JP2006228641A - イオン発生素子、イオン発生器及び除電器 - Google Patents

イオン発生素子、イオン発生器及び除電器 Download PDF

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Abstract

【目的】正イオン及び負イオンの発生効率が高いと共に発生能力のバラツキが少なく安定しており、しかも低コスト及び省スペース化が可能なイオン発生素子、それを用いたイオン発生器及び除電器を提供する。
【構成】少なくとも2つの面を有する誘電体と、該誘電体の少なくとも2つの面に配設される少なくとも2つの放電電極と、前記誘電体の内部に配設されて前記少なくとも2つの放電電極の作用を受ける誘導電極とを有してなるイオン発生素子であって、正イオンと負イオンとを誘電体の異なる面で発生させる構成であることを特徴とするイオン発生素子、
請求項1〜7のいずれかに記載のイオン発生素子の放電電極と誘導電極の間に駆動用電圧を印加し、その電位差に基づいて発生した放電により、前記誘電体の少なくとも2つの面からイオンを発生させる構成である。
【選択図】 図1

Description

本発明はイオン発生素子、イオン発生器及び除電器に関し、詳しくは、微細な電極にて発生した正イオン及び負イオンの中和を防ぎ、効率的にイオンを生成することが可能で、さらに共通する誘導電極を有することで、電極構造が簡潔に構成されたイオン発生素子及びそれを用いたイオン発生器・除電器に関する。
一般的な従来のイオン発生器・除電器は、例えば、従来型除電器の場合では、先鋭な針形状のイオン発生電極に高電圧電源より高電圧を印加して、コロナ放電を生じさせ、空気をイオン化する。針形状のイオン発生電極は、対極する接地電極との間で、コロナ放電を効率的に発生する必要があるため、ある一定の絶縁距離を確保することが必要となり、イオン発生を構成するためのスペースに制約があり、効率的なイオン発生器及び除電器の小型化に限界が生じるという課題を有していた。
また、長期間の使用により、針形状のイオン発生電極は、チリなどの堆積や物理スパッタリングによる摩耗などの影響により、コロナ放電が生じ難くなり、イオン発生効率が低下する傾向にあった。また、針形状のイオン発生電極と対向し、放電を安定させるために設けられた接地電極についても、高電圧による静電吸着及びイオン発生電極の物理スパッタリングなどにより、チリなどの堆積が生じ表面の汚れが進行し、イオン発生効率を低下させる要因ともなっていた。
したがって使用者は定期的に、針形状のイオン発生電極先鋭部の清掃または交換、さらに接地電極及びその周辺の清掃を行ない、イオン発生効率を改善するためのメンテナンス作業を強いられることになる。かかるメンテナンス作業は、先鋭部を有する構造体内部の清掃であり、さらに高電圧が印加されている部分でもあるため、作業は危険かつ煩わしいものとなっている。
そこで、イオン発生電極を針形状ではなく板状の誘電体に放電電極と誘導電極を配設した板状のイオン発生素子が開発された(特許文献1〜3参照)。
特開2003−323964 特開2003−249327 特開2004−105517
特許文献1〜3に示す技術では、誘電体を介し放電電極と誘導電極との間で高電圧電源を印加して局所的に放電させイオンを発生させるため、物理的な先鋭構造を持たないフラットな形状となっている。また局所部分での放電を利用している為、針形状のイオン発生電極に比べ、低電圧、低消費電力で同等のイオン量を発生させることが可能になり、さらに、放電電極にコーティング層なる絶縁保護層を形成することで、電極の劣化や沿面への電流リーク、更にはメンテナンス性向上が可能になるため、針形状のイオン発生電極が抱えていた問題が低減されている。
しかし、上記のような誘電体を介して形成された電極構造によるイオン発生は、比較的高周波な電力を供給しなければ電極間のインピーダンスが大きくなるため、効率が極端に低下しイオンを発生することができなくなる。
AC型電源を印加することで1つのイオン発生素子から正イオンと負イオンを周期的に交互に発生させるものでは、高周波高電圧電源を印加した場合、正イオン及び負イオンの生成時間間隔が非常に短いため、生成されたイオンが次の周期で生成される逆極性のイオンと中和し、電気的に安定となり、非常にイオンが飛び出しにくく、結果的に全体としての発生効率が減少してしまうという欠点を有している(図21参照)。
