JP2006193505A - フルオレン誘導体の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】ポリマーの原料に使用できるフルオレン誘導体を、酸性ガス(HClガスなど)及び硫酸を使用することなく、製造する。
【解決手段】固体酸(マクロポーラス型イオン交換樹脂など)及びチオール類(β−メルカプトプロピオン酸など)の共存下、下記式(1)のフルオレノン類と、下記式(2)のフェノール類とを反応させて、下記式(3)のフルオレン誘導体を製造する。式中、R1は、アルキル基などの置換基、R2は、アルキル基などの置換基、m1、m2及びnは0〜4の整数を示す。フルオレノン類に対してフェノール類を過剰に用いるのがよい。例えば、固体酸を充填した流通式反応器に、フルオレノン類、フェノール類及びチオール類を流通させることにより、フルオレノン類とフェノール類とを反応させてもよい。
Figure 2006193505

【選択図】なし

Description

本発明は、光学レンズ、フィルム、光ファイバー、光ディスク、耐熱性樹脂、エンジニアリングプラスチック、機能性化合物(光硬化性樹脂など)などの素材原料として有用なフルオレン誘導体の製造方法に関する。
近年、ビスフェノール類を原料とするポリマー(例えば、ポリカーボネート樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂など)において、従来品よりも一層の耐熱性、透明性及び高屈折率を備えた材料が強く要望されている。9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンなどのフルオレン誘導体は、耐熱性に優れ、高透明性で高屈折なポリマーを製造するための原料として有望であり、自動車用ヘッドランプレンズ、CD(コンパクトディスク)[CD−ROM(シーディーロム:コンパクトディスク−リードオンリーメモリー)など]、CD−ROMピックアップレンズ、フレネルレンズ、レーザープリンター用fθ(エフシータ)レンズ、カメラレンズ、リアプロジェクションテレビ用投影レンズなどの光学レンズ、位相差フィルム、拡散フィルムなどのフィルム、プラスチック光ファイバー、光ディスク基板などの素材原料として期待されている。
9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンの合成方法としては、J.Appl.Polym.Sci.,27(9),3289,1982(非特許文献1)、特開平6−145087号公報(特許文献1)及び特開平8−217713号公報(特許文献2)に、フルオレンを空気酸化して得られるフルオレノンを出発原料とし、塩化水素ガス及びメルカプトプロピオン酸を触媒として使用し、フェノールと縮合反応させる方法が記載されている。また、特開2000−26349号公報(特許文献3)には、フルオレノンとアルキルフェノール類との反応において、酸触媒とともにアルキルメルカプタンを用いることが提案されている。この文献には、酸触媒として、塩化水素ガス、濃塩酸、60〜98%硫酸、85%リン酸、メタンスルホン酸が記載され、好ましくは反応系を飽和させる状態で塩化水素ガスが用いられると記載されている。この文献には、メタノール、トルエンなどの反応溶媒中でフルオレノンとアルキルフェノール類とを反応させ、反応混合物を中和し、アセトンなどのケトンを添加して再結晶させ、ビスフェノールフルオレン類を製造することも記載されている。
塩化水素ガスを酸触媒として使用する場合、塩化水素ガスは取扱いの難しい気体であるため、工業的に実施するためには専用の塩化水素ガス発生設備及び塩化水素ガス除外設備が必要である。また、塩化水素ガスの使用には、消防法、高圧ガス取締法、毒劇物取締法、大気汚染防止法などの各種法規による規制があり、設備の設置、取扱い、貯蔵について、十分な安全対策、環境対策が必要である。一方、酸触媒として、硫酸などの液体を使用する場合、酸性ガスの対策は不要であるが、反応液中から抽出作業によって硫酸などを取り除く必要があり、操作が煩雑である。いずれの方法でも、大量生産するためには、バッチ式になるため、連続生産することが難しく量産化が難しい。
特開2000−229899号公報(特許文献4)及び特開2001−199919号公報(特許文献5)には、酸型イオン交換樹脂を触媒とし、アルキルメルカプタンを助触媒とし、フェノールとアセトンとを反応させてビスフェノールAを製造することが記載されているが、フェノール類とフルオレノン類との縮合反応については、記載されていない。
一方、ポリカーボネート樹脂やポリエステル樹脂には高い透明性が要求されるため、前記の製造方法で得られたフルオレン誘導体をポリカーボネート樹脂やポリエステル樹脂の原料として使用するためには、煩雑な精製を行う必要があり、これまでにも様々な精製方法が検討されている。例えば、特開平6−321836号公報(特許文献6)の比較例1には、アセトンなどの極性溶媒で包接結晶を形成させることにより、ビスフェノールフルオレン類の高純度品を得ることが記載されている。しかしながら、包接結晶を乾燥するためには、通常、アセトンの沸点69℃に対して約110℃に加熱する必要があり、多大なエネルギーを要するとともに、乾燥時間が24時間以上かかるため、製造コストが増大する。
J.Appl.Polym.Sci.,27(9),3289,1982 特開平6−145087号公報(特許請求の範囲) 特開平8−217713号公報(特許請求の範囲、段落番号[0010]) 特開2000−26349号公報(特許請求の範囲、段落番号[0025]、[0027]、[0030]) 特開2000−229899号公報(特許請求の範囲) 特開2001−199919号公報(特許請求の範囲、段落番号[0007]) 特開平6−321836号公報(段落番号[0021])特開平6−321836号公報
従って、本発明の目的は、酸性ガス(塩化水素ガスなど)や硫酸を使用することなく、フルオレン誘導体を簡便かつ効率よく製造できる方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、フルオレノン類を反応成分として用いてもフルオレン誘導体を高い収率で効率よく製造できる方法を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、フルオレノン類からフルオレン誘導体を連続的に且つ簡便に製造する方法を提供することにある。
