JP2006219719A - インジウムの回収方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】、
Zn、Fe、Cu、Al、Ga、As、Cd等の金属不純物を含むインジウム含有物から、高い回収率をもってインジウムを回収することができ、且つ、当該設備をコンパクトなものとすることのできるインジウムの回収方法を提供する。
【解決方法】
SO浸出工程で得られたインジウム含有浸出液へ、所定量の水酸化カルシウムを添加し、さらに水酸化ナトリウムを添加してpH2〜2.5の範囲に制御して、形成された石膏を除去した後、亜鉛末を添加してインジウムをインジウムスポンジとして置換析出させ、且つ、当該置換析出に伴い生成する置換后液を前工程に繰り返すことなく排水処理工程へ送る。
【選択図】 図1

Description

本発明は、インジウム含有物からインジウムを回収する方法に関する。
現在、インジウムは、III-V族化合物半導体としてInP、InAs等の金属間化合物に、あるいは太陽電池用材料等として、錫をドープした酸化インジウム(ITO)の形で透明導電性薄膜に利用されており、今後その需要は益々伸長するものと期待されている。しかし、インジウムには主たる鉱石がなく、工業的には亜鉛製錬、鉛製錬の副産物として、例えば、製錬時のばい煙中に濃縮されたインジウムを回収することにより生産されている。したがってインジウム回収の原料は、Zn、Fe、Cu、Al、Ga、As、Cd等の金属不純物を多く含んでおり、またこれら金属成分以外にも微量に含まれる成分の種類が多い。このため、これら金属不純物を除去し、高純度のインジウムを回収するには複雑な工程が必要となる。
そこで、本発明の出願人は、インジウム含有物からインジウムを回収する方法について、特許文献1を提案した。
以下、図面を参照しながら特許文献1に係るインジウム含有物からインジウムを回収する方法について簡単に説明する。
図3は、従来の技術に係るインジウムの回収工程の一例を示すフロー図である。
(1)は、原料であるインジウム含有物を酸で浸出処理し、インジウムと共に酸に可溶な金属を溶解して浸出液を得る連続的な第1の酸浸出工程である。
(2)は、酸化還元電位を調整しながら、前記(1)の工程で得られた浸出液に硫化剤を添加し、Cu等のインジウム以外の金属を沈殿除去する、脱銅(Cu等の除去)工程である。
(3)は、前記(2)の工程で得られたインジウム含有浸出液に硫酸と硫化剤とを添加して、インジウムを硫化物として沈殿濃縮する硫化沈殿工程である。
(4)は、前記(3)の工程で得られたインジウム硫化物に硫酸酸性下でSO2ガスを吹き込むことによりインジウムを選択的に浸出してインジウム含有浸出液を得るSO2浸出工程である。
(5)は、前記(4)の工程で得られたインジウム含有浸出液へ、アルカリ金属を添加してpH2〜2.5とし、金属粉(亜鉛粉)を添加し、インジウムスポンジを置換析出させる置換析出工程である。
(6)は、前記(5)の工程で得られたインジウムスポンジを塩酸等の酸で浸出し、インジウム含有浸出液を得る第2の酸浸出工程である。残査となったスポンジ滓は、(4)で説明したSO2浸出工程へ循環される。
(7)は、前記(6)の工程で得られたインジウム含有浸出液に硫化剤を添加し、Cd等の残留金属イオンを沈殿除去して電解元液を得るCd等の除去工程である。生成したカドミ残査は、(4)で説明したSO2浸出工程へ循環される。
(8)は、前記(7)の工程で得られた電解元液を電解して高純度の金属インジウムを得る電解回収工程である。
尚、(5)の工程で生成した、インジウムスポンジ析出後のろ過液(置換后液)(10)は、(3)で説明した硫化沈殿工程へ循環される。
特開平11−269570号公報
