JP4563197B2 - 防振装置 - Google Patents

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Description

本発明は、例えば、自動車、一般産業用機械等に適用され、エンジン等の振動発生部から車体等の振動受部へ伝達される振動を吸収及び減衰する防振装置に関する。
自動車には、通常、エンジンと車体(フレーム)との間に防振装置としてのエンジンマウントが配設されている。このエンジンマウントは、ゴム弾性体の弾性変形により振動エネルギを吸収することにより、エンジンからの振動を減衰してフレームへの振動伝達を抑制している。また、このようなエンジンマウントとしては、内部に主液室、副液室及びこれらの液室間を繋ぐオリフィスを備えた所謂、液体封入式のものがあり、この液体封入式のエンジンマウントでは、振動入力時にオリフィスを通して主液室と副液室との間で液体を相互に流通させると共に、オリフィス内で液体の共振現象(液柱共振)を発生させることにより、弾性体自体の振動に対する減衰作用に加え、液体の粘性抵抗等によっても振動を効果的に減衰吸収できる。
上記のような液体封入式の防振装置の一例としては、例えば特許文献1に示されている液体封入式マウント装置がある。この特許文献1に示されたマウント装置には、外筒、ゴム弾性体及びダイヤフラムにより外部から密閉された液室空間が形成されており、この液室空間は、仕切部材により弾性体を隔壁の一部とする主液室と、ダイヤフラムを隔壁の一部とする副液室とに区画され、これらの主液室と副液室とが制限通路であるオリフィスにより繋ぎ合わされている。
ここで、主液室、副液室及びオリフィス内には、エチレングリコール、シリコンオイル等の液体が充填されている。仕切部材には、外周側に主液室と副液室とを連通させる制限通路であるオリフィスが設けらると共に、その内周側に円柱状の空間である収納室が設けられている。収納室の内部空間は、仕切部材の底板部及び頂板部にそれぞれ形成された開口部を通して主液室及び副液室にそれぞれ連通している。また収納室内には円板状の可動プレートが収納されており、この可動プレートは、収納室内で入力振動の振幅方向に沿って所定の振幅(可動範囲)内で振動可能とされている。
上記のように構成された防振装置では、振動入力時に吸振主体である弾性体が弾性変形することにより、弾性体の吸振作用により振動が減衰吸収される。このとき、入力振動の周波数が所定の値よりも低く、入力振動の振幅が可動プレートの可動範囲以上の場合には、振動入力時には可動プレートが仕切部材における開口部の周縁部に密着した状態となるので、収納室内を通って液体が主液室と副液室との間を実質的に流通しなくなり、オリフィスのみを通して主液室と副液室との間で液体が相互に流通する。これにより、オリフィス内を流通する液体に共振現象(液柱共振)が生じるので、この液柱共振の作用によって入力振動を効果的に減衰できる。
一方、上記のような防振装置では、入力振動の周波数が所定の値よりも高い高周波振動であり、入力振動の振幅が可動プレートの可動範囲よりも小さい場合には、オリフィスが目詰まり状態となってオリフィス内に液体が流れ難くなるが、可動プレートが収納室内で入力振動に同期して振動することにより、収納室内を通って主液室と副液室との間で液体が流通するので、主液室内の液圧上昇に伴う動ばね定数の上昇を抑えることができ、このような高周波振動の入力時も弾性体の動ばね定数を低く維持し、この弾性体の弾性変形等により高周波振動を効果的に吸収できるようになる。
特開平1−193425号公報
しかしながら、上記のような防振装置では、高周波振動の入力時に可動プレートが入力振動の振幅方向に沿って振動し、仕切部材における前記振幅方向に沿って互いに対向する底板部及び頂板部に入力振動の周波数に対応する周期で交互に衝突する。これにより、上記のような防振装置が適用された車両では、防振装置における可動プレートと仕切部材との衝突に起因する打音が高周波振動や衝撃的な大振動の入力時、具体的には、例えば、車両のアイドリング運転時や突起を乗り越えた直後の時期に発生し、この打音が車体を通して車内へ異音として伝達されることがある。
本発明の目的は、上記事実を考慮して、所定の周波数を有する振動の入力時に、主液室と副液室とを区画する仕切部材内に配設された可動板が振動することにより入力振動を効果的に吸収でき、しかも可動板と仕切部材との衝突に起因する異音が発生することを防止できる防振装置を提供することある。
上記課題を解決するため、本発明の請求項1に係る防振装置は、振動発生部及び振動受部の一方に連結される第1の取付部材と、振動発生部及び振動受部の他方に連結される第2の取付部材と、前記第1の取付部材と前記第2の取付部材との間に配置された弾性体と、液体が封入され、前記弾性体を隔壁の一部として該弾性体の変形に伴い内容積が変化する主液室と、液体が封入されると共に、隔壁の少なくとも一部がダイヤフラムにより形成され、該ダイヤフラムにより内容積が拡縮可能とされた副液室と、前記主液室と前記副液室との間を区画すると共に、内部に中空状の収納室が設けられた仕切部材と、前記収納室内における底面部及び頂面部にそれぞれ開口して、該収納室を前記主液室及び前記副液室に連通させる第1及び第2の開口部と、前記主液室と前記副液室とを連通させ、該主液室と副液室との間で液体を流通可能とする制限通路と、前記収納室内に配設されると共に、前記収納室内における底面部及び頂面部との間にそれぞれ所定寸法の隙間を形成し、前記第1又は第2の取付部材への入力振動に同期して、表面部及び裏面部を前記収納室内における底面部及び頂面部に対して接離させる可動板と、を有する防振装置であって、前記可動板における面方向に沿った中心点に対し、前記収納室の底面部における前記第1の開口部が開口した第1の開口領域の中心点を径方向一端側へ偏心させると共に、前記収納室の頂面部における前記第2の開口部が開口した第2の開口領域の中心点を径方向他端側に偏心させたことを特徴とする。
