用いて計算できる。
次に、本実施形態のシミュレーション方法では、コンピュータ1に、荷重が定義されたタイヤモデル16が設定される(工程S6)。この工程S6では、先ず、図5に示されるように、内圧充填後のタイヤモデル16と、路面モデル26との接触が計算される。次に、工程S6では、予め定められた荷重Tに基づいて、タイヤモデル16の変形が計算される。これにより、工程S6では、路面モデル26に接地したタイヤモデル16が計算される。このような路面モデル26に接地したタイヤモデル16は、コンピュータ1に記憶される。
次に、本実施形態のシミュレーション方法では、コンピュータ1によって、タイヤモデル16の走行時の発熱及び放熱が計算される(シミュレーション工程S7)。本実施形態のシミュレーション工程S7では、タイヤモデル16を路面モデル26に転動させる動的解析が実施される。図7は、本実施形態のシミュレーション工程S7の処理手順を示すフローチャートである。
本実施形態のシミュレーション工程S7では、先ず、図5に示されるように、予め定められた走行速度Vsに基づいて、タイヤモデル16が路面モデル26上を転動する状態が計算される(転動工程S71)。転動工程S71では、先ず、タイヤモデル16の回転軸29に、走行速度Vsに対応する角速度Vaが定義される。次に、転動工程S71では、路面モデル26に、走行速度Vsに対応する並進速度Vtが定義される。並進速度Vtは、タイヤモデル16の接地領域27での速度である。これらの条件に基づいて、単位時間T(x)毎に、路面モデル26上を転動するタイヤモデル16が計算される。
次に、本実施形態のシミュレーション工程S7では、コンピュータ1によって、タイヤモデル16の走行時の発熱量が計算される(発熱量計算工程S72)。本実施形態の路面モデル26を転動するタイヤモデル16に基づいて、走行時の発熱量が計算される。発熱量計算工程S72では、従来の方法と同様に、図4に示した各ゴムモデル17において、転動工程S71で計算された各要素F(i)の歪と、各要素F(i)の損失正接tanδとを用いて、単位時間T(x)毎に、各要素F(i)の発熱量が計算される。このような発熱量の計算は、上記アプリケーションを用いることにより、容易に計算することができる。各要素F(i)の発熱量は、コンピュータ1に記憶される。なお、発熱量は、要素F(i)毎に計算される。また、tanδの初期値には、走行速度Vsに基づいて適宜設定することができる。
次に、本実施形態のシミュレーション工程S7では、コンピュータ1によって、タイヤモデル16の走行時の放熱量が計算される(放熱量計算工程S73)。
本実施形態の放熱量計算工程S73では、先ず、従来の方法と同様に、タイヤモデル16の外面22、タイヤ内腔面23、及び、リム内腔面21にそれぞれ設定された熱伝達率、外気の温度、タイヤ内腔25の温度、及び、各要素F(i)の熱伝導率に基づいて、各要素F(i)の放熱量が計算される。このような放熱量の計算は、空気(流体)をモデル化した流体シミュレーションを実施することなく、上記アプリケーションを用いることによって、容易に計算することができる。タイヤモデル16の放熱量は、コンピュータ1に記憶される。なお、放熱量は、要素F(i)毎に計算される。
本実施形態では、路面(図示省略)の接地、空気の接触、及び、リム14の接触を考慮して、タイヤモデル16のトレッド接地面22a、溝22b、リム接触面22c、サイド面22d及びタイヤ内腔面23に、それぞれ異なる熱伝達率が定義されている。このため、放熱量計算工程S73では、タイヤモデル16の放熱量を、実際のタイヤ2の放熱量に近似させることができる。
次に、本実施形態のシミュレーション方法では、タイヤモデル16の発熱量と放熱量とに基づいて、タイヤモデル16のタイヤ内腔面23の温度が、コンピュータ1によって計算される(タイヤ内腔面温度計算工程S8)。本実施形態では、タイヤモデル16の周方向の接地中心27c(図5に示す)を通る子午線断面で区分された二次元のタイヤモデル32が用いられる。なお、図4では、三次元のタイヤモデル16及び二次元のタイヤモデル32を共通して表示している。
