JP2006218725A - インクジェット記録シート - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明の目的は、インクジェット記録シートに関し、更に詳しくは、フォトライクな光沢と高精細な画像が得られ、かつインクジェットプリンターのヘッド擦れ発生等の印字品位低下のないインクジェット記録シートを提供することである。
【解決手段】坪量が140g/m2〜210g/m2の原紙の両面にポリオレフィン樹脂層で被覆された支持体上の一方の面のみに無機微粒子を主体とするインク受容層を有するインクジェット記録シートにおいて、該原紙のJIS−P8122で規定されるステキヒトサイズ度が180秒以上であることを特徴とするインクジェット記録シート。
【選択図】 図1

Description

本発明は、ポリオレフィン樹脂被覆紙にインク受容層を塗設したインクジェット記録シートに関するものである。更に詳しくは、インクジェットプリンターの給紙及び搬送性に優れ、搬送トラブルによる印字品位低下のないインクジェット記録シートに関するものである。
インクジェット記録方式に使用される記録シートとして、通常の紙やインクジェット記録用紙と称される支持体上に非晶質シリカ等の顔料とポリビニルアルコール等の水溶性バインダーからなる多孔質のインク受容層を設けてなる記録シートが知られている。
例えば、特開昭55−51583号、特開昭56−157号、特開昭57−107879号、特開昭57−107880号、特開昭59−230787号、特開昭62−160277号、特開昭62−184879号、特開昭62−183382号、及び特開昭64−11877号公報等に開示のごとく、シリカ等の含珪素顔料を水系バインダーと共に紙支持体に塗布して得られる記録シートが提案されている。
また、特公平3−56552号、特開平2−188287号、特開平10−81064号、特開平10−119423号、特開平10−175365号、特開10−203006号、特開平10−217601号、特開平11−20300号、特開平11−20306号、特開平11−34481号公報等には、気相法による合成シリカ微粒子(以降、気相法シリカと称す)を用いた記録材料が開示されている。また、特開昭62−174183号、特開平2−276670号、特開平5−32037号、特開平6−199034号公報等にアルミナやアルミナ水和物を用いた記録材料が開示されている。開示されているアルミナ水和物、アルミナ、および気相法シリカは、一次粒子の平均粒径が数十nm以下の超微粒子であり、高い光沢と高いインク吸収性が得られるという特徴がある。ポリオレフィン樹脂被覆紙にこれらの無機微粒子を含有するインク受容層を設けることによって、高光沢でインク吸収性の優れた記録材料が得られる。
特に、近年のデジタルカメラの普及に伴い、記録シートとしては、高画質が得られ、高級感のある樹脂被覆紙を支持体とするインクジェット記録シートの需要が高まってきており、ハード面でも高画質、高速印字が求められている。インクジェットプリンターの高速印字に対しては、現在、インクノズルの複数化、記録材料のインク吸収性の向上、プリンターヘッド移動速度の向上、印字ステージの広幅化等の手段がとられている。また、近年ほとんどのプリンターに装備されるようになった四辺縁無し印刷に対応するために用紙の最終端は固定されずに印字される。この際、インクジェット記録シートに特異的なカールがあると、インクジェットプリンターのインクヘッドと記録シートが擦れてインクが付着(以下ヘッド擦れと略する)するという不都合が生じる。ヘッド擦れ対応のためには記録シートのカール方向は、フラットからマイナスカール(インク受容層面が凸になるカール)が好ましい。しかしながら、ポリオレフィン樹脂被覆紙を用いた記録シートは、高温高湿下でねじれカールとなりやすく、ヘッド擦れの原因となっていた。