上記請求項1に係る防振装置では、振動入力時に弾性体が弾性変形することにより、弾性体により振動が減衰吸収されると共に、入力振動の周波数に応じて変化する振幅が所定値以上の場合には、可動板が仕切部材における収納室内における底面部及び頂面部に交互に密着した状態となって、収納室内を通って液体が主液室と副液室との間を実質的に流通することが阻止され、制限通路のみを通して主液室と副液室との間で液体が相互に流通するので、制限通路内を流通する液体に共振現象(液柱共振)が生じ、この液柱共振の作用によって入力振動を効果的に減衰できる。
また請求項1に係る防振装置では、入力振動の周波数に応じて変化する振幅が所定値よりも小さい場合には、制限通路が目詰まり状態となり制限通路には液体が流れ難くなるが、可動板が収納室内で入力振動に同期して振動することにより、第1の開口部及び第2の開口部を通って収納室内に対して液体が流入及び流出可能になることから、収納室内を通って主液室と副液室との間で液体が相互に流通するので、主液室内の液圧上昇に伴う動ばね定数の上昇を抑えることができ、このような振幅が小さい振動の入力時も弾性体の動ばね定数を低く維持し、この弾性体の弾性変形等により振動を効果的に吸収できるようになる。
また請求項1に係る防振装置では、可動板における面方向に沿った中心点に対し、収納室の底面部における第1の開口部が開口した第1の開口領域の中心点を径方向一端側へ偏心させると共に、収納室の頂面部における第2の開口部が開口した第2の開口領域の中心点を径方向他端側に偏心させたことにより、振動入力時に主液室内の液圧が副液室の液圧よりも上昇した場合には、第1の開口部を通って収納室内へ伝達される液圧(圧力波)が可動板における中心点に対して径方向一端側の部分に優先的に作用し、また副液室内の液圧が主液室の液圧よりも上昇した場合には、第2の開口部を通って収納室内へ伝達される液圧(圧力波)が可動板における中心点に対して径方向他端側の優先的に作用する。ここで、圧力波が優先的に作用するとは、時間的に早いタイミングで作用し、かつ圧力波の強度分布が高くなるように作用することを意味している。
このため、防振装置では、振動入力時に主液室内の液圧が副液室内の液圧よりも上昇した際には、可動板に、その径方向一端側の部分から収納室の頂面部までの間隔が相対的に狭くなると共に、径方向他端側の部分から収納室の頂面部までの間隔が相対的に広くなるような傾きが生じ、また振動入力時に副液室内の液圧が主液室内の液圧よりも上昇した際には、可動板に、その径方向他端側の部分から収納室の底面部までの間隔が相対的に狭くなると共に、径方向一端側の部分から収納室の底面部までの間隔が相対的に広くなるような傾きが生じるので、振動入力時に主液室内の液圧が副液室内の液圧よりも上昇し、この入力振動に同期して可動板が頂面部に当接する際に、当接初期の時点で可動板の径方向一端側の部分のみを局部的に頂面部に接触させ、その後、可動板の頂面部への接触領域を径方向他端側へ向って徐々に広げる現象を発生させることができ、かつ振動入力時に副液室内の液圧が主液室内の液圧よりも上昇し、この入力振動に同期して可動板が底面部に当接する際に、当接初期の時点で可動板の径方向他端側の部分のみを局部的に底面部に接触させ、その後、可動板の底面部への接触領域を径方向一端側へ向って徐々に広げる現象を発生させることができる。
この結果、請求項1に係る防振装置によれば、可動板が収納室内における頂面部に衝突する際に、この可動板が有する運動エネルギを、可動板の頂面部への当接初期の時点から当接完了の時点までの期間全体に亘って時系列的に分散させつつ、収納室の底面部に作用させることができ、かつ可動板が収納室内における底面部に衝突する際に、この可動板が有する運動エネルギを、可動板の底面部への当接初期の時点から当接完了の時点までの期間全体に亘って時系列的に分散させつつ、収納室の底面部に作用させることができるので、
可動板から収納室の頂面部及び底面部までの間隔が任意の部位で一定とされ、振動入力時に可動板全体が収納室の頂面部又は底面部に極めて短い時間内(瞬間的)に当接する従来の防振装置と比較し、可動板の一端部が収納室の頂面部又は底面部に当接した瞬間に可動板と頂面部又は底面部との間で生じる衝撃力を効果的に低減でき、可動板が収納室の頂面部又は底面部に当接することにより生じる打音を効果的に低減できる。
また本発明の請求項2に係る防振装置は、請求項1記載の防振装置において、前記可動板における面方向に沿った中心点に対し、前記第1の開口領域と前記第2の開口領域とを互いに点対称の位置関係となるように配置したことを特徴とする。
また本発明の請求項3に係る防振装置は、請求項1又は2記載の防振装置において、前記可動板の表面部から前記収納室の底面部までの振幅方向に沿った間隔を、該可動板の径方向に沿った一端側から他端側へ向って連続的に増加させると共に、前記可動板の裏面部から前記収納室の頂面部までの前記振幅方向に沿った間隔を、該可動板の径方向に沿った一端側から他端側へ向って連続的に縮小させたことを特徴とする。
また本発明の請求項4に係る防振装置は、請求項1、2又は3記載の防振装置において、前記第1の開口部を、前記第1の開口領域の中心点を中心として放射状に細長く延在するように開口した複数のスロット開口と、該複数のスロット開口の径方向中間部にそれぞれ開口した複数の円形開口とにより構成すると共に、前記第2の開口部を、前記第2の開口領域の中心点を中心として放射状に細長く延在するように開口した複数のスロット開口と、該複数のスロット開口の径方向中間部にそれぞれ開口した複数の円形開口とにより構成したことを特徴とする。
以上説明したように本発明の防振装置によれば、所定の周波数を有する振動の入力時に、主液室と副液室とを区画する仕切部材内に配設された可動板が振動することにより入力振動を効果的に吸収でき、しかも可動板と仕切部材との衝突に起因する異音が発生することを防止できる。
以下、本発明の実施形態に係る防振装置について図面を参照して説明する。
(実施形態の構成)
