JP2006132615A - 防振装置 - Google Patents

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龍也 堤
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Abstract

【課題】主液室内に瞬間的に大きな液圧変化を生じさせるような大振幅の振動入力時にも、主液室内の液体に異音の原因となるキャビテーションが発生することを効果的に防止する。
【解決手段】防振装置10では、内筒金具12又は外筒金具14へ所定ののしきい値を越える大振幅を有する振動(衝撃的振動)の入力時に、この衝撃的振動の入力に伴う液体の圧力変化(圧力波)により可動板94における撓み部96の一部が開口部88を通して副液室58の内部へ延出するように変形することにより形成される隙間を通して、多量の液体を短時間で主液室56から副液室58へ流出させることができるので、大振幅(例えば、±5.0mm以上)の振動が入力しても主液室56内の液圧が短時間で急激に変化することを防止でき、主液室56、副液室58及びオリフィス66内に充填された液体にキャビテーションが発生しなくなる。
【選択図】図1

Description

本発明は、例えば、自動車、一般産業用機械等に適用され、エンジン等の振動発生部から車体等の振動受部へ伝達される振動を吸収及び減衰させる防振装置に関する。
自動車には、エンジンと車体(フレーム)との間に防振装置としてのエンジンマウントが配置されている。このエンジンマウントは、ゴム弾性体により振動を吸収し、振動発生部であるエンジンからの振動を減衰してフレームへ振動の伝達を抑制している。また、このようなエンジンマウントとしては、内部に主液室、副液室及びこれらの液室間を繋ぐオリフィスを備えた所謂、液体封入式のものがあり、この液体封入式のエンジンマウントでは、振動入力時にオリフィスを通して主液室と副液室との間で液体を相互に流通させると共に、オリフィスを通して主液室と副液室との間で液体の共振現象(液柱共振)を発生させることにより、ゴム弾性体による振動に対する減衰作用に加え、液体の粘性抵抗等によっても振動を効果的に減衰吸収できるようになっている。
上記のようなエンジンマウントとして適用される液体封入式の防振装置の一例としては、例えば特許文献1に示されている液体封入式マウント装置がある。
この特許文献1に示されたマウント装置には、外筒、ゴム弾性体及びダイヤフラムにより外部から密閉された液室空間が形成されており、この液室空間は、仕切部材によりゴム弾性体を隔壁の一部とする主液室と、ダイヤフラムを隔壁の一部とする副液室とに区画され、これらの主液室と副液室とが制限通路であるオリフィスにより繋ぎ合わされている。ここで、主液室、副液室及びオリフィス内には、水、エチレングリコール等の液体が充填されている。仕切部材には、外周側に主液室と副液室とを連通させる制限通路であるオリフィスが設けられている。また仕切部材には、その内周側に軸方向に沿って扁平な円柱状の空間である収納室が設けられ、この収納室内は仕切部材に形成された開口部を通して主液室及び副液室にそれぞれ連通している。このマウント装置では、収納室内に円板状の可動プレートが収納されており、この可動プレートは、収納室内で入力振動の振幅方向に沿って入力振動の振幅に対応する振幅で振動可能とされている。
上記のように構成された防振装置では、振動入力時にゴム弾性体が弾性変形することにより、ゴム弾性体により振動が減衰吸収される。このとき、入力振動の周波数が所定の値よりも低く、振幅が大きい場合には、可動プレートが仕切部材における開口部の周縁部に密着した状態となるので、可動プレートにより収納室内を通って液体が主液室と副液室との間を実質的に流通することが阻止され、オリフィスのみを通して主液室と副液室との間で液体が相互に流通する。これにより、オリフィス内を流通する液体に共振現象(液柱共振)が生じるので、この液柱共振の作用によってシェイク振動等の低い周波数を有する入力振動を効果的に減衰できる。
