JP5628610B2 - インジウムの回収方法 - Google Patents
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Description
ITOターゲット製造工程では加工を行う際に、切断屑や研磨屑が生じるため、ITOスクラップとして、それらに含まれるインジウムの回収が行われている。
しかし、製造工程で生じる微細な酸化インジウム粉が排水とともに排水処理工程へ送られている。
排水処理工程で生じる排水泥中にはインジウムが酸化物の状態となって存在しており、有価金属であるインジウムを有効に活用するためには、排水泥から酸化インジウムを回収して利用する技術の確立が不可欠である。
しかし、排水泥中にはインジウムのほかにカルシウムやコバルト、銅、ニッケル、マンガン、亜鉛、鉄、スズなどの不純物も含まれるため、インジウムの回収を行うにはこれらの不純物を分離する必要がある。
一方、特開2007−270262(特許文献1)には、インジウム、銅、カドミウムの各金属元素を含有するインジウム原料からインジウムを回収する方法において、
該インジウム原料を酸で浸出して前記各金属元素を溶解した酸浸出液を得る工程と、該酸浸出液に硫黄含有物を添加して反応させ前記溶解している銅の一部を硫化銅とし硫化銅含有スラリーを得る1段目工程と、
該硫化銅含有スラリーに硫化剤を添加して前記溶解している銅の残部を硫化物として固液分離し脱銅液と銅残渣を得る2段目工程と、
該脱銅液に硫化剤を添加して固液分離しインジウム含有硫化物を得る硫化工程と、
該インジウム含有硫化物に酸溶液中で還元剤を添加し固液分離して還元液と硫黄含有残渣を得る工程と、
該硫黄含有残渣を前記硫黄含有物として前記1段目工程に繰り返す戻し工程と、を有することを特徴とするインジウム回収方法。が、開示されている。
しかしながらこれらの方法であっても、本願の目的は、解決できない。
(1)硫酸によりpHを2.0〜3.0に調整して、酸化インジウムを含む排水泥から不純物を浸出して分離し、インジウムを含む残渣を回収する第一の浸出工程と、硫酸により硫酸濃度を100g/L以上に調整して、第一の工程からの浸出残渣からインジウムを浸出して回収する第二の浸出工程とを有することを特徴とするインジウムの回収方法。
(2)上記(1)に記載された方法において、第二の浸出工程に続いてさらにインジウムを含む浸出液に苛性ソーダを添加し、中和物として水酸化インジウムを回収する中和工程、
水酸化インジウムを含む中和物から不純物を浸出して分離するアルカリ処理工程、
硫酸によりインジウムを含むアルカリ処理後の残渣からインジウムを浸出し、さらに水硫化ソーダにより不純物を取り除きインジウムを回収する硫酸浸出兼硫化工程、
インジウムを含む水溶液に金属亜鉛を投入し、インジウムを粗スポンジとして回収し、亜鉛より卑な金属不純物を後液中に分離する亜鉛粗置換工程、
粗スポンジインジウムを塩酸により溶解する塩酸溶解工程、
塩酸溶解後のインジウムを含む溶液に金属を投入することにより、インジウムよりも貴な不純物金属イオンを金属に置換し取り除くインジウム置換工程、
インジウムを含む溶液に金属亜鉛を投入し、インジウムを精スポンジとして回収する亜鉛精置換工程を含む(1)に記載のインジウムの回収方法。
(3)上記(2)の工程に加えて、精スポンジインジウムを鋳造し、電解精製により電気インジウムとして回収する鋳造、電解工程、電気インジウムを鋳造しインジウムインゴットを得る製品鋳造工程を含むインジウムの回収方法。
(4)硫酸浸出により回収した浸出液に苛性ソーダを添加し、中和物として水酸化インジウムを回収する条件をpH=5.0〜6.0にする上記(2)または(3)の何れかに記載のインジウムの回収方法。
(5)水酸化インジウムを含む中和物から不純物を浸出させ分離して、インジウムを回収する条件をpH=13以上にする上記(2)〜(4)の何れかに記載のインジウムの回収方法。
(6)硫酸によりインジウムを含むアルカリ処理後の残渣からインジウムを浸出し、さらに水硫化ソーダにより不純物を取り除きインジウムを回収する条件を硫酸浸出の硫酸濃度を100g/L以上にする上記(2)〜(5)の何れかに記載のインジウムの回収方法。
(7)インジウムを含む水溶液に金属亜鉛を投入し、インジウムを粗スポンジとして回収し、インジウムより卑な金属不純物を液中に分離する条件を投入する亜鉛が粉末である上記(2)〜(6)の何れかに記載のインジウムの回収方法。
(8)塩酸溶解後のインジウムを含む水溶液からインジウムよりも貴な不純物金属イオンを金属に置換し取り除く条件を投入する金属が金属インジウムである上記(2)〜(7)の何れかに記載のインジウムの回収方法。
(9)インジウムを含む水溶液に金属亜鉛を投入し、インジウムを精スポンジとして回収する条件を投入する亜鉛が板状の亜鉛板である上記(2)〜(8)の何れかに記載のインジウムの回収方法。
