JP5382269B1 - レニウムと砒素の分離方法、並びにレニウムの精製方法 - Google Patents
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Abstract
レニウムと砒素とを含有する原料から、不純物である砒素を安定な形態で分離除
去でき、レニウム精製プロセスにおける砒素の循環量を低減して低砒素品位のレニウムを安定して得ることを目的とする。本発明では、レニウム及び砒素を含有する原料を酸化して浸出し、過レニウム酸、砒酸、亜砒酸を含む浸出液と砒酸塩を含有する浸出残渣とに分離し、その浸出液からレニウムを精製するレニウム精製プロセスにおけるレニウムと砒素の分離方法であって、浸出液にアルカリを添加し、砒素を含有する沈殿とレニウムを含有する溶液とを得て、得られたレニウムを含有する溶液からレニウムを分離し、得られた砒素を含有する沈殿及び砒酸塩を含有する浸出残渣のいずれか一方又は両方にアルカリを添加して砒素を含有する溶液と水酸化物沈殿を得て、得られた砒素を含有する溶液中の砒素を沈殿物として固定する。
去でき、レニウム精製プロセスにおける砒素の循環量を低減して低砒素品位のレニウムを安定して得ることを目的とする。本発明では、レニウム及び砒素を含有する原料を酸化して浸出し、過レニウム酸、砒酸、亜砒酸を含む浸出液と砒酸塩を含有する浸出残渣とに分離し、その浸出液からレニウムを精製するレニウム精製プロセスにおけるレニウムと砒素の分離方法であって、浸出液にアルカリを添加し、砒素を含有する沈殿とレニウムを含有する溶液とを得て、得られたレニウムを含有する溶液からレニウムを分離し、得られた砒素を含有する沈殿及び砒酸塩を含有する浸出残渣のいずれか一方又は両方にアルカリを添加して砒素を含有する溶液と水酸化物沈殿を得て、得られた砒素を含有する溶液中の砒素を沈殿物として固定する。
Description
本発明は、レニウムと砒素の分離方法、並びにレニウムの精製方法に関し、より詳しくは、レニウム精製プロセスにおいて非鉄金属の硫化鉱物などに含有されるレニウムと砒素とを効率よく分離し安定して回収することを可能にするレニウムと砒素の分離方法、並びにレニウムの精製方法に関する。
本出願は、日本国において2012年3月2日に出願された日本特許出願番号特願2012−046645を基礎として優先権を主張するものであり、これらの出願を参照することにより、本出願に援用される。
本出願は、日本国において2012年3月2日に出願された日本特許出願番号特願2012−046645を基礎として優先権を主張するものであり、これらの出願を参照することにより、本出願に援用される。
レニウム(Re)は、天然には主として輝水鉛鉱(Molybdenite, MoS2)中に存在することが多い。また、黄銅鉱(Chalcopyrite, CuFeS2)などの硫化鉱物中にも輝水鉛鉱がしばしば共存するため、レニウムは、モリブデンや銅の製錬工程の副産物として回収されてきた。
レニウムが存在するこれらの輝水鉛鉱と黄銅鉱は、通常の選鉱方法によって完全に相互分離することは困難であることが知られている。そのため、黄銅鉱から銅を回収する乾式製錬工程に輝水鉛鉱も同時に投入して熔融し、揮発したレニウムを含む排ガスをガス洗浄工程で捕集し、そこからレニウムを分離する方法が用いられている。
このとき、そのガス洗浄工程で回収される洗浄液には、レニウム以外にも砒素、銅、亜鉛、カドミウムなどの、複数で且つレニウムに比べてはるかに大過剰な金属も共存するようになる。これらの元素を洗浄液から回収する方法として、これまでは、洗浄液に硫化水素ガスや硫化ナトリウム、水硫化ナトリウムなどの硫化剤を添加し、硫化物の沈澱を生成する方法が多く用いられてきた。しかしながら、この方法では、レニウムも硫化物として容易に沈澱を生成するので、レニウムを選択的に回収することはできなかった。
そこで、従来、複数の元素の混合物からレニウムを選択分離するために、イオン交換法を用いた操業が行われてきた。例えば、特許文献1には、非鉄金属製製錬工程から発生する亜硫酸ガス洗浄液の硫酸濃度を70g/l以上に保持し、その亜硫酸ガス洗浄液に硫化水素ガスを吹き込むか又は可溶性の硫化物を添加して、酸化還元電位120〜150mV(対銀−塩化銀電極)の条件下でレニウムを含む硫化物沈澱を生成させ、次にその硫化物沈澱を酸性水溶液中で硫酸銅と混合することによりレニウムを含む水溶液とし、得られた含レニウム水溶液を第4級アンモニウム塩陰イオン交換物質に接触させてレニウムを選択的に吸着させて回収するレニウムの回収方法が示されている。
この特許文献1の方法では、陰イオン交換樹脂に吸着したレニウムを溶離する際にチオシアン化アンモニウム水溶液を用いることになる。しかしながら、チオシアン化アンモニウムが分解すると有毒なシアン化物イオンも生成する可能性があり、また、チオシアン化アンモニウムが分解した化合物を含む排水は、化学的酸素要求量(COD)や窒素濃度が高くなるなどの環境負荷が大きく、排水を処理するのに必要な薬品のコストが高くつくなど、工業的な実施は有利ではなかった。
また、イオン交換法を用いたプロセスでは、設備投資額が比較的大きくなる。このため、処理する対象によっては、設備能力の最適化などの生産効率を高める設計や操業が難しくなるという問題もあった。
さらに、例えば、モリブデンの製錬工程やレニウムを含有する廃触媒をリサイクルする場合など、原料中のレニウム品位が比較的高く且つ安定して含有される場合には大きな問題とはならないが、銅製錬の副産物として産出するレニウムを回収する場合などでは、原料となる銅鉱石中のレニウム品位が不安定で大きく変動する。そのため、効率よく低コストで操業する設備を設計し運転することは容易ではなく、不純物濃度に関しても原料に大きく影響されるため、安定的に高効率で分離を行うことは困難となる。
このことから、最近では、例えば特許文献2に示すように、沈殿分離法を組み合わせてレニウムを選択的に分離するプロセスも提案されている。
特許文献2で開示されているプロセスは、原料中のレニウムの含有量が大きく変動しても、安定して効率よく低コストでレニウムを分離することを可能にする方法である。具体的には、銅、亜鉛、カドミウム、砒素のいずれか1種類以上の元素及び過レニウム酸を含有する溶液からレニウムを分離する方法であって、溶液に水酸化ナトリウムなどのアルカリを添加して沈殿物を生成し、その沈殿物を含む溶液を固液分離する第1工程と、得られた分離液に硫酸などの酸を添加し、当量濃度1.0規定以上4.0規定以下の範囲に酸濃度を調整する第2工程と、得られた調整液に硫化水素ナトリウムなどの硫化剤を添加して硫化殿物を生成し、その硫化殿物を硫化後液から分離する第3工程とを有するものである。
