以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
本実施形態のタイヤモデルの作成方法(以下、単に「作成方法」ということがある)は、数値解析用のタイヤモデルを、コンピュータを用いて作成するためのものである。
図1は、本実施形態の作成方法、及び、後述するシミュレーション方法を実行するためのコンピュータの一例を示す斜視図である。コンピュータ1は、本体1a、キーボード1b、マウス1c及びディスプレイ装置1dを含んでいる。この本体1aには、例えば、演算処理装置(CPU)、ROM、作業用メモリ、磁気ディスクなどの記憶装置、及び、ディスクドライブ装置1a1、1a2が設けられている。また、記憶装置には、本実施形態の作成方法、及び、後述するシミュレーション方法を実行するためのソフトウェア等が予め記憶されている。
図2は、本実施形態の作成方法によってモデル化されるタイヤの一例を示す断面図である。本実施形態のタイヤ2は、例えば、乗用車用タイヤとして構成されているが、重荷重用タイヤとして構成されてもよい。本実施形態のタイヤ2は、例えば、トレッド部2aからサイドウォール部2bを経てビード部2cのビードコア5に至るカーカス6と、このカーカス6のタイヤ半径方向外側かつトレッド部2aの内部に配されるベルト層7とが設けられている。
また、タイヤ2には、ゴム部材11が設けられている。ゴム部材11は、トレッド部2aにおいてベルト層7の外側に配されるトレッドゴム11aと、サイドウォール部2bにおいてカーカス6の外側に配されるサイドウォールゴム11bと、ビード部2cに配されるクリンチゴム11cとを含んでいる。さらに、ゴム部材11は、ビードコア5からタイヤ半径方向外側にのびるビードエーペックスゴム11dと、タイヤ2のタイヤ内腔面13をなすインナーライナーゴム11eとを含んでいる。
タイヤ2の外面12は、トレッド接地端2t、2t間のトレッド接地面12a、トレッド接地面12aから凹む溝12b、クリンチゴム11cがリム14に接触するリム接触面12c、及び、トレッド接地端2tとリム接触面12cとの間のサイド面12dを含んでいる。
なお、本実施形態において、トレッド接地端2tは、予め定められた接地条件において、トレッド接地面12aのタイヤ軸方向最外端の位置を意味している。同様に、リム接触面12cも、予め定められた接地条件において特定される。予め定められた接地条件の一例としては、正規リム14Sにリム組みしかつ正規内圧を充填し、正規荷重を負荷してキャンバー角0度で平面に接地させた正規荷重負荷状態であるが、実車条件や、耐久試験条件に応じて適宜設定されうる。また、接地対象は、平面に限定されるわけではなく、例えば、円筒状のドラムであってもよい。
「正規リム」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えばJATMAであれば "標準リム" 、TRAであれば "Design Rim" 、ETRTOであれば "Measuring Rim" とする。
「正規内圧」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば "最高空気圧" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" とするが、タイヤが乗用車用である場合には180kPaとする。
「正規荷重」とは、前記規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば最大負荷能力、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "LOAD CAPACITY" である。
カーカス6は、少なくとも1枚、本実施形態では2枚のカーカスプライ6A、6Bで構成されている。カーカスプライ6A、6Bは、トレッド部2aからサイドウォール部2bを経てビード部2cのビードコア5に至る本体部6aと、この本体部6aに連なりビードコア5の廻りをタイヤ軸方向内側から外側に折り返された折返し部6bとを、それぞれ含んでいる。
カーカスプライ6A、6Bの本体部6aと折返し部6bとの間には、ビードコア5からタイヤ半径方向外側にのびるビードエーペックスゴム11dが配されている。また、カーカスプライ6A、6Bは、例えば、タイヤ赤道Ceに対して80度〜90度の角度で配列されたカーカスコードが、互いに交差する向きに重ねられている。
ベルト層7は、タイヤ半径方向内、外2枚のベルトプライ7A、7Bによって構成されている。2枚のベルトプライ7A、7Bは、ベルトコードが、タイヤ周方向に対して、例えば10度〜35度の角度で傾けて配列されている。このようなベルトプライ7A、7Bは、ベルトコードが互いに交差する向きに重ね合わされている。
次に、本実施形態の作成方法について説明する。本実施形態で作成されるタイヤモデルは、後述するシミュレーションにおいて、タイヤ2の温度に関連する物理量の計算に用いられる。このため、タイヤモデルには、例えば、熱伝導率及び熱伝達率が定義される。図3は、本実施形態の作成方法の処理手順の一例を示すフローチャートである。図4は、本実施形態のタイヤモデル及び路面モデルの一例を示す斜視図である。図5は、図4のタイヤモデルの断面図である。
本実施形態の作成方法では、先ず、コンピュータ1に、図2に示したタイヤ2をモデル化したタイヤモデル16が入力される(工程S1)。
タイヤモデル16は、図2に示したタイヤ2を、数値解析法により取り扱い可能な有限個の要素F(i)(i=1、2、…)でモデル化(離散化)することによって設定される。本実施形態のタイヤモデル16は、3次元モデルとして設定されている。数値解析法としては、例えば、有限要素法、有限体積法、差分法、又は、境界要素法を適宜採用することができる。本実施形態では、有限要素法が採用されている。
各要素F(i)には、複数個の節点24(図5に示す)が設けられる。また、各要素F(i)には、要素番号、節点24の番号、節点24の座標値、及び、各部材の材料特性(例えば、密度、ヤング率、減衰係数、損失正接tanδ、及び/又は、熱伝導率等)などの数値データが定義される。
工程S1では、先ず、図2に示したトレッドゴム11a、サイドウォールゴム11b、クリンチゴム11c、ビードエーペックスゴム11d、及び、インナーライナーゴム11eを含むゴム部材11が、要素F(i)でモデル化される。これにより、トレッドゴムモデル17a、サイドウォールゴムモデル17b、クリンチゴムモデル17c、ビードエーペックスゴムモデル17d、及び、インナーライナーゴムモデル17eを含むゴムモデル17が設定される。
さらに、工程S1では、図2に示したビードコア5、カーカスプライ6A、6B、及び、ベルトプライ7A、7Bが、要素F(i)でモデル化される。これにより、ビードコアモデル15、カーカスプライモデル18、及び、ベルトプライモデル19が設定される。
これらのゴムモデル17、ビードコアモデル15、カーカスプライモデル18、及び、ベルトプライモデル19が順次設定されることにより、3次元のタイヤモデル16が設定される。このようなモデルの設定(モデリング)は、従来の方法と同様に、例えば、加硫金型の設計データ(例えば、CADデータ)と、メッシュ化ソフトウェアとを用いることにより、容易に実施することができる。