また、イオン濃度の調整が容易な高周波成分を含む直流成分を有する高電圧電源(パルス波など)を印加した場合では、正極性の直流成分を有する高電圧電源を印加することで生成された正イオンがクーロン力による反発作用で、上述の高周波高電圧電源を印加した場合に比べて、広域にイオンが飛び出し中和を防止することが可能となる。しかし、どちらか一極性のみのイオン発生となるため、両極性のイオンを必要とするイオン発生器や除電器の場合、少なくとももう一組の計2組の装置を必要とするので、コスト及び省スペースの点でのメリットが見込めない。
また、両極性のイオンを必要とする場合は、例えば、少なくとも2つのイオン発生素子を使用して、正イオン及び負イオンを発生させるが、それぞれのイオン発生素子の取り付け位置関係によってイオン発生能力にバラツキが生じ易い。即ち、夫々のイオン発生素子の距離が比較的近い場合は、生成されたイオン同士の中和により、全体としてのイオン発生効率が低下し、またイオン発生素子の距離が遠い場合は、空間的にイオンのアンバランスした箇所が生じる。そのため、用途・サイズの違うアプリケーションを製品化する際に、イオン発生素子の取り付け位置による能力差を考慮して最適条件を導き出さなくてはならないので、製品展開を考えた上でのコストへの影響は大きい。
また、省スペース化させるために2つのイオン発生素子をワンパッケージ化し、各極性の直流高電圧電源を印加することも可能であるが、正イオン発生の放電電極と負イオン発生の放電電極とで、空間的に近接しているため正イオンと負イオンの混ざり合いによる中和が増大し、全体としての発生効率が減少してしまう。また、イオン発生素子の構造をとっても、2つの素子を製造した場合と等価なため、コストメリットも見込めない(図22参照)。
そこで本発明の課題は、正イオン及び負イオンの発生効率が高いと共に発生能力のバラツキが少なく安定しており、しかも低コスト及び省スペース化が可能なイオン発生素子、それを用いたイオン発生器及び除電器を提供することにある。
上記課題を解決するための本発明は、下記構成を有する。
1.少なくとも2つの面を有する誘電体と、該誘電体の少なくとも2つの面に配設される少なくとも2つの放電電極と、前記誘電体の内部に配設されて前記少なくとも2つの放電電極の作用を受ける誘導電極とを有してなるイオン発生素子であって、正イオンと負イオンとを誘電体の異なる面で発生させる構成であることを特徴とするイオン発生素子。
2.前記誘電体が表面と裏面とを有する板状材であり、正イオンがいずれか一方の面から発生し、負イオンが他方の面から発生する構成であることを特徴とする上記1に記載のイオン発生素子。
3.前記誘導電極が1つであることを特徴とする上記1又は2に記載のイオン発生素子。
4.前記放電電極が、微細な突起を複数有する線状の導電材を用いて構成されていることを特徴とする上記1〜3のいずれかに記載のイオン発生素子。
5.前記誘導電極が、前記放電電極に対向する線状の導電材を用いて構成されていることを特徴とする上記1〜4のいずれかに記載のイオン発生素子。
6.上記1〜5のいずれかに記載のイオン発生素子の放電電極と誘導電極の間に駆動用電圧を印加し、その電位差に基づいて発生した放電により、前記誘電体の少なくとも2つの面からイオンを発生させる構成であることを特徴とするイオン発生器。
7.発生したイオンを気流によって送出する送出手段が設けられていることを特徴とする上記6に記載のイオン発生器。
8.正イオンを発生する面と負イオンを発生する面の両面が、等量の気流環境下となるように、気流方向に直行する両側に前記両面が振り分けられるように誘電体を気流方向に沿って配設する構成を有することを特徴とする上記7に記載のイオン発生器。
9.発生する正イオン及び負イオンの少なくとも一方のイオン量を変化させるイオン濃度調整手段が設けられていることを特徴とする上記6〜8のいずれかに記載のイオン発生器。
10.上記6〜9のいずれかに記載のイオン発生器によって除電する構成であることを特徴とする除電器。
請求項1に示す発明によれば、正イオン及び負イオンの発生効率が高いと共に発生能力のバラツキが少なく安定しており、しかも低コスト及び省スペース化が可能なイオン発生素子が得られる。
