JP2006225741A - 歯車 - Google Patents

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Abstract

【課題】二硫化モリブデンのコーティングなど固体潤滑処理を施さない場合にも高いピッチング強度を有する表面硬化処理を施された歯車の提供。
【解決手段】C:0.1〜0.3%、Si:0.02〜0.6%、Mn:0.3〜1.5%、S:0.003〜0.050%、Cr:0.2〜2.0%、Al:0.005〜0.05%、N:0.005〜0.025%を含有し、残部Feと不純物からなり、不純物中のO≦0.002%、P≦0.025%の鋼材を母材部とする表面硬化処理された歯車であって、Rpk及びRkをそれぞれ、歯車表面の荷重移動方向の表面粗さ負荷曲線における突出山部高さ(μm)及びコア部のレベル差(μm)として、歯車表面の荷重移動方向の表面粗さが「0.2μm≦Rpk+0.5Rk≦0.8μm」を満たす歯車。なお、母材部が下記の群のうちの少なくとも1群から選んだ1種以上の元素を含有していてもよい。(A)Mo:0.1〜0.8%、(B)Nb:0.01〜0.08%、Ti:0.01〜0.20%及びV:0.01〜0.20%。
【選択図】なし

Description

本発明は、ピッチング強度に優れた歯車に関する。より詳しくは、自動車の変速機に使用される歯車やミッションシャフト中の歯車などのように、浸炭焼入れや浸炭窒化焼入れなどの表面硬化処理を施されたピッチング強度に優れた歯車に関する。
従来、自動車の変速機に使用される歯車やシャフトなどの部品は、JIS G 4053(2003)に規定されるSCM420、SCr420やSNCM420などの機械構造用合金鋼を素材として成形した後、これに浸炭処理又は浸炭窒化処理を施した後焼入れして、或いは、高周波焼入れして、表面硬化させ(以下、本明細書においては、浸炭焼入れ、浸炭窒化焼入れや高周波焼入れなど表面を硬化させる処理を「表面硬化処理」と総称することがある。)、次いで、必要に応じて、200℃以下の温度で焼戻しを行うことによって使用されてきた。しかしながら、最近のエンジン出力の向上や燃費低減のための部品の小型軽量化により、部品単体にかかる負荷も著しく増加する傾向にある。特に、歯車やミッションシャフト中の歯車では、すべりを伴う転がり疲労によって表面から剥離が生じるいわゆる「ピッチング疲労」が問題となっている。
このため、例えば、非特許文献1には、接触点下の硬さを上昇させることによって、ピッチング疲労防止の効果が得られることが示されており、実際に自動車用駆動伝達系歯車においては、産業界から要望されている高いピッチング強度を満足させるために、浸炭焼入れや浸炭窒化焼入れによって、或いは、浸炭焼入れや浸炭窒化焼入れの後に低温で焼戻しする(以下、本明細書においては、低温で焼戻しする場合も含めて、「浸炭焼入れ」や「浸炭窒化焼入れ」ということがある。)ことによって、接触点下の硬さを母材部の硬さよりも大幅に上昇させることが行われている。
しかし、単に接触点下の硬さを上昇させるだけでは、所望の高いピッチング強度を得ることが難しくなっており、このため、浸炭焼入れ又は浸炭窒化焼入れ後の歯車の歯面に、二硫化モリブデンのコーティング膜を形成させて固体潤滑効果を高め、ピッチング強度を向上させることが行われており、ある程度の成果を収めてきた。しかしながら、この方法も最近のより一層の部品の小型化及びエンジントルク増大による負荷の増大に対しては、必ずしも対応できなくなってきた。このため、産業界からは二硫化モリブデンのコーティングなど固体潤滑に代わるピッチング強度向上技術に対する要望が大きくなっている。
従来、浸炭焼入れ材又は浸炭窒化焼入れ材の表層部に、マルテンサイト組織に比べて軟質なパーライト組織やベイナイト組織が生成すると、ピッチング強度が著しく低下することが知られている。そして、上記のパーライト組織やベイナイト組織は、表層部に生成した粒界酸化層の近傍に生成することが多く、この原因は焼入れ性を高めるSi、MnやCrといった元素がFeよりも酸化されやすいために、浸炭処理又は浸炭窒化処理中に優先的に酸化されて、粒界酸化層の近傍にSi、Mn及びCrの欠乏層ができるためと考えられている。
なお、最近の歯車には、歯元疲労強度の向上を目的にショットピーニング処理を施して、歯元に圧縮残留応力を付与することが多くなっている。なお、この場合には表層硬さが同時に上昇するため、ピッチング強度が向上する。これは、浸炭焼入れ又は浸炭窒化焼入れを行った際に変態せずに残った表層部のオーステナイト(いわゆる「残留オーステナイト」)が、ショットピーニング処理を受けることによって応力誘起マルテンサイト変態を生じると同時に、マルテンサイト中に更に新たな転位が導入されることによるためと考えらている。
次に、特許文献1及び特許文献2には、ピッチング強度を高めて耐ピッチング疲労特性を向上させる技術が提案されている。
すなわち、特許文献1には、機械構造用鋼を歯切り又は、歯切り+シェービング加工し、次いで、浸炭処理及び/又は窒化処理と焼入れ・焼戻し処理により表面硬化した後、或いは前記表面硬化処理後に更にショットピーニング処理した後、歯面を粗さ(Rmax)0.3μm以上、2μm以下にバレル研磨加工するか、或いは、歯切り又は歯切り+シェービング加工後に、歯面を粗さ(Rmax)0.3μm以上、2μm以下にバレル研磨加工し、次いで、浸炭処理及び/又は窒化処理と焼入れ・焼戻し処理により表面硬化する「高接触疲労強度歯車の製造方法」が提案されている。
また、特許文献2には、特定の化学組成からなり、表面の圧縮残留応力が400MPa以上で、不完全焼入れ層が5μm以上15μm以下、表面粗さRmaxが4.5μm以下で、表面粗さ分布の非対称性パラメータであるひずみ度Sk値が−1.2≦Sk<−0.5であり、表面での残留オーステナイトの面積率が10%以下である「歯元疲労寿命及び接触疲労寿命強度に優れた歯車」が提案されている。
「浸炭焼入の実際第2版」、第262ページ、著者:内藤武志、発行日:1999年2月26日、発行所:日刊工業新聞社 特開平6−246548号公報 特開2002−121644号公報
前述の特許文献1及び2で開示された技術は、部品の小型化及びエンジントルク増大による負荷の増大という最近の一層厳しい接触状態の下では、必ずしも優れた耐ピッチング疲労特性を確保することができない。
例えば、自動車変速機において、耐ピッチング疲労特性が重要視されているファイナルギヤの場合、最近では歯車の滑り率は80%以上と非常に大きくなっており、非常に厳しい接触状態にある。したがって、上述のような厳しい接触状態の下では、接触域内に突起状の「山」部が存在したり、逆に数μmの「谷」部が存在すると、その周囲に応力集中が生じるためピッチング強度の低下をきたしてしまう。このため、ピッチング強度を高めるには、積極的に粗さ突起の形態を制御して、接触域内における粗さ突起の高さをほぼ一様とする必要がある。