本発明の別の目的は、包接結晶を形成する溶媒(アセトンなど)を使用することなく、一回の晶析により、高純度のフルオレン誘導体を簡便に単離できる方法を提供することにある。
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、イオン交換樹脂などの固体酸とチオール類とを組み合わせた触媒系を使用することにより、フルオレノン類とフェノール類との反応により、フルオレン誘導体[9,9−ビス(ヒドロキシフェニル)フルオレン類]を簡便にかつ効率よく製造できることを見いだし、本発明を完成した。
すなわち、本発明では、固体酸(イオン交換樹脂など)及びチオール類(メルカプタンカルボン酸、脂肪族メルカプタンアルカリ金属塩など)の共存下、式(1)
Figure 2006193505
(式中、R1はアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、カルボキシル基、又はアルコキシカルボニル基を示し、m1及びm2はそれぞれ0〜4の整数を示し、m1及びm2の値によってR1は異なっていてもよい)
で表されるフルオレノン類と、式(2)
Figure 2006193505
(式中、R2は、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、ヒドロキシル基を示し、nは0〜4の整数を示し、nの値によってR2は異なっていてもよい)
で表されるフェノール類とを反応させて、式(3)
Figure 2006193505
(式中、R1、R2、m1、m2及びnは、前記に同じ)
で表されるフルオレン誘導体を製造する。
イオン交換樹脂はマクロポーラス型陽イオン交換樹脂(特に平均孔径が50〜1000Å程度であるマクロポーラス型陽イオン交換樹脂)であってもよい。フェノール類とフルオレノン類との割合(モル比)は、前者/後者=3/1〜50/1程度であってもよい。チオール類を、フルオレノン類1重量部に対して、0.0001〜0.5重量部程度の割合で使用してもよい。
本発明では、例えば、固体酸を充填した流通式反応器に、式(1)で表されるフルオレノン類、式(2)で表されるフェノール類及びチオール類を流通させて、式(3)で表されるフルオレン誘導体を連続的に生成させてもよい。この場合、チオール類を、固体酸1重量部に対して、1時間当たり、0.0001〜0.1重量部程度の割合で流通させてもよい。また、このような流通させる方法において、フルオレノン類を、固体酸1重量部に対して、1時間当たり、0.01〜10重量部程度の割合で使用してもよい。
本発明には、前記の方法で得られた反応液を濃縮し、得られた濃縮液を冷却することにより、フルオレン誘導体を単離する方法も包含される。この方法は、単離したフルオレン誘導体を、さらに洗浄する洗浄工程を含んでいてもよい。前記洗浄工程は、少なくともリパルプによる洗浄を含んでいてもよい。前記洗浄工程において、洗浄回数は、1回以上であればよく、より高純度のフルオレン誘導体を得るため、少なくとも2回以上(例えば、2〜10回程度)であってもよい。洗浄工程における洗浄溶媒の使用量(総使用量)は、フルオレン誘導体100重量部に対して、5〜1000重量部程度であってもよい。
本発明では、酸触媒として、固体酸を使用し、酸性ガス(塩化水素ガスなど)や硫酸を使用しないので、酸触媒とフルオレン誘導体とを分離するための抽出操作が不要であり、フルオレン誘導体を簡便にかつ効率よく製造できる。また、特定の固体酸を使用することにより、フルオレノン類を反応成分として用いてもフルオレン誘導体を高い収率で効率よく製造できる。さらに、フルオレノン類からフルオレン誘導体を連続的に且つ簡便に製造できる。さらには、包接結晶を形成する溶媒(アセトンなど)を使用することなく、一回の晶析により、高純度のフルオレン誘導体を簡便に単離できる。特に、単離したフルオレン誘導体を洗浄する(特に少なくともリパルプにより洗浄する)ことにより、より一層高純度(及び低黄色度)のフルオレン誘導体を効率よく得ることができる。
本発明のフルオレン誘導体の製造方法では、固体酸及びチオール類の共存下、フルオレノン類とフェノール類とを反応させる。
[フルオレノン類]
本発明で使用するフルオレノン類は、特に限定されず、例えば、前記式(1)で表される化合物などが挙げられる。式(1)中、R1は、アルキル基[メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、tert−ブチル基などのC1-6アルキル基(好ましくはC1-4アルキル基)など]、シクロアルキル基[シクロペンチル基、シクロヘキシル基などのC4-8シクロアルキル基(好ましくはC5-6シクロアルキル基)など]、アリール基(フェニル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基などのC1-4アルキル−フェニル基、ナフチル基など)、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、n−ブトキシ基、iso−ブトキシ基、tert−ブトキシ基などのC1-4アルコキシ基など)、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基などのC1-5アルコキシ−カルボニル基など)を示す。R1は、通常、アルキル基、例えば、C1-4アルキル基、特にメチル基である場合が多い。
式(1)中、m1は0〜4の整数(例えば、0〜3の整数、好ましくは0〜2の整数、さらに好ましくは0又は1)を示す。m2は0〜4の整数(例えば、0〜3の整数、好ましくは0〜2の整数、さらに好ましくは0又は1)を示す。
複数個のR1が存在する場合、各R1で示される基は、同一であっても、異なっていてもよい。すなわち、m1及びm2の値によってR1は異なっていてもよい。フルオレン環におけるR1で示される基の置換位置は、特に制限されず、例えば、1−位、2−位、3−位、4−位のいずれであってもよく、1,8−位、2,7−位、3,6−位、4,5−位などであってもよい。
フルオレノン類は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。フルオレノン類の純度は特に制限されないが、通常、95重量%以上であり、例えば、97重量%以上、好ましくは99重量%以上であってもよい。