プリンターでの搬送性や給紙性を改良する技術として、インク受容層面とは反対側の面にバック層を設けることによってフラットもしくはマイナスカールに維持することが知られている(特許文献1)。また、給紙方向を原紙の流れ方向に対して直角であるように規定することが知られている(特許文献2)。また、支持体のカール度を規定し、且つ該支持体の少なくとも一方の側に親水性バインダーを含有させることが知られている(特許文献3)。しかしながら、これらの技術では、高温高湿環境下でのねじれカールの発生を充分に防止することはできず、ヘッド擦れを改良するまでには至っていなかった。
特開平11−291616号公報 特開平4−329190号公報 特開2001−10203号公報
本発明の目的は、インクジェット記録シートに関し、更に詳しくは、フォトライクな光沢と高精細な画像が得られ、かつヘッド擦れの発生のないインクジェット記録シートを提供することである。
本発明の上記目的は、坪量が140g/m2〜210g/m2の原紙の両面にポリオレフィン樹脂層で被覆された支持体上の一方の面のみに無機微粒子を主体とするインク受容層を有するインクジェット記録シートにおいて、該原紙のJIS−P8122で規定されるステキヒトサイズ度が180秒以上であることを特徴とするインクジェット記録シートによって達成された。
本発明によれば、フォトライクな光沢と高精細な画像、更にヘッド擦れの発生のないインクジェット記録シートが実現できる。
以下、本発明を詳細に説明する。
インクジェット記録シートを、インクジェットプリンターで印字する際、インクヘッドとインクジェット記録シートのこすれ(ヘッド擦れ)を起こさせないために、インクジェット記録シートはフラットからマイナスカールにすることが好ましい。フラットであることが最も好ましいが、環境変化(温度湿度の変化)によってプラスカールになる危険性を考えるとマイナスカールに設計することが安全である。
しかし、ポリオレフィン樹脂被覆紙を用いた記録シートがマイナスカールになるように設計した場合、高温高湿下(例えば30℃以上、相対湿度70%以上)でねじれカールが発生しやすくなる。この課題を解決するために鋭意検討した結果、ポリオレフィン樹脂被覆紙を構成する原紙の坪量を140g/m2〜210g/m2とし、かつJIS−P8122で規定されるステキヒトサイズ度を180秒以上にすることによって、ねじれカールが抑制することを見いだした。
原紙の坪量が140g/m2未満であると記録シートの剛直度が低下することにより環境変化(温度湿度変化)特に低湿度側で受像層の収縮の影響によりプラスカールとなり、インクジェットプリンターで印字するとヘッド擦れが発生する。また印字したシートは剛直度が低く写真印画紙ライクな高級感を損なう。210g/m2を超えると、剛直度が高くなりすぎるため、製造工程において巻き癖カールが大きくなり、ヘッド擦れが発生する。上記の観点から、本発明において原紙の坪量は、好ましくは150g/m2〜200g/m2であり、より好ましくは160g/m2〜190g/m2の範囲である。
原紙のステキヒトサイズ度が180秒未満であると、高温高湿下でねじれカールとなり、インクジェットプリンターで印字する際ヘッド擦れが発生し印字品位の低下をまねく。ねじれカールが発生する原因については不明であるが、高湿状態に放置すると原紙水分が高くなり剛直度が低下することにより抄紙流れ方向のカール(巻き癖)と裏樹脂カール方向であるCD成分が発現することにより、ねじれカールが発生すると考えられる。ステキヒトサイズ度は、原紙に添加するサイズ剤添加量によりコントロールすることができる。サイズ剤として、脂肪酸金属塩あるいは/および脂肪酸、アルキルケテンダイマー乳化物あるいはエポキシ化高級脂肪酸アミド、アルケニルまたはアルキルコハク酸無水物乳化物、ロジン誘導体等を1種もしくは2種以上混合して用いられる。
原紙のステキヒトサイズ度は、好ましくは200秒以上であり、より好ましくは220秒以上である。上限は400秒程度である。
本発明において、記録シートのカール方向は、マイナスカールになるように設計することが好ましく、マイナスカールにする手段としては、以下の態様が挙げられる。
1)ポリオレフィン樹脂被覆紙のインク受容層側の樹脂層(A)の厚みより反対側の樹脂層(B)の厚みを大きくする。
2)樹脂層(A)のポリオレフィン樹脂の密度より樹脂層(B)のポリオレフィン樹脂の密度を高くする。