本実施形態のタイヤモデル16は、トレッドゴム11a及びベルトプライモデル19により、図2に示したタイヤ2のトレッド部2aに対応するトレッド部モデル20が設定される。このトレッド部モデル20の表面には、タイヤ2のトレッド接地面12a(図2に示す)を再現したトレッド接地面22a、及び、溝12b(図2に示す)を再現した溝22bがそれぞれ設定されている。また、タイヤモデル16には、リム接触面12c(図2に示す)を再現したリム接触面22c、サイド面12d(図2に示す)を再現したサイド面22d、及び、タイヤ内腔面13(図2に示す)を再現したタイヤ内腔面23が設定されている。
また、熱伝達率を精度よく設定するために、本実施形態のタイヤモデル16には、後述するシミュレーションに用いられる走行速度Vs(図4に示す)が予め設定されている。タイヤモデル16及び走行速度Vsは、コンピュータ1に記憶される。
次に、本実施形態の作成方法では、コンピュータ1に、タイヤモデル16の各要素F(i)に定義される熱伝導率が入力される(工程S2)。熱伝導率は、従来の作成方法と同様に、図2に示したタイヤ2の各構成部材(本実施形態では、ビードコア5、カーカスプライ6A、6B、ベルトプライ7A、7B、及び、ゴム部材11)の熱伝導率に基づいて、タイヤモデル16の各構成部材(本実施形態では、ビードコアモデル15、カーカスプライモデル18、ベルトプライモデル19、及び、ゴムモデル17)の熱伝導率がそれぞれ定義される。これらの熱伝導率は、コンピュータ1に記憶される。
次に、本実施形態の作成方法では、コンピュータ1に、タイヤモデル16の各要素F(i)に定義される熱伝達率が入力される(熱伝達率設定工程S3)。図6は、本実施形態の熱伝達率設定工程の処理手順の一例を示すフローチャートである。
本実施形態の熱伝達率設定工程S3は、先ず、コンピュータ1が、予め定められた接地条件において、トレッド部モデル20の表面に表れる各要素F(i)を、路面に接地する第1要素と、路面に接地しない第2要素とに区分する(要素区分工程S31)。本実施形態において、第1要素及び第2要素に区分される要素F(i)は、図5に示したトレッド接地面22aを構成する要素F(i)、及び、溝22bを構成する要素F(i)である。また、本実施形態の接地条件は、タイヤモデル16を後述する路面モデル26に接触させるための条件である。図7は、本実施形態の要素区分工程S31の処理手順の一例を示すフローチャートである。
本実施形態の要素区分工程S31では、先ず、コンピュータ1に、タイヤモデル16を接触させるための路面モデルが入力される(工程S311)。図4に示されるように、路面モデル26は、例えば、単一の平面を構成する剛表面の要素Hでモデル化される。これにより、路面モデル26は、外力が作用しても変形不能に定義される。なお、路面モデル26は、例えば、ドラム試験機のように円筒状表面に形成されても良い。また、路面モデル26には、必要に応じて、段差、窪み、うねり又は轍などが設けられても良い。路面モデル26は、コンピュータ1に記憶される。
次に、要素区分工程S31では、コンピュータ1に、接地条件が設定される(工程S312)。上述したように、接地条件は、タイヤモデル16を後述する路面モデル26に接触させるための条件である。接地条件としては、従来のシミュレーション方法と同様に、例えば、3次元のタイヤモデル16の内圧条件、リム条件、負荷荷重条件、キャンバー角、又は、静摩擦係数等が適宜設定される。このような接地条件は、コンピュータ1に記憶される。
次に、本実施形態の要素区分工程S31では、コンピュータ1が、内圧充填後のタイヤモデル16を計算する(工程S313)。工程S313では、先ず、図5に示されるように、タイヤモデル16のリム接触面22c、22cが変形不能に拘束される。次に、タイヤモデル16のビード部16cの幅W1と、図2に示したリム14のリム幅とが等しくなるように、ビード部16cが強制変位される。なお、ビード部16cの強制変位は、例えば、リム14をモデル化したリムモデル(図示省略)を、タイヤモデル16のビード部16cに嵌合させてもよい。
次に、タイヤモデル16のタイヤ回転軸21(図4に示す)とビード部16cの底面とのタイヤ半径方向の距離Rsと、図2に示したリム14のリム径とが等しくなるように、ビード部16cが強制変位される。次に、タイヤモデル16には、内圧条件に相当する等分布荷重wに基づいて変形計算される。これにより、工程S313では、内圧充填後のタイヤモデル16が計算される。このような内圧充填後のタイヤモデル16は、コンピュータ1に記憶される。
タイヤモデル16の変形計算は、各要素の形状及び材料特性などをもとに、各要素F(i)の質量マトリックス、剛性マトリックス及び減衰マトリックスがそれぞれ作成される。さらに、これらの各マトリックスが組み合わされて、全体の系のマトリックスが作成される。そして、コンピュータ1が、前記各種の条件を当てはめて運動方程式を作成し、これらを単位時間T(x)(x=0、1、…)ごと(例えば、1μ秒毎)にタイヤモデル16の変形計算を行う。このような変形計算は、例えば、LSTC社製のLS-DYNAなどの市販の有限要素解析アプリケーションソフトを用いて計算できる。
次に、本実施形態の要素区分工程S31では、コンピュータ1が、荷重が定義されたタイヤモデル16を計算する(工程S314)。この工程S314では、先ず、図4に示されるように、内圧充填後のタイヤモデル16と、路面モデル26との接触が計算される。次に、本実施形態の要素区分工程S31では、コンピュータ1が、予め定められた荷重Tに基づいて、タイヤモデル16の変形を計算する。これにより、工程S314では、路面モデル26に接地したタイヤモデル16が計算される。このような路面モデル26に接地したタイヤモデル16は、コンピュータ1に記憶される。
次に、本実施形態の要素区分工程S31では、コンピュータ1が、路面モデル26に接地したタイヤモデル16に基づいて、トレッド部モデル20の表面に表れる各要素F(i)を、第1要素31及び第2要素32に区分する(工程S315)。図8は、路面モデル26に接地したタイヤモデル16のタイヤ赤道Ce(図5に示す)に沿った断面図である。
この工程S315では、トレッド接地面22a(図5及び図8に示す)を構成する要素F(i)のうち、路面モデル26に接触している要素(即ち、図8において、領域R1に配置されている要素)F(i)が、第1要素31として区分される。他方、トレッド接地面22a(図5及び図8に示す)を構成する要素F(i)のうち、路面モデル26に接触していない要素(即ち、図8において、領域R2に配置されている要素)F(i)が、第2要素32として区分される。また、図5に示した溝22bを構成する要素F(i)は、路面モデル26に接触しない。このため、溝22bを構成する要素F(i)は、第2要素32として区分される。第1要素31及び第2要素32は、コンピュータ1に記憶される。
