JP7016463B2 - テルルの回収方法 - Google Patents
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Description
また、特許文献1~4の方法は、原料のテルル化銅を出来るだけアルカリ溶解しようとしているので、同時にテルルの酸化が進んでアルカリ性溶液中に溶解し難いテルル酸ソーダ(Na2TeO4)が多く浸出残渣に含まれるようになる。
〔1〕テルル銅含有物をアルカリ浸出する第1アルカリ浸出工程、浸出後に固液分離してテルル浸出液とアルカリ浸出残渣に分離する工程、前記アルカリ浸出残渣を硫酸浸出する硫酸浸出工程を有するテルル回収方法において、第1アルカリ浸出工程で酸化還元電位を-200~-120mVの範囲にして浸出残渣中のテルルの残留を抑制することによって、該浸出残渣の硫酸浸出において酸化銅の選択的な浸出を行い、次いで、酸化銅が浸出された硫酸浸出残渣をアルカリ浸出する第2アルカリ浸出を行ってさらにテルルを浸出することを特徴とするテルルの回収方法。
〔2〕前記テルル銅含有物が銅の電解精製において副生するテルル化銅である上記〔1〕に記載するテルルの回収方法。
〔3〕前記第1アルカリ浸出において、酸化還元電位を-180~-150mVの範囲にして浸出を行う上記〔1〕または上記〔2〕に記載するテルルの回収方法。
〔4〕前記第1アルカリ浸出および前記第2アルカリ浸出において、水酸化ナトリウム溶
液を加えると共に空気または酸素ガスをマイクロバブルにして吹き込み、液温40~50℃で浸出を行う上記〔1〕~上記〔3〕の何れかに記載するテルルの回収方法。
〔5〕前記第1アルカリ浸出工程のテルル浸出液および前記第2アルカリ浸出工程のテルル浸出液を硫化浄液処理して生じた硫化殿物を固液分離し、一方、分離した液分のテルル液を中和して生じた酸化テルルを回収して塩酸溶解し、この塩酸溶解液に還元剤を導入してセレンを沈澱分離させ、この分離した液分のテルル含有溶液にさらに還元剤を導入して、テルルを還元析出させる上記〔1〕~上記〔4〕の何れかに記載するテルルの回収方法。
本発明の処理方法は、テルル銅含有物をアルカリ浸出する第1アルカリ浸出工程、浸出後に固液分離してテルル浸出液とアルカリ浸出残渣に分離する固液分離工程、前記アルカリ浸出残渣を硫酸浸出する硫酸浸出工程を有するテルル回収方法において、第1アルカリ浸出工程で酸化還元電位を-200~-120mVの範囲にして浸出残渣中のテルルの残留を抑制することによって、該浸出残渣の硫酸浸出において酸化銅の選択的な浸出を行い、次いで、酸化銅が浸出された硫酸浸出残渣をアルカリ浸出する第2アルカリ浸出を行ってさらにテルルを浸出することを特徴とするテルルの回収方法である。
本発明のテルル回収方法の概略を図1に示す。
本発明において処理するテルル銅含有物は、例えば、銅の電解精製において副生するテルル化銅(Cu2.72Te2)である。テルル銅含有物をアルカリ浸出する。テルル銅含有物のアルカリ浸出を第1アルカリ浸出工程と云う。第1アルカリ浸出工程で生じたアルカリ浸出液(テルル浸出液)とアルカリ浸出残渣は次工程で固液分離される。
第1固液分離工程において、第1アルカリ浸出工程で生成したアルカリ浸出液(テルル浸出液)とアルカリ浸出残渣が固液分離される。この第1アルカリ浸出残渣は次の硫酸浸出工程において浸出処理される。
