JP2006163215A - ペリクル膜の製造方法 - Google Patents

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仁美 松崎
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Abstract

【課題】
製膜基板の表面欠陥が大きくても、光学的に均質で膜表面に傷等を有しないペリクル膜を製造する方法を提供することを目的とする。
【解決手段】
製膜基板上に下地層として、厚みが1.2μmより大きい下地層を予め形成させ、該下地層表面上にペリクル膜を形成させ、該形成されたペリクル膜を下地層表面から剥離して独立ペリクル膜を製造する。
【選択図】図1

Description

本発明は、ペリクル膜の製造方法に関し、詳細には、光学的に均質で膜表面に傷等を有しないペリクル膜の製造方法に関する。
フォトリソグラフィ工程では、ガラス板表面に回路パターンを形成したフォトマスクやレチクルを使用し、レジストを塗布した基板上にその回路パターンを露光することにより転写する作業が行われる。この工程では、フォトマスク上の回路パターンに塵埃等の異物が付着した状態で露光が行われると、基板上にも上記異物が転写されて不良製品のウェハとなってしまうのでフォトマスク上にペリクルを装着して、ペリクルを通して露光が行われている。
しかしながら、保護、防塵のためにはペリクル膜は平滑性に優れた薄い膜を製造する必要がある。薄い膜を形成するには通常製膜基板上にポリマー溶液を滴下し遠心力で製膜するスピンコート法が用いられるが、この方法では基板の表面の性状がそのまま膜に反映するため、表面欠陥を1μm以下としなければならないと言われている。そのため、表面を研磨した石英ガラスなどを使用するのが一般的であるが、特に大きな面積のものは基板の製造が極めて困難であり高価なものとなっている。一方、基板からペリクル膜を容易に剥がすため、下地層を作ることも知られており、平滑性の良い膜とするため、下地層膜厚は0.5μmより薄いものが推奨されている。(特許文献1 特開平08−85728号公報)。
特開平08−85728号公報
本発明の目的は、基板の表面欠陥が大きくても平滑性に優れたペリクル膜が製造できる方法を提供することにある。
本発明者らは、高度に研磨した基板を使わなくてもペリクル膜が製造できる方法について鋭意検討し本発明を完成した。即ち、本発明は、1.2μmより厚い下地層を設けてなる製膜用基板にペリクル膜を形成し、下地層から剥離することで独立ペリクル膜を得ることを特徴とするペリクル膜の製造方法である。
本発明の方法を適用することにより表面の欠陥が極めてすくない基板を使わなくても実用に耐えるペリクル膜を製造することができ、特に1辺が1000mmを超えるような大型のペリクル用の膜も安価な基板で製造できることから工業的に極めて価値がある。
以下、本発明を更に詳細に説明する。
本発明において用いて重要なのは、ペリクル膜を製造するに際し、1.2μm以上の厚い下地層を形成することである。この下地層の材料としては、ペリクル膜に用いる材料と接着せず、しかもペリクル膜を製造するに際して用いる溶媒に溶解しないことが好ましい。波長の短い光を使う場合には、ペリクル膜としてフッ素原子を含む樹脂が使用されることから、以下に示すような、特にフッ素系の溶剤に溶解しないものが好ましく利用される。
使用する樹脂としては、上記理由からフッ素原子を含まない樹脂が用いられるが、好適には、ペリクル等の薄膜形成用に用いられる含フッ素樹脂に対して、その表面張力が0.025N/m以上、好ましくは0.03N/m以上、特に好ましくは0.035N/m以上の範囲にあるものが用いられる。この様な樹脂として具体的には、エチルセルロース、プロピルセルロース、ブチルセルロース等のアルキルセルロース類(セルロースエーテル類)、ニトロセルロース、酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース及び酪酸酢酸セルロース等のセルロースエステル類、ポリスチレン、ポリビニルナフタレン等の芳香族ビニル樹脂類、更に、ポリ酢酸ビニル、ポリ−4−メチルペンテン−1、ポリスルホン等を挙げることが出来る。