図1には本発明の実施形態に係る防振装置が示されている。この防振装置10は、自動車における振動発生部であるエンジンを振動受部である車体上へ支持するエンジンマウントとして適用されるものである。なお、図1にて符合Sが付された一点鎖線は装置の軸心を示しており、この軸心Sに沿った方向を装置の軸方向として以下の説明を行う。
図1に示されるように、防振装置10は、エンジン側に連結される略肉厚円筒状に形成された内筒金具12と、この内筒金具12の外周側に略同軸的に配置され、車体側へ連結される略円筒状の外筒金具14と、内筒金具12と外筒金具14との間に配置され、吸振主体となるゴム製の弾性体16とを備えている。内筒金具12は、その上端側が外筒金具14内へ挿入されると共に、下端側が外筒金具14の下端側の開口部を通って外筒金具14の下方まで突出している。外筒金具14には、その軸方向中間部に設けられた段差部18に対して上端側の部分に下端側の部分よりも直径が拡大された拡径部20が形成されている。また外筒金具14には、その下端部に下方へ向って直径がテーパ状に縮小するテーパ部22が屈曲形成されると共に、拡径部20の上端部に装置の組立時に内周側へかしめられるかしめ部24が形成されている。
防振装置10には、外筒金具14の下端側が嵌挿固定される略カップ状の連結筒26及び、この連結筒26の下端側が嵌挿固定される略有底円筒状のホルダ金具28が設けられている。外筒金具14は、その下端部が連結筒26の底板部に当接するまで連結筒26内へ挿入されている。またホルダ金具28には、その外周面に複数の脚部30が溶接等により固定されており、この脚部30の先端側に形成された連結穴32を挿通するボルト(図示省略)により、ホルダ金具28は車体側へ締結固定される。これにより、外筒金具14が、連結筒26及びホルダ金具28を介して車体側へ連結固定される。
内筒金具12の下端側は、連結筒26の底板部に形成された開口部27を通って連結筒26の下方まで突出しており、内筒金具12の下端部には、ボルト34によりエンジン連結用のブラケット36の基端部が締結固定されている。このブラケット36は、ホルダ金具28の側面部に形成された開口部(図示省略)を通って外周側へ延出しており、ブラケット36の先端側にはボルト等によりエンジン(図示省略)が締結固定される。またブラケット36の基端部には、略角筒状に形成されたストッパゴム38が被せられており、このストッパゴム38の上面部は連結筒26の底板部に圧接している。これにより、ブラケット36の軸方向に沿った過大な変位が防止されると共に、大荷重の入力によりブラケット36が連結筒26又はホルダ金具28へ衝突した際にも大きな衝突音の発生が防止される。
内筒金具12の上端面には、上方へ向って開口する略カップ状に形成された延長金具40の底板部が溶接等により固着されている。延長金具40は、その側板部が底板側から上端側へ向って直径が拡大するテーパ状とされており、この側板部の上端部分には、リング状のフランジ部材42が溶接等により固着され、延長金具40の上端部から内周側へ延出している。また延長金具40の側板部には、弾性体16の成形素材となる加硫ゴムを延長金具40内へ充填するための湯道穴44が複数穿設されている。
弾性体16は、外筒金具14内へ挿入された内筒金具12の上端側及び延長金具40にそれぞれ加硫接着されると共に、外筒金具14の下端側に加硫接着されており、内筒金具12と外筒金具14とを弾性的に連結している。ここで、弾性体16は、内筒金具12の外周面及び延長金具40の外周面にそれぞれ加硫接着されると共に、湯道穴44を通って延長金具40の内周側に充填され、延長金具40の内周面及び底面部とフランジ部材42の下面側にもそれぞれ加硫接着されている。また弾性体16には、外周部から上方へ延出する薄肉状の被覆部46が一体的に形成されており、この被覆部46は、外筒金具14の内周面における上端側に加硫接着され、外筒金具14の内周面を被覆している。
外筒金具14内には、その段差部18の上側に全体として略円板状に形成された仕切部材48及び、この仕切部材48の上面部に密着した略ハット状の蓋金具50が挿入されており、仕切部材48の下面における外周部は、被覆部46を介して段差部18に当接している。また外筒金具14内には、仕切部材48及び蓋金具50の上側にリング状の支持筒52が嵌挿されており、この支持筒52の下端部は蓋金具50の外周部に当接している。これらの仕切部材48、蓋金具50及び支持筒52が挿入された外筒金具14はかしめ部24が内周側へテーパ状にかしめられる。これにより、仕切部材48、蓋金具50及び支持筒52が外筒金具14内における段差部18とかしめ部24との間に固定される。ここで、支持筒52には、その内周面に上方へ向って凸状のカップ状に形成されたゴム製のダイヤフラム54の外周部が全周に亘って加硫接着されている。
防振装置10内には、外筒金具14、弾性体16及びダイヤフラム54により外部から密閉された空間(液室空間)が形成されており、この液室空間は、仕切部材48及び蓋金具50により弾性体16を隔壁の一部とする主液室56と、ダイヤフラム54を隔壁の一部とする副液室58とに区画されている。防振装置10では、副液室58の隔壁の一部を形成するダイヤフラム54の外側が大気空間とされており、これにより、ダイヤフラム54は、副液室58内の液圧変化に応じて副液室58の内容積を拡縮するように弾性変形可能とされている。また主液室56は、その内容積が弾性体16の弾性変形に伴って拡縮する。
また仕切部材48には、その外周面に周方向へ延在する凹状の溝部60が設けられている。図2に示されるように、溝部60は軸心Sを中心とする周方向に沿って延在しており、仕切部材48には、溝部60の一端部から下方へ向って溝部60の下部側が切り欠かれて連通口62が形成されると共に、溝部60の他端部から上方へ向って溝部60の上部側が切り欠かれて連通口64が形成されている。溝部60は、図1に示されるように、その外周側が被覆部46を介して外筒金具14の内周面により閉止されることにより、主液室56と副液室58とを連通させる制限通路であるオリフィス66を形成している。