特許文献1に記載した発明により、Zn、Fe、Cu、Al、Ga、As、Cd等の金属不純物を含むインジウム含有物から、高純度のインジウムを回収することが可能になった。しかし、当該方法では、(5)で説明したインジウムスポンジを置換析出させる置換析出工程において、インジウムは、亜鉛末との置換反応により一旦はインジウムメタルとして沈殿するが、このインジウムメタルをろ過回収している間に、インジウムメタルが再溶解してしまい、排出される置換后液(10)中のインジウム濃度が0.5g/lと高くなるため、インジウムの回収率が低い。そこで、特許文献1に記載した発明では、当該置換后液(10)を、硫化沈殿工程(3)へ繰り返し、再度インジウムを回収する構成を採っている。しかし当該構成を採ることで、インジウム回収率を上げるのに限界があるのと同時に、当該繰り返しのため、硫化沈殿回収工程以降の設備が大規模なものとなるという課題があった。
本発明は、上述の課題を解決するために成されたものであり、Zn、Fe、Cu、Al、Ga、As、Cd等の金属不純物を含むインジウム含有物から、高い回収率をもってインジウムを回収することができ、且つ、当該設備をコンパクトなものとすることのできるインジウムの回収方法を提供するものである。
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を続けた結果、本発明に到達することができた。
すなわち、課題を解決するための第1の構成は、
インジウム含有物に酸を加えて浸出処理し、第1の浸出液を得る工程と、
第1の浸出液からインジウム硫化物を得、得られたインジウム硫化物を硫酸酸性下でSO2浸出して第2の浸出液を得る工程と、
第2の浸出液に中和剤を添加して中和した後、当該中和された浸出液からインジウムを置換析出させ、当該置換析出したインジウムに酸を加えて浸出処理し、第3の浸出液を得る工程と、
第3の浸出液を電解して金属インジウムを得る工程と、を有するインジウムの回収方法であって
前記第2の浸出液へ添加する中和剤として、アルカリ土類金属の化合物とアルカリ金属の化合物とを添加することを特徴とするインジウムの回収方法である。
第2の構成は、
前記第2の浸出液へ、中和剤としてアルカリ土類金属の化合物とアルカリ金属の化合物とを、添加する際、まず、アルカリ土類金属の化合物を添加し、次に、アルカリ金属の化合物を添加して、前記第2の浸出液のpHを2〜2.5とすることを特徴とする第1の構成に記載のインジウムの回収方法である。
第3の構成は、
前記アルカリ金属化合物は水酸化ナトリウムであり、アルカリ土類金属化合物は水酸化カルシウムおよび/または炭酸カルシウムであることを特徴とする第1または第2の構成に記載のインジウムの回収方法である。
第4の構成は、
前記インジウム含有物とは、亜鉛鉱石から亜鉛成分を採取した後の残査であることを特徴とする第1〜第3の構成のいずれかに記載のインジウムの回収方法である。
第1〜第4の構成のいずれかに記載のインジウムの回収方法によれば、各種の金属不純物を含むインジウム含有物から、高い回収率をもってインジウムを回収することができた。
本発明は、Zn、Fe、Cu、Al、Ga、As、Cd等の金属不純物を含むインジウム含有物を広く出発原料として採用し得るが、ここでは、湿式亜鉛製錬に際して副生するインジウム含有物に適用する場合を例として説明する。
以下、本発明に係るインジウム回収方法の工程を、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明に係るインジウムの回収工程の一例を示すフロー図である。
図1において(1)の工程は、第1の酸浸出工程である。
当該工程は、中和石こうを硫酸等の酸で浸出する工程で、インジウムと共にCu、As、Al、Fe、Zn、Ga等の酸に可溶な不純物金属イオンが浸出され、不溶性石こうとのスラリーが形成される。当該第1の酸浸出に使用する酸としては、硫酸の他に塩酸、硝酸等を使用でき、硫酸に制限されるものではないが硫酸が最も安価で好ましい。尚、インジウムを浸出する場合の最終硫酸濃度は、20〜40g/lが好ましい。尚、最終硫酸濃度とは、前記酸に可溶な不純物金属の溶解が終了した時点での硫酸濃度の意味である。