一方、上記のような防振装置では、入力振動の周波数が所定の値よりも高い振動(高周波振動)である場合には、オリフィスが目詰まり状態となるが、可動プレートが収納室内で入力振動に同期して振動すると共に開口部を開閉することにより、収納室内を通って主液室と副液室との間で液体の流通が生じるので、主液室内の液圧上昇に伴う動ばね定数の上昇を抑えることができ、このような高周波振動の入力時もゴム弾性体の動ばね定数を低く維持し、このゴム弾性体の弾性変形等によりアイドル振動等の高周波振動も効果的に吸収できるようになる。
特開平1−193425号公報
しかしながら、上記のような防振装置では、例えば、オリフィスにおける液体の流通抵抗がシェイク振動に適合するように設定されている場合、シェイク振動の振幅(例えば、±0.5〜1mm)よりも著しく大きい振幅(例えば、±5mm以上)を有する振動(衝撃的振動)が路面側から入力すると、このような大振幅の衝撃的振動が衝撃的な液圧変化を発生させることから、衝撃的振動により主液室内の液圧が瞬間的に急激に変化する。この衝撃的振動の入力時もシェイク振動の入力時と同様に、可動プレートが仕切部材における開口部の周縁部に密着した状態となるが、制限通路から流出する液体だけでは主液室内の急激な液圧変化を吸収できないので、この主液室内における瞬間的で、かつ急激な液圧変化に伴って主液室内でキャビテーションが発生すると共に、このキャビテーションにより液体中に生じた真空泡が消失(破裂)することにより衝撃波が発生し、この衝撃波が可動プレートを支持部材の内壁面に衝突させ、高音圧の打音を発生させることがある。このような打音は車両では車体を通して車内へ不快な異音として伝達される。
本発明の目的は、上記事実を考慮して、主液室内に瞬間的に急激な液圧変化を生じさせるような衝撃的振動の入力時にも、主液室内の液体に異音の原因となるキャビテーションが発生することを効果的に防止できる防振装置を提供することにある。
上記課題を解決するため、本発明の請求項1に係る防振装置は、振動発生部及び振動受部の一方に連結される第1の取付部材と、振動発生部及び振動受部の他方に連結される第2の取付部材と、前記第1の取付部材と前記第2の取付部材との間に配置されたゴム弾性体と、液体が封入され、前記ゴム弾性体を隔壁の一部として該ゴム弾性体の変形に伴い内容積が変化する主液室と、液体が封入され、該液体の液圧変化に応じて内容積が拡縮可能とされた副液室と、前記主液室と前記副液室との間を区画し、内部に中空状の収納室が設けられると共に、該収納室を前記主液室及び前記副液室にそれぞれ連通させる開口部が形成された仕切部材と、前記主液室と前記副液室とを連通する制限通路と、前記収納室内を通して前記主液室と前記副液室との間を液体が流通することを制限するように前記収納室内に配設されると共に、前記仕切部材における前記開口部が開口して開口周縁部との間に所定寸法の隙間を形成した可動板と、を有する防振装置であって、前記第1又は第2の取付部材への所定のしきい値以下の振幅を有する振動の入力時に、該振動の入力に伴う液体の圧力変化により前記可動板を前記収納室内で振動させると共に前記開口周縁部に対して接離させ、前記第1又は第2の取付部材への前記しきい値を越える振幅を有する振動の入力時に、該振動の入力に伴う液体の圧力変化により前記可動板の一部を、前記開口部を通して前記主液室又は前記副液室の内部へ延出させることを特徴とする。
上記請求項1に係る防振装置では、基本的に第1又は第2の取付部を介して振動が入力すると、この振動によりゴム弾性体が弾性変形することにより、ゴム弾性体の内部摩擦等に基づく吸振作用により振動が減衰吸収される。