ここで、主液室56、副液室58及びオリフィス66内には、水、エチレングリコール、シリコーンオイル等の液体が充填されており、この液体はオリフィス66を通して主液室56と副液室58との間で流通可能とされている。このオリフィス66は、その路長及び断面積がシェイク振動の振幅及び周波数に適合するように設定(チューニング)されている。
図4に示されるように、仕切部材48には、その上面中央部に薄肉円板状に形成されたゴム製の緩衝材68が貼り付けられると共に、この緩衝材68の外周側に蓋金具50側へ突出する複数本(本実施形態では、6本)の位置決め突起70が配設されている。また仕切部材48には、その下面中央部に緩衝材68よりも大径とされた円形凹状の逃げ部72が形成されている。これにより、仕切部材48には、逃げ部72の上側の部分に厚さが略一定とされ、上面側に緩衝材68が貼り付けられた底板部74が形成される。
図1に示されるように、逃げ部72内には、軸方向に沿って底板部74との間に隙間を空けつつ、延長金具40及び弾性体16の上端部が挿入されている。ここで、底板部74と延長金具40及び弾性体16との間の隙間は、ブラケット36にエンジンが連結され、このエンジンの重量に起因する荷重がブラケット36に作用した状態では、図示した状態よりも拡大されて十分な幅となるので、振動が入力しても延長金具40及び弾性体16が底板部74に接することは無い。
図5に示されるように、蓋金具50には、仕切部材48の底板部74に正対する中央部に副液室58側へ突出する円形凸状のホルダ部76が形成されると共に、このホルダ部76の下端部から外周側へ延出する環状のフランジ部78が一体的に形成されている。このフランジ部78には、仕切部材48における複数本の位置決め突起70にそれぞれ対応する複数個の位置決め穴79が穿設されている。
防振装置10では、蓋金具50がそのフランジ部78を仕切部材48の上面外周部へ当接させると共に、仕切部材48が位置決め突起70を蓋金具50の位置決め穴79内へ嵌挿させている。この状態で、蓋金具50は、位置決め穴79内から突出する位置決め突起70の先端部がかしめられることにより仕切部材48に固定されている。
蓋金具50が仕切部材48に固定されることにより、図3に示されるように、仕切部材48の底板部74と蓋金具50のホルダ部76との間には主液室56及び副液室58から区画された空間である収納室80が形成されている。ここで、ホルダ部76の上端側の隔壁部分である頂板部77は、仕切部材48の底板部74と平行とされており、これにより、収納室80の軸方向に沿った肉厚は、径方向に沿った任意の部位で略一定となっている。
ホルダ部76の頂板部77には、収納室80内に面した内側部分を被覆するように薄肉状のゴム製の緩衝材82が貼り付けられている。この緩衝材82には、図5(B)に示されるように、その表面部に凸状のディンプル部84が多数形成されている。これらのディンプル部84は、それぞれ高さ方向に沿って扁平な略円錐状に形成されており、後述する開口88,89の周辺部分の除く領域に略一定ピッチで格子状に配列されている。
蓋金具50には、図2(A)に示されるように、フランジ部78の外周端から内周側へ向って略矩形状に切り欠かれた切欠部86が形成されており、この切欠部86を通して、オリフィス66の連通口64は副液室58へ連通している。また蓋金具50には、図2(B)に示されるように、その頂板部77に内周部から外周側へ向って延在する長穴状のスロット開口90が複数個(本実施形態では、6個)穿設されると共に、互いに隣接する一対のスロット開口90間にそれぞれ円形の円形開口91が穿設されている。これらのスロット開口90及び円形開口91を通して、収納室80は副液室58と互いに連通している。ここで、複数のスロット開口90及び円形開口91(以下、これらの総称して「開口90,91」という。)は、装置の軸心Sに対して一方向(図2(B)では右方向)へ所定距離偏心した開口中心CPuを中心として放射状(点対称的)に配置されている。
図2(C)に示されるように、仕切部材48の底板部74にも、蓋金具50におけるスロット開口88及び円形開口89が複数個(6個)ずつ穿設されており、これらのスロット開口88及び円形開口89(以下、これらを総称して「開口88,89」という。)は、蓋金具50の開口90,91と共通の形状及び開口面積を有しており、かつ開口90,91と同様に、装置の軸心Sに対して他方向(図2(B)では左方向)へ所定距離偏心した開口中心CPlを中心として放射状(点対称的)に配置されている。
但し、開口中心CPlの軸心Sに対する偏心距離は蓋金具50の開口中心CPuと等しくなっているが、開口中心CPlの軸心Sに対する偏心方向は開口中心CPuとは反対になっている。すなわち、開口90,91と開口88,89とは、開口中心CPl及び開口中心CPuの偏心方向に沿って互いに対称配置されている。
図3に示されるように、収納室80内にはゴム製の可動板92が配設されている。この可動板92は、図6(A)に示されるように、全体として薄肉円板状に形成されており、その外径が収納室80の内径よりも若干小さくなっている。可動板92の下面部分である表面部94には、中央側に略円柱状の嵌合突起98が一体的に形成されており、この嵌合突起98の中心は、図2(B)及び(C)に示されるように、蓋金具50の開口中心CPuと略一致している。また可動板92の上面部分である裏面部94にも、中央側に略円柱状の嵌合突起100が一体的に形成されており、この嵌合突起100の中心は、図2(B)及び(C)に示されるように、仕切部材48の開口中心CPlと略一致している。
図6に示されるように、可動板92には、その表面部94に軸心S付近を起点として裏面側の嵌合突起100側へ延出する凸状の被押圧部102が一体的に形成されている。この被押圧部102は、偏心方向に沿って裏面部94の嵌合突起100よりも外周側まで延出している。また可動板92には、その裏面部94にも軸心S付近を起点として表面部94の嵌合突起98側へ延出する凸状の被押圧部104が一体的に形成されている。この被押圧部104も、偏心方向に沿って下面部の嵌合突起98よりも外周側まで延出している。一方、図4(A)に示されるように、底板部74に配設された緩衝材68には、可動板92の表面側の被押圧部102に正対するように一対の押圧凸部120が形成され、また図5(A)に示されるように、頂板部77に配設された緩衝材82には、可動板92の裏面側の被押圧部104に正対するように一対の押圧凸部122が形成されている。