3)インク受容層に沸点100℃以上の有機溶剤を水溶性溶剤含有させる。
上記の1)〜3)は単独で構成されてもよいが、2以上を組み合わせるのが好ましい。
上記1において、樹脂層(A)の厚みは、15〜35μmの範囲が好ましく、樹脂層(B)の厚みは20〜40μmの範囲が好ましい。樹脂層(A)と樹脂層(B)の厚みの差は2μm〜6μmの範囲が好ましい。上記2)において、樹脂層(A)には、密度が0.935g/m3以下低密度ポリエチレンを全樹脂の80質量%以上用いるのが好ましく、90質量%以上用いるのがより好ましい。樹脂層(B)には、密度が0.950g/m3以上の高密度ポリエチレンを60質量%以上用いるのが好ましく、70質量%以上用いるのが好ましい。
上記3)において、沸点が100℃以上の水溶性溶剤とは、25℃の水100gに対して1g以上溶解する溶剤を意味し、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ブチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のグリコール類、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール等のアルコール類、ジメチルアルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類、ジオキサン等のエーテル類、エチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル類、その他、グリセリン、ジグリセリン、ブタンジオール、ブタントリオール、トリメチロールプロパン、トリエタノールアミン、エタノールアセトアミド、エチレングリコールモノメチルエーテルなどが挙げることができる。これらの中でも、グリコール類、グリセリン、及びポリグリセリンが好ましい。インク受理層中における上記水溶性溶剤の含有比率は、無機微粒子に対して1〜20質量%の範囲が適当であり、好ましくは2〜15質量%の範囲である。
本発明に用いられるポリオレフィン樹脂被覆紙について詳細に説明する。樹脂被覆紙を構成する原紙に使用されるパルプとしては天然パルプ、再生パルプ、合成パルプ等を1種もしくは2種以上混合して用いられる。
この原紙には一般に製紙で用いられているサイズ剤、紙力増強剤、填料、帯電防止剤、蛍光増白剤、染料等の添加剤が配合される。
乾燥紙力増強剤として、アニオン性、カチオン性あるいは両性のポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、カチオン化澱粉、植物性ガラクトマンナン等、湿潤紙力増強剤として、ポリアミンポリアミドエピクロルヒドリン樹脂等、填料として、クレー、カオリン、炭酸カルシウム、酸化チタン等、定着剤として、塩化アルミニウム、硫酸バン土等の水溶性アルミニウム塩等、pH調節剤として、苛性ソーダ、炭酸ソーダ、硫酸等、着色顔料、着色染料、蛍光増白剤等を適 宜組み合せて含有せしめるのが有利である。
また、原紙中には、各種の水溶性ポリマーもしくは親水性コロイドまたはラテックス、帯電防止剤、添加剤から成る組成物をサイズプレスもしくはタブサイズプレスあるいはブレード塗工、エアーナイフ塗工等の塗工によって含有せしめることができる。水溶性ポリマーもしくは親水性コロイドとして、澱粉系ポリマー、ポリビニルアルコール系ポリマー、ゼラチン系ポリマー、ポリアクリルアミド系ポリマー、セルローズ系ポリマー等、エマルジョン、ラテックス類として、石油樹脂エマルジョン、エチレンとアクリル酸(またはメタクリル酸)とを少なくとも構成要素とする共重合体のエマルジョンもしくはラテックス、スチレン−ブタジエン系、スチレン−アクリル系、酢酸ビニル−アクリル系、エチレン−酢酸ビニル系、ブタジエン−メチルメタクリレート系共重合体およびそれらのカルボキシ変性共重合体のエマルジョンもしくはラテックス等、帯電防止剤として、塩化ナトリウム、塩化カリウム等のアルカリ金属塩、塩化カルシウム、塩化バリウム等のアルカリ土類金属塩、コロイド状シリカ等のコロイド状金属酸化物、ポリスチレンスルホン酸塩等の有機帯電防止剤等、顔料として、クレー、カオリン、炭酸カルシウム、タルク、硫酸バリウム、酸化チタン等、pH調節剤として、塩酸、リン酸、クエン酸、苛性ソーダ等、そのほか前記した着色顔料、着色染料、蛍光増白剤等の添加剤を適宜組み合わせて含有せしめるのが有利である。