タイヤ内腔面温度計算工程S8では、各要素F(i)の発熱量と、各要素F(i)の放熱量との熱収支が計算される。これにより、タイヤモデル32のタイヤ内腔面23を含む各要素F(i)の節点24の温度が計算される。これらの各要素F(i)の節点24の温度は、コンピュータ1に記憶される。このように、本実施形態では、二次元のタイヤモデル32を用いて、各要素F(i)の熱収支が計算されるため、計算時間を大幅に短縮することができる。
次に、本実施形態のシミュレーション方法では、タイヤ内腔面23の温度に基づいて、タイヤ走行時のタイヤモデル32のタイヤ内腔25の温度が、コンピュータ1によって計算される(タイヤ内腔温度計算工程S9)。
発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、走行中のタイヤ2(図2に示す)において、タイヤ内腔面13の温度と、タイヤ内腔10の温度とが一定の相関、即ち、タイヤ内腔面13の温度と、タイヤ内腔10の温度とが略同一になることを知見した。このような知見により、本実施形態のタイヤのシミュレーション方法では、タイヤモデル32のタイヤ内腔面23の温度に基づいて、タイヤ走行時のタイヤモデル32のタイヤ内腔25の温度(即ち、タイヤ2のタイヤ内腔10の温度)を求めている。図8は、本実施形態のタイヤ内腔温度計算工程S9の処理手順の一例を示すフローチャートである。
本実施形態のタイヤ内腔温度計算工程S9では、先ず、タイヤ内腔面23が区分された複数の領域28について、タイヤ側温度パラメータPaが求められる(工程S91)。図9(a)は、本実施形態の領域28を示す部分断面図である。
本実施形態の領域28は、二次元のタイヤモデル32(子午線断面)において、タイヤ内腔面23に沿って隣り合う節点24、24間で区分される。
本実施形態では、二次元のタイヤモデル32の各領域28の温度が、タイヤ周方向(三次元)において同一になると仮定している。このような仮定に基づいて、タイヤ側温度パラメータPaは、各領域28について、温度とタイヤ1周分の表面積との積で求めることができる。
各領域28の温度及び各表面積は、適宜計算することができる。本実施形態の各領域28の温度は、例えば、各領域28を区分する一対の節点24、24の温度を平均することによって求めることができる。各表面積は、例えば、各領域28の節点24、24間のタイヤ内腔面23に沿った距離を、該領域28の1周分の長さ(図示省略)で乗じることによって求めることができる。なお、本実施形態の各領域28の1周分の長さは、節点24、24間の中点30での周方向の長さで定義される。
図9(b)は、本発明の他の実施形態の領域28を示す部分断面図である。領域28は、二次元のタイヤモデル32(子午線断面)において、タイヤ内腔面23に沿って隣り合う節点24、24の中点30、30間、及び、タイヤ半径方向で最も内側に配置される中点30とタイヤ内腔面23の半径方向内端23i(図4に示す)との間で区分されるものとする。各領域28の温度は、該領域28に一つ配置される節点24の温度である。各領域28の各表面積は、例えば、各領域28の中点30、30間のタイヤ内腔面23に沿った距離、又は、中点30とタイヤ内腔面23の半径方向内端23iとの間の距離を、該領域28の1周分の長さ(図示省略)で乗じることによって求めることができる。
このように、工程S91では、二次元のタイヤモデル32に基づいて、三次元のタイヤ内腔面23を考慮したタイヤ側温度パラメータPaを容易に求めることができるため、計算時間を短縮することができる。このタイヤ側温度パラメータPaは、コンピュータ1に記憶される。
次に、本実施形態のタイヤ内腔温度計算工程S9では、タイヤ側温度パラメータPaの総和が計算される(工程S92)。工程S92では、タイヤ内腔面23の全ての領域28のタイヤ側温度パラメータPaが積算される。これにより、タイヤ内腔面23の温度を、タイヤ内腔面23の表面積で重み付けした値を計算することができる。このようなタイヤ側温度パラメータPaの総和は、コンピュータ1に記憶される。