しかしながら、特許文献2の方法を用いた場合、レニウム原料中に砒素が高濃度で含有している場合には、製品レニウムの品質維持の点で特に問題となっていた。砒素はレニウムから分離が困難な不純物の一つであるが、一方で製品レニウムの砒素品位を1重量%未満に抑制することが必要とされ、原料中の砒素品位を低減することが必要となる。ところが、原料中の砒素は、レニウムを浸出した後の浸出残渣か、若しくは精製過程で発生する砒素を含む沈殿物のいずれかに分配される。これらの浸出残渣や沈殿物に含まれる砒素をはじめとする不純物は化学的に不安定であるために、その浸出残渣や沈殿物を乾式製錬工程に繰り返すことによって、一部の不純物を安定なスラグに分配して分離するしか有効な固定方法がなく、繰り返した砒素が再びレニウム原料に分配されて砒素負荷が上昇し続けてしまうことになっていた。
化学的・環境的に砒素を安定した形態で固定するには、砒素を上述した乾式製錬法の炉から排出されるスラグとして分配する方法がある。スラグ中では砒素はガラス固化された状態となるので、化学的に安定であり最も好ましい。しかしながら、工業的な操業においては、砒素のスラグへの分配には一定の限度があり、全量をスラグとして固定することは工業的には容易ではない。
一方で、砒素を安定した形態で固定する方法として、例えば特許文献3に示されるように、スラグに匹敵する程度に安定した形態であるスコロダイトと呼ばれる砒酸鉄の形態に変換する方法がある。特許文献3の方法は、砒素含有液中に多少の不純物元素が存在していても、その液を処理することによって結晶性の良いスコロダイト化合物であって水分などによる膨潤が少ないコンパクトな形の化合物、つまりろ過性に優れた鉄砒素化合物の合成を可能にする技術を提供するものである。具体的には、砒素イオンと2価の鉄イオンを含み、砒素濃度が15g/L以上である水溶液に酸化剤を添加して液を撹拌しながら鉄砒素化合物の析出反応を進行させ、液のpHが0〜1.2の範囲で析出を終了させるというものである。
しかしながら、特許文献3には、レニウムと砒素とを含有する硫化物等の原料から、レニウムの品質を安定的に維持しながら砒素を安定形態で払い出すことについては何ら示されていない。また、この特許文献3の方法は、砒素を硫化物から高濃度に浸出し、低pHの条件で砒酸鉄(III)の沈殿を形成する方法であって、砒素とレニウムとを不完全に分離する方法であるため、砒素分離後における母液中のレニウムに対する砒素の割合(As/Re比)が高くなり、レニウム精製時の砒素除去負荷が極めて高い。
このように、レニウムと砒素とを含有する原料からレニウムの品質を維持して、不純物としての砒素を安定した形態で払い出す一連の方法において、工業的に実用可能な方法は提案されていない。
そこで、本発明はこのような実情に鑑みて提案されたものであり、レニウムと砒素とを含有する硫化物などの原料から、不純物である砒素を安定な形態で分離除去することができ、レニウム精製プロセスにおける砒素の循環量を低減して負荷を減少させ、低砒素品位のレニウムを安定して得ることを可能にするレニウムと砒素の分離方法、並びにレニウムの精製方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上述した目的を達成するために鋭意検討を重ねた。その結果、レニウムと砒素とを含有する原料を浸出して得られる浸出残渣及び精製過程で発生する沈殿物はいずれも溶解度が0.1g/l未満の水に溶解し難い種々の砒酸塩の混合物の形態であることに着目し、これらをアルカリと反応させて砒素を水に溶解し易い形態に変えるように浸出して回収し、一方でその他の銅などの不純物を水に溶解し難い水酸化物として固定することによって、レニウムと砒素とを効果的に分離でき、レニウム精製プロセスでの砒素の循環量を低減できることを見出した。
すなわち、本発明に係るレニウムと砒素の分離方法は、レニウム及び砒素を含有する原料を酸化して浸出し、過レニウム酸、砒酸、亜砒酸を含む浸出液と砒酸塩を含有する浸出残渣とに分離し、該浸出液からレニウムを精製するレニウム精製プロセスにおけるレニウムと砒素の分離方法であって、上記浸出液にアルカリを添加し、砒素を含有する沈殿とレニウムを含有する溶液とを得る中和浄液工程と、上記中和浄液工程にて得られたレニウムを含有する溶液からレニウムを分離するレニウム分離工程と、上記中和浄液工程にて得られた砒素を含有する沈殿及び上記砒酸塩を含有する浸出残渣のいずれか一方又は両方にアルカリを添加し、砒素を含有する溶液と水酸化物沈殿を得る沈殿物分解工程と、沈殿物分解工程にて得られた砒素を含有する溶液中の砒素を沈殿物として固定する砒素固定工程とを有することを特徴とする。
ここで、上記中和浄液工程では、上記浸出液にアルカリを添加する前又は同時に、該浸出液に2価の水溶性鉄化合物を添加するとともに酸化剤を添加し、該浸出液中の砒素を砒酸鉄の沈殿とすることが好ましい。
また、上記酸化剤は空気であり、浸出液に該空気をバブリングすることによって添加することが好ましい。
また、上記酸化剤により、上記浸出液の酸化還元電位を−400mV以上とすることが好ましい。
また、上記水溶性鉄化合物の添加量は、上記浸出液中の3価の鉄のモル数が、該浸出液中に含まれる5価の砒素のモル数に対して3倍量以上のモル数となる量に相当する量とすることが好ましい。
また、上記沈殿物分解工程では、砒素を含有する沈殿及び/又は砒酸鉄を含有する残渣にアルカリを添加する際に、pHを12.0以上13.3以下の範囲に調整することが好ましい。
また、上記沈殿物分解工程において添加するアルカリは、水酸化アルカリであることが好ましい。
本発明に係るレニウムの精製方法は、レニウム及び砒素を含有する原料を酸化して浸出し、過レニウム酸、砒酸、亜砒酸を含む浸出液と砒酸塩を含有する浸出残渣とに分離し、該浸出液からレニウムを精製するレニウムの精製方法であって、上記浸出液にアルカリを添加し、砒素を含有する沈殿とレニウムを含有する溶液とを得る中和浄液工程と、上記中和浄液工程にて得られたレニウムを含有する溶液を分離し、該溶液に硫化剤を添加して硫化レニウムを得るレニウム精製工程と、上記中和浄液工程にて得られた砒素を含有する沈殿及び上記砒酸塩を含有する浸出残渣のいずれか一方又は両方にアルカリを添加し、砒素を含有する溶液と水酸化物沈殿を得る沈殿物分解工程と、沈殿物分解工程にて得られた砒素を含有する溶液中の砒素を沈殿物として固定する砒素固定工程とを有することを特徴とする。
本発明によれば、レニウムと砒素とを含有する硫化物などの原料から、不純物である砒素を安定な形態で分離除去することができ、レニウム精製プロセスにおける砒素の循環量を低減することができる。そして、これにより、レニウム精製プロセスにおいて、砒素品位の低いレニウムを安定して精製することができる。
また、上述のように砒素の循環量を低減できるので、相対的にレニウム精製プロセスに循環する沈殿物量が減少し、コンパクトな設備でレニウム精製の操業を行うことができる。さらに、原料中の銅についても砒素と分離して回収することができるので、砒素を分離した銅を銅製錬処理に移送することによって、砒素による負荷を低減した銅精錬操業を行うことができ、不純物の少ない銅を精製することができる。