樹脂被覆紙の樹脂としては、ポリオレフィン樹脂や電子線で硬化する樹脂を用いることができる。ポリオレフィン樹脂としては、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリペンテンなどのオレフィンのホモポリマーまたはエチレン−プロピレン共重合体などのオレフィンの2つ以上からなる共重合体及びこれらの混合物であり、各種の密度、溶融粘度指数(メルトインデックス)のものを単独にあるいはそれらを混合して使用できる。
また、樹脂被覆紙の樹脂中には、酸化チタン、酸化亜鉛、タルク、炭酸カルシウムなどの白色顔料、ステアリン酸アミド、アラキジン酸アミドなどの脂肪酸アミド、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸マグネシウムなどの脂肪酸金属塩、イルガノックス1010、イルガノックス1076などの酸化防止剤、コバルトブルー、群青、セシリアンブルー、フタロシアニンブルーなどのブルーの顔料や染料、コバルトバイオレット、ファストバイオレット、マンガン紫などのマゼンタの顔料や染料、蛍光増白剤、紫外線吸収剤などの各種の添加剤を適宜組み合わせて加えるのが好ましい。
本発明の樹脂被覆紙は、走行する原紙上に加熱溶融した樹脂を流延する、いわゆる押出コーティング法により製造され、その両面が樹脂により被覆される。また、電子線により硬化する樹脂の場合は、グラビアコーター、ブレードコーターなど一般に用いられるコーターにより樹脂を塗布した後、電子線を照射し、樹脂を硬化させて被覆する。また、樹脂を原紙に被覆する前に、原紙にコロナ放電処理、火炎処理などの活性化処理を施すことが好ましい。
本発明のインク受容層に用いられる無機微粒子としては、非晶質合成シリカ、アルミナ、アルミナ水和物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、二酸化チタン等公知の各種微粒子が挙げられるが、インク吸収性と生産性の点で非晶質合成シリカ、アルミナ又はアルミナ水和物が好ましい。本発明のインク受容層は、無機微粒子を主体に含有する空隙タイプであり、無機微粒子の含有比率はインク受容層の全固形分に対して50質量%以上であり、60〜95質量%の範囲が好ましい。
非晶質合成シリカは、製造法によって湿式法シリカ、気相法シリカ、及びその他に大別することができる。湿式法シリカは、更に製造方法によって沈降法シリカ、ゲル法シリカ、ゾル法シリカに分類される。沈降法シリカは珪酸ソーダと硫酸をアルカリ条件で反応させて製造され、粒子成長したシリカ粒子が凝集・沈降し、その後濾過、水洗、乾燥、粉砕・分級の行程を経て製品化される。沈降法シリカとしては、例えば東ソ・シリカ(株)からニップシールとして、(株)トクヤマからトクシールとして市販されている。ゲル法シリカは珪酸ソーダと硫酸を酸性条件下で反応させて製造する。熟成中に微小粒子は溶解し、他の一次粒子どうしを結合するように再析出するため、明確な一次粒子は消失し、内部空隙構造を有する比較的硬い凝集粒子を形成する。例えば、東ソ・シリカ(株)からニップゲルとして、グレースジャパン(株)からサイロイド、サイロジェットとして市販さている。ゾル法シリカは、コロイダルシリカとも呼ばれ、ケイ酸ソーダの酸などによる複分解やイオン交換樹脂層を通して得られるシリカゾルを加熱熟成して得られ、例えば日産化学工業(株)からスノーテックスとして市販されている。
気相法シリカは、湿式法に対して乾式法とも呼ばれ、一般的には火炎加水分解法によって作られる。具体的には四塩化ケイ素を水素及び酸素と共に燃焼して作る方法が一般的に知られているが、四塩化ケイ素の代わりにメチルトリクロロシランやトリクロロシラン等のシラン類も、単独または四塩化ケイ素と混合した状態で使用することができる。気相法シリカは日本アエロジル(株)からアエロジル、(株)トクヤマからQSタイプとして市販されている。