しかしながら、特許文献1で提案された技術において、機械構造用鋼を歯切り又は、歯切り+シェービング加工し、次いで、浸炭処理及び/又は窒化処理と焼入れ・焼戻し処理により表面硬化した後、或いは前記表面硬化処理後に更にショットピーニング処理した後、歯面を粗さ(Rmax)0.3μm以上、2μm以下にバレル研磨加工する場合、焼入れの際に生じた硬さの低い不完全焼入れ部が残ったままで、その後のショットピーニング処理やバレル研磨処理が行われるために、不完全焼入れ部が優先的に処理されてしまう。そして、その優先的に処理された不完全焼入れ部は、正常部と比較して直径数μmの「谷」部となるため、接触の際に応力集中が生じてピッチング強度が低下してしまう。一方、歯切り又は歯切り+シェービング加工後に、歯面を粗さ(Rmax)0.3μm以上、2μm以下にバレル研磨加工し、次いで、浸炭処理及び/又は窒化処理と焼入れ・焼戻し処理により表面硬化する場合には、深さ15μm程度の焼入れの際に生じた硬さの低い不完全焼入れ部が残ったままであるため、やはり、ピッチング強度が低下してしまう。そして、上記いずれの場合においても、特に、工業的な規模での量産品の場合、そのピッチング強度は極めて不安定である。
特許文献2で提案された技術の場合、表面粗さ分布の非対称性パラメータであるひずみ度Sk値を−1.2≦Sk<−0.5とすることにより、突起高さのばらつきは小さくなるものの、この範囲のSk値を有する表面においては粗さ突起がほとんど平坦化されているため、油溜まりとなる箇所が少ない。このため、最近の自動車変速機の最終段に使用されるファイナルギヤの様な滑り率が80%以上という非常に厳しい接触条件下では、損傷形態が焼付きとなるので、前記特許文献1の場合と同様にピッチング強度を高めることは難しい。更に、工業的な規模での量産品の場合、浸炭焼入れの際に発生する深さ15μm程度の不完全焼入れ層を完全に除去することは難しいため、そのピッチング強度は不安定である。
本発明の目的は、表面硬化処理を施された歯車、なかでも、自動車の変速機に使用される歯車やミッションシャフト中の歯車など、二硫化モリブデンのコーティングなど固体潤滑処理を施さない場合にも高いピッチング強度を有する表面硬化処理を施された歯車を提供することである。なお、本発明の歯車における具体的な耐ピッチング疲労特性の目標は、後述するローラーピッチング試験において2000MPaを超えるピッチング強度を有することである。
本発明者らは、上述のような問題点を解決するために、表層部におけるパーライト組織及びベイナイト組織の生成を安定して抑制することが可能な条件について、種々調査・研究を重ねた。その結果、下記(a)〜(d)の知見を得た。
(a)マルテンサイト組織中に存在するパーライト組織やベイナイト組織の大きさが、たとえ直径10μm程度の微小なものであっても、ピッチング強度は大きく低下する。
(b)粒界酸化層を低減するにはSi、Mn及びCrの含有量を低減すればよい。しかしながら、Si、Mn及びCrの含有量を低減しても、粒界酸化層を完全になくすることはできず、また、Si、Mn及びCr含有量の低減による焼入れ性の低下とも相俟って、パーライト組織及びベイナイト組織が生成することも完全には抑制することはできない。
(c)パーライト組織及びベイナイト組織は粒界酸化層近傍の全ての部分に生じているのではなく、その一部分に生成している。そして、粒界酸化層の近傍でパーライト組織及びベイナイト組織が生成した部分は、粒界酸化層の近傍でマルテンサイト組織が生成した部分に比べて、Mn、Cr及びMoの濃度が低い。
(d)したがって、表層部におけるパーライト組織及びベイナイト組織の生成を安定かつ確実に抑制するためには、焼入れ性向上元素であるSi、Mn、Cr及びMoの素材における平均含有量を管理するだけでは不十分で、負偏析部で、かつ粒界酸化層によってSi、Mn及びCrの含有量が減少している領域においてもマルテンサイトが生成するために十分な量のSi、Mn、Cr及びMoを含有している必要がある。
また、本発明者らは表層部のパーライト組織及びベイナイト組織の生成を抑制した場合においても、ピッチング強度が低い場合があったため、試験片の表面状況及び潤滑条件がピッチング強度に影響すると考えて、種々検討を行った。その結果、下記(e)〜(g)の結論に達した。
(e)歯車運転時の接触する二面間の潤滑モードは混合潤滑や境界潤滑といった、潤滑油膜を介さない過酷な潤滑状態である。そして、上記のような潤滑状態においては、接触する二面の「山」部同士の「直接接触」が生じるので、表面粗さ曲線の「山」部を適正に表現可能なパラメータを決定する必要がある。
(f)従来、表面粗さのパラメータとして使用されてい最大高さ「Rz」は、JIS B 0601(2001)で定義されているが、「山」部及び「谷」部のいずれをも含んだパラメータであり、「山」部のみの影響を表現するものとはいえない。すなわち、表面を研磨した面は「山」部を優先的に摩耗させた面であり、その粗さ曲線は「山」部に対して「谷」部が大きくなっており、したがって、最大高さ「Rz」では「山」部の影響を直接的に表現することはできない。
(g)一方、JIS B 0671-2(2002)では、粗さパラメータ「Rpk」、「Rk」及び「Rvk」が使用されている。上記の「Rpk」、「Rk」及び「Rvk」は、それぞれ、荷重移動方向の表面粗さ負荷曲線中の突出山部高さ、コア部のレベル差及び突出谷部高さを分離して表現したものである。このため、「山」部の影響を直接的に表現するためには前記JIS B 0671-2(2002)で規定された荷重移動方向の表面粗さ負荷曲線を用いるのがよい。
そこで、本発明者らは、
(h)突出谷部高さ「Rvk」は、粗さ曲線中の谷底を表すものであるため、「直接接触」には関与しない。
(i)これに対して、突出山部高さ「Rpk」は、粗さ曲線中の特に高さの高い突起を表すものであるため「直接接触」に大きな影響を及ぼす。また、コア部のレベル差「Rk」は、「Rvk」と「Rpk」の中間の粗さ分布を表すものであり、「Rk」のうちの特定領域が「直接接触」に影響すると考えて、「山」部の影響を直接的に表現するために、「Rpk」と「Rk」の特定領域との関係について更に詳細な検討を行った。その結果、下記の知見(j)を得た。
(j)潤滑油膜を介さない過酷な潤滑状態においては、「Rpk」と「Rk」の特定領域としての「0.5Rk」との和、つまり「Rpk+0.5Rk」によって「直接接触」における「山」部の影響を直接的に評価することができる。
次いで、本発明者らは、上記知見(j)に基づいて、更に、浸炭焼入れ又は浸炭窒化焼入れの条件、表面研削、ショットピーニング条件と回数、バレル研磨実施の有無を種々に組み合わせることによって、荷重移動方向の表面粗さにおける「Rpk+0.5Rk」の値を種々変化させるとともに、ショットピーニング後に二硫化モリブデンでコーティングして潤滑条件を変えることも行って後述するローラーピッチング試験を実施した。その結果、更に、下記(k)〜(n)の知見を得た。
