JP2006159023A - 土壌浄化方法 - Google Patents

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力 稲葉
Kozo Sato
幸三 佐藤
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Abstract

【課題】 1工程で、pHをほぼ中性に保持しつつ揮発性有機塩素化合物(VOC)を分解し、重金属を吸着および不溶化し、原地盤の地耐力低下を防止することを可能にする土壌浄化方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 本発明の土壌浄化方法は、先端部に切削部材1と少なくとも1つの注入管とを備える掘削部材を回転可能に、かつ昇降可能に支持する支持手段5により回転および降下させて土壌を掘削するステップと、掘削部材を回転させつつ、少なくとも1つの注入管から該掘削部材周囲の土壌に向けて、水に、鉄粉またはマグネタイト(Fe)を含む酸化鉄粉と、焼き石膏と、三酸化二鉄と硫酸カルシウムとを含む吸着不溶化剤とを分散させたスラリーを噴射させるステップとを含む。
【選択図】 図1

Description

本発明は、土壌浄化方法に関し、より詳細には、有害な揮発性有機塩素化合物(VOC)および重金属を含む汚染土壌を浄化するともに、原地盤の地耐力の低下を防止し、建設機械のトラフィカビリティを確保することを可能にする土壌浄化方法に関する。
トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、ペルクロロエチレン、ジクロロメタンといった有害な揮発性有機塩素化合物(VOC)を含む汚染土壌を浄化する方法として、汚染土壌に金属触媒を添加し、金属触媒による還元分解反応により、低分子量のエチレンガスやアセチレンガスへと分解し、最終的には炭酸ガスへと分解する方法が採用されている。この金属触媒としては、鉄粉、コロイド鉄粉、酸化鉄粉などが使用される。一般的には、安価な鉄粉が使用されるが、鉄の触媒機能と酸化力が保持されるコロイド鉄粉や、分解特性を向上させるため、酸化鉄粉、電解鉄粉、反応活性にするために比表面積を向上させた鉄粉などを使用することができる。
これら金属触媒を使用して効率的に土壌浄化を行う方法として、原位置において土壌を掘削し、鉄粉を供給し、土壌と鉄粉とを撹拌混合する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この方法は、例えば、ループビットといった撹拌部材を使用して、所定深さまで掘削した後、その撹拌部材に設けられる注入管から鉄粉を噴射させ、かつ撹拌部材に周設される羽根によって土壌と鉄粉とを強制的に撹拌混合することにより均一に分散させるものである。均一に分散した鉄粉は、土壌中に含まれるVOCとの効果的な接触を可能にし、これにより、VOCを効果的に分解することができる。鉄粉は、水に分散させたスラリーとして、あるいは、圧縮空気中に分散させて供給することができる。この方法では、掘削土をスムーズに流動させる潤滑材的効果を与えて掘削を容易にさせるべく、掘削時、圧縮空気または水が供給される。この圧縮空気または水は、掘削中の地盤への衝撃を低減させ、撹拌部材の先端に設けられる切削部材の掘削時の発熱を抑制する効果も有する。また、圧縮空気は、撹拌部材に揺動撹拌効果を与えて掘削をさらに容易にさせることができる。この方法は、原位置において排土を出すことなく施工することができ、短期間で、所定範囲の汚染土壌を浄化することができる利点を有している。
しかしながら、上記方法は、汚染土壌に含まれるVOCを分解、除去することができるものの、掘削時における水または圧縮空気の供給、鉄粉供給時における水または圧縮空気の供給、さらには土壌の撹拌によって地盤の地耐力が低下するという問題がある。施工後に、所定強度の地盤が要求される場合、上記方法では達成することができない。そこで、鉄粉とともに固化材を同時に供給して、土壌浄化とともに所定強度の地盤を得る方法が提案されている(例えば、特許文献2および特許文献3参照)。
これらの方法では、鉄粉とともに低アルカリ性セメントや焼き石膏といった固化材をスラリーで汚染土壌に供給し、汚染土壌とそのスラリーとを撹拌混合することにより、汚染土壌中に、鉄粉および固化材を均一に分散させ、鉄粉の還元分解反応によりVOCを分解、除去し、固化材により固化して所定強度の地盤を得ることができる。また、これらの方法では、鉄粉と固化材とを同時に供給するため、少ない工程で、土壌浄化および地盤改良を行うことができる。
しかしながら、低アルカリ性セメントを固化材として用いる場合、低アルカリといってもアルカリ性であるため、このアルカリによって鉄粉とVOCとの反応を阻害し、特に、固化材を多量に添加しなければならない含水比が高い汚染土壌においては充分に分解することができないといった問題があった。
これに対し、焼き石膏を固化材として用いる場合、中性であるため、上記反応阻害は生じず、含水比が高い汚染土壌においても多量に添加することができるため、所定強度の地盤を得ることができる。また、焼き石膏を用いるこの方法では、焼き石膏の添加量の1〜10倍といった多量の水に、焼き石膏と鉄粉とを分散させて供給するため、焼き石膏による固化速度を遅延させることができる。この遅延により、上記低アルカリ性セメントを用いる場合に比較して、鉄粉とVOCとの反応を充分に行うことができ、VOCで汚染された土壌を充分に浄化することができる。これに加え、土壌にスラリー中の水が浸透することによって含水比が低下し、この含水比の低下によって固化し、所定強度の地盤を得ることができる。
工場などから排出される汚水やセメントなどには、水銀、ヒ素、セレン、カドミウム、鉛、クロムといった重金属が含まれている。これらの重金属が土壌中に流出または溶出すると、土壌中に蓄積し、土壌を汚染する。これら重金属は、人体に大きな影響を及ぼすため、これら重金属を除去するための方法が数多く提案されている。一般に、これらの重金属を除去する方法としては、酸化鉄などの吸着剤を土壌中に散布し、この吸着剤に吸着させ、その後、固化材を散布して、吸着剤ごと固化し、不溶化する方法が提案されている(例えば、特許文献3および特許文献4参照)。これらの方法は、吸着剤に吸着させるための時間が必要であるため、吸着剤を散布し、一定期間経過後、固化材を散布して吸着剤を固化するものである。吸着剤としては、酸化鉄などが使用され、この酸化鉄は、重金属を吸着するほか、土壌中の水も吸着する。これにより、土壌の含水比を低下させ、その後の固化材のドライ混合によって急速な固化を実現することができる。この含水比の低下によって土壌中を浸透する水が減少するため、一度吸着した重金属の溶出を効果的に抑制し、固化材のドライ混合によって重金属の溶出を抑制しつつ、重金属を吸着した吸着剤ごと急速に固化することができる。
上記吸着剤は、重金属や水を吸着することはできるものの、高い吸着能力をもっていないため、後の固化工程において例えば、固化材を水に分散させたスラリーを供給すると、吸着した重金属がスラリーとともに溶出してしまう。したがって、その後の固化工程では固化材をドライガスである圧縮空気に分散させたガスで供給したり、直接添加する必要があった。また、水に溶出させないためには、不溶化するための薬剤として不溶化剤を使用することができる。不溶化剤としては、六価クロムやシアンを不溶化する場合には硫酸第一鉄を、鉛、水銀、カドミウムには硫酸ナトリウムを、ヒ素には塩化第二鉄や硫酸第二鉄を、金属錯体にはキレート剤を、フッ素にはマグネシウム系の固化剤を一般的に使用することができる。吸着機能により固定化するものとしては、ベントナイトや高炉スラグなどを使用することができる。なお、この不溶化剤を使用するにしても、吸着剤と同様、重金属を吸着させる必要があるため、不溶化剤を散布し、充分に吸着させた後に固化材を供給する必要があった。