次に、本実施形態の熱伝達率設定工程S3は、路面に接地する第1要素31に、トレッド部2aと路面との間の熱伝達率である第1熱伝達率が入力される(工程S32)。工程S32では、トレッド接地面22aの第1要素31(図8に示す)に、第1熱伝達率が入力される。第1熱伝達率は、図2に示したタイヤ2のトレッド接地面12aの路面への放熱を考慮して、例えば、実際のタイヤ2の走行試験の実測値や、タイヤモデルを用いて予め実施されたシミュレーションの計算結果に基づいて入力される。これにより、タイヤモデル16のトレッド接地面22aのうち、路面に接地する部分に限定して、トレッド部2aと路面(図示省略)との間の熱伝達率が入力される。第1要素31に入力された第1熱伝達率は、コンピュータ1に記憶される。
次に、本実施形態の熱伝達率設定工程S3は、路面に接地しない第2要素32に、トレッド部2aと空気との間の熱伝達率である第2熱伝達率が入力される(第2熱伝達率入力工程S33)。本実施形態では、トレッド接地面22aの第2要素32(図8に示す)、及び、溝22bの第2要素32(図5に示す)に、第2熱伝達率が入力される。第2熱伝達率は、図2に示したタイヤ2のトレッド接地面12a及び溝12bの空気への放熱を考慮して、例えば、実際のタイヤ2の走行試験の実測値や、タイヤモデルを用いて予め実施されたシミュレーションの計算結果に基づいて入力することができる。これにより、タイヤモデル16のトレッド接地面22aのうち、路面に接地しない部分に限定して、トレッド部2aと空気との間の熱伝達率が入力される。第2要素32に入力された第2熱伝達率は、コンピュータ1に記憶される。
このように、本実施形態のタイヤモデル16は、路面に接地する第1要素31(図8に示す)に、第1熱伝達率(即ち、トレッド部2a(図2に示す)と路面との間の熱伝達率)が入力されるため、トレッド接地面22aのうち、路面に接地する部分に限定して、トレッド部2aと路面(図示省略)との間の熱伝達率を考慮できる。さらに、タイヤモデル16は、路面に接地しない第2要素32(図5及び図8に示す)に、第2熱伝達率(即ち、トレッド部2a(図2に示す)と空気との間の熱伝達率)が入力されるため、トレッド接地面22aのうち路面に接地しない部分、及び、溝22bに限定して、トレッド部2aと空気との間の熱伝達率を考慮することができる。従って、本実施形態のタイヤモデル16は、温度に関する物理量を、精度よく計算することが可能となる。
ところで、図2に示したタイヤ2の走行時において、走行速度Vsに対応するトレッド接地面12a及び溝12bの周速度(空気の流速)が大きくなるほど、トレッド接地面12a及び溝12bの空気への放熱が大きくなる。従って、第2熱伝達率は、予め定められたタイヤモデル16の走行速度Vsに基づいて入力されるのが望ましい。
また、トレッド接地面12aの走行速度Vsに対応する周速度は、溝12bの走行速度Vsに対応する周速度に比べて大きくなる。このため、トレッド接地面22aの第2要素32(図8に示す)に設定される第2熱伝達率は、溝22bの第2要素32(図5に示す)に設定される第2熱伝達率に比べて大に設定されるのが望ましい。図9は、第2熱伝達率入力工程S33の処理手順の一例を示すフローチャートである。
第2熱伝達率入力工程S33では、先ず、トレッド部モデル20の表面(本実施形態では、図5に示したトレッド接地面22a及び溝22b)の全域と、空気との間の第2熱伝達率(以下、単に「トレッド表面全域の第2熱伝達率」ということがある。)が求められる(工程S331)。トレッド表面全域の第2熱伝達率は、例えば、タイヤモデルを用いたシミュレーションによって得られたタイヤの発熱量、材料固有の熱伝導率から求められたタイヤ内部の伝熱、及び、実際のタイヤ2(図2に示す)の走行試験での実測サーモグラフィによって計測されたタイヤ表面の温度に基づき、トレッド部2a(図2に示す)の表面の熱伝達率が同定されることによって求めることができる。このようなトレッド表面全域の第2熱伝達率は、コンピュータ1に記憶される。
次に、第2熱伝達率入力工程S33では、タイヤモデル16の走行速度Vs(図4に示す)に基づいて再計算された第2熱伝達率を、トレッド接地面22aの第2要素32(図8に示す)、及び、溝22bの第2要素32(図5に示す)に入力される(工程S332)。ここで、図2に示したタイヤ2の走行時において、トレッド接地面12a及び溝12bに接触する空気の流れは、強制対流と仮定することができる。従って、トレッド接地面22aの第2要素32に設定される第2熱伝達率(以下、単に「トレッド接地面22aの第2熱伝達率」ということがある。)、及び、溝22bの第2要素32に設定される第2熱伝達率(以下、単に「溝22bの第2熱伝達率」ということがある。)は、下記式(1)で示される熱伝達率hとレイノルズ数Reとの関係に基づいて定義されるのが望ましい。
h∝Re1/2 …(1)
レイノルズ数Reは、流体力学において、慣性力と粘性力との比で定義される無次元数である。このレイノルズ数Reは、流速(空気の速度)Vに比例することが知られている。このため、上記式(1)に基づいて、下記式(2)に示す熱伝達率hと流速Vとの関係を定義することができる。
h∝V1/2 …(2)
トレッド接地面22aの流速Vは、走行速度Vsに対応するトレッド接地面22aの周速度とみなすことができる。同様に、溝22bでの流速Vは、走行速度Vsに対応する溝22bの周速度とみなすことができる。トレッド接地面22aの周速度(流速)V及び溝22bの周速度(流速)Vは、下記式(3)に示されるように、タイヤ2の角速度ω、並びに、タイヤモデル16のタイヤ回転軸21(図4に示す)からトレッド接地面22aの第2要素32(図8に示す)又は各溝22bの第2要素32(図5に示す)までのタイヤ半径方向の距離r(図5に示す)の積で定義することができる。
V=r・ω …(3)
上記式(3)に示されるように、トレッド接地面22a及び溝22bの周速度(流速)V(図4に示す)は、角速度ω(即ち、走行速度Vs(図4に示す))に応じて比例する。このため、上記式(2)及び上記式(3)より、熱伝達率hと、角速度ωとの関係は、下記式(4)で定義することができる。
h∝ω1/2 …(4)
本実施形態では、工程S331で求められたトレッド表面全域の第2熱伝達率に基づいて、上記式(4)を満たすように、トレッド接地面22a(図8に示す)の第2熱伝達率、及び、溝22b(図5に示す)の第2熱伝達率が再計算される。トレッド接地面22aの第2熱伝達率は、トレッド接地面22aの第2要素32(図8に示す)に入力される。溝22bの第2熱伝達率は、溝22bの第2要素32(図5に示す)に入力される。
このように、トレッド接地面22aの第2熱伝達率及び溝22bの第2熱伝達率は、予め定められたタイヤモデル16の走行速度Vs(角速度ω)、熱伝達率hとレイノルズ数Reとの関係、並びに、トレッド接地面22aの第2要素32(図8に示す)又は各溝22bの第2要素32(図5に示す)の距離r(図5に示す)に基づいて定義される。これにより、第2熱伝達率入力工程S33では、トレッド接地面22aの第2熱伝達率及び溝22bの第2熱伝達率を、実際の走行速度Vsで転動する実際のタイヤ2の熱伝達率に近似させることができる。従って、トレッド接地面22aの第2熱伝達率及び溝22bの第2熱伝達率は、後述するシミュレーション方法において、タイヤ2の走行時の温度を、より精度よく計算するのに役立つ。トレッド接地面22aの第2熱伝達率及び溝22bの第2熱伝達率は、コンピュータ1に記憶される。