(k)二硫化モリブデンコーティング品の荷重移動方向の表面粗さにおける「Rpk+0.5Rk」の初期変化を調査するために、ローラーピッチング試験開始前と0.5×105回の繰返しの後に「Rpk+0.5Rk」を測定したところ、試験前の8.18μmから0.81μmまで低減した。なお、EPMAで調査した結果、転動面には二硫化モリブデンは検出されなかった。このことから、二硫化モリブデンコーティングは摩耗によって除去されてしまうことが明らかである。
(l)研削、研磨によって、荷重移動方向の表面粗さにおける「Rpk+0.5Rk」を0.2〜0.8μmの範囲に調整することによって、殆どの場合に、1.0×107回の繰返しの後、二硫化モリブデンコーティング品と同等以上のピッチング強度を確保することができる。但し、非金属介在物よる内部起点によって、早期にスポーリング破壊を生じる場合がある。なお、スポーリング破壊とは、亀裂が試験片内部から発生し、表面と平行に進展した後、剥離に至ったものをいう。
(m)研磨によって荷重移動方向の表面粗さにおける「Rpk+0.5Rk」を0.2μm未満とした場合には、ピッチングを生じる前に試験片に焼付きが生じる。
(n)荷重移動方向の表面粗さにおける「Rpk+0.5Rk」が0.8μmを超える場合には、1.0×107回の繰返しの後、ピッチング強度は二硫化モリブデンコーティング品(初期摩耗調査品とは別に試験を実施した。)以下となって所望のピッチング強度(2000MPaを超えるピッチング強度)が得られない。
本発明は、上記の知見に基づいて完成されたもので、その要旨は、下記(1)〜(5)に示す歯車にある。
(1)質量%で、C:0.1〜0.3%、Si:0.02〜0.6%、Mn:0.3〜1.5%、S:0.003〜0.050%、Cr:0.2〜2.0%、Al:0.005〜0.05%及びN:0.005〜0.025%を含有し、残部はFe及び不純物からなり、不純物中のO(酸素)は0.002%以下、Pは0.025%以下である鋼材を母材部とする表面硬化処理された歯車であって、歯車表面の荷重移動方向の表面粗さが下記(1)式を満足することを特徴とする歯車。
0.2μm≦Rpk+0.5Rk≦0.8μm・・・(1)。
なお、Rpk及びRkはそれぞれ、歯車表面の荷重移動方向の表面粗さ負荷曲線における、突出山部高さ(μm)及びコア部のレベル差(μm)を表す。
(2)母材部が、Feの一部に代えて、質量%で、Mo:0.1〜0.8%を含有することを特徴とする上記(1)に記載の歯車。
(3)下記(2)式で表されるAの値が13以上であることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の歯車。
A=(1+0.681Si)×(1+3.066Mn+0.329Mn2)×(1+2.007Cr)×(1+3.14Mo)・・・(2)。
なお、(2)式中の元素記号は、歯車の表面から深さ0.1mm以内の領域におけるその元素の質量%での含有量のうち最低値を表す。
(4)母材部が、Feの一部に代えて、質量%で、Nb:0.01〜0.08%、Ti:0.01〜0.20%及びV:0.01〜0.20%のうちの1種又は2種以上を含有することを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の歯車。
(5)下記(2)式で表されるAの値が15以上であることを特徴とする上記(4)に記載の歯車。
A=(1+0.681Si)×(1+3.066Mn+0.329Mn2)×(1+2.007Cr)×(1+3.14Mo)・・・(2)。
なお、(2)式中の元素記号は、歯車の表面から深さ0.1mm以内の領域におけるその元素の質量%での含有量のうち最低値を表す。
「母材部」とは表面硬化処理によって硬化していない部分を指す。したがって、その化学組成は表面硬化処理する前の鋼材、すなわち、素材である鋼の化学組成と同じものである。
また、「表面硬化処理された」とは、具体的には、表面から100μmピッチで深さ500μmの位置までの試験力2.942Nで測定したビッカース硬さの平均値が650以上であることを指す。
以下、上記 (1)〜(5)の歯車に係る発明を、それぞれ、「本発明(1)」〜「本発明(5)」という。また、総称して「本発明」ということがある。
本発明の表面硬化処理を施された歯車は、ピッチング強度に優れ、後述するローラーピッチング試験において2000MPaを超えるピッチング強度を有するので、自動車の変速機に使用される歯車やミッションシャフト中の歯車などに用いることができる。また、この表面硬化処理を施された歯車は、二硫化モリブデンコーティングなど固体潤滑処理を省略できるので、製品コスト削減の効果も大きい。
以下、本発明の各要件について詳しく説明する。なお、化学成分の含有量の「%」は「質量%」を意味する。
(A)母材部の化学組成
C:0.1〜0.3%
Cは、浸炭焼入れ、浸炭窒化焼入れや高周波焼入れなど表面硬化処理を行った歯車の母材部強度を確保するために必須の元素である。しかし、Cの含有量が0.1%未満では前記の効果が不十分である。一方、Cの含有量が0.3%を超えると、熱間圧延を始めとする熱間加工した後の鋼の硬さが高くなりすぎ、その後の切削加工性が著しく低下する。したがって、Cの含有量を0.1〜0.3%とした。
Si:0.02〜0.6%
Siは、浸炭焼入れ、浸炭窒化焼入れや高周波焼入れなど表面硬化処理を行った歯車の母材部焼入れ性を確保するために有効な元素であり、少なくとも0.02%含有させる必要がある。しかし、その含有量が0.6%を超えると、熱間加工後の鋼の硬さが高くなりすぎ、その後の切削加工性が著しく低下する。しかも、浸炭焼入れ又は浸炭窒化焼入れによって表面硬化させる場合には、浸炭処理或いは浸炭窒化処理の際、粒界酸化層の著しい増加を招き、ピッチング強度が大きく低下する。したがって、Siの含有量を0.02〜0.6%とした。なお、Siの含有量は0.02〜0.5%とすることが好ましい。
Mn:0.3〜1.5%
Mnは、表面硬化層の焼入れ性を高める作用を有し、浸炭焼入れ又は浸炭窒化焼入れによって表面硬化させる場合にも、浸炭層又は浸炭窒化層の焼入れ性を高める効果が、粒界酸化層の増加に及ぼす悪影響よりも大きい。このため、ピッチング強度を高めるのに有効な元素である。しかし、その含有量が0.3%未満では前記の効果が不十分である。一方、Mnの含有量が1.5%を超えると、ピッチング強度を高める効果が飽和するだけでなく、熱間加工後の鋼の硬さが高くなりすぎて、切削加工性が大きく低下する。したがって、Mnの含有量を0.3〜1.5%とした。なお、Mn含有量が0.4%以上になると、ピッチング強度の向上が顕著になる。このため、Mnの含有量は0.4〜1.5%とすることが望ましい。