(2)の工程は、脱銅工程である。
第1の酸浸出工程で得られたスラリー状の第1の浸出液へ、H2S、NaSH等の硫化剤を加え、当該第1の浸出液の酸化還元電位(以下、Ehと記載する。)が50〜320mV(Ag/AgCl電極を使用して測定した場合)の範囲内に入るように制御する。すると、当該硫化剤の添加により、Cu、As等の不純物が硫化物として沈殿除去される。このとき、上述したように、硫酸濃度が20〜40g/lに制御されているとインジウムは沈殿しない。この結果、当初の中和石こう中に含まれるインジウムの90%以上が硫酸酸性溶液中に移行する。
第1の酸浸出工程および脱銅工程の処理により、インジウムの90%以上が硫酸酸性溶液中に移行しているので、例えばフィルタープレス等を用いて、当該硫酸酸性溶液と沈殿物(銅残渣)とを固液分離する。この時、一般的には硫化物の濾過性は悪いが、浸出時の不溶性石こうが濾過助剤の働きをするため濾過性が著しく改善される。分離された銅残渣は亜鉛製錬の本系統へ送ることができる。
(3)の工程は、硫化沈殿工程である。
脱銅工程で得られたインジウムを含有する硫酸酸性溶液へ、H2S、NaSH等の硫化剤と硫酸と同時に添加して、インジウムを硫化物(硫化インジウム)として沈殿させる。そして当該インジウムの硫化物を、フィルタープレス等を用いて固液分離して回収することで、液中に残るZn、Fe、Al、Ga等の不純物を分離除去する。この時、インジウムを含有する硫酸酸性溶液中からのインジウム回収率は95%以上であり、ろ液(硫化后液)のインジウム濃度は、最大でも0.15g/l以下であるので、当該ろ液は排水系統へ送ることができる。
(4)の工程は、SO浸出工程である。
硫酸酸性下の硫化沈殿工程で得られた硫化インジウムに硫酸等の酸を加え、SOガスを吹き込みながらへ浸出する。
ここで、硫化物の浸出法には一般に、(a)硫化水素発生型、(b)硫黄生成型、(c)硫酸生成型の3通りの反応型があるが、硫化インジウムを浸出する場合、(a)の反応では溶解度積が小さいため、インジウムを完全に浸出することができない。一方、(b)、(c)の反応では酸化剤として酸素を用いる場合、反応温度、圧力をそれぞれ150℃、12kg/cm2のように高くする必要があるためオートクレーブ等の圧力容器を反応槽としなければならない。さらに、この(b)、(c)の反応でインジウムを浸出することは可能であるが、酸化力が強力であるため、含有している不純物も同様に浸出されてしまう。
そこで、酸化剤としてSO2を用い、(a)と(b)との反応の組み合わせを行ない、酸化力を適度に制御しインジウムは浸出しつつ、他の不純物の浸出を抑える構成を採ることが好ましい。当該構成を採ることで、選択的にインジウムを浸出することができる。この時の温度は常温でもよく、圧力も大気圧でよいため、通常の反応槽を使用することができ好ましい。当該反応後、インジウムの90%以上が浸出液に移行するため、フィルタープレス等を用いて固液分離することで、第2の浸出液であるインジウム含有浸出液を得ることができる。一方、硫黄残渣(ケーキ)は亜鉛製錬の本系統へ送ることができる。
(5)の工程は、中和工程である。
SO浸出工程で得られた第2の浸出液であるインジウム含有浸出液へ、アルカリを中和剤として添加して中和して置換元液を得るが、従来、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属化合物を中和剤として用いていたことに替えて、本発明ではアルカリ土類金属化合物とアルカリ金属化合物とを用いて中和をおこなう。当該中和の目安はpH1〜3.5の範囲、より好ましくはpH2〜2.5の範囲に制御するのが好ましい。pHが1より高ければ、後の工程で置換剤として加える亜鉛末の使用量が過剰となるのを回避でき、pHが3.5以下であればインジウムの水酸化物の生成を回避できるからである。さらに、pHが2〜2.5の範囲にあると、後述するインジウム回収の際の回収率を上げることができる。当該中和に用いるアルカリ金属化合物としては、水酸化ナトリウムが好ましい。一方、アルカリ土類金属化合物としては、炭酸カルシウム、さらに好ましくは水酸化カルシウムであるが、これらを混合して用いても良い。
