JP2006227179A - 電子写真感光体用スプレー塗布装置および電子写真感光体の製造方法 - Google Patents

電子写真感光体用スプレー塗布装置および電子写真感光体の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 スプレー塗布方式により電子写真感光体を製造する際、スプレーガンの先端部分が塗布液によって汚れず、被塗布体上に均一な塗膜からなる感光層を安定して形成できるスプレー塗布方式の電子写真感光体の製造装置と製造方法を提供する。
【解決手段】 スプレーガンから塗布液を噴霧して被塗布体上に感光層を塗布形成する電子写真感光体用のスプレー塗布装置において、該ノズルには塗布液を給送する流路と吐出口を有すると共に該エアキャップと該塗料ノズルとの間には霧化エアを給送するエア給送路と排出口を有し、さらに、塗布液が噴霧される際、該スプレーガンのノズルの外側壁面の最先端から10μm〜20μm該ノズル先端壁面側で、かつ、該ノズル先端壁面から10μm〜20μm離れたエリアにおける気流の向きが、該スプレーガンの中心軸を該エリアまで平行移動したときの該中心軸とのなす角度(θ)で、−20°以上15°以下である。
【選択図】 図4

Description

本発明は、電子写真感光体用スプレー塗布装置とそれを用いた電子写真感光体の製造方法に関する。
電子写真感光体は、一般に基体表面に感光体材料を塗布して形成される。塗布方法の一つである“スプレー塗布方式”は、他の塗布方法の一つである“ディッピング(浸漬)方式”に比べて塗布液の使用量が少なくて済み、特に液寿命の短い塗布液に対して有効である。また、長尺、大径ドラムの感光体の塗布にもよく使われている。しかし、このスプレー塗布方式は、スプレーガンのノズルの小さい孔から塗布液を吐出させ、霧化エアーで微粒子化されたスプレーミストをワーク(被塗布体)に付着させて成膜する方法であるため、ノズル先端部分が塗布液によって汚れ、乾燥した液カスが付着しやすいという問題がある。
ノズル先端部分に液カスが付着すると、スプレーミストの粒径分布や噴霧パターンが変化し、塗膜ムラが発生する。さらに液カスが堆積して脱落し、塗膜中の異物となる場合もある。そのため、スプレーガンを使用した電子写真感光体の製造においては、塗膜の均一性を高めるために、ノズル先端部分に付着した液カスを頻繁に清掃するという対策がとられている。しかしながら、この対策は生産性の低下を伴う。さらに、この清掃により、スプレーガンの状態が微妙に変わることも、塗布安定性が低下することもある。
一方、近年、複写機やプリンター等に用いられる電子写真感光体は、高画質化により、非常に高い均一性が求められている。特にフルカラーデジタルプリンターでは、塗膜ムラが画像異常を発生させる原因となりやすいため、製造工程では生産性を犠牲にして、均一塗膜を作製しているのが現状である。
従来、このような均一な塗膜を得る方法として、感光体用基体の主走査方向のスプレー錐を前記感光体用基体の副走査方向へのスプレー錐の広がりより大きくし、噴霧パターンの形状を長軸/短軸比が2/1となるようにして感光体用基体表面に感光体塗料をスプレーする方法(例えば、特許文献1参照)、あるいは、スプレーノズル吐出口中心と感光体用基体の中心軸とを含む平面への投射ベクトルと、該スプレーノズルの移動方向ベクトルとが形成する角度を0°を越え90°未満に設定して、スプレーノズルを中心軸と平行に移動させつつスプレー塗布する方法(例えば、特許文献2参照)が提案されている。
しかし、上記提案の方法では、いずれもスプレーガンのノズル先端部分が塗布液によって汚れると液カス付着が発生し、液カスが付着すると噴霧パターンが変化するため、塗膜ムラが発生して均一な塗膜形成ができなくなる。
また、均一な塗膜を得る方法として、沸点が120℃以上、160℃以下である溶媒を含有する塗布液を用い、塗布環境を温度20℃以下、湿度40%RH以下に調整し、スプレー塗布する方法(例えば、特許文献3参照)、あるいは、塗布される感光層がエア圧力0.147MPa以下である低圧エアスプレーによりスプレー塗布する方法(例えば、特許文献4参照)、あるいは、円筒状の導電性基体を軸線方向に移動させつつ回転させながら、固定されたスプレーノズルから電子写真感光層を塗布する方法(例えば、特許文献5参照)などが提案されている。
しかし、これらの方法では、スプレーガンのノズル先端に液カスなどの異物が付着すると、スプレーミスト粒径分布が変化する。このため、ガン先を清掃せずに連続して塗工作業を継続した場合には、塗布ムラが発生して均一な塗膜形成ができなくなる。
また、霧化用空気に溶剤を混入させることによってノズル先端を常に溶剤で洗い、塗料がノズル先端に付着、固化しないようにして均一な塗膜を得る方法が提案されている(例えば、特許文献6参照)。しかし、この方法では、塗布液の霧化が不十分になり、塗膜の均一性が劣る。
また、感光層と表面保護層が連続した電子写真感光体の感光層に表面保護層を積層する工程として表面保護層の1秒あたりの形成体積V(cm3/s)が1.0×10-3<V<1.0×10-2のスプレー条件で塗膜を得る方法が提案されている(例えば、特許文献7参照)
しかし、上記方法では、ノズル先端に異物が付着すると噴霧パターンが変化して、単位時間当たりの液付着量が不均一になり、塗膜ムラが発生する。
一方、スプレーガンのノズル先端汚れを無くす方法として、塗膜形成後、スプレーガンの先端にキャップをあてがい、洗浄液をノズルからエアー噴出孔を通じて導入し、ノズル先端の内外面を洗浄する方法が提案されている(例えば、特許文献8参照)。
しかし、この方法の場合、洗浄のための治具が必要となるほか、さらに洗浄時間を要するため生産性を落とす。
あるいは、スプレーガン先端部分に付着する水系エマルジョンの固化と変質を防止するため、霧化エアノズルの口径を塗料ノズルの内径の4〜10倍にする方法(例えば、特許文献9参照)、また、塗料噴射口の先端に塗料が付着するのを阻止して、粒子状に固化した塗料が飛翔しないようにする方法が提案されている(例えば、特許文献10参照)。
しかし、上記方法では、いずれもスプレーガンもしくは塗料噴射口先端部分に塗料が付着する阻止方法としては効果が十分でなく、塗料付着を完全に無くすことはできない。このため、付着してしまった塗料の影響を受けて、形成される塗膜の均一性が劣るという問題が生じる。