また請求項1に係る防振装置では、第1又は第2の取付部材への所定のしきい値以下の振幅を有する振動の入力時に、この振動の入力に伴う主液室内に充填された液体の圧力変化により可動板を前記収納室内で振動させると共に、可動板を開口周縁部に対して接離させることにより、入力振動の振幅が前記しきい値以下の範囲であって、この入力振動が制限通路に対応する周波数を有する振動(低周波振動)である場合には、可動板の収納室内での振幅方向に沿った可動量を低周波振動の振幅に対して十分に小さくものにしておけば、低周波振動の入力時には、可動板が仕切部材における開口周縁部に密着した状態となって、収納室内を通って液体が主液室と副液室との間を実質的に流通することがなくなり、制限通路のみを通して主液室と副液室との間で液体が相互に流通するので、制限通路内を流通する液体に共振現象(液柱共振)が生じ、この液柱共振の作用によってシェイク振動等の低周波振動を効果的に減衰できる。
また請求項1に係る防振装置では、入力振動の振幅が前記しきい値以下の範囲であって、この入力振動が制限通路に対応する周波数を有する低周波振動よりも高い周波数を有する振動(高周波振動)である場合には、可動板の収納室内での振幅方向に沿った可動量を高周波振動の振幅に対して十分に大きいものにしておけば、この高周波振動の入力時には、制限通路が目詰まり状態となり制限通路には液体が流れ難くなるが、可動板が収納室内で高周波振動に同期して高周波振動の振幅に対応する振幅で振動することにより、可動板と開口部との隙間及び収納室内を通って主液室と副液室との間で液体の流通が生じるので、主液室内の液圧上昇に伴う動ばね定数の上昇を抑えることができ、このような振幅が小さい高周波振動の入力時もゴム弾性体の動ばね定数を低く維持し、このゴム弾性体の弾性変形等により高周波振動を効果的に吸収できるようになる。
また請求項1に係る防振装置では、前記第1又は第2の取付部材への前記しきい値を越える大振幅を有する振動(衝撃的振動)の入力時に、この衝撃的振動の入力に伴う液体の圧力変化により可動板の一部を、前記開口部を通して前記副液室の内部へ延出させることにより、この衝撃的振動の入力時には、仕切部材の開口部を通して主液室又は副液室の内部へ延出した可動板の一部(延出部)と支持部材の開口周縁部との間に液体の流通路となる隙間を形成し、この隙間を通して多量の液体を短時間で主液室から副液室へ流出させることができるので、衝撃的振動が入力しても主液室内の液圧が短時間で急激に変化することを効果的に防止できる。
この結果、請求項1に係る防振装置によれば、衝撃的振動の入力時にも、主液室、副液室及び制限通路内に充填された液体にキャビテーションが発生しなくなり、キャビテーションに伴う衝撃波(異音)の発生を効果的に防止できる。
また本発明の請求項2に係る防振装置は、請求項1記載の防振装置において、前記可動板を、その厚さ方向に沿った表裏面がそれぞれ凸状の湾曲面からなる略凸レンズ状に形成すると共に、該可動板の表裏面における中心部がそれぞれ前記仕切部材の内壁面に圧接するように前記収納室内に収納し、前記第1又は第2の取付部材への所定のしきい値以下の振幅を有する振動の入力時に、該振動の入力に伴う液体の圧力変化により前記可動板における前記収納室の内壁面に圧接する中心部に対して外周側の撓み領域を前記収納室内で振動させると共に前記開口周縁部に対して接離させることを特徴とする。
また本発明の請求項3に係る防振装置は、請求項2記載の防振装置において、前記第1又は第2の取付部材への前記しきい値を越える振幅を有する振動の入力時に、該振動の入力に伴う液体の圧力変化により前記撓み領域の一部を、前記開口部を通して前記副液室の内部へ延出させることを特徴とする。
また本発明の請求項4に係る防振装置は、請求項1、2又は3記載の防振装置において、前記可動板における前記開口周縁部と対向する対向面に凹状のディンプル部を形成したことを特徴とする。
以上説明したように本発明の防振装置によれば、主液室内に瞬間的に急激な液圧変化を生じさせるような大振幅の振動入力時にも、主液室内の液体に異音の原因となるキャビテーションが発生することを効果的に防止できる。
以下、本発明の実施形態に係る防振装置について図面を参照して説明する。