フルオレノン類は、例えば、フルオレン類(フルオレンなど)を空気酸化すること、又はフルオレノン(例えば、フルオレンを空気酸化して得られたフルオレノン)にR1で示される基を導入することにより製造できる。
[フェノール類]
フェノール類は、特に限定されず、例えば、前記式(2)で表される化合物などが挙げられる。式(2)中、R2は、アルキル基[メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、tert−ブチル基などのC1-6アルキル基(好ましくはC1-4アルキル基)など]、シクロアルキル基[シクロペンチル基、シクロヘキシル基などのC4-8シクロアルキル基(好ましくはC5-6シクロアルキル基)など]、アリール基(フェニル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基などのC1-4アルキルフェニル基、ナフチル基など)、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、n−ブトキシ基、iso−ブトキシ基、tert−ブトキシ基などのC1-4アルコキシ基など)、ヒドロキシル基を示す。アルキル基としては、C1-4アルキル基、特にメチル基が好ましい。シクロアルキル基としてはシクロヘキシル基が好ましい。アリール基としてはフェニル基が好ましい。式(2)中、nは0〜4の整数(例えば、0〜3の整数、好ましくは0〜2の整数、さらに好ましくは0又は1)を示す。複数個のR2が存在する場合、各R2で示される基は、同一であっても、異なっていてもよい。すなわち、nの値によってR2は異なっていてもよい。
2で示される基の結合位置(置換位置)は、nの値によっても変動するが、例えば、ヒドロキシル基に対して、2−位、3−位、4−位、2,3−位、2,4−位、2,5−位、2,6−位、3,4−位、3,5−位などが例示でき、好ましくは2−位、3−位、2,5−位、2,6−位、さらに好ましくは2−位である。
式(2)で示されるフェノール類の具体例としては、例えば、フェノール、アルキルフェノール(o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾールなどのクレゾール類などのC1-4アルキル−フェノールなど)、ジアルキルフェノール(2,3−ジメチルフェノール、2,5−ジメチルフェノール、2,6−ジメチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチルフェノールなど)、シクロアルキルフェノール(2−シクロヘキシルフェノールなど)、アリールフェノール(o−フェニルフェノールなど)、アルコキシフェノール(o−メトキシフェノールなどのアニソール類など)、ジヒドロキシベンゼン(カテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン)、アルキル−ジヒドロキシベンゼン[ジヒドロキシトルエン、4−t−ブチルカテコール、ジヒドロキシキシレンなどのモノ又はジC1-6アルキル−ジヒドロキシベンゼンなど]などが挙げられる。フェノール類は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
これらのフェノール類の中でも、フェノール、C1-4アルキル−フェノール[2−C1-4アルキル−フェノール(例えば、o−クレゾールなどのクレゾール類など)]、ジヒドロキシベンゼンが好ましい。
フェノール類の純度は特に制限されないが、通常、95重量%以上であり、例えば、97重量%以上、好ましくは99重量%以上であってもよい。
通常、副反応を抑制しつつ、フルオレン誘導体の収率を高くする点から、フルオレノン類に対して過剰のフェノール類が使用される。例えば、両者の割合(モル比)は、通常、フェノール類/フルオレノン類=2/1〜50/1(例えば、3/1〜50/1)程度であり、好ましくは5/1〜40/1(例えば、7/1〜30/1)、さらに好ましくは10/1〜30/1(特に15/1〜25/1)程度であってもよい。フェノール類を過剰に使用することにより、フルオレノン類との反応の効率がよくなる(例えば、副反応を抑制でき、目的化合物の選択率を向上できる)だけでなく、反応液からフルオレン誘導体を回収する際に、フェノール類が晶析溶媒として作用し、フルオレン誘導体が析出しやすくなる。
[固体酸]
固体酸は、主に、フルオレノン類とフェノール類との脱水縮合反応の酸触媒として作用すると考えられる。固体酸としては、無機固体酸[金属化合物(SiO2、Al23、TiO2、Fe23、ZrO2、SnO2、V25などの酸化物、SiO2−Al23、SiO2−TiO2、TiO2−ZrO2、SiO2−ZrO2などの複合酸化物、ZnSなどの硫化物、CaSO4、Fe2(SO43、CuSO4、NiSO4、Al2(SO43、MnSO4、BaSO4、CoSO4、ZnSO4などの硫酸塩、P、Mo、V、W、Siなどの元素を含有するポリ酸(AlPO4、Tiのリン酸塩などのリン酸塩など)など);(NH42SO4などの硫酸塩;粘土鉱物(酸性白土、モンモリロナイトなど);ゼオライト(酸性OH基を有するY型、X型、A型、ZSM5、モルデナイト、VIPI5、AlPO4−5、AlPO4−11など);カオリンなど]、有機固体酸(イオン交換樹脂など)などを例示できる。固体酸は、固体酸の種類に応じて多孔性又は非多孔性であってもよい。これらの固体酸は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
イオン交換樹脂としては、主に、強酸性陽イオン交換樹脂[例えば、スルホン酸基を有するイオン交換樹脂[スチレン−ジビニルベンゼンコポリマーなどの架橋ポリスチレンのスルホン化物、スルホン酸基(又は−CF2CF2SO3H基)を有する含フッ素樹脂(例えば、[2−(2−スルホテトラフルオロエトキシ)ヘキサフルオロプロポキシ]トリフルオロエチレンとテトラフルオロエチレンとのブロック共重合体(デュポン社製の「ナフィオン」)などの含フッ素イオン交換樹脂など)など]など]、弱酸性陽イオン交換樹脂[例えば、カルボン酸基を有するイオン交換樹脂(メタクリル酸−ジビニルベンゼンコポリマーなど)など]などの陽イオン交換樹脂(酸型イオン交換樹脂)などを使用できる。また、分子内に臭素を導入した耐熱性のイオン交換樹脂も使用できる。これらの固体酸の中でも、陽イオン交換樹脂が好ましい。