本発明には、特に気相法シリカが好ましく使用できる。本発明に用いられる気相法シリカの平均一次粒子径は30nm以下が好ましく、より高い光沢を得るためには、15nm以下が好ましい。更に好ましくは平均一次粒子径が3〜15nm(特に3〜10nm)でかつBET法による比表面積が200m2/g以上(好ましくは250〜500m2/g)のものを用いることである。なお、本発明でいう平均一次粒子径とは、微粒子の電子顕微鏡観察により一定面積内に存在する100個の一次粒子各々の投影面積に等しい円の直径を粒子径として平均粒子径を求めたものであり、本発明でいうBET法とは、気相吸着法による粉体の表面積測定法の一つであり、吸着等温線から1gの試料の持つ総表面積、即ち比表面積を求める方法である。通常吸着気体としては、窒素ガスが多く用いられ吸着量を被吸着気体の圧、または容積の変化から測定する方法が最も多く用いられている。多分子吸着の等温線を表すのに最も著名なものは、Brunauer、Emmett、Telllerの式であってBET式と呼ばれ表面積決定に広く用いられている。BET式に基づいて吸着量を求め、吸着分子1個が表面で占める面積を掛けて表面積が得られる。
本発明のインク受容層には、気相法シリカをカチオン性化合物の存在下で、該気相法シリカの平均二次粒子径が500nm以下、好ましくは10〜300nmに分散したものが使用するのが好ましい。分散方法としては、通常のプロペラ撹拌、タービン型撹拌、ホモミキサー型撹拌等で気相法シリカと分散媒を予備混合し、次にボールミル、ビーズミル、サンドグラインダー等のメディアミル、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー等の圧力式分散機、超音波分散機、及び薄膜旋回型分散機等を使用して分散を行うことが好ましい。なお、本発明でいう平均二次粒子径とは、得られた記録材料のインク受容層を電子顕微鏡で観察することにより、観察される分散された凝集粒子の粒子径の平均値を求めたものである。
本発明では、平均二次粒子径500nm以下に粉砕した湿式法シリカも好ましく使用できる。本発明に用いられる湿式法シリカとしては、平均一次粒子径50nm以下、好ましくは3〜40nmであり、かつ平均凝集粒子径が5〜50μmである湿式法シリカが好ましく、これをカチオン性化合物の存在下で平均二次粒子径500nm以下、好ましくは20〜200nm程度まで微粉砕した湿式法シリカを使用することが好ましい。
通常の方法で製造された湿式法シリカは、1μm以上の平均凝集粒子径を有するため、これを微粉砕して使用する。粉砕方法としては、水性媒体中に分散したシリカを機械的に粉砕する湿式分散法が好ましく使用できる。この際、分散液の初期粘度上昇が抑制され、高濃度分散が可能となり、粉砕・分散効率が上昇してより微粒子に粉砕することができることから、吸油量が210ml/100g以下、平均凝集粒子径5μm以上の沈降法シリカを使用することが好ましい。高濃度分散液を使用することによって、記録用紙の生産性も向上する。吸油量は、JIS K−5101の記載に基づき測定される。
本発明における平均二次粒子径が500nm以下の湿式法シリカを得る具体的な方法としては、まず、シリカ粒子とカチオン性化合物を混合した予備分散液を作製する。予備分散液は、のこぎり歯状ブレード型分散機、プロペラ羽根型分散機、またはローターステーター型分散機等の分散装置の少なくとも1つを用いて、シリカ粒子とカチオン性化合物を混合・分散する。必要であれば更に適度の低沸点溶剤等を添加してもよい。シリカ予備分散液の固形分濃度は高い方が好ましいが、あまり高濃度になると分散不可能となるため、好ましい範囲としては15〜40質量%、より好ましくは20〜35質量%である。次に、より強い機械的手段を与えることによって平均二次粒子径が500nm以下の湿式法シリカの分散液が得られる。機械的手段としては公知の方法が採用でき、例えば、ボールミル、ビーズミル、サンドグラインダー等のメディアミル、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー等の圧力式分散機、超音波分散機及び薄膜旋回型分散機等を使用することができる。