ここで、被押圧部102の下端面と被押圧部104の上端面との軸方向に沿った間隔PI(図6(B)参照)は、押圧凸部120の上端面と押圧凸部122の下端面との軸方向に沿った間隔よりも所定長だけ長くなっている。
可動板92には、その表面部94及び裏面部94にそれぞれ凸状のディンプル部106が多数形成されている。これらのディンプル部106も、緩衝材82のディンプル部84と同様に、それぞれ高さ方向に沿って扁平な略円錐状に形成されており、可動板92における嵌合突起98,100及び被押圧部102,104及び外周縁部を除く領域に略一定ピッチで格子状に配列されている。また可動板92には、その表面部94における外周縁部に底板部74側へ突出するリブ状のシール突起部108が全周に亘って一体的に形成されると共に、裏面部94における外周縁部にも頂板部77側へ突出するリブ状のシール突起部110が全周に亘って一体的に形成されている。これらシール突起部108,110の軸方向外側の面は、表面部94及び裏面部94にそれぞれ形成されたディンプル部106の頂点部分と実質的に同一平面上に位置している。
可動板92は、外周縁部の厚さPT(図6(B)参照)が収納室80の軸方向に沿った寸法STよりも所定寸法短くなっている。具体的には、例えば、可動板92の厚さPTと収納室80の厚さSTとの差は、入力振動のうち相対的に低周波数の振動であるシェイク振動の振幅よりも短く、かつ相対的に高周波数の振動であるアイドル振動の振幅よりも長くなるように設定されている。これにより、収納室80内では、可動板92のと底板部74及び頂板部77との間に軸方向に沿って低周波振動と高周波振動との振幅差に対応する幅の隙間が形成される。
可動板92は、可動板92が収納室80内に収納された状態で、図2(C)に示されるように、嵌合突起98を底板部74に穿設された1個のスロット開口88内へ嵌挿すると共に、図2(B)に示されるように、嵌合突起100を頂板部77に穿設された1個のスロット開口90内へ嵌挿する。このとき、嵌合突起98が嵌挿されるスロット開口88は頂板部77の開口中心CPuに面して開口しており、嵌合突起98は、その外周面の一部をスロット開口88の内周側の端部へ当接させる。また嵌合突起100が嵌挿されるスロット開口90は底板部74の開口中心CPlに面して開口しており、嵌合突起100は、その外周面の一部をスロット開口90の内周側の端部へ当接させる。これにより、可動板92は、収納室80内で回転方向への変位が制限される。
また可動板92は、図3に示されるように収納室80内に収納された状態で、被押圧部102が底板部74から突出する押圧凸部120により頂板部77側へ押圧されると共に、被押圧部104が頂板部77から突出する押圧凸部122により底板部74側へ押圧される。これにより、可動板92は、軸心S付近を起点として外周側へ延出する裏面側の被押圧部102の延長線上付近に位置する部分(図6(A)に示される湾曲頂部112)が頂板部77へ近接するように変形(弾性変形)すると共に、軸心S付近を起点として外周側へ延出する表面側の被押圧部104の延長線上付近に位置する部分(図6(A)に示される湾曲頂部114)が底板部74へ近接するように弾性変形する。また可動板92は、湾曲頂部112と湾曲頂部114との周方向に沿った中間部分がなだらかに捩じれるように弾性変形する。
従って、図3に示されるように、防振装置10では、可動板92の裏面部96から頂板部77までの軸方向に沿った間隔が湾曲頂部112で最も狭くなり、湾曲頂部114で最も広くなる。このとき、可動板92のシール突起部108,110及びディンプル部106を含めた肉厚は、嵌合突起98,100及び被押圧部102,104の外周側では一定であるので、可動板92の表面部94から底板部74までの軸方向に沿った間隔は、裏面部96とは逆の関係になって湾曲頂部112で最も広くなり、湾曲頂部114で最も狭くなる。
ここで、図3に示されるように、湾曲頂部112から頂板部77までの間隔と湾曲頂部114から底板部74までの間隔をそれぞれDMINとし、湾曲頂部112から底板部74までの間隔と湾曲頂部114から頂板部77までの間隔をそれぞれDMAXとすると、このDMIN及びDMAXは、弾性体16の剛性、外部から入力する負荷荷重の大きさ等により適正値がそれぞれ変化し、これらの事項に応じて設定を変更する必要がある。
(実施形態の作用)
次に、上記のように構成された本発明の実施形態に係る防振装置10の作用について説明する。
本実施形態に係る防振装置10では、エンジン又は車体側からの振動入力時に、この振動入力に同期して弾性体16が弾性変形すると共に主液室56内の液圧が変化する。この液圧変化に伴って、オリフィス66を通して主液室56と副液室58との間に液体が相互に流通すると共に、主液室56に連通した収納室80内に収納された可動板92には、入力振動に同期して周期的に変化する液圧(圧力波)が作用する。これにより、主液室56内の液圧変化に同期し、可動板92の嵌合突起98,100及び被押圧部102,104の外周側の部分が軸方向に沿って上下へ撓み変形すると共に、入力振動の周波数に対応する周期で仕切部材48の底板部74及び蓋金具50の頂板部77に当接及び離間する動作を繰り返す。
防振装置10では、上記したように主液室56内の液圧変化により可動板92が下方へ撓み変形して底板部74に当接すると、可動板92の表面部94により底板部74に開口する開口88,89が閉塞され、可動板92が底板部74から上方へ離間すると、開口88,89が開放される。また防振装置10では、主液室56内の液圧変化により可動板92が上方へ撓み変形して頂板部77に当接すると、可動板92の裏面部94により頂板部77に開口する開口90,91が閉塞され、可動板92が頂板部77から下方へ離間すると、開口90,91が開放される。防振装置10では、可動板92により開口88,89及び開口90,91の一方が閉塞されると、収納室80内を通って主液室56と副液室58との間で液体が流通することが実質的に阻止される。