特公平5−45026号公報 特開2000−221707号公報 特開2000−75511号公報 特開平11−253872号公報 特開2003−122035号公報 特開平11−128788号公報 特開2003−98695号公報 特開2003−211064号公報 特開平8−238450号公報 特開平11−114458号公報
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、スプレー塗布方式により電子写真感光体を製造する際、スプレーガンの先端部分が塗布液によって汚れず、被塗布体上に均一な塗膜からなる感光層を安定して形成できるスプレー塗布方式の電子写真感光体の製造装置と製造方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明は、第1の態様として、塗布液供給手段と、霧化エア供給手段と、該塗布液と霧化エアとがそれぞれ給送されるように構成された円錐台状のノズルと中空円錐台状のエアキャップと、該ノズルの流路に配備されたニードルとを有するスプレーガンとを備え、該スプレーガンから塗布液を噴霧して被塗布体上に感光層を塗布形成するようにした電子写真感光体用のスプレー塗布装置において、該ノズルには塗布液を給送する流路と吐出口を有すると共に該エアキャップと該塗料ノズルとの間には霧化エアを給送するエア給送路と排出口を有し、さらに、塗布液が噴霧される際、該スプレーガンのノズルの外側壁面の最先端から10μm〜20μm該ノズル先端壁面側で、かつ、該ノズル先端壁面から10μm〜20μm離れたエリアにおける気流の向きが、該スプレーガンの中心軸を該エリアまで平行移動したときの該中心軸とのなす角度(θ)で、−20°以上15°以下となるようにしたことを特徴とする電子写真感光体用スプレー塗布装置を提供するものである。
請求項1の電子写真感光体用スプレー塗布装置によれば、本発明の構成のスプレーガンは上記エリアにある気流の向きが特定の角度に調整されることから、ノズル先端部分の外周壁に塗布液が回りこまないなど、ノズル先端部分の塗布液による汚れがなくなり、それにより液カスが発生しないため、被塗布体上に塗布ムラのない均一な塗膜を安定して形成することができる。
本発明の第1の態様においては、前記中心軸とのなす角度(θ)が−5°以上5°以下であることが好ましい。
請求項2の電子写真感光体用スプレー塗布装置によれば、上記角度が−5°以上5°以下であることから、上記の角度よりもスプレーパターンの広がりが小さくなり、被塗布体に対する付着効率も向上することができる。
本発明の第1の態様の上記のいずれの構成においても、前記気流の向きが下記(1)〜(6)のいずれかによって調整されていることが好ましい。
(1)前記スプレーガンのノズル外側のテーパーの角度(a)を28°以上70°以下とする。
(2)前記スプレーガンのエアキャップ先端部分の厚み(b)を0.1mm以上0.5mm以下とする。
(3)前記スプレーガンのニードルの先端部の角度(c)を90°以上120°以下とする。
(4)前記前記スプレーガンのノズルの内径(d)を0.5mm以上0.8mm以下とする。
(5)前記スプレーガンのニードルの先端位置(e)を、塗布時、ノズルの先端位置より0.1mm以上1.0mm以下突出させる。
(6)前記スプレーガンのエアキャップの先端位置(f)をノズルの先端位置に対して−0.1mm以上0.2mm以下前面とする。
請求項3の電子写真感光体用スプレー塗布装置によれば、上記スプレーガンのノズル外側のテーパーの角度(a)、エアキャップ先端部分の厚み(b)、ニードルの先端部分の角度(c)、ノズルの内径(d)、スプレーガンのニードルの先端位置(e)、エアキャップの先端位置(f)のいずれによっても、気流の向きが好適に調整され、ノズル先端部分の外周壁に塗布液が回りこまず、ノズル先端部分が汚れないため、液カスが発生しない。
また、上記目的を達成するため、本発明は、第2の態様として、塗布液供給手段と、霧化エア供給手段と、該塗布液と霧化エアとがそれぞれ給送されるように構成された円錐台状のノズルと中空円錐台状のエアキャップと、該ノズルの流路に配備されたニードルとを有するスプレーガンとを備えた電子写真感光体用スプレー塗布装置を用い、該スプレーガンから塗布液を噴霧して被塗布体上に感光層を塗布形成する電子写真感光体の製造方法であって、該ノズルに設けた流路と吐出口から塗布液を給送、吐出すると共に該エアキャップと該ノズルとの間に設けた空隙と排出口から霧化エアを排出して塗布液を噴霧する際、該スプレーガンのノズルの外側壁面の最先端から10μm〜20μm該ノズル先端壁面側で、かつ、該ノズル先端壁面から10μm〜20μm離れたエリアにおける気流の向きを、該スプレーガンの中心軸を該エリアまで平行移動したときの該中心軸とのなす角度(θ)で、−20°以上15°以下に調整して塗布液を被塗布体上に噴霧することを特徴とする電子写真感光体の製造方法を提供するものである。
請求項4の電子写真感光体の製造方法によれば、上記電子写真感光体用スプレー塗布装置を用いて被塗布体上に感光層を形成することから、塗布作業時に液カスの頻繁な清掃作業を必要としないため、生産性を犠牲にすることがなく、電子写真感光体の製造において低コスト化を図ることができる。
本発明の第2の態様においては、前記供給される霧化エアの圧力がスプレーガンに導入される直前において、0.01MPa以上0.5MPa以下であることが好ましい。
請求項5の電子写真感光体の製造方法によれば、上記製造方法において、上記供給される霧化エアの圧力がスプレーガンに導入される直前において、0.01MPa以上0.5MPa以下あることから、塗布液の微粒子化が十分で、かつ、ミストがワークに激しくぶつかるようなことは無いため、塗膜ムラが発生しない。
本発明の第2の態様の上記のいずれの方法においても、前記スプレーガンから霧化エアによって噴霧される塗布液微粒子の粒径分布が、被塗布体に付着する直前において、1μm以上30μm以下(測定基準:D90μm)であることが好ましい。
請求項6の電子写真感光体の製造方法によれば、上記製造方法において、スプレーガンから霧化エアによって噴霧される塗布液微粒子の粒径分布が、被塗布体に付着する直前において、1μm以上30μm以下(測定基準:D90μm)であることから、ミストはワークにソフトに付着するため、塗膜ムラが起きず、また、ミストが密に堆積し、均一な塗膜を形成することができる。