次に、本実施形態のタイヤ内腔温度計算工程S9では、リム内腔面21の温度と、リム内腔面21の表面積との積であるリム側温度パラメータPbが求められる(工程S93)。本実施形態では、図2に示したタイヤ2の走行中において、リム14のリム内腔面15の温度は変化しないと仮定している。このため、工程S93では、境界条件設定工程S4で予め設定されたリム内腔面21(図4に示す)の温度を、リム内腔面21のタイヤ1周分の表面積で乗じることにより、リム側温度パラメータPbが計算される。なお、表面積は、三次元のリムモデル20に基づいて、容易に求めることができる。このリム側温度パラメータPbは、コンピュータ1に記憶される。
次に、本実施形態のタイヤ内腔温度計算工程S9では、タイヤ側温度パラメータPaの総和とリム側温度パラメータPbとに基づいて、タイヤ内腔25の温度が計算される(工程S94)。工程S94では、タイヤ側温度パラメータPaの総和とリム側温度パラメータPbとの和が、タイヤ内腔面23及びリム内腔面21の合計面積で除される。これにより、タイヤ内腔面23及びリム内腔面21の平均温度が計算される。本実施形態では、上記知見に基づいて、タイヤ内腔面23及びリム内腔面21の平均温度が、タイヤ内腔25の温度として計算される。
このように、本実施形態のシミュレーション方法では、タイヤ内腔面23及びリム内腔面21の平均温度が、タイヤ内腔25の温度として計算される。これにより、従来のように、タイヤ内腔10を複数の要素に分割した空気モデル(図示省略)を設定することなく、タイヤ内腔25の温度を正確に計算することができる。従って、本実施形態のシミュレーション方法では、タイヤ内腔25の温度(即ち、タイヤ2のタイヤ内腔10の温度)の計算精度を維持しつつ、タイヤモデル16の作成時間を短縮することができる。
さらに、本実施形態では、タイヤ内腔面23の温度だけでなく、リム内腔面15の温度も考慮して、タイヤ内腔25の温度が計算されるため、タイヤ内腔25の温度の計算精度を高めることができる。また、本実施形態のシミュレーション工程S7では、空気モデルの熱伝達等を計算する必要がないため、計算時間も大幅に短縮することができる。
次に、本実施形態のシミュレーション方法では、コンピュータ1によって、タイヤ内腔25の温度が収束したか否かが判断される(工程S10)。工程S10では、タイヤ内腔温度計算工程S9で計算されたタイヤ内腔25の温度と、計算前のタイヤ内腔25の温度(即ち、工程S42で設定されたタイヤ内腔25の温度)との差(以下、単に、「温度差」ということがある。)が、予め定められた温度差以下に収束したか否かが判断される。
工程S10において、タイヤ内腔25の温度が収束したと判断された場合、タイヤ内腔温度計算工程S9で計算されたタイヤ内腔25の温度は、タイヤ走行時(即ち、予め設定された走行速度Vsで走行した時)のタイヤ2のタイヤ内腔10の温度とみなすことができる。この場合、走行時のタイヤ内腔10の温度を使用した新たなシミュレーションが別途実施される(工程S11)。このようなシミュレーションでは、走行速度Vsで走行した実際のタイヤ内腔10の温度を実測しなくても、新たに設定されるタイヤモデル(図示省略)に、走行時の正確なタイヤ内腔10の温度が設定されるため、例えば、走行時のタイヤの任意の位置の温度を正確に予測することができる。
他方、タイヤ内腔25の温度が収束していないと判断された場合、計算前のタイヤ内腔25の温度(即ち、工程S42で設定されたタイヤ内腔25の温度)が、タイヤ内腔温度計算工程S9で計算されたタイヤ内腔25の温度に更新される(工程S12)。さらに、単位時間T(x)が一つ進められ(工程S13)、更新されたタイヤ内腔25の温度に基づいて、シミュレーション工程S7(発熱量計算工程S72及び放熱量計算工程S73を含む)、タイヤ内腔面温度計算工程S8、及び、タイヤ内腔温度計算工程S9が、再度実施される。
このように、本実施形態のシミュレーション方法では、タイヤ内腔25の温度が収束するまで、各工程S7〜工程S9が繰り返し実施されるため、タイヤ走行時のタイヤ内腔10の温度の計算精度を高めることができる。なお、タイヤ内腔25の温度が収束したか否かの判断は、前記温度差が、例えば、0.05℃〜0.15℃以下である否かで判断されるのが望ましい。