上述したように、不溶化剤を使用するにしても、多量の水とともに供給したのでは、重金属の吸着を充分に行うことができず、たとえ吸着したとしても、不溶化には時間を要し、連続供給されるスラリーによって溶出してしまうため、完全に不溶化することはできない。このように、従来の技術では、VOCを分解除去するとともに、原地盤の地耐力の低下を防止することはできても、同時に重金属を吸着し、不溶化する処理を行うことはできず、また、VOCを分解除去するとともに、重金属を吸着し、不溶化する処理を行うことはできても、同時に原地盤の地耐力低下防止処理を行うことはできなかった。例えば、VOCの分解処理と、重金属を吸着し、不溶化する処理とを行うには、数ヶ月といった長い期間を必要とし、その後、固化処理をすると、さらに期間を要し、著しく長い施工期間を要するといった問題があった。したがって、これら処理を短期間で行うことができる方法が望まれている。
多量の炭酸ガスや硫化水素などの酸性ガスの放出により、酸性雨の問題が深刻化している。土壌に降り注ぐ雨には、こうした酸性雨が含まれる。また、雨は、アルカリ土にも降り注ぎ、土壌中にアルカリ水が浸透して流れる。土壌中には、こういった酸性水やアルカリ水が流れ、土壌のpHを変化させる。例えば、アルカリ水が流れ、土壌がアルカリ性になると、鉄粉等によるVOCの分解反応を阻害する。したがって、土壌浄化施工中においては、酸性水やアルカリ水が流れたとしても土壌のpHが中性領域(約6.5〜8)から変化しない、pH緩衝能を有する材料を含むことが好ましい。
特願2003−251327号公報 特願2004−261811号公報 特願2003−251321号公報 特願2003−300047号公報 木村玄、他5名、「揮発性有機塩素化合物による汚染土壌の原位置浄化方法」、地下水・土壌汚染とその防止対策に関する研究集会 第9回 講演集、2003年6月19日−20日、p.38−39
本発明は、上述の問題を解決するためになされたものであり、土壌浄化施工中に、pHが変化しないように保持しつつVOCを分解除去でき、同時に重金属を吸着および不溶化し、さらに原地盤の地耐力の低下を防止することを可能にする土壌浄化方法を提供することを目的とする。
本発明は、鉄粉またはマグネタイトを含む酸化鉄粉と焼き石膏とに加え、スラリーで供給したとしても充分な吸着力を備え、かつ不溶化することができ、pH緩衝能を有する三酸化二鉄と硫酸カルシウムとを含む吸着不溶化剤を水に分散させて供給することにより、固化速度を遅延させ、アルカリによる反応阻害を生じることなく鉄粉または酸化鉄粉によってVOCを分解することができ、同時に吸着不溶化剤によって重金属を吸着し、不溶化することができ、その後、固化して所定強度の地盤を得ることができることを見出すことによりなされたものである。なお、上記課題は、本発明の土壌浄化方法を提供することにより達成される。
すなわち、本発明の請求項1の発明によれば、揮発性有機塩素化合物(VOC)および重金属を含む汚染土壌を浄化するとともに、原地盤の地耐力の低下を防止するための土壌浄化方法であって、
先端部に切削部材と少なくとも1つの注入管とを備える掘削部材を回転可能に、かつ昇降可能に支持する支持手段により回転および降下させて土壌を掘削するステップと、
前記掘削部材を回転させつつ、前記少なくとも1つの注入管から該掘削部材周囲の前記土壌に向けて、水に、鉄粉またはマグネタイト(Fe)を含む酸化鉄粉と、焼き石膏と、三酸化二鉄と硫酸カルシウムとを含む吸着不溶化剤とを分散させたスラリーを噴射させるステップとを含む、土壌浄化方法が提供される。
本発明の請求項2の発明によれば、前記三酸化二鉄は、Fe・HOであり、前記硫酸カルシウムは、CaSO・nHO(nは2以上の整数)である土壌浄化方法が提供される。
本発明の請求項3の発明によれば、前記吸着不溶化剤は、40〜55質量%の前記Fe・HOと、45〜60質量%の前記CaSO・nHO(nは2以上の整数)とからなる土壌浄化方法が提供される。
本発明の請求項4の発明によれば、前記掘削部材は、周部に羽根を備えており、前記支持手段により該掘削部材を回転させ、前記羽根の回転により前記土壌と前記スラリーとを混合するステップをさらに含む土壌浄化方法が提供される。
本発明の請求項5の発明によれば、前記掘削部材は、先端部に切削部材と、周部に羽根と、前記羽根の縁部に向けて配設される少なくとも1つの注入管とを備える撹拌部材である土壌浄化方法が提供される。
本発明の請求項6の発明によれば、前記掘削するステップと前記噴射させるステップとが同時に実行されることを特徴とする土壌浄化方法が提供される。
本発明の請求項7の発明によれば、前記掘削するステップと前記噴射させるステップと前記混合するステップとが同時に実行されることを特徴とする土壌浄化方法が提供される。
本発明の請求項8の発明によれば、前記スラリーは、前記水と前記鉄粉との質量比が1:1〜20:1の範囲、前記焼き石膏と前記鉄粉との質量比が1:1〜10:1の範囲、前記鉄粉と前記吸着不溶化剤との質量比が100:1〜1:20の範囲となるように配合され、前記鉄粉が前記土壌1mに対し、10kg〜100kg供給されるように前記スラリーが供給されることを特徴とする土壌浄化方法が提供される。
本発明の請求項9の発明によれば、前記スラリーは、前記水と前記酸化鉄粉との質量比が2:1〜15:1の範囲、前記焼き石膏の添加量が前記酸化鉄粉の質量の2〜20倍、前記酸化鉄粉と前記吸着不溶化剤との質量比が150:1〜1:15の範囲となるように配合され、前記酸化鉄粉が前記土壌1mに対し、15kg〜150kg供給されるように前記スラリーが供給されることを特徴とする土壌浄化方法が提供される。
本発明の土壌浄化方法を提供することにより、1工程で、pHをほぼ中性に保持しつつVOCを分解除去でき、かつ重金属の吸着および不溶化処理を行うことができ、原地盤の地耐力低下を防止することもできる。したがって、施工期間を大幅に短縮することができ、短期間で、充分にVOC処理および重金属処理された、所定強度の地盤を提供することが可能となる。
本発明の土壌浄化方法は、揮発性有機塩素化合物(VOC)および重金属を含む汚染土壌を浄化するとともに、原地盤の地耐力の低下を防止するための方法である。本発明で汚染土壌の浄化は、鉄粉または酸化鉄粉の添加によってVOCを還元分解することにより、また、吸着不溶化剤の添加によって重金属を吸着および不溶化することにより行うことができ、地耐力低下の防止については、固化材の添加によって土壌を固化し、所定強度を付与することにより行うことができる。本発明では、鉄粉または酸化鉄粉と固化材と吸着不溶化剤とを同時に供給し、VOC分解除去および重金属吸着除去による土壌浄化と地耐力防止とを1工程で行うことを特徴とする。これにより、鉄粉等と固化材とを2回に分けて供給する必要がないため、再度掘削し、固化材のみを添加し、土壌と撹拌混合するといった工程を省略することができる。