図1には本発明の実施形態に係る防振装置が示されている。この防振装置10は、自動車におけるエンジンを車体上へ支持するエンジンマウントとして適用されるものである。なお、図1にて符合Sが付された一点鎖線は装置の軸心を示しており、この軸心Sに沿った方向を装置の軸方向として以下の説明を行う。
図1に示されるように、防振装置10は、略肉厚円筒状に形成されエンジン側に連結される内筒金具12と、この内筒金具12の外周側に略同軸的に配置され、車体側へ連結される略円筒状の外筒金具14と、内筒金具12と外筒金具14との間に配置され、吸振主体となるゴム製のゴム弾性体16とを備えている。
内筒金具12は、その上端側が外筒金具14内へ挿入されると共に、下端側が外筒金具14の下端側の開口部93を通って外筒金具14の下方まで突出している。外筒金具14には、その軸方向中間部に段差部18が設けられており、この段差部18に対して上端側の部分が下端側の部分の直径よりも直径が拡大された拡径部20として形成されている。また外筒金具14には、その下端部に下方へ向って直径がテーパ状に縮小するテーパ部22が形成されると共に、拡径部20の上端部に装置の組立時に内周側へかしめられるかしめ部24が形成されている。
防振装置10には、外筒金具14の下端側が嵌挿固定される略カップ状の中間連結筒26及び、この中間連結筒26の下端側が嵌挿固定される有底円筒状のホルダ金具28が設けられている。外筒金具14は、その下端部が中間連結筒26の底板部に当接するまで中間連結筒26内へ挿入されている。またホルダ金具28には、その外周面に複数の脚部30,32が溶接等により固定されており、この脚部30,32の先端側に形成された連結穴32を挿通するボルト(図示省略)により、ホルダ金具28は車体側へ締結固定される。これにより、外筒金具14が、中間連結筒26及びホルダ金具28を介して車体側へ連結固定される。
内筒金具12の下端側は、中間連結筒26の底板部に形成された開口部92を通って中間連結筒26の下方まで突出しており、内筒金具12の下端部には、ボルト34によりエンジン連結用のブラケット36の基端部が締結固定されている。このブラケット36は、ホルダ金具28の側面部に形成された開口部(図示省略)を通って外周側へ延出しており、ブラケット36の先端側にはボルト等によりエンジン(図示省略)が締結固定される。またブラケット36の基端部には、略角筒状に形成されたストッパゴム38が被せられており、このストッパゴム38の上面部は中間連結筒26の底板部に圧接している。これにより、ブラケット36の軸方向に沿った過大な変位が防止されると共に、大荷重の入力によりブラケット36が中間連結筒26又はホルダ金具28へ衝突した際にも大きな衝突音の発生が防止される。
内筒金具12の上端面には、上方へ向って開口するカップ状に形成された延長金具40の底板部が溶接等により固着されている。延長金具40は、その側板部が底板側から上端側へ向って直径が拡大するテーパ状とされており、この側板部の上端部分にはリング状のフランジ部材42が溶接等により固着されており、このフランジ部材42は延長金具40の上端部から内周側へ延出している。また延長金具40の周壁部には、ゴム弾性体16の成形素材となる加硫ゴムを延長金具40内へ充填するための湯道穴44が複数穿設されている。
ゴム弾性体16は、外筒金具14内へ挿入された内筒金具12の上端側及び延長金具40にそれぞれ加硫接着されると共に、外筒金具14の下端側に加硫接着されており、内筒金具12と外筒金具14とを弾性的に連結している。ここで、ゴム弾性体16は、内筒金具12の外周面及び延長金具40の外周面にそれぞれ加硫接着されると共に、湯道穴44を通って延長金具40の内周側に充填され、延長金具40の内周面及び底面部とフランジ部材42の下面側にもそれぞれ加硫接着されている。またゴム弾性体16には外周部から上方へ延出する薄肉状の被覆部46が一体的に形成されており、この被覆部46は、外筒金具14の内周面上端側に加硫接着され、外筒金具14の内周面上端側を被覆している。