以下、本発明に係るレニウムと砒素の分離方法、並びにレニウムの精製方法について、以下の順序で詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、また図1の工程図は一例を示すものであって、本発明の要旨を変更しない限りにおいて適宜変更することができる。
1.レニウム精製プロセスにおけるレニウムと砒素の分離方法
1−0.浸出工程
1−1.中和浄液工程
1−2.レニウム分離工程
1−3.沈殿物分解工程
1−4.砒素固定工程
2.実施例
1.レニウム精製プロセスにおけるレニウムと砒素の分離方法
1−0.浸出工程
1−1.中和浄液工程
1−2.レニウム分離工程
1−3.沈殿物分解工程
1−4.砒素固定工程
2.実施例
<1.レニウム精製プロセスにおけるレニウムと砒素の分離方法>
本実施の形態に係るレニウムと砒素の分離方法は、レニウム及び砒素を含有する原料を酸化により浸出して過レニウム酸、砒酸、亜砒酸を含む浸出液と砒酸塩を含有する浸出残渣とに分離し、その浸出液からレニウムを精製するレニウム精製プロセスにおけるレニウムと砒素の分離方法である。
本実施の形態に係るレニウムと砒素の分離方法は、レニウム及び砒素を含有する原料を酸化により浸出して過レニウム酸、砒酸、亜砒酸を含む浸出液と砒酸塩を含有する浸出残渣とに分離し、その浸出液からレニウムを精製するレニウム精製プロセスにおけるレニウムと砒素の分離方法である。
具体的に、レニウム精製プロセスにおけるレニウムと砒素の分離方法は、図1に一例として示す工程図にあるように、レニウム及び砒素を含有する硫化物を含む固体を浸出して得られた浸出液にアルカリを添加し、砒素を含有する沈殿とレニウムを含有する溶液とを得る中和浄液工程S1と、中和浄液工程S1にて得られたレニウムを含有する溶液からレニウムを分離するレニウム分離工程S2と、中和浄液工程S1にて得られた砒素を含有する沈殿及び浸出して得られた砒酸塩を含有する浸出残渣のいずれか一方又は両方にアルカリを添加し、砒素を含有する溶液と水酸化物沈殿を得る沈殿物分解工程S3と、沈殿物分解工程S3にて得られた砒素を含有する溶液中の砒素を沈殿物として固定する砒素固定工程S4とを有する。
このようなレニウムと砒素の分離方法によれば、レニウムと砒素とを含有する原料から不純物である砒素を安定な形態で分離除去することができ、レニウム精製プロセスにおける砒素の循環量を低減することができる。そして、これにより、レニウム精製プセスにおいて、砒素品位の低いレニウム化合物(例えば硫化レニウムなど)を安定して精製することができる。
以下では各工程について順に説明する。なお、図1の工程図にも示しているように、レニウムと砒素とを含有する原料を浸出する浸出工程S0(浸出液の生成処理)から順に説明する。
[1−0.浸出工程]
浸出工程S0では、レニウム及び砒素を含有する原料を酸化して浸出し、過レニウム酸、砒酸、亜砒酸を含む浸出液と砒酸塩からなる浸出残渣とを得る浸出処理を行う。この浸出処理により得られる浸出液が、後述する中和浄液工程S1を経て浄液され、レニウム精製のための溶液となる。
浸出工程S0では、レニウム及び砒素を含有する原料を酸化して浸出し、過レニウム酸、砒酸、亜砒酸を含む浸出液と砒酸塩からなる浸出残渣とを得る浸出処理を行う。この浸出処理により得られる浸出液が、後述する中和浄液工程S1を経て浄液され、レニウム精製のための溶液となる。
レニウムと砒素を含有する原料は、例えば、レニウムと砒素と共にそれ以外の元素を含み、水に溶解し難い硫化物などである。この硫化物は、例えば輝水鉛鉱等の鉱石などの固体物質に含まれている。したがって、この浸出処理では、鉱石などの固体物質を処理対象として、主としてその固体物質に含まれているレニウムと砒素を含む硫化物を後述のように酸化することによって浸出する。
なお、上述のようなレニウムと砒素を含有する原料としての鉱石には、レニウムと砒素の他に、銅、亜鉛、カドミウムなどの元素が含有されている。以下では、非鉄金属製錬における原料となる、これらの鉱石を原料として用いた場合を例に挙げて説明する。
浸出工程S0における浸出処理では、レニウムと砒素を含有する硫化物などの原料を水中で酸化することにより、例えば下記式(1)及び式(2)に従って、原料の硫化物からレニウム及び砒素を浸出し、過レニウム酸、砒酸、亜砒酸を含む浸出液と、後述するように砒酸塩を含有する浸出残渣とを生成する。
2Re2S7+7O2+2H2O → 4HReO4+14S ・・・(1)
2As2S3+5O2+6H2O → 4H3AsO4+6S ・・・(2)
2Re2S7+7O2+2H2O → 4HReO4+14S ・・・(1)
2As2S3+5O2+6H2O → 4H3AsO4+6S ・・・(2)
硫化物などの原料の酸化に際して用いる酸化剤としては、後工程に影響を残さないものを用いることが好ましく、例えば空気、酸素、過酸化水素などを用いることができる。その中でも、空気を用いることが経済性の観点から特に好ましい。
上述した浸出処理において、上記(2)式の反応における速度はそのままでは遅いことが知られている。このため、酸化浸出時には銅(II)イオン(例えば硫酸銅(II))を共存させ、下記式(3)による硫化物の陽イオン交換反応を経由して酸化することが好ましい(下記式(4))。さらに、浸出処理においては、塩化物イオンも共存させるようにしてもよい。これにより、銅(II)と銅(I)イオン間の酸化還元触媒作用を利用することができるため、より迅速にレニウムと砒素を含有する原料を浸出させることができる。
As2S3+3CuSO4+3H2O
→ As2O3+3CuS+3H2SO4 ・・・(3)
As2O3+O2+3H2O → 2H3AsO4 ・・・(4)
As2S3+3CuSO4+3H2O
→ As2O3+3CuS+3H2SO4 ・・・(3)
As2O3+O2+3H2O → 2H3AsO4 ・・・(4)
なお、上記式による浸出時の液性は弱酸性となる。このため、上記式(2)又は式(4)で生成した砒酸は、例えば共存する陽イオンが銅(II)イオン(硫酸銅(II))の場合には、下記式(5)に従って砒酸水素銅(II)などの砒酸塩を形成して残渣となる。ただし、この反応は、酸性では可逆反応であるため、一部の砒酸はそのまま母液に残留する。
H3AsO4+CuSO4 → CuHAsO4+H2SO4 ・・・(5)
H3AsO4+CuSO4 → CuHAsO4+H2SO4 ・・・(5)
このようにしてレニウムと砒素を含有する原料を浸出することによって、過レニウム酸、砒酸、亜砒酸を含む浸出液(以下、「レニウム浸出液」又は単に「浸出液」という。)と、砒酸水素銅(II)などの砒酸塩からなる浸出残渣とが得られる。なお、得られるレニウム浸出液には、浸出対象として用いた鉱石中に含まれていた銅、亜鉛、カドミウムなどの元素も含有されている。