次に、図6に示されるように、本実施形態の熱伝達率設定工程S3は、タイヤモデル16のサイド面22d(図5に示す)を構成する各要素F(i)に、サイド面12d(図2に示す)と空気との間の熱伝達率が入力される(工程S34)。これらの熱伝達率は、タイヤ2のサイド面12dの空気への放熱を考慮して、例えば、実際のタイヤ2の走行試験の実測値や、タイヤモデルを用いて予め実施されたシミュレーションの計算結果に基づいて定義される。
また、サイド面12dと空気との間の熱伝達率は、第2熱伝達率と同様に、上記式(4)を満たすように、予め定められたタイヤモデル16の走行速度Vs(角速度ω)、熱伝達率hとレイノルズ数Reとの関係、及び、タイヤモデル16のタイヤ回転軸21(図4に示す)からサイド面22dを構成する要素F(i)までの距離r(図示省略)に基づいて定義されるのが望ましい。これにより、サイド面12dと空気との間の熱伝達率を、走行速度Vsで転動する実際のタイヤ2の熱伝達率に近似させることができる。サイド面22dを構成する各要素F(i)に設定された熱伝達率は、コンピュータ1に記憶される。
次に、本実施形態の熱伝達率設定工程S3では、タイヤ内腔面23を構成する各要素F(i)に、図2に示したタイヤ内腔面13とタイヤ内腔10との間の熱伝達率が入力される(工程S35)。さらに、本実施形態の熱伝達率設定工程S3では、リム接触面22cを構成する各要素F(i)に、図2に示したリム接触面12cとリム14との間の熱伝達率が入力される(工程S36)。これらの熱伝達率も、図2に示したタイヤ内腔面13のタイヤ内腔10への放熱、及び、リム接触面12cのリム14への放熱を考慮して、例えば、実際のタイヤ2の走行試験の実測値等に基づいて定義される。これらの熱伝達率も、コンピュータ1に記憶される。
本実施形態の作成方法では、図3に示した工程S1〜工程S3を経て、図4及び図5に示したタイヤモデル16が作成される。タイヤモデル16は、コンピュータ1に記憶される。このようなタイヤモデル16は、コンピュータ1を用いたシミュレーションにおいて、タイヤ2(図2に示す)の温度に関連する物理量の計算に用いることができる。
次に、本実施形態の作成方法によって作成されたタイヤモデルを用いたタイヤ温度のシミュレーション方法(以下、単に「シミュレーション方法」ということがある。)について説明する。本実施形態のシミュレーション方法では、コンピュータ1を用いて、タイヤモデルの温度に関連する物理量が計算される。図10は、本実施形態のシミュレーション方法の処理手順の一例を示すフローチャートである。
本実施形態のシミュレーション方法では、先ず、タイヤ2(図2に示す)が転動する路面(図示省略)を、有限個の要素でモデル化した路面モデル26(図4に示す)が、コンピュータ1に入力される(工程S4)。工程S4は、上述した作成方法の要素区分工程S31の工程S311(図7に示す)と同様の処理手順に従って、路面モデル26が入力される。なお、要素区分工程S31の工程S311で設定される路面モデル26がそのまま用いられる場合は、本工程S4は省略される。
次に、本実施形態のシミュレーション方法では、タイヤモデル16に定義される境界条件が、コンピュータ1に入力される(境界条件設定工程S5)。境界条件設定工程S5では、図4に示したタイヤモデル16を路面モデル26に転動させるための境界条件、及び、タイヤモデル16の伝熱計算に使用するための境界条件が定義される。図11は、境界条件設定工程S5の処理手順の一例を示すフローチャートである。
境界条件設定工程S5では、先ず、図4に示したタイヤモデル16を路面モデル26に接地させるための条件が設定される(工程S51)。工程S51では、上述した作成方法の要素区分工程S31の工程S312(図7に示す)と同様の処理手順に基づいて、タイヤモデル16の内圧条件、リム条件、負荷荷重条件、キャンバー角、又は、静摩擦係数等が適宜設定される。このような接地条件は、コンピュータ1に記憶される。なお、要素区分工程S31の工程S312において、タイヤモデル16に設定された接地条件がそのまま用いられる場合、本工程S51は省略される。
次に、境界条件設定工程S5では、タイヤモデル16の転動計算を実施するための条件が設定される(工程S52)。この工程S52は、従来のシミュレーション方法と同様に、例えば、図4に示した3次元のタイヤモデル16のスリップ角、又は、タイヤモデル16と路面モデル26との間の動摩擦係数等が適宜設定される。これらの条件は、コンピュータ1に記憶される。なお、本実施形態において、転動計算に用いられる走行速度Vsは、上述した作成方法で予め設定された走行速度Vsが用いられる。
次に、境界条件設定工程S5では、タイヤモデル16に、予め定められた空気(外気)の温度、及び、タイヤ内腔25(図5に示す)の温度が設定される(工程S53)。さらに、境界条件設定工程S5では、路面モデル26に、予め定められた路面の温度が設定される(工程S54)。空気の温度、タイヤ内腔25の温度、及び、路面の温度については、タイヤ2(図2に示す)の走行条件等に基づいて、適宜設定することができる。これらの条件は、コンピュータ1に記憶される。
次に、図10に示されるように、本実施形態のシミュレーション方法では、コンピュータ1が、予め定められた条件で走行しているタイヤモデル16の温度に関連する物理量を計算する(計算工程S6)。図12は、本実施形態の計算工程S6の処理手順の一例を示すフローチャートである。
本実施形態の計算工程S6では、先ず、内圧充填後のタイヤモデル16が計算される(工程S61)。さらに、計算工程S6では、内圧充填後のタイヤモデル16に、荷重が定義される(工程S62)。工程S61及び工程S62では、上述した作成方法の要素区分工程S31の工程S313及び工程S314(図7に示す)と同様の処理手順に基づいて、内圧充填後に荷重が定義されたタイヤモデル16の形状が計算される。なお、要素区分工程S31の工程S313及び工程S314で計算されたタイヤモデル16がそのまま用いられる場合、工程S61及び工程S62は省略される。
次に、本実施形態の計算工程S6では、予め定められた走行速度Vsに基づいて、路面モデル26上を転動するタイヤモデル16が計算される(工程S63)。この工程S63では、先ず、図4に示されるように、タイヤモデル16に、走行速度Vsに対応する角速度Vaが定義される。次に、工程S63では、路面モデル26に、走行速度Vsに対応する並進速度Vtが定義される。並進速度Vtは、タイヤモデル16と路面モデル26とのトレッド接地面22aでの速度である。これらの条件に基づいて、路面モデル26上を転動するタイヤモデル16が、単位時間T(x)毎に計算される。