(1)酸化インジウムを含む排水泥から希硫酸浸出により不純物を浸出して分離し、浸出残渣の硫酸浸出によりインジウムを浸出することによりインジウムを効率よく回収できる。
本発明の処理対象物は、酸化インジウムを含む排水泥であり、排水処理工程においてフィルタープレス後、生じるケーキ状のものである。該処理物はインジウムだけでなく、カルシウムやコバルト、銅、ニッケル、マンガン、亜鉛、鉄、スズ、クロムなどの不純物が含まれる。
希硫酸浸出工程として排水泥を水でリパルプした後、硫酸を添加し、pH=2.0〜3.0に調整することにより排水泥中に含まれる不純物であるコバルトや銅、亜鉛、ニッケルを水溶液に浸出する。この操作では酸化インジウムは浸出されないため、ろ別して浸出後残渣として回収することで、分離できる。pHが3.0を超えるとコバルトや銅、亜鉛、ニッケルの浸出率が低く、酸化インジウムと効率よく分離することができない。またpHが2.0未満になると酸化インジウムの浸出が進み、インジウムの回収効率が悪くなる。回収したインジウムを含む残渣物は次の硫酸浸出によってインジウムを回収する。希硫酸浸出によって完全に分離できなかったコバルト、銅、亜鉛、ニッケルなどの不純物は後の処理でさらに分離する。
In3+ + 3OH− → In(OH)3
中和物中には水酸化インジウムだけでなく、銅、鉄、スズの中和物も含まれる。水酸化インジウムを含む中和物はろ過によって回収でき、水溶液中に溶解している不純物と分離する。
pH=13以上に調整することで中和物に含まれる水酸化スズが溶液中に溶解する。
水酸化インジウムは溶解せず残渣中に残るため、ろ過後回収する。
Cu2+ + S2− → CuS
インジウムを含む水溶液はろ過により硫化物と分離して回収する。
3Zn + 2In3+ → 3Zn2+ + 2In
2In + 6H+ → 2In3+ + 3H2
2In + 3Sn2+ → 2In3+ + 3Sn
3Zn + 2In3+ → 3Zn2+ + 2In
pH=2.0に調整した後、1.5時間後にろ過を行い、残渣と希硫酸浸出液を分離し回収した。液濃度はサンプリングを行い、ICP分析によって測定した。表2にpH=2.0での希硫酸浸出における液組成、含有量、浸出率を示し、表3にpH=4.0、3.0、1.0での希硫酸浸出における浸出率を示す。また図2にpHと浸出率の関係を示す。
その後ろ過を行い、インジウムを水酸化インジウムとして回収し、ろ液にはIn濃度が0.016g/Lで、液にInの0.22%が残った。
pH=3.0ではコバルト、銅、亜鉛のほとんどが浸出するため、ろ過によってインジウムを分離し、回収した。
以下に本発明の比較例を説明する。比較例1は表2に示す排水泥の希硫酸浸出に対する比較について説明する。乾燥状態の排水泥200gを純水1000mlにリパルプさせ、硫酸(質量パーセント濃度95%)を添加し希硫酸浸出を行った。まずpH=8.4の元液にpH=4.0となるよう硫酸を添加し、pH値が安定した後、サンプリングを行い、各元素の濃度を測定した。その後同様の方法でpH=1.0に調整しサンプリングを行った。表3にpH=4.0および1.0の各成分における浸出液の浸出率を示す。
pHが4.0ではコバルトや銅、亜鉛、クロムの浸出率が低く、酸化インジウムと効率よく分離することができない。またpHが2.0未満になると酸化インジウムの浸出が進み、インジウムの回収効率が悪い。
比較例2では硫酸浸出において硫酸濃度を50g/Lとすること以外は実施例1と同様の方法で硫酸浸出を行った。その結果、浸出4時間後のIn浸出率は68.6%であり、8時間後のInの浸出率は83.9%であった。硫酸濃度100g/L、4時間後の場合、In浸出率は84.9%であるため、50g/Lでは浸出率が低く、Inの浸出が不十分である。これは硫酸添加量が不十分であるため硫酸濃度が低く、溶出していない酸化インジウムがあるためである。
比較例3では硫酸浸出試験で得られた浸出液を用いた中和に対する比較について説明する。pH条件をpH=4.3としたこと以外は実施例1と同様の方法で、苛性ソーダ添加による中和を行った結果、溶液のインジウム濃度は4.36g/Lであった。このとき液割合では元液に含まれるインジウムの83.8%がまだ水溶液中に溶解しているため、中和物として回収できない。
比較例4は表2に示すアルカリ処理において苛性ソ−ダによるpH調整でpH=9としたこと以外は実施例1と同様の方法でアルカリ処理を行った。しかし、水酸化スズの溶液への溶解は起こらず、スズを不純物として分離できなかった。
これは、苛性ソーダの添加量が不足していたため、pHの値が低く、このpH域ではスズが水酸化スズとして安定しているためである。