特に、正イオンと負イオンの両イオンを同時に発生させるには、従来では少なくとも2つのイオン発生素子を用意しなければならないが、本発明によれば、1つのイオン発生素子で両イオンを発生させることが可能である。従って、イオン発生器や除電器における実装スペースが従来の約1/2程度の省スペース化が可能となり、また、イオン発生素子のメンテナンス工数においても、素子の交換作業や清掃の工数が、従来の約1/2程度に簡略化され、低コスト化が可能となる。
請求項2に示す発明によれば、誘電体が表面と裏面とを有する板状材であり、正イオンがいずれか一方の面から発生し、負イオンが他方の面から発生する構成により、正イオンと負イオンとが空間的に分離された状態で発生するため、中和(相殺)が低減されるためイオン発生効率が極めて良好である。
しかも、正イオンと負イオンを生成する位置関係が常に一定しているため、イオン発生の能力についても一定であり、イオン発生素子のそれぞれの極性による干渉影響による能力差が及び難い。したがって、用途・サイズの違うアプリケーションを製品化する際にも、最適条件の導き出しが簡略化され、製品展開が容易で低コストそしてスピーディーに製品提供することが可能となる。
請求項3に示す発明によれば、誘導電極を1つとしたことにより、即ち、正イオンを発生する放電電極と負イオンを発生する放電電極の両イオンの放電電極の作用を受ける誘導電極を共通化したことにより、低コスト化、量産化、省スペース化などが可能となる。
請求項4に示す発明によれば、放電電極が微細で複数であることにより、小型省スペース化や低電力化に寄与する。
請求項5に示す発明によれば、誘導電極が放電電極に対向する線状の導電材を用いて構成されていることにより、放電電極に対する誘導電極の位置関係が一定となり安定したイオン発生が得られる。
請求項6に示す発明によれば、請求項1〜5に示すイオン発生素子を有するイオン発生器により、正イオン及び負イオンの発生効率が高いと共に発生能力のバラツキが少なく安定しており、しかも低コスト及び省スペース化が可能なイオン発生器が得られる。
請求項7に示す発明によれば、発生したイオンを気流によって送出する送出手段が設けられているので、発生したイオンを容易に送出することができる。
請求項8に示す発明によれば、気流方向に直行する両側に正イオン発生面と負イオン発生面が振り分けられるように誘電体を気流方向に沿って配設する構成により、正イオン発生面と負イオン発生面とを等量の気流環境下とすることができ、しかも両面は誘電体によって分割された空間で発生し、気流によって送出されるので、発生後の中和が少なく発生効率が高い。
請求項9に示す発明によれば、発生する正イオン及び負イオンの少なくとも一方のイオン量を変化させるイオン濃度調整手段が設けられている構成により、イオンバランスの調整が容易である。
請求項10に示す発明によれば、請求項6〜9に示すイオン発生器によって除電するので、正イオン及び負イオンの発生効率が高いと共に発生能力のバラツキが少なく安定しており、しかも低コスト及び省スペース化が可能であり、安定した効率的な除電を行うことができる。
以下、本発明のイオン発生素子の詳細について添付図面に基づき説明する。
図1は本発明のイオン発生素子の一実施例を示す構成図、図2は図1の回路図、図3は本発明のイオン発生素子の他の実施例を示す構成図、図4は本発明のイオン発生素子の構造例を示す斜視図及び断面図、図5は本発明のイオン発生素子の他の構造例を示す斜視図及び断面図、図6〜図8は放電電極と誘導電極の誘電体への配設例を示す平面図及び断面図、図9は放電電極の突起形状の複数例を示す説明図、図10は誘導電極の形状の複数例を示す説明図、図11は従来のイオン発生素子と本発明の多面イオン発生素子のイオン濃度の比較図である。
本発明に係るイオン発生素子は、少なくとも2つの面を有する誘電体と、該誘電体の少なくとも2つの面に配設される少なくとも2つの放電電極と、前記誘電体の内部に配設されて前記少なくとも2つの放電電極の作用を受ける誘導電極とを有してなるイオン発生素子であって、正イオンと負イオンとを誘電体の異なる面で発生させる構成を有するものである。