外筒金具14内には、その段差部18の上側に全体として略円板状に形成された仕切部材48(図2参照)及び、この仕切部材48の上面部に密着した略ハット状の仕切金具50(図2参照)が挿入されており、仕切部材48の下面外周部は、被覆部46を介して段差部18に当接している。また外筒金具14内には、仕切部材48及び仕切金具50の上側に円筒状の支持筒52が嵌挿されており、この支持筒52の下端部は仕切金具50の外周部に当接している。これらの仕切部材48、仕切金具50及び支持筒52が挿入された外筒金具14はかしめ部が内周側へかしめられる。これにより、仕切部材48、仕切金具50及び支持筒52が外筒金具14内における段差部18とかしめ部24との間に固定される。ここで、支持筒52には、その内周面に上方へ向って凸状のカップ状に形成されたゴム製のダイヤフラム54の外周部が全周に亘って加硫接着されている。
防振装置10内には、外筒金具14の内周側にゴム弾性体16及びダイヤフラム54により外部から密閉された液室空間が形成されており、この液室空間は、仕切部材48及び仕切金具50によりゴム弾性体16を隔壁の一部とする主液室56と、ダイヤフラム54を隔壁の一部とする副液室58とに区画されている。防振装置10では、副液室58の隔壁の一部を形成するダイヤフラム54の外側が大気空間とされており、これにより、ダイヤフラム54は、副液室58内の液圧変化に応じて副液室58の内容積を拡縮するように容易に弾性変形可能とされている。また主液室56は、その内容積がゴム弾性体16の弾性変形に伴って拡縮する。
仕切部材48には、その外周面に周方向へ延在する凹状の溝部60が設けられている。図2に示されるように、溝部60は軸心Sを中心とする周方向に沿ってC字状に延在しており、仕切部材48には、溝部60の一端部から下方へ向って溝部60の下部側が切り欠かれて連通口62が形成されると共に、溝部60の他端部から上方へ向って溝部60の上部側が切り欠かれて連通口64が形成されている。この溝部60は、図1に示されるように、その外周側が被覆部46を介して外筒金具14の内周面により閉止されることにより、主液室56と副液室58とを連通させる細長い制限通路であるオリフィス66を形成している。
ここで、主液室56、副液室58及びオリフィス66内には、水、エチレングリコール、シリコーンオイル等の非圧縮性の液体が充填されており、この液体はオリフィス66を通して主液室56と副液室58との間で流通可能とされている。オリフィス66は、その路長及び断面積がシェイク振動の振幅及び周波数に適合するように設定(チューニング)されている。
仕切部材48には、図2(A)に示されるように、その上面中央部に円形凸状の肉厚部68が形成されており、この肉厚部68の上面中央部には円形の凹部70が形成されている。また仕切部材48には、その下面中央部に肉厚部68よりも大径とされた円形凹状の逃げ部72が形成されており、この逃げ部72の頂面と凹部70の底面との間には厚さが略一定の底板部90が設けられている。逃げ部72内には、軸方向に沿って底板部90との間に隙間を空けつつ、延長金具40及びゴム弾性体16の上端部が挿入されている。
ここで、底板部90と延長金具40及びゴム弾性体16との間の隙間は、ブラケット36にエンジンが連結されて、このエンジンの重量に起因する荷重がブラケット36に入力した状態では、図示した状態よりも拡大されて十分な幅となるので、振動が入力しても延長金具40及びゴム弾性体16が底板部90に接することは無い。
仕切金具50には、その中央部に仕切部材48の肉厚部68に対応する円形凸状の外嵌部74が形成されると共に、この外嵌部74の下端部から外周側へ延出する環状のフランジ部76が一体的に形成されている。仕切金具50は、上方から外嵌部74を仕切部材48の肉厚部68へ外嵌すると共に、フランジ部76を仕切部材48の外周部へ当接させている。これにより、仕切部材48の凹部70の上面側が外嵌部74の頂板部78により閉止され、この凹部70内には主液室56及び副液室58から区画された収納室80が設けられる。この収納室80内には、軸方向に沿った肉厚(間隔)が略一定とされた円板状の空間が形成されている。また仕切金具50には、図2(B)に示されるように、外周端から内周側へ向って略矩形状に切り欠かれた切欠部82が形成されており、この切欠部82を通してオリフィス66の連通口64は副液室58内へ連通している。