本実施形態では、境界条件として、タイヤ内腔10の温度が、タイヤモデル16(タイヤモデル32)のタイヤ内腔25の温度上昇を見込んで予め高めに設定されている。このため、本実施形態では、例えば、タイヤ内腔10の温度を常温(例えば、30℃)に設定されている場合に比べて、計算が収束するまでの時間を短縮することができる。このような作用を効果的に発揮させるために、実際のタイヤ2の走行試験の実測値等に基づいて、タイヤ内腔10の温度が定義されるのが望ましい。これにより、計算が収束するまでの時間をさらに短縮することができる。
本実施形態のシミュレーション方法では、タイヤ走行時のタイヤ内腔10の温度のみが計算される態様が例示されたが、このような態様に限定されるわけではない。図10は、本発明の他の実施形態のシミュレーション方法の処理手順の一例を示すフローチャートである。なお、この実施形態において、これまでの実施形態と同一の構成については、同一の符号を付し、説明を省略することがある。
この実施形態のシミュレーション方法では、後述するタイヤ内圧計算工程S14において、タイヤ内腔温度計算工程S9で計算されたタイヤ走行時のタイヤ内腔25の温度を用いて、タイヤ走行時のタイヤ内圧を求めている。発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、タイヤ走行時のタイヤ内腔10の温度Tとタイヤ走行前のタイヤ内腔10の温度T0との増加率T/T0と、タイヤ走行時のタイヤ内圧Pとタイヤ走行前のタイヤ内圧P0との増加率P/P0とは、一定の相関、即ち、増加率T/T0と増加率P/P0とは略同一になることを知見した。このような知見により、この実施形態のシミュレーション方法では、タイヤ走行時のタイヤ内圧Pが求められる。
図11は、本発明の他の実施形態の境界条件設定工程の一例を示すフローチャートである。この実施形態の境界条件設定工程S4では、工程S41で設定されたタイヤモデル16の内圧条件、及び、工程S42で設定されたタイヤ内腔25の温度とは別に、タイヤ走行前のタイヤ内腔10の温度、及び、タイヤ走行前のタイヤ内圧がそれぞれ設定される(工程S48)。なお、タイヤ走行前のタイヤ内腔10の温度、及び、タイヤ走行前のタイヤ内圧は、例えば、実際のタイヤ2(図2に示す)において実測されるのが望ましい。これらの条件は、コンピュータ1に記憶される。
この実施形態のシミュレーション方法では、タイヤ内腔温度計算工程S9の後に、タイヤ走行時のタイヤ内圧が、コンピュータ1によって計算される(タイヤ内圧計算工程S14)。この工程S14では、上記知見に基づいて、タイヤ内腔温度計算工程S9で計算されたタイヤ走行時のタイヤ内腔25の温度を用いて、タイヤ走行時のタイヤ内圧が、下記式(1)に基づいて計算される。
P=P0×(T/T0) …(1)
ここで、符号は、次のとおりである。
P:タイヤ走行時のタイヤ内圧
P0:タイヤ走行前のタイヤ内圧
T:タイヤ走行時のタイヤ内腔の温度
T0:タイヤ走行前のタイヤ内腔の温度
上記式(1)において、T/T0は、タイヤ走行時のタイヤ内腔10の温度Tとタイヤ走行前のタイヤ内腔10の温度T0との増加率である。このタイヤ内腔10の温度Tの増加率T/T0に、タイヤ走行前のタイヤ内圧P0が乗じられることにより、タイヤ走行時のタイヤ内圧Pが計算される。
このように、この実施形態のシミュレーション方法では、タイヤ内腔温度計算工程S9で計算されたタイヤ走行時のタイヤ内腔25の温度を用いて、タイヤ走行時のタイヤ内圧を容易に求めることができる。これにより、例えば、タイヤ内腔10を複数の要素に分割した空気モデル(図示省略)を設定することなく、タイヤ走行時のタイヤ内圧を高い精度で計算することができる。
次に、この実施形態のシミュレーション方法の工程S10では、前実施形態のシミュレーション方法と同様に、タイヤ内腔25の温度が収束したか否かが判断される。なお、この実施形態の工程S10では、タイヤ内圧が収束したか否かの判断が行われない。これは、上記式(1)に示されるように、タイヤ内圧が、タイヤ内腔25の温度を用いて計算されているため、タイヤ内腔25の温度が収束すると、タイヤ内圧も必然的に収束するためである。従って、この実施形態では、タイヤ内圧が収束したか否かの判断が行われないため、計算効率を高めることができる。