固化材としては、地盤強度を向上させるのに、高い強度を発現するセメントや石灰が一般的であるが、これらはアルカリ性であり、アルカリは、鉄粉または酸化鉄粉とVOCとの反応を阻害するため、同時には使用できない。したがって、本発明では、反応阻害が生じない中性の焼き石膏を使用する。この焼き石膏は、含水比が高くなるにつれて固化速度が遅延し、また、鉄粉または酸化鉄粉とともに水に分散させてスラリーとして供給することで、さらに固化速度を遅延させることができる。この固化速度の遅延は、スラリーを土壌に供給する途中で、スラリーが固化するのを抑制して土壌中へ確実にスラリーとして供給することを可能にし、また、土壌中では、スラリーが土粒子中を浸透することを可能にする。また、吸着不溶化剤としては、スラリーで供給しても充分な吸着能力を有し、一度吸着した重金属を不溶化することができる、三酸化二鉄と硫酸カルシウムとを含む吸着不溶化剤を使用する。この吸着不溶化剤は、pHをほぼ中性に保持することができるpH緩衝能を有するため、例えば、土壌中を浸透するアルカリ水によってVOCの分解反応が阻害されることはない。本発明の方法では、鉄粉または酸化鉄粉と、焼き石膏と、三酸化二鉄と硫酸カルシウムとを含む吸着不溶化剤とを水に分散させ、含水比の高いスラリーとして供給することで、固化を遅延させ、この遅延している間にpHを保持しつつVOC処理および重金属吸着不溶化処理を行い、その後に固化処理を行うことができる。以下、本発明を詳細に説明する。
VOCで汚染された土壌には、汚染物質として、テトラクロロエチレン(TCE)、ペルクロロエチレン(PEC)、1,1−ジクロロエチレン(DCE)、トランス−1,2−DCE、シス−1,2−DCE、1,1,1−トリクロロエタン(TCEt)、1,1,2−TCEt、ジクロロメタン(DCM)などが含まれる。また、汚染土壌には、ダイオキシン類、残留農薬などの汚染物質も含まれる。これらの汚染物質は、土壌中に鉄粉または酸化鉄粉を散布することにより、還元分解し、最終的に炭酸ガス、塩素ガス、水などに分解される。本発明では、鉄粉またはマグネタイト(Fe)を含む酸化鉄粉を水に分散させたスラリーを供給することにより、スラリーが浸透して土壌中に鉄粉または酸化鉄粉が分散し、これらの還元分解反応により、これら汚染物質で汚染された土壌を浄化することができる。
本発明に使用される鉄粉は、水に分散させて供給することができる粒径であればいかなる粒径のものであってもよく、例えば、粒径が0.05μm〜150μmのものを用いることができる。本発明では、水に分散しやすい、粒径が小さいもののほうが好ましい。また、鉄粉を土壌へ供給する状態としては、鉄粉の粒と粒との間に水を含んだ、水に分散した状態で供給し、土壌に向けて噴射させることが好ましい。鉄粉を噴射させる量としては、いかなる量であってもよいが、充分な浄化作用を付与するためには、土壌1mあたり、例えば、10kg〜100kgとすることができる。鉄粉は、粒径が一定ではなく、粒度分布があるほうが、粒と粒との間に水を含みやすく、分散した状態になりやすいので好ましい。本発明においてスラリーは、圧力が高いほど、供給ライン途中において鉄粉が堆積しないので好ましく、例えば、15MPa〜20MPaとすることができる。また、本発明では、汚染土壌に対する鉄粉を混合する割合は、汚染土壌におけるVOC濃度によって異なり、適切な量を混合することができる。スラリーで供給すると土壌の含水比が高くなり、地盤強度が低下するため、スラリー中の水が少ないほど好ましいが、所定量の鉄粉を供給することができる量として決定することができる。本発明では、例えば、水と鉄粉との質量比を、1:1〜20:1とすることができる。
本発明では、鉄粉のほか、水に分散しやすく、より高い浄化作用を付与することができる酸化鉄粉を使用することができる。本発明に使用される酸化鉄粉は、マグネタイト(Fe)を約70質量%〜約90質量%含有することが好ましい。なお、その他の成分については、例えば、純鉄(Fe)や2価鉄(Fe2+)などとすることができる。2価鉄としては、2価の酸化鉄(FeO)などとすることができる。鉄粉を用いた土壌浄化では、鉄粉を汚染土壌に混合した場合、例えば、TCEは中間副生成物であるシス−1,2−DCEなどを生じ、最終的に多くがエチレンおよびアセチレンに分解されるが、この酸化鉄粉を用いた場合には、エチレンガスやアセチレンガスへの分解に止まらず、分解反応が炭酸ガスまで進行する。本発明では、この酸化鉄粉を用いることにより、浄化処理工程においてエチレンやアセチレンといった副生成物を生じないため、それらの副生成物を処理するための他の工程や装置を必要とせず、処理期間を大幅に短縮することができるので、この酸化鉄粉を使用することが好ましい。
本発明に使用される上記酸化鉄粉は、比重が4〜5であり、平均粒子径が0.05μm〜0.2μmのものを用いることができる。このように、比重7.8の鉄粉に比べて比重が小さく、かつ微細な粒子径のものを用いることで、水に容易に分散し、安定なスラリーを形成することができる。供給圧力は、水に分散した状態で供給することができるのであればいかなる圧力であってもよい。また、この酸化鉄粉は、鉄粉とは異なり、二次的に発生する赤錆による赤水を生じることがないといった利点も有する。したがって、本発明では、上記酸化鉄粉を用いることにより、浄化に必要とされる所定量の酸化鉄粉を、より少ない水量かつ低圧で供給することができる。
本発明では、汚染土壌に対する上記酸化鉄粉を混合する割合は、汚染土壌におけるVOC濃度によっても異なるが、土壌1mに対し、15kg〜150kgとすることができる。また、水:酸化鉄粉の質量比は、2:1〜15:1とすることができる。なお、酸化鉄粉は多いほど汚染物質をより多く分解することができるが、鉄粉に比べて高価であり、酸化鉄粉の増加によって水および焼き石膏の添加量も増加し、施工コストがかかるため、上記値とすることが好ましい。
上記酸化鉄粉のVOC還元分解能力であるが、30質量%の水分を含むpH7.5の、PCEの初期濃度が約6000ppmの土壌に、5質量%となるようにこの酸化鉄粉を混合した場合には、4ヶ月後には20〜30ppmまでPCEを分解することができ、初期濃度が約300ppmの土壌では、1ヶ月後に約0.01ppmまで分解することができ、初期濃度が約20ppmの土壌では、2週間後に約0.001ppmまで分解することができる。なお、鉄粉を同量混合し、上記各濃度まで分解するためには、10倍以上の期間が必要である。
本発明では、地耐力を原地盤の地盤強度以下に低下させないようにするため、固化材として中性の焼き石膏が添加される。この焼き石膏は、セメントや石灰、高炉スラグに比べて強度を発現せず、高価であるものの、地耐力の低下を防止し、また、向上させることができる強度を発現し、鉄粉または酸化鉄粉とVOCとの反応を阻害しないため、本発明において使用される。
本発明で使用される焼き石膏は、セメントなどのように水和反応により強度を発現するものではないため、土壌に混合してすぐに強度を発現し、含水比の高い地盤に対しても適用することができる。例えば、混合して3日経過後では、約0.5MN/mの地盤強度を得ることができる。このようにすぐに強度を発現する場合、土壌に供給した後、充分に浸透させることができず、充分に撹拌混合を行うこともできない。しかしながら、本発明では、多量の水に鉄粉または酸化鉄粉とともに焼き石膏を分散させることで、固化を遅延させることができるため、土壌中に浸透させることができる。また、この水の浸透によって含水比が低下し、この含水比の低下によって土壌を固化させることができる。したがって、所定範囲の土壌にほぼ均一に焼き石膏が分散し、その所定範囲の土壌において所定強度を得ることができる。なお、鉄粉または酸化鉄粉によるVOCの還元分解反応は、固化が遅延している間に行われる。