イオン交換樹脂のイオン交換容量は、通常、0.5当量/L以上、例えば、1当量/L以上、好ましくは1.5当量/L以上、さらに好ましくは2当量/L以上であってもよい。また、イオン交換樹脂のイオン交換容量の上限については、特に限定はないが、通常、10当量/L以下、例えば、8当量/L以下、さらに6当量/L以下(特に4当量/L以下)である場合が多い。
イオン交換樹脂は、幾何学的構造面から、ゲル型とポーラス型に分けられる。ゲル型イオン交換樹脂は、通常、スチレン−ジビニルベンゼン(DVB)コポリマーなどを基体とし、通常、ミクロポアー(例えば、孔径が15〜30Å程度の細孔)を有するイオン交換樹脂(例えば、気孔率が0.01〜0.02ml/ml程度のイオン交換樹脂)である。ポーラス型イオン交換樹脂(Macro porous(MP)樹脂、Macro reticular structure(MR)樹脂)は、ミクロポアーの他にマクロポアー(例えば、孔径が50〜1000Å程度の細孔)を有するイオン交換樹脂である。通常、触媒活性の点からポーラス型イオン交換樹脂が好ましい。
ポーラス型イオン交換樹脂のうち、例えば、ジビニルベンゼンなどの架橋性モノマーの比率(架橋度)の高いスチレン−ジビニルベンゼンコポリマーを基体としたイオン交換樹脂は、機械的強度が強く、吸着速度が大きく、大分子イオンの交換や樹脂汚染性の強い溶媒及び無極性溶媒中のイオン交換などに適しており、特に、ハイポーラス樹脂と呼ばれる。
ポーラス型イオン交換樹脂の多孔度は、通常、0.03〜0.6cm3/g程度であり、例えば、0.05〜0.55cm3/g、好ましくは0.1〜0.5cm3/g、さらに好ましくは0.15〜0.45cm3/g(特に0.2〜0.4cm3/g)程度であってもよい。イオン交換樹脂の窒素吸着比表面積は、通常、10〜90m2/g程度であり、例えば、15〜80m2/g、好ましくは20〜70m2/g、さらに好ましくは25〜60m2/g(特に30〜50m2/g)程度であってもよい。
これらの固体酸の中でも、フルオレノン類とフェノール類との反応に寄与する細孔(マクロポアー)を有する多孔性の固体酸[例えば、多孔性の無機固体酸(ゼオライトなど)、多孔性の有機固体酸(ポーラス型イオン交換樹脂など)など]が好ましく、ポーラス型イオン交換樹脂が特に好ましい。
ポーラス型イオン交換樹脂は、通常、平均孔径が20〜5000Å程度であり、例えば、30〜3000Å(例えば、50〜1000Å程度)、好ましくは70〜950Å(例えば、100〜900Å程度)、さらに好ましくは150〜850Å(特に、200〜800Å程度)であってもよい。ポーラス型イオン交換樹脂では、マクロポアーの壁面にミクロポアーが存在し、フルオレノン類とフェノール類との反応場を与えているものと考えられる。
固体酸として、例えば、バイエル社製の「レバチットK2649」;オルガノ社製の「アンバーリスト31」、「アンバーリスト131」、「アンバーリスト121」;デュポン社製の「ナフィオン」などの市販のイオン交換樹脂を使用してもよい。なお、アセトンとフェノールとの反応などに使用されている固体酸では、ほとんどフルオレノン類の反応は進行しないようである。
固体酸の形態は、例えば、フルオレノン類とフェノール類との反応の効率、固体酸と反応液との分離などに悪影響がなければ、特に制限はなく、膜状であってもよいが、通常、粒状であり、微粒状であってもよい。また、粒状(微粒状)の固体酸の形状は、例えば、無定形、球状、多角体状、ペレット状などであってもよい。粒状の固体酸のうち、例えば、球状の固体酸の粒径は、通常、0.1〜1.5mm程度であり、例えば、0.15〜1.2mm、好ましくは0.2〜1mm、さらに好ましくは0.25〜0.8mm(特に0.3〜0.6mm)程度であってもよい。
[チオール類]
チオール類は、主に、固体酸の酸触媒としての作用を補助する助触媒として作用すると考えられる。チオール類としては、公知のものを使用できる。チオール類としては、例えば、脂肪族メルカプタン[メタンチオール、エタンチオール、1−プロパンチオール、2−プロパンチオール、1−ブタンチオールなどのC1-4アルカンチオールなど]、芳香脂肪族メルカプタン(フェニルメタンチオールなどのC6-10アリール−C1-4アルカンチオールなど)、芳香族メルカプタン(ベンゼンチオールなどのC6-10アレーンチオールなど)、メルカプタンカルボン酸(又はメルカプトカルボン酸)[メルカプト酢酸、α−メルカプトプロピオン酸、β−メルカプトプロピオン酸などのC2-4脂肪族メルカプタンカルボン酸、メルカプト安息香酸などのC7-13芳香族メルカプタンカルボン酸などのメルカプタンモノカルボン酸、メルカプトコハク酸(HOOC−CH2CH(SH)−COOH)などのメルカプタンポリカルボン酸など]及びその塩[例えば、アルカリ金属塩(ナトリウム塩(β−メルカプトプロピオン酸ナトリウム:HSC24COONaなど)など)など]、チオール酸[チオ酢酸、チオシュウ酸(HS(C=O)−(C=O)SH)などのC2-4チオール酸など]およびそれらの塩(チオラート)[例えば、アルカリ金属チオラート(ナトリウムチオラートなど)など]などが挙げられる。チオール類は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
これらのチオール類の中でも、メルカプタンカルボン酸(例えば、C2-4脂肪族メルカプタンカルボン酸など)、脂肪族メルカプタン(例えば、C1-4アルカンチオールなど)のアルカリ金属塩[メチルメルカプタンナトリウム(ナトリウムメチルチオラート:CH3SNa)、エチルメルカプタンナトリウム(ナトリウムエチルチオラート:CH3CH2SNa)など]などが好ましく、C2-4脂肪族メルカプタンカルボン酸(特にβ−メルカプトプロピオン酸など)などが最も好ましい。
チオール類の使用量は、通常、フルオレノン類1重量部当たり、0.00001〜1重量部(例えば、0.00005〜0.7重量部程度であり、例えば、0.0001〜0.5重量部、好ましくは0.003〜0.3重量部、さらに好ましくは0.005〜0.2重量部(特に0.007〜0.1重量部)程度であってもよい。
[フルオレン誘導体の製造方法]