また、本発明の第2の態様の上記のいずれの方法においても、前記塗布液の粘度が0.01MPa・s以上5MPa・s以下であることが好ましい。
請求項7の電子写真感光体の製造方法によれば、上記製造方法において、塗布液の粘度が0.01MPa・s以上5MPa・s以下あることから、塗布液の微粒子化が十分で液カスは発生しにくい。
本発明によれば、スプレー塗布方式により電子写真感光体を製造する際、スプレーガンの先端部分が塗布液によって汚れず、被塗布体上に均一な塗膜からなる感光層を安定して形成できるスプレー塗布方式の電子写真感光体の製造装置と製造方法を提供できる。
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。
図1は本発明における電子写真感光体用スプレー塗布装置の概略構成図を示す。
図1に示すように、本発明のスプレー塗布装置1は、塗布液供給手段2と、霧化エア供給手段3と、該塗布液2Aと霧化エア3Aとがそれぞれ給送されるように構成されたスプレーガン4とを備えている。
スプレーガン4は、ノズル5とエアキャップ6とから構成され、スプレーガンの先端に塗布液の液カスが付着しても、安定したスプレーミストが噴霧できるように相互の位置関係や寸法が好的に調整されている。そして、塗布液供給手段2から、粘度や溶媒の蒸気圧などが調整された塗布液が供給されると共に、霧化エア供給手段3から、圧力調整(流量調整によって制御可能)された霧化エアが供給され、スプレーガン4から塗布液がスプレーミストとして噴霧されるようになっている。
スプレーガン4の構造は、例えば、図2(a)の概略断面図に示すような設計によって構成されている。
図2(a)において、スプレーガン4は、上記のように円錐台状のノズル5と中空円錐台状のエアキャップ6から構成されている。ノズル5には塗布液2Aを供給する流路7と吐出口8が設けられている。また、エアキャップ6とノズル5との間には霧化エア3Aを供給する空隙9と排出口10が設けられている。
すなわち、塗布液供給手段2(図1)から供給された塗布液2Aは、流路7を経由して吐出口8から吐出されると共に、霧化エア供給手段3(図1)から供給された霧化エア3Aが、エアキャップ6とノズル5との間に設けられた空隙9を経由して排出口10から排出され、これによって塗布液が微粒子とされて噴霧される。
また、図2(b)はスプレーガン4の先端部分を示す概略断面図で、図に示すようにノズル5の流路7にはニードル5nが位置調整可能に配備されている。図は塗布液吐出時の状態を示すもので、塗布液はニードル5nが前方に出ることによって、塗布液の吐出が停止される。
本発明は上記のような構成のスプレーガンにより被塗布体上に塗布液を塗布して電子写真感光体を製造する際、スプレーガンを構成する円錐台状のノズルの先端部付近の気流の向きを調整することにより、スプレーガンの先端部分が塗布液によって汚れず、液カスの付着による塗布ムラなどを発生することなく、被塗布体上に均一な塗膜を安定して形成できることを見出したものである。
図3はノズル先端部分の霧化エアの供給によって起こる気流(霧化エアと大気の混合されたもの)の流れを示すものである。矢印は気流の向きを示しており、気流は霧化エアの供給方向に従うだけでなく、ノズル先端壁面付近では該先端壁面に沿った上向きのものなどもあり、このような気流のうち、図中、丸印をつけた気流の向きを調整することによって、ノズル先端部分の塗布液による汚れを著しく抑制することができる。
上述の丸印をつけた気流の位置は、図4に示すように、ノズルの外側壁面の最先端から10μm〜20μm内側(ノズルの先端壁面側)で、かつ、該ノズル先端壁面から10μm〜20μm離れたエリアにある。そして、このようなエリアにある気流の向きを、図5に示すように、スプレーガンの中心軸を基準として、該中心軸を該エリアまで平行移動したときの該中心軸とのなす角度θで示すと、−20°以上15°以下の範囲に調整することである。該中心軸とのなす角度θがさらに好ましい範囲は−10°以上5°以下であり、特に好ましい範囲は−5°以上5°以下である。
このような気流の向きは前記スプレーガンのニードル、ノズル、エアキャップの構造や位置関係を調整することによって得られる。
図6に示すように、前記スプレーガンのノズル外側のテーパーの角度(ノズルの外側壁面の開角)(a)が28°以上70°以下とするのが好ましい。このようなテーパー角度(a)にすることによって、ノズル先端部分の外周壁に塗布液が回りこまず、ノズル先端部部が汚れないため、液カスが発生しない。
テーパー角度(a)のさらに好ましい範囲は、30°以上60°以下であり、特に好ましいのは30°以上50°以下である。
また、図7に示すように、前記スプレーガンのエアキャップ先端部分の厚み(すなわち、霧化エア排出口10のノズル先端部11に対面するエアキャップ先端部12の内面幅)(b)を0.1mm以上0.5mm以下とすることが好ましい。このような厚み(b)にすることによって、ノズル先端部分の外周壁に塗布液が回りこまず、ノズル先端部部が汚れないため、液カスが発生しない。
エアキャップ先端部分の厚み(b)のさらに好ましい範囲は、0.1mm以上0.4mm以下であり、特に好ましい範囲は0.1mm以上0.3mm以下である。
また、図8に示すように、前記スプレーガンのニードルの先端部分の角度(c)が90°以上120°以下とすることが好ましい。
ニードルの先端部分の角度(c)のさらに好ましい範囲は、100°以上120°以下であり、特に好ましい範囲は110°以上120°以下である。
また、図9に示すように、前記スプレーガンのノズルの内径(d)が0.5mm以上0.8mm以下とすることが好ましい。
ノズルの内径(d)のさらに好ましい範囲は、0.5mm以上0.7mm以下であり、特に好ましい範囲は0.5mm以上0.6mm以下である。
また、図10に示すように、前記スプレーガンのニードルの先端位置(e)が、塗布時、ノズル最先端位置から0.1mm以上1.0mm以下、突き出ることが好ましい。すなわち、ニードルの先端位置とノズル最先端位置との間隔を0.1mm以上1.0mm以下とすることによって、ノズル先端部分の外周壁に塗布液が回りこまず、ノズル先端部部が汚れないため、液カスが発生しない。
上記間隔のさらに好ましい範囲は、0.1mm以上0.5mm以下であり、特に好ましい範囲は0.2mm以上0.5mm以下である。