S:0.003〜0.050%
Sは、Mnと結合してMnSを形成し、切削加工性を高める作用を有する。しかし、その含有量が0.003%未満では、前記の効果が得難い。一方、Sの含有量が多くなると、粗大なMnSを生成しやすくなってピッチング強度を低下させる傾向があり、特に、その含有量が0.050%を超えると、内部起点のスポーリング破壊が生じるようになって、所望のピッチング強度(後述するローラーピッチング試験において2000MPaを超えるピッチング強度)が得られない。したがって、Sの含有量を0.003〜0.050%とした。なお、Sの含有量は0.003〜0.025%とすることが好ましい。
Cr:0.2〜2.0%
Crは、表面硬化層の焼入れ性を高める作用を有し、浸炭焼入れ又は浸炭窒化焼入れによって表面硬化させる場合にも、浸炭層又は浸炭窒化層の焼入れ性を高める効果が、粒界酸化層の増加に及ぼす悪影響よりも大きい。このため、ピッチング強度を高めるのに有効な元素である。しかし、その含有量が0.2%未満では前記の効果が不十分である。一方、Crの含有量が2.0%を超えると、ピッチング強度を高める効果が飽和するだけでなく、熱間加工後の鋼の硬さが高くなりすぎて、切削加工性が著しく低下する。したがって、Crの含有量を0.2〜2.0%とした。
Al:0.005〜0.05%
Alは、脱酸作用を有する元素である。また、Alは、Nと結合してAlNを形成しやすい元素である。そして、AlNは表面硬化層の結晶粒微細化に有効で、ピッチング強度を高める効果がある。しかし、Alの含有量が0.005%未満では前記した効果は得難い。一方、0.05%を超えてAlを含有すると、前記の効果が飽和することに加えて、粗大なAlNが形成されて内部起点のスポーリング破壊が生じるようになる。したがって、Alの含有量を0.005〜0.05%とした。
N:0.005〜0.025%
Nは、Al、Nb、V及びTiと結合してAlN、NbN、VN及びTiNを形成しやすく、このなかで、AlN、NbN及びVNは表面硬化層の結晶粒微細化に有効で、ピッチング強度を高める効果がある。しかし、Nの含有量が0.005%未満では前記の効果が得難く、一方、0.025%を超えるとその効果は飽和する。したがって、Nの含有量を0.005〜0.025%とした。なお、Nの含有量が0.010%以上になると、結晶粒微細化によるピッチング強度の向上が顕著になる。このため、Nの含有量は、0.010〜0.025%とすることが望ましい。
本発明においては、不純物元素としてのO(酸素)及びPの含有量を下記のとおりに制限する。
O(酸素):0.002%以下
Oは、Alと結合して硬質な酸化物系介在物を形成しやすく、ピッチング強度を低下させてしまう。特に、Oの含有量が0.002%を超えると、内部起点のスポーリング破壊が生じるようになって、所望のピッチング強度(後述するローラーピッチング試験において2000MPaを超えるピッチング強度)が得られない。したがって、Oの含有量を0.002%以下とした。不純物元素としてのOの含有量はできる限り少なくすることが望ましい。なお、製鋼でのコストを考慮すると、Oの含有量は0.001%以下にすることが好ましい。
P:0.025%以下
Pは、粒界に偏析して粒界を脆化させ、ピッチング強度を低下させてしまう。特に、Pの含有量が0.025%を超えると、ピッチング強度の低下が著しくなる。したがって、Pの含有量を0.025%以下とした。不純物元素としてのPの含有量はできる限り少なくすることが望ましい。なお、製鋼でのコストを考慮すると、Pの含有量は0.020%以下にすることが好ましい。
したがって、本発明(1)に係る歯車の母材部の化学組成を、上述した範囲のCからNまでの元素を含み、残部はFe及び不純物からなり、不純物中のO(酸素)は0.002%以下、Pは0.025%以下であることと規定した。
なお、本発明に係る歯車の母材部には、必要に応じて、Feの一部に代えて、後述する第1群及び第2群のうちの少なくとも1群のうちから選んだ1種以上の元素を任意添加元素として添加し、含有させてもよい。
以下、任意添加元素に関して説明する。
第1群:Mo:0.1〜0.8%
Moは、焼入れ性及びピッチング強度を高めるのに有効な元素である。しかし、その含有量が0.1%未満では前記の効果が不十分である。一方、Moの含有量が0.8%を超えると、ピッチング強度を高める効果が飽和するだけでなく、熱間加工後の鋼の硬さが高くなりすぎて、切削加工性が著しく低下する。したがって、Moの含有量を0.1〜0.8%とした。
第2群:Nb:0.01〜0.08%、Ti:0.01〜0.20%及びV:0.01〜0.20%
Nbは、C又は/及びNと結合してNbC、NbN及びNb(C、N)を形成しやすい元素である。そして、NbC、NbN及びNb(C、N)は、前述したAlNによる表面硬化層の結晶粒微細化を補完するのに有効で、ピッチング強度を高める効果がある。この効果を確実に得るには、Nbは0.01%以上の含有量とすることが好ましい。しかし、Nbの含有量が0.08%を超えても前記の効果は飽和し、コストが嵩むばかりである。したがって、添加する場合のNbの含有量を0.01〜0.08%とした。
Tiは、Cと結合してTiCを形成しやすく、このTiCは前述したAlNによる表面硬化層の結晶粒微細化を補完するのに有効で、ピッチング強度を高める効果がある。この効果を確実に得るには、Tiは0.01%以上の含有量とすることが好ましい。一方、Tiの含有量が0.20%を超えると、前記の効果が飽和してコストが嵩むことに加えて、粗大なTiO2が形成されて内部起点のスポーリング破壊が生じるようになる。したがって、添加する場合のTiの含有量を0.01〜0.20%とした。
Vは、C及びNと結合してVC及びVNを形成しやすい元素である。上記のうちで、VNは、前述したAlNによる表面硬化層の結晶粒微細化を補完するのに有効で、ピッチング強度を高める効果がある。この効果を確実に得るには、Vは0.01%以上の含有量とすることが好ましい。しかし、Vの含有量が0.20%を超えても前記の効果は飽和し、コストが嵩むばかりである。したがって、添加する場合のVの含有量を0.01〜0.20%とした。
なお、上記のNb、Ti及びVはいずれか1種のみ、又は2種以上の複合で添加することができる。
上記の理由から、本発明(2)に係る歯車の母材部の化学組成を、本発明(1)における歯車の母材部のFeの一部に代えて、Mo:0.1〜0.8%を含有することと規定した。
また、本発明(4)に係る歯車の母材部の化学組成を、本発明(1)又は本発明(2)における歯車の母材部のFeの一部に代えて、Nb:0.01〜0.08%、Ti:0.01〜0.20%及びV:0.01〜0.20%のうちの1種又は2種以上を含有することと規定した。
なお、鋼中に不純物として混入するCu及びNiについては、その含有量は特に規定するものではない。