〔1−1.中和浄液工程〕
中和浄液工程S1では、レニウム及び砒素を含有する原料を浸出して得られたレニウム浸出液に、アルカリを添加して中和浄液処理し、砒素を含有する中和澱物(砒酸塩)とレニウムを含有する溶液(レニウム含有溶液)とを得る。なお、以下では、レニウム浸出液を中和浄液処理したものを中和浄液という。この中和浄液を固液分離することによって、砒酸塩からなる中和澱物とレニウム含有溶液とを分離回収することができる。
中和浄液工程S1では、レニウム及び砒素を含有する原料を浸出して得られたレニウム浸出液に、アルカリを添加して中和浄液処理し、砒素を含有する中和澱物(砒酸塩)とレニウムを含有する溶液(レニウム含有溶液)とを得る。なお、以下では、レニウム浸出液を中和浄液処理したものを中和浄液という。この中和浄液を固液分離することによって、砒酸塩からなる中和澱物とレニウム含有溶液とを分離回収することができる。
上述の浸出処理で得られたレニウム浸出液は、弱酸性となっている。したがって、この中和浄液工程S1において、レニウム浸出液にアルカリを添加することによってそのレニウム浸出液を中和する。このようにして浸出液を中和することによって、例えば下記式(6)に示すように、レニウム浸出液中に残存する砒酸が、残留している他の陽イオンと反応して砒酸塩として固定される。なお、下記式(6)には、原料鉱石(硫化物)中に含まれ、レニウムや砒素と共にレニウム浸出液中に浸出された銅によって、砒素が銅の砒酸塩として固定された反応例を示す。
2H3AsO4+3CuSO4+6NaOH
→ Cu3(AsO4)2+3Na2SO4+6H2O ・・・(6)
2H3AsO4+3CuSO4+6NaOH
→ Cu3(AsO4)2+3Na2SO4+6H2O ・・・(6)
中和剤としてのアルカリは、コストや取り扱いの容易さ、並びに副反応の生成などを考慮すると、水酸化ナトリウム水溶液を用いることが好ましい。
ここで、この中和浄液処理においては、レニウム浸出液にアルカリを添加する前又は同時に、そのレニウム浸出液に2価の水溶性鉄化合物を添加するとともに酸化剤を添加し、浸出液中の砒素を砒酸鉄の沈殿として固定することが好ましい。砒酸鉄は、安定した形態である。そのため、レニウム精製において不純物となる砒素を安定な形態である砒酸鉄として固定化することによって、レニウムと砒素を効果的に分離することができ、レニウム精製に用いられるレニウム含有溶液中の砒素の含有量を低減させることができる。
添加する鉄源となる水溶性鉄化合物としては、酸化剤によって3価の状態となる2価の水溶性鉄化合物であることが好ましい。具体的には、例えば硫酸第一鉄、塩化第一鉄、臭化第一鉄、硝酸第一鉄などが挙げられるが、特に安価で入手し易い硫酸第一鉄、塩化第一鉄が好ましい。
酸化剤としては、後工程に影響を残さないものを用いることが好ましく、例えば空気、酸素、過酸化水素などを用いることができる。その中でも、空気を用いることが経済性の観点から特に好ましい。例えば、酸化剤としての空気を、レニウム浸出液中にバブリングすることによって添加する。上述のように、この酸化剤により、レニウム浸出液中に添加した水溶性鉄化合物の鉄が3価に酸化された状態になるとともに、レニウム浸出液に含まれる砒素が5価に酸化された状態になり、3価の鉄と5価の砒素とが反応して砒酸鉄の沈殿となる。
また、上述した酸化剤による酸化は、レニウム浸出液の酸化還元電位(ORP)(銀/塩化銀電極基準)が−400mV以上となるまで行うことが好ましい。ORPが−400mV以上となるまで酸化することによって、添加した鉄を十分に3価に酸化させることができるとともに浸出液中の砒素を十分に5価に酸化させることができ、砒酸鉄の沈殿生成を効果的に進行させることができる。そして、これにより、中和浄液工程S1にて生成される中和浄液から沈殿を分離して得られる溶液(レニウム含有溶液)中の砒素品位をより効果的に低減させることができる。
さらに、鉄源としての水溶性鉄化合物の添加量は、浸出液中の砒素が5価、鉄が3価に酸化された状態において、その3価の鉄のモル数が浸出液中に含まれる5価の砒素のモル数に対して3倍量以上のモル数(Fe/As≧3)となる量に相当する量とすることが好ましい。これにより、より効果的に砒酸鉄の沈殿生成を進行させることができ、レニウム含有溶液中の砒素品位をより一層に低減させることができる。
なお、上述のようにレニウム浸出液に水溶性鉄化合物を添加して中和浄液処理を行った場合においても、この中和浄液処理によって得られる沈殿物である砒酸塩は、砒酸鉄のみとなるものではない。すなわち、形成された沈殿物の砒酸塩としては、砒酸鉄と共に、原料中に含まれ浸出処理によってレニウム浸出液中に含有されることになった銅や亜鉛、カドミウムなどの砒酸塩も含まれる。この砒酸鉄以外の砒酸塩に関して、中和浄液処理ではpH8〜10の条件で沈殿が形成されることから、上記式(5)に示した浸出処理によって形成される浸出残渣とは異なり、砒酸鉄以外の砒酸塩としては主として砒酸銅(II)が形成されるものと推定することができる。
〔1−2.レニウム分離工程〕
レニウム分離工程S2では、中和浄液工程S1にて得られたレニウムを含有する溶液(レニウム含有溶液)からレニウムを分離する。すなわち、このレニウム分離工程S2では、レニウム含有溶液中のレニウムを、例えば硫化レニウムなどの形態とすることによって、レニウムを精製する。
レニウム分離工程S2では、中和浄液工程S1にて得られたレニウムを含有する溶液(レニウム含有溶液)からレニウムを分離する。すなわち、このレニウム分離工程S2では、レニウム含有溶液中のレニウムを、例えば硫化レニウムなどの形態とすることによって、レニウムを精製する。
レニウム分離工程S2におけるレニウムの分離方法については特に限定されないが、例えば、レニウム含有溶液に硫化剤を添加して硫化処理し、レニウムを硫化レニウムの形態とすることによってレニウムを分離回収する方法を用いることができる。
より具体的に、硫化処理によってレニウムを分離回収する方法においては、添加する硫化剤に対してレニウム硫化物を定量的に得るために酸を共存させることが好ましい。これは、レニウム含有溶液中の過レニウム酸イオンが陰イオンの形態を有しているため、レニウムを硫化させて沈殿を生じさせるには過レニウム酸イオンを先ず陽イオンの形態に変化させる必要があるためと考えられる。
硫化処理によりレニウムを分離する際には、上述のように中和浄液工程S1にて中和処理が行われているので、硫化処理に際して共存させる酸は新たに添加することが必要となる。添加する酸としては、過レニウム酸が安定して存在可能となるように、強酸であって且つ硫化物を分解しない非酸化性の酸を用いることが好ましい。例えば、硫酸、塩酸などの酸を用いることができるが、コストや装置材質の腐食性、あるいは揮発性などを考慮すると、硫酸を用いることが好ましい。また、酸の添加量としては、レニウム含有溶液中の当量濃度で1.0規定以上4.0規定以下の範囲、好ましくは2.0規定以上3.0規定以下の範囲の酸濃度となるように添加することが好ましい。