即ち、図1に示すように、イオン発生素子1は、表面A及び裏面Bの2つの面を有する誘電体2の、表面Aには放電電極1aを、裏面Bには放電電極1bを微細加工により形成し、誘電体2の内部には、放電電極1a・1bに対向して誘導電極3を配設する。誘導電極3は、放電電極1a・1bの両方の作用を共通に受けるものであり誘電体2に囲まれるように、即ち、誘電体2内部に埋設・埋込されている。該誘導電極3は、一つのイオン発生素子1に対して1つであってもよいし、複数であってもよいし、更には、1つの誘導電極3が複数のイオン発生素子1に対して配設される構成であってもよい。
イオン発生素子1は、誘電体2自体を境界として空間を表面A側と裏面B側との少なくとも2つに分けることができる。従って、表面Aから正イオンを、裏面Bから負イオンを発生させる、即ち、正イオンと負イオンとを誘電体2の異なる面(表面Aと裏面Bとで)で発生させると、それぞれ生成されたイオンは、誘電体2自体によって空間的に分離されるため、正イオンと負イオンとの混ざり合いによる中和(相殺)を抑制することができる。
表面A・裏面Bで正イオン・負イオンを発生させることにより、従来の高周波高電圧電源を印加して正イオンと負イオンを周期的に発生させていたものや、2つのイオン発生素子をワンパッケージ化して正イオン・負イオンを発生させていたものとは異なり、イオン発生効率がよい。また、正イオンと負イオンの両極性を必要とする場合に、従来のそれぞれのイオン発生素子を用意した構成に比して、実装に必要なスペースが約1/2程度と省スペース化が可能となり、イオン発生素子のメンテナンス工数においても、素子の交換作業や清掃の工数が約1/2程度に簡略化され、結果として低コスト化が可能である。
また、イオン発生素子1は、放電電極1a・1bと誘導電極3とが一体構造により構成されているため、正イオンと負イオンを生成する位置関係を常に一定とすることができるため、イオン発生能力が一定であり、イオン発生素子のそれぞれの極性による干渉影響による能力差が及び難い。従って、用途・サイズの違うアプリケーションを製品化する際にも、最適条件の導き出しが簡略化され、製品展開が容易で低コスト化できるばかりでなく、スピーディーな製品提供が可能である。
図1のイオン発生素子1は電源4を、高周波成分を含む直流成分を有する高電圧電源(以下、DC型電源という。)としており、回路の具体的一例として図2に示す構成を有する。図2に示す回路例では、4は電源、4Aは正極高電圧回路、4Bは負極高電圧回路、4C・4Dは発信回路、4Eは出力制御回路、4Fは電源回路を各々示す。図2に示す実施例によれば、出力電圧のONとOFFを制御する従来からある制御方式によりイオンバランスを調整することが用意に可能である。尚、イオンバランスの調整手段としては、これ以外にも例えば、出力電流制御、電源のバイアス制御、誘導電極のバイアス制御など従来から知られている制御方式を採用することができる。また、イオンバランスの精度が要求される用途においては、イオン発生状態をセンシングするなどしてその精度を確保する方法も採ることが可能である。
また、本発明のイオン発生素子1は、DC型電源に限らず図3に示すようにAC型電源を用いてもよく、AC型電源であってもDC型電源と同様、正イオン及び負イオンの発生効率が高いと共に発生能力のバラツキが少なく安定しており、しかも低コスト及び省スペース化が可能である。イオンバランス調整手段についても、DC型電源の場合と同様に公知公用の制御方式を用いることで容易に調整することが可能である。尚、図3中の符号は、前記図1で説明した符号の部材・構成を示す。
本発明のイオン発生素子1の構造例としては図4{(a)は斜視図、(b)は断面図を表す。}に示す構造例が挙げられる。
図4の例では、板状の誘電体2の表面A及び裏面Bのそれぞれ2箇所に放電電極1a・1bを形成し、誘電体2で囲むように誘導電極3を形成している。
尚、図1、図3及び図4に示す例では、板状の誘電体3の二つの面(表面Aと裏面B)に放電電極1a・1bを配設しているが、本発明は2つの面と2つの放電電極に限らず、3以上の面に3以上の放電電極を配設してもよい。但し、正イオンと負イオンのバランスをとるために、面の数は2で割ることのできる偶数であることが好ましく、放電電極の数も正イオンを発生させる放電電極1aと負イオンを発生させる放電電極1bとは同数であることが好ましい。例えば図5{(a)は斜視図、(b)は断面図を表す。}は、支柱状の誘電体2の4つの面(A・A’・B・B’)に4つの放電電極(1a・1a・1b・1b)を配設した態様を示す。図5に示す態様でも、一つの誘導電極3によって4つの放電電極(1a・1a・1b・1b)の作用を共通に受けることができる。