また、図11に示すように、前記スプレーガンのエアキャップの先端位置(f)が、ノズルの先端位置に対して−0.1mm以上0.2mm以下前面となるように構成されていることが好ましい。すなわち、エアキャップの先端位置とノズルの先端位置との間隔を−0.1mmから0.2mmとすることによって、ノズル先端部分の外周壁に塗布液が回りこまず、ノズル先端部部が汚れないため、液カスが発生しない。
上記間隔のさらに好ましい範囲は0mm以上0.2mm以下であり、特に好ましい範囲は0mm以上0.1mm以下である。
次に、本発明の電子写真感光体を製造する方法について、図を参照して説明する。
図12は、本発明の電子写真感光体用スプレー塗布装置を用いて被塗布体(ワーク)上に塗布液をスプレー塗布する場合の塗布システムの構成の一例を示す模式図である。
図12において、ワーク51は、塗布ブース52内に回転自由に配置されており、一方、スプレーガン53は、ワーク51の軸線方向に沿って移動可能にガイドレール54に取り付けられている。塗布ブース52には、スプレーガン53から噴霧された余分のスプレーミストを排除するため、クリーンエア供給口55と排気口56とが設けられている。そして、塗布液供給手段57の塗布液タンク58から塗布液がポンプ59によって供給されると共に、霧化エア供給手段60の霧化エアタンク61から霧化エアがポンプ62によって供給され、塗布液が微粒子化されスプレーガン53からワーク51上に噴霧される。
ここで、電子写真感光体の製造方法において用いるスプレーガンのノズル、エアキャップ、ニードルの相互の位置関係や寸法を、前述した気流の向きを特定の角度範囲に調整するべく設定する。すなわち、ノズル外側のテーパーの角度(a)、エアキャップ先端部分の厚み(b)、ニードルの先端部分の角度(c)、ノズルの内径(d)、ニードルの先端位置(e)、エアキャップ最先端位置(f)を好適の範囲に設定する。
このように調整したスプレーガンを用いることによって、塗布作業時に液カスの頻繁な清掃作業を必要とすることなく、均一な塗膜を継続して製造することができる。
さらに、上記好適とされたいずれかのスプレーガンを備えたスプレー塗布装置を用いて電子写真感光体を製造する場合、供給される霧化エアの圧力がスプレーガンに導入される直前において、0.01MPa以上0.5MPa以下であることが好ましい。
霧化エアの圧力が0.01MPaより少ないと、塗布液の微粒子化が不十分になり、塗膜ムラが発生する。また、圧力が0.5MPaより大きいと、ミストがワークに激しくぶつかるため、塗膜ムラが発生する。なお、霧化エアの圧力は、流量を調整することによって制御することができる。
圧力のさらに好ましい範囲は、0.01MPa以上、0.3MPa以下であり、特に好ましい範囲は、0.01MPa以上、0.2MPa以下である。
また、同様に上記好適とされたいずれかのスプレーガンを備えたスプレー塗布装置を用いて、電子写真感光体を製造する場合、塗布液に用いる溶媒を混合溶媒とし、この混合溶媒には、少なくとも20℃において蒸気圧が0.133〜26.7kPaである溶媒を含有させ、その含有量を10重量%以上、70重量%以下とすることが好ましい。
すなわち、低蒸気圧溶媒の含有量が10重量%より少ないと、ミスト中の溶媒の蒸発が速すぎて、ワーク上でのレベリングが不十分になり、塗膜ムラが発生する。また、含有量が70重量%より多いと、塗膜の指触乾燥に時間がかかって生産性が落ちるばかりではなく、塗布環境の影響を受けやすく塗膜ムラが発生しやすい。
含有量のさらに好ましい範囲は、10重量%以上、60重量%以下であり、特に好ましい範囲は、10重量%以上、50重量%以下である。
上記溶媒は、20℃において蒸気圧が0.1〜20mmHgであればよいが、塗布液に用いられる各種樹脂を溶解しやすく、混合される他の溶媒との相溶性が良好で、塗布形成された塗膜の乾燥過程で表面状態が悪化(ユズ肌などの発生)しないものが好ましい。このような溶媒としては、例えば、メチルエチルケトンや、テトラヒドロフランの混合溶媒としてシクロヘキサノンを組み合わせて用いるのが好ましい。
さらにまた、上記好適とされたいずれかのスプレーガンを備えたスプレー塗布装置を用いて電子写真感光体を製造する場合、スプレーガンから霧化エアによって噴霧されるスプレーミストの粒径分布が、被塗布物に付着する直前において1μm以上、30μm以下であることが好ましい。
ここで、粒径分布は、D90μmを測定基準として表したものであり、D90μmの意味は、標記された粒径の値以下の粒子が全体の体積の90%を占めることを表す。
上記粒径分布が1μmよりも小さいと、スプレーミストが周囲の気流に乗って舞い易く、被塗布物への付着効率が低下しやすい。また、塗布ブースの清掃など、塗布環境の管理や制御が難しく、コスト高になりやすい。また、粒径分布が30μmよりも大きいと、ミストがワークにぶつかったときに衝撃が大きく、塗布ムラが発生しやすい。粒径分布が30μm以下であれば、ミストはワークにソフトに付着するため、塗膜ムラが発生しない。
また、ミストが密に堆積するため、均一塗膜を作製することができる。
粒径分布のさらに好ましい範囲は、1μm以上、20μm以下であり、特に好ましい範囲は、1μm以上、10μm以下である。
加えて、上記好適とされたいずれかのスプレーガンを備えたスプレー塗布装置を用いて電子写真感光体を製造する場合、塗布液の粘度が0.01MPa・s以上、5MPa・s以下であることが好ましい。
すなわち、塗布液の粘度は低すぎても、高すぎても塗布液の微粒子化ができず、スプレー塗布することができない。さらに5MPa・sよりも大きいと、微粒子化の効率が悪く、スプレーガン先端に液カスが生成しやすくなる。5MPa・s以下であれば、微粒子化が効率よく起こるため、液カスは発生しにくくなる。
塗布液粘度のさらに好ましい範囲は、0.05MPa・s以上、4MPa・s以下であり、特に好ましい範囲は、0.1MPa・s以上、3MPa・s以下である。
次に、本発明の電子写真感光体用スプレー塗布装置を用いた製造方法により製作される電子写真感光体について説明する。なお、以降の説明によって、本発明における電子写真感光体を限定するものではない。
電子写真感光体の構成としては、基板(基体)上に、下引き層、電荷発生層、電荷輸送層、保護層などを順次設けたものが例として挙げられる。以下本例の構成を参考にして各層を具体的に説明する。