まず第2の浸出液であるインジウム含有浸出液へ、所定量のアルカリ土類金属化合物を添加する。ここで、アルカリ土類金属化合物の添加量は、第2の浸出液であるインジウム含有浸出液に含有されるインジウム1g当たり、0.2g〜4gの範囲とすることが好ましい。アルカリ土類金属化合物を、インジウム1g当たり、0.2g以上添加すれば当該添加効果が現れ、4g以下の添加とすれば、生成する石膏に付着することによるインジウムのロスを抑制することが出来るからである。当該アルカリ土類金属化合物の添加後、さらに、アルカリ金属化合物を添加するが、当該添加量を調整してインジウム含有SO2浸出液のpH値を上述した値へ調整し置換元液を調製する。
当該アルカリ土類金属化合物の添加により、置換元液中の硫酸分と反応して不溶性の塩が形成され、例えば、アルカリ土類金属としてカルシウムを用いた場合は石膏が形成される。ここで、形成された不溶性の塩(例えば石膏)をフィルタープレス等によりろ過し、置換元液中より除去する。除去された石膏等は亜鉛製錬の本系統へ送ることができる。
(6)の工程は、置換析出工程である。
置換元液のpHの調整後、インジウムよりイオン化傾向の大きい金属の粉末、例えば亜鉛末を添加して、インジウムをインジウムスポンジとして置換析出させる。好ましいことに(4)の工程で浸出にSO2 を使用しているため(5)の工程に供するインジウム浸出液中にはSO2 が溶存している。この濃度を0.05〜0.3g/lにコントロールすることによりインジウムスポンジの塊状化を防止することができ、粉状のインジウムスポンジを得ることができる。
当該置換析出工程においては、置換元液中では、含有されるインジウムがインジウムスポンジとして析出する反応と、一旦はインジウムスポンジとして析出したインジウムが、置換元液に再溶解する反応が進行する。この結果、当該置換元液中のインジウム濃度は、まず低下し、極小値を経た後、再び上昇する。そこで、当該インジウム濃度の極小値前後(即ち、インジウムスポンジ生成量の極大値前後)において、当該置換元液を、フィルタープレス等を用いたろ過により、インジウムスポンジと置換后液(10)とに分離する。
ここで本発明では、上述したように中和剤としてアルカリ金属化合物とアルカリ土類金属化合物とを用いたことで、置換元液中よりのインジウムスポンジの析出を加速し、且つ、当該インジウムスポンジが、置換元液へ再溶解するのを遅延させることができた。その結果、置換元液中でのインジウム濃度の極小値の値自体が減少し、且つ、当該極小値をとっている時間が延長されて、上述したフィルタープレス等を用いたろ過工程の間、当該状態を保つことが可能となった。
この結果、当該ろ過工程におけるインジウムスポンジの収率を上げることができたと同時に、置換后液(10)に含有されるインジウム濃度を、0.1g/l以下と十分に低下させることができ、各種の金属不純物を含むインジウム含有物から、高い収率をもってインジウムを回収することができる様になった。加えて、置換后液(10)を、硫化沈殿工程(3)へ繰り返すことなく、そのまま排水処理工程へ送ることが可能になった。このため、(3)の硫化沈殿回収工程以降の設備を大幅にコンパクト化することができたと伴に、当該硫化沈殿回収工程における金属濃度(亜鉛濃度)の上昇を回避できるので、SO2使用量を削減することが可能となり、生産コストの削減と環境負荷の軽減という効果を上げることができた。