フルオレノン類とフェノール類との反応は、例えば、バッチ式で行ってもよく、流通式(連続式)で行ってもよい。バッチ式反応は、不活性ガス(例えば、窒素ガス;アルゴンガス、ヘリウムガスなどの希ガスなどの不活性ガス)雰囲気中、フルオレノン類、フェノール類、固体酸及びチオール類を攪拌下で行うことができる。流通式反応(連続式反応)は、例えば、固体酸を充填した流通式反応器に、フルオレノン類、フェノール類及びチオール類の混合液を流通させることにより、行うことができる。
反応条件(固体酸及びチオール類の使用量、反応時間など)は、反応様式に応じて選択できる。バッチ式では、固体酸の使用量は、通常、フルオレノン類1重量部に対して、0.01〜5重量部程度であり、例えば、0.05〜4.5重量部、好ましくは0.1〜4重量部、さらに好ましくは0.2〜3.5重量部(特に0.3〜3重量部)程度であってもよい。バッチ式における反応時間は、特に制限はないが、例えば、フルオレノン類の転化率などを考慮して、通常、0.5〜50時間程度である。
一方、流通式(連続式)では、固体酸を充填したカラムに、フルオレノン類、フェノール類及びチオール類(助触媒)を混合した溶液を通じて反応を行う。流通式反応における液空間速度(流量/固体酸体積)LHSVは、通常、0.1〜10hr-1、であり、例えば、0.15〜8hr-1、好ましくは0.2〜5hr-1であってもよい。チオール類の流通量は、通常、固体酸1重量部に対して、1時間当たり、0.00001〜0.5重量部(例えば、0.00003〜0.3重量部)程度であり、好ましくは0.00005〜0.2重量部(例えば、0.00007〜0.15重量部)、さらに好ましくは0.0001〜0.1重量部(例えば、0.0002〜0.05重量部)、特に0.0003〜0.01重量部程度であってもよい。
また、流通式において、フルオレノン類の流通量は、固体酸1重量部に対して、1時間当たり、0.001〜30重量部(例えば、0.003〜25重量部)程度であり、好ましくは0.005〜20重量部(例えば、0.007〜15重量部)、さらに好ましくは0.01〜10重量部(例えば、0.02〜5重量部)、特に0.03〜1重量部程度であってもよい。
反応温度は、使用する固体酸、フルオレノン類、フェノール類及びチオール類の種類などによって異なるが、通常10〜120℃程度であり、例えば、50〜110℃、好ましくは60〜105℃、さらに好ましくは70〜100℃(特に80〜95℃)程度であってもよい。反応温度が低すぎると反応速度が低下し、反応温度が高すぎると副反応が生じて収率が低下する。
反応は、反応溶媒[例えば、芳香族系溶媒(ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、アニソールなど)、エーテル系溶媒(ジエチルエーテルなどのジアルキルエーテル類、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどの環状エーテル類など)、ハロゲン系溶媒(塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素などのハロゲン化炭化水素類など)などの反応に不活性な溶媒]の存在下で行ってもよいが、通常、溶媒の非存在下で行うことができる。特に、フルオレノン類に対して過剰のフェノール類を使用する場合、フェノール類を反応溶媒として利用でき、反応がスムーズに進行する場合が多い。
本発明では、高い転化率及び選択率でフルオレン誘導体を効率よく得ることができる。フルオレノン類の転化率は、通常、98モル%以上であり、例えば、98.5モル%以上、好ましくは99モル%以上とすることが望ましい。フルオレノン類の転化率を向上させると、未反応のフルオレノン類の量が少なくなるため、目的化合物の分離生成が容易になる。例えば、バッチ式反応では、反応時間を長くすることにより、流通式反応では、生成する水の除去により、フルオレノン類の転化率を向上できる。生成した水の除去は、例えば、縦列に連結した複数(例えば2基)の反応器を使用し、反応器間に脱水缶を設けて行うことができる。フルオレノン類の転化率は、例えば、液体クロマトグラフィーにより、測定できる。
[フルオレン誘導体]
本発明で得られるフルオレン誘導体は、式(3)で表される。式(3)におけるR1、R2、m1、m2及びnは、前記と同様である。特に限定するものではないが、フルオレン誘導体としては、通常、フェノール類に由来するヒドロキシル基が、少なくともベンゼン環の3位又は4位に結合しているものが好ましく、特に4位に結合しているものが好ましい。
フルオレン誘導体の具体例としては、例えば、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン;9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−エチルフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−C1-4アルキルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−ヒドロキシ−4−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(2−ヒドロキシ−4−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(アルキルヒドロキシフェニル)フルオレン(例えば、9,9−ビス(C1-4アルキル−ヒドロキシ−フェニル)フルオレン);9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(ジアルキルヒドロキシフェニル)フルオレン(例えば、9,9−ビス(ジC1-4アルキル−ヒドロキシ−フェニル)フルオレン);9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−シクロヘキシルフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(シクロアルキルヒドロキシフェニル)フルオレン(例えば、9,9−ビス(C5-8シクロアルキル−ヒドロキシ−フェニル)フルオレン);9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−フェニルフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(アリールヒドロキシフェニル)フルオレン(例えば、9,9−ビス(C6-10アリール−ヒドロキシ−フェニル)