まず、電子写真感光体用の基体としては、アルミニウム、銅、鉄、亜鉛、ニッケルなどの金属材料のドラムシート;あるいは、紙、プラスチックまたはガラス上に、アルミニウム、銅、金、銀、白金、パラジウム、チタン、ニッケル−クロム、ステンレス、銅−インジウムなどの金属を蒸着した材料、もしくは酸化インジウム、酸化スズなどの導電性金属酸化物を蒸着した材料、あるいは金属箔をラミネートした材料、またはカーボンブラック、酸化インジウム、酸化スズ−酸化アンチモン粉、金属粉、ヨウ化銅などを結着樹脂に分散し塗工することによって導電処理した材料など各種のドラム状、シート状、あるいはプレート状の公知の材料を用いることができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
電子写真感光体用の基体(導電性支持体)の表面は、必要に応じて画質に影響のない範囲で各種の処理を行うことができる。例えば、表面に酸化処理、薬品処理、着色処理等を行うことができる。また、導電性支持体と電荷発生層との間に下引き層を設けることができる。
この下引き層を設けることによって、帯電時において、導電性支持体から感光層への電荷の注入が阻止されると共に、感光層を導電性支持体に対して一体的に接着保持せしめる、いわゆる接着層としての作用や、あるいは導電性支持体からの反射光侵入を防止する作用等の効果が得られる。
この下引き層に用いられる樹脂としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール樹脂、水溶性ポリエステル樹脂、ニトロセルロースまたはカゼイン、ゼラチンなど公知の樹脂が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
下引き層の厚さは、0.01〜10μm、好ましくは0.3〜7μmが適当である。
電荷発生層(キャリア発生層)としては、例えば、モノアゾ染料、ジスアゾ染料、トリスアゾ染料などのアゾ系色素、ペリレン酸無水物、ペリレン酸イミドなどのペリレン系色素、インジゴ、チオインジゴなどのインジゴ系色素、アンスラキノン、ピレンキノンおよびフラパンスロン類などの多環キノン類、キナクリドン系色素、ビスベンゾイミダゾール系色素、インダンスレン系色素、スクエアリリウム系色素、金属フタロシアニン、無金属フタロシアニンなどのフタロシアニン系顔料、ピリリウム塩色素、チアピリリウム塩色素とポリカーボネートから形成される共晶錯体等、公知の各種電荷発生物質(キャリア発生物質)が用いられる。これらのキャリア発生物質を適当なバインダー樹脂と共に溶媒中に溶解あるいは分散して塗布液とし、下引き層上に塗布して電荷発生層を形成することができる。なお、必要によりさらに電荷輸送物質(キャリア輸送物質)を加えた塗布液として
用いることができる。
上記電荷発生物質を樹脂中に分散させる方法としては、ボールミル分散法、後ライター分散法、サンドミル分散法などがある。分散の際、電荷発生物質は体積平均粒径で5μm以下、好ましくは2μm以下、最適には0.5μm以下の粒子サイズにすることが有効である。本発明で用いる電荷発生層の膜厚は、一般的には0.1〜5μm、好ましくは0.2〜2μmが適当である。
次に、電荷輸送層は、適当な結着樹脂(バインダー)中に電荷輸送物質を含有させ、これを塗布して形成される。
電荷輸送物質として、2,5−ビス(p−ジエチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾールなどのオキサジアゾール誘導体、1,3,5−トリフェニル−ピラゾリン、1−〔ピリジル−(2)〕−3−(p−ジエチルアミノスチリル)−5−(p−ジエチルアミノフェニル)ピラゾリンなどのピラゾリン誘導体、トリフェニルアミン、スチリルトリフェニルアミン、ジベンジルアニリンなどの芳香族、第3級アミノ化合物、N,N′−ジフェニル−N,N′−ビス(3−メチルフェニル)−1,1−ビフェニル−4, 4′−時アミンなどの芳香族第3級ジアミノ化合物、3−(4′−ジメチルアミノフェニル)−5,6−ジ−(4′−メトキシフェニル)−1,2,4−トリアジンなどの1,2,4−トリアジン誘導体、4−ジエチルアミノベンズアルデヒド−1,1−ジフェニルヒドラゾンなどのヒドラゾン誘導体、2−フェニル−4−スチリル−キナゾリンなどのキナゾリン誘導体、6−ヒドロキシー2,3−ジ−(p−メトキシフェニル)−ベンゾフランなどのベンゾフラン誘導体、p−(2,2−ジフェニルビニル)−N,N−ジフェニルアニリンなどのα−スチルベン誘導体、“Journal of Imaging science”29:7〜10(1985)に記載されているエナミン誘導体、N−エチルカルバゾールなどのカルバゾール誘導体、ポリ−N−ビニルカルバゾールなどのポリ−N−ビニルカルバゾールおよびその誘導体、ポリ−γ−カルバゾリルエチルグルタナートおよびその誘導体、さらには、ピレン、ポリビニルピレン、ポリビニルアントラセン、ポリビニルアクリジン、ポリ−9−ビフェニルアントラセン、ピレン−ホルムアルデヒド樹脂、エチルカルバゾールホルムアルデヒド樹脂などの公知の電荷輸送物質を用いることができるが、これらに限定されるものではない。また、これらの電荷輸送物質は単独あるいは2種以上混合して用いることができる。
電荷輸送層に用いられるバインダーとして、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、スチレン−アルキッド樹脂、ポリ−N−ビニルカルバゾールなどの公知の樹脂を用いることができるが、これらに限定されるものではない。また、これらの結着樹脂は単独あるいは2種以上混合して用いることができる。
電荷輸送物質とバインダーとの配合比(重量比)は10:1〜1:5が好ましい。本発明で用いる電荷輸送層の膜厚は一般的には5〜50μm、好ましくは10〜30μmが適当である。
その他、本例における電子写真感光体のおいては、保護層として上記電荷輸送層の上に電荷輸送物質と顔料を適当なバインダー中に含有させて形成することができる。
顔料としては、アルミナ、酸化チタン等の無機顔料の他、有機顔料を使用してもよい。全固形分中の顔料の重量配合率は5〜30%が好ましい。厚みは一般的には2〜10μm、好ましくは4〜8μmが適当である。なお、保護層は使われる複写機、プリンター等によって設ける必要がない場合もある。
以下実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