そして、硫化処理では、レニウム含有溶液に対する酸の添加によって得られる溶液(調製液)に硫化剤を添加することによってレニウムを硫化物として沈殿させる。添加する硫化剤としては、例えば、硫化水素ガス、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の硫化物、硫化水素塩などの水溶性の硫化物を用いることができる。特に、コスト的な点や取り扱いが容易であるという点から、硫化水素ナトリウムあるいは水硫化ナトリウムを用いることが好ましい。
形成されたレニウム硫化物の沈殿は、濾過や遠心分離などの固液分離処理によって分離することができる。
このように、レニウム分離工程S2では、レニウム含有溶液からレニウムを分離して精製することができる。そして、上述した中和浄液工程S1においては、レニウム精製において不純物となる砒素が効果的に分離されており、また後述する沈殿物分解工程S3やそれに続く砒素固定工程S4においても安定形態で確実に砒素を固定化して分離するようにしているので、レニウム精製プロセス中における砒素の負荷を効果的に低減でき、精製するレニウム中の砒素品位を低下させて、質の高いレニウムを分離精製することができる。
〔1−3.沈殿物分解工程〕
沈殿物分解工程S3では、中和浄液工程S1にて得られた砒素を含有する中和澱物(砒酸塩)、及び、上述した浸出処理にて得られた砒酸塩を含有する浸出残渣の、いずれか一方又は両方に、アルカリを添加することによって、砒素を含有する溶液と水酸化物沈殿を得る。
沈殿物分解工程S3では、中和浄液工程S1にて得られた砒素を含有する中和澱物(砒酸塩)、及び、上述した浸出処理にて得られた砒酸塩を含有する浸出残渣の、いずれか一方又は両方に、アルカリを添加することによって、砒素を含有する溶液と水酸化物沈殿を得る。
ここで、従来、上述したレニウムと砒素を含有する原料の浸出処理、並びに、その浸出処理で得られたレニウム浸出液に対する中和浄液処理において、それぞれ上記式(5)、式(6)で沈殿分離された砒酸塩は、製錬工程に繰り返されて、砒酸塩に含まれる銅が製品として分離される。一方で、砒素の多くは製錬工程の加熱によって揮発して排ガスの洗浄塔の洗浄水中に捕集され、その洗浄液は、廃液処理工程において再びレニウムと共に硫化物として固定される。その結果、一度分離した砒素の多くが再びレニウム精製プロセスに混入することになり、レニウム精製における負荷の増加を招く。
本発明者らは、レニウム及び砒素を含有する原料を浸出処理して得られる浸出残渣である砒酸塩(主成分は砒酸水素銅(II))及び上述した中和浄液工程S1にて生成した砒酸塩の沈殿物(主成分は砒酸銅(II)、又は砒酸鉄(III))が、いずれも0.1g/l未満の溶解度であって水に溶解し難い混合物の形態であることに着目した。そして、これらの砒酸塩の沈殿物をアルカリと反応させ、砒素を水に溶解し易い砒酸ナトリウムの形態に変えて浸出するようにして回収し、一方でその他の銅などの不純物を水に溶解し難い水酸化物として固定することにより、レニウム精製プロセスにおける砒素負荷を低減できることを見出した。
そこで、本実施の形態に係るレニウムと砒素の分離方法では、沈殿物分解工程S3において、中和浄液工程S1にて得られた砒素を含有する中和澱物、及び、上述した浸出処理にて得られた砒酸塩を含有する浸出残渣の、いずれか一方又は両方に、アルカリを添加する。このようにすることで、これらの沈殿物を分解して沈殿物中の砒素を浸出させて砒素を含有する溶液を得るとともに、その他の銅などを水酸化物として沈殿させる。
このようにして沈殿物の分解を行うことにより、浸出処理や中和浄液処理にて得られた砒酸塩の沈殿物から砒素を効果的に分離することができる。つまり、レニウムを精製するプロセスから砒素を分離除去することができる。これにより、レニウム精製プロセスにおける砒素負荷を低減することができ、上述したレニウム分離工程S2にて砒素がレニウムと共に沈殿してしまうことを防止することができる。
沈殿物分解工程S3における砒酸塩の分解方法としては、例えば、下記式(7)、式(8)に示すようなアルカリによる複分解法を用いることができる。通常、金属の砒酸塩の溶解度よりも水酸化物の溶解度の方が低いため、砒酸塩にアルカリを添加することによって、式(7)及び式(8)に示す反応が右方向に進行する。
CuHAsO4+3NaOH
→ Cu(OH)2+Na3AsO4+H2O ・・・(7)
Cu3(AsO4)2+6NaOH
→ 3Cu(OH)2+2Na3AsO4 ・・・(8)
CuHAsO4+3NaOH
→ Cu(OH)2+Na3AsO4+H2O ・・・(7)
Cu3(AsO4)2+6NaOH
→ 3Cu(OH)2+2Na3AsO4 ・・・(8)
添加するアルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの水酸化アルカリを用いることができ、経済性を考慮すると水酸化ナトリウムを用いることが好ましい。また、砒酸塩の種類によっては、水酸化アルカリの代用として炭酸アルカリを使用できる場合もあるが、多くの場合、金属の水酸化物の溶解度よりも炭酸塩の溶解度の方が高いため、反応率は水酸化アルカリよりも低くなり易い。
アルカリの添加量としては、理論計算量よりも過剰に添加することが好ましい。分解反応は、pHが高いほど進行し、アルカリを理論量よりも過剰に添加することによって、溶解度積の原理により水酸化物の濃度を低減させることができる。砒酸塩の種類にもよるが、沈殿物の分解が効果的に進行するのはpHが12以上であり、一方でpHが14程度を越えると金属水酸化物の多くがヒドロキソ錯体となって溶解してしまう。また、工業的には高いpH領域ではアルカリ添加量を管理し難くなるため、pHは13.3以下とすることが好ましい。なお、pHが14を越えるまで上昇させても砒酸塩の分解を完全には行えない場合があるが、製錬工程全体を循環する砒素の物量が低減すれば、レニウム分離工程S2での砒素負荷は徐々に低減され、レニウムの品質を維持することができる。
このように、中和浄液工程S1にて得られた砒素を含有する中和澱物(砒酸塩)及び/又は上述した浸出処理にて得られた砒酸塩を含有する浸出残渣にアルカリを添加することによって、これら中和澱物や浸出残渣の沈殿物を分解して沈殿物中に含まれる砒素を溶液中に浸出させることができ、砒素のみを効果的に分離除去することができる。そして、このような沈殿物分解により砒素が浸出される一方で形成された水酸化物の沈殿は、原料中に含まれていた銅などの水酸化物沈殿であることから、この水酸化物沈殿を銅精錬処理に移送することによって、不純物としての砒素含有量の少ない銅などを効果的に精製することが可能となる。
〔1−4.砒素固定工程〕