次に、本実施形態の計算工程S6では、タイヤモデル16の走行時の発熱量が計算される(工程S64)。工程S64では、路面モデル26を転動するタイヤモデル16に基づいて、走行時の発熱量が計算される。工程S64では、従来の方法と同様に、図5に示した各ゴムモデル17において、工程S63で計算された各要素F(i)の歪と、各要素F(i)の損失正接tanδとを用いて、単位時間T(x)毎に、各要素F(i)の発熱量が計算される。tanδの初期値には、走行速度Vsに基づいて適宜設定することができる。このような発熱量の計算は、上記アプリケーションを用いることにより、容易に計算することができる。各要素F(i)の発熱量は、コンピュータ1に記憶される。
次に、本実施形態の計算工程S6では、タイヤモデルの走行時の放熱量が計算される(工程S65)。工程S65では、先ず、従来の方法と同様に、タイヤモデル16の外面及びタイヤ内腔面23にそれぞれ設定された熱伝達率、空気(外気)の温度、及び、各要素F(i)の熱伝導率に基づいて、単位時間T(x)毎に、各要素F(i)の放熱量が計算される。本実施形態の放熱量の計算は、空気(流体)をモデル化した流体シミュレーションを実施することなく、上記アプリケーションを用いて容易に計算することができる。各要素F(i)の放熱量は、コンピュータ1に記憶される。
上述したように、本実施形態のタイヤモデル16には、トレッド接地面22aのうち、路面に接地する第1要素31(図8に示す)に、第1熱伝達率(即ち、トレッド部2aと路面との間の熱伝達率)が入力されている。さらに、タイヤモデル16は、路面に接地しない第2要素32(図5及び図8に示す)に、第2熱伝達率(即ち、トレッド部2aと空気との間の熱伝達率)が入力されている。従って、本実施形態の工程S65では、トレッド部2aと路面との間の熱伝達率、及び、トレッド部2aと空気との間の熱伝達率の双方を考慮した放熱条件に基づいて、タイヤモデル16の放熱量を計算することができる。
次に、本実施形態の計算工程S6では、タイヤモデル16の発熱量、及び、放熱量に基づいて、タイヤモデル16の走行時の温度が計算される(工程S66)。この工程S66では、先ず、単位時間T(x)毎に計算されたタイヤモデル16の各要素F(i)において、発熱量と放熱量との熱収支が計算される。これにより、工程S66では、タイヤモデル20bの走行時での各要素F(i)の温度が、単位時間T(x)毎に計算される。
本実施形態のシミュレーション方法では、タイヤモデル16のトレッド接地面22aにおいて、トレッド部2aと路面との間の熱伝達率、及び、トレッド部2aと空気との間の熱伝達率の双方を考慮して、タイヤモデル16の放熱量が計算されるため、タイヤモデル16の走行時の温度を精度良く求めることができる。タイヤモデル16の走行時の温度は、コンピュータ1に記憶される。
次に、本実施形態の計算工程S6では、予め定められた転動終了時間が経過したか否かが判断される(工程S67)。この工程S67では、転動終了時間が経過したと判断された場合(工程S67で、「Y」)、計算工程S6の一連の処理が終了し、次の工程S7が実施される。他方、転動終了時間が経過していないと判断された場合(工程S67で、「N」)は、タイヤモデル16(図4及び図5に示す)の各要素F(i)の温度が更新される(工程S68)。さらに、単位時間T(x)を一つ進められ(工程S69)、工程S63〜工程S67が再度実施される。
このように、計算工程S6では、転動開始から転動終了までのタイヤモデル16の走行時の温度を、単位時間T(x)毎に記憶することができる。なお、転動終了時間は、実行するシミュレーションに応じて、適宜設定することができる。
次に、本実施形態のシミュレーション方法では、図10に示されるように、タイヤモデル16の温度に関連する物理量が、許容範囲内であるか否かが判断される(工程S7)。本実施形態の工程S7では、タイヤモデルの走行時の温度が、許容範囲内であるか否かが判断される。なお、許容範囲については、タイヤ2(図2に示す)に求められる性能に応じて、適宜設定されうる。
工程S7において、タイヤモデル16(図4及び図5に示す)の走行時の温度が許容範囲内である場合(工程S7で、「Y」)、タイヤモデル16に基づいて、タイヤ2(図2に示す)が製造される(工程S8)。他方、タイヤモデル16の走行時の温度が許容範囲内でない場合は(工程S7において、「N」)、タイヤ2が再設計された後に(工程S9)、図3に示した作成方法(工程S1〜工程S3)が実施され、さらに、本実施形態のシミュレーション方法の工程S4〜工程S7が再度行われる。このように、本実施形態のシミュレーション方法では、タイヤモデル16の走行時の温度が許容範囲内になるまで、タイヤ2が設計変更されるため、耐久性能の優れたタイヤ2を、効率良く設計することができる。
本実施形態のシミュレーション方法では、図4に示されるように、タイヤモデル16を路面モデル26に転動させて、発熱量を計算する動的解析が例示されたが、これに限定されるわけではない。例えば、タイヤモデル16を路面モデル26に転動させることなく、タイヤモデル16の走行時の発熱量を計算する静的解析でもよい。この場合、タイヤモデル16の走行時の発熱量は、タイヤモデル16のタイヤ周方向の歪変動量に基づいて計算されるのが望ましい。このような静的解析では、動的解析に比べて、計算時間を短縮しうる。なお、このような発熱量の計算は、例えば、解析アプリケーションソフトウェア( Dassault Systems 社製の ABAQUS等)を用いることによって、容易に行うことができる。
本実施形態の作成方法では、3次元のタイヤモデル16が作成される態様について例示されたが、このような態様に限定されるわけではない。例えば、タイヤ赤道Ceに沿った切断面を有する2次元のタイヤモデル36が作成されてもよい。図8では、3次元のタイヤモデル16の断面図と、2次元のタイヤモデル36の側面図とを、共通して表示している。なお、この実施形態において、前実施形態と同一の構成については、同一の符号を付し、説明を省略することがある。
この実施形態のタイヤモデル36は、前実施形態と同様の処理手順(図3に示した工程S1〜工程S3)に従って作成される。なお、タイヤモデル36には、図5に示したタイヤモデル16のサイド面22d及びリム接触面22cが設定されていない。このため、図6に示した熱伝達率設定工程S3の工程S34(即ち、タイヤモデル16のサイド面22dを構成する各要素F(i)に、サイド面12dと空気との間の熱伝達率を入力する工程)、及び、工程S36(即ち、リム接触面22cを構成する各要素F(i)に、図2に示したリム接触面12cとリム14との間の熱伝達率を入力する工程)が省略される。
この実施形態では、図6に示した熱伝達率設定工程S3の工程S31〜工程S33が実施される。これにより、図8に示されるように、タイヤモデル36は、路面に接地する第1要素31に、第1熱伝達率(即ち、トレッド部2aと路面との間の熱伝達率)が入力され、かつ、路面に接地しない第2要素32に、第2熱伝達率(即ち、トレッド部2aと空気との間の熱伝達率)が入力される。従って、この実施形態のタイヤモデル36も、前実施形態のタイヤモデル16と同様に、トレッド接地面22aのうち、路面に接地する部分に限定して、トレッド部2a(図2に示す)と路面(図示省略)との間の熱伝達率を考慮でき、また、路面に接地しない部分に限定して、トレッド部2a(図2に示す)と空気との間の熱伝達率を考慮することができるため、温度に関する物理量を、精度よく計算することが可能となる。