(7)の工程は、第2の酸浸出工程である。
ろ過工程で分離されたインジウムスポンジを、塩酸等の酸を用いてpHを0.5〜1.5の範囲内、Ehを−400〜−500mVの範囲内にそれぞれコントロールして浸出し、第3の浸出液を得る。この時、インジウムスポンジ中におけるインジウムの90%以上が第3の浸出液に移行するため、フィルタープレス等を用いて固液分離する。浸出残査(スポンジ滓)にはCd、Pb、Ni、As等の微量金属が濃縮されて除去できる。そして、浸出残査(スポンジ滓)は前記(4)SO浸出工程へ繰り返される。
(8)の工程は、Cd等の除去(浄液)工程である。
インジウムを含有した第3の浸出液には、まだCdイオン、Asイオン等が残留している場合がある。そこで、当該第3の浸出液へ硫化剤(例えばH2Sガス)を吹き込み、当該残留物を残査として沈殿させることで最終浄液を行なう。当該残査(カドミ残渣)を固液分離した後の濾液を電解元液とし、当該残査(カドミ残渣)は前記(4)の工程へ繰り返される。
(9)の工程は、電解回収工程である。
浄液工程で得られた電解元液を、アノードにDSA(寸法適格陽極)、カソードにTi板を用いて電解回収を行ない、高純度の金属インジウムを得る。
以下、実施例に基づき、上述した本発明に係る中和工程、置換析出工程、およびろ過工程について図面を参照しながら具体的に説明する。ここで、図2は、縦軸にインジウム濃度(g/l)をとり、横軸には反応時間(分)をとった、置換元液中におけるインジウム濃度の経時変化を示したグラフである。
(実施例1)
上述したインジウム回収工程における、SO2浸出工程で得られたインジウム含有浸出液を、アルカリ金属化合物とアルカリ土類金属化合物とを用いて中和をおこなった。
当該インジウム含有浸出液の組成分析結果は、Zn:40g/l、In:18g/l、Cu:トレース、As:0.1g/lであった。
当該インジウム含有浸出液1リットルに対し、アルカリ土類金属化合物としてCa(OH)2を選択して10g添加した後、さらにアルカリ金属化合物として25%Na(OH)水溶液を選択し、pHが2.2となるように添加して中和をおこない置換元液を得た。
得られた置換元液1リットル中に含有されるインジウムに対し、1.5当量の亜鉛末を添加し、インジウムスポンジを置換析出させた。尚、当該置換析出の反応温度は60℃、反応時間は3hrとした。この時の、置換元液中におけるインジウム濃度の経時変化を図2に実線を用いて示した。
図2より、置換元液中におけるインジウム濃度は、15分後には約0.02g/l迄低下し、50分〜60分後に極小値となり、その後、徐々に増加するが90分後でも約0.02g/lであることが判明した。
このことから、中和工程においてアルカリ土類金属化合物としてCa(OH)2を選択し、10g添加した後、さらにアルカリ金属化合物としてNa(OH)を選択した場合、置換析出開始5分間よりインジウムスポンジを置換析出可能となり、15分後には置換元液中のインジウム濃度が0.1g/l以下となり、当該濃度を150分間維持していた。
即ち、実生産規模のろ過工程においても、全ての液をろ過するのに十分な時間が確保でき、且つ、置換后液中のインジウム濃度を十分に低下させることが可能となった。
この結果、置換后液を、再び硫化沈殿工程へ戻す操作が不要となり、当該置換后液は、そのまま排水処理工程へ送ることが可能になった。
(実施例2)
アルカリ土類金属化合物としてCa(CO3)を選択し、インジウム含有浸出液へ10g添加した以外は、実施例1と同様の操作をおこなった。
この時の、置換元液中におけるインジウム濃度の経時変化を図2に一点鎖線を用いて示した。
図2より、置換元液中におけるインジウム濃度は、90分後には約0.09g/l迄低下し、110分後に極小値となり、その後、徐々に増加するが150分後でも約0.09g/lであることが判明した。