砒素固定工程S4では、沈殿物分解工程S3にて得られた砒素含有溶液、すなわち水に難溶性の砒酸塩をアルカリによって分解し水酸化物沈殿を分離して得られた砒素含有溶液(例えば、砒酸ナトリウム水溶液)から、公知の方法に従って、溶液中の砒素を固体(沈殿物)として固定化し分離する。
砒素固定工程S4では、沈殿物分解工程S3にて得られた砒素含有溶液、すなわち水に難溶性の砒酸塩をアルカリによって分解し水酸化物沈殿を分離して得られた砒素含有溶液(例えば、砒酸ナトリウム水溶液)から、公知の方法に従って、溶液中の砒素を固体(沈殿物)として固定化し分離する。
砒素の固定化方法としては、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば、二酸化硫黄などで還元して三酸化二砒素の結晶として固定する方法や、カルシウムイオンや鉄イオンを添加して水に溶解し難い砒酸カルシウムや砒酸鉄(III)の沈殿として回収する方法などを用いることができる。その中でも、三酸化砒素の結晶や砒酸カルシウムは工業用薬品や農薬などに利用できるが、溶解度が低く安定した形態である砒酸鉄(III)として分離し固定化することが、砒素を安定的に分離除去できるという点で好ましい。また、保管の観点からも、砒酸鉄(III)の安定形態とすることが好ましい。したがって、以下では、砒酸鉄(III)として分離し固定化する方法を例に挙げて説明する。
具体的に、砒酸鉄(III)として固定する方法は、砒素含有溶液に水溶性鉄化合物と酸とを添加することによって、溶液中の砒素を砒酸鉄(III)の沈殿物とする。添加する水溶性鉄化合物としては、2価の鉄を含有する水溶性鉄(II)塩、3価の鉄を含有する水溶性鉄(III)塩のいずれを添加してもよいが、水溶性鉄(II)塩を添加する場合にはこれを酸化剤により酸化する必要がある。また、前者の水溶性鉄(II)塩を用いる場合では、安価な鉄(II)塩を使用できるメリットがあるが、鉄(II)イオンの酸化反応速度が遅いという問題点がある。一方で、後者の水溶性鉄(III)塩を用いることにより、酸化反応を要しないため砒酸鉄(III)の生成反応速度が速く、効率的な処理が可能となる。なお、鉄(III)化合物は高価であるという点で問題はあるが、例えば製錬工程でしばしば発生する塩基性鉄(III)化合物などを活用することにより効率的な固定化を可能にすることができる。
ここで、砒素は金属イオンとの存在比により、生成する塩(沈殿物)の形態が異なることが知られている。具体的には、砒素1モルに対して鉄などの2価の金属イオンが0.5モル存在した場合には、砒酸二水素塩M(H2AsO4)2の形態となる。また、2価金属イオンの存在比が0.5〜1.0モル未満では、砒酸二水素塩と砒酸一水素塩MHAsO4の形態をとる。さらに、1.0モルでは、砒酸一水素塩のみが存在し、1.0〜1.5モル未満では、砒酸一水素塩と砒酸塩M3(AsO4)2の形態となる。そして、1.5モル以上では、砒酸塩のみが存在する。なお、砒素化合物の上記組成式中のMは2価金属を表す。
上述した砒素化合物の中で、砒酸一水素塩と砒酸塩のみが水に溶解し難い。したがって、砒素が存在する場合、砒酸と塩を形成する金属イオンが2価の場合では、砒素に対する2価金属イオン(M)のモル比(M/As)が1以上となるように、金属イオンを添加することが必要となる。また、例えば鉄イオンでは、最終的に3価となるため、砒素に対するモル比(Fe/As)が2/3以上となるように添加することが必要となる。
また、砒素含有溶液に添加する酸としては、例えば硫酸、塩酸などを用いることができる。このようにして砒素含有溶液に酸を添加することによって、溶液のpHを2.0以下とする。溶液のpHを2.0以下とすることによって、砒酸鉄(III)の沈殿物を効果的に形成させることができる。
また、添加する水溶性鉄化合物として水溶性鉄(II)塩を用いる場合においては、鉄を3価に酸化するための酸化剤を添加する。酸化剤としては、例えば空気、酸素、過酸化水素などを用いることができる。その中でも、空気を用いることが経済性の観点から好ましい。例えば、酸化剤としての空気を、水溶性鉄化合物を添加した溶液中にバブリングすることによって添加する。この酸化剤により、水溶性鉄化合物の鉄が3価に酸化された状態となり、砒素含有溶液中の5価の砒素と反応して砒酸鉄(III)の沈殿が形成される。
以上詳細に説明したように、本実施の形態に係るレニウムと砒素の分離方法では、原料を浸出して得られた浸出液からレニウムと砒素とを分離する中和浄液処理を行うとともに、その中和浄液処理で得られた中和澱物や原料に対する浸出処理で得られた浸出残渣を分解する沈殿物分解処理を行うようにしている。このようにして中和澱物や浸出残渣を分解することによって、沈殿物中に含まれている砒素をも、砒素以外の銅などと分離することができる。これにより、中和澱物や浸出残渣がレニウム精製プロセス中に循環するに際しても、砒素の循環量を低減することができ、精製するレニウム中に含まれる砒素品位を効果的に低減することができる。
また、上述のように砒素の循環量を低減できるので、相対的にレニウム精製プロセスに循環する沈殿物量が減少し、コンパクトな設備でレニウム精製の操業を行うことができる。さらに、原料中の銅についても砒素と分離して回収することができるので、砒素を分離した銅を銅製錬処理に移送することによって、砒素による負荷を低減した銅精錬操業を行うことができ、不純物の少ない銅を精製することができる。
<2.実施例>
以下に本発明の実施例を説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
以下に本発明の実施例を説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
<レニウム精製プロセスンにおける砒素分離処理について>
以下のようにして、レニウム精製プロセスにおいて砒素を分離させる処理を行った。
以下のようにして、レニウム精製プロセスにおいて砒素を分離させる処理を行った。
(1)浸出処理
レニウム:2.3%、砒素:24.4%を含有し、水分率56%である硫化物混合物300g(wet-g)を、Cu濃度30g/lになる量の硫酸銅5水和物を添加しさらに塩酸としてCl:35.5g/lを含む水溶液3000ml中に懸濁し、80℃に維持した。この溶液に対して、液の酸化還元電位(ORP)が最大値(銀/塩化銀電極を参照電極として580mV)になるまでシンターガラスを用いて空気を吹き込んで浸出し、浸出して得られたスラリーを濾過して固液分離した。固液分離して得られた残渣を300mlの純水を用いて洗浄した。
レニウム:2.3%、砒素:24.4%を含有し、水分率56%である硫化物混合物300g(wet-g)を、Cu濃度30g/lになる量の硫酸銅5水和物を添加しさらに塩酸としてCl:35.5g/lを含む水溶液3000ml中に懸濁し、80℃に維持した。この溶液に対して、液の酸化還元電位(ORP)が最大値(銀/塩化銀電極を参照電極として580mV)になるまでシンターガラスを用いて空気を吹き込んで浸出し、浸出して得られたスラリーを濾過して固液分離した。固液分離して得られた残渣を300mlの純水を用いて洗浄した。