なお、この実施形態のタイヤモデル36を用いたシミュレーション方法において、図12に示した工程S63(路面モデル26上を転動するタイヤモデルを16計算する工程)及び工程S64(タイヤモデル16の発熱量を計算する工程)では、図4に示した3次元のタイヤモデル16が用いられる。他方、放熱量を計算する工程S65では、この実施形態の2次元のタイヤモデル36が用いられる。
また、タイヤモデルの走行時の温度を計算する工程S66では、単位時間T(x)毎に計算された3次元のタイヤモデル16の各要素F(i)の発熱量のうち、2次元のタイヤモデル36に対応する断面に配置された各要素F(i)の発熱量が特定される。そして、特定された発熱量と、2次元のタイヤモデル36の各要素F(i)の放熱量との熱収支が計算されることにより、タイヤモデル36の走行時での各要素F(i)の温度が、単位時間T(x)毎に計算されうる。
これまでの実施形態の作成方法では、図6に示した熱伝達率設定工程S3において、トレッド部モデル20の表面に表れる各要素F(i)のうち、路面に接地する第1要素31(図8に示す)に第1熱伝達率を設定し、かつ、路面に接地しない第2要素32(図5及び図8に示す)に第2熱伝達率を設定する態様が例示されたが、このような態様に限定されない。例えば、トレッド部モデル20(図5に示す)の表面に表れる各要素F(i)に、第1熱伝達率と第2熱伝達率との平均に基づいた第3熱伝達率が設定されてもよい。本実施形態では、トレッド部モデル20の表面に表れる各要素F(i)のうち、トレッド接地面22aを構成する全ての要素F(i)に、第3熱伝達率が入力される。図13は、本発明のさらに他の実施形態の熱伝達率設定工程S3の処理手順の一例を示すフローチャートである。なお、この実施形態において、これまでの実施形態と同一の構成、及び、方法等については、同一の符号を付し、説明を省略することがある。
この実施形態の熱伝達率設定工程S3では、先ず、コンピュータ1が、トレッド部モデル20の表面に表れる各要素F(i)を、路面に接地する第1要素と、路面に接地しない第2要素とに区分する(要素区分工程S31)。この要素区分工程S31の処理手順は、図7に示した処理手順と同一である。
次に、この実施形態の熱伝達率設定工程S3では、コンピュータ1が、第1要素31が路面に接地する面積Aを計算する(工程S41)。図14は、タイヤモデル16のトレッド接地面22aを路面モデル26側から見た平面図である。図14では、タイヤモデル16のトレッド接地面22aと路面モデル26とが接触する部分を、着色して表示している。
工程S41では、要素区分工程S31で設定されたタイヤモデル16に基づいて、路面モデル26(図4に示す)に接触する第1要素31の表面の合計面積が計算される。従って、面積Aは、予め定められた接地条件(即ち、要素区分工程S31の工程S312(図7に示す)で設定される接地条件)で特定される接地面積を示している。第1要素31の面積Aは、コンピュータ1に記憶される。
次に、この実施形態の熱伝達率設定工程S3では、コンピュータ1が、第2要素32が空気と接触する面積Bを計算する(工程S42)。工程S42では、要素区分工程S31で設定されたタイヤモデル16に基づいて、路面モデル26(図4に示す)に接触しない(即ち、空気と接触する)第2要素32の表面の合計面積が計算される。本実施形態では、トレッド接地面22aの第2要素32(図8に示す)の表面の合計面積が計算される。第2要素32の面積Bは、コンピュータ1に記憶される。
次に、この実施形態の熱伝達率設定工程S3では、コンピュータ1が、面積A及びBに基づいて、第3熱伝達率を計算する(工程S43)。本実施形態の第3熱伝達率は、第1熱伝達率(即ち、トレッド部2aと路面との間の熱伝達率)を面積Aで重み付けし、かつ、第2熱伝達率(即ち、トレッド部2aと空気との間の熱伝達率)を面積Bで重み付けした平均値によって定義される。なお、第2熱伝達率は、図9に示した第2熱伝達率入力工程S33と同様に、予め定められたタイヤモデル16の走行速度Vsに基づいて定義されるのが望ましい。第3熱伝達率は、例えば、下記式(5)に示される。
H3=(H1・A+H2・B)/(A+B)…(5)
ここで、
H1:第1熱伝達率
H2:第2熱伝達率
H3:第3熱伝達率
このような第3熱伝達率は、第1熱伝達率(即ち、トレッド部2a(図2に示す)と路面との間の熱伝達率)、及び、第2熱伝達率(即ち、トレッド部2aと空気との間の熱伝達率)の双方が考慮されている。しかも、第1熱伝達率は、路面に接地する部分の割合に基づいて重み付けされている。第2熱伝達率は、空気と接触する部分の割合に基づいて重み付けされている。従って、第3熱伝達率は、トレッド部2aと路面との間の熱伝達率、及び、トレッド部2aと空気との間の熱伝達率の双方が考慮されうる。
次に、この実施形態の熱伝達率設定工程S3では、トレッド部モデル20の表面に表れる各要素F(i)に、第3熱伝達率が入力される(工程S44)。図15は、トレッド部モデル20の拡大断面図である。図15では、トレッド接地面22aを構成する要素F(i)に着色している。
工程S44では、トレッド部モデル20の表面に表れる各要素F(i)のうち、トレッド接地面22aを構成する全ての要素F(i)に、第3熱伝達率が入力される。なお、溝22bを構成する各要素F(i)には、第2熱伝達率(即ち、トレッド部2aと空気との間の熱伝達率)が入力される(工程S45)。
次に、この実施形態の熱伝達率設定工程S3では、図5に示されるように、タイヤモデル16のサイド面22dを構成する各要素F(i)、タイヤ内腔面23を構成する各要素F(i)、及び、リム接触面22cを構成する各要素F(i)に、熱伝達率が入力される(工程S34〜S36)。
この実施形態の作成方法で作成されるタイヤモデル16は、これまでの実施形態のタイヤモデル16及びタイヤモデル36と同様に、図12に示した計算工程S6を有するシミュレーション方法において、トレッド部2a(図2に示す)と路面との間の熱伝達率、及び、トレッド部2aと空気との間の熱伝達率の双方を考慮して、タイヤモデルの温度に関連する物理量を計算することができる。しかも、この実施形態のタイヤモデル16は、トレッド接地面22a(図15に示す)を構成する要素F(i)について、第3熱伝達率のみに基づいて、温度に関する物理量を計算することができるため、第1熱伝達率及び第2熱伝達率の双方に基づいて計算していた実施形態に比べて、計算を簡略化することができる。
この実施形態の熱伝達率設定工程S3では、3次元のタイヤモデル16に、第1熱伝達率(即ち、トレッド部2a(図2に示す)と路面との間の熱伝達率)と、第2熱伝達率(トレッド部2aと空気との間の熱伝達率)との平均に基づいた第3熱伝達率が定義される態様が例示されたが、このような態様に限定されるわけではない。例えば、タイヤ回転軸21(図4に示す)を含む子午線断面から形成される2次元のタイヤモデル41に、第3熱伝達率が定義されてもよい。なお、この実施形態において、これまでの実施形態と同一の構成、及び、方法等については、同一の符号を付し、説明を省略することがある。図5では、3次元のタイヤモデル16の断面図と、2次元のタイヤモデル41の側面図とを、共通して表示している。