フルオレン);9,9−ビス(3,4−ジヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(2,4−ジヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(2,5−ジヒドロキシフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(ジヒドロキシフェニル)フルオレン;9,9−ビス(3,4−ジヒドロキシ−5−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3,4−ジヒドロキシ−6−メチルフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(アルキルジヒドロキシフェニル)フルオレン(例えば、9,9−ビス(C1-4アルキル−ジヒドロキシ−フェニル)フルオレン);9,9−ビス(2,4−ジヒドロキシ−3,6−ジメチルフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(ジアルキル−ジヒドロキシ−フェニル)フルオレン(例えば、9,9−ビス(ジC1-4アルキル−ジヒドロキシ−フェニル)フルオレン)などの9,9−ビス(アルキル−ジヒドロキシフェニル)フルオレンなどを挙げることができる。
これらのフルオレン誘導体の中でも、9,9−ビス(ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(C1-4アルキルヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(ヒドロキシアリールフェニル)フルオレン(又は9,9−ビス(アリールヒドロキシフェニル)フルオレン)、特に9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−C1-4アルキルフェニル)フルオレン[例えば、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン]が好ましい。
[フルオレン誘導体の単離方法]
反応終了後の反応液には、反応生成物であるフルオレン誘導体以外に、未反応のフルオレノン類、未反応のフェノール類、チオール類、水、副反応生成物などが含まれる。なお、バッチ式反応において、固体酸は、例えば、慣用の固液分離法(ろ過、デカンテーションなど)により、反応液から容易に分離でき、流通式反応では、固体酸の分離操作なしに反応液を得ることができる。従って、これらの反応液からは、酸触媒が混入していない高純度のフルオレン誘導体を簡便に回収できる。
反応液からフルオレン誘導体を単離する方法は特に限定されず、例えば、汎用の方法でも高純度のフルオレン誘導体を単離できる。反応液からフルオレン誘導体を単離する方法としては、例えば、溶媒成分(未反応のフェノール類など)を蒸発させる方法、冷却晶析させる方法、晶析溶媒を使用して晶析させる方法、再結晶させる方法、抽出溶媒により抽出する方法、これらの2種以上を組み合わせた方法などが挙げられる。例えば、溶媒成分を蒸発させる方法と冷却晶析させる方法とを組み合わせてもよい。反応液から、フルオレン誘導体の結晶を析出させる際に、種結晶(目的とするフルオレン誘導体の結晶)を添加してもよいが、添加しなくてもよい。反応液に種結晶を添加することにより、結晶の析出速度を速め、かつ微少結晶の生成を防ぎ、結晶の大きさをそろえることができる。
例えば、まず、反応液を減圧(特に加熱減圧)して、少なくともフェノール類の一部を留去して、濃縮液を得てもよい。加熱減圧には、例えば、減圧蒸留塔(真空蒸留塔)を使用できる。加熱温度は、通常、60℃以上であり、例えば、60〜150℃、好ましくは70〜140℃、さらに好ましくは80〜130℃(特に90〜120℃)程度であってもよい。減圧時の圧力は、通常、20mPa(ミリパスカル)以下であり、例えば、0〜15mPa、好ましくは0〜12mPa、さらに好ましくは0〜10mPa(特に0〜8mPa)程度であってもよい。通常、濃縮液中のフルオレン誘導体の濃度が10〜50重量%(例えば、15〜40重量%)程度になるまで溶媒成分(フェノール類など)を留去してもよい。
次に、得られた濃縮液を冷却して、結晶(フルオレン誘導体)を析出させることができる。濃縮液を冷却することにより、結晶を効率よく析出させることができ、例えば、アセトンなどの晶析溶媒を使用しなくとも、フルオレン誘導体の高純度品を得られる。冷却温度は、フェノール類の種類などにもよるが、フルオレン誘導体の結晶が析出する温度以下であり、通常、60℃以下(例えば、0〜55℃)であり、好ましくは2〜50℃、さらに好ましくは5〜45℃(特に7〜40℃)程度であり、室温(10〜25℃)程度であってもよい。本発明では、アセトンなどの晶析溶媒を使用する必要がないので、フルオレン誘導体を安価に製造できる。
析出した結晶(フルオレン誘導体)は、ろ液と分離し、回収でき、必要に応じてより一層フルオレン誘導体の純度を高めるため、洗浄溶媒を使用して洗浄してもよい。すなわち、前記方法は、単離したフルオレン誘導体を、さらに洗浄する洗浄工程を含んでいてもよい。
洗浄工程において、洗浄としては、フルオレン誘導体と洗浄溶媒とを接触させることができればよく、例えば、慣用の洗浄(すなわち、フルオレン誘導体と洗浄溶媒とを接触させて、フルオレン誘導体に連続的に洗浄溶媒を通過又は流通させる洗浄)であってもよく、リパルプによる洗浄(リパルプ洗浄)であってもよい。リパルプ洗浄(又は攪拌洗浄)は、フルオレン誘導体を溶媒(洗浄溶媒)に分散させて行うことができ、通常、フルオレン誘導体と洗浄溶媒との混合物とを攪拌することにより行うことができる。
本発明では、特に、リパルプ洗浄を行うことにより、フルオレン誘導体の純度を効率よく高めることができ、しかもより一層フルオレン誘導体の黄色度を低減することができる。そのため、前記洗浄工程は、少なくともリパルプによる洗浄を含んでいてもよい。例えば、前記洗浄工程は、リパルプ洗浄のみであってもよく、リパルプ洗浄と通常の洗浄(フルオレン誘導体に対する洗浄溶媒の通過又は流通)とを組み合わせて行ってもよい。
前記洗浄工程において、洗浄回数は、1回以上であればよく、例えば、2回以上(例えば、2〜10回程度)、好ましくは2〜7回(例えば、2〜5回)、さらに好ましくは2〜4回程度であってもよい。