本発明に使用される焼き石膏は、硫酸カルシウムの二水和物(CaSO・2HO)を低温加熱処理することにより得ることができる。例えば、硫酸法により酸化チタンを製造する際に発生する廃硫酸を、炭酸カルシウムを用いてpHを5とし、pHを5とすることにより生成する生成物を非酸化性雰囲気下、150℃で1時間加熱焼成することにより得ることができる。また、本発明において焼き石膏と鉄粉との質量比は、スラリー中の水量や土壌中の水分量によって決定することができ、例えば、0.01:1〜200:1とすることができる。本発明では、VOCを分解させるのに必要とされる土壌1mあたり10kg〜100kgという鉄粉量、水と鉄粉との質量比1:1〜20:1から得られる水量を考慮し、所定の強度を得るとともに安価で実施するために、焼き石膏と鉄粉との質量比は1:1〜10:1とすることが好ましい。例えば、スラリー中の焼き石膏の量が多い場合、強度を高めることができるが、供給するスラリー粘度が上昇し、これにより、スラリー供給手段の能力を増強する必要が生じ、多くの電力も消費することとなり、また、すぐに固化してしまう。一方、焼き石膏の量が少ない場合、強度が不充分なものとなり、さらに少ない場合には固化しない。したがって、強度、設備コスト、固化の点から、上述した範囲の添加量が好ましい。
上記酸化鉄粉を使用する場合の焼き石膏の添加量は、酸化鉄粉の質量と同じか、それ以上であることが好ましく、2〜20倍であることがより好ましい。また、焼き石膏の添加量は、酸化鉄粉およびこの焼き石膏とともに供給される水量、土壌に含まれる水量により決定することができる。本発明で使用される焼き石膏は、水に分散する粉末状のものが好ましい。
本発明では、上記鉄粉または酸化鉄粉と上記焼き石膏とを水に分散させたスラリーに、重金属を吸着し、不溶化する吸着不溶化剤を添加して供給される。この吸着不溶化剤は、三酸化二鉄と硫酸カルシウムとを主成分として含む。高い吸着能力を付与するためには、比表面積が大きい粉末であることが好ましい。比表面積が大きい形状であればいかなる形状であってもよいが、例えば、針状結晶を有するものを用いることができる。三酸化二鉄は、三酸化二鉄の一水和物(Fe・HO)が好ましく、硫酸カルシウムも、硫酸カルシウムの多水和物(CaSO・nHOで、nは2以上の整数である。)が好ましい。本発明では、40〜55質量%のFe・HOと、45〜60質量%のCaSO・nHOとからなるものが好ましい。これは、互いに水和反応物質で、凝結し、三酸化二鉄水和物の結晶同士、硫酸カルシウム水和物の結晶同士、三酸化二鉄水和物の結晶と硫酸カルシウム水和物の結晶が互いに絡み合った構造になり、その絡み合った結晶間に重金属を閉じ込め、溶出しないように固定するためである。本発明に使用される吸着不溶化剤は、例えば、硫酸法により酸化チタンを製造する際の酸処理水の中和過程において生成するスラッジを乾燥後、所定粒子径に粉砕することにより得ることができる。このスラッジは、三酸化二鉄を多量に含み、一般に、多くが利用されずに廃棄されているものである。
ここで、三酸化二鉄一水和物および硫酸カルシウム多水和物からなる吸着不溶化剤の吸着能力について、溶出試験およびその結果について以下に説明する。吸着能力については、例えば、溶液1リットル中に10mgの各種重金属と1gの各種吸着不溶化剤とを入れ、各種吸着不溶化剤1gに対して各種重金属が吸着する量で吸着能力を試験した。各種吸着不溶化剤として、本発明に使用される三酸化二鉄一水和物と硫酸カルシウム多水和物とからなる吸着不溶化剤、セメント、ベントナイト、活性アルミナ、酸化鉄、水酸化鉄を使用した。重金属としては、ヒ素、セレン、カドミウム、鉛、水銀、リンについて試験した。なお、三酸化二鉄一水和物と硫酸カルシウム多水和物の質量比は、約55:45のものを使用した。セメント、ベントナイト、活性アルミナ、酸化鉄、水酸化鉄といった各種吸着不溶化剤は、一般に、特定の重金属に対して吸着する能力を有し、したがって、これらすべての重金属を吸着するには2種類あるいは3種類といったように組み合わせて使用される。
ヒ素に関して、上記吸着不溶化剤は、セメントの約100倍、ベントナイトの約20倍、活性アルミナの約3倍、酸化鉄の約1.5倍の量のヒ素を吸着した。セレンに関して、上記吸着不溶化剤は、ベントナイトの約30倍、セメントの約5倍の量のセレンを吸着した。カドミウムに関して、上記吸着不溶化剤は、セメントの約1/10で、セメントに対しては劣るものの、ベントナイトの約10倍の量のカドミウムを吸着した。鉛に関して、上記吸着不溶化剤は、ベントナイトと同等、酸化鉄の約20倍、活性アルミナの約100倍の量の鉛を吸着した。水銀に関して、上記吸着不溶化剤は、ベントナイトの約5倍、セメントの約10倍の量の水銀を吸着した。リンに関して、上記吸着不溶化剤は、水酸化鉄の約5倍の量のリンを吸着した。この結果から、本発明に使用される吸着不溶化剤は、各種重金属のいずれも充分に吸着することができる能力を有することが見出された。ちなみに、本発明に使用される吸着不溶化剤1gが吸着する各種重金属の量は、ヒ素が約5〜10mgで、セレンが約10〜20mgで、カドミウムが約2〜5mgで、鉛が約10〜20mgで、水銀が約10〜20mgで、リンが約10〜20mgである。
次に、ヒ素、セレン、カドミウム、鉛、六価クロム、水銀、リンをそれぞれ20ppm含む土壌を用い、その土壌の質量の1/7〜1/10の上記吸着不溶化剤を添加し、混合し、平成3年環境庁告示第46号付表に従い、純水に塩酸を加え、5.8〜6.3のpHとした検液で溶出試験を行った。この溶出試験の結果、平成3年環境庁告示第46号別表における環境基準、すなわち、ヒ素、セレン、カドミウム、鉛に対しては0.01ppm以下、六価クロムに対しては0.05ppm以下、水銀に対しては0.0005ppmとなり、満足する結果が得られた。
また、pHが4.0で、年間2000ミリの酸性雨が100年降雨し、その100年分の酸を含有する酸性水、その酸の5倍のアルカリを含有するアルカリ水を使用し、上記と同様の溶出試験を行った場合でも、ヒ素、セレン、カドミウム、鉛、水銀に関して上記環境基準を満足する結果が得られた。なお、この吸着不溶化剤100gを1リットルの水に添加し、それに硫酸または消石灰を添加していき、pH緩衝能について観察してみると、約500年分を超える酸、それと同等のアルカリを添加することで、ようやくpHが低下または上昇し、それまではほとんどpHが変化しない結果が得られた。このことから、この吸着不溶化剤を含む溶液は緩衝液となるため、例えば、酸性雨が降ったり、石灰などのアルカリを含有する水が土壌中を浸透したとしても、pHが中性領域(約6.5〜8)から変化することはなく、鉄粉または酸化鉄粉によるVOC分解反応を阻害することはないことが見出された。
上述したように、本発明に使用される吸着不溶化剤は、高い吸着能力を有し、かつ吸着した重金属を容易に溶出しない。したがって、スラリーに含有させ、供給したとしても、充分に吸着し、不溶化することができる。また、本発明に使用される吸着不溶化剤は、特定の重金属に限定されず、各種重金属に対して充分な吸着能力を有し、かつ吸着した各種重金属を容易に溶出しない能力を有し、スラリー以外に酸性水やアルカリ水が浸透したとしても土壌をほぼ中性に保持するpH緩衝能を有する。本発明に使用される吸着不溶化剤を、三酸化二鉄水和物と硫酸カルシウム水和物とからなるものとして説明してきたが、本発明では主成分が三酸化二鉄水和物と硫酸カルシウム水和物であればよく、その他、酸化チタン、二酸化珪素、酸化アルミニウムを微量に含有していてもよい。なお、主成分である三酸化二鉄水和物および硫酸カルシウム水和物は、少なくとも80質量%含有することが好ましい。
吸着不溶化剤は、土壌1mに対し、例えば1〜200kg添加することができる。本発明においては、鉄粉と吸着不溶化剤との質量比を100:1〜1:20、酸化鉄粉と吸着不溶化剤との質量比を150:1〜1:15とすることができる。この吸着不溶化剤は、必要に応じてそれ以上の量を添加することもできる。主に、三酸化二鉄水和物が、ヒ素、セレン、カドミウム、鉛、水銀、アンチモン(Sb)といった重金属を吸着し、不溶化する。もう1つの主成分となる硫酸カルシウム水和物が、フッ素、リンなどと化学反応し、沈殿を生成する。このように、三酸化二鉄水和物が、ヒ素等の重金属を主として吸着するため、この三酸化二鉄水和物の比表面積が大きいほうが好ましく、この比表面積としては、200〜250m/gのものを使用することができる。