図2(B)に示されるように、仕切金具50には、その頂板部78に内周部から外周側へ向って周方向に沿った寸法が広がる扇状の開口部88が複数個(本実施形態では、4個)穿設されている。この開口部88を通して収納室80は副液室58と互いに連通している。また図2(A)に示されるように、仕切部材48の底板部90にも、仕切金具50の開口部88と略同一の形状及び開口面積を有する開口部92が複数個(本実施形態では、4個)穿設されている。この開口部92を通して収納室80は、主液室56と互いに連通している。収納室80内には、ゴムを素材として略円板状に形成された可動板94が収納されている。
図3(B)に示されるように、可動板94は、その厚さ方向に沿った表面部及び裏面部がそれぞれ凸状の湾曲面(球面)からなる略凸レンズ状に形成されており、これらの表面部及び裏面部の形状が互いに略面対称となっている。ここで、可動板94は、収納室80内へ収納されていな状態での、その中心部における厚さが収納室80の軸方向に沿った厚さST(図2(A)参照)よりも厚くなっており、具体的には、例えば、可動板94は厚さが5.2mmとされ、収納室80の厚さSTは4.2mmとされている。これにより、収納室80内に収納された可動板94は、その中心部が仕切金具50の頂板部78及び仕切部材48の底板部90との間で軸方向に沿って圧縮状態で挟持され、この中心部に対して外周側の撓み部96が頂板部78及び底板部90から軸方向に沿ってそれぞれ離間した状態となる。
可動板94の外径は収納室80の内径よりも僅かに小さくなっている。これにより、可動板94は、収納室80内に収納された状態で、外嵌部74及び底板部90にそれぞれ圧接した中心部付近を支点(揺動中心)として撓み部96が軸方向に沿って上下するように揺動可能に支持される。また図2(A)に示されるように、可動板94の外周端は、底板部90の開口部92及び仕切金具50の開口部88の外周端よりも外周側まで延出している。ここで、可動板94の外周部が頂板部78と径方向に沿って重なり合うラップ長LRは0.5〜3.0mmの範囲内となるように設定されている。
可動板94には、その表面部及び裏面部における所定の領域にそれぞれ凹状のディンプル部98が複数形成されている。これらのディンプル部98は、可動板94の外周端に対して内周側であって、外嵌部74及び底板部90にそれぞれ圧接した中心部を除く領域、すなわち撓み部96に形成されている。これらのディンプル部98は、軸心Sを中心とする一の径方向及び、この一の径方向と直交する他の径方向に沿って格子状に配列され、前記一の径方向及び他の径方向に沿ったピッチが略一定とされている。
ディンプル部98は、その内面が凹状の湾曲面からなる略半球状に形成されている。またディンプル部98の厚さ方向に沿った深さは、中心側に位置するものが最も深く、外周側へ配置されたものほど浅くなっている。これにより、可動板94からディンプル部98の深さを引いた残厚が撓み部96における任意の部位で略一定となり、撓み部96の外周側の部分での残厚が極端に薄くなり、撓み部96に液圧に対抗できる剛性が確保できなくなることが防止されている。
防振装置10では、可動板94における撓み部96の上面側と頂板部78との軸方向に沿ったクリアランスと撓み部96の上面側と頂板部78との軸方向に沿ったクリアランスとが互いに等しくなっており、これらのクリアランス、すなわち撓み部96の軸方向に沿った可動範囲は、オリフィス66における液体の流通抵抗に対応する周波数を有する低周波振動(本実施形態では、シェイク振動)の振幅及び、この高周波振動よりも高い周波数(本実施形態では、アイドル振動)の振幅に応じて設定されている。