洗浄溶媒としては、例えば、脂肪族炭化水素(例えば、ペンタン、ヘキサンなどのC5-10アルカンなど)、脂環式炭化水素(例えば、シクロヘキサンなどのC5-10シクロアルカンなど)、芳香族炭化水素(例えば、トルエン、キシレンなどのC6-10芳香族炭化水素など)、アルコール類、ケトン類、エステル類などを使用でき、通常、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素を使用する場合が多い。洗浄溶媒は、単独で又は二種以上の混合溶媒として使用できる。洗浄工程における洗浄溶媒の使用量(又は総使用量)は、通常、粗製品(洗浄前の結晶、単離したフルオレン誘導体)100重量部(粗製品が液状成分を含む場合には、ウエット重量)に対して、5〜1000重量部程度であり、例えば、20〜500重量部(例えば、25〜400重量部)程度であってもよい。なお、洗浄工程を複数回の洗浄により行う場合、各洗浄(又は1回の洗浄)における洗浄溶媒の使用量は、例えば、粗製品100重量部(粗製品が液状成分を含む場合には、ウエット重量)に対して、3〜500重量部、好ましくは10〜300重量部、さらに好ましくは15〜200重量部(例えば、20〜150重量部)程度であってもよい。
本発明によれば、固体酸を使用するので、副反応を抑制しつつ、また、反応液への酸触媒(塩化水素、硫酸など)の混入を防止でき、1回の晶析でも(再結晶などの精製を行わなくても)、例えば、透明性が要求されるポリマー(ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂など)の原料として使用できる高純度(例えば、純度99重量%以上、好ましくは99.5重量%以上、さらに好ましくは99.6重量%以上)のフルオレン誘導体(精製フルオレン誘導体)を単離できる。フルオレン誘導体の液体クロマトグラフィーによる純度は、従来の製造方法で得られる製品よりも高く、ポリカーボネート樹脂やポリエステル樹脂などのポリマー原料として使用できる品質である。なお、ここでいう「純度」とは、逆相カラムを使用した液体クロマトグラフィーを用いて分析し、面積百分率で表したものを意味する。
本発明で得られるフルオレン誘導体の黄色度は、通常、0〜5程度であり、例えば、0.1〜4、好ましくは0.2〜3、さらに好ましくは0.3〜2(例えば、0.5〜1.5)、特に1.3以下(例えば、0.7〜1.2)程度であってもよい。本発明で得られるフルオレン誘導体は、黄色度の点からも、そのまま、さらに精製することなく、透明性が要求されるポリマー(ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂など)の原料として使用できる。フルオレン誘導体の黄色度は、例えば、可視紫外線吸収装置を使用して測定した透過率に基づいて算出できる。
本発明で得られるフルオレン誘導体は、薬品(精密化学薬品など)、医薬、農薬、電子・電気材料、光学材料などの原料又は中間体、透明性が要求されるポリマー(ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂など)の製造原料に利用でき、例えば、光学レンズ、フィルム、光ファイバー、光ディスクなどの光学樹脂、耐熱性樹脂、エンジニアリングプラスチック、機能性化合物(光硬化性樹脂など)、エポキシ硬化剤などの素材原料として有用である。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
なお、本実施例において、フルオレン誘導体(目的化合物)の純度は、逆相カラムを使用した液体クロマトグラフィー(東ソー(株)製)を使用して分析し、面積百分率で表示した。フルオレン誘導体(目的化合物)の黄色度は、可視紫外吸収装置(日立(株)製)を使用して測定した透過率より計算した。フルオレノン基準のフルオレン誘導体(目的化合物)の収率は、以下の計算式により算出した。
収率=(得られたフルオレン誘導体のモル数÷原料に使用したフルオレノンのモル数)×100(%)。
実施例1(流通式)
温度調節器、流量計及び圧力計を備えた流通式反応器のカラム(φ50mm×200mm)にポーラス型イオン交換樹脂(バイエル社製レバチットK2649:ポーラス型強酸性陽イオン交換樹脂)36gを充填した。フルオレノン72g(0.4モル)、o−クレゾール864g(8モル)及びβ−メルカプトプロピオン酸0.8ml(約0.64g)の混合液を、90℃に加温した後、前記カラムに、流量25g/hrで約36時間かけて流通させた(LHSV:0.63hr-1)。
HPLC(高性能液体クロマトグラフィー)で確認した結果、カラムから流出した反応液中のフルオレノンの残存量は0.1重量%以下であった。得られた反応液を、100℃、66.5mPaにて、加熱減圧して、反応液の50重量%(主にo−クレゾール)を留去した。得られた濃縮液を、撹拌下、10℃まで冷却し、析出した結晶をろ過して取り出した。
得られた結晶を、結晶重量(ウエット重量)に対して30重量%のトルエンを使用して洗浄したところ、目的化合物である9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン(BCF)が得られた。フルオレノン基準のBCFの収率は89モル%であった。得られたBCFの純度は99.6重量%であり、黄色度は1.3(無色透明)であった。黄色度が1.3のBCFは、これ以上の再結晶を行うことなく、ポリマー原料として使用できる。
実施例2(流通式)
フルオレノンの使用量を36g(0.2モル)とする以外は実施例1と同様に混合液をカラムに流通させた。HPLCで確認した結果、得られた反応液中のフルオレノンの残存量は0.1重量%以下であった。実施例1と同様に反応液から結晶を取り出したところ、目的化合物であるBCFが得られた。フルオレノン基準のBCFの収率は87モル%であった。得られたBCFの純度は99.6重量%であり、黄色度は1.3(無色透明)であった。
実施例3(流通式)