(B)歯車表面の荷重移動方向の表面粗さ
本発明に係る歯車は、歯車表面の荷重移動方向の表面粗さにおいて、「0.2μm≦Rpk+0.5Rk≦0.8μm」で示される(1)式を満足する必要がある。
先ず、「Rpk+0.5Rk」に着目するのは、例えば、最近の自動車変速機において耐ピッチング特性が重要視されているファイナルギヤの場合、歯車の滑り率は80%以上と非常に大きく歯車運転時の接触する二面間の潤滑モードが潤滑油膜を介さない状態となって接触する二面の「山」部同士の直接接触が生じるので、表面粗さ曲線の「山」部を適切に評価するためである。
すなわち、先にも述べたように、従来表面粗さのパラメータとして使用されている最大高さ「Rz」は、JIS B 0601(2001)で定義されているが、「山」部及び「谷」部のいずれをも含んだパラメータで、表面を研磨した面は「山」部を優先的に摩耗させた面であり、その粗さ曲線は「山」部に対して「谷」部が大きくなっている。このため、最大高さ「Rz」では、「山」部のみの影響を直接的に表現することができない。
これに対して、JIS B 0671-2(2002)で定義された粗さパラメータである突出谷部高さ「Rvk」、突出山部高さ「Rpk」及びコア部のレベル差「Rk」のうちで、「Rvk」は粗さ曲線中の谷底を表すものであるため、「直接接触」には関与しないが、「Rpk」は、粗さ曲線中の特に高さの高い突起を表すものであって「直接接触」に大きな影響を及ぼす。また、コア部のレベル差「Rk」は、「Rvk」と「Rpk」の中間の粗さ分布を表すもので、「Rk」のうちの特定領域が「直接接触」に影響を及ぼし、「Rk」の特定領域としての「0.5Rk」と「Rpk」との和、つまり「Rpk+0.5Rk」によって、潤滑油膜を介さない過酷な潤滑状態である「直接接触」における「山」部の影響を直接的に評価することができる。
そして、荷重移動方向の表面粗さにおける「Rpk+0.5Rk」が0.2μm未満の場合には焼付きが生じる。一方、0.8μmを超えると、接触面の摩耗量が大きくなることに加えて、所望のピッチング強度(後述するローラーピッチング試験において2000MPaを超えるピッチング強度)が得られない。
したがって、本発明に係る歯車について、歯車表面の荷重移動方向の表面粗さにおける「Rpk+0.5Rk」を0.2〜0.8μmと規定した。「Rpk+0.5Rk」の好ましい範囲は、0.2〜0.6μmである。
なお、歯車表面の荷重移動方向の表面粗さにおける「Rpk+0.5Rk」を0.2〜0.8μmとするには、例えば、後述の実施例に示すような特定の条件下で、歯車形状に粗加工して表面硬化処理を施した後、ホーニング及びショットピーニングを行い、その後に最終仕上げとしてバレル研磨を行えばよい。
(C)歯車表面から深さ0.1mm以内の領域における化学成分
本発明(1)又は本発明(2)に係る歯車は、歯車表面から深さ0.1mm以内の領域(以下、「歯車表層部」ともいう。)における化学成分を適正化することによって、具体的には、前記(2)式で表されるAの値を13以上とすることによって、表層部におけるパーライト組織及びベイナイト組織の生成を安定かつ確実に抑制することができる。
また、本発明(4)に係る歯車は、歯車表層部における化学成分を適正化することによって、具体的には、前記(2)式で表されるAの値を15以上とすることによって、表層部におけるパーライト組織及びベイナイト組織の生成を安定かつ確実に抑制することができる。
以下、上記の事柄に関して詳しく説明する。
本発明者らは、表1に示す鋼a〜kを150kg真空溶解炉で溶解した後、鋳型に鋳鉄(以後、鋳鉄の鋳型を「通常鋳型」という。)を用いて、インゴットに鋳造した。なお、溶解の際、不純物元素が十分低減するように原料の選定に十分注意を払った。
Figure 2006225741
次いで、上記の各インゴットを1200〜1280℃で10時間以上保持して溶体化処理した後、室温まで放冷し、その後、再び1250℃に加熱して1時間保持してから、仕上げ温度が900〜1000℃となるように熱間鍛造し、室温まで放冷して、直径35mmの棒鋼を作製した。
次いで、これらの各棒鋼に、925℃で1時間保持する加熱処理を施し、室温まで放冷し、更に、直径25mmにピーリング加工した。
このようにして得た直径25mmの各棒鋼を、長さ300mmに切断し、更にセンタ穴加工を施した後、表2の番号1に示す条件でガス浸炭焼入れ及び焼戻しを行った。なお、表2における「CP」は「カーボンポテンシャル」を意味し、「NP」は「窒素ポテンシャル」を意味する。
Figure 2006225741
次いで、各棒鋼を長さ150mmに切断し、切断面から更に長さ10mmのサンプルを採取後、軸心に平行に中心を通って切断した。この面が観察面となる様に樹脂に埋め込んで鏡面研磨した後、Si、Mn、Cr及びMoの各元素についてEPMAを用いて線分析を行った。EPMAによる線分析は、ビーム直径を1μm、走査速度を200μm/分として、走査長さ100μmで、表面から軸心に垂直に10箇所を測定した。なお、Cも偏析しやすい元素として知られているが、オーステナイト域に加熱すると容易かつ均一に拡散しやすいため、Cの測定は行わなかった。
EPMAでの測定結果から、Si、Mn、Cr及びMoのそれぞれの含有量が最も低かった位置について、Si、Mn、Cr及びMoの含有量を数値化した。ここで、Si、Mn、Cr及びMoの偏析傾向は同じであるため、Si、Mn、Cr及びMoのそれぞれの含有量が最も低かった位置についてSi、Mn、Cr及びMoの含有量を数値化しておけば、前記(2)式で表されるAの値として評価することができる。
なお、焼入れ性は、例えば、井上毅の第131・132回西山記念講座「鉄鋼材料の材質予測・制御技術の現状と将来」、第215〜217ページ(日本鉄鋼協会編、平成元年9月25日発行)に示されるように、C及びその他の合金元素の含有量並びにオーステナイト結晶粒度から見積もることができ、本発明の目指すピッチング強度の向上のためには、浸炭焼入れ、浸炭窒化焼入れや高周波焼入れなど表面硬化処理した表層部の焼入れ性が重要な意味を持つ。そして、特に、浸炭焼入れ又は浸炭窒化焼入れによって表面硬化させる場合には、表層部の一般的なC含有量は0.8%程度であることが多く、また、そのオーステナイト結晶粒度は、Nb、Ti及びVのいずれをも含有しない場合には粒度番号9程度、Nb、Ti及びVの1種以上を含有する場合には粒度番号11程度であることが多いので、Nb、Ti及びVのいずれをも含まない場合と、Nb、Ti及びVの1種以上を含む場合とを区別すれば、Si、Mn、Cr及びMoの含有量から焼入れ性を評価することができる。
そこで、前記井上の「鉄鋼材料の材質予測・制御技術の現状と将来」に基づいて、焼入れ性の評価基準として、本発明者らは、前記(2)式の値、つまりAの値を採用した。
表3に、各サンプルについて、前記(2)式で表されるAの値、その値に対応するSi、Mn、Cr及びMoの含有量を示す。