(2)中和浄液処理
次に、浸出処理により得られた浸出液に、25℃でpHが10になるまで濃度8mol/lの水酸化ナトリウムを添加して中和浄液処理し、処理して得られた沈殿(中和澱物)を固液分離して回収した。
次に、浸出処理により得られた浸出液に、25℃でpHが10になるまで濃度8mol/lの水酸化ナトリウムを添加して中和浄液処理し、処理して得られた沈殿(中和澱物)を固液分離して回収した。
ここで、下記表1に、上述の浸出処理で得られた浸出残渣と、浸出液を中和浄液処理して得られた中和澱物の、それぞれの組成を示す。これらの浸出残渣と中和沈殿を砒素回収の原料とした。
(3)沈殿物分解処理(砒素浸出処理)
次に、上記表1に組成を示した浸出残渣と中和澱物を、それぞれ50g(wet-g)ずつ分取し、25℃に維持しながら500mlの水中に懸濁した。このスラリーに、濃度8mol/lの水酸化ナトリウム溶液を添加し、溶液のpHを13.3に調整して、これら沈殿物の分解処理(砒素浸出処理)を行った。下記表2に、浸出残渣と中和澱物とをそれぞれ分解させた後の浸出残渣(水酸化物の沈殿物)の組成を示す。
次に、上記表1に組成を示した浸出残渣と中和澱物を、それぞれ50g(wet-g)ずつ分取し、25℃に維持しながら500mlの水中に懸濁した。このスラリーに、濃度8mol/lの水酸化ナトリウム溶液を添加し、溶液のpHを13.3に調整して、これら沈殿物の分解処理(砒素浸出処理)を行った。下記表2に、浸出残渣と中和澱物とをそれぞれ分解させた後の浸出残渣(水酸化物の沈殿物)の組成を示す。
表2に示すように、上記(1)の浸出処理で得られた浸出残渣を用いて分解させた場合の砒素浸出率は70%であり、上記(2)の中和浄液処理で得られた中和澱物を用いて分解させた場合の砒素浸出率は68%であり、この沈殿物分解処理によって沈殿物中の砒素を高い浸出率で浸出できることが分かった。また、浸出残渣や中和澱物の沈殿物中に残存したレニウムも同時に浸出されたことが分かった。なお、砒素浸出率は、(As浸出残渣の重量×As品位)/(浸出に使用した原料の重量×As品位)×100(%)により求めた。
(4)砒素固定処理
次に、上記(3)の沈殿物分解処理で回収して得られた溶液(砒素浸出液)を、それぞれ浸出液中の砒素濃度が1g/lとなるように水を添加して調整後、600mlずつ採取した。これに濃度60%の硫酸を添加してpHを11.8に調整し、硫酸第一鉄(7水和物)を4.8g添加した後、80℃に維持しつつエアーを吹き込むことで溶液の酸化還元電位を約400mVまで酸化して沈殿物を生成させた。この砒素固定反応により、上記(1)の浸出残渣、上記(2)の中和澱物からの沈殿物量は、それぞれ0.70g、0.81gであった。
次に、上記(3)の沈殿物分解処理で回収して得られた溶液(砒素浸出液)を、それぞれ浸出液中の砒素濃度が1g/lとなるように水を添加して調整後、600mlずつ採取した。これに濃度60%の硫酸を添加してpHを11.8に調整し、硫酸第一鉄(7水和物)を4.8g添加した後、80℃に維持しつつエアーを吹き込むことで溶液の酸化還元電位を約400mVまで酸化して沈殿物を生成させた。この砒素固定反応により、上記(1)の浸出残渣、上記(2)の中和澱物からの沈殿物量は、それぞれ0.70g、0.81gであった。
得られた沈殿物を水で洗浄後、純水に対する溶解度を調査した結果、いずれも0.05mg/l未満であり、X線回折装置で同定した結果、砒酸鉄(III)(2水塩)の形態であることが確認された。
以上のように、レニウムと砒素を含有する硫化物などの原料を浸出して得られた浸出残渣、またその浸出処理による浸出液を中和浄液して得られた中和澱物を、アルカリによって分解処理(浸出処理)することにより、レニウム精製プロセスにおいて不純物となる砒素を効果的に浸出することができ、砒酸鉄として分離回収できることが分かった。これにより、上述の浸出残渣や中和澱物中に含まれる砒素が、再びレニウム精製プロセスに循環されることを防止することができ、精製するレニウム中の不純物としての砒素含有量を効果的に低減して質の高いレニウムを精製することができる。
<沈殿物分解処理におけるpHと砒素浸出率の関係について>
次に、上記(3)の沈殿物分解処理における、浸出残渣及び/又は中和澱物スラリーのpHと得られる浸出液(砒素含有溶液)の砒素濃度との関係を調査した。
次に、上記(3)の沈殿物分解処理における、浸出残渣及び/又は中和澱物スラリーのpHと得られる浸出液(砒素含有溶液)の砒素濃度との関係を調査した。
具体的に、上記表1に組成を示した浸出処理にて得られた浸出残渣を50g(wet-g)ずつ分取し、25℃に維持しながら500mlの水中に懸濁した。このスラリーに、水酸化ナトリウム溶液を添加し、溶液のpHをそれぞれ9、10、11、12、13、13.3に調整して、沈殿物(浸出残渣)の分解処理(砒素浸出処理)を行った。溶液のpHが安定した段階で少量のスラリーをサンプリングし、これを濾過する処理を繰り返し行った。
図2は、調査結果を示すグラフであり、沈殿物分解処理における浸出残渣及び/又は中和澱物スラリーのpHと得られる浸出液(砒素含有溶液)のAs及びReの溶出濃度との関係を示すものである。なお、図2において、浸出液中の砒素濃度1g/lが砒素浸出率38%に相当する。
この図2から、例えば工業的に有意義と考えられる30%以上の浸出率を得ようとする場合には、pHを12以上に維持することが必要であることが分かる。また、pHが13.3を越えると銅の溶出も認められた。そのため、pHは13.3以下であることが好ましいことが分かった。
<中和浄液処理における検討>
(試験例1)
硫酸塩として、砒素濃度18.5g/l、レニウム2.1g/lを含む過レニウム酸水溶液に、後でのエアーバブリングによって得られる溶液中の5価の砒素と3価の鉄とのモル濃度比(Fe/As)が3となるように水溶性鉄化合物である硫酸第一鉄を添加した後、濃度8mol/lの水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHを9に調整した。この溶液に対して、溶液の酸化還元電位(ORP)が銀−塩化銀電極の参照電極での測定値で0mV以上になるまで2.0リットル/minの量でエアーを送りバブリングを行い、その後濾過して濾液と沈殿物を分離した。
(試験例1)
硫酸塩として、砒素濃度18.5g/l、レニウム2.1g/lを含む過レニウム酸水溶液に、後でのエアーバブリングによって得られる溶液中の5価の砒素と3価の鉄とのモル濃度比(Fe/As)が3となるように水溶性鉄化合物である硫酸第一鉄を添加した後、濃度8mol/lの水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHを9に調整した。この溶液に対して、溶液の酸化還元電位(ORP)が銀−塩化銀電極の参照電極での測定値で0mV以上になるまで2.0リットル/minの量でエアーを送りバブリングを行い、その後濾過して濾液と沈殿物を分離した。