このことから、中和工程においてアルカリ土類金属化合物としてCa(CO3)を選択し、10g添加した後、さらにアルカリ金属化合物として25%Na(OH)水溶液を選択した場合も、置換析出開始75分間よりインジウムスポンジを置換析出可能となり、95分後には置換元液中のインジウム濃度が0.1g/l以下となり、当該濃度を60分間維持していた。
即ち、実生産規模のろ過工程においても、全ての液をろ過するのに十分な時間が確保でき、且つ、置換后液中のインジウム濃度を十分に低下させることが可能となった。
この結果、置換后液を、再び硫化沈殿工程へ戻す操作が不要となり、当該置換后液は、そのまま排水処理工程へ送ることが可能になった。
(比較例1)
実施例1と同様のインジウム含有浸出液へ、25%Na(OH)水溶液を添加してpHが2.2となるように中和をおこない置換元液を得た。
得られえた置換元液1リットル中に含有されるインジウムに対し、1.5当量の亜鉛末を添加し、インジウムスポンジを置換析出させた。尚、反応温度は60℃、反応時間は3hrとした。この時の、置換元液中におけるインジウム濃度の経時変化を図2に破線を用いて示した。
図2より、置換元液中におけるインジウム濃度は、140分後に約0.09g/l迄低下し、それを極小値として、増加に転じするが150分後には約0.10g/lを超えることが判明した。
このことから、中和工程においてNa(OH)を用いた場合、置換析出開始90分間よりインジウムスポンジを置換析出可能となり、135分後には置換元液中のインジウム濃度が0.1g/l以下となり、当該濃度を維持していたのは15分間以下であった。
即ち、中和工程において25%Na(OH)水溶液を選択した場合、実生産規模のろ過工程において、全ての液をろ過するのに十分な時間が確保することが困難であり、且つ、置換后液中のインジウム濃度を0.10g/l以下に低下させることが困難であった。
この結果、当該置換后液を、そのまま排水処理工程へ送ることは好ましくなく、再び硫化沈殿工程へ繰り返す操作が必要であることが判明した。
本発明に係るインジウムの回収工程の一例を示すフロー図である。 本発明に係る置換元液中におけるインジウム濃度の経時変化を示したグラフである。 従来の技術に係るインジウムの回収工程の一例を示すフロー図である。

Claims (4)

  1. インジウム含有物に酸を加えて浸出処理し、第1の浸出液を得る工程と、
    第1の浸出液からインジウム硫化物を得、得られたインジウム硫化物を硫酸酸性下でSO2浸出して第2の浸出液を得る工程と、
    第2の浸出液に中和剤を添加して中和した後、当該中和された浸出液からインジウムを置換析出させ、当該置換析出したインジウムに酸を加えて浸出処理し、第3の浸出液を得る工程と、
    第3の浸出液を電解して金属インジウムを得る工程と、を有するインジウムの回収方法であって
    前記第2の浸出液へ添加する中和剤として、アルカリ土類金属の化合物とアルカリ金属の化合物とを添加することを特徴とするインジウムの回収方法。
  2. 前記第2の浸出液へ、中和剤としてアルカリ土類金属の化合物とアルカリ金属の化合物とを、添加する際、まず、アルカリ土類金属の化合物を添加し、次に、アルカリ金属の化合物を添加して、前記第2の浸出液のpHを2〜2.5とすることを特徴とする請求項1に記載のインジウムの回収方法。
  3. 前記アルカリ金属化合物は水酸化ナトリウムであり、アルカリ土類金属化合物は水酸化カルシウムおよび/または炭酸カルシウムであることを特徴とする請求項1または2に記載のインジウムの回収方法。
  4. 前記インジウム含有物とは、亜鉛鉱石から亜鉛成分を採取した後の残査であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のインジウムの回収方法。
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