放電電極1a・1b及び誘導電極3の誘電体2への配設例としては、例えば、前述の図1や図4に示した板状のイオン発生素子1では、図6〜図8に示すような態様も採ることができる。図6{(a)は平面図、(b)は断面図を表す。}は誘導電極3をU字形に配設した態様であり、図7{(a)は平面図、(b)は断面図を表す。}は放電電極1a・1bを誘導電極3を中心に対角線状に斜めにずらして配設した態様であり、図8{(a)は平面図、(b)は断面図を表す。}は誘導電極3を山字形に配設し、該誘導電極3の山字の谷部分の表面Aと裏面bに放電電極1a・1a・1b・1bを配設した態様である。
本発明のイオン発生素子1に用いられる放電電極1a・1bの材質としては、導電性を有するものであれば特に制限するものではなく、例えば、ステンレスやタングステン、導電性セラミックスなどがある。放電電極1a・1bは放電により劣化、溶融などし難い材料が望ましい。放電電極1a・1bの材質や使用用途などに応じて、表面コーティングなどの絶縁保護層で放電電極1a・1bを覆うようにして形成し保護すれば、放電電極1a・1bの耐久寿命を延ばすことも可能なり、同時に放電電極1a・1bからの発塵の低減及びメンテナンスの簡略化も可能となる。表面コーティングの材料としては、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)薄膜コーティングやエポキシ系の絶縁材などがある。
放電電極1a・1bの形状としては、微細な突起を複数有する線状のものが望ましく、微細な突起は0.01mm以上10mm以下であることが好ましい。突起の形状は、イオン発生可能な形状であれば特に制限されるものでなく、例えば、図9の(a)に示すような形状でもよいし、その他の波状、円状、格子状等の形状でもよい。イオン発生効率は、放電電極1a・1bの形状依存に比べ、対極する誘導電極3と放電電極1a・1bの微細な突起物との距離及びその突起形状による関係において、最も影響することがわかっている。なお、その形状は電界集中が有効に生じ易い形状であれば、特に制限するものではなく、例えば、図9(b)〜(g)に示す形状が挙げられる。尚、図9の(b)〜(g)は部分拡大図である。
本発明のイオン発生素子1に用いられる誘電体2は、放電電極1a・1bをそれぞれ各面(表面A・裏面B等)に形成し、誘導電極3を囲むように形成した構成となっている。各面に形成されている放電電極1a・1bと、囲むように形成されている誘導電極3との距離は、誘電体2の厚みによって制御され、誘電体2の誘電率によってその厚みを決定するが、0.01〜5mmの範囲が好ましい。また、その形状は、板状、円状、支柱状、円柱状など上記構造を有するものであれば、その形状に特に制限はない。誘電体2の材質としては、アルミナ、ガラス、マイカなどの誘電材料が挙げられる。成形に際しては、誘電材料を積層することで材料のピンホール等による絶縁破壊を抑制することができ、絶縁耐圧等を向上させることができる。
誘電体2への放電電極1a・1bの形成は、公知公用の手段を採ることもできるが、本発明ではインクジェット印刷やシルク印刷、スクリーン印刷によって形成することが好ましい。
放電電極1a・1bは、従来の針形状のイオン発生電極とは異なり物理的尖鋭部を持たない構造であり、イオン発生効率がよいことで、低電圧での駆動が可能となったため、メンテナンスの際等にイオン発生素子1に触れてしまった際の危険性が低減された。
また、放電電極1a・1bと誘導電極3の距離を、誘電体2の厚みで制御することで、例えば、放電電極1aと誘導電極3の距離に対し、放電電極1bと誘導電極3の距離を長くすることで、両者から発生するイオン量を調整することも可能となる。正イオンと負イオンの発生に必要なエネルギーに相違があることは知られており、従来までは印加電圧源の調整を施す必要があったが、誘電体2の厚みの制御によるイオン発生のレベルの調整も可能となる。
誘導電極3は、誘電体2に囲まれたように形成されており、それぞれの放電電極1a・1bに対向し形成されている共通な電極として作用している。誘導電極3の材料としては、導電性を有するものであれば特に制限するものではなく、例えば、ステンレスやタングステン、導電性セラミックス等が挙げられる。