上記気相法シリカ及び湿式法シリカの分散に使用するカチオン性化合物としては、カチオン性ポリマーが好ましく使用できる。カチオン性ポリマーとしては、ポリエチレンイミン、ポリジアリルアミン、ポリアリルアミン、アルキルアミン重合物、特開昭59−20696号、特開昭59−33176号、特開昭59−33177号、特開昭59−155088号、特開昭60−11389号、特開昭60−49990号、特開昭60−83882号、特開昭60−109894号、特開昭62−198493号、特開昭63−49478号、特開昭63−115780号、特開昭63−280681号、特開平1−40371号、特開平6−234268号、特開平7−125411号、特開平10−193776号公報等に記載された1〜3級アミノ基、4級アンモニウム塩基を有するポリマーが好ましく用いられる。特に、カチオン性ポリマーとしてジアリルアミン誘導体が好ましく用いられる。分散性および分散液粘度の面で、これらのカチオン性ポリマーの分子量は2,000〜10万程度が好ましく、特に2,000〜3万程度が好ましい。カチオン性ポリマーの添加量は、シリカに対して1〜10質量%の範囲が好ましい。
本発明に使用するアルミナとしては、酸化アルミニウムのγ型結晶であるγ−アルミナが好ましく、中でもδグループ結晶が好ましい。γ−アルミナは一次粒子を10nm程度まで小さくすることが可能であるが、通常は数千から数万nmの二次粒子結晶を超音波や高圧ホモジナイザー、対向衝突型ジェット粉砕機等で平均二次粒子径を500nm以下、好ましくは20〜300nm程度まで粉砕したものが使用できる。
本発明のアルミナ水和物はAl23・nH2O(n=1〜3)の構成式で表される。nが1の場合がベーマイト構造のアルミナ水和物を表し、nが1より大きく3未満の場合が擬ベーマイト構造のアルミナ水和物を表す。アルミニウムイソプロポキシド等のアルミニウムアルコキシドの加水分解、アルミニウム塩のアルカリによる中和、アルミン酸塩の加水分解等の公知の製造方法により得られる。本発明に使用されるアルミナ水和物の平均二次粒子径は500nm以下、好ましくは20〜300nmである。
本発明に用いられる上記のアルミナ、及びアルミナ水和物は、酢酸、乳酸、ぎ酸、硝酸等の公知の分散剤によって分散された分散液の形態から使用される。
本発明のインク受容層において、上記無機微粒子は5〜50g/m2程度、好ましくは8〜30g/m2程度含有させる。またインク受容層の皮膜としての特性を維持するためにバインダーを有していることが好ましい。
本発明のインク受容層には、親水性バインダーを用いることが好ましい。好ましく使用される親水性バインダーは完全または部分ケン化のポリビニルアルコールまたはカチオン変性ポリビニルアルコールである。
ポリビニルアルコールの中でも特に好ましいのは、ケン化度が80%以上の部分または完全ケン化したもので、皮膜形成性及び皮膜脆弱性を改良する観点から平均重合度200〜5000、好ましくは500〜4000のものが用いられる。
また、カチオン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば特開昭61−10483号に記載されているような、第1、3級アミノ基や第4級アンモニウム基をポリビニルアルコールの主鎖あるいは側鎖中に有するポリビニルアルコールである。
また、他の親水性バインダーも併用することができるが、ポリビニルアルコールに対して20質量%以下であることが好ましい。
これらのバインダーの使用量としては無機微粒子の固形分に対して、5〜30質量%の範囲が好ましく、特に10〜25質量%の範囲が好ましい。
本発明において、インク受容層には、耐水性、ドット再現性を向上させる目的で親水性バインダーの硬膜剤を添加することができる。硬膜剤の例としては、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒドの如きアルデヒド系化合物、ジアセチル、クロルペンタンジオンの如きケトン化合物、エポキシ化合物、ハロゲンカルボキシアルデヒド類、ジオキサン誘導体、クロム明ばん、硫酸ジルコニウム、ほう酸、ほう酸塩等がある。