硫酸浸出工程において第1アルカリ浸出残渣を硫酸浸出する。第1アルカリ浸出残渣は主に酸化第一銅(Cu2O)および未溶解のテルル化銅(Cu2.72Te2)であり、概ね20~30質量%のテルル化銅が残留している。このテルル化銅は硫酸では溶解し難いので浸出残渣に残るが、次の第2アルカリ浸出工程で浸出される。一方、酸化第一銅は硫酸銅を生じて液中に浸出される。
第2固液分離工程において、硫酸浸出液と硫酸浸出残渣が固液分離され、この硫酸浸出残渣は次の第2アルカリ浸出工程において浸出処理される。
第2アルカリ浸出工程において、酸化銅が浸出された硫酸浸出残渣をアルカリ浸出して残渣中のテルルの浸出を促す。上記硫酸浸出残渣には未溶解のテルル化銅が主に含まれているので、このテルル化銅を第1アルカリ浸出と同様に溶解してテルルを浸出させる。
テルル精製回収工程の一例を図2に示す。図示するように、第1アルカリ浸出工程および第2アルカリ浸出工程のテルル浸出液に水硫化ソーダを加え、微量に溶存している銅イオン、鉄イオン、鉛イオンなどを硫化殿物として除去する。この硫化浄液したテルル含有溶液に硫酸を加えてpH5~6に中和してテルルを粗酸化テルルとして沈降させ、固液分離して回収する。なお、テルル化銅にはセレン化銅などの形態でセレン(Se)が含まれていることがあり、第1アルカリ浸出および第2アルカリ浸出において、セレンの一部は浸出されてテルル浸出液に含まれる。このテルルと共にセレンを含む浸出液をpH5~6に中和すると、テルルは二酸化テルルとして沈降するのに対して、セレンは液中に残るので、固形分のテルル酸化物と濾液に含まれるセレンを固液分離することができる。
アルカリ浸出工程において、酸化剤(空気または酸素)をマイクロバブルにして導入することによって、40℃~50℃の低温で、かつ、迅速にテルルをアルカリ浸出することができる。この低温浸出によって加熱に必要なコストを削減できる、また、テルル化銅中の不純物(シリカ、セレンなど)のアルカリ浸出速度が温度低下に従って低下するのでテルルとこれら不純物との分離効率が上昇する。
〔実施例1:第1アルカリ浸出工程〕
テルル含有率44質量%のテルル化銅と水酸化ナトリウム溶液(NaOH濃度30g/L)をスラリー濃度が100g/Lになるよう混合し、40℃まで加温した。スラリーに空気をマイクロバブルにして吹込み(空気吹込み量は1.75L/L-スラリー/分)テルル浸出を行った。浸出1時間後にスラリーの酸化還元電位(ORP)は-183mVに達した時点を終点として浸出を終了させた。テルル浸出率の経時変化を図3に示した。また、アルカリ浸出前のテルル化銅(原料)のXRDチャートを図4に示し、アルカリ浸出後残渣のXRDチャートを図5に示した。
図3に示すように、ORP-200~-150mVの範囲でテルルの浸出率は約78%になり、従来のアルカリ浸出の浸出率(約80%)と遜色ない結果が得られた。
一方、図4に示すように、原料中のテルルはテルル化銅(Cu2.72Te2)の形態で存在するが、アルカリ浸出後残渣(図5)には主に酸化第一銅(Cu2O)が残る。なお、図5のXRDには未溶解のテルル化銅とテルル酸ソーダに帰属するピークは確認できない。
実施例1の第1アルカリ浸出で生じたアルカリ浸出残渣(Te濃度14質量%)を用い次に示す条件で硫酸浸出を行った。浸出条件は初期硫酸濃度200g/L、浸出温度40~55℃、スラリー濃度75g/Lである。銅とテルル濃度の経時変化を図6に示し、硫酸浸出残渣のXRDチャートを図7に示した。
図6に示すように、浸出開始15分後の銅およびテルル濃度はほぼ一定であることから、浸出反応は概ね15分以内に終了している。また、テルルの浸出は0.4g/L程度に抑制されており、銅が選択的に浸出されていることが確認された。また、図7に示すように、硫酸浸出残渣は主に未溶解の酸化第一銅(Cu2O)およびテルル化銅(Cu2.72Te2)であったことから、硫酸性溶液中可溶なテルル酸ソーダが生成しておらず、アルカリ浸出残渣中のテルルはテルル化銅として残留していることが分かる。