この実施形態のタイヤモデル41は、例えば、3次元のタイヤモデル16に基づいて、タイヤ回転軸21(図4に示す)を含む子午線断面から設定される。なお、タイヤモデル41は、例えば、タイヤ2の輪郭に基づいて、直接モデル化されてもよい。
この実施形態の熱伝達率設定工程S3では、図13に示した処理手順に従って実施される。なお、第3熱伝達率を入力する工程S44では、図15に示されるように、2次元のタイヤモデル41のトレッド部モデル20の表面に表れる各要素F(i)のうち、トレッド接地面22aを構成する各要素F(i)に、第3熱伝達率が定義される。溝22bを構成する各要素F(i)には、第2熱伝達率(即ち、トレッド部2aと空気との間の熱伝達率)が定義される(工程S45)。
この実施形態のタイヤモデル41は、図12に示した計算工程S6を有するシミュレーション方法において、トレッド部2aと路面との間の熱伝達率、及び、トレッド部2aと空気との間の熱伝達率の双方を考慮して、タイヤモデルの温度に関連する物理量を計算することができる。しかも、この実施形態の2次元のタイヤモデル41は、3次元のタイヤモデル16に比べて、計算対象の要素F(i)の数を大幅に小さくできるため、計算時間を短縮することができる。
なお、この実施形態のタイヤモデル41を用いたシミュレーション方法では、タイヤモデルの転動状態を計算する工程S63(図12に示す)及び発熱量を計算する工程S64(図12に示す)において、図4に示した3次元のタイヤモデル16が用いられる。他方、放熱量を計算する工程S65では、この実施形態の2次元のタイヤモデル41が用いられる。
また、タイヤモデルの走行時の温度を計算する工程S66(図12に示す)では、単位時間T(x)毎に計算された3次元のタイヤモデル16(図4に示す)の各要素F(i)の発熱量のうち、2次元のタイヤモデル41(図5及び図15に示す)に対応する断面に配置された各要素F(i)の発熱量が特定される。そして、特定された発熱量と、2次元のタイヤモデル41の各要素F(i)の放熱量との熱収支が計算されることにより、タイヤモデル41の走行時での各要素F(i)の温度が、単位時間毎に計算される。
図13に示した熱伝達率設定工程S3では、第1要素31が路面に接地する面積A、第2要素32が空気と接触する面積Bに基づいて、第3熱伝達率が定義される態様が例示されたが、このような態様に限定されるわけではない。例えば、トレッド部モデル20をタイヤ軸方向に区分した各領域において、第1要素31が路面に接地する周長さC、及び、第2要素32が空気と接触する周長さDに基づいて、第3熱伝達率が設定されてもよい。
図16は、本発明のさらに他の実施形態の熱伝達率設定工程S3の処理手順の一例を示すフローチャートである。なお、この実施形態において、これまでの実施形態と同一の構成、及び、方法等については、同一の符号を付し、説明を省略することがある。
この実施形態の熱伝達率設定工程S3では、先ず、コンピュータ1が、タイヤモデル16のトレッド部モデル20を、タイヤ軸方向に複数の領域42に区分する(工程S46)。この実施形態の工程S46では、図14及び図15に示されるように、トレッド部モデル20の表面(この実施形態では、トレッド接地面22a)を、タイヤ軸方向で隣り合う要素F(i)毎に、タイヤ周方向に連続する複数の領域42に区分している。なお、工程S46では、トレッド部モデル20を、要素F(i)毎に区分する態様に限定されるわけではなく、例えば、タイヤ軸方向で隣り合う複数の要素F(i)を一つの領域42として区分してもよい。
次に、この実施形態の熱伝達率設定工程S3では、コンピュータ1が、領域42毎に、トレッド部モデル20の表面(この実施形態では、トレッド接地面22a)に表れる各要素F(i)を、予め定められた接地条件において、路面に接地する第1要素31と、路面に接地しない第2要素32とに区分する(工程S47)。
工程S47では、先ず、図7に示した要素区分工程S31と同様に、路面モデル26に接地したタイヤモデル16に基づいて、トレッド部モデル20の表面に表れる各要素F(i)が、第1要素31及び第2要素32に区分される。この実施形態のトレッド部モデル20は、工程S46において、タイヤ軸方向に複数の領域42に予め区分されている。この複数の領域42毎に基づいて、トレッド部モデル20の表面に表れる各要素F(i)が、領域42毎に、第1要素31及び第2要素32に区分される。領域42毎に区分された第1要素31及び第2要素32は、コンピュータ1に記憶される。
次に、この実施形態の熱伝達率設定工程S3では、コンピュータ1が、第1要素31が路面に接地する周長さCを計算する(工程S48)。工程S48では、図14に示されるように、タイヤモデル16のトレッド部モデル20の領域42毎に、第1要素31が路面モデル26に接地する周長さCが計算される。従って、周長さCは、各領域42の接地長さを示している。領域42毎に計算された第1要素31の周長さCは、コンピュータ1に記憶される。
次に、この実施形態の熱伝達率設定工程S3では、コンピュータ1が、第2要素32が空気と接触する周長さD(図示省略)を計算する(工程S49)。工程S49では、タイヤモデル16のトレッド部モデル20の領域42毎に、路面に接地しない(即ち、空気と接触する)第2要素32の周長さDが計算される。領域42毎に計算された第2要素32の周長さDは、コンピュータ1に記憶される。
次に、この実施形態の熱伝達率設定工程S3では、コンピュータ1が、周長さC(即ち、第1要素31が路面モデル26に接地する周長さ)及び周長さD(即ち、第2要素32が空気と接触する周長さD)に基づいて、各領域42の第3熱伝達率を計算する(工程S50)。本実施形態の第3熱伝達率は、第1熱伝達率(即ち、トレッド部2aと路面との間の熱伝達率)を周長さCで重み付けし、かつ、第2熱伝達率(即ち、トレッド部2aと空気との間の熱伝達率)を周長さDで重み付けした平均値によって定義される。なお、第2熱伝達率は、図9に示した第2熱伝達率入力工程S33と同様に、予め定められたタイヤモデル16の走行速度Vsに基づいて定義されるのが望ましい。この実施形態の第3熱伝達率は、例えば、下記式(6)に示される。
H3=(H1・C+H2・D)/(C+D)…(6)
ここで、
H1:第1熱伝達率
H2:第2熱伝達率
H3:各領域の第3熱伝達率
このような第3熱伝達率は、第1熱伝達率(即ち、トレッド部2a(図2に示す)と路面との間の熱伝達率)、及び、第2熱伝達率(即ち、トレッド部2aと空気との間の熱伝達率)の双方が考慮されている。さらに、第1熱伝達率は、各領域42において、路面に接地する部分の周長さCの割合に基づいて重み付けされている。第2熱伝達率は、各領域42において、空気と接触する部分の周長さDの割合に基づいて重み付けされている。従って、各領域42の第3熱伝達率は、トレッド部2aと路面との間の熱伝達率、及び、トレッド部2aと空気との間の熱伝達率の双方が、より精度よく考慮されうる。