本発明の下地層用樹脂は薄膜を形成するのに十分な平均分子量を有するものであることが必要で、該平均分子量は使用する樹脂の種類により若干相違するが、例えば、アルキルセルロース類の場合、通常2万乃至20万程度、ポリスチレンの場合、通常5万乃至25万程度、ポリスルホンでは2万乃至15万程度のものを使用するのが一般的である。
下地層の厚さとしては、表面欠陥の高さに対して1倍以上、特に2倍以上とするのが好ましい。ここで表面欠陥の高さとは、製膜基板に付着した異物、または製膜基板表面のキズ等に起因する、基板と垂直方向の比較的急峻な高さ変動(アスペクト比:1/10以上)をいう。
[基板]
本発明に於いて用いられる製膜用の基板としては、シリコンウエハーやホウケイ酸ガラス板、石英ガラス板、ソーダガラス板などを用いることが出来る。これらの基板は、従来のペリクル膜用基板のように、非常に精密な表面研磨或いは非常に厳しい異物管理等を行った、表面欠陥の小さい基板で有る必要はなく、窓ガラス等に使用されるような例えばフロート法やフージョン法等で作製された、表面研磨を行わない、表面欠陥の比較的大きい普通のガラス板を用いることができる。
[下地層の製法]
本発明において、該下地層を形成させるには、まず前記した樹脂をよく溶解し、しかも適度な蒸気圧を有する溶媒に溶解してポリマー溶液を作る。例えば樹脂がアルキルセルロース類の場合はトルエンやキシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、又はプロピルアセテート、ブチルアセテート等のエステル系溶媒が利用できるがこのようなポリマーと溶媒の関係は公知であり公知の条件から選択すればよい。ここでポリマー溶液の濃度としては通常のスピンコートで持いられる条件に比較して溶液の濃度を高くして厚い下地層を形成しやすい条件とするのが好ましい。具体的には6重量%乃至20重量%程度、より好ましくは7重量%乃至15重量%程度の濃度が良い。好ましい範囲は溶液の粘度、溶媒の蒸気圧なども考慮して設定するのが好ましい。薄いポリマー溶液で無理やり厚い下地層を作ろうとすると膜面外観不良が非常に出やすくなり、また、流動性が低下しすぎるほど濃い溶液を使うのと所望の厚さに制御するのが困難になる。溶媒、濃度、製膜時の温度などで粘度をコントロールすればよく、好ましい粘度の範囲としては、10cP[センチポイズ]〜5000cP、より好ましくは、100cP〜3000cP程度である。
又、基板に下地層ポリマー薄膜を形成させる方法は特に制限はなく、表面が平滑で且つ清浄な薄膜を形成しうる方法であればいかなる方法でも差し支えないが、薄膜形成に際して膜厚制御性に優れたスピンコーティング法が好適である。
この様な方法で基板上に塗布されたポリマー溶液は、ホットプレートやクリーンオーブンなどで溶媒を蒸発させ、下地層ポリマー薄膜とされる。下地層ポリマー薄膜の膜厚は、前述してきたとおり用いる基板の表面欠陥サイズの2倍以上に設計するのが好ましい。市販されているフロート法で作製された通常のソーダガラス基板の場合、純水ブラシ洗浄後の表面欠陥サイズは概ね2,3μmであるので、下地層ポリマーの厚みは5μm以上、より好ましくは7μm以上であるが、欠陥が比較的小さいガラス板を使用する場合には1.2μmより厚い下地層、特に、3μmより厚い下地層で十分な効果が得られる。
なお、本下地層に離型剤を添加してペリクル膜との剥離性を向上させても良いことは言うまでも無い。
[ペリクル膜の製造方法]
ペリクル膜は、例えば(特許文献1)に記載されているような公知方法により製造することができる。
[ペリクル膜の剥離方法]