実施例2の硫酸浸出で生じた硫酸浸出残渣(Te濃度24質量%)を用い、第2アルカリ浸出を行った。空気をマイクロバブルにして吹込む量(1.11L/L-スラリー/分)以外の条件は、第1アルカリ浸出と同様な条件で行った。テルル浸出率とORPの経時変化を図8に示した。図8に示すように、ORP-186mVで、テルルの浸出率は約70%になり、第1アルカリ浸出と同様の結果が得られた。
出発原料であるテルル銅含有物のテルル量を100%とすると、第1アルカリ浸出において、浸出液へ78%のテルルが移行され、22%のテルルが第1アルカリ浸出残渣に残った。次の硫酸浸出では、硫酸浸出残渣中にテルルの21%以上が残留し、テルルの1%未満が硫酸浸出液に溶出した。硫酸浸出残渣の第2アルカリ浸出において、21%のテルルの内、15%が浸出液へ移行し、残り6%が第2アルカリ浸出残渣に残留した。この結果、アルカリ浸出液で回収されるテルルの割合は合計93%以上であることが分かる。
実施例1と同様のテルル含有物について、浸出終点のORPを-96mVに設定した以外は実施例1と同様にアルカリ浸出を行った。この結果を図9に示した。図9のテルル浸出率の経時変化より、ORP-120mV以上ではTe浸出率が減少している。また、このアルカリ浸出残渣について、実施例2と同様の条件で硫酸浸出を行ったところ、硫酸浸出液中に多量テルルが溶出された(テルル濃度8.2g/L、原料中テルルに対し約22%)。この結果から、アルカリ浸出残渣に含まれるテルルは主に硫酸に溶解するテルル酸ソーダであることが推察された。
Claims (5)
- テルル銅含有物をアルカリ浸出する第1アルカリ浸出工程、浸出後に固液分離してテルル浸出液とアルカリ浸出残渣に分離する工程、前記アルカリ浸出残渣を硫酸浸出する硫酸浸出工程を有するテルル回収方法において、第1アルカリ浸出工程で酸化還元電位を-200~-120mVの範囲にして浸出残渣中のテルルの残留を抑制することによって、該浸出残渣の硫酸浸出において酸化銅の選択的な浸出を行い、次いで、酸化銅が浸出された硫酸浸出残渣をアルカリ浸出する第2アルカリ浸出を行ってさらにテルルを浸出することを特徴とするテルルの回収方法。
- 前記テルル銅含有物が銅の電解精製において副生するテルル化銅である請求項1に記載するテルルの回収方法。
- 前記第1アルカリ浸出において、酸化還元電位を-180~-150mVの範囲にして浸出を行う請求項1または請求項2に記載するテルルの回収方法。
- 前記第1アルカリ浸出および前記第2アルカリ浸出において、水酸化ナトリウム溶液を加えると共に空気または酸素ガスをマイクロバブルにして吹き込み、液温40~50℃で浸出を行う請求項1~請求項3の何れかに記載するテルルの回収方法。
- 前記第1アルカリ浸出工程のテルル浸出液および前記第2アルカリ浸出工程のテルル浸出液を硫化浄液処理して生じた硫化殿物を固液分離し、一方、分離した液分のテルル液を中和して生じた酸化テルルを回収して塩酸溶解し、この塩酸溶解液に還元剤を導入してセレンを沈澱分離させ、この分離した液分のテルル含有溶液にさらに還元剤を導入して、テルルを還元析出させる請求項1~請求項4の何れかに記載するテルルの回収方法。
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