以下、本発明の土壌浄化方法を実現するために使用される装置について説明する。図1は、本発明の土壌浄化方法に使用される装置の概略を示した図である。図1に示す装置は、先端部に切削部材1と軸体2の周部に螺旋状羽根3とスラリーを噴射させるための注入管とを備える撹拌部材4と、撹拌部材4を回転可能に支持し、かつ撹拌部材4を昇降可能にし、撹拌部材4の注入管などに接続されるラインを備える支持手段5と、スラリーが収容される容器6と、容器6に接続され、スラリーを供給する供給手段7と、供給手段7と支持手段5の上記ラインとを接続するライン8と、図示しない圧縮空気を供給するラインおよび圧縮空気供給手段とを含む構成とされている。なお、図1に示す実施の形態では、土壌を掘削し、スラリーを噴射させ、さらには土壌とスラリーとを撹拌、混合することを可能にする撹拌部材4が掘削部材として使用されている。
図1に示す撹拌部材4は、掘削方向に向いた先端部に、土壌を掘削するための切削部材1と、掘削方向に向いた先端部から圧縮空気を噴射させることを可能にする軸体2と、掘削をスムーズに行うことを可能にし、かつ土壌を撹拌することを可能にする軸体2に周設された螺旋状羽根3と、軸体2の内部から外部へ貫通するように、螺旋状羽根3の縁部に向けて配設される図示しない少なくとも1つの注入管とを含んで構成されている。撹拌部材4は、ロッド9に連結されていて、ロッド9の回転および昇降により、土壌を掘削し、土壌を撹拌することができる。掘削土をスムーズに流動させる潤滑材的効果を与えて掘削を容易にさせるために、軸体2を通して圧縮空気を噴射することができるようになっている。また、この圧縮空気の噴射により、掘削中の地盤への衝撃を低減させ、撹拌部材4に揺動撹拌効果を与えて掘削をさらに容易にし、切削部材1の掘削時の発熱を抑制することができる。この圧縮空気は、図示しない圧縮空気供給手段から圧縮空気供給ラインを通して供給される。また、スラリーを噴射させ、土壌中に行き渡らせて土壌の浄化を行うために、螺旋状羽根3による土壌の撹拌とともに、注入管から土壌に向けてスラリーを噴射させることができるようになっている。撹拌部材4は、掘削時である降下時と、撹拌時である昇降時とにおいて、回転する方向を変更して排土を出さないようにすることができる。なお、撹拌部材4の詳細については、図2を参照して以下に説明する。
図1に示す支持手段5は、走行部10と、ロッド9と、挟持部11と、ロッド9を支持し、ロッド9の角度を変更可能にする図示しないアームと、ロッド9を昇降可能にする図示しない昇降手段とを含んで構成されている。走行部10は、浄化する土壌位置に移動し、また、位置を変更することを可能にするものである。ロッド9は、地面に向いた下端部に配設された撹拌部材4の回転および昇降を可能にするものである。挟持部11は、ロッド9を移動可能に、かつ回転可能に挟持するものである。また、挟持部11は、油圧駆動などによりロッド9を正逆両方向に回転させることができるものである。
図1に示すロッド9は、スラリーを供給するライン8と圧縮空気を供給するラインとをそれぞれ接続するとともに、撹拌部材4の軸体2と注入管とを接続するラインを備えている。ロッド9の内部に設けられるラインは、上記2本のラインに対応して2本のラインを備えている。ロッド9は、土壌の深さに応じて別のロッドを連結することができるようになっている。
図1に示す容器6は、水と、鉄粉または酸化鉄粉と、焼き石膏と、三酸化二鉄と硫酸カルシウムとを含む吸着不溶化剤とを収容し、鉄粉または酸化鉄粉と焼き石膏と吸着不溶化剤とを分散させるために設けられる。容器6の内部には、図示しない撹拌翼が設けられており、常時撹拌することにより堆積することなく分散した状態を保持することができる。容器6内のスラリーは、下部から排出され、供給手段7により所定量のスラリーが供給される。
本発明において容器6は、いかなる容量のものであってもよく、いかなる形状であってもよい。また、容器6は、例えば、ステンレス鋼などの鋼製のホッパーを用いることができる。なお、内部を加圧する場合、上部に蓋を設けることができる。供給手段7としては、鉄粉または酸化鉄粉と焼き石膏と吸着不溶化剤とを分散させた状態で供給することができるのであれば、いかなるポンプでも使用することができる。
図2は、本発明に用いることができる装置に使用される撹拌部材を例示した図である。図2(a)に撹拌部材4の斜視図を、図2(b)に断面図を示す。図2に示す撹拌部材4は、先端部に切削部材1を備えた先導管20と、長さ方向に沿った中央部の径が大きくされ、両端部の径が小さくされた中空の軸体2と、軸体2の外側面に周設された螺旋状羽根3と、螺旋状羽根3の上面および下面に設けられた複数の突出部材21と、軸体2の長さ方向の径が大きくされた中央部において軸体2を貫通し、螺旋状羽根3の縁部に向けて配設される2本の注入管22、23とから構成されている。なお、本発明では、1本の注入管であってもよいし、3本以上であってもよい。
図2に示す先導管20は、軸体2にフランジ24といった連結部材を使用して連結されていて、先端部に切削部材1が設けられている。また、フランジ24にも、切削部材1の向きと同じ方向に向くように切削部材1aが設けられている。図2に示す切削部材1、1aは、鋭く尖った先端部を備えていて、硬い土壌や石なども切削することができるようになっていて、先導管20の先端部およびフランジ24に溶接などにより接合して設けることができる。図2に示す先導管20は、いかなる径、長さの管であっても良いが、軸体2の両端部の径と同じ径にすることができる。また、切削部材1、1aの形状および構造および材質は、適切に土壌を掘削することができるものであればいかなるものであっても良い。また、切削部材1、1aは、先導管20の先端部およびフランジ24に、いかなる数設けられていても良い。
図2に示す軸体2は、中央部の径が大きくされ、その中央部の所定の長さにおいて一定の径とされていて、両端部に向けて一定の割合で径が小さくなるような形状とされている。また、中空とされていて、内部にスラリーを供給し、噴射させるための注入管22、23の一部が挿設されている。この注入管22、23を除いた空間には、圧縮空気が流されるようになっており、掘削中の地盤への衝撃を低減させ、撹拌部材4に揺動撹拌効果を与えて掘削を容易にするとともに、切削部材1の発熱を抑制することを可能にしている。本発明において軸体2は、例えば、全体の長さを0.8m、中央部の長さ0.16mにおいて0.4mの一定の径とし、長さ方向の両端部0.32mの範囲において0.14mから0.4mの径に一定の割合で拡大した構造とすることができる。この場合、一定の割合で拡大するテーパ角が22°となっている。
図2に示す軸体2には、外側面に螺旋状に形成された螺旋状羽根3が周設されている。螺旋状羽根3は、軸体2の中央部に向けて螺旋状羽根3の径が大きくなるように形成され、螺旋状羽根3の上面および下面には、複数の突出部材21が設けられている。螺旋状羽根3は、軸体2と同様に、軸体2の長さ方向に向いた両端部から中央部に向けて羽根の径が拡大するように形成されていて、土壌中を上下にスムーズに撹拌することができる構造とされている。