本発明において、インク受容層には、更に、界面活性剤、硬膜剤の他に着色染料、着色顔料、インク染料の定着剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、顔料の分散剤、消泡剤、レベリング剤、防腐剤、蛍光増白剤、粘度安定剤、pH調節剤などの公知の各種添加剤を添加することもできる。
本発明において、インク受容層の塗布方法は、特に限定されず、公知の塗布方法を用いることができる。例えば、スライドリップ方式、カーテン方式、エクストルージョン方式、エアナイフ方式、ロールコーティング方式、ロッドバーコーティング方式等がある。
本発明のインクジェット記録材料は、ポリオレフィン樹脂被覆紙の反対面に、筆記性、プリンター走行安定性などのために、本発明の効果を低下させない範囲で各種の裏塗り層を塗設することができる。裏塗り層は、好ましくはバインダー主体であり、塗設量は固形分で100〜1200mg/m2が好ましい。裏塗り層には親水性バインダー、ラテックス、有機顔料、無機顔料、硬化剤、界面活性剤などを適宜組み合わせて含有せしめることができる。
以下、実施例により本発明を詳しく説明するが、本発明の内容は実施例に限られるものではない。尚、部及び%は質量部、質量%を示す。
〈ポリオレフィン樹脂被覆紙支持体の作製〉
広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)と広葉樹晒サルファイトパルプ(LBSP)の1:1混合物、アルキルケテンダイマーを対パルプ0.7%、ポリアクリルアミドを対パルプ1.0%、カチオン化澱粉を対パルプ2.0%、ポリアミドエピクロロヒドリン樹脂を対パルプ0.5%添加し、水で希釈して1%スラリーとした。このスラリーを長網抄紙機で坪量170g/m2になるように抄造し、乾燥調湿してポリオレフィン樹脂被覆紙の原紙とした。抄造した原紙に、密度0.918g/cm3の低密度ポリエチレン100部に対して、5%のアナターゼ型チタンを均一に分散したポリエチレン樹脂組成物を320℃で溶融し、200m/分で厚さ28μmになるように押出コーティングし、微粗面加工されたクーリングロールを用いて押出被覆し表面とした。もう一方の面には密度0.962g/cm3の高密度ポリエチレン樹脂80部と密度0.918g/cm3の低密度ポリエチレン樹脂20部のブレンド樹脂組成物を同様に320℃で溶融し、厚さ32μmになるように押し出しコーティングし、粗面加工されたクーリングロールを用いて押出被覆し中心線平均粗さRa値が2.0μmになように被覆し裏面とした。さらにインク受容層との接着性を増すため表面に高周波コロナ放電処理を施して樹脂被覆紙を作成した。得られた樹脂被覆紙の厚さは225μmであった。
上記ポリオレフィン樹脂被覆紙の表面に高周波コロナ放電処理を施した後、下記組成のプライマー層をゼラチンが50mg/m2(約0.05μm)となるように塗布乾燥して支持体を作製した。
<プライマー層>
石灰処理ゼラチン 100部
スルフォコハク酸−2−エチルヘキシルエステル塩 2部
クロム明ばん 10部
<シリカ分散液1の作製>
水にジメチルジアリルアンモニウムクロライドホモポリマー(分子量9,000)4部と気相法シリカ(平均一次粒子径7nm、比表面積300m2/g)100部を添加し予備分散液を作製した後、高圧ホモジナイザーで処理して、固形分濃度20%のシリカ分散液1を作製した。
<インク受容層塗布液>
シリカ分散液1 (シリカ固形分として)100部
ポリビニルアルコール 23部
(ケン化度88%、平均重合度3500)
塩基性ポリ水酸化アルミニウム 3部
プロピレングリコール 4部
ノニオン性界面活性剤 0.4部
(ポリオキシエチレンアルキルエーテル)
シリカ分散液1と水に溶解した他の薬品を40℃で混合して、固形分濃度が10%のインク受容層塗布液を作製した。この塗布液を、ポリオレフィン樹脂被覆紙のプライマー層の上に、気相法シリカ換算で20g/m2になるように塗布し乾燥した。