また、前記の鏡面研磨したサンプルをナイタール腐食し、次いで、表層から100μmの領域をSEM(走査型電子顕微鏡)を用いて観察して、ベイナイト組織とパーライト組織の存在の有無を調査することも行った。
表3に、上記のベイナイト組織とパーライト組織の存在に関する調査結果を併せて示した。また、図1に、上記のベイナイト組織とパーライト組織の存在に関する調査結果を前記(2)式で表されるAの値で整理して示す。
なお、表3の「パーライト組織、ベイナイト組織」欄における「無し」及び「有り」は、それぞれ、「ベイナイト組織とパーライト組織のいずれもが存在しないこと」及び「ベイナイト組織とパーライト組織のいずれか一方または双方が存在すること」を意味する。
更に、図1における「○:パーライト、ベイナイト無し」及び「×:パーライト、ベイナイト有り」も、それぞれ、「ベイナイト組織とパーライト組織のいずれもが存在しないこと」及び「ベイナイト組織とパーライト組織のいずれか一方または双方が存在すること」を意味する。なお、図1においては、Nb、V及びTiのいずれをも含まない場合を、「Nb、V、Ti無し」と表記し、また、Nb、V及びTiの1種以上を含む場合を、「Nb、V、Ti有り」と表記した。
なお、前記(2)式で表されるAの値は、図1においては単に「A値」と表記した。
Figure 2006225741
表3及び図1から、Nb、Ti及びVのいずれをも含まない場合、前記(2)式で表されるAの値が13以上であれば、ベイナイト組織とパーライト組織のいずれもが存在しないことが明らかである。また、Nb、Ti及びVの1種以上を含む場合には、前記(2)式で表されるAの値が15以上であれば、ベイナイト組織とパーライト組織のいずれもが存在しないことが明らかである。
したがって、本発明(3)に係る歯車は、本発明(1)又は本発明(2)に係る歯車において、前記(2)式で表されるAの値を13以上と規定した。
また、本発明(5)に係る歯車は、本発明(4)に係る歯車において、前記(2)式で表されるAの値を15以上と規定した。
なお,鋼材断面における前記(2)式で表されるAの値には、鋼の平均組成、凝固速度及
び凝固形態などが影響する。また、製鋼の設備によっても影響を受ける。
このため、Nb、Ti及びVのいずれをも含まない歯車における前記(2)式で表されるAの値を13以上にするためには、例えば、連続鋳造で400mm×300mm角という大断面のブルームを製造する場合、先ず、鋼の平均組成を前記(2)式で表されるAの値が20以上となるように溶製する。そして、溶鋼の電磁攪拌を十分に行ってから連続鋳造し、更に、ブルームに1200〜1280℃で8時間以上の均質化熱処理を行い、そのブルームを一辺が200mm以下の角ビレットにした後、ビレットを1200〜1280℃で2時間以上加熱してから圧延仕上げ温度が850〜1000℃になるように熱間圧延すればよい。
また、Nb、Ti及びVの1種以上を含む歯車における前記(2)式で表されるAの値を15以上にするためには、例えば、連続鋳造で400mm×300mm角という大断面のブルームを製造する場合、先ず、鋼の平均組成を前記(2)式で表されるAの値が23以上となるように溶製する。そして、溶鋼の電磁攪拌を十分に行ってから連続鋳造し、更に、ブルームに1200〜1280℃で8時間以上の均質化熱処理を行い、そのブルームを一辺が200mm以下の角ビレットにした後、ビレットを1200〜1280℃で2時間以上加熱してから圧延仕上げ温度が850〜1000℃になるように熱間圧延すればよい。
本発明に係る歯車に対する「表面硬化処理」は、浸炭焼入れ、浸炭窒化焼入れや高周波焼入れなど通常の表面硬化処理であればよい。
前記の「表面硬化処理」として浸炭焼入れや浸炭窒化焼入れを施す場合には、例えば、部品を切削加工した後、930℃に加熱し、カーボンポテンシャルが1.1%の雰囲気に保持して、浸炭及び拡散処理した後、850℃に冷却し、カーボンポテンシャルが0.8%の雰囲気に保持して、表面炭素濃度を調整してから油温60℃の油中に浸漬して油焼入れし、その後、120℃で2時間焼き戻しすればよい。
以下、実施例により本発明を更に詳しく説明する。
表4示す化学成分を有する鋼A〜Pを溶解した。
上記の鋼のうち、鋼A、鋼B、鋼D〜F、鋼K及び鋼Lは150kg真空溶解炉にて溶製し、通常鋳型を用いてインゴットに鋳造した。また、鋼G〜I及び鋼Mは30kg真空溶解炉にて溶解し、通常鋳型を用いてインゴットに鋳造した。
鋼N〜Pは、3t(トン)大気溶解炉で溶解し、通常鋳型を用いて450mm×550mmのインゴットを製造した。
更に、鋼C及び鋼Jは、70t(トン)転炉で溶解し、二次精錬でRH真空脱ガス処理を長時間実施し、更に、溶鋼の電磁攪拌を十分に行った後、連続鋳造によって400mm×300mm角のブルームを製造した。
なお、表4中の鋼A〜Jは、化学組成が本発明で規定する範囲内にある鋼である。一方、表4中の鋼K〜Pは、化学組成が本発明の規定から外れた鋼である。
Figure 2006225741
上記のようにして得たインゴットとブルームについて次に示す処理を行った。
先ず、150kg真空炉溶製した鋼A、鋼B、鋼D〜F、鋼K及び鋼Lのインゴットは、1250℃で8時間加熱した後、仕上げ温度が900〜1000℃となるように熱間鍛造し、室温まで放冷して直径35mmの棒鋼を作製した。次いで、これらの各棒鋼に、925℃で1時間保持する加熱処理を施し、室温まで放冷した。
30kg真空炉溶製した鋼G〜I及び鋼Mのインゴットも、1250℃で8時間加熱した後、仕上げ温度が900〜1000℃となるように熱間鍛造し、室温まで放冷して直径35mmの棒鋼を作製した。次いで、これらの各棒鋼に、925℃で1時間保持する加熱処理を施し、室温まで放冷した。
3t(トン)大気炉溶製した鋼N〜Pのインゴットは、1350℃で4時間加熱した後、分塊圧延して180mm×180mmの角ビレットにした。次いで、上記の角ビレットを1250℃で2時間加熱した後、850〜1000℃の圧延仕上げ温度で、直径が35mmの棒鋼に熱間圧延し、室温まで放冷した後、更に、925℃で1時間保持する加熱処理を施し、室温まで放冷した。
更に、鋼C及び鋼Jのブルームは、1250℃で10時間加熱した後、分塊圧延して180mm×180mmの角ビレットにした。次いで、その角ビレットを1250℃で2時間加熱した後、850〜1000℃の圧延仕上げ温度で、直径が35mmの棒鋼に熱間圧延し、室温まで放冷した後、更に、925℃で1時間保持する加熱処理を施し。室温まで放冷した。
このようにして得た鋼A〜Pの直径35mmの各棒鋼から、図2に示す直径26mmで長さ28mmの試験部1及び長さ51mmの掴み部2からなるローラーピッチング試験用の小ローラー粗形品を切り出し、表2及び図3に示す条件で浸炭処理又は浸炭窒化処理を行って油焼入れし、その後、180℃で2時間の焼戻しを行った。既に述べたように、表2における「CP」及び「NP」はそれぞれ、「カーボンポテンシャル」及び「窒素ポテンシャル」を意味する。