また撓み部96の軸方向(撓み方向)に沿って剛性及びラップ長LRは、前記低周波振動の振幅よりも所定長以上、長い振幅を有する振動(衝撃的振動)の入力により生じる主液室56内の液圧変化の大きさに応じて設定されている。ここで、衝撃的振動の振幅の最小値をしきい値Sとする。このような共振振動よりも長い振幅を有する衝撃的振動は、例えば、自動車が路面における比較的大きな突起を乗り越える際に、エンジン及び車体を介して防振装置10に入力する。
次に、上記のように構成された本発明の第1の実施形態に係る防振装置10の作用について説明する。防振装置10では、基本的にエンジン又は車体側からの振動が内筒金具12又は外筒金具14を介して入力すると、この振動によりゴム弾性体16が弾性変形することにより、ゴム弾性体16の内部摩擦等に基づく吸振作用により入力振動が減衰吸収される。
また防振装置10では、内筒金具12又は外筒金具14へのしきい値S以下の振幅を有する振動の入力時に、この振動の入力に伴う主液室56内に充填された液体の圧力変化(圧力波)により可動板94の撓み部96を収納室80内で軸方向に沿って振動(撓み変形)させると共に、撓み部96を頂板部78及び底板部90に対して接離させることにより、入力振動の振幅がしきい値S以下の範囲のものであって、この入力振動がオリフィス66における液体の流通抵抗に対応する周波数を有する低周波振動(本実施形態では、シェイク振動)である場合には、撓み部96の収納室80内での軸方向に沿った可動範囲を低周波振動の振幅に対して十分に小さくものに設定しておけば、この低周波振動の入力時には、図3(A)の実線又は2点鎖線の何れかで示されるように、可動板96の撓み部98が開口部88,92の一方を閉塞するように頂板部78又は底板部90に密着した状態となる。これにより、収納室80内を通って液体が主液室56と副液室58との間を実質的に流通することがなくなり、オリフィス66のみを通して主液室56と副液室58との間で液体が相互に流通するので、オリフィス66内を流通する液体に共振現象(液柱共振)が生じ、この液柱共振の作用によって低周波振動を効果的に減衰できる。ここで、低周波振動であるシェイク振動は、一般的に±1.0mm以下の振幅を有している。またしきい値Sとしては、本実施形態では±2.0mmが設定されている。
また防振装置10では、入力振動の振幅がしきい値S以下の範囲のものであって、この入力振動がオリフィス66における液体の流通抵抗に対応する周波数を有する低周波振動(シェイク振動)よりも高い周波数を有する高周波振動(本実施形態では、アイドル振動)である場合には、可動板94の撓み部96の収納室80内での軸方向に沿った可動範囲を高周波振動の振幅に対して十分に大きいものに設定しておけば、この高周波振動の入力時には、オリフィス66が目詰まり状態となりオリフィス66には液体が流れ難くなるが、可動板94の撓み部96が収納室80内で高周波振動に同期して高周波振動の振幅に対応する振幅で振動(撓み変形)することにより、可動板94の撓み部96と開口部88,92との隙間及び収納室80内を通って主液室56と副液室58との間で液体の流通が生じるので、主液室56内の液圧上昇に伴う動ばね定数の上昇を抑えることができ、このような振幅が小さい高周波振動の入力時もゴム弾性体16の動ばね定数を低く維持し、このゴム弾性体16の弾性変形等により高周波振動(アイドル振動)を効果的に吸収できるようになる。
また防振装置10では、内筒金具12又は外筒金具14へのしきい値Sを越える大振幅を有する振動(衝撃的振動)の入力時に、この衝撃的振動の入力に伴う液体の圧力変化(圧力波)により可動板94における撓み部96の一部(外周部)が、図3(B)に示されるように開口部88を通して副液室58の内部へ延出するように変形する。これにより、衝撃的振動の入力時には、開口部88を通して副液室58の内部へ延出した撓み部96の一部(延出部分)と頂板部78における開口部88の周縁部との間に液体の流通路となる隙間H(図3(B)参照)が形成され、この隙間Hを通して多量の液体を短時間で主液室56から副液室58へ流出させることができるので、大振幅(例えば、±5.0mm程度)の衝撃的振動が入力しても主液室56内の液圧が短時間で急激に変化することを効果的に防止できる。