図2に示す突出部材21は、矩形の板状のものとされ、矩形とされた面が軸体2に向くように配設されている。また、突出部材21は、螺旋状羽根3の縁部および軸体2に近隣した内縁部に設けられ、矩形の角部が面取りされた構造とされている。矩形とされた板状の突出部材21の回転方向に向いた側の角部が面取りされた構造とすることにより、螺旋状羽根3の回転をスムーズにし、効果的に撹拌することができる。図2に示す撹拌部材4において、土壌を掘削する場合、螺旋状羽根3の下面に設けられた突出部材21が鋭く土壌にくい込みながら土壌を効果的に撹拌し、上面に設けられた突出部材21は、切削および撹拌された土砂をスムーズに後方に送ることができ、土壌中に石などを含んでいても、噛みにくくなっている。また、撹拌部材4を地中から地表面に向けて上昇させる場合には、螺旋状羽根3の上面に設けられた突出部材21が効果的に切削および撹拌し、下面に設けられた突出部材21がスムーズに土砂を後方に送ることができる。したがって、図2に示す撹拌部材4を使用して土壌を掘削する場合には、掘削した土砂が地上に排出されなくなる。本発明において突出部材21は、いかなる数設けられていても良く、形状も上述した矩形の板状のものでなくても螺旋状羽根3の螺旋形状に沿って矩形の板が曲げられた形状とされていても良い。
図2に示す軸体2の中空部分には、上述したように注入管22、23の一部が挿設されていて、注入管22、23以外の軸体2の中空部分は、圧縮空気を通すことができるようになっている。図2に示す注入管22、23は、軸体2の長さ方向の中央部において注入管22、23は垂直に曲げられ、軸体2を貫通し、螺旋状羽根3の縁部に向けて延びた構造となっている。また、注入管22、23は、注入管22が軸体2の一方の面を貫通するように、注入管23がその一方の面の裏面、すなわち注入管22が突出する位置から周方向へ180°の角度となるように設けられている。本発明においては、スラリーが土壌中において接触し、適切に汚染物質の分解反応を生じさせることができるように、それぞれの注入管22、23が、軸体2の長さ方向の同じ位置となるように配設されていることが好ましく、軸体2から螺旋状羽根3に沿って突出する長さが同じであることが好ましい。なお、注入管22、23の径は、いかなる径であってもよく、例えば、1インチ〜1.5インチのものを使用することができる。
本発明において注入管22、23は、螺旋状羽根3の縁部にまで延びていなくてもよく、螺旋状羽根3の中央部、または内縁部までであってもよい。本発明では、酸化鉄粉を土壌と混合するため、単にスラリーを供給するだけでもよいが、高い圧力で供給し、注入管22、23から噴射させることが好ましい。この場合、注入管22、23は、広範囲に噴射させるために、螺旋状羽根3の縁部にまで延びているほうが好ましい。
上述した撹拌部材に限らず、他の掘削部材を用いて土壌を改良することもできる。図3および図4に他の掘削部材を例示する。図3は、先端部に切削部材と、少なくとも1つの注入管とを備える掘削部材を示し、図3(a)には、その掘削部材の斜視図を、図3(b)には、その掘削部材の断面図をそれぞれ示す。図7に示す掘削部材30は、中空棒状のロッド31の先端部に複数の切削部材32が設けられ、所定位置に所定径の穴33が設けられ、穴33に先端が挿通された注入管34が配設されている。中空棒状のロッド31は、図示しない支持手段に直接または支持手段より支持される別のロッドに連結され、支持手段によって回転かつ降下されることにより先端部の切削部材32を使用して土壌を掘削することができるようにされている。土壌の掘削時には、ロッド31と注入管34との間を通して圧縮空気または水を供給し、ロッド31の先端部から噴射させながら掘削することができる。こうすることにより、掘削中の地盤への衝撃を低減させ、掘削を容易にするとともに、切削部材32の発熱を抑制することができる。
図3に示す注入管34は、中空のロッド31内部に、ロッド31の長さ方向に沿って挿設され、先端がロッド31の長さ方向に対して垂直方向に曲げられ、ロッド31に設けられた穴33に挿設されている。図3に示す実施の形態では、注入管34の先端とロッド31の外壁とが略面一になるように構成されているが、本発明では、注入管34は、ロッド31から離間する方向に延びるように構成されていてもよい。また、図3に示す実施の形態では、注入管34は、1本とされているが、2本以上設けることもでき、2本とする場合、1本が所定方向に向けて延び、もう1本は1本の注入管に対して180°となる方向に向けて延びるように構成することができる。図3に示す実施の形態では、上述したように、ロッド31を図示しない支持手段により回転させ、降下させることにより土壌を掘削し、ロッド31内部の注入管34に、水と鉄粉またはマグネタイト(Fe)を含む酸化鉄粉と焼き石膏と吸着不溶化剤とを含むスラリーを供給し、ロッド31を上昇させつつ、周囲の土壌に向けて噴射させることができる。本発明では、これに限らず、掘削時にスラリーを噴射させ、掘削とともにスラリーを注入管34から土壌に向けて噴射させることもできる。また、掘削時およびロッド31の上昇時の両方においてスラリーを土壌に噴射させて供給することができる。なお、スラリーの供給圧力は、上述した撹拌部材を使用する場合と同様の圧力で供給することができる。
図3に示す実施の形態では、鉄粉または酸化鉄粉と焼き石膏と吸着不溶化剤とを水とともに供給するため、土粒子間を通して土壌中を浸透させることができる。これにより、広く、均一に行き渡り、土壌を効果的に浄化することができ、所定強度も得ることができる。本発明においてロッド31は、例えば、2〜5インチの鋼管を用い、図3に示す切削部材32を先端部に溶接などして接合し、注入管34として内部に1〜1.5インチの管を上述したように挿設したものを掘削部材として用いることができる。
図4は、図3に示すロッドの周囲にさらに羽根が設けられた掘削部材を示す。図4に示す掘削部材40は、図3に示す掘削部材30と同様、中空棒状のロッド41の先端部に切削部材42が設けられ、その周部に穴43が設けられ、穴43を通して注入管44が設けられており、さらにロッド41の周囲に羽根45a、45b、45c、45dが設けられ、羽根45a、45b、45c、45dを回転させることにより、土壌とスラリーとを混合することができるようになっている。図4に示す実施の形態では、羽根45a、45b、45c、45dは、板状のものとされ、ロッド41の回転方向に対して土壌にスムーズに挿入できるように、ロッド41の長さ方向に対して垂直ではなく、その垂直方向を0°とした場合に10°〜45°傾斜し、かつ羽根45a、45b、45c、45dの表面も傾斜するように設けられている。左周りにロッド41が回転するものの場合、ロッド41側から見た羽根45a、45b、45c、45dの表面がいずれも、左側が右側より低くなるように傾斜したものを用いることができる。この表面の傾斜は、例えば、5°〜30°とすることができる。
また、図4に示す実施の形態では、掘削方向側、すなわちロッド41の切削部材42が設けられた側に配設されている羽根45a、45bには、ロッド41の先端部に設けられる切削部材42と同様の切削部材46が設けられ、掘削時に、羽根45a、45bによっても土壌を掘削することができるようになっている。ロッド41は、図示しない支持手段により支持され、支持手段により回転および降下されることにより土壌を掘削することができる。図4に示す実施の形態では、ロッド41の先端部に設けられる切削部材42および羽根45a、45bに設けられる切削部材46により土壌を掘削することができる。上述したように、スラリーの供給は、掘削時またはロッド41の上昇時またはその両方において行うことができる。図4に示す実施の形態では、羽根45a、45b、45c、45dの回転により、スラリーを周囲の土壌に噴射させつつ、撹拌し、土壌とスラリーとを混合することができる。なお、掘削時と上昇時の羽根45a、45b、45c、45dの回転方向は、同じであってもよいし、逆回転にしてもよい。また、スラリーの供給圧力は、上述した撹拌部材を使用する場合と同様の圧力で供給することができる。