比較例5は硫酸浸出兼硫化において硫酸濃度を50g/Lとすること以外は実施例1と同様の方法で硫酸浸出を行った。その結果、浸出4時間後のIn浸出率は68.6%と低く、Inの浸出が不十分である。これは硫酸添加量が不十分であるため硫酸濃度が低く、溶出していない水酸化インジウムがあるためである。
比較例6は表8に示す亜鉛粗置換において、投入する亜鉛の形状を板状にしたこと以外は実施例1と同様の方法で亜鉛粗置換を行った。しかし、反応時間30分後では溶液中のIn濃度は高く、亜鉛による置換反応ができていない。これは亜鉛の形状が板状であることから、表面積が小さく、メタルに還元されるための反応時間が不十分であるためである。
比較例7は表10に示すインジウム置換においてスズ、コバルトなどのインジウムより貴な金属不純物の除去のために投入する金属を亜鉛粉末としたこと以外は実施例1と同様の方法で置換を行った。しかし、スズ、コバルトだけではなく、溶液に溶解した状態で回収したいインジウムが亜鉛に置換され、In濃度は0.001g/Lとなった。これは、投入した亜鉛がインジウムより卑な金属であるためであり、スズ、コバルトのみの置換はできないためである。
比較例8は亜鉛精置換において投入する亜鉛を亜鉛粉末1.8当量としたこと以外は実施例1と同様の方法で、亜鉛精置換を行った。置換反応終了後、インジウムを精スポンジインジウムとして回収した。しかし、この精スポンジインジウムにはインジウムに対して1.3倍の亜鉛が含まれるため、後の鋳造工程によってインジウム電解精製用アノードを鋳造した結果、不純物として亜鉛が多く、インジウムの純度が低くなった。亜鉛粉末の投入量を少なくすると置換反応速度が遅く反応が進まない。したがって亜鉛精置換反応において粉末の亜鉛を投入したためであり、過剰量の亜鉛粉末が置換されることなく精スポンジインジウムに含まれる。
Claims (9)
- 硫酸によりpHを2.0〜3.0に調整して、酸化インジウムを含む排水泥から不純物を浸出して分離し、インジウムを含む残渣を回収する第一の浸出工程と、硫酸により硫酸濃度を100g/L以上に調整して、第一の工程からの浸出残渣からインジウムを浸出して回収する第二の浸出工程とを有することを特徴とするインジウムの回収方法。
- 請求項1に記載された方法において、第二の浸出工程に続いてさらにインジウムを含む浸出液に苛性ソーダを添加し、中和物として水酸化インジウムを回収する中和工程、
水酸化インジウムを含む中和物から不純物を浸出して分離するアルカリ処理工程、
硫酸によりインジウムを含むアルカリ処理後の残渣からインジウムを浸出し、さらに水硫化ソーダにより不純物を取り除きインジウムを回収する硫酸浸出兼硫化工程、
インジウムを含む水溶液に金属亜鉛を投入し、インジウムを粗スポンジとして回収し、亜鉛より卑な金属不純物を後液中に分離する亜鉛粗置換工程、
粗スポンジインジウムを塩酸により溶解する塩酸溶解工程、
塩酸溶解後のインジウムを含む溶液に金属を投入することにより、インジウムよりも貴な不純物金属イオンを金属に置換し取り除くインジウム置換工程、
インジウムを含む溶液に金属亜鉛を投入し、インジウムを精スポンジとして回収する亜鉛精置換工程を含む請求項1に記載のインジウムの回収方法。 - 請求項2に記載の工程に加えて、精スポンジインジウムを鋳造し、電解精製により電気インジウムとして回収する鋳造、電解工程、電気インジウムを鋳造しインジウムインゴットを得る製品鋳造工程を含むインジウムの回収方法。
- 硫酸浸出により回収した浸出液に苛性ソーダを添加し、中和物として水酸化インジウムを回収する条件をpH=5.0〜6.0にする請求項2または3に記載のインジウムの回収方法。
- 水酸化インジウムを含む中和物から不純物を浸出させ分離して、インジウムを回収する条件をpH=13以上にする請求項2〜4の何れかに記載のインジウムの回収方法。
- 硫酸によりインジウムを含むアルカリ処理後の残渣からインジウムを浸出し、さらに水硫化ソーダにより不純物を取り除きインジウムを回収する条件を硫酸浸出の硫酸濃度を100g/L以上にする請求項2〜5の何れかに記載のインジウムの回収方法。
- インジウムを含む水溶液に金属亜鉛を投入し、インジウムを粗スポンジとして回収し、インジウムより卑な金属不純物を液中に分離する条件を投入する亜鉛が粉末である請求項2〜6の何れかに記載のインジウムの回収方法。
- 塩酸溶解後のインジウムを含む水溶液からインジウムよりも貴な不純物金属イオンを金属に置換し取り除く条件を投入する金属が金属インジウムである請求項2〜7の何れかに記載のインジウムの回収方法。
- インジウムを含む水溶液に金属亜鉛を投入し、インジウムを精スポンジとして回収する条件を投入する亜鉛が板状の亜鉛板である請求項2〜8の何れかに記載のインジウムの回収方法。
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