上記焼戻し処理の後、掴み部2の仕上げ加工を行い、更に、試験部1に、研削、ショットピーニングやバレル研磨を施して、表面を仕上げた。なお,掴み部2はマスキングして、ショットピーニングやバレル研磨の影響を受けないようにした。
ローラーピッチング試験用小ローラーの試験部1の具体的な表面仕上げ方法は以下の(イ)〜(ヘ)に示すとおりである。
(イ)直径50〜100μmの炭化珪素系の砥粒と水を混合し、加工圧を3MPa、試験片回転速度を150回毎分(以下、「rpm」と記載する。)として20分間液体ホーニングを実施。次いで、直径5〜50μmの炭化珪素系の砥粒と水を混合し、加工圧を3MPa、試験片回転速度を150rpmとして30分間液体ホーニングを実施し、鏡面仕上げした後、直径0.6mmのショット球(鋼線)を投射圧が0.35MPa、カバレージが300%の条件でショットピーニングを実施。最後に、直径300〜2000μmのアルミナ系砥粒を用いてジャイロ式バレル研磨機で60分間バレル研磨を実施。
(ロ)直径50〜100μmの炭化珪素系の砥粒と水を混合し、加工圧を3MPa、試験片回転速度を150rpmとして20分間液体ホーニングを実施。次いで、直径5〜50μmの炭化珪素系の砥粒と水を混合し、加工圧を3MPa、試験片回転速度を150rpmとして30分間液体ホーニングを実施し、鏡面仕上げした後、直径0.6mmのショット球(鋼線)を投射圧が0.35MPa、カバレージが300%の条件でショットピーニングを実施し、その後更に、直径0.3mmのショット球(鋼線)を投射圧が0.35MPa、カバレージが300%の条件でショットピーニングを実施。最後に、直径300〜2000μmのアルミナ系砥粒を用いてジャイロ式バレル研磨機で60分間バレル研磨を実施。
(ハ)直径50〜100μmの炭化珪素系の砥粒と水を混合し、加工圧を3MPa、試験片回転速度を150rpmとして20分間液体ホーニングを実施。次いで、直径300〜2000μmのアルミナ系砥粒を用いてジャイロ式バレル研磨機で60分間バレル研磨を実施。
(ニ)円周方向、軸方向に加工目が残るように砥石の回転方向を変更して、固形砥石によるホーニングを実施。次いで、直径0.6mmのショット球(鋼線)を投射圧が0.35MPa、カバレージが300%の条件でショットピーニングを実施。最後に、直径300〜2000μmのアルミナ系砥粒を用いてジャイロ式バレル研磨機で60分間バレル研磨を実施。
(ホ)円周方向、軸方向に加工目が残るように砥石の回転方向を変更して、固形砥石によるホーニングを実施。次いで、直径0.6mmのショット球(鋼線)を投射圧が0.35MPa、カバレージが300%の条件でショットピーニングを実施し、その後更に、直径0.3mmのショット球(鋼線)を投射圧が0.35MPa、カバレージが300%の条件でショットピーニングを実施。最後に、直径300〜2000μmのアルミナ系砥粒を用いてジャイロ式バレル研磨機で60分間バレル研磨を実施。
(ヘ)直径0.6mmのショット球(鋼線)を投射圧が0.35MPa、カバレージが300%の条件でショットピーニングを実施。
なお、上記(イ)及び(ロ)のように、ショットピーニング前に液体ホーニングを行うことで、小ローラー粗形品における試験部1の粗加工の影響を除去し、ショットピーニング後の粗さのバラツキを抑えることが可能となる。
表面仕上げを施した各小ローラについて、試験部1の種々の表面粗さを測定した。すなわち、試験部1の円周方向に速度0.3mm/秒、走査長さ3mmで表面粗さを測定し、JIS B 0671-2(2002)で定義された突出山部高さ「Rpk」とコア部のレベル差「Rk」 、特許文献2に記載された表面粗さ分布の非対称性パラメータであるひずみ度「Sk」及び「Rmax」を求めた。上記の「Sk」及び「Rmax」には、JIS B 0601(2001)で定義された歪み度Rsk、最大高さRzをそれぞれ使用した。
「Rpk」、「Rk」、「Sk」及び「Rmax」は、上述のようにして測定した表面粗さに最小自乗曲線補正を行うことで円周面周りの粗さに変換した。
また、上述のようにして作製した小ローラーとJIS G 4805(1999)で規定されたSUJ2製の大ローラーを用いて、表5に示す条件でローラーピッチング試験を行った。
SUJ2製の大ローラーは図4に示す直径が130mmで、接触部長さが7mm形状のものであり、球状化焼鈍、試験片加工、焼入れ、焼戻し後に、直径50〜100μmの炭化珪素系の砥粒と水を混合し、加工圧を3MPa、試験片回転速度を150回毎分として20分間液体ホーニングを実施し、次いで、直径5〜50μmの炭化珪素系の砥粒と水を混合し、加工圧を3MPa、試験片回転速度を150rpmとして30分間液体ホーニングを実施して作製した。
ローラーピッチング試験における試験数は各7とし、縦軸に面圧、横軸に破壊までの繰り返し数をとったS−N線図を作成し、繰り返し数1.0×107回での面圧を、ピッチング強度とした。
小ローラーとして、試験部1の表面仕上げを前記(ヘ)の方法で行った鋼Jに二硫化モリブデンコーティングを施したものを用いた場合のピッチング強度を基準値とし、これを超えることを目標とした。なお、上記鋼Jに二硫化モリブデンコーティングを施した小ローラーについては、繰り返し数1.0×107回までの耐久試験とは別に途中止め試験を実施し、繰り返し数0.5×105回後における「Rpk」と「Rk」も測定した。また、同サンプルの転動面をEPMAで分析することにより、転動面にMo及びSの濃化層が無くなっていることを確認した。
Figure 2006225741
ローラーピッチング試験後、各小ローラーの試験部1を切り出し、軸心と平行に軸心を通って切断した断面を鏡面研磨し、端部から5mmの部位(大ローラーと非接触の部位)におけるSi、Mn、Cr及びMoの各元素についてEPMAを用いて線分析を行った。EPMAによる線分析は、ビーム直径を1μm、走査速度を200μm/分として、走査長さ100μmで、軸心に垂直に、浸炭面側の表面から10箇所を測定した。EPMAでの測定結果から、Si、Mn、Cr及びMoのそれぞれの含有量が最も低かった位置について、Si、Mn、Cr及びMoの含有量を数値化した。また,上記サンプルを用いて、浸炭面側の表面からビッカース硬さ(以下、Hv硬さという。)を測定した。表面から100μmピッチで深さ500μmの位置までのHv硬さを試験力2.942Nで測定し、5点の平均値を算出した。
表6及び表7に、上記の各試験結果を示す。なお、表6及び表7の「表面硬化処理条件」欄における番号は表2の処理番号に対応するものである。また、「表面仕上げ」欄は、前記(イ)〜(ヘ)の表面仕上げ方法によって試験部1の表面仕上げを行ったことを意味する。なお、表6及び表7においては、「Rpk+0.5Rk」はJIS B 0671-2(2002)で定義された表面粗さパラメータ「Rpk」と「Rk」から計算した。「表層部のHv硬さ」欄は、前記したHv硬さの5点の平均値を示すものである。