図4に示す実施の形態も図3に示す実施の形態と同様に、鉄粉または酸化鉄粉と焼き石膏と吸着不溶化剤とを水とともに噴射させるため、土粒子間を通して土壌中を浸透させることができる。図4に示す実施の形態ではさらに、鉄粉または酸化鉄粉および焼き石膏および吸着不溶化剤と土壌とを充分に混合することができ、これにより、土壌中にさらに均一に鉄粉等が分散した状態となり、汚染土壌をより効果的に浄化することができ、撹拌混合された土壌範囲において均一強度の、原地盤より強度を向上させた地盤を得ることができる。本発明において羽根45a、45b、45c、45dは、所定長さ、厚さの鋼板、または、所定長さで、掘削時に土壌に挿入しやすいように一端が尖鋭しており、その一端から他端に向けて厚さが厚くなるように形成された鋼板をロッド41の所定位置に、上述した所定角度となるように溶接したものを用いることができる。
図5は、スラリーを収容する容器を例示した図である。この容器50は、供給手段7に接続され、スラリーは、ライン8および図1に示すロッド9を通して撹拌部材4へ送られ、土壌中に噴射される。図5に示す容器50は、上下に2つの容器51、52から構成される。上部容器51には、所定量の水53と所定量の鉄粉または酸化鉄粉54とが入れられ、鉄粉または酸化鉄粉54が自重で堆積しないように上部容器51の底部に設けられる撹拌手段55により撹拌され、水53に鉄粉または酸化鉄粉54および吸着不溶化剤56が分散した状態にされる。この状態において、所定量の焼き石膏57が少量ずつ添加される。これは、上述したように、一度に多量投与すると、だまを生じるためである。添加された焼き石膏57は、鉄粉または酸化鉄粉54および吸着不溶化剤56が分散した水53に分散し、スラリーを形成する。
上述したようにして作られたスラリーは、下部容器52に移される。図5に示す実施の形態では、上部容器51と下部容器52とが弁58の閉止により遮断されており、この弁58を開けることによりスラリーを下方へと移動させることができる。下部容器52に移されたスラリーは、下部容器52の下部に設けられる撹拌手段59により撹拌され、沈下しやすい鉄粉または酸化鉄粉54および吸着不溶化剤56が分散した状態に保持される。下部容器52は、図1に示す供給手段7に接続されており、供給手段7の起動により、所定量のスラリーが抜き出され、図1に示す撹拌部材4にその所定量のスラリーが供給される。なお、スラリーの供給手段7への供給は、供給手段7までのライン内に堆積しないように、供給手段7を起動する直前であることが好ましい。
下部容器52にスラリーを移動させた後、弁58は閉止され、再び所定量の水と所定量の鉄粉または酸化鉄粉54と吸着不溶化剤56とが上部容器51に入れられ、スラリーとされた後、所定量の焼き石膏57が添加される。これにより、上部容器51では、再び所定量のスラリーが作られる。本発明では、多量の水53に鉄粉または酸化鉄粉54と吸着不溶化剤56と焼き石膏57とを同時に、または、多量の水53に焼き石膏57を添加した後に鉄粉または酸化鉄粉54と吸着不溶化剤56とを添加してもよい。スラリーは、焼き石膏57の添加量の1〜10倍といった多量の水を含むため、固化速度が遅延され、さらに、鉄粉または酸化鉄粉を含むことにより遅延される。この遅延している間に、スラリーが浸透し、土壌中に鉄粉または酸化鉄粉54と吸着不溶化剤56と焼き石膏57とが分散した状態となり、VOCは、鉄粉または酸化鉄粉54に接触することによって還元分解され、各種重金属は、吸着不溶化剤に吸着され、不溶化される。その後、スラリー中の水の浸透によって含水比が低下し、焼き石膏57によって土壌は固化する。なお、焼き石膏57は、スラリーの浸透によって土壌中に均一に分散しており、この固化によって所定強度の地盤が得られる。
ここで、図2に示す撹拌部材を用いた図1に示す装置を使用して、本発明の土壌浄化方法について説明する。まず、走行部10により浄化したい位置にロッド9を配置し、アーム12を使用して地面に対してロッド9が垂直になるように調整する。原地盤はまだ施行されていないため、装置が地盤上に載置されても充分な強度を有する。挟持部11によりロッド9を回転させ、昇降手段13によりロッド9を降下させて土壌を掘削する。土壌の掘削は、撹拌部材4の先端部に設けられた切削部材1を使用して行うことができる。また、掘削中の地盤への衝撃を低減させ、撹拌部材4に揺動撹拌効果を与えて掘削を容易にするため、図示しない圧縮空気供給手段から圧縮空気が供給される。圧縮空気は、圧縮空気供給ラインを通り、ロッド9内のラインおよび撹拌部材4の軸体2内を通って先端部から噴射される。なお、圧縮空気の噴射は、撹拌部材4の揺動撹拌効果、切削部材1の冷却効果のほか、軸体2内へ土壌が入り込むことを防止する効果もある。ロッド9の長さが足りない場合には、挟持部11によるロッド9の回転を止め、ロッド9とラインとを連結する連結部を取り外し、この連結部とロッド9との間に延長するロッドを連結することができる。連結した後、ロッド9を再び回転させ、引き続き土壌の掘削を行うことができる。
本発明では、撹拌部材4が入る程度の穴を事前掘削し、その掘削により生じた土砂を他の場所に仮置きしておき、撹拌部材4による掘削時に上昇する土砂がその穴からあふれないようにすることもできる。この仮置きした土砂は、バックホウなどを使用して、所定量の鉄粉または酸化鉄粉および吸着不溶化剤を添加し、混合した後、埋め戻すことができる。
次に、所定深さまで土壌を掘削した後、挟持部11によるロッド9の回転方向を変える。スラリーの供給があるまでは上昇させずに、回転させたまま停止しておく。本発明においては、ロッド9の回転を停止しておくこともできる。供給手段7を起動し、容器6からスラリーの供給を開始する。例えば、容器6から供給手段7までのラインに予めスラリーを満たしておき、供給手段7の起動により撹拌部材4にスラリーを供給することができる。本発明では、スムーズに撹拌部材4を上昇させるために、上記のように、ロッド9の回転方向を変えることが好ましい。
スラリーが撹拌部材4に供給されると、図1に示すように、各注入管から土壌に向けて噴射させる。スラリーは、螺旋状羽根3の周囲方向に連続的に噴射され、さらには、回転する螺旋状羽根3により土壌が撹拌され、スラリーと土壌とが混合される。次に、スラリーの供給および螺旋状羽根3による撹拌を行いつつ、昇降手段13によりロッド9を所定速度で上昇する。こうすることにより、原位置において、排土を伴うことなく、所定深さまでの土壌に鉄粉または酸化鉄粉、焼き石膏、吸着不溶化剤を均一に分散することができる。本発明においては、土壌と、鉄粉または酸化鉄粉および焼き石膏および吸着不溶化剤とを充分に混合させるため、上昇速度が小さいほうが好ましいが、小さすぎる場合、作業効率が低下するため、例えば、毎分0.05m〜毎分0.3mとすることができる。また、本発明では、ロッド9の上昇時に限らず、掘削時にスラリーを供給し、周囲の土壌に向けて噴射させることもできるし、掘削時と上昇時の両方において、スラリーを供給し、噴射させることもできる。