このとき、防振装置10では、可動板92の表面部94及び裏面部94にそれぞれシール突起部108,110が形成されていることから、可動板92が底板部74及び頂板部77に当接した際には、可動板92の外周端に沿って配置されたシール突起部108,110の先端面がそれぞれ底板部74及び頂板部77の外周部に確実に密着すると共に、可動板92全体が底板部74及び頂板部77に圧接する場合と比較し、シール突起部108,110が底板部74及び頂板部77の外周部に圧接した際の圧接力(面圧)を増大できるので、可動板92が底板部74に当接した際の可動板92による開口88,89に対するシール性を向上できると共に、可動板92が頂板部77に当接した際の可動板92による開口90,91に対するシール性を向上できる。
防振装置10では、基本的に、振動入力時に吸振主体である弾性体16が弾性変形することにより、この弾性体16自体の吸振作用により振動が減衰吸収される。
また防振装置10では、入力振動の周波数に応じて変化する振動の振幅が所定値以上の場合には、可動板92が仕切部材48の底板部74及び蓋金具50の頂板部77に交互に密着した状態となって、収納室80内を通って液体が主液室と副液室との間を実質的に流通することがなくなり、オリフィス66のみを通して主液室56と副液室58との間で液体が相互に流通する。
具体的には、防振装置10では、入力振動の周波数がシェイク振動の周波数(例えば、8〜12Hz)以下で、その振幅が大きい場合(例えば、0.5mm〜1mm程度の場合)には、可動板92が仕切部材48の底板部74及び蓋金具50の頂板部77の一方に密着した状態となり、開口88,89及び開口90,91の一方が塞がれる。これにより、シェイク振動の入力時には、収納室80内を通って液体が主液室56と副液室58との間を実質的に流通することがなくなり、オリフィス66のみを通して主液室56と副液室58との間で液体が相互に流通する。
ここで、オリフィス66は、その路長及び断面積がシェイク振動に適合するようにチューニングされている。この結果、防振装置10では、入力振動が特にシェイク振動の場合には、オリフィス66を流通する液体に共振現象(液柱共振)が生じ、この液柱共振の作用によって入力振動を効果的に減衰できる。
また防振装置10では、入力振動の周波数がシェイク振動の周波数よりも高く、その振幅が小さい場合、例えば、入力振動がアイドル振動(例えば、20〜30Hz)で、その振幅が0.1mm〜0.2mm程度の場合には、シェイク振動に適合するようにチューニングされたオリフィス66が目詰まり状態となり、オリフィス66には液体が流れ難くなるが、可動板92が収納室80内で入力振動に同期して上下へ振動することにより、振動入力時に可動板92と底板部74及び頂板部77との間に隙間が形成されることから、開口88,89、収納室80及び開口90,91を通って主液室56と副液室58との間で液体の流通が生じるので、主液室56内の液圧上昇に伴う動ばね定数の上昇を抑えることができ、このような高周波振動の入力時も弾性体16の動ばね定数を低く維持し、この弾性体16の弾性変形によりアイドル振動等の高周波振動も効果的に吸収できる。
また防振装置10では、可動板92の裏面部96から頂板部77までの軸方向に沿った間隔が一方の湾曲頂部112で最も狭くなり、他方の湾曲頂部114で最も広くなることにより、内筒金具12又は外筒金具14への振動入力時に可動板92が収納室80内で振動し、この入力振動に同期して可動板92が頂板部77に当接(衝突)する際には、当接初期の時点で可動板92の一方の湾曲頂部112のみが頂板部77に接した後に、可動板92の頂板部77への接触領域が一方の湾曲頂部112から他方の湾曲頂部114側へ向って徐々に拡大して行き、当接完了の時点で可動板92が頂板部77に接触するので、可動板92が頂板部77に衝突する際に、この可動板92が有する運動エネルギを、可動板92の頂板部77への当接初期の時点から当接完了の時点までの期間全体に亘って時系列的に分散させつつ、頂板部77に作用させることができる。
この結果、可動板の表面部から収納室の頂面部までの間隔が任意の部位で一定とされ、振動入力時に可動板全体が収納室の頂面部に極めて短い時間内(瞬間的)に当接する従来の防振装置と比較し、可動板92の一方の湾曲頂部112が頂板部77に当接した瞬間に可動板92と頂板部77との間で生じる衝撃力を効果的に低減でき、かつ可動板92の湾曲頂部112が頂板部77に接触してから可動板92全体が頂板部77に接するまでの期間において生じる衝撃力も十分に低いレベルに維持でき、又は衝撃力の発生を防止できるので、内筒金具12又は外筒金具14への振動入力時に可動板92が収納室80内で振動し、この振動に同期して可動板92が頂板部77に当接することにより生じる打音を効果的に低減できる。
さらに防振装置10では、可動板92の表面部94から底板部74までの軸方向に沿った間隔が他方の湾曲頂部114で最も狭くなり、一方の湾曲頂部112で最も広くなることにより、可動板92が頂板部77に当接する場合と同様に、可動板92の湾曲頂部114が底板部74に当接した瞬間に可動板92と底板部74との間に生じる衝撃力を効果的に低減でき、可動板92の他方の湾曲頂部114が底板部74に接触してから可動板92全体が底板部74に接するまでの期間において生じる衝撃力も十分に低いレベルに維持でき、又は衝撃力の発生を防止できるので、内筒金具12又は外筒金具14への振動入力時に可動板92が収納室80内で振動し、この振動に同期して可動板92が底板部74に当接することにより生じる打音を効果的に低減できる。