[実施例1]
以下に示す組成で、下引き層用、電荷発生層用、電荷輸送層用の各塗布液を調製し、下記塗工条件で、それぞれスプレー塗布によって積層形成して電子写真感光体を作製した。なお、各層の形成は10本づつ連続スプレー塗布して行い、順次各層を積層して電子写真感光体10本を作製した。
[下引き層の形成]
<下引き層用塗布液の調製>
アルキッド樹脂(ベッコゾール1307−60−EL:大日本インキ化学工業社製)15重量部、メラミン樹脂(スーパーベッカミンG−821−60:大日本インキ化学工業社製)10重量部をメチルエチルケトン320重量部に溶解し、これに酸化チタン粉末(タイペールCR−EL:石原産業社製)90重量部を加えてボールミルで12時間分散した。
得られた溶液を容器に取り出し、シクロヘキサノン140重量部で稀釈し、下引き層用塗布液とした。
<下引き層用塗布液の塗布条件>
上記調製した下引き層用塗布液を、図12に示した模式図の塗布システムを適用し、本発明の電子写真感光体用スプレー塗布装置を用いてφ170mm、長さ410mmのニッケルシームレスベルト(被塗布体(ワーク))上にスプレー塗布して下引き層を形成した。
ここで、スプレー塗布装置としては、図13の概略断面図に示す構成のものを用いた。
図13における各符号の説明、該符号部分の角度または寸法およびその他の条件を下記に示す。角度および寸法の測定にはキーエンス製デジタルマイクロスコープを用いた。
各符号の説明および該符号部分の角度または寸法:
a:ノズル5の外側テーパー角度=46°
b:エアキャップ6の先端厚み=0.2mm
c:ニードル5nの先端角度=120°
d:ノズル4の内径=0.5mm
e:ニードル5nの先端位置=ノズル先端位置5eに対して0.2mm
f:エアキャップ3の先端位置=ノズル先端位置5eに対して0.1mm
t1:ノズル5とニードル5nとの隙間=0.01mm
t2:ノズル先端の肉厚=0.2mm
t3:エアキャップ6とノズル5の隙間の最小部分=0.3mm
その他の条件:
スプレーガンの材質:超硬合金
霧化エア流量:10L/min
上記条件でニッケルシームレスベルト上に下引き層用塗布液をスプレー塗布した後に140℃20分間乾燥し、膜厚が8.2μmの下引き層を形成した。
[電荷発生層の形成]
<電荷発生層用塗布液の調製>
次に、ポリビニルブチラール樹脂(エスレックHL−S:積水化学工業社製)5重量部をメチルエチルケトン150重量部に溶解し、これに下記構造式(1)で示すトリスアゾ顔料10重量部を加え、ボールミルで48時間分散後、さらにシクロヘキサノン210重量部を加えて3時間分散を行った。得られた溶液を容器に取り出し、メチルエチルケトン600重量部で稀釈して電荷発生層用塗布液とした。
Figure 2006227179
<電荷発生層用塗布液の塗布条件>
上記調製した電荷発生層用塗布液を、下引き層の場合と同様に図12の塗布システムと本発明の電子写真感光体用スプレー塗布装置を用い、下引き層を形成した被塗布体(ワーク)上にスプレー塗布して電荷発生層を形成した。
ここで使用したスプレー塗布装置のスプレーガンは、下引き層の場合と同じであるが、該符号部分の角度、寸法およびその他の条件を下記の通り一部変更した。
a=46°、b=0.2mm、c=120°、d=0.5mm、e=ノズル先端位置に対して0.2mm、f=ノズル先端位置に対して0.2mm、t1=0.01mm、t2=0.2mm、t3=0.3mm、スプレーガンの材質:超硬合金、霧化エア流量:25L/min
上記条件でワーク(下引き層)上に電荷発生層用塗布液をスプレー塗布し、膜厚が0.5μmの電荷発生層を形成した。
[電荷輸送層の形成]
<電荷輸送層用塗布液の調製>
次に、テトラヒドロフラン160重量部に、ビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂10、シリコーンオイル(KF−50:信越化学工業社製)0.002重量部を溶解し、これに下記構造式(2)の電荷輸送物質8重量部を加えて溶解させ、シクロヘキサノン160重量部で稀釈し電荷輸送層塗布液を調製した。
Figure 2006227179
<電荷輸送層用塗布液の塗布条件>
上記調製した電荷輸送層用塗布液を、下引き層の場合と同様、図12の塗布システム構成と本発明の電子写真感光体用スプレー塗布装置を用い、電荷輸送層を形成した。
ここで使用したスプレー塗布装置のスプレーガンは、下引き層の場合と同じであるが、該符号部分の角度、寸法およびその他の条件を下記の通り一部変更した。
a=46°、b=0.2mm、c=120°、d=0.5mm、e=ノズル先端位置に対して0.2mm、f=ノズル先端位置に対して−0.1mm、t1=0.02mm、t2=0.2mm、t3=0.3mm、スプレーガンの材質:超硬合金、霧化エア流量:20L/min
上記条件でワーク(電荷発生層)上に電荷輸送層用塗布液をスプレー塗布した後、160℃で20分間乾燥して膜厚が25μmの電荷輸送層を形成した。
以上のようにして連続塗布により、電子写真感光体を10本作製した。
本実施例における各塗布液のシクロヘキサノン含有量と各塗布液の粘度を下記表1に示す。また、各層の塗布時における気流の角度とノズル先端部分の汚れ、ワークに対する塗布液の付着効率(%)を下記表2に示す。また、下記表3に各層の塗布時における霧化エアの圧力とスプレーガンから噴霧される微粒子の粒径分布、各層の膜厚のおける最大膜厚差を示す。
表1の粘度は、TV−30型粘度計(トキメック社製)により測定した。また、表3の粒径分布は、レーザー光散乱方式粒度分布測定装置LDSA−3400A(東日コンピュータアプリケーションズ社製)により測定したものであり、σは、噴霧された微粒子の粒径分布(D90μm)の標準偏差を表す。最大膜厚差は、電子マイクロメータ(アンリツ社製)により測定した。
Figure 2006227179
Figure 2006227179
Figure 2006227179
[実施例2]
実施例1と同様にして下引き層用、電荷発生層用、電荷輸送層用の各塗布液を調製し、実施例1における塗布条件のニードルの先端位置eをノズル先端位置に対して0.4mmに変えた以外は実施例1と同様にして膜厚8.2μmの下引き層、膜厚0.5μmの電荷発生層、膜厚25μmの電荷輸送層を形成した。
以上のようにして連続塗布により電子写真感光体を10本作製した。