工程S10において、タイヤ内腔25の温度が収束したと判断された場合、前実施形態と同様に、タイヤ内腔温度計算工程S9で計算されたタイヤ内腔25の温度を、タイヤ走行時(即ち、予め設定された走行速度Vsで走行時)のタイヤ内腔10の温度とみなすことができる。さらに、この実施形態では、タイヤ内圧計算工程S14で計算されたタイヤ内圧を、タイヤ走行時のタイヤ内圧とみなすことができる。この場合、タイヤ走行時のタイヤ内腔25の温度、及び、タイヤ走行時のタイヤ内圧を使用した新たなシミュレーションが別途実施される(工程S15)。このシミュレーションでは、新たに設定されるタイヤモデル(図示省略)に、タイヤ走行時の正確なタイヤ内腔10の温度、及び、タイヤ走行時のタイヤ内圧が設定されるため、タイヤ2の性能等を正確に予測することができる。
他方、タイヤ内腔10の温度が収束していないと判断された場合、前実施形態と同様に、計算前のタイヤ内腔25の温度(即ち、工程S42で設定されたタイヤ内腔25の温度)が、タイヤ内腔温度計算工程S9で計算されたタイヤ内腔25の温度に更新される(工程S12)。なお、工程S48で設定されたタイヤ走行前のタイヤ内腔10の温度については、更新されることなく、コンピュータ1に保持される。
さらに、この実施形態では、計算前のタイヤモデル16の内圧条件(即ち、工程S41で設定されたタイヤモデル16の内圧条件)が、タイヤ内圧計算工程S14で計算されたタイヤ内圧に更新される(工程S16)。なお、工程S48で設定されたタイヤ走行前のタイヤ内圧も更新されることなく、コンピュータ1に保持される。
そして、単位時間T(x)が一つ進められ(工程S13)、更新されたタイヤ内腔25の温度、及び、タイヤモデル16の内圧条件(即ち、タイヤ内圧)に基づいて、シミュレーション工程S7(発熱量計算工程S72及び放熱量計算工程S73を含む)、タイヤ内腔面温度計算工程S8、タイヤ内腔温度計算工程S9、及び、タイヤ内圧計算工程S14が再度実施される。
このように、この実施形態では、実際のタイヤ2と同様に、タイヤ内腔10の温度変化によって時々刻々と変化するタイヤ内圧に基づいて、発熱量計算工程S72及び放熱量計算工程S73が計算されるため、タイヤ走行時のタイヤ内腔10の温度を、さらに精度よく計算することができる。
これまでの実施形態では、三次元のタイヤモデル16から区分された二次元のタイヤモデル32を用いて、タイヤ内腔面温度計算工程S8及びタイヤ内腔温度計算工程S9が実施される態様が例示されたが、三次元のタイヤモデル16が用いられてもよい。これにより、三次元のタイヤモデル16のタイヤ内腔面23を構成する全ての要素F(i)の温度に基づいて、タイヤ内腔10の温度が計算されるため、計算精度を高めることができる。また、本実施形態では、タイヤ側温度パラメータPaの総和、及び、リム側温度パラメータPbに基づいて、タイヤ内腔の温度が計算されるものが例示されたが、タイヤ側温度パラメータPaの総和のみに基づいて、タイヤ内腔の温度が計算されてもよい。これにより、計算コストを抑えることができる。
また、これまでの実施形態のシミュレーション工程S7では、タイヤモデル16を路面モデル26に転動させて、発熱量を計算する動的解析が例示されたが、これに限定されるわけではない。例えば、路面モデル26にタイヤモデル16を転動させない静的解析でもよい。この場合、タイヤモデル16の走行時の発熱量は、タイヤモデル16のタイヤ周方向の歪変動量に基づいて計算されるのが望ましい。このような静的解析では、動的解析に比べて、計算時間を短縮しうる。なお、発熱量の計算は、例えば、解析アプリケーションソフトウェア( Dassault Systems 社製の ABAQUS等)を用いることによって、容易に行うことができる。
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。
[実施例A]
図2に示すタイヤが製造され、表1に示した各走行条件(走行速度、内圧、荷重)において、タイヤ内腔の温度が実測された(実験例)。タイヤ内腔の温度の測定には、TPMS( Tire Pressure Monitoring System )が用いられた。
図2に示すタイヤをモデル化したタイヤモデルが、コンピュータに設定された(実施例)。実施例では、図3及び図6〜図8に示した処理手順に従って、表1に示した実験例と同一の走行条件において、タイヤ内腔の温度が予測された。