また防振装置10では、底板部74に放射状に配設された開口88,89の開口中心CPuが軸心Sに対して湾曲頂部112側へ偏移すると共に、頂板部77に放射状に配設された開口90,91の開口中心CPlが軸心Sに対して湾曲頂部114側へ偏移していることにより、振動入力時に主液室56内の液圧が副液室58の液圧よりも上昇した場合には、開口88,89を通って収納室80内へ伝達される圧力波が可動板92における軸心Sに対して湾曲頂部112側の部分に優先的に作用し、また副液室58内の液圧が主液室56の液圧よりも上昇した場合には、開口90,91を通って収納室80内へ伝達される圧力波が可動板92における軸心Sに対して湾曲頂部114側の部分に優先的に作用する。圧力波が優先的に作用するとは、時間的に早いタイミングで作用し、かつ圧力波の強度分布が高くなるように作用することを意味している。
この結果、防振装置10では、振動入力時に主液室56内の液圧が副液室58の液圧よりも上昇し、この入力振動に同期して可動板92が頂板部77に当接する際に、当接初期の時点で可動板92の一方の湾曲頂部112のみを頂板部77に当接させる現象を確実に発生させることができ、
かつ振動入力時に副液室58内の液圧が主液室56の液圧よりも上昇し、この入力振動に同期して可動板92が底板部74に当接する際に、当接初期の時点で可動板92の一方の湾曲頂部114のみを底板部74に当接させる現象を確実に発生させることができるので、可動板全体に均一に圧力波が作用する場合と比較し、可動板92が頂板部77又は底板部74へ衝突した際に衝撃力を時系列的に分散する効果をより確実に得られ、かつ当接初期に湾曲頂部112,114のみを局部的に頂板部77及び底板部74へ接触させることができるので、衝撃力の分散効果も向上できる。
但し、防振装置10では、湾曲頂部112から頂板部77までの距離が相対的に短く、湾曲頂部114から頂板部77までの距離が相対的に長いことから、可動板92全体を頂板部77に当接させるには、湾曲頂部114付近の底板部74側への変形量を湾曲頂部112の変形量よりも大きくしなければならない。
このため、底板部74に形成された開口88,89を通して主液室56内から供給される液圧(圧力波)だけでは、可動板92における湾曲頂部114付近の変形量が不足したり、湾曲頂部114付近が頂板部77に接した際の圧接力が不十分なものになることがある。同様に、頂板部77に形成された開口90,91を通して副液室58内から供給される液圧(圧力波)だけでは、可動板92における湾曲頂部112付近の変形量が不足したり、湾曲頂部112付近が底板部74に接した際の圧接力が不十分なものになることがある。
そこで、防振装置10では、図7に示されるように、底板部74の軸心Sに対して湾曲頂部114側に偏移した部位に必要に応じて補助開口116を穿設すると共に、頂板部77の軸心Sに対して湾曲頂部112側に偏移した部位に必要に応じて補助開口118を穿設することにより、補助開口116を通して主液室56内から収納室80へ供給される液圧を湾曲頂部114付近へ直接作用させると共に、補助開口118を通して副液室58内から収納室80へ供給される液圧を湾曲頂部112付近へ直接作用させる用にしても良い。
また本実施形態に係る防振装置10では、底板部74の上面側及び頂板部77の下面側にゴム製の緩衝材68,82をそれぞれ貼り付けたことにより、これらの緩衝材68,82が有する緩衝作用によっても可動板92が底板部74及び頂板部77へ当接する際の衝撃力が緩和されるので、振動入力時に可動板92が底板部74及び頂板部77に当接することにより生じる打音を更に効果的に低減できる。
また本実施形態に係る防振装置10では、ゴム製の可動板92の表面部94及び裏面部94にそれぞれ多数のディンプル部106を多数形成すると共に、頂板部77に貼り付けられたゴム製の緩衝材82の表面にも多数のディンプル部84を多数形成したことにより、振動入力時に可動板92が底板部74及び頂板部77へ当接する際に、可動板92のディンプル部106及び緩衝材82のディンプル部84により可動板92の表面部94と底板部74との間、及び可動板92の裏面部94と頂板部77との間にそれぞれ部分的に隙間が形成され、可動板92の表面部94全体が底板部74に完全に密着することが防止され、かつ可動板92の裏面部94全体が頂板部77に完全に密着することが防止されるので、可動板92及び緩衝材82にそれぞれディンプル部84,106が形成されていない場合と比較し、可動板92が底板部74及び頂板部77に当接した際に発生する衝撃的な荷重の分布がディンプル部84,106からの距離に応じて変化し、可動板92と底板部74及び頂板部77との接触部分における荷重分布が不均一になると共に、可動板92が底板部74及び頂板部77に面接触状態で当接しなくなるので、これらのディンプル部84,106の作用によっても、振動入力時に可動板92が底板部74及び頂板部77に衝突することにより生じる打音の音圧を効果的に低減できる。
なお、本実施形態に係る防振装置10では、可動板92に凸状のディンプル部106を形成すると共に、緩衝材82にも凸状のディンプル部84を形成していたが、可動板92及び緩衝材82の一方又は双方に形成するディンプル部を凹状のものとしても、凸状のディンプル部84,106を形成した場合と基本的に共通の作用及び効果を得ることができる。また、頂板部77に貼り付けられた緩衝材82にのみディンプル部84を形成し、底板部74に貼り付けられた緩衝材68にディンプル部を形成しなかったのは、主液室56側から可動板92に伝達される液圧が副液室58側から可動板92に伝達される液圧よりも高く、可動板92が頂板部77へ衝突する際の衝撃力が底板部74へ衝突する際の衝撃力よりも大きいことによる。このようなディンプル部は、むろん、頂板部77に貼り付けられた緩衝材82に加え、底板部74に貼り付けられた緩衝材68に形成しても良い。