本実施例2における各塗布液のシクロヘキサノン含有量と各塗布液の粘度を上記表1に示す。また、各層の塗布時における気流の角度とノズル先端部分の汚れ、ワークに対する塗布液の付着効率(%)を下記表2に示す。また、各層の塗布時における霧化エアの圧力とスプレーガンから噴霧される微粒子の粒径分布、各層の膜厚のおける最大膜厚差を下記表3に示す。
[比較例1]
実施例1と同様にして下引き層用、電荷発生層用、電荷輸送層用の各塗布液を調製し、実施例1における塗布条件のノズルの外側テーパー角度aを0°(傾斜なし)、エアキャップの先端厚みbを0.6mm、ニードルの先端角度cを70°、ノズル内径dを0.9mm、ニードルの先端位置eをノズル先端位置に対して1.1mm、エアキャップの先端位置fをノズル先端位置に対して0.5mmとした以外は実施例1と同様にして膜厚8.2μmの下引き層を形成した。
また、塗布条件を上記下引き層の場合と同様にした以外は実施例1と同様にして膜厚0.5μmの電荷発生層を形成した。
さらに、塗布条件として上記下引き層の場合とはエアキャップの先端位置fをノズル液吐出口に対して−0.3mmとした以外は実施例1と同様にして膜厚25μmの電荷輸送層を形成した。
以上のようにして連続塗布により電子写真感光体を10本作製した。
本比較例における各塗布液のシクロヘキサノン含有量と各塗布液の粘度を上記表1に示す。また、各層の塗布時における気流の角度とノズル先端部分の汚れ、ワークに対する塗布液の付着効率(%)を上記表2に示す。また、各層の塗布時における霧化エアの圧力とスプレーガンから噴霧される微粒子の粒径分布、各層の膜厚のおける最大膜厚差を上記表3に示す。
[比較例2]
実施例1と同様にして下引き層用、電荷発生層用、電荷輸送層用の各塗布液を調製し、実施例1における塗布条件のノズルの外側テーパー角度aを80°、エアキャップの先端厚みbを0.05mm、ニードルの先端角度cを130°、ノズルの内径dを0.4mm、ニードルの先端位置eをノズル先端位置に対して−0.1mm、エアキャップの先端位置fをノズル先端位置に対して−0.3mmとした以外は実施例1と同様にして膜厚8.2μmの下引き層を形成した。
また、塗布条件を上記下引き層の場合と同様にした以外は実施例1と同様にして膜厚0.5μmの電荷発生層を形成した。
さらに、塗布条件として上記下引き層の場合と同様にした以外は実施例1と同様にして膜厚25μmの電荷輸送層を形成した。
以上のようにして連続塗布により電子写真感光体を10本作製した。
本比較例における各塗布液のシクロヘキサノン含有量と各塗布液の粘度を上記表1に示す。また、各層の塗布時における気流の角度とノズル先端部分の汚れ、ワークに対する塗布液の付着効率(%)を上記表2に示す。また、各層の塗布時における霧化エアの圧力とスプレーガンから噴霧される微粒子の粒径分布、各層の膜厚のおける最大膜厚差を上記表3に示す。
[比較例3]
実施例1の下引き層塗布液に変えて、下記により調製した下引き層塗布液を用いた。
すなわち、アルキッド樹脂(ベッコゾール1307−60−EL:大日本インキ化学工業社製)15重量部、メラミン樹脂(スーパーベッカミンG−821−60:大日本インキ化学工業社製)10重量部をメチルエチルケトン320重量部に溶解し、これに酸化チタン(タイペールCR−EL:石原産業社製)90重量部を加えボールミルで12時間分散した後、これを容器に取り出してメチルエチルケトン140重量部で稀釈し、下引き層塗布液とした。
こうして得られた下引き層塗布液を比較例2と同様にしてスプレー塗布し、膜厚8.2μmの下引き層を形成した。
さらに、比較例2と同様にして膜厚0.5μmの電荷発生層、膜厚25μmの電荷輸送層を形成した。
以上のようにして連続塗布により電子写真感光体を10本作製した。
本比較例における各塗布液のシクロヘキサノン含有量と各塗布液の粘度を上記表1に示す。また、各層の塗布時における気流の角度とノズル先端部分の汚れ、ワークに対する塗布液の付着効率(%)を上記表2に示す。また、各層の塗布時における霧化エアの圧力とスプレーガンから噴霧される微粒子の粒径分布、各層の膜厚のおける最大膜厚差を上記表3に示す。
[比較例4]
比較例2と同様にして、膜厚8.2μmの下引き層と膜厚0.5μmの電荷発生層を形成した。次に実施例1の電荷輸送層塗布液に変えて下記により調製した電荷輸送層塗布液を用いた。
すなわち、テトラヒドロフラン100重量部にビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂10重量部、シリコーンオイル(KF−50:信越化学工業社製)0.002重量部を溶解し、これに前記構造式(2)の電荷輸送物質8重量部を加えて溶解させ、シクロヘキサノン50重量部で稀釈して電荷輸送層塗布液とした。
こうして得られた電荷輸送層塗布液を比較例2と同様にしてスプレー塗布し、膜厚25μmの電荷輸送層を形成した。
以上のようにして連続塗布により電子写真感光体を10本作製した。
本比較例における各塗布液のシクロヘキサノン含有量と各塗布液の粘度を上記表1に示す。また、各層の塗布時における気流の角度とノズル先端部分の汚れ、ワークに対する塗布液の付着効率(%)を上記表2に示す。また、各層の塗布時における霧化エアの圧力とスプレーガンから噴霧される微粒子の粒径分布、各層の膜厚のおける最大膜厚差を上記表3に示す。
[比較例5]
比較例2と同様にして、膜厚8.2μmの下引き層と膜厚0.5μmの電荷発生層を形成した。次に、電荷輸送層塗布液の塗布時、霧化エアの流量を70L/minとした以外は比較例2と同様にして膜厚25μmの電荷輸送層を形成した。
以上のようにして連続塗布により電子写真感光体を10本作製した。
本比較例における各塗布液のシクロヘキサノン含有量と各塗布液の粘度を上記表1に示す。また、各層の塗布時における気流の角度とノズル先端部分の汚れ、ワークに対する塗布液の付着効率(%)を上記表2に示す。また、各層の塗布時における霧化エアの圧力とスプレーガンから噴霧される微粒子の粒径分布、各層の膜厚のおける最大膜厚差を上記表3に示す。
上記実施例1、2および比較例1〜5により得られた電子写真感光体(各10本)に対して、株式会社リコー製フルカラーレーザープリンター(IPSIO Color 5000)の改造機(λ=655nm、1200dpi、ビームスポット2.7×10-3mm2に改造)を用いて画像形成を行った。形成された画像の品質(白ベタ画像、斜め細線画像、ハーフトーン画像、画像異常発生時期)を目視で判定した。なお、ハーフトーン画像は2×2ドット画像である。画像評価結果を表4に示す。