これにより得られた濾液(中和濾液)と沈殿物(中和澱物)の分析値から、砒素の沈殿率(砒素除去率)を測定した。
その結果、砒素の沈殿率は99.97%以上となった。そして、この砒素を除去した液に、硫化剤を添加して硫化レニウムを得ると、硫化レニウム中の砒素品位は1.0%未満となり、不純物の極めて少ないレニウムを精製することができた。
また、図3は、エアーバブリングにより溶液のORPを0mV以上にまで酸化させたときの、そのORPに対する砒素除去率並びに精製した硫化レニウム中の砒素品位の関係を示すグラフである。この図3のグラフから分かるように、溶液のORPが0mV以上になるまで酸化させることにより、砒素の除去率は効果的に向上し、−400mV以上になるまで酸化することで99.20%以上の高い除去率となり、上述のように0mV以上になるまで酸化することで99.97%以上の極めて高い除去率となることが分かった。
(試験例2)
中和浄液処理に際して、硫酸第一鉄を、鉄と砒素のモル濃度比(Fe/As)が10となるように添加したこと以外は、試験例1と同様にし、その処理での砒素沈殿率を調べた。なお、この鉄と砒素のモル濃度比は、エアーバブリングにより3価に酸化された鉄と5価に酸化された砒素のモル濃度比である。
中和浄液処理に際して、硫酸第一鉄を、鉄と砒素のモル濃度比(Fe/As)が10となるように添加したこと以外は、試験例1と同様にし、その処理での砒素沈殿率を調べた。なお、この鉄と砒素のモル濃度比は、エアーバブリングにより3価に酸化された鉄と5価に酸化された砒素のモル濃度比である。
その結果、砒素沈殿率、並びに沈殿物除去後の溶液から得られた硫化レニウム中の砒素品位は、試験例1と同等であり、効果的に砒素を除去することができ、品質のよいレニウムを精製することができた。
また、図4は、水溶性鉄化合物である硫酸第一鉄の添加により、鉄と砒素のモル濃度比(Fe/As)を1、2、3、5、10とした場合における、そのモル濃度に対する砒素除去率並びに精製した硫化レニウム中の砒素品位の関係を示すグラフである。なお、この鉄と砒素のモル濃度比も、上述のようにエアーバブリングにより3価に酸化された鉄と5価に酸化された砒素のモル濃度比である。また、エアーバブリングによる溶液のORPは0mVとした。
この図4のグラフから分かるように、Fe/Asが3以上となるように水溶性鉄化合物を添加することにより、99.00%以上の高い除去率となり、Fe/Asが5以上で99.80%近くの極めて高い除去率となることが分かった。
(試験例3)
中和浄液処理に際して、硫酸第一鉄の添加やエアーバブリングを行わず、それ以外の条件は試験例1と同様にし、その処理での砒素沈殿率を調べた。
中和浄液処理に際して、硫酸第一鉄の添加やエアーバブリングを行わず、それ以外の条件は試験例1と同様にし、その処理での砒素沈殿率を調べた。
その結果、砒素沈殿率は最高でも98.30%に留まり、製造した硫化レニウム中の砒素品位は5.3%と高いままであった。
(試験例4)
中和浄液処理に際して、硫酸第一鉄を、鉄と砒素のモル濃度比が3となるように添加し、エアーバブリング無しで他の条件は試験例1と同様にして処理し、その処理での砒素の沈殿率を調べた。
中和浄液処理に際して、硫酸第一鉄を、鉄と砒素のモル濃度比が3となるように添加し、エアーバブリング無しで他の条件は試験例1と同様にして処理し、その処理での砒素の沈殿率を調べた。
その結果、砒素沈殿率は98.97%であり、この液を用いて製造した硫化レニウム中の砒素品位は4.1%となり、試験例1と比べると精製したレニウム中の砒素含有量は高かった。
Claims (8)
- レニウム及び砒素を含有する原料を酸化して浸出し、過レニウム酸、砒酸、亜砒酸を含む浸出液と砒酸塩を含有する浸出残渣とに分離し、該浸出液からレニウムを精製するレニウム精製プロセスにおけるレニウムと砒素の分離方法であって、
上記浸出液にアルカリを添加し、砒素を含有する沈殿とレニウムを含有する溶液とを得る中和浄液工程と、
上記中和浄液工程にて得られたレニウムを含有する溶液からレニウムを分離するレニウム分離工程と、
上記中和浄液工程にて得られた砒素を含有する沈殿及び上記砒酸塩を含有する浸出残渣のいずれか一方又は両方にアルカリを添加し、砒素を含有する溶液と水酸化物沈殿を得る沈殿物分解工程と、
沈殿物分解工程にて得られた砒素を含有する溶液中の砒素を沈殿物として固定する砒素固定工程と
を有することを特徴とするレニウムと砒素の分離方法。 - 上記中和浄液工程では、上記浸出液にアルカリを添加する前又は同時に、該浸出液に2価の水溶性鉄化合物を添加するとともに酸化剤を添加し、該浸出液中の砒素を砒酸鉄の沈殿とすることを特徴とする請求項1記載のレニウムと砒素の分離方法。
- 上記酸化剤は空気であり、浸出液に該空気をバブリングすることを特徴とする請求項2記載のレニウムと砒素の分離方法。
- 上記酸化剤により、上記浸出液の酸化還元電位を−400mV以上とすることを特徴とする請求項2記載のレニウムと砒素の分離方法。
- 上記水溶性鉄化合物の添加量は、上記浸出液中の3価の鉄のモル数が、該浸出液中に含まれる5価の砒素のモル数に対して3倍量以上のモル数となる量に相当する量とすることを特徴とする請求項2記載のレニウムと砒素の分離方法。
- 上記沈殿物分解工程では、砒素を含有する沈殿及び/又は砒酸鉄を含有する浸出残渣にアルカリを添加する際に、pHを12.0以上13.3以下の範囲に調整することを特徴とする請求項1記載のレニウムと砒素の分離方法。
- 上記沈殿物分解工程において添加するアルカリは、水酸化アルカリであることを特徴とする請求項6記載のレニウムと砒素の分離方法。
- レニウム及び砒素を含有する原料を酸化して浸出し、過レニウム酸、砒酸、亜砒酸を含む浸出液と砒酸塩を含有する浸出残渣とに分離し、該浸出液からレニウムを精製するレニウムの精製方法であって、
上記浸出液にアルカリを添加し、砒素を含有する沈殿とレニウムを含有する溶液とを得る中和浄液工程と、
上記中和浄液工程にて得られたレニウムを含有する溶液を分離し、該溶液に硫化剤を添加して硫化レニウムを得るレニウム精製工程と、
上記中和浄液工程にて得られた砒素を含有する沈殿及び上記砒酸塩を含有する浸出残渣のいずれか一方又は両方にアルカリを添加し、砒素を含有する溶液と水酸化物沈殿を得る沈殿物分解工程と、
沈殿物分解工程にて得られた砒素を含有する溶液中の砒素を沈殿物として固定する砒素固定工程と
を有することを特徴とするレニウムの精製方法。
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