上記のようにして作製されたインクジェット用記録材料を断裁して、2Lサイズ(長辺178mm、短辺127mm)の記録シートを得た。尚、断裁方向は記録シートの長辺が抄紙流れ方向と平行になるようにした。得られた記録シート及び原紙を下記の方法で評価し、その結果を表1に示す。
〈ステキヒトサイズ度〉
ポリオレフィン樹脂被覆紙の製造工程でサンプリングした原紙をJIS−P8122に規定される方法で測定した。
〈ねじれカール〉
記録シートを温度30℃湿度80%RHの環境下において、インク受容層面を上にして24時間調湿する。マイナスカールである場合、インク受容層面を下にして平坦な台上に置き、プラスカールである場合は、インク受容層面を上にして置き、四隅の高さを測定した状態を図1に示す。(a+c−b−d)/2の絶対値でねじれカール値をあらわす。a、b、c、dは図1の矢印であらわしているがそれぞれA、B、C、D四隅を平面上に垂線を下したとき各隅の平面までの距離を示す。その計算結果から下記の基準に基づき評価し、表1に○:ねじれカールが良好。△:ねじれカールが良好。×:ねじれカールが不良であることを示した。
○:ねじれカール値 2mm未満
△:ねじれカール値 2mm以上5mm未満
×:ねじれカール値 5mm以上
〈ヘッド擦れ〉
2Lサイズのインクジェット記録シート5枚重ねを温度30℃80%RHの環境下において、インク受容層面を上にして24時間調湿した後、印字評価を行った。インクジェットプリンターにはPM−950C(セイコーエプソン(株)製)を使用し、シートスタックに5枚セットし、連続で四辺縁無し設定で赤べた印字し、記録シートとプリンターヘッドとの擦れによる汚れの程度を目視で確認し、下記の基準によって評価した。また同様に、13℃−35%RH、23℃−50%RH、26℃−35%の環境下でも評価を行った。
○:ヘッド擦れなく良好。
△:わずかにヘッド擦れが認められるが実用上問題はない。
×:ヘッド擦れがにより汚れが著しく実用上不可である。
実施例1の原紙抄造時のアルキルケテンダイマーを対パルプ1.0%に変更する以外は実施例1と全く同様にしてインクジェット記録シートを得た。
(比較例1)
実施例1の原紙抄造時のアルキルケテンダイマーを対パルプ0.1%に変更する以外は実施例1と全く同様にしてインクジェット記録シートを得た。
(比較例2)
実施例1の原紙抄造時のアルキルケテンダイマーを対パルプ0.1%に、原紙坪量を130g/m2にする以外は実施例1と同様にしてインクジェット記録シートを得た。
(比較例3)
実施例1の原紙抄造時の原紙坪量を230g/m2にする以外は実施例1と同様にしてインクジェット記録シートを得た。
Figure 2006218725
結果:本発明の実施例1では30℃−80%RH環境下で若干ヘッド擦れが発生するものの実用上問題ないレベルであり良好な結果であった。実施例2ではステキヒトサイズ度が高くねじれカールが良好であるため、ヘッド擦れが実施例1より良好な結果であった。比較例1はステキヒトサイズ度が180秒以下である為、ねじれカールが大きくヘッド擦れが発生した。比較例2では、原紙坪量が140g/m2未満であるため、低湿でヘッド擦れが発生し、ステキヒトサイズ度が低いことでねじれカールが発生し高湿でもヘッド擦れが発生する。比較例3では原紙坪量が210g/m2を超えているため、マイナスカールが強くヘッド擦れが発生した。
カール度測定の参照図
符号の説明
A、B、C、D 記録シートの4隅
a、b、c、d 4隅の浮き上がり長さ

Claims (1)

  1. 坪量が140g/m2〜210g/m2の原紙の両面にポリオレフィン樹脂層で被覆された支持体上の一方の面のみに無機微粒子を主体とするインク受容層を有するインクジェット記録シートにおいて、該原紙のJIS−P8122で規定されるステキヒトサイズ度が180秒以上であることを特徴とするインクジェット記録シート。
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