また、以上説明したように本実施形態に係る防振装置10では、可動板92から頂板部77までの間隔を湾曲頂部112で最も狭くし、湾曲頂部114で最も広くすると共に、可動板92から底板部74までの間隔を湾曲頂部112で最も広く、湾曲頂部114で最も狭くすることに加え、底板部74における開口88,89の開口中心CPuを軸心Sに対して湾曲頂部112側へ偏移させると共に、頂板部77における開口90,91の開口中心CPlを軸心Sに対して湾曲頂部114側へ偏移させることにより、入力振動に同期して可動板92が頂板部77に当接する際に、当接初期の時点で可動板92の一方の湾曲頂部112のみを頂板部77に当接させ、かつ可動板92が底板部74に当接する際に、当接初期の時点で可動板92の一方の湾曲頂部114のみを底板部74に当接させる現象を確実に発生させていた。
しかしながら、防振装置10では、開口中心CPu及び開口中心CPlの軸心Sに対する偏心距離をそれぞれ十分に長い距離に設定できる場合には、可動板92に湾曲頂部112,114を設けなくても、可動板92の底板部74及び頂板部77への当接時に上記のような現象を発生させることができる。
すなわち、防振装置10では、開口中心CPu及び開口中心CPlの軸心Sに対する偏心距離をそれぞれ十分に長い距離に設定すれば、振動入力時に主液室56内の液圧が副液室58内の液圧よりも上昇した際に、可動板92に、その径方向一端側の部分から頂板部77までの間隔が相対的に狭くなると共に、径方向他端側の部分から頂板部77までの間隔が相対的に広くなるような傾きを生じさせ、また振動入力時に副液室58内の液圧が主液室56内の液圧よりも上昇した際には、可動板92に、その径方向他端側の部分から底板部74までの間隔が相対的に狭くなると共に、径方向一端側の部分から底板部74までの間隔が相対的に広くなるような傾きを生じさせることができるので、主液室56内の液圧が上昇して可動板92が頂板部77に当接する際には、当接初期の時点で可動板92の径方向一端側の部分のみを局部的に頂板部77に当接させることができ、かつ副液室58内の液圧が上昇して可動板92が底板部74に当接する際には、当接初期の時点で可動板92の径方向他端側の部分のみを局部的に底面部74に当接させることができる。
本発明の実施形態に係る防振装置の構成を示す断面図である。 図1に示される可動板を収納した仕切部材及び蓋金具の構成を示す斜視図、平面図及び底面図である。 図1に示される可動板を収納した仕切部材及び蓋金具の構成を示す側面部図である。 図1に示される仕切部材の構成を示す斜視図及び側面断面図である。 図1に示される蓋部材の構成を示す斜視図及び側面断面図である。 図1に示される可動板の構成を示す斜視図及び側面断面図である。 図1に示される仕切部材及び蓋金具にそれぞれ補助開口を追加した場合の構成を示す斜視図、平面図及び底面図である。
符号の説明
10 防振装置
12 内筒金具(取付部材)
14 外筒金具(取付部材)
16 弾性体
48 仕切部材
50 蓋金具(仕切部材)
56 主液室
58 副液室
66 オリフィス(制限通路)
68 緩衝材
74 底板部(底面部)
77 頂板部(底面部)
80 収納室
82 緩衝材
84 ディンプル部
88 スロット開口(開口部)
89 円形開口(開口部)
90 スロット開口(開口部)
91 円形開口(開口部)
92 可動板
106 ディンプル部
108 シール突起部
110 シール突起部

Claims (4)

  1. 振動発生部及び振動受部の一方に連結される第1の取付部材と、
    振動発生部及び振動受部の他方に連結される第2の取付部材と、
    前記第1の取付部材と前記第2の取付部材との間に配置された弾性体と、
    液体が封入され、前記弾性体を隔壁の一部として該弾性体の変形に伴い内容積が変化する主液室と、
    液体が封入されると共に、隔壁の少なくとも一部がダイヤフラムにより形成され、該ダイヤフラムにより内容積が拡縮可能とされた副液室と、
    前記主液室と前記副液室との間を区画すると共に、内部に中空状の収納室が設けられた仕切部材と、
    前記収納室内における底面部及び頂面部にそれぞれ開口して、該収納室を前記主液室及び前記副液室に連通させる第1及び第2の開口部と、
    前記主液室と前記副液室とを連通させ、該主液室と副液室との間で液体を流通可能とする制限通路と、
    前記収納室内に配設されると共に、前記収納室内における底面部及び頂面部との間にそれぞれ所定寸法の隙間を形成し、前記第1又は第2の取付部材への入力振動に同期して、表面部及び裏面部を前記収納室内における底面部及び頂面部に対して接離させる可動板と、を有する防振装置であって、
    前記可動板における面方向に沿った中心点に対し、前記収納室の底面部における前記第1の開口部が開口した第1の開口領域の中心点を径方向一端側へ偏心させると共に、前記収納室の頂面部における前記第2の開口部が開口した第2の開口領域の中心点を径方向他端側に偏心させたことを特徴とする防振装置。
  2. 前記可動板における面方向に沿った中心点に対し、前記第1の開口領域と前記第2の開口領域とを互いに点対称の位置関係となるように配置したことを特徴とする請求項1記載の防振装置。
  3. 前記可動板の表面部から前記収納室の底面部までの振幅方向に沿った間隔を、該可動板の径方向に沿った一端側から他端側へ向って連続的に増加させると共に、前記可動板の裏面部から前記収納室の頂面部までの前記振幅方向に沿った間隔を、該可動板の径方向に沿った一端側から他端側へ向って連続的に縮小させたことを特徴とする請求項1又は2記載の防振装置。
  4. 前記第1の開口部を、前記第1の開口領域の中心点を中心として放射状に細長く延在するように開口した複数のスロット開口と、該複数のスロット開口の径方向中間部にそれぞれ開口した複数の円形開口とにより構成すると共に、
    前記第2の開口部を、前記第2の開口領域の中心点を中心として放射状に細長く延在するように開口した複数のスロット開口と、該複数のスロット開口の径方向中間部にそれぞれ開口した複数の円形開口とにより構成したことを特徴とする請求項1、2又は3記載の防振装置。
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