誘導電極3の形状としては、放電電極1a・1bに対向した電極構造であれば、その形状については特に制限されるものでなく、例えば、図10(a)〜(d)に示す種々の形状を採ることができる。
以上の構成を有するイオン発生素子1によれば、放電電極1a・1bと誘導電極3の電極間に駆動用電圧を印加し、その電位差に基づいて発生した放電により、正イオンがいずれか一方の面から発生、負イオンが他方の面から発生することにより、正イオンと負イオンとが空間的に分離された状態で発生するため、中和(相殺)が低減され、イオン発生効率がよい。しかも、正イオンと負イオンを生成する位置関係が常に一定しているため、イオン発生の能力についても一定であり、イオン発生素子のそれぞれの極性による干渉影響による能力差が及び難い。したがって、用途・サイズの違うアプリケーションを製品化する際にも、最適条件の導き出しが簡略化され、製品展開が容易で低コスト化できるばかりでなく、スピーディーな製品提供が可能となる。
図11は、本発明のイオン発生素子1と、従来の2つのイオン発生素子をワンパッケージ化したもののイオン濃度の比較図である。図11から明らかなように、本発明のイオン発生素子はイオン発生効率が従来のものに比して良好である。
尚、電圧印加式のコロナ放電を利用したイオン発生システムにおいては、イオン濃度を高めると同時に、オゾン濃度が高まり問題となる場合がある。本発明のイオン発生素子においてもそれは例外ではないものの、放電電極1a・1bと誘導電極3との作用において、面と面の電界集中を防止し、電極間の電流値を抑える(電極間の容量結合を小さくするなど)ことで防止できることが分かっている。
次に、本発明に係るイオン発生器について説明する。
本発明のイオン発生器は、上記説明したイオン発生素子の放電電極と誘導電極の間に駆動用電圧を印加し、その電位差に基づいて発生した放電により、前記誘電体の少なくとも2つの面からイオンを発生させる構成である。
イオン発生器は、発生したイオンを気流によって送出する送出手段が設けられていることが好ましく、この場合、図12に示すように、正イオンを発生する面Aと負イオンを発生する面Bの両面が、等量の気流環境下となるように、気流方向(矢符a・b)に直行する両側に前記両面A・Bが振り分けられるように誘電体2を気流方向に沿って配設する構成を有することが好ましい。かかる構成によって、正イオンと負イオンとが空間的に分離された状態で発生され、中和(相殺)が低減された良好な発生効率を維持した状態で、振り分けられた気流によって、正イオンと負イオンとが運ばれることになる。従って、イオン送出効率が高い。
また、イオン発生器には、発生する正イオン及び負イオンの少なくとも一方のイオン量を変化させるイオン濃度調整手段が設けられていることが好ましい。
次に、上記イオン発生器によって除電する除電器について添付図面に基づき説明する。上記イオン発生器の具体的な構成については、下記する除電器の説明を参照できる。
図13は本発明の除電器の一実施例を示す斜視図、図14は脱着構成を有するイオン発生素子の一例を示す斜視図、図15は図14のイオン発生素子の一例を示す構成図、図16は本発明の除電器の他の実施例を示す斜視図、図17は本発明の除電器の他の実施例を示す斜視図、図18は脱着構成を有するイオン発生素子の他の例を示す斜視図、図19は図18のイオン発生素子の一例を示す構成図、図20は本発明に係る除電器の除電特性を示すグラフである。
先ず、図13について説明すれば、図13に示す実施例は、上記の本発明のイオン発生素子によりイオンを発生する本発明のイオン発生器を備え、発生したイオンによって除電を行う除電器10である。
除電器10には、イオン発生素子1、該イオン発生素子1により発生したイオンを送出する送出手段であるプロペラファン11が設けられている。尚、電源部については図示を省略する。尚また、除電器10にはイオンバランスやイオン濃度を調整する調整手段が設けられていることが好ましい。
除電器10のサイズ・形態・配設するイオン発生素子1の数・プロペラファン11の送出能力等、各種構成等は使用目的や設置場所等、用途に応じて適宜設定される。図13に示す除電器10は、イオンの送出手段にプロペラファン11を使用したファンタイプ除電器に分類されるものである。