次に、この実施形態の熱伝達率設定工程S3では、コンピュータ1が、各領域42の第3熱伝達率を、領域42を構成する要素F(i)に入力する(工程S501)。図15に示されるように、工程S501では、タイヤモデル16のトレッド部モデル20の表面に表れる各要素F(i)のうち、各領域42を構成する全ての要素F(i)に、各領域42の第3熱伝達率H3がそれぞれ入力される。なお、溝22bを構成する各要素F(i)には、第2熱伝達率(即ち、トレッド部2aと空気との間の熱伝達率)が入力される(工程S45)。
次に、この実施形態の熱伝達率設定工程S3では、タイヤモデル16のサイド面22dを構成する各要素F(i)、タイヤ内腔面23を構成する各要素F(i)、及び、リム接触面22cを構成する各要素F(i)に、熱伝達率が入力される(工程S34〜S36)。
この実施形態の作成方法で作成されるタイヤモデル16は、これまでの実施形態のタイヤモデルと同様に、図12に示した計算工程S6を有するシミュレーション方法において、トレッド部2a(図2に示す)と路面との間の熱伝達率、及び、トレッド部2aと空気との間の熱伝達率の双方を考慮して、タイヤモデルの温度に関連する物理量を計算することができる。この実施形態のタイヤモデル16は、トレッド接地面22aを構成する要素F(i)について、領域42毎に設定された第3熱伝達率を考慮して温度に関する物理量を計算することができるため、第1熱伝達率及び第2熱伝達率の双方に基づいて計算していた実施形態に比べて、計算を簡略化することができる。
この実施形態の作成方法では、3次元のタイヤモデル16に、トレッド部モデル20をタイヤ軸方向に区分した各領域において、第1要素31が路面に接地する周長さC、及び、第2要素32が空気と接触する周長さDに基づいて、第3熱伝達率が設定される態様が例示されたが、このような態様に限定されるわけではない。例えば、タイヤ回転軸21(図5に示す)を含む子午線断面から形成される2次元のタイヤモデル41(図5及び図15に示す)に、各領域42の第3熱伝達率が定義されてもよい。なお、この実施形態において、これまでの実施形態と同一の構成、及び、方法等については、同一の符号を付し、説明を省略することがある。
この実施形態の熱伝達率設定工程S3では、図16に示した処理手順に従って実施される。なお、第3熱伝達率を計算する工程S50では、3次元のタイヤモデル16(図4に示す)を用いて計算された各領域42の周長さC及びDに基づいて、各領域42の第3熱伝達率が計算される。また、工程S501では、図15に示した2次元のタイヤモデル41の各領域42に、第3熱伝達率が定義される。
この実施形態の作成方法で作成されるタイヤモデル41は、前実施形態のタイヤモデルと同様に、図12に示した計算工程S6を有するシミュレーション方法において、トレッド部2a(図2に示す)と路面との間の熱伝達率、及び、トレッド部2aと空気との間の熱伝達率の双方を考慮して、タイヤモデル41の温度に関連する物理量を計算することができる。しかも、この実施形態の2次元のタイヤモデル41は、3次元のタイヤモデル16(図4に示す)に比べて、計算対象の要素F(i)の数を大幅に小さくできるため、計算時間を短縮することができる。
なお、この実施形態のタイヤモデル41を用いたシミュレーション方法では、タイヤモデルの転動状態を計算する工程S63(図12に示す)及び発熱量を計算する工程S64(図12に示す)において、図4に示した3次元のタイヤモデル16が用いられる。他方、放熱量を計算する工程S65では、この実施形態の2次元のタイヤモデル41が用いられる。
また、タイヤモデルの走行時の温度を計算する工程S66(図12に示す)では、単位時間T(x)毎に計算された3次元のタイヤモデル16(図4に示す)の各要素F(i)の発熱量のうち、2次元のタイヤモデル41(図5及び図15に示す)に対応する断面に配置された各要素F(i)の発熱量が特定される。そして、特定された発熱量と、2次元のタイヤモデル41の各要素F(i)の放熱量との熱収支が計算されることにより、タイヤモデル41の走行時での各要素F(i)の温度が、単位時間毎に計算される。
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。
図2に示すタイヤが製造され、下記の走行条件(走行速度、タイヤ内圧、及び、荷重等)において、タイヤ表面温度(トレッド接地端側のトレッド接地面の温度)が実測された(実験例)。トレッド接地面の温度の測定には、FLIR SYSTEMS社製の赤外線サーモグラフィが用いられた。
図3に示した処理手順に従って、図2に示したタイヤをモデル化したタイヤモデルが、コンピュータに設定された(実施例1、実施例2、比較例1及び比較例2)。
実施例1及び実施例2は、図7及び図13に示した処理手順に従って、トレッド部モデルの表面に表れる各要素に、第1熱伝達率(即ち、トレッド部と路面との間の熱伝達率)と、第2熱伝達率(即ち、トレッド部と空気との間の熱伝達率)との平均に基づいた第3熱伝達率が設定された。第3熱伝導率は、第1要素が路面に接地する面積A及び第2要素が空気と接触する面積Bに基づいて計算されている。なお、実施例2の第2熱伝達率は、タイヤモデルの走行速度Vsを考慮せずに設定されたが、実施例2の第2熱伝達率は、図9に示した処理手順に従って、タイヤモデルの走行速度Vsに基づいて設定された。
比較例1は、トレッド部モデルの表面に表れる各要素に、第2熱伝達率(即ち、トレッド部と空気との間の熱伝達率)のみが設定された。比較例2は、トレッド部モデルの表面に表れる各要素に、第1熱伝達率(即ち、トレッド部と路面との間の熱伝達率)のみが設定された。
図10、図11及び図12に示した処理手順に従い、実施例1、実施例2、比較例1及び比較例2のタイヤモデルを、下記の走行条件(走行速度、タイヤ内圧、及び、荷重等)に基づいて、タイヤ表面温度(トレッド接地端側のトレッド接地面の温度)が計算された。図17は、実験例、実施例1、比較例1及び比較例2のタイヤ表面温度と走行速度との関係を示すグラフである。図18は、実験例、実施例1及び実施例2のタイヤ表面温度と走行速度との関係を示すグラフである。共通仕様は、次のとおりである。
タイヤサイズ:11R22.5 16PR
リムサイズ:7.5×22.5
タイヤ内圧:700kPa
荷重:31.81kN
走行速度Vs:50km/h、60km/h、70km/h及び80km/h
外気温度:35℃
路面モデルの温度35℃
面積A:トレッド接地面の全面積に対して6.7%
面積B:トレッド接地面の全面積に対して93.3%
テストの結果、図17のグラフに示されるように、実施例1のタイヤ表面温度を、比較例1及び比較例2のタイヤ表面温度に比べて、実験例のタイヤ表面温度に近似させることができた。これは、実施例1が、比較例1及び比較例2とは異なり、トレッド部と路面との間の熱伝達率、及び、トレッド部と空気との間の熱伝達率の双方を考慮できることによるものと考えられる。
図18のグラフに示されるように、実施例2のタイヤ表面温度の増加率(タイヤ表面温度/走行速度)を、実施例1のタイヤ表面温度の増加率に比べて、実験例のタイヤ表面温度の増加率に近似させることができた。これは、実施例2が、実施例1とは異なり、タイヤモデルの走行速度Vsに基づいて第2熱伝達率が設定されたことによるものと考えられる。