本発明に於いては、上記の様にして形成したペリクル膜を、下地層表面から直接剥離することが好ましい。具体的には、例えば、図1に示したようにフレキシブルで且つ平坦な剥離枠4を、両面粘着テープやホットメルト粘着剤などを用いてペリクル膜3の表面周縁部に取り付け、次いで、ペリクル膜を該剥離枠4と共に、製膜基板1上の下地層2表面から剥離する。
この際、剥離性を向上させるため基板ごと水中に浸漬して剥離しても良い。
(実施例1)
アルドリッチ製プロピオン酸セルロースの9.6wt%酢酸ブチル溶液を調製し、これをポリエチレン製のカートリッジフィルター(ポアサイズ0.8μm)で濾過して異物を除去した。この溶液を3μmの表面欠陥があるソーダガラス基板上に150rpmの回転数で60秒間スピンコートした後、120℃のクリーンオーブン中で5分間乾燥させ下地層を形成させた。なお、この下地層の厚みは8.4μm(表面欠陥サイズの2.8倍)であった。
このプロピオン酸セルロース下地層付のソーダガラス基板を室温まで放冷したあとこの上にポリテトラフルオロエチレン製のカトリッジフィルター(ポアサイズ0.5μm)で十分濾過を行って異物を除去した旭硝子製フッ素樹脂「CYTOP」の9重量%溶液(トーケムプロダクツ社製EF−L174S溶媒)を600rpmの回転数で60秒間スピンコートした。これを150℃のクリーンオーブン中で20分間乾燥させたあと、室温まで放冷した。
次にこの薄膜上に両面粘着テープを用いてプラスチック製の剥離枠を貼り付けこの剥離枠を一端より持ち上げることによりペリクル膜を得た。
赤外分光分析を行った結果、得られたペリクル膜はフッ素樹脂「CYTOP」の単層薄膜であることが確認された。このペリクル膜は膜厚が4μmであり延びやキス゛が無く、光学的にも均質な透明薄膜であった。
(比較例1)
下地に用いるプロピオン酸セルロース酢酸ブチルラッカーには実施例1と同じ溶液を使用し、この溶液を3μmの表面欠陥があるソーダガラス基板上に1000rpmの回転数で60秒間スピンコートした後、120℃のクリーンオーブン中で5分間乾燥させ下地層を形成させた。なお、この下地層の厚みは1.0μm(表面欠陥サイズの0.33倍)であった。この上に実施例1と同様の方法でペリクル膜の製膜・剥離を行った。
得られたペリクル膜にはソーダガラス基板の表面欠陥に由来するキズ゛や汚れ等が観察された。
(比較例2)
濃度を4.0wt%とした以外は実施例1と全く同じようにして、下地に用いるプロピオン酸セルロース酢酸ブチルラッカーを調製した。この溶液を3μmの表面欠陥があるソーダガラス基板上に1500rpmの回転数で60秒間スピンコートした後、120℃のクリーンオーブン中で5分間乾燥させ下地層を形成させた。なお、この下地層の厚みは0.4μm(表面欠陥サイズの0.13倍)であった。この上に実施例1と同様の方法でペリクル膜の製膜・剥離を行った。
得られたペリクル膜にはソーダガラス基板の表面欠陥に由来するキズ゛や汚れ等がハッキリと観察された。
ペリクル膜を製膜用基板から剥離する際の一例を示す概念図である。
符号の説明
1・・・製膜基板
2・・・下地層
3・・・ペリクル膜
4・・・剥離枠

Claims (6)

  1. 1.2μmより厚い下地層を設けてなる製膜用基板にペリクル膜を形成し、前記形成されたペリクル膜を下地層表面から剥離して独立ペリクル膜を製造することを特徴とするペリクル膜の製造方法。
  2. 前記下地層及び前記ペリクル膜をスピンコートで生成する請求項1に記載のペリクル膜の製造方法。
  3. 前記下地層がアルキルセルロース類又はセルロースエステル類より成る樹脂膜である請求項1記載のペリクル膜の製造方法。
  4. 前記下地層がポリ酢酸ビニル又は芳香族系ビニル樹脂より成る樹脂膜である請求項1記載のペリクル膜の製造方法。
  5. 前記下地層がポリ−4−メチル−ペンテン−1又はポリスルホンより成る樹脂膜である請求項1記載のペリクル膜の製造方法。
  6. 前記ペリクル膜がフッ素樹脂である請求項1に記載のペリクル膜の製造方法。
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