本実施例では、イオン発生素子1は、プロペラファン11の中心を基点に、回転角90°間隔にプロペラファン11の外周付近に4つ設けてあり、生成されたイオンが効率よく送出するためにプロペラファン11の前面に配置した構成を有している。イオン発生素子1の除電器10への取付手段は、発生するイオンを効率よく送出できるようにプロペラファン11の気流中にイオン発生素子1を配設し、取付部分は気流外に設けることが好ましい。尚、脱着手段としては、図14に示すような電極ソケット12への装着による取付が一例として挙げられる。この場合、電極ソケット12をプロペラファン11の気流下の外周縁部に設ければ、取付部分が気流を妨げることがなくなる。
除電器10における、イオン発生素子1を複数個配置する場合の配置方法は、正イオン発生面と負イオン発生面が同一空間内にならないよう設置する(同極面が互いに向き合うように配置する)場合において、最も良好な除電性能が得られる。除電時間の距離特性は図20に示すように、正イオンと負イオンが同一の空間に存在する例(1)の場合には、イオン発生部からの距離が離れるに従って次第にイオンバランスが崩れるために負電圧の減衰が正電圧の減衰を大きく上回った。一方、同極面が互いに向き合うようにイオン発生素子1を配設した例(2)の場合、60cm離れた地点においても良好なイオンバランスであり、正負ほぼ同じ除電時間が得られた。
尚、上記正イオン発生面と負イオン発生面が同一空間内にならないよう設置する具体例としては、例えば、図13において、上側2個のイオン発生素子1の上面側を各々正イオン発生面(放電電極1aを有する面)とすると共に、下側2個のイオン発生素子1の下面側を各々正イオン発生面(放電電極1aを有する面)とすればよい。また、図16においては、上側イオン発生素子1の右面側と右側イオン発生素子1の上面側とを各々正イオン発生面(放電電極1aを有する面)とすると共に、下側イオン発生素子1の左面側と左側イオン発生素子1の下面側とを各々正イオン発生面(放電電極1aを有する面)とすればよい。
イオン発生素子1は、図14に示すように電極ソケット12への装着による脱着可能な構成とすることにより、交換・取り外しての清掃が容易となりメンテナンス性が向上する。脱着可能なイオン発生素子1としては、例えば図15{(a)は表面A側、(b)は断面、(c)は裏面B側を表す。}に示すような構成を採ることができる。図14及び図15において、13は放電電極接点、14は誘導電極接点である。
イオン発生素子1の配設位置は、図13に示す構成に限らず、例えば、図16に示すような他の構成を採ることもできる。図16に示す除電器10は、イオン発生素子1がプロペラファン11の中心軸に近い位置から放射状に4つフィンガーガード15に正面側をカバーされた状態で設けられている。
本発明の除電器は、図13及び図16に示すファンタイプ除電器に限らず、例えば、図17に示すような構成を採ることもできる。図17に示す除電器10は、イオンの送出手段に圧縮エアーを使用したバータイプ除電器に分類されるものである。
即ち、例えば、少なくとも1つのイオン発生素子1・・・を直線上に配置し、該イオン発生素子1・・・を境にして、両側には圧縮エアーの吹き出し口16・・・が等間隔に設けられており、イオン発生素子1・・・で生成されたイオンが、エアー流速により遠方に送出される構成を有する。尚、同符号は同部材・構成を示す。
図16及び図17に示す除電器10に用いられるイオン発生素子1は、除電器10への取付方向が図13に示す除電器10とは異なるため、図18に示す脱着方向を有し、図19に示す構成を有する。
図13、図16及び図17に示すような本発明の除電器は、気流の内部に効率的にイオン発生素子1を配置することができるため、気流による送出が非常に効率よく行なわれる。なお、除電対象が比較的近距離であれば、圧縮エアーによる送出源を使用しなくとも除電が可能なため、気流を使用しない除電器を構成することも可能となる。
本発明の除電器において、イオンバランス(イオン濃度)を調整する手段としては、出力電圧のONとOFFを制御するような制御方式を使用することが好ましいが、出力電流制御、電源のバイアス制御、誘導電極のバイアス制御などの他の制御方式によりイオンバランスの調整を行ってもよい。また、イオンバランスの精度が要求される用途においては、イオン発生状態をセンシングするなどしてその精度を確保する方法を採ることが好ましい。