本発明においては、撹拌部材4が地表面14の近くまで上昇したところで、供給手段7を停止し、圧縮空気供給手段による圧縮空気の供給を停止する。撹拌部材4をさらに上昇させ、地表面14から撹拌部材4が離間された状態となった後、走行部10により次の浄化位置に移動し、再び上述したようにして掘削、スラリーの供給および噴射、撹拌を行うことができる。土壌の浄化は、例えば、図6に示す矩形の浄化範囲において、1回に、鉄粉等が供給され、撹拌および混合される円形で示される範囲が重なり合うように選択されることが好ましい。鉄粉等の供給および混合の範囲は、螺旋状羽根3の径より数十センチメートル大きい径の円形の範囲とされる。図6(a)では、汚染物質であるVOCを完全に分解、除去するために、鉄粉等が供給されない範囲がないように位置決めされている。なお、ロッド9は、各円の中心に位置決めされ、撹拌部材4により掘削、撹拌および混合することにより、鉄粉等がその円形の範囲に混合される。その範囲が終了すると、隣の円形で示される範囲の中心にロッド9が移動され、再び掘削、酸化鉄粉の供給、土壌との混合が行われる。なお、図6(a)では、鉄粉等をすでに供給した範囲と、後に供給を行う範囲とが大きく重なり合うように位置決めされている。
図6(a)では、円形で示される範囲が重なり合った範囲が大きくなっているが、図6(b)では、円形で示される範囲が隣接するように位置決めされている。これは、すでに土壌に供給され、撹拌および混合した焼き石膏により固化した、あるいはこれから固化しようとするために静置している範囲を再び撹拌および混合することとなり、所定の地盤強度を得ることができなくなるため、すでに処理を行った範囲は行わないように隣接するように位置決めされている。この場合、鉄粉等が供給されない範囲が存在することとなるが、鉄粉等は螺旋状羽根3の周部に向けて送出され、土壌中を水とともに浸透するため、結果として鉄粉等が供給されない範囲はわずかなものとなる。本発明では、充分かつ均一に混合できるのであれば、掘削する回数を少なくすることが好ましく、したがって、図6(b)に示すように位置決めすることが好ましい。
本発明を上述した実施の形態をもって詳細に説明してきたが、本発明の土壌浄化方法は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、同様の効果を得ることができるものであれば、撹拌部材は上述した形状に限らず、いかなる大きさ、螺旋状羽根の巻数、鉄粉および酸化剤の注入管の配設位置であっても良く、容器もいかなる形状および構造であってもよい。また、鉄粉または酸化鉄粉、水、焼き石膏、吸着不溶化剤の配合比は、土壌の含水比、浄化する土壌の質量、さらにはコストによって適切な値に設定することができる。さらに、ロッドは、掘削時とロッドの上昇時とで逆回転させることが好ましいが、同じ回転方向にすることもできる。また、吸着不溶化剤は、水和物に限らず、三酸化二鉄と硫酸カルシウムとからなるものであってもよい。
また、図4に示す実施の形態で使用される掘削部材において、羽根45a、45b、45c、45dの長さ、幅、厚さ、枚数、傾斜角度は、掘削する地盤強度、スラリーを噴射させ、混合する範囲などを考慮し、適切なサイズ、数、角度にすることができる。また、注入管44は、羽根45a、45bに近隣し、ロッド41から突出する方向、すなわち羽根45a、45bの長さ方向に沿って延びるように設けられていてもよいし、さらには、羽根45a、45bではなく、羽根45c、45dに近隣し、羽根45c、45dの長さ方向に沿って延びるように設けることもできる。本発明において、少ない量の鉄粉または酸化鉄粉と焼き石膏と吸着不溶化剤とで充分な浄化効果および地盤強度を得るためには、掘削部材として、羽根があるほうが好ましく、上記撹拌部材がより好ましい。
本発明の土壌浄化方法を実現する装置を例示した図。 本発明の土壌浄化方法を実現する装置に用いることができる撹拌部材の例示した図。 本発明の土壌浄化方法を実現する装置に用いることができる掘削部材の第1の実施形態を示した図。 本発明の土壌浄化方法を実現する装置に用いることができる掘削部材の第2の実施形態を示した図。 本発明の土壌浄化方法を実現する装置に用いられる容器を例示した図。 図1および図2に示す装置を使用して土壌を掘削し、スラリーを噴射させ、かつ土壌とスラリーとを混合する各位置を示した図。
符号の説明
1、1a…切削部材
2…軸体
3…螺旋状羽根
4…撹拌部材
5…支持手段
6…容器
7…供給手段
8…ライン
9…ロッド
10…走行部
11…挟持部
12…アーム
13…昇降手段
14…地表面
20…先導管
21…突出部材
22、23…注入管
24…フランジ
30、40…掘削部材
31、41…ロッド
32、42…切削部材
33、43…穴
34、44…注入管
45a、45b、45c、45d…羽根
46…切削部材
50…容器
51…上部容器
52…下部容器
53…水
54…酸化鉄粉
55…撹拌手段
56…吸着不溶化剤
57…焼き石膏
58…弁
59…撹拌手段

Claims (9)

  1. 揮発性有機塩素化合物(VOC)および重金属を含む汚染土壌を浄化するとともに、原地盤の地耐力の低下を防止するための土壌浄化方法であって、
    先端部に切削部材と少なくとも1つの注入管とを備える掘削部材を回転可能に、かつ昇降可能に支持する支持手段により回転および降下させて土壌を掘削するステップと、
    前記掘削部材を回転させつつ、前記少なくとも1つの注入管から該掘削部材周囲の前記土壌に向けて、水に、鉄粉またはマグネタイト(Fe)を含む酸化鉄粉と、焼き石膏と、三酸化二鉄と硫酸カルシウムとを含む吸着不溶化剤とを分散させたスラリーを噴射させるステップとを含む、土壌浄化方法。
  2. 前記三酸化二鉄は、Fe・HOであり、前記硫酸カルシウムは、CaSO・nHO(nは2以上の整数)である、請求項1に記載の土壌浄化方法。
  3. 前記吸着不溶化剤は、40〜55質量%の前記Fe・HOと、45〜60質量%の前記CaSO・nHO(nは2以上の整数)とからなる、請求項2に記載の土壌浄化方法。
  4. 前記掘削部材は、周部に羽根を備えており、前記支持手段により該掘削部材を回転させ、前記羽根の回転により前記土壌と前記スラリーとを混合するステップをさらに含む、請求項1〜3に記載の土壌浄化方法。
  5. 前記掘削部材は、先端部に切削部材と、周部に羽根と、前記羽根の縁部に向けて配設される少なくとも1つの注入管とを備える撹拌部材である、請求項4に記載の土壌浄化方法。
  6. 前記掘削するステップと前記噴射させるステップとが同時に実行されることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の土壌浄化方法。
  7. 前記掘削するステップと前記噴射させるステップと前記混合するステップとが同時に実行されることを特徴とする、請求項4または5に記載の土壌浄化方法。
  8. 前記スラリーは、前記水と前記鉄粉との質量比が1:1〜20:1の範囲、前記焼き石膏と前記鉄粉との質量比が1:1〜10:1の範囲、前記鉄粉と前記吸着不溶化剤との質量比が100:1〜1:20の範囲となるように配合され、前記鉄粉が前記土壌1mに対し、10kg〜100kg供給されるように前記スラリーが供給されることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の土壌浄化方法。
  9. 前記スラリーは、前記水と前記酸化鉄粉との質量比が2:1〜15:1の範囲、前記焼き石膏の添加量が前記酸化鉄粉の質量の2〜20倍、前記酸化鉄粉と前記吸着不溶化剤との質量比が150:1〜1:15の範囲となるように配合され、前記酸化鉄粉が前記土壌1mに対し、15kg〜150kg供給されるように前記スラリーが供給されることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の土壌浄化方法。
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