比較のために、図2に示す空気入りタイヤをモデル化したタイヤモデル、及び、タイヤ内腔内の空気をモデル化した空気モデルが、コンピュータに設定された(比較例)。
そして、実験例のタイヤ内腔の温度と、実施例のタイヤ内腔の温度との誤差が計算された。なお、誤差が5%以下であれば、十分な精度である。結果を表1に示す。さらに、実施例のタイヤモデルの作成時間と、比較例のタイヤモデルの作成時間とが比較された。共通仕様は、次のとおりである。
タイヤサイズ:11R22.5
リムサイズ:22.5×8.25
タイヤ内腔の初期設定温度:60℃
タイヤモデルの発熱量の計算:静的解析
テストの結果、実験例のタイヤ内腔の温度と、実施例のタイヤ内腔の温度との誤差は、全ての走行条件において5%以下であった。従って、実施例のシミュレーション方法では、タイヤ内腔の温度の計算精度を維持しうることが確認できた。
実施例のタイヤモデルの作成時間は、比較例のタイヤモデルを作成時間の60%であった。従って、実施例のシミュレーション方法では、モデルの作成時間を短縮しうることが確認できた。
[実施例B]
図2に示した基本構造を有するタイヤを、下記条件1〜6で走行させ、タイヤ走行時のタイヤ内圧、タイヤ内腔の温度、トレッド部の温度、及び、ビード部の温度が実測された。条件1〜6は、次のとおりである。
条件1:
タイヤサイズ:195/80R15
内圧:450kPa
荷重:13.34kN
走行速度:80km/h
リム:15×5.50J
条件2:
タイヤサイズ:145R12 6PR
内圧:350kPa
荷重:7.12kN
走行速度:80km/h
リム:12×4.00J
条件3:
タイヤサイズ:145R12 6PR
内圧:350kPa
荷重:7.12kN
走行速度:60km/h
リム:12×4.00J
条件4:
タイヤサイズ:275/65R18
内圧:250kPa
荷重:14.35kN
走行速度:100km/h
リム:18×8.00J
条件5:
タイヤサイズ:225/70R16
内圧:250kPa
荷重:11.59kN
走行速度:100km/h
リム:16×6.50J
条件6:
タイヤサイズ:225/70R16
内圧:190kPa
荷重:9.68kN
走行速度:60km/h
リム:16×6.50J
図2に示す基本構造を有し、かつ、上記条件1〜6のタイヤをモデル化したタイヤモデルが、コンピュータにそれぞれ設定された(実施例1、実施例2)。実施例1では、図3及び図6〜図8に示した処理手順に従って、上記条件1〜6において、タイヤ走行時のタイヤ内圧、タイヤ内腔の温度、トレッド部の温度、及び、ビード部の温度が計算された。なお、実施例1では、タイヤ内圧計算工程が実施されないため、タイヤモデルのタイヤ内圧が更新されない。
実施例2では、図7、図8、図10及び図11に示した処理手順に従って、上記条件1〜6において、タイヤ走行時のタイヤ内圧、タイヤ内腔の温度、トレッド部の温度、及び、ビード部の温度が計算された。なお、実施例2では、タイヤ内圧計算工程が実施されるため、タイヤモデルのタイヤ内圧が更新される。
図12は、タイヤ走行時のタイヤ内圧の実測値と、タイヤ走行時のタイヤ内圧の計算値との関係を示すグラフである。図12に示されるように、タイヤモデルのタイヤ内圧が更新される実施例2は、タイヤモデルのタイヤ内圧が更新されない実施例1に比べて、タイヤ内圧の実測値に近似できることが確認できた。
図13は、タイヤ走行時のタイヤ内腔の温度の実測値と、タイヤ走行時のタイヤ内腔の温度の計算値との関係を示すグラフである。図14は、タイヤ走行時のトレッド部の温度の実測値と、タイヤ走行時のトレッド部の温度の計算値との関係を示すグラフである。図15は、タイヤ走行時のビード部の温度の実測値と、タイヤ走行時のビード部の温度の計算値との関係を示すグラフである。図13〜図15に示されるように、タイヤモデルのタイヤ内圧が更新される実施例2は、タイヤモデルのタイヤ内圧が更新されない実施例1に比べて、タイヤ内腔の温度、トレッド部の温度、及び、ビード部の温度の実測値に近似できることが確認できた。
従って、タイヤモデルのタイヤ内圧が更新される実施例2は、タイヤモデルのタイヤ内圧が更新されない実施例1に比べて、計算精度を向上させることができた。