また、上記に記載のイオンバランスの重要性と同様に必須事項となるメンテナンス性の簡略化についても、図14及び図18の例のようにイオン発生素子1を電極ソケット12による脱着式の構成とすれば、交換、清掃作業が容易となりメンテナンス性が向上する。
本発明の除電器10に用いられるイオン発生素子1は、前述したように低電圧での駆動が可能であることから危険性が低減されているため、除電器10の前面や表面側にイオン発生素子1が露出させた構造を採ることも可能である。イオン発生素子1を露出させた構造を採ることにより、メンテナンス時の交換や清掃が容易であるだけでなく、発生するイオンを遮る構造材が減るため、イオン発生効率がより向上する。
本発明のイオン発生素子の一実施例を示す構成図 同上の回路図 本発明のイオン発生素子の他の実施例を示す構成図 本発明のイオン発生素子の構造例を示す斜視図及び断面図 本発明のイオン発生素子の他の構造例を示す斜視図及び断面図 放電電極と誘導電極の誘電体への配設例を示す平面図及び断面図 放電電極と誘導電極の誘電体への配設例を示す平面図及び断面図 放電電極と誘導電極の誘電体への配設例を示す平面図及び断面図 放電電極の突起形状の複数例を示す説明図 誘導電極の形状の複数例を示す説明図 従来のイオン発生素子と本発明の多面イオン発生素子のイオン濃度の比較図 イオン発生素子の気流方向に対する配設位置を説明する説明図 本発明の除電器の一実施例を示す斜視図 脱着構成を有するイオン発生素子の一例を示す斜視図 図14のイオン発生素子の一例を示す構成図 本発明の除電器の他の実施例を示す斜視図 本発明の除電器の他の実施例を示す斜視図 脱着構成を有するイオン発生素子の他の例を示す斜視図 図18のイオン発生素子の一例を示す構成図 本発明に係る除電器の除電特性を示すグラフ 1つのイオン発生素子で正イオンと負イオンを周期的に交代で発生させる従来のイオン発生素子の一例を示す説明図 2つのイオン発生素子をワンパッケージ化して正イオンと負イオンを同時に発生させる従来のイオン発生素子の一例を示す説明図

Claims (10)

  1. 少なくとも2つの面を有する誘電体と、該誘電体の少なくとも2つの面に配設される少なくとも2つの放電電極と、前記誘電体の内部に配設されて前記少なくとも2つの放電電極の作用を受ける誘導電極とを有してなるイオン発生素子であって、正イオンと負イオンとを誘電体の異なる面で発生させる構成であることを特徴とするイオン発生素子。
  2. 前記誘電体が表面と裏面とを有する板状材であり、正イオンがいずれか一方の面から発生し、負イオンが他方の面から発生する構成であることを特徴とする請求項1に記載のイオン発生素子。
  3. 前記誘導電極が1つであることを特徴とする請求項1又は2に記載のイオン発生素子。
  4. 前記放電電極が、微細な突起を複数有する線状の導電材を用いて構成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のイオン発生素子。
  5. 前記誘導電極が、前記放電電極に対向する線状の導電材を用いて構成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のイオン発生素子。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載のイオン発生素子の放電電極と誘導電極の間に駆動用電圧を印加し、その電位差に基づいて発生した放電により、前記誘電体の少なくとも2つの面からイオンを発生させる構成であることを特徴とするイオン発生器。
  7. 発生したイオンを気流によって送出する送出手段が設けられていることを特徴とする請求項6に記載のイオン発生器。
  8. 正イオンを発生する面と負イオンを発生する面の両面が、等量の気流環境下となるように、気流方向に直行する両側に前記両面が振り分けられるように誘電体を気流方向に沿って配設する構成を有することを特徴とする請求項7に記載のイオン発生器。
  9. 発生する正イオン及び負イオンの少なくとも一方のイオン量を変化させるイオン濃度調整手段が設けられていることを特徴とする請求項6〜8のいずれかに記載のイオン発生器。
  10. 請求項6〜9のいずれかに記載のイオン発生器によって除電する構成であることを特徴とする除電器。
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