Figure 2006225741
Figure 2006225741
表6及び表7から、本発明で規定する条件から外れた試験番号7、試験番号8、試験番号18〜23及び試験番号25〜31の場合には、ローラーピッチング試験におけるピッチング強度は、基準とする試験番号32のピッチング強度である2000MPaに達しない低いものであることが明らかである。
すなわち、化学組成が本発明で規定する範囲内にある鋼B及び鋼Jを用いたため、母材部の化学組成も本発明で規定する範囲内にある試験番号7、試験番号18及び試験番号22の場合、液体ホーニング後にショットピーニングによって表面を荒らすことなくバレル研磨する(ハ)の方法によって表面仕上げしたため、その荷重移動方向の表面粗さにおける「Rpk+0.5Rk」はそれぞれ、0.13μm、0.12μm及び0.12μmと低い。このため、焼付きが頻発して、ピッチング強度は目標に達しなかった。
鋼B及び鋼Jを用いたため、母材部の化学組成が本発明で規定する範囲内にある試験番号8、試験番号19、試験番号21、試験番号23及び試験番号25の場合、ショットピーニング後に研削を施さない(ヘ)の方法によって表面仕上げしたため、その荷重移動方向の表面粗さにおける「Rpk+0.5Rk」はそれぞれ、2.52μm、3.31μm、2.30μm、2.84μm及び2.22μmと大きい。このため、ピッチング強度は目標に未達であった。
また、鋼Jを用いたため、母材部の化学組成が本発明で規定する範囲内にある試験番号20の場合、油焼入れの際の油温が200℃で浸炭焼入れ後に不完全焼入れ組織が生成し、これを液体ホーニングで除去しきれなかったために、油温60℃の油で焼入れした浸炭焼入れ品に対し、ショットピーニングで表面が荒れ、「Rpk+0.5Rk」が0.8以上となったので、ピッチング強度は目標に未達であった。
更に、化学組成が本発明の規定から外れた鋼K〜Pを用いたため、母材部の化学組成も本発明で規定から外れる試験番号26〜31のうちで、試験番号26〜30は内部の非金属介在物を起点とするスポーリング破壊を生じ、ピッチング強度は目標に達しなかった。また、試験番号31は、Pの含有量が本発明の規定を超えるために、ピッチング強度は目標に未達であった。
これに対して、本発明で規定する条件を満たす試験番号1〜6、試験番号9〜17及び試験番号24の場合には、ローラーピッチング試験におけるピッチング強度は、基準とする試験番号32のピッチング強度である2000MPaを超える大きな値であることが明らかである。なお、試験番号24は、油焼入れの際の油温が200℃であったが、表面硬化処理として浸炭窒化焼入れを用いたので、不完全焼入れ組織は生成しなかった。
上記の本発明で規定する条件を満たす試験番号のうちでも、Nb、Ti及びVのいずれをも含まない場合に前記(2)式で表されるAの値の最小値が13以上である試験番号9、試験番号11及び試験番号13のピッチング強度は一層良好であり、また、Nb、Ti及びVの1種以上含む場合に前記(2)式で表されるAの値の最小値が15以上である試験番号2〜6、試験番号12、試験番号14〜17及び試験番号24のピッチング強度は一層良好である。
以上、本発明を1実施例を用いて具体的に説明したが、本発明はもとより前記実施例によって制限を受けるものではなく、既に述べた趣旨に適合し得る範囲で適宜変更を加えて実施することが可能であり、それらはいずれも本発明の技術範囲に含まれる。
本発明の表面硬化処理を施された歯車は、ピッチング強度に優れ、ローラーピッチング試験において2000MPaを超えるピッチング強度を有するので、自動車の変速機に使用される歯車やミッションシャフト中の歯車などに用いることができる。また、この表面硬化処理を施された歯車は、二硫化モリブデンコーティングなど固体潤滑処理を省略できるので、製品コスト削減の効果も大きい。
(2)式で表されるAの最小値(図では「A値」と表記)と、Nb、Ti及びVの含有とが、表層から100μmの領域をSEM観察した場合のベイナイト組織とパーライト組織の存在の有無に及ぼす影響について示す図である。 ローラーピッチング試験で用いた小ローラーの形状を示す図である。 実施例で実施した浸炭処理又は浸炭窒化処理を説明する図である。 ローラーピッチング試験で用いた大ローラーの形状を示す図である。
符号の説明
1:ローラーピッチング試験用小ローラーの試験部、
2:ローラーピッチング試験用小ローラーの掴み部

Claims (5)

  1. 質量%で、C:0.1〜0.3%、Si:0.02〜0.6%、Mn:0.3〜1.5%、S:0.003〜0.050%、Cr:0.2〜2.0%、Al:0.005〜0.05%及びN:0.005〜0.025%を含有し、残部はFe及び不純物からなり、不純物中のO(酸素)は0.002%以下、Pは0.025%以下である鋼材を母材部とする表面硬化処理された歯車であって、歯車表面の荷重移動方向の表面粗さが下記(1)式を満足することを特徴とする歯車。
    0.2μm≦Rpk+0.5Rk≦0.8μm・・・(1)
    なお、Rpk及びRkはそれぞれ、歯車表面の荷重移動方向の表面粗さ負荷曲線における、突出山部高さ(μm)及びコア部のレベル差(μm)を表す。
  2. 母材部が、Feの一部に代えて、質量%で、Mo:0.1〜0.8%を含有することを特徴とする請求項1に記載の歯車。
  3. 下記(2)式で表されるAの値が13以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の歯車。
    A=(1+0.681Si)×(1+3.066Mn+0.329Mn2)×(1+2.007Cr)×(1+3.14Mo)・・・(2)
    なお、(2)式中の元素記号は、歯車の表面から深さ0.1mm以内の領域におけるその元素の質量%での含有量のうち最低値を表す。
  4. 母材部が、Feの一部に代えて、質量%で、Nb:0.01〜0.08%、Ti:0.01〜0.20%及びV:0.01〜0.20%のうちの1種又は2種以上を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の歯車。
  5. 下記(2)式で表されるAの値が15以上であることを特徴とする請求項4に記載の歯車。
    A=(1+0.681Si)×(1+3.066Mn+0.329Mn2)×(1+2.007Cr)×(1+3.14Mo)・・・(2)
    なお、(2)式中の元素記号は、歯車の表面から深さ0.1mm以内の領域におけるその元素の質量%での含有量のうち最低値を表す。
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