Figure 2006227179
上記評価結果から、スプレーガン先端付近の気流の角度(θ)を調整することにより、ノズル先端部分の塗布液による汚れがなくなり、液カスが発生しなくなること、また、スプレーミストの粒径分布や噴霧パターンが安定し、均一な塗膜を安定して形成することができ、画像形成において画像異常の発生がないことが確認された。
本発明における電子写真感光体用スプレー塗布装置の概略構成図である。 図1のスプレーガンの構造例を示す概略断面図(a)とニードルが配備された状態を示すスプレーガン先の概略断面図(b)である。 ノズル先端部付近の気流の流れを説明するためのスプレーガン先端の要部拡大図である。 図3の気流の流れにおける特定のエリアを説明するためのスプレーガン先端の要部拡大図である。 図4の特定のエリアの気流の角度を説明するためのスプレーガン先端の拡大図である。 本発明におけるノズル外側のテーパー角度の好ましい範囲を説明するためのスプレーガン先端の拡大図である。 本発明におけるエアキャップ先端部分の厚みの好ましい範囲を説明するためのスプレーガン先端の要部拡大図である。 本発明におけるニードル先端部分の角度の好ましい範囲を説明するためのスプレーガン先端の要部拡大図である。 本発明におけるノズル内径の好ましい範囲を説明するためのスプレーガン先端の要部拡大図である。 本発明におけるニードル先端位置のノズル先端位置からの好ましい範囲を説明するためのスプレーガン先端の要部拡大図である。 本発明におけるエアキャップ先端位置のノズル先端位置からの好ましい範囲を説明するためのスプレーガン先端の要部拡大図である。 本発明における電子写真感光体用スプレー塗布装置を用いてワーク上に塗布液をスプレー塗布する場合の塗布システム構成の例を示す模式図である。 実施例で用いたスプレーガンの各部の寸法、角度を説明するための要部断面図である。
符号の説明
1 スプレー塗布装置
2 塗布液供給手段
2A 塗布液
3 霧化エア供給手段
3A 霧化エア
4 スプレーガン
5 ノズル
5n ニードル
6 エアキャップ
7 流路
8 吐出口
9 空隙
10 排出口
51 ワーク
52 塗布ブース
53 スプレーガン
54 ガイドレール
55 クリーンエア供給口
56 排出口
57 塗布液供給口
58 塗布液タンク
59 ポンプ
60 霧化エア供給手段
61 霧化エアタンク
62 ポンプ

Claims (7)

  1. 塗布液供給手段と、霧化エア供給手段と、該塗布液と霧化エアとがそれぞれ給送されるように構成された円錐台状のノズルと中空円錐台状のエアキャップと、該ノズルの流路に配備されたニードルとを有するスプレーガンとを備え、該スプレーガンから塗布液を噴霧して被塗布体上に感光層を塗布形成するようにした電子写真感光体用のスプレー塗布装置において、該ノズルには塗布液を給送する流路と吐出口を有すると共に該エアキャップと該ノズルとの間には霧化エアを給送するエア給送路と排出口を有し、さらに、塗布液が噴霧される際、該スプレーガンのノズルの外側壁面の最先端から10μm〜20μm該ノズル先端壁面側で、かつ、該ノズル先端壁面から10μm〜20μm離れたエリアにある気流の向きが、該スプレーガンの中心軸を該エリアまで平行移動したときの該中心軸とのなす角度(θ)で、−20°以上15°以下となるようにしたことを特徴とする電子写真感光体用スプレー塗布装置。
  2. 前記中心軸とのなす角度(θ)が−5°以上5°以下であることを特徴とする請求項1に記載の電子写真感光体用スプレー塗布装置。
  3. 前記気流の向きが下記(1)〜(6)のいずれかによって調整されていることを特徴とする請求項1または2に記載の電子写真感光体用スプレー塗布装置。
    (1)前記スプレーガンのノズル外側のテーパーの角度(a)を28°以上70°以下とする。
    (2)前記スプレーガンのエアキャップ先端部分の厚み(b)を0.1mm以上0.5mm以下とする。
    (3)前記スプレーガンのニードルの先端部の角度(c)を90°以上120°以下とする。
    (4)前記前記スプレーガンのノズルの内径(d)を0.5mm以上0.8mm以下とする。
    (5)前記スプレーガンのニードルの先端位置(e)を、塗布時、ノズルの先端位置より0.1mm以上1.0mm以下突出させる。
    (6)前記スプレーガンのエアキャップの先端位置(f)をノズルの先端位置に対して−0.1mm以上0.2mm以下前面とする。
  4. 塗布液供給手段と、霧化エア供給手段と、該塗布液と霧化エアとがそれぞれ給送されるように構成された円錐台状のノズルと中空円錐台状のエアキャップと、該ノズルの流路に配備されたニードルとを有するスプレーガンとを備えた電子写真感光体用スプレー塗布装置を用い、該スプレーガンから塗布液を噴霧して被塗布体上に感光層を塗布形成する電子写真感光体の製造方法であって、該ノズルに設けた流路と吐出口から塗布液を給送、吐出すると共に該エアキャップと該ノズルとの間に設けた空隙と排出口から霧化エアを排出して塗布液を噴霧する際、該スプレーガンのノズルの外側壁面の最先端から10μm〜20μm該ノズル先端壁面側で、かつ、該ノズル先端壁面から10μm〜20μm離れたエリアにおける気流の向きを、該スプレーガンの中心軸を該エリアまで平行移動したときの該中心軸とのなす角度(θ)で、−20°以上15°以下に調整して塗布液を被塗布体上に噴霧することを特徴とする電子写真感光体の製造方法。
  5. 前記供給される霧化エアの圧力がスプレーガンに導入される直前において、0.01MPa以上0.5MPa以下であることを特徴とする請求項4に記載の電子写真感光体の製造方法。
  6. 前記スプレーガンから霧化エアによって噴霧される塗布液微粒子の粒径分布が、被塗布体に付着する直前において、1μm以上30μm以下(測定基準:D90μm)であるとことを特徴とする請求項4又は5記載の電子写真感光体の製造方法。
  7. 前記塗布液の粘度が0.01MPa・s以上5MPa・s以下であることを特徴とする請求項4ないし6のいずれかに記載の電子写真感光体の製造方法。
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