この結果、防振装置10によれば、衝撃的振動の入力時にも、主液室56、副液室58及びオリフィス66内に充填された液体にキャビテーションが発生しなくなり、キャビテーションに伴う衝撃波に起因して異音が発生することを効果的に防止できる。
本発明の実施形態に係る防振装置の構成を示す断面図である。 図1に示される可動板を収納した仕切部材及び仕切金具の構成を示す側面断面図及び斜視図である。 (A)はしきい値以下の振幅を有する振動入力における図1に示される可動板の振動状態を示す側面断面図、(B)はしきい値を越えた振幅を有する振動入力における図1に示される可動板の振動状態を示す側面断面図である。
符号の説明
10 防振装置
12 内筒金具(取付部材)
14 外筒金具(取付部材)
16 ゴム弾性体
48 仕切部材
50 仕切金具(仕切部材)
54 ダイヤフラム
56 主液室
58 副液室
66 オリフィス(制限通路)
78 頂板部(開口周縁部)
80 収納室
88 開口部
90 底板部(開口周縁部)
92 開口部
94 可動板
96 撓み部(撓み領域)
98 ディンプル部
100 可動板
102 ディンプル部

Claims (4)

  1. 振動発生部及び振動受部の一方に連結される第1の取付部材と、
    振動発生部及び振動受部の他方に連結される第2の取付部材と、
    前記第1の取付部材と前記第2の取付部材との間に配置されたゴム弾性体と、
    液体が封入され、前記ゴム弾性体を隔壁の一部として該ゴム弾性体の変形に伴い内容積が変化する主液室と、
    液体が封入され、該液体の液圧変化に応じて内容積が拡縮可能とされた副液室と、
    前記主液室と前記副液室との間を区画し、内部に中空状の収納室が設けられると共に、該収納室を前記主液室及び前記副液室にそれぞれ連通させる開口部が形成された仕切部材と、
    前記主液室と前記副液室とを連通する制限通路と、
    前記収納室内を通して前記主液室と前記副液室との間を液体が流通することを制限するように前記収納室内に配設されると共に、前記仕切部材における前記開口部が開口して開口周縁部との間に所定寸法の隙間を形成した可動板と、を有する防振装置であって、
    前記第1又は第2の取付部材への所定のしきい値以下の振幅を有する振動の入力時に、該振動の入力に伴う液体の圧力変化により前記可動板を前記収納室内で振動させると共に前記開口周縁部に対して接離させ、
    前記第1又は第2の取付部材への前記しきい値を越える振幅を有する振動の入力時に、該振動の入力に伴う液体の圧力変化により前記可動板の一部を、前記開口部を通して前記副液室の内部へ延出させることを特徴とする防振装置。
  2. 前記可動板を、その厚さ方向に沿った表裏面がそれぞれ凸状の湾曲面からなる略凸レンズ状に形成すると共に、該可動板の表裏面における中心部がそれぞれ前記仕切部材の内壁面に圧接するように前記収納室内に収納し、
    前記第1又は第2の取付部材への所定のしきい値以下の振幅を有する振動の入力時に、該振動の入力に伴う液体の圧力変化により前記可動板における前記収納室の内壁面に圧接する中心部に対して外周側の撓み領域を前記収納室内で振動させると共に前記開口周縁部に対して接離させることを特徴とする請求項1記載の防振装置。
  3. 前記第1又は第2の取付部材への前記しきい値を越える振幅を有する振動の入力時に、該振動の入力に伴う液体の圧力変化により前記撓み領域の一部を前記開口部を通して前記副液室の内部へ延出させることを特徴とする請求項2記載の防振装置。
  4. 前記可動板における前記開口周縁部と対向する対向面に凹状のディンプル部を形成したことを特徴とする請求項1、2又は3記載の防振装置。
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