o−クレゾールに代えて2,6−ジメチルフェノール244g(2モル)を使用する以外は実施例1と同様に混合液をカラムに流通させた。HPLCで確認した結果、反応液中のフルオレノンの残存量は0.1重量%以下であった。実施例1と同様に反応液から結晶を取り出したところ、目的化合物である9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)フルオレンが得られた。フルオレノン基準の9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)フルオレンの収率は88モル%であった。得られた9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)フルオレンの純度は99.9重量%であり、黄色度は1.0(無色透明)であった。黄色度1.0の9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)フルオレンは、これ以上の再結晶を行うことなく、ポリマー原料として使用できる。
実施例4(バッチ式)
温度調節器及び攪拌機を備えたバッチ式反応装置の反応器にフルオレノン135g(0.375モル)、o−クレゾール1620g(15モル)及びβ−メルカプトプロピオン酸2ml(約1.6g)を入れ、温度を95℃に調節し、攪拌しながら、ポーラス型イオン交換樹脂(バイエル社製レバチットK2649:ポーラス型強酸性陽イオン交換樹脂)101gを投入し、さらに8時間攪拌した。
HPLCで確認した結果、得られた反応液中のフルオレノンの残存量は0.1重量%以下であった。得られた反応液を、100℃、66.5mPaにて、加熱減圧して、反応液の50重量%(主にo−クレゾール)を留去した。得られた濃縮液を、撹拌下、10℃まで冷却し、析出した結晶をろ過して取り出した。
得られた結晶を、結晶重量(ウエット重量)に対して30重量%のトルエンを使用して洗浄したところ、目的化合物であるBCFが得られた。フルオレノン基準のBCFの収率は86モル%であった。得られたBCFの純度は99.5重量%であり、黄色度は1.8(無色透明)であった。黄色度が1.8のBCFは、これ以上の再結晶を行うことなく、ポリマー原料として使用できる。
実施例5(流通式)
実施例1と同様に混合液をカラムに流通させて、反応液の50重量%を留去した後、攪拌下、10℃まで冷却して得られた結晶を、結晶重量(ウエット重量)に対して100重量%のトルエンを使用して1回洗浄後、得られた洗浄物の重量(ウエット重量)に対して50重量%のトルエンに分散させてリパルプ洗浄し、得られた洗浄物の重量(ウエット重量)に対して100重量%のトルエンで洗浄したところ、目的化合物であるBCFが得られた。フルオレノン基準のBCFの収率は90%であった。得られたBCFの純度は99.7重量%であり、黄色度は1.0(無色透明)であった。黄色度が1.0のBCFはこれ以上の再結晶を行うことなく、ポリマー原料として使用できる。
実施例6(流通式)
実施例1と同様に混合液をカラムに流通させ、反応液の50重量%を留去した後、攪拌下、28℃まで冷却して得られた結晶を実施例5と同様に洗浄したところ、目的化合物であるBCFが得られた。得られたBCFの純度は99.8重量%であり、黄色度は1.0(無色透明)であった。黄色度が1.0のBCFはこれ以上の再結晶を行うことなく、ポリマー原料として使用できる。
実施例7(流通式)
結晶を析出させるための冷却温度を45℃とした以外は実施例6と同様に混合液をカラムに流通させて、反応液の50重量%を留去した後、攪拌下、結晶を析出させ、洗浄したところ、目的化合物であるBCFが得られた。得られたBCFの純度は99.9重量%であり、黄色度は1.0(無色透明)であった。黄色度が1.0のBCFはこれ以上の再結晶を行うことなく、ポリマー原料として使用できる。

Claims (15)

  1. 固体酸及びチオール類の共存下、式(1)
    Figure 2006193505
    (式中、R1はアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、カルボキシル基、又はアルコキシカルボニル基を示し、m1及びm2はそれぞれ0〜4の整数を示し、m1及びm2の値によってR1は異なっていてもよい)
    で表されるフルオレノン類と、式(2)
    Figure 2006193505
    (式中、R2はアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、又はヒドロキシル基を示し、nは0〜4の整数を示し、nの値によってR2は異なっていてもよい)
    で表されるフェノール類とを反応させて、式(3)
    Figure 2006193505
    (式中、R1、R2、m1、m2及びnは、前記に同じ)
    で表されるフルオレン誘導体を製造する方法。
  2. 固体酸がイオン交換樹脂である請求項1記載の方法。
  3. 固体酸がマクロポーラス型陽イオン交換樹脂である請求項1記載の方法。
  4. イオン交換樹脂の平均孔径が50〜1000Åである請求項2記載の方法。
  5. フェノール類とフルオレノン類との割合(モル比)が、前者/後者=3/1〜50/1である請求項1記載の方法。
  6. チオール類が、メルカプタンカルボン酸及び脂肪族メルカプタンアルカリ金属塩から選ばれた少なくとも一種である請求項1記載の方法。
  7. チオール類を、フルオレノン類1重量部に対して、0.0001〜0.5重量部の割合で使用する請求項1記載の方法。
  8. 固体酸を充填した流通式反応器に、式(1)で表されるフルオレノン類、式(2)で表されるフェノール類及びチオール類を流通させて、式(3)で表されるフルオレン誘導体を連続的に生成させる請求項1記載の方法。
  9. チオール類を、固体酸1重量部に対して、1時間当たり、0.0001〜0.1重量部の割合で流通させる請求項8記載の方法。
  10. フルオレノン類を、固体酸1重量部に対して、1時間当たり、0.01〜10重量部の割合で流通させる請求項8記載の方法。
  11. 請求項1〜10のいずれかに記載の方法で得られた反応液を濃縮し、得られた濃縮液を冷却することにより、フルオレン誘導体を単離する方法。
  12. 単離したフルオレン誘導体を、さらに洗浄する洗浄工程を含む請求項11記載の方法。
  13. 洗浄工程が、少なくともリパルプによる洗浄を含む請求項12記載の方法。
  14. 洗浄回数が2〜10回である請求項12記載の方法。
  15. 洗浄工程における洗浄溶媒の総使用量が、フルオレン誘導体100重量部に対して、5〜1000重